説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】基板貫通電極の周囲に形成される絶縁分離部において、埋め込まれる絶縁膜が接合面を有していると、基板裏面の研削後の絶縁分離部は、接合面が基板主面から基板裏面に達することで、機械的強度が低下しやすく、貫通電極に応力を印加した場合に絶縁分離部の内側領域が孤立しやすい。
【解決手段】絶縁分離部5に埋め込まれる絶縁膜を第1の絶縁膜3と第2の絶縁膜4の少なくとも2段の積層構造とすることで、第1の絶縁膜3の接合面3Sと第2の絶縁膜4の接合面4Sとが第2の絶縁膜4の底面の接合面のない領域で分断され、機械的強度が増加し、絶縁分離部の内側領域の孤立を阻止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、詳しくは、半導体基板を貫通する貫通電極を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高機能化、多様化に伴い、複数の半導体チップを縦方向に積層して集積化した半導体装置が提案されている。このような半導体装置では、各半導体チップの半導体基板を貫通する貫通電極(Through Silicon Via:TSVと称す)によって各半導体チップ間の電気的導通を図るように構成されている。
【0003】
一方、TSVは半導体基板を貫通して形成されるために、半導体基板とTSV間の絶縁を図る必要がある。そこで、TSVの周りに環状の絶縁分離部(絶縁リングという)で素子形成領域の半導体層と分離することが提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
絶縁リングを形成するには、半導体基板の主面上に半導体素子を形成する前に、主面側からリング状の溝を形成し絶縁膜を埋め込んで形成する、いわゆる「ビアファースト」方式と、半導体素子を形成した後に絶縁リングを形成する、いわゆる「ビアラスト」方式とがある。
【0005】
「ビアファースト」方式では、予め絶縁層を埋め込むリング状の溝を半導体基板の主面側から、例えば、深さ40〜50μm、幅2〜3μm(アスペクト比13〜25)で形成し、さらにこの溝内をカバレジ良く絶縁膜で埋設する必要がある。
【0006】
特許文献2に開示された絶縁リングの形成方法は以下の通りである。まず、図1に示すように、シリコン基板101をドライエッチングして絶縁リング110の形状に対応する環状の凹部(溝)を形成する。続いて、薄いSiN膜111を成膜してから、凹部内を埋設するようにCVD法によりSiO膜112を成膜する。その後、凹部以外の領域に成膜されたSiO膜112及びSiN膜111を除去することで、絶縁リング110を得る。続く工程では、絶縁リング110の外側の基板上に素子や配線層を形成した後(図2)、基板を薄板化するために機械的研磨により裏面研削する(図3)。ここでは、絶縁リングの底部が露出するまで基板の裏面を研削する。その後、絶縁リング110の内側において、シリコン基板101の裏面から表面に達する貫通電極(TSV)120を形成する(図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−111061号公報
【特許文献2】特開2007−123857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の絶縁リングの形成方法について本発明者が検討したところ、以下のような課題を生じ得ることが分かった。CVD法によって形成する酸化シリコン膜は、溝の形状に対してコンフォーマルに形成される。つまり、溝内の酸化シリコン膜は溝の側壁から成長するように形成され、溝幅のほぼ中央部で互いに接触して接合面(シームともいう)112Sを形成し、埋設が終わる。図3に示すように、裏面研削により半導体基板を薄板化すると、接合面112Sは、基板主面101Aから基板裏面101Bに達している。図5に、埋設後の絶縁リングの概念図を示す。CVD法による堆積法では、成長膜厚は完全に均一ではないため、接合面112Sにボイド(空隙)112Vが残り得る(図5(a)参照)。また、裏面研削後では、絶縁リング内に残された接合面112Sは基板の主面側から裏面まで連続しており、絶縁リングの内側110inと外側110outが分離されやすい構造となる。分離が生じると絶縁リング内の基板は孤立する(図5(b)参照)。分離されやすい状態で、例えばチップ積層工程時などTSVに応力を印加すると、絶縁リングの内側の基板が動き、基板面を覆う配線を備えた層間絶縁膜131、基板裏面を覆う絶縁膜132にストレスを与え、クラック200等の損傷を生じ得る。クラックが素子領域に達した場合、素子を破壊する虞がある(図4参照)。
【0009】
特許文献1に開示された絶縁リングの形成方法もほぼ同様であり、同様の課題を生じ得る。
【0010】
一方、このような接合面を形成せず、ボイドフリーに絶縁膜を凹部に埋め込む方法としてSOD膜などの流動性のある材料を堆積する方法がある。しかしながら、このような方法で形成する絶縁膜は耐薬品性が低く、基板主面上に半導体素子などを形成する際のエッチングに曝されることで大きく後退し、基板表面の平坦性が損なわれる虞がある。また、エッチング耐性を高めるために膜の緻密化(焼き締め)を行うと、SOD膜などは焼き締めによる体積収縮が大きく、その場合にも平坦性が損なわれる。さらには、深さ方向に印加される引張応力によって基板が変形してしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、絶縁リング内に埋め込まれる絶縁膜を少なくとも2段の積層とすることで、上記の課題を解決するものである。
【0012】
すなわち、本発明の一実施形態によれば、
基板の主面に環状の溝を形成する工程と、
前記溝内を含む前記基板の主面に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜のうち前記基板の主面上から前記溝内の一部に至る部分を除去し、他の部分を前記溝内に残す工程と、
前記基板の主面に第2の絶縁膜を形成することで、前記環状の溝を前記第1の絶縁膜および前記第2の絶縁膜の積層で埋設した環状の絶縁分離部を形成する工程と、
前記基板のうち前記環状の絶縁分離部に囲まれた前記半導体基板を貫通する貫通電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法、が提供される。
【0013】
また、本発明の別の実施形態によれば、
半導体基板と、
前記半導体基板を貫通する環状の絶縁分離部と、
前記環状の絶縁分離部に囲まれた領域に前記半導体基板を貫通する貫通電極と
を備えた半導体装置であって、
前記環状の絶縁分離部が、第1の絶縁膜と該第1の絶縁膜上に積層された第2の絶縁膜の少なくとも2段の絶縁膜を有する半導体装置、が提供される。
【発明の効果】
【0014】
溝内に最初に形成した第1の絶縁膜をエッチバックし、再度第2の絶縁膜で埋め直すことで、絶縁リング内の絶縁膜は上下2段構造となる。上下2段の絶縁膜のいずれかが溝幅中央部に堆積時の接合面を有する場合でも、接合面はこの積層部で分断される。これにより、基板と絶縁リング内側とが柱状に分離されることを防止する。換言すれば、絶縁リング内側の基板部分の孤立を防ぐことができる。したがって、例えばチップ積層時などにTSVに応力が加わっても絶縁リング内側の基板部分(TSV形成部)が動くことがなく、層間絶縁膜などにストレスを与える虞がない。即ち、機械的な強度が向上する。結果として、本発明の製造方法によって形成した絶縁リングを備えた半導体装置によれば、製造歩留りを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来例になる絶縁リングを用いた貫通電極を有する半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図2】従来例になる絶縁リングを用いた貫通電極を有する半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図3】従来例になる絶縁リングを用いた貫通電極を有する半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図4】従来例になる絶縁リングを用いた貫通電極を有する半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図5】従来例になる絶縁リングの課題を説明する概念図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す工程断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図を示す。
【図9】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る半導体装置の模式的断面図(a)及び横断面図(b)である。
【図13】本発明の一実施形態に係る絶縁リングの変形例を示す模式的断面図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る絶縁リングの変形例の効果を示す模式的断面図であり、(a)は本発明を適用した2段構造の絶縁リング、(b)は従来例になる1段構造の絶縁リングの焼き締め後の状態を示す。
【図15】本発明の一実施形態に係る絶縁リングの別の変形例を示す模式的断面図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る絶縁リングのさらに別の変形例を示す模式的断面図である。
【図17】本発明の別の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図18】本発明の別の実施形態に係る半導体装置の模式的断面図(a)及び横断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について具体例を挙げて説明するが、本発明はこれらの具体例のみに限定されるものではない。
【0017】
〔実施形態例1〕
まず、図6に示すように、ドライエッチングにより、半導体基板(シリコン基板)1の主面側に深さ50μm、幅2μmの環状(円形リング状)の溝2を形成する。溝2の形成には、シリコン基板上に、マスクとなる窒化シリコン膜(図示せず)を形成し、フォトリソグラフィー技術を用いて上記リング形状の開口部を形成する。続いて、マスク窒化シリコン膜をマスクに、シリコン基板1をエッチングする。シリコン基板1をエッチング後、マスク窒化シリコン膜は除去する。なお、マスク窒化シリコン膜を除去せずに、次の第1の絶縁膜の形成を行っても良い。
【0018】
次に、溝内を含むシリコン基板1の主面上に第1の絶縁膜3を形成する。ここでは、第1の絶縁膜3として、TEOSを原料ガスとして用い、低圧CVD法によって形成したNSG(Non-doped Silicate Grass)膜を形成する。このような堆積法によって形成する第1の絶縁膜3は、堆積開始時の底部を除いて溝幅のほぼ中央部に接合面3Sを形成する。
【0019】
第1の絶縁膜3としては、上記のTEOS−NSG膜などの酸化シリコン膜に限定されず、窒化シリコン膜などの電気的に絶縁性を示すものであれば、いずれも使用することができる。上記の低圧CVD法によるTEOS−NSG膜は原料や製造装置コストが安価であるという利点を有する。
【0020】
続いて、図7に示すように、シリコン基板1上の余剰の第1の絶縁膜3をエッチング法(ドライエッチング又はウエットエッチング)やCMP法等により除去し、さらにエッチング法でリング状溝2の深さの半分程度まで第1の絶縁膜3を除去する。本実施形態例では、異方性のドライエッチングによりエッチバックした状態を示している。第1の絶縁膜3のエッチバック量は、溝深さの半分程度に限定されず、少なくとも半導体基板1の裏面研削後にも第1の絶縁膜が残る程度に溝深さの半分より深くしても、逆に溝深さの半分より浅くしても良い。
【0021】
次に、図8に示すように、第1の絶縁膜3と同様にCVD法により第2の絶縁膜4を堆積する。第2の絶縁膜4も堆積開始時の底部を除いて溝幅のほぼ中央部に接合面4Sを形成するが、第1の絶縁膜3の接合面3Sと接合面4Sとは連続せず、堆積開始時の底部の第2の絶縁膜4により分断される(図8(b)の部分拡大図参照)。このように接合面3Sと4Sとが分断されることで、機械的強度が向上する。第2の絶縁膜4の堆積開始時の底部の厚みは、リング状溝の溝幅の約半分であり、本実施形態例では約1μmの厚みで接合面4Sのない領域が形成される。
【0022】
続いて、シリコン基板1上の余剰の第2の絶縁膜4をエッチング法(ドライエッチング又はウエットエッチング)やCMP法等により除去し、シリコン基板主面1Aを露出させ、絶縁リング内を第1の絶縁膜3と第2の絶縁膜4の積層で埋設する(図9)。
【0023】
その後、リング状溝内に埋設した第1の絶縁膜3及び第2の絶縁膜4の焼き締めを行うため、非酸化性雰囲気(窒素などの不活性ガス雰囲気)中、1000℃、60分間の熱処理を行って絶縁リング5を形成した。焼き締めは900〜1100℃の範囲で行うことができる。処理時間は、処理温度、リング状溝の深さ、幅などにより異なるが、概ね30分以上であれば、十分な焼き締めを行うことができる。処理時間の上限については特に限定はなく、必要以上に焼き締めを行っても絶縁リングの機能上問題は無いが、エネルギーコストが増大することとなるため、通常は、90分以下であることが好ましい。また、焼き締めは第1の絶縁膜3と第2の絶縁膜4でそれぞれ個々に行っても良い。
【0024】
このように、図9までの工程を終了した後、通常の半導体装置の素子形成工程を行う。すなわち、図10に示すように、素子分離領域となるSTI(Shallow Trench Isolation)6の形成、ゲート電極7の形成、拡散層(図示せず)の形成等を行う。
【0025】
さらに、第1層間絶縁膜8を形成し、第1層間絶縁膜8に、後に形成する貫通電極と接続するための接続電極9及び各トランジスタの拡散層に接続するコンタクトプラグ10を形成する。次に、接続電極9と接続する配線11及びコンタクトプラグ10と接続する配線12を含む配線層を形成する。
【0026】
続いて、第2層間絶縁膜13、外部接続用コンタクト14を形成することにより、シリコン基板表面側の製造プロセスが終了する。
【0027】
その後、以下に説明するように、シリコン基板の裏面側の処理に移る。
【0028】
まず、シリコン基板1の裏面研削を行う。この裏面研削は、絶縁リングが露出するまで行う。これにより、図11に示すように、シリコン基板1の裏面1Bまで貫通した絶縁リングが完成する。こうして、絶縁リングで囲まれた貫通電極形成領域が形成される。
【0029】
次に、図12に示すように、シリコン基板(貫通電極形成領域を含む)の裏面1Bを覆う裏面絶縁膜15を形成する。続いて、貫通電極形成領域に、シリコン基板の裏面から裏面絶縁膜15及びシリコン基板1を貫通し、接続電極9の下面を露出する開孔を形成する。次に、開孔を埋め込むように貫通電極16を形成する。
【0030】
貫通電極16は、スパッタ法によりシードとなる銅膜を形成した後、めっき法により銅膜を埋め込んで形成される。
【0031】
例えば、まず、最初に裏面絶縁層15の表面、すなわちシリコン基板の裏面1B側に、めっき用シード膜として、スパッタ法又はMOCVD法によりチタン、及び銅を順次形成する。次に、フォトレジスト層を形成する(図示せず)。このフォトレジスト層に対して公知のリソグラフィー法により開口パターンを形成し、この開口パターンをマスクとして、開口内部に電気めっき法により銅を埋設する。
【0032】
その後、例えば、アセトン等の有機溶剤等を用いてフォトレジスト層を剥離除去し、その後、余剰のめっき用シード膜の銅及びチタンを、硫酸やフッ酸を用いたウェットエッチング工程により除去する。上記工程を経て、図12に示すように、内部貫通電極及び電極パッドを含む貫通電極16を形成することができる。
【0033】
貫通電極16は、銅、アルミニウム、チタン、タングステン等の金属又はその合金、チタンシリサイド、タングステンシリサイド等の金属シリサイド、窒化チタン等の導電無機物、リン等のn型不純物やホウ素等のp型不純物を含有するポリシリコン等の一種若しくは二種以上からなるものである。貫通電極は、チタン、銅等の金属からなるものであることが好ましい。
【0034】
〔変形例〕
次に、第1の実施形態例の変形例について説明する。
上記の説明では、第1の絶縁膜3及び第2の絶縁膜4はいずれも上記したCVD法にて形成して、それぞれに接合面3S及び4Sを有する膜として形成した。しかしながら、本発明はこの構成に限定されず、第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の一方を上記したCVD法などの堆積開始時の底部を除いて前記溝幅の中央部に接合面を形成する第1の堆積法により形成し、他方を接合面を形成しない第2の堆積法で形成しても良い。図13(a)は上記の第1の堆積法で形成した第1の絶縁膜3−1と、第2の堆積法で形成した第2の絶縁膜4−2との積層構造を示している。また、図13(b)は逆に第2の堆積法で形成した第1の絶縁膜3−2と、第1の堆積法で形成した第2の絶縁膜4−1との積層構造を示している。なお、図13において、二点鎖線は研削後の裏面位置を示しており、図15,図16も同様である。第2の堆積法としては、流動性のある絶縁材料を用いて溝内を充填することで接合面のない膜が形成できる。第2の堆積法として前記SOD膜のような塗布絶縁膜を形成する方法、flowable−CVD法などの堆積法が挙げられる。このような接合面を形成しない絶縁膜を形成することで、さらに機械的強度が向上する。
【0035】
また、第2の堆積法で形成される絶縁膜を2段に積層しても良い。第2の堆積法で形成される絶縁膜は堆積後、焼き締めを行うが、本発明では、少なくとも2段に絶縁膜を積層することで、個々に焼き締めを行うことができ、1段の絶縁膜とする場合よりも、深さ方向の収縮量(後退量)が少なくなる。例えば、図14(a)は流動性のある絶縁材料で第1の絶縁膜3を形成し、エッチバック及び焼き締めを行った後、流動性のある絶縁材料で第2の絶縁膜4を形成した後、平坦化及び焼き締めを行った状態を示している。図14(b)は従来例になる方法であり、リング溝内を流動性のある絶縁材料40で充填した後、平坦化及び焼き締めを行った状態を示している。図14(a)に示すように、流動性のある絶縁材料を用いて2段に形成すれば、機械的強度が向上すると同時に、1段で形成する場合(図14(b))と比較して基板表面の平坦性が改善される。なお、図14(a)及び(b)において、R1,R2は焼き締め後の後退量を示す。第1の堆積法で形成される絶縁膜に対しても、焼き締めをそれぞれ個々に実施することで、同様の効果を得ることができる。
【0036】
さらに、本発明では、絶縁リングを第1の絶縁膜と第2の絶縁膜の2段構造とする以外に、さらに多段に積層することができる。例えば、図15(a)は第1の堆積法で形成される絶縁膜(第1の絶縁膜3−1、第2の絶縁膜4−1、第3の絶縁膜20−1)を3段に積層した構造である。この場合、接合面が不連続となる箇所が2カ所に増えることで、さらに機械的強度が増加する。また、図15(b)は、中間部(第2の絶縁膜4−2)にSOD膜のような第2の堆積法で形成した絶縁膜を用い、上下にTEOS−NSG膜などの第1の堆積法で形成される絶縁膜を第1の絶縁膜3−1及び第3の絶縁膜20−1として用いた場合を示している。前記した通り、SOD膜のような流動性のある材料で形成される絶縁膜は耐薬品性が低いことから、このような膜に対して上下に耐薬品性に優れた絶縁膜を形成しておくことで、基板主面側及び研削後の基板裏面側の両方に耐薬品性に優れた絶縁膜が露出する構造となり、好ましい。また、流動性のある材料で形成される絶縁膜は接合面を形成しないことから、機械的強度が増加する。なお、多段に積層する絶縁膜の数は増加するほど工程が煩雑化するため、5段以下であることが好ましく、図示した3段にて十分な効果が得られる。
【0037】
加えて、本発明における絶縁リング内にはこのように積層される絶縁膜以外にリング状溝の側壁に絶縁膜などを形成しておいて、このような側壁絶縁膜を有するリング状溝内に、本発明による積層構造の絶縁膜を形成しても良い。例えば、貫通電極として銅などの金属材料を主体とする導電膜を使用する場合には、銅などの金属が素子形成領域の半導体基板に拡散するのを防止するため、バリア膜を形成することが好ましく、リング状溝の側壁にこのようなバリア膜を形成することができる。このようなバリア膜としては、窒化シリコン膜を挙げることができる。また、SOD膜などにおいて、成膜直後は完全な酸化シリコン膜ではない場合に、これを酸化シリコン膜に変換するための酸化熱処理が必要となる場合がある。その場合にリング状溝内のシリコン基板が不必要に酸化されることを防止する酸化防止膜を形成することができる。酸化防止膜としても窒化シリコン膜を挙げることができる。
【0038】
あるいは、リング状溝内を積極的に熱酸化してリング状溝の内壁に熱酸化膜を形成しておいても良い。シリコン基板の場合、熱酸化シリコン膜が形成されるが、その膜厚の約半分は元のシリコン基板側に形成される。熱酸化シリコン膜は第1の絶縁膜として酸化シリコン膜を用いた場合、第1の絶縁膜のエッチバック時に同様に除去されて第2の絶縁膜の側壁には残らない場合もある。また、リング状溝を形成する際にマスクとして用いたマスク窒化シリコン膜を残したままリング状溝内を熱酸化すると、マスク窒化シリコン膜が酸化防止膜として機能することから基板表面の酸化を防止することができる。さらに、第1の絶縁膜のエッチバック時にもマスク窒化シリコン膜が残存していれば、エッチングマスクとなり、熱酸化シリコン膜の約半分(元のシリコン基板側に形成された部分)はエッチングされずに残すこともできる。また、熱酸化シリコン膜は元のシリコン基板から堆積膨張して成長することから、リング状溝の深さ方向に圧縮応力を与える膜となる。一方、第1及び第2の絶縁膜に焼き締めを実施すると、通常体積収縮が起こることで溝の深さ方向に引張応力を与える膜となる。リング状溝内の大部分が引張応力を与える膜で形成されていると絶縁リング周辺部の半導体基板主面に変形を来す場合があるが、溝内に圧縮応力を与える熱酸化膜を形成しておくと、この引張応力の一部又は全部が熱酸化膜の圧縮応力で相殺され、基板主面側の変形を防止することができる。また、熱酸化膜を形成した後、窒化シリコン膜でバリア膜を形成すると、第1の絶縁膜のエッチバック時にも熱酸化膜はエッチングされない。
【0039】
図16(a)は、リング状溝の内壁に窒化シリコン膜21をバリア膜又は酸化防止膜として形成した例を示している。図16(b)は、リング状溝の内壁に熱酸化シリコン膜22を形成した場合を示している。さらに、図16(c)はリング状溝の内壁に熱酸化シリコン膜22を形成した後、バリア膜となる窒化シリコン膜21を形成した場合を示している。
【0040】
本実施形態例では、図12(b)に示すように、絶縁リング5及び貫通電極16は円状(円筒状及び円柱状)に形成しているが、これに限定されず、矩形状等の他の形状であっても良い。
【0041】
さらに、絶縁リングは、1重のみ形成しているが、2重以上の多重リングとしても良い。例えば、貫通電極側に形成される第1の絶縁リング(絶縁分離部)と第1の絶縁リングの外周に半導体基板のシリコン領域を介して離間された第2の絶縁リング(絶縁分離部)などの構成でも良い。このように、絶縁リングを多重構造とすることで、各絶縁リングの幅を狭くしても絶縁性の確保が可能となる。また、各絶縁リングの幅を狭くすることで、形成する第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の膜厚はそれぞれ小さくなり、製造歩留りが向上するという効果もある。
【0042】
〔実施形態例2〕
以上の実施形態例では、第1の絶縁膜を形成後、エッチバックを行っているが、流動性のある絶縁材料で第1の絶縁膜を形成する場合にエッチバックが不要な場合がある。図17は、流動性のある絶縁材料としてFlowable−CVD法による堆積工程を含む半導体装置の製造法を説明する工程断面図である。
【0043】
まず、図17(a)に示すように、絶縁リングを形成するため、シリコン基板31にリング状の溝32a及び32bを形成する。本実施形態例では、絶縁リングとして第1の絶縁リングと第2の絶縁リングの2重の絶縁リングを形成する場合を示している。このように2重に絶縁リングを形成する場合は、1重の絶縁リングを形成する場合よりも溝幅を狭くするが、溝幅を狭くするとアスペクト比が大きくなる。アスペクト比の大きな溝は垂直形状にエッチングすることが困難となり易く、図示するように溝底側に狭くなったテーパ状に溝が形成される。このように溝の下部の幅がテーパ状に狭くなるとTEOS−NSG膜などのCVD法で形成される膜は、接合面にボイドがさらに挿入されやすくなり、機械的強度が低下しやすい。
【0044】
一方、流動性のある絶縁材料は溝底側の狭くなった部分にもボイドなく埋設することができる。但し、スピンコート法などの方法では滴下位置から外方に遠心力で薄い膜を作る方法であり、リング状溝内には滴下位置に近い側から順次流入していく。このため、溝内の途中までの充填となる塗布量とするとウエハ面内での均一性が保てないことから、通常は溝全てを充填し、基板(ウエハ)上に所定の膜厚となるように形成している。これに対して、Flowable−CVD法による堆積法は、基板上にほぼ均等に堆積する。また、堆積物は流動性を有しており、重力によって溝内に落下流動し、その際、流動物の表面張力によって溝周囲近傍の堆積物も引っ張られて溝内に落下流動する。堆積量を制御することによって、溝内の所定の深さまで溝開口部から後退した状態で堆積物(第1の絶縁膜33)を充填することができる(図17(b))。このような堆積法を利用すると、上記実施形態例で説明した第1の絶縁膜のエッチバックは不要となる。
【0045】
このように第1の絶縁膜33を形成した後、第2の絶縁膜34を実施形態例1で示した第1の堆積法で同様に形成する(図17(c))。溝の下部には接合面のない第1の絶縁膜33で充填され、その上に接合面を有する第2の絶縁膜34を充填しても、裏面研削後に絶縁膜の接合面が基板表面から裏面に連続しない構造にでき、機械的強度が向上する。
【0046】
続いて、図17(d)に示すように、シリコン基板主面側を平坦化することで、第1の絶縁リング35aとその外周に第2の絶縁リング35bの2重の絶縁リングが完成する。その後は、実施形態例1と同様に、基板主面側に素子等の形成、基板裏面の研削、貫通電極16等の形成を行うことで、図18に示す半導体装置が得られる。
【0047】
なお、本実施形態例における第1の絶縁膜の堆積法は、Flowable−CVD法による堆積法に限定されず、同様の効果を奏する方法、例えば、塗布絶縁膜をスプレー法等により基板面に均等に塗布する方法でも実施可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 半導体基板(シリコン基板)
1A 基板主表面
1B 基板裏面
2 リング状溝
3 第1の絶縁膜
3−1 第1の堆積法により形成される第1の絶縁膜
3−2 第2の堆積法により形成される第1の絶縁膜
3S 接合面
4 第2の絶縁膜
4−1 第1の堆積法により形成される第2の絶縁膜
4−2 第2の堆積法により形成される第2の絶縁膜
4S 接合面
5 絶縁リング(絶縁分離部)
6 STI
7 ゲート電極
8 第1層間絶縁膜
9 接続電極
10 コンタクトプラグ
11,12 配線
13 第2層間絶縁膜
14 外部接続用コンタクト
15 裏面絶縁層
16 貫通電極
20 第3の絶縁膜
21 窒化シリコン膜
22 熱酸化シリコン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面に環状の溝を形成する工程と、
前記溝内を含む前記基板の主面に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜のうち前記基板の主面上から前記溝内の一部に至る部分を除去し、他の部分を前記溝内に残す工程と、
前記半導体基板の主面に第2の絶縁膜を形成することで、前記環状の溝を前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜の少なくとも2段の積層で埋設した環状の絶縁分離部を形成する工程と、
前記半導体基板のうち前記環状の絶縁分離部に囲まれた前記半導体基板を貫通する貫通電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の少なくとも一方は、堆積開始時の底部を除いて前記溝幅の中央部に接合面を形成する第1の堆積法で形成される請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の両方が、前記第1の堆積法で形成される請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の一方は前記第1の堆積法で形成され、他方は接合面を形成しない第2の堆積法で形成される請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の堆積法は、CVD法である請求項2乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2の堆積法は、流動性の絶縁材料を堆積する方法である請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記環状の絶縁分離部に積層して形成される絶縁膜のうち、前記半導体基板の主面に露出する絶縁膜が前記第1の堆積法により堆積される絶縁膜である請求項2乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記環状の絶縁分離部を形成する工程の後であって、前記貫通電極を形成する工程の前に、前記半導体基板の裏面を研削して、前記環状の絶縁分離部の底面を露出させる工程を有し、前記貫通電極を形成する工程では、前記環状の絶縁分離部に囲まれた前記半導体基板に裏面から貫通孔を形成し、前記貫通電極を前記貫通孔内に形成する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記貫通電極は銅を含む導電体である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の絶縁膜は、酸化シリコン膜である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の絶縁膜を形成する前に、前記溝内に絶縁材料からなる側壁を形成する工程を有する請求項1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記側壁を形成する絶縁材料は、窒化シリコンを含む請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記側壁を形成する絶縁材料は、前記溝内を酸化して形成される酸化膜を含む請求項11又は12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
半導体基板と、
前記半導体基板を貫通する環状の絶縁分離部と、
前記環状の絶縁分離部に囲まれた領域に前記半導体基板を貫通する貫通電極と
を備えた半導体装置であって、
前記環状の絶縁分離部が、第1の絶縁膜と該第1の絶縁膜上に積層された第2の絶縁膜の少なくとも2段の絶縁膜を有する半導体装置。
【請求項15】
前記第1の絶縁膜と第2の絶縁膜の少なくとも一方が、前記絶縁分離部の幅中央に少なくとも環状の接合面を有し、前記第2の絶縁膜の前記第1の絶縁膜との当接面に前記接合面を有さない領域を少なくとも含む請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第1の絶縁膜が、前記第2の絶縁膜と接する上部から前記半導体基板の裏面まで前記絶縁分離部の幅中央に環状の接合面を有する膜であり、前記第2の絶縁膜は、前記第1の絶縁膜と接する底部において前記接合面のない第1の領域と該第1の領域上に前記絶縁分離部の幅中央に環状の接合面を有する第2の領域とを含む膜である請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第1の絶縁膜と第2の絶縁膜の一方が、前記絶縁分離部の幅中央に環状の接合面を有する膜であり、他方が前記接合面を有さない膜である請求項15に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記貫通電極は、導電材料として銅を含む請求項14乃至17のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記環状の絶縁分離部は、前記第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜と半導体基板との間に窒化シリコンを含む絶縁膜を有する請求項18に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記環状の絶縁分離部は、前記貫通電極側に形成される第1の絶縁分離部と、該絶縁分離部の外周領域に前記半導体基板の半導体領域を介して離間された第2の絶縁分離部との少なくとも2重の環状構造である請求項14乃至19のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項21】
半導体基板の主面に環状の溝を形成する工程と、
前記溝内に溝開口部から所定の深さまで後退した第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記半導体基板の主面に第2の絶縁膜を形成することで、前記環状の溝を前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜の少なくとも2段の積層で埋設した環状の絶縁分離部を形成する工程と、
前記半導体基板のうち前記環状の絶縁分離部に囲まれた前記半導体基板を貫通する貫通電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記第1の絶縁膜を形成する工程は、流動性の絶縁材料を堆積する方法により前記溝内に所定の深さまで堆積する工程である請求項21に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−256785(P2012−256785A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129987(P2011−129987)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】