説明

半導体装置及びアライメントマークの検出方法

【課題】アライメントマークを形成する膜が薄くなると、マーク本体部とマーク周辺部からのアライメント光の反射率の差が小さくなり、十分なコントラストが得られないことが多くなった。
【解決手段】アライメントパターンを形成するマーク本体部と、マーク周辺部のいずれかに、二次元的な形状を有する回折格子を構成する凹凸を設けることにより、回折格子からの回折光と、非回折光とを利用して、光強度コントラストを大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学画像認識用アライメントパターンを有する半導体装置及びアライメントパターンを用いてアライメントマークを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、半導体装置の製造工程においては、例えば、成膜後の膜厚の測定などインラインモニタを行っているが、通常は、自動測定を行うための測定パターンの位置を検出するために、アライメントマークが用いられている。この場合、測定工程の前の製造工程を利用してアライメントマークを形成し、白色光を照射し、アライメントマーク領域とその周辺領域との反射光の強度コントラストを利用してこれを画像化し、パターンマッチング法で位置を割り出すのが一般的である。
【0003】
例えば、STI形成後にSTI溝に埋設された絶縁膜の膜厚を測定する場合、溝形成用マスクとなる窒化シリコン膜パターニング工程でアライメントマークを形成し、窒化シリコン膜の有無による反射光強度コントラストを利用している。しかしながら、半導体装置の微細化が進展するにつれて窒化シリコン膜の膜厚が薄くなり、十分な反射光強度コントラストが得られず、アライメントエラーが頻発する事態を招いている。
【0004】
一方、特許文献1には、反射光強度コントラストを改善できるアライメントマークが開示されている。特許文献1に示されたアライメントマークは、アライメントマーク本体部と、その周辺に設けられた周辺領域とを備え、周辺領域に、アルミニウムからなる拡散反射層が設けられている。ここで、拡散反射層は例えばストライプ状、ドット状、或いは格子状の微細パターンによって構成されている。
【0005】
この構成では、凹凸がなく平滑な表面を備えたマーク本体部はアライメント光をほぼ完全に正反射し、他方、周辺領域に設けられた拡散反射層は拡散反射するため、周辺領域から反射して画像認識装置に到達する反射光の輝度は、マーク本体部からの反射光の輝度に比較して極めて低い。この結果、マーク本体部からの反射光と周辺の微細パターンからの反射光との輝度の差が大きくなり、画像認識装置では、精度の高い安定した検出・認識が行うことができる。
【0006】
【特許文献1】特開2000−182914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示された技術では、表面で乱反射(拡散反射)させるために、実際には、図2に示されているように、ストライプパターンや、矩形ドットパターンを形成した後、その上に成膜をして表面を曲面にすることが必要である。しかし、微細なパターンを有する半導体装置の製造プロセスではリソグラフィの観点から通常、CMP技術で表面を平坦化する場合が多く、適用が困難な場合が多い。
【0008】
一方、STI形成後にSTI溝に埋設された絶縁膜の膜厚を測定するために、溝形成用マスクとなる窒化シリコン膜パターニング工程でアライメントマークを形成する場合、窒化シリコン膜の膜厚が薄くなると、膜厚に比較してアライメント光の波長が長いため、殆どの光が反射してしまう。即ち、半導体装置では微細化が進むにつれて、アライメントマークを形成する膜の厚みが薄くなり、光が膜を容易に通過できるようになった。このため、アライメントマークの境界を示す反射光に十分なコントラストが得られない場合が多くなった。
【0009】
本発明は、アライメントマークを形成する膜の厚みが薄くなっても、十分な光強度コントラストを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、半導体装置において、アライメントマークを形成する部分とその周辺部分とのいずれか一方の部分を周期的に配列された微小パターンに分割し、この微小パターン表面の反射光同士の干渉を利用することにより、半導体装置の製造条件の変化の影響を受けることなく、アライメントマーク検出装置の検出レベルにおいて安定した反射光強度コントラストを得ることができ、高い位置合わせ精度が得られる半導体装置及びアライメントマークの検出方法を提供するものである。
【0011】
具体的には、本発明の第1の態様によれば、半導体基板上に設けられた光学画像認識用のアライメントマークを含むアライメントパターンを有する半導体装置において、前記アライメントパターンは前記アライメントマークを形成するマーク本体部とアライメントマーク周辺のマーク周辺部とを有し、前記マーク本体部、前記マーク周辺部のいずれか一方には回折格子を構成する凹凸が形成され、いずれも反射面は略平面であることを特徴とする半導体装置が得られる。前記回折格子は、二次元的に配列されたパターンを形成していることを特徴としている。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、アライメントマークを形成するマーク本体部と、前記マーク本体部周辺に設けられたマーク周辺部とを有するアライメントパターンを用いたアライメントマークの検出方法において、前記マーク本体部及び前記マーク周辺部のいずれか一方に回折格子を形成しておき、前記回折格子を形成した部分からは反射光のうち0次光を、前記回折格子を形成していない部分からは反射光を検出することによって、前記アライメントマークを検出することを特徴とするアライメントマークの検出方法が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アライメントパターンは、マーク本体部とマーク周辺部のいずれか一方の領域に、選択的エッチングで形成されたそれぞれ平坦な反射面を有する周期的パターンを設けたことでパターン反射面での反射光同士の干渉により、特定方向への反射光の光強度を弱めることで周期的パターンの無い領域の特定方向への反射光の光強度コントラストが得られるので、半導体装置の製造条件に左右されず、高い位置合わせ精度を確保することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1Aは、この発明の実施の形態に係る半導体装置のシャロートレンチアイソレーション形成工程で用いるインラインモニタのアライメントパターンの設置例を示す平面図である。図1Bは図1A矩形枠の拡大図、図1Cは図1BのX−Xの断面模式図をそれぞれ示す。
【0016】
このアライメントパターンは、マーク本体部17、マーク周辺部15よりなり、マーク周辺部15のシリコン窒化膜13は図1Bに示すように周期的に配列された微小な矩形パターンに分割されている。
【0017】
図1Cはシャロートレンチアイソレーション形成工程によって形成されたアライメントパターンの断面を示している。図示されているように、シリコン基板11表面上にシリコン酸化膜12、シリコン窒化膜13を順次被着し、通常のリソグラフー工程によりシリコン窒化膜13の一部を選択的にエッチング除去し、残ったシリコン窒化膜13をマスクに露出した領域のシリコン酸化膜12およびシリコン基板11をエッチングすることでシャロートレンチアイソレーション用トレンチが形成されている。その後、シリコン基板11表面に絶縁膜を成膜し、シャロートレンチアイソレーション用トレンチを埋設した後、CMPを用いてシリコン基板11表面を研磨することで図1Cの構造を得る。この時、シリコン窒化膜13は研磨レートが遅いため研磨ストッパとして働き、結果としてシリコン基板11表面は図1Cに示すように平坦になる。
【0018】
即ち、マーク周辺部15に周期的に配列された微小な矩形パターンは二次元的な回折格子として働く。尚、微小なライン・アンド・スペースパターンを用いても同様な作用効果を得ることができる。
【0019】
このように回折格子を設けた領域では、微小な矩形パターンが周期的に配列されているため、それぞれの矩形パターンのシリコン基板11およびシリコン窒化膜13の平坦な表面でのそれぞれの反射光同士が互いに干渉し、互いに光強度を強め合う反射角と弱め合う反射角があるため、通常の反射角方向に反射する0次光とそれと特定の角度をなす方向に1次光とが発生する。
【0020】
この時、0次光の方向に光検出器を配置し、1次光以上の反射光が光検出器に入射しないよう調整することで、この領域における反射光の光強度を弱めることができる。一方、回折格子の無い領域では上述のような光の干渉は生じない。その結果、微小な矩形パターン配列のある領域と無い領域との反射光強度コントラストは50%程度が期待できる。この時、光の反射面であるシリコン基板11およびシリコン窒化膜13表面は概ね平坦である必要がある。
【0021】
また、一方、回折格子の特性は微小パターンの配列ピッチのみで決定されるため、リソグラフィ工程で用いられるマスクパターンで制御され、アライメントパターンを形成する各種膜厚の影響を小さくすることができ、半導体装置の製造条件の変化の影響を小さく抑えることができる。
【0022】
このように、本発明に係るアライメントパターンを用いることで半導体装置の製造条件の変化があっても、また、アライメントパターンを使用する際にパターン表面が平坦であっても、回折格子のある領域の反射光強度を無い領域の反射光強度に対して確実に安定して弱め、所望の反射光強度コントラストを確保できるため、アライメントマークの画像認識を確実に行うことができる。
【0023】
図1Dは図1Aのアライメントパターンに白色光を垂直に照射し、垂直方向に反射する光の強度を、図1Aを微小領域に分割しその領域ごとに検出された光強度をヒストグラムで表現したものである。横軸は光強度、縦軸は頻度である。光強度の強い明領域と弱い暗領域の2つの分布ピークが観測されその光強度差、すなわちコントラストが得られているのがわかる。各座標の検出された光強度に対し、明暗の判定用の光強度しきい値を与えることでアライメントマークを認識することができる。
【0024】
本実施形態はマーク周辺部15に回折格子を配列した例について説明したが、マーク本体17に回折格子を設けても同様な作用効果を得ることができる。
【0025】
上記実施の形態に係るアライメントパターンにおける回折格子のパターン部分の幅が0.3μm〜1.2μm、スペース部分が0.3μm〜1.2μmの間隔であることが望ましい。
【0026】
(第2の実施形態)
図2は、この発明の第2の実施の形態に係るアライメントパターンを説明するための図である。図2Aは半導体装置のメタル配線形成工程で形成されたアライメントパターンの設置例を示し、図2Bは図2Aの矩形枠内の拡大図、図2Cは図2AのX−X断面の模式図を示す。本実施例はリソグラフィ工程のパターン転写露光時に用いる。アライメントパターンはマーク本体17とマーク周辺部15を有し、マーク周辺部15には微細なピッチで二次元的に配列された微小矩形に分割され、回折格子を形成している。一方、マーク本体部17には回折格子は存在しない。
【0027】
回折格子は図2Cに示すように、シリコン酸化膜21上に順次被着されたタングステン窒化膜22、タングステン膜23、シリコン窒化膜24の積層膜を一般のリソグラフィ工程で選択的エッチングすることで形成されており、回折格子パターン上はシリコン酸化膜25が被着され、回折格子の主たる光反射面であるタングステン膜23の表面やその上層であるシリコン窒化膜24表面とシリコン酸化膜25表面が共に概ね平坦になっているところに特徴があり、タングステン膜23、シリコン窒化膜24およびシリコン酸化膜25表面には凹凸は形成されていない。
【0028】
シリコン酸化膜21上に形成されたタングステン窒化膜22、タングステン膜23、シリコン窒化膜24の積層膜による回折格子パターンはタングステン膜23表面が概ね平坦であって、かつ周期的に配列された微小矩形パターンからなるため、タングステン膜23表面での反射光同士が干渉し、回折格子として機能する。この時、回折格子の特性は周期的に配列された微小矩形パターンの配列ピッチでほぼ決定されるため回折格子を構成するタングステン窒化膜22、タングステン膜23などの膜厚が薄くなってもほとんどアライメントパターンの性能に影響することはない。また、アライメントパターン上に成膜されたシリコン酸化膜25の厚さにも影響されることもなくまた、その表面が平坦である場合に安定して機能するアライメントパターンが得られる。
【0029】
上記実施の形態に係るアライメントパターンにおける回折格子のパターン部分の幅が0.3μm〜1.2μm、スペース部分が0.3μm〜1.2μmであることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、DRAM等の半導体装置のアライメントパターン形成に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】本発明の第1の実施形態に係るアライメントマークの全体構成を示す平面図である。
【図1B】図1Aの一部を拡大して示す平面図である。
【図1C】図1BのX−X線に沿う断面図である。
【図1D】マーク本体部からの反射光と、マーク周辺部からの反射光の輝度との関係を示す図である。
【図2A】本発明の第2の実施形態に係るアライメントマークの全体構成を示す平面図である。
【図2B】図2Aの一部を拡大して示す平面図である。
【図2C】図2AのX−X線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0032】
15 マーク周辺部
17 マーク本体部
11 シリコン基板
12 シリコン酸化膜
13 シリコン窒化膜
21 シリコン酸化膜
22 タングステン窒化膜
23 タングステン膜
24 シリコン窒化膜
25 シリコン酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に設けられた光学画像認識用のアライメントマークを含むアライメントパターンを有する半導体装置において、前記アライメントパターンは前記アライメントマークを形成するマーク本体部とアライメントマーク周辺のマーク周辺部とを有し、前記マーク本体部、前記マーク周辺部のいずれか一方には回折格子を構成する凹凸が形成され、いずれも反射面は略平面であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、前記回折格子は、二次元的に配列されたパターンを形成していることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、前記二次元的に配列されたパターンは、複数の矩形形状領域からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1において、前記回折格子は、ライン・アンド・スペースパターンによって形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記回折格子は前記マーク周辺部に設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項2〜5の何れかにおいて、前記回折格子のパターン部分は、0.3μm〜1.2μmであり、前記回折格子のスペース部分は0.3μm〜1.2μmであることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
アライメントマークを形成するマーク本体部と、前記マーク本体部周辺に設けられたマーク周辺部とを有するアライメントパターンを用いたアライメントマークの検出方法において、前記マーク本体部及び前記マーク周辺部のいずれか一方に回折格子を形成しておき、前記回折格子を形成した部分からは反射光のうち0次光を、前記回折格子を形成していない部分からは反射光を検出することによって、前記アライメントマークを検出することを特徴とするアライメントマークの検出方法。
【請求項8】
請求項7において、矩形形状に分割された前記回折格子を前記マーク本体部に形成し、前記アライメントマークを検出することを特徴とするアライメントパターンの検出方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公開番号】特開2010−153697(P2010−153697A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332172(P2008−332172)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】