説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】従来の半導体装置では、金属細線として金線を用いており、材料コストが低減し難いという問題があった。
【解決手段】本発明の半導体装置では、アイランド7上に半導体素子9が固着され、半導体素子9の固着領域の周囲のアイランド7には、複数の貫通孔11が形成される。そして、半導体素子9の電極パッドとリード4とは銅線10により電気的に接続される。この構造により、銅線10を用いることで金線の場合と比較して材料コストが低減される。また、樹脂パッケージ2の一部が貫通孔11内を埋設することで、アイランド7が樹脂パッケージ2内に支持され易い構造となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅線を用いてワイヤーボンディングされる半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置の製造方法の一実施例として、下記の製造方法が知られている。図9(A)及び(B)は、従来の半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【0003】
先ず、図9(A)に示す如く、リードフレームのダイパッド51上に半導体素子52を固着した後、リードフレームをワイヤーボンディング装置に設置する。半導体素子52の電極パッド53を約200℃に加熱し、キャピラリ54が電極パッド53上へと移動する。そして、超音波振動併用の熱圧着技術により、キャピラリ54の先端に形成された金属ボールを電極パッド53へと接続する。一般にこれをボールボンディングと言う。
【0004】
次に、図9(B)に示す如く、キャピラリ54がインナーリード55の先端部上方へ移動し、インナーリード55に対し金属細線56を所望の荷重にて押し付ける。このとき、インナーリード55を約200℃に加熱し、インナーリード55に対し超音波振動併用の熱圧着技術により金属細線56を接続する。その後、ワイヤークランパー57を閉じた状態にてキャピラリ54が上昇し、金属細線56をインナーリード55の接続箇所にて破断する。一般にこれをステッチボンディングと言う。
【0005】
そして、図9(A)及び(B)にて説明したワイヤーボンディング作業を繰り返すことで、半導体素子52の全ての電極パッド53とインナーリード55とを金属細線56で電気的に接続する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−29943号公報(第4−5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、ワイヤーボンディング工程では、金属細線56は、ワイヤーボンディング作業中は高温状態下に置かれる。このとき、従前の技術では、金属細線として金線を用い、インナーリードには銀メッキが施されることで、特に、酸化の問題は重要視されなかった。
【0008】
しかしながら、金属細線56として銅線を用いる場合には、作業中に銅線が酸化されるという問題が発生する。特に、高機能化の半導体素子では、端子数も多く、多ピン化される傾向にある。そのため、ワイヤーボンディングされるワイヤーの本数も多くなり、その作業時間が長くなることで、銅線の酸化が重要視される。また、ダイパッド51や外部リード55等も、メッキ処理等の対応が成されていない場合には、上記作業により酸化されるという問題が発生する。
【0009】
また、従前の技術では、複数のインナーリード55はクランパー(図示せず)にて一括して固定された状態にてワイヤーボンディングが行われる。金属細線56の材料として金線と銅線とを比較すると、金線は、銅線と比較して軟らかく延性が小さい。そのため、金線は、ステッチボンディング時の切断が容易であり、クランパーによるインナーリード55の固定状況が特に重要視されなかった。
【0010】
しかしながら、銅線は金線よりも硬いが、延性を有するため、ステッチボンディング時の荷重が金線よりも大きくなる。そのため、クランパーとインナーリード55との間に隙間が存在すると、ステッチボンディング時にインナーリード55が動くことで荷重が逃げ易く、金属細線56が切断し難く、金属細線56の切断箇所が安定し難いという問題が発生する。
【0011】
更に、金線は銅線と比較して材料費が高く、原価コストを引き上げる問題がある。しかも、金線は銅線よりも比抵抗が大きいため電流容量が小さく、大電流を扱う半導体素子では金線の使用量が増大し、材料コストが余分に掛かるという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した各事情に鑑みて成されたものであり、本発明の半導体装置では、アイランドと、前記アイランドの周囲に配置された複数のリードと、前記アイランド上に接着材を介して固着された半導体素子と、前記半導体素子の電極パッドと前記リードとを電気的に接続する銅線と、前記アイランド、前記リード、前記銅線及び前記半導体素子とを被覆する樹脂パッケージとを有する半導体装置において、前記アイランドは樹脂パッケージの裏面から露出し、前記露出したアイランドには、前記半導体素子の固着領域の周囲に複数の貫通孔が形成され、前記貫通孔は前記樹脂パッケージを構成する樹脂により充填され、前記リードの一端側は、前記樹脂パッケージの側面から導出し、折り曲げ加工されることを特徴とする。従って、本発明では、銅線を用いることで材料コストが低減される。そして、貫通孔を利用することでアイランドと樹脂パッケージの密着性が向上される。
【0013】
また、本発明の半導体装置の製造方法では、アイランドと、前記アイランドの周囲に配置された複数のリードと、前記アイランドから延在された吊りリードとを有する搭載部が設けられ、前記アイランドには複数の貫通孔が設けられたリードフレームを準備し、前記アイランド上に半導体素子を固着し、前記半導体素子の電極パッドと前記リードとを銅線にて電気的に接続し、前記搭載部を被覆する樹脂パッケージを形成した後、前記リードを曲げ加工しながら前記リードフレームから前記樹脂パッケージを分離する半導体装置の製造方法において、前記貫通孔をワイヤーボンディング装置の載置台に設けられたガス抜き孔上に位置させ、前記搭載部へ供給した不活性ガスを前記貫通孔を介して前記ガス抜き孔から引き抜くことを特徴とする。従って、本発明では、ワイヤーボンディングされた銅線の周囲に不活性ガスが充満され易く、銅線の酸化が防止される。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、銅線を用いてワイヤーボンディングが行われることで、金線が用いられる場合と比較して材料コストが低減される。
【0015】
また、本発明では、アイランドの貫通孔が、樹脂パッケージの一部により埋設され、アイランドと樹脂パッケージとの密着性が向上される。
【0016】
また、本発明では、ワイヤーボンディング領域に供給された不活性ガスをアイランドに形成された貫通孔を介して引き抜く。そして、ワイヤーボンディングされた銅線の周囲に不活性ガスが充満され易くすることで、銅線の酸化が防止される。
【0017】
また、本発明では、クランパーにより複数のリードを個別に固定した状態にてワイヤーボンディング作業を行う。そして、ステッチボンディング時の荷重の逃げを防止し、銅線の切断箇所を安定させる。
【0018】
また、本発明では、アイランドの貫通孔と吊りリードの裏面側まで樹脂を充填することで、アイランドが樹脂パッケージから抜け落ち難い構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置を説明するための(A)断面図、(B)平面図である。
【図2】本発明の実施の形態における半導体装置を説明するための(A)平面図、(B)平面図である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体装置を説明するための(A)断面図、(B)平面図である。
【図4】本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための(A)平面図、(B)平面図である。
【図5】本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための(A)平面図、(B)断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための(A)断面図、(B)断面図、(C)断面図である。
【図7】本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための平面図である。
【図8】本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための(A)断面図、(B)斜視図である。
【図9】従来の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための(A)断面図、(B)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施の形態の半導体装置について説明する。図1(A)は、図1(B)に示す樹脂パッケージのA−A線方向の断面図である。図1(B)は、樹脂パッケージの裏面側からの平面図である。図2(A)は、リードフレームを説明するための平面図である。図2(B)は、図2(A)に示すリードフレームにワイヤーボンディングした状況を示す図である。
【0021】
図1(A)に示す如く、半導体装置1は、例えば、QFP(Quad Flat Package)から成る。樹脂パッケージ2は、概ね、表面、裏面及び4つの側面から成る6面体であり、図示のように樹脂封止金型の離型性からその側面が外側に若干突出している。
【0022】
複数のリード4は、樹脂パッケージ2の4つの側面3から露出し、曲げ加工される。リード4の実装面5は樹脂パッケージ2の裏面6とほぼ同一面に配置される。そして、アイランド7は、樹脂パッケージ2の裏面6から露出し、アイランド7上には、例えば、Agペースト、半田等の接着材8により半導体素子9が固着される。半導体素子9の電極パッドとリード4のインナーリード部分とは本願のテーマである銅線10により電気的に接続される。銅線10は、例えば、径が33〜50μm、99.9〜99.99wt%の銅から成るものが使用される。そして、銅線10は、半導体素子9の電極パッド上にボールボンディングされ、リード4上にステッチボンディングされる。尚、銅線10の径は、使用される用途に応じて任意の設計変更が可能である。
【0023】
図示したように、アイランド7は、半導体素子9のサイズよりも大きく、半導体素子9の固着領域の外周領域に複数の貫通孔11が配置される。詳細は後述するが、貫通孔11は、ダイボンディング時やワイヤーボンディング時に不活性ガス(フォーミングガス)の流通経路として利用される。そして、樹脂モールド時には絶縁性樹脂により埋設される。
【0024】
不活性ガスとして、例えば、窒素(N)ガスが採用され、銅線10のワイヤーボンディング作業に於いて、接続信頼性を向上させるために使用される。つまり、銅線11自体の酸化や銅線11とインナーリードとの接続部の酸化が防止される。図6(A)〜(C)に示すように、不活性ガスは紙面上方から貫通孔11に向かって流れる。そして、その不活性ガスの流れの中には銅線10が配置される。また、キャピラリ40にも不活性ガスが吹き掛けられるため、銅線10の酸化防止が可能となる。
【0025】
更に、二次的な効果であるが、貫通孔11は、アンカー効果を生み、アイランド7が樹脂パッケージ2内へと強固に支持される。樹脂パッケージ2内では、例えば、樹脂パッケージ2や接着材8内に含まれる低分子成分が半導体素子9の駆動熱等により気化し、ガスが発生する。このガスによりアイランド7は樹脂パッケージ2から押し出される方向へと外力を受ける。特に、アイランド7は、100〜250μmとその厚みが薄く、アイランド7と樹脂パッケージ2の密着度も弱く、上記ガスによりアイランド7が樹脂パッケージ2外へと押し出され易い。しかしながら、アイランド7の外周領域に貫通孔11を配置することで、樹脂パッケージ2とアイランド7との密着度が向上し、樹脂パッケージ2からアイランド7が抜け落ち難い構造となる。
【0026】
更に、アイランド7近傍の樹脂パッケージ2や接着材8に発生した上記ガスは、貫通孔11を排出経路とすることで、短い経路で樹脂パッケージ2外部へと排出される。そして、上記ガスが効率的に樹脂パッケージ2外部へと排出され、アイランド7が樹脂パッケージ2外部へと押し出され難くなる。
【0027】
次に、図1(B)に示す如く、貫通孔11は、例えば、アイランド7の1側辺に沿って2つ配置される。そして、貫通孔11の長さは、アイランド7の1側辺の半分程度の長さを有する。詳細は図5(B)を用いて後述するが、リードフレームを載置台上に設置する際に、貫通孔11の開口面積が大きいと、リードフレームが若干ずれた場合でも、貫通孔11下方にはガス抜き孔39が配置され易く、不活性ガスの吸引力を適正に維持できる。そして、貫通孔11が不活性ガスの流路となることで、貫通孔11側面の酸化が防止され、アイランド7と樹脂パッケージ2との密着度が更に向上される。
【0028】
また、図示の如く、吊りリード12は、アイランド7の4つのコーナー部から延在し、樹脂パッケージ2の中側へと折り曲げ加工される。この構造により、吊りリード12の大部分は、樹脂パッケージ2内に配置され、アンカー効果が得られる。
【0029】
また、図示の如く、アイランド7と吊りリード12の一部が、樹脂パッケージ2の裏面から露出することで、半導体素子9から発生する熱が、速やかに樹脂パッケージ2外へと放出される。
【0030】
次に、図2(A)に示す如く、リードフレーム13は、例えば、厚さが約100〜250μmの銅を主材料とするフレームから成る。しかし、リードフレーム13は、Fe―Niを主材料としても良いし、他の金属材料でも良い。そして、リードフレーム13には、一点鎖線で示す搭載部14が複数形成される。
【0031】
この搭載部14は、主に、アイランド7と、アイランド7を支持する吊りリード12と、アイランド7の4側辺の近傍に一端が位置するリード4と、複数のリード4を支持するタイバー15とから構成される。そして、吊りリード12はアイランド7の4つのコーナー部から延在し、タイバー15の交差する支持領域16と連結する。支持領域16はリードフレーム13と一体となり、アイランド7がリードフレーム13に支持される。そして、アイランド7に点線で示す領域が半導体素子9の固着領域であり、本発明のポイントである貫通孔11は、その固着領域を囲むような位置に配置される。
【0032】
次に、図2(B)に示す如く、アイランド7上には半導体素子9が固着され、電極パッド17とリード4とは銅線10により電気的に接続される。しかし、この接続工程に於いて、銅線10、銅線10とリード4や電極パッド17との接続部位等の酸化を防止する必要がある。図5(B)を用いて後述するが、貫通孔11から不活性ガスを引き抜く構造とすることで、不活性ガスは上方からボンディング領域へと流れ、銅線10の配置領域が不活性ガスにより満たされ、その酸化が防止される。その結果、ワイヤーボンディング材料として、不活性で安定した材料である金線に換えて銅線10を用いることが可能となり、大幅なコスト低減が可能となる。
【0033】
また、大電流を扱う半導体素子では、1つの電極パッド17に対して複数本の金線を用いて大電流に対応するが、銅線の場合には、非抵抗が小さく、電流容量が大きいため金線の場合よりも少ない本数で大電流に対応できる。その結果、金線の場合よりも電極パッド17の形成面積を小さくでき、半導体素子の微細化が実現される。
【0034】
尚、本実施の形態では、貫通孔11の形状は、図示した形状に限定するものではない。貫通孔11の形状は、例えば、円形、楕円形または矩形の場合でも良く、貫通孔11は、隣り合うリード4間の離間幅と同等の幅か、またはそれ以上の幅を有するものであれば良い。この構造により、不活性ガスの吸引力も大きくなり、銅線10の酸化が防止される効果が得られる。
【0035】
また、QFP方式のパッケージやQFN(Quad Flat Non−leaded Package)方式のパッケージ等のように、個別モールド型のパッケージに限定するものではない。例えば、MAP(Mold Array Package)方式のように複数の搭載部を一括して樹脂モールドした後、個片化される樹脂パッケージについても、上述した同様な効果が得られる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0036】
次に、他の実施の形態の半導体装置について説明する。図3(A)は、図3(B)に示す樹脂パッケージのB−B線方向の断面図を示す。図3(B)は、樹脂パッケージの表面側から見たリードフレームとヒートシンクを説明する図である。尚、本実施の形態の説明において、適宜、図1及び図2を用いて前述した半導体装置の説明を参照する。
【0037】
図3(A)に示す如く、半導体装置21は、例えば、QFPから成り、その樹脂パッケージ22の裏面24からは、ヒートシンク23裏面の一部が露出する。半導体素子26が、例えば、Agペースト、半田等の接着材25によりヒートシンク23上に固着される。半導体素子26の電極パッドとリード27のインナーリード部分とは本願のテーマである銅線28により電気的に接続される。銅線28の形状、材質は、前述した銅線10と同じである。
【0038】
また、ヒートシンク23には、半導体素子26の固着領域の周囲であり、銅線28の配置領域の下方に貫通孔29が形成される。そして、リード27のインナーリード部分が、ヒートシンク23上に配置され、リード27のインナーリードの先端は、貫通孔29の手前で終端している。図1及び図2で述べたように、貫通孔29がヒートシンク23に配置されることで、ダイボンディング時やワイヤーボンディング時に不活性ガス(フォーミングガス)の流通経路として利用され、銅線28の酸化が防止される。更に、貫通孔29は絶縁性樹脂により埋設されることで、ヒートシンク23と絶縁性樹脂との密着領域が増大し、ヒートシンク23と樹脂パッケージ22との密着度も向上される。
【0039】
次に、図3(B)に示す如く、ヒートシンク23の長辺は、半導体素子26の1辺の長さに対し2〜4倍程度であり、ヒートシンク23の短辺は、半導体素子26の1辺の長さに対し1〜2倍程度である。そして、ヒートシンク23は、樹脂パッケージ22の裏面よりも一回り小さく、逆に言えば、その裏面のほぼ全面に渡り配置される。ヒートシンク23が、樹脂パッケージ22の裏面側から露出することで、放熱性を向上できる。
【0040】
また、図示したように、貫通孔29がワイヤーボンディング領域に形成され、不活性ガスが貫通孔29を介して吸引されることで、不活性ガスがヒートシンク23側へと流れ易くなる。そして、銅線28、銅線28とリード24や電極パッドとの接続部位等が、不活性ガスにより満たされ易くなり、その酸化が防止される。
【0041】
次に、本発明の半導体装置の製造方法について説明する。図4(A)及び(B)は、リードフレームを説明するための平面図である。図5(A)は、クランパーを説明するための平面図である。図5(B)は、ワイヤーボンディング時における不活性ガスの流れを説明するための断面図である。図6(A)〜(C)は、ワイヤーボンディング工程を説明するための断面図である。図7は、樹脂モールド工程を説明するための平面図である。図8は、リードの加工、切断工程を説明するための(A)断面図、(B)斜視図である。尚、以下の説明では、図1及び図2を用いて説明した半導体装置の各構成要素と同じ構成要素には同じ符番を付す。また、本実施の形態の製造方法の説明において、適宜、図1及び図2を用いて説明する。
【0042】
先ず、図4(A)に示す如く、例えば、銅を主材料とするリードフレーム13を準備する。このリードフレーム13には、一点鎖線で示すように、複数の搭載部14が形成される。リードフレーム13の長手方向(紙面X軸方向)は、スリット31により一定間隔に区切られる。そして、スリット31にて区切られたリードフレーム13の1区間には、例えば、リードフレーム13の短手方向(紙面Y軸方向)に2つの搭載部14が配置される。また、リードフレーム13の長手方向には、その上下端部領域にインデックス孔32が一定の間隔で設けられ、各工程での位置決めに用いられる。尚、搭載部14を構成する詳細の構造は、図2(A)にて説明した通りである。
【0043】
また、図5(B)を用いて後述するが、図4(B)の点線にて示す領域が、載置台33のガス抜き孔39の配置領域であり、例えば、1つの貫通孔11に対して1つのガス抜き孔39が配置される。そして、個々の貫通孔11の長さLを大きくすることで、載置台33上にリードフレーム13を配置する際に、リードフレーム13が若干ずれた場合でも、貫通孔11を介して確実に不活性ガスを吸引することが可能となる。尚、本実施の形態では、不活性ガスの流れを載置台33側へと向け、その流れの中に銅線10や銅線10の接続部等を配置し、それらの酸化を防止するものである。そのため、ガス抜き孔39が貫通孔11よりも大きくても良く、例えば、アイランド7とリード4との間のスペースやリード4同士間のスペースを利用して不活性ガスを引き抜く場合でも良い。
【0044】
次に、図2(B)に示す如く、リードフレーム13の搭載部14毎に、アイランド7上に接着材8(図1(A)参照)を用いて半導体素子9を固着する。このとき、加熱機構が組み込まれたダイボンド装置の載置台上にリードフレーム13を配置し、クランパーにてリードフレーム13を載置台上に固定する。そして、リードフレーム13のアイランド7やその作業領域内を、例えば、250〜260℃程度に加熱した状態にして、それぞれアイランド7上に連続して半導体素子9を固着する。詳細は図5(B)にて説明するワイヤーボンディング工程の不活性ガスの流れと同様であるが、リードフレーム13を固定するクランパーからその作業領域内に不活性ガスが供給される。そして、不活性ガスが、アイランド7の貫通孔11を介して載置台側へと引き抜かれることで、リードフレーム13の周囲は不活性ガスにより満たされる。その結果、リードフレーム13は、長時間に渡り高温状態下に配置されるが、その酸化が防止される。
【0045】
次に、ワイヤーボンディング装置の載置台33上にリードフレーム13を配置し、リードフレーム13の搭載部14毎にワイヤーボンディングを行う。
【0046】
先ず、図5(A)に示すクランパー34について説明する。クランパー34は、不活性ガスを送り込むパイプ35と、搭載部14の大きさに合わせて開口された開口領域36とを有する。そして、クランパー34のパイプ35から送風された不活性ガスは、リード固定領域37間から開口領域36へと吹き込む。銅線10の径が45μmの場合には、例えば、1.9リットル/分の窒素ガス(若干の水素ガスが含まれる)が用いられる。そして、銅線10は、高温状態の作業領域内に置かれることで酸化し易い状態となるが、前述の不活性ガスの存在により銅線10の酸化が防止される。
【0047】
更に、開口領域36の周囲のクランパー34には、搭載部14のリード4形状に合わせて複数のリード固定領域37が、櫛歯形状に配置される。そして、複数のリード4は、リード固定領域37により個別に載置台33(図5(B)参照)上に固定され、ステッチボンディングが行われる。このとき、銅線10は金線と比較して硬いが、延性を有する。そのため、確実に銅線10を切断するためにステッチボンディング時の荷重(キャピラリ40(図6(A)参照)から加えられる荷重)が金線よりも大きくなる。そして、複数のリード4は、それぞれの形状に対応したクランパー34のリード固定領域37により個別にしっかりと固定されることで、ステッチボンディング時の荷重の逃げが防止される。そして、銅線10はリード4上に確実に接着した状態にて切断される。
【0048】
次に、図5(B)に示す不活性ガスの流れについて説明する。加熱機構38を有する載置台33には、ガス抜き孔39が形成される。そして、ガス抜き孔39上面にアイランド7の貫通孔11が位置するように、載置台33上にリードフレーム13を配置する。点線の矢印で示すように、不活性ガスは、クランパー34のリード固定領域37間から開口領域36の中央側(搭載部)へと吹き込まれる。つまり、開口領域36では、その全周囲から中央側へと不活性ガスが吹き込まれる。そして、開口領域36上は遮蔽されてなく、開口領域36内が高温状態となることで、不活性ガスは、上昇気流により開口領域36上方へと放出されてしまう。そこで、本実施の形態では、貫通孔11を介して載置台33のガス抜き孔39から不活性ガスを吸引することで、リード4の上から吹き込まれた不活性ガスは、主に、アイランド7の貫通孔11側へと流れる。その結果、不活性ガスの主たる流れは、開口領域36の下方側(載置台33側)へとなり、銅線10の配置領域は不活性ガスにて満たされ易い領域となる。
【0049】
そして、クランパー34の開口領域36内である作業領域は、加熱機構38により、例えば、250〜260℃程度に維持される。ワイヤーボンディングされた銅線10は、半導体素子9の全ての電極パッドに対しワイヤーボンディングが終わるまでは、その高温状態の作業領域内に置かれる。そこで、前述した不活性ガスの流れを起すことで、銅線10の周囲には不活性ガスが充満し易く、効率的に銅線10の酸化が防止される。また、リード4等のリードフレーム13も酸化され易い状況下に置かれるが、不活性ガスが載置台33側へと流れることで、リードフレーム13も効率的に酸化が防止される。
【0050】
尚、不活性ガスは、クランパー34のリード固定領域37間から吹き込まれる場合に限定されるものではなく、例えば、ガスノズルを利用して開口領域36内に吹き込まれる場合でも良い。また、開口領域36内に吹き込まれた全ての不活性ガスが、載置台33のガス抜き孔39から吸引される訳ではなく、不活性ガスの一部は開口領域36上方へと流れる。そして、開口領域36及びその周辺は、不活性ガスにより満たされた領域となる。
【0051】
次に、図6(A)に示す如く、キャピラリ40の中心孔には銅線41が挿通され、キャピラリ40の上方には銅線41を挟持するためのワイヤークランパー42が配置される。そして、予めキャピラリ40の先端からは所望の長さの銅線41が導出し、キャピラリ40近傍に位置するトーチ43から放電され、キャピラリ40の先端にはイニシャルボール44が形成される。ここで、径が45μmの銅線41を用いた場合、イニシャルボール44の形成時には、例えば、125mAの電流が必要となる。そして、同じ径の金線を用いてイニシャルボールを形成する際には、例えば、75mAの電流が必要となる。この電流の相違は、銅線41が金線と比較して熱伝導率が高く、放熱性に優れる材料であり、銅線41は不活性ガスにより冷却され易いからである。尚、図示したように、イニシャルボール44を形成する作業領域には、上記不活性ガスが供給される。そのため、不活性ガス内に含まれる水素による酸化還元作用により、イニシャルボール44の球面形状が安定して形成される。
【0052】
次に、図6(B)に示す如く、キャピラリ40が半導体素子9の電極パッド17上に向けて下降し、イニシャルボール44を電極パッド17上面に押し付ける。そして、超音波振動併用の熱圧着技術により、キャピラリ40の先端に形成されたイニシャルボール44が電極パッド17と接続する。尚、この作業時には、ワイヤークランパー42は開放された状態である。
【0053】
次に、図6(C)に示す如く、ワイヤークランパー42が開放された状態にて、一定のループを描きながらキャピラリ40がリード4上面に移動する。そして、ワイヤークランパー42にて銅線41を挟持した後、キャピラリ40がリード4上に下降し、銅線41をリード4上面に押し付ける。そして、超音波振動併用の熱圧着技術により銅線41がリード4と接続する。その後、キャピラリ40が上昇し、イニシャルボールとなる長さの銅線41をキャピラリ40の先端から導出し、銅線41を切断する。その後、キャピラリ40の先端から導出した銅線41が、前述したようにイニシャルボールへと加工される。
【0054】
その後、半導体素子9の全ての電極パッド17とリード4に対して、図6(A)〜(C)を用いて前述したワイヤーボンディング作業を繰り返す。このとき、リード4は、それぞれ個別にクランパー34のリード固定領域37により載置台33上に固定されることで、銅線41が確実に切断される。これは、リード固定領域37により個別にリード4が固定され、安定したボンディングが可能となるからである。
【0055】
次に、図7(A)に示す如く、リードフレーム13の裏面側には、例えば、PET材から成る耐熱用シート(図示せず)が貼り合わされ、その耐熱用シートと樹脂封止金型(図示せず)が当接するように、リードフレーム13を樹脂封止金型に設置する。そして、個々の樹脂封止金型のキャビティ内に樹脂を充填し、樹脂パッケージ2を形成する。図示したように、リードフレーム13には、搭載部14毎に複数の樹脂パッケージ2が形成される。尚、耐熱用シートを用いることで、アイランド7(図1(A)参照)の裏面側への樹脂の廻り込みを防止し、樹脂パッケージ2の裏面側の平坦性が維持される。
【0056】
最後に、図8(A)に示す如く、リードフレーム13をリード曲げ加工用の台座45、46上に設置する。このとき、樹脂パッケージ2近傍のリード4をリード支持機構47で固定し、リード4の先端側(タイバー15側)を台座46上に設置する。そして、パンチ48にてリード4の先端側を切断しつつ、リード4を曲げ加工する。そして、この工程にてタイバー15(図2(A)参照)や支持領域16(図2(A)参照)も打ち抜かれることで、図8(B)に示すように、リードフレーム13から樹脂パッケージ2が切断される。
【0057】
尚、本実施の形態では、クランパー34の開口領域36内に吹き込まれる不活性ガスの温度に関し特に限定していない。しかし、例えば、クランパー34内に加熱機構を設置する等により、不活性ガスを開口領域内と同等に加熱した後、開口領域36内に吹き込む場合でも良い。この場合には、銅線41が不活性ガスにより冷却され難く、イニシャルボール形成時の電流効率を向上させることができる。
【0058】
また、ワイヤーボンディングの際、クランパー34の開口領域36上方がプレート等の蓋部材によりカバーされない状況にて作業を行う場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、ワイヤーボンディングを行う作業領域のみ開口した蓋部材により開口領域36上方をカバーし、その蓋部材が作業領域に合わせてスライドする場合でもよい。この場合には、開口領域36上方が概ね蓋部材によりカバーされることで、開口領域36内が不活性ガスで充満され易くなる。そして、不活性ガスの供給量も低減され、製造コストを抑制できる効果も得られる。
【0059】
また、ワイヤーボンディングの際、個々のリード4が、個別にクランパー34のリード固定領域37により固定される場合について説明したがこの場合に限定するものではない。例えば、リードの形状やリードの高さ等のリード配置状況に応じて、隣接する複数のリード毎に区分けしてリード固定領域により固定する場合でもよい。この場合には、リード固定領域の数は、リードの総数よりも少なくなるが、不活性ガスの吹き込み方法は、上述したようにリード固定領域間から吹き込む方法と同様である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 半導体装置
2 樹脂パッケージ
4 リード
7 アイランド
11 貫通孔
12 吊りリード
34 クランパー
36 開口領域
37 リード固定領域
39 ガス抜き孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイランドと、前記アイランドの周囲に配置された複数のリードと、前記アイランド上に接着材を介して固着された半導体素子と、前記半導体素子の電極パッドと前記リードとを電気的に接続する銅線と、前記アイランド、前記リード、前記銅線及び前記半導体素子とを被覆する樹脂パッケージとを有する半導体装置において、
前記アイランドは樹脂パッケージの裏面から露出し、前記露出したアイランドには、前記半導体素子の固着領域の周囲に複数の貫通孔が形成され、前記貫通孔は前記樹脂パッケージを構成する樹脂により充填され、
前記リードの一端側は、前記樹脂パッケージの側面から導出し、折り曲げ加工されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記アイランドは、前記リードよりも前記樹脂パッケージの裏面側であり、且つ前記リードの他端よりも前記樹脂パッケージの中央側に位置し、
前記貫通孔の形状は、円形、楕円形または矩形であり、前記貫通孔の幅は、前記隣り合うリード間の離間幅と同等またはそれ以上の幅であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記アイランドから前記樹脂パッケージ表面側へと延在する吊りリードを有し、前記アイランド近傍の前記吊りリードの一部分は前記樹脂パッケージ裏面から露出し、前記吊りリードの他の部分は前記樹脂パッケージ内に配置されることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
アイランドと、前記アイランドの周囲に配置された複数のリードと、前記アイランドから延在された吊りリードとを有する搭載部が設けられ、前記アイランドには複数の貫通孔が設けられたリードフレームを準備し、
前記アイランド上に半導体素子を固着し、前記半導体素子の電極パッドと前記リードとを銅線にて電気的に接続し、前記搭載部を被覆する樹脂パッケージを形成した後、前記リードを曲げ加工しながら前記リードフレームから前記樹脂パッケージを分離する半導体装置の製造方法において、
前記貫通孔をワイヤーボンディング装置の載置台に設けられたガス抜き孔上に位置させ、前記搭載部へ供給した不活性ガスを前記貫通孔を介して前記ガス抜き孔から引き抜くことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記リードに対応したリード固定領域を有するクランパーにより前記リードを個別に固定することで、前記リードフレームを前記載置台上に配置し、
前記クランパーでは、前記リード固定領域間から前記不活性ガスを供給することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂パッケージを形成するときに前記貫通孔内に前記樹脂を充填させ、前記樹脂パッケージと前記貫通孔内の樹脂とを一体に形成することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−238947(P2010−238947A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85848(P2009−85848)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】