半導体装置及び半導体装置の形成方法
【課題】配線層間に絶縁物が堆積しない配線の形成方法を提供する。
【解決手段】半導体装置10は、第1絶縁体層14と、第1絶縁体層14上に間隔を空けて配置された複数の配線層18a、18bと、配線層18a、18bの側面上に形成された水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層19b、19c、19d、19eと、複数の配線層18a、18b上に、配線層間の溝20b上を跨ぐように形成された第2絶縁体層23と、を備えた配線を備える。
【解決手段】半導体装置10は、第1絶縁体層14と、第1絶縁体層14上に間隔を空けて配置された複数の配線層18a、18bと、配線層18a、18bの側面上に形成された水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層19b、19c、19d、19eと、複数の配線層18a、18b上に、配線層間の溝20b上を跨ぐように形成された第2絶縁体層23と、を備えた配線を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の微細化に伴って、配線幅が狭まるのと共に、配線と配線との間隔が狭くなっている。
【0003】
このように配線と配線との間隔が狭くなると、配線間の寄生容量が増大するので、配線を伝わる信号の遅延を招くおそれがある。
【0004】
そこで、配線間の寄生容量を低減するために、配線間に配置される絶縁体として誘電率の低い材料が用いられている。このような誘電率の低い材料は、いわゆるLow−k材料と呼ばれており、例えば比誘電率が2〜3程度のものが使用されている。
【0005】
また、配線間の寄生容量を更に低減するために、配線間に空洞を設けて、実効誘電率を空気の比誘電率である1に近づけることも提案されている。
【0006】
このような場合には、間隔を空けて配置された複数の配線上に、配線間の空洞である溝の上を跨ぐように絶縁体層が形成される。そして、絶縁体層を形成する際には、配線間の溝内に絶縁体が堆積しないように、段差被覆率の小さい条件で成膜される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−107120号公報
【特許文献2】特開2004−63749号公報
【特許文献3】特開平8−97379号公報
【特許文献4】特開平11−297827号公報
【特許文献5】特開2001−28369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、配線間の溝は長さが長いので、溝には絶縁体が堆積する部分が生じ得る。また、複数の配線間の溝それぞれに堆積する絶縁体の量は均等ではない。そのため、複数の配線それぞれに影響を与える寄生容量が一定ではないので、配線ごとの信号の遅延も一定ではなくなる。更に、配線間の溝内に堆積する絶縁体の量は、半導体装置ごとにも一定ではないので、信号の遅延の程度は半導体装置ごとにも異なる。
【0009】
本明細書では、上述した問題を解決するために、配線層間に絶縁物が堆積しない配線を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本明細書では、上述した問題を解決するために、配線層間に絶縁物が堆積しない半導体装置の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に開示する半導体装置の一形態によれば、第1絶縁体層と、上記第1絶縁体層上に間隔を空けて配置された複数の配線層と、上記配線層の側面上に形成された水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層と、複数の上記配線層上に、上記配線層間の上を跨ぐように形成された第2絶縁体層と、を備える。
【0012】
また、本明細書に開示する半導体装置の形成方法の一形態によれば、第1絶縁体層上に、間隔を空けて複数の配線層を形成する工程と、上記配線層の側面上に、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層を形成する工程と、上記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程と、上記水素吸蔵層から水素を放出させながら、複数の上記配線層上に、上記配線層間の上を跨ぐように第2絶縁体層を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
上述した本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の一形態によれば、配線層間に絶縁物が堆積しない。
【0014】
また、上述した本明細書に開示する半導体装置の形成方法の一形態によれば、配線層間に絶縁物が堆積しない。
【0015】
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。
【0016】
前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の一実施形態を示す図である。
【図2】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その1)を示す図である。
【図3】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その2)を示す図である。
【図4】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その3)を示す図である。
【図5】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その4)を示す図である。
【図6】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その5)を示す図である。
【図7】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その6)を示す図である。
【図8】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その7)を示す図である。
【図9】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その8)を示す図である。
【図10】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その9)を示す図である。
【図11】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その10)を示す図である。
【図12】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その11)を示す図である。
【図13】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その12)を示す図である。
【図14】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その13)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本明細書で開示する半導体装置の好ましい実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0019】
図1は、本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の一実施形態を示す図である。
【0020】
半導体装置10は、基板11上に形成されたトランジスタ30と、トランジスタ30の上方に配置される2つの配線層18a、18bとを有する。配線層18a、18bは、トランジスタ30を含む基板11上に配置された回路素子に対して信号の伝達を行う。
【0021】
基板11には素子分離層12によって画成された素子領域が形成されており、トランジスタ30は、この素子領域に配置されている。
【0022】
トランジスタ30は、ゲート絶縁層31と、ゲート絶縁層31上に配置されるゲート電極32と、ゲート電極32の両側に配置される側壁33a、33bと、各側壁33a、33bの外側に配置されるソースドレイン領域34a、34bとを有する。
【0023】
トランジスタ30及び基板11の上には、SiN層13が配置される。また、SiN層13上には、第1絶縁体層14が配置される。
【0024】
第1絶縁体層14上には、2つの配線層18a、18bが間隔を空けて配置される。配線層18a、18bの底部及び側面には第1バリア層17が配置される。配線層18a、18bの上には、第2バリア層22が配置される。また、第1絶縁体層14上には、配線層18a、18bと間隔を空けて、第2絶縁体層21が配置される。第2絶縁体層21と第1絶縁体層14との間には、SiC層16が配置される。
【0025】
配線18aと、トランジスタ30のソースドレイン領域34aとは、コンタクト15を介して電気的に接続する。
【0026】
隣接する2つの配線層18a、18bの間には空洞である溝20bが配置される。
【0027】
また、配線層18aと、隣接する第2絶縁体層21との間には、空洞である溝20aが配置される。同様に、配線層18bと、隣接する第2絶縁体層21との間には、空洞である溝20cが配置される。溝20a、20b、20cと第1絶縁体層14との間には、SiC層16が配置される。
【0028】
配線18a、18b及び溝20a、20b、20c及び第2絶縁体層21上には、第3絶縁体層23が配置される。第3絶縁体層23は、2つの配線層18a、18b上に、配線層間の溝20bの上を跨ぐように形成される。同様に、第3絶縁体層23は、配線層18aと隣接する第2絶縁体層21との間の溝20aの上を跨ぐように形成される。更に、第3絶縁体層23は、配線層18bと隣接する第2絶縁体層21との間の溝20cの上を跨ぐように形成される。
【0029】
第3絶縁体層23上には、図示しない他の配線層が配置されていても良い。
【0030】
空洞である溝20a、20b、20c内には、第3絶縁体層23を形成する絶縁体又は第3絶縁体層23を形成する際に生じる残渣等の物体が堆積していないことが好ましい。
【0031】
また、溝20a、20b、20cは、減圧された状態にあるか、又は、空気、水素、又は窒素等の低誘電率の気体によって満たされていることが好ましい。
【0032】
減圧された状態にあるか又は上述した気体に満たされた溝20a、20b、20cの比誘電率は、1.5以下、特に1.3以下、更には1.1以下であることが、配線18a、18bに対する配線間の寄生容量を低減して、信号の遅延を防止する観点から好ましい。
【0033】
配線層18a、18bの側面上には、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層19b、19c、19d、19eが形成されている。
【0034】
また、配線層18aに隣接する第2絶縁体層21の側面上にも、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層19aが形成されている。同様に、配線層18bに隣接する第2絶縁体層21の側面上にも、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層19fが形成されている。
【0035】
溝20aは、対向する水素吸蔵層19aと水素吸蔵層19bとに挟まれている。同様に、溝20bは、対向する水素吸蔵層19cと水素吸蔵層19dとに挟まれている。溝20cは、対向する水素吸蔵層19eと水素吸蔵層19fとに挟まれている。
【0036】
詳しくは後述するが、第3絶縁体層23を形成する際に、水素吸蔵層19a〜19fが溝20a、20b、20c内に水素を放出することによって、溝20a、20b、20c内に、第3絶縁体層23を形成する絶縁体又は残渣等が堆積することが防止される。
【0037】
水素吸蔵層19a、19bの水素の吸蔵量は、第3絶縁体層23を形成するプロセスガスが溝20aに侵入することを防止する量であることが好ましい。同様に、水素吸蔵層19c、19dの水素の吸蔵量は、第3絶縁体層23を形成するプロセスガスが溝20bに侵入することを防止する量であることが好ましい。水素吸蔵層19e、19fの水素の吸蔵量は、第3絶縁体層23を形成するプロセスガスが溝20cに侵入することを防止する量であることが好ましい。
【0038】
また、水素吸蔵層19a〜19fの水素を放出する温度は、第3絶縁体層23を形成する工程の温度と重なっていることが好ましい。
【0039】
水素吸蔵層19a〜19fを形成する材料としては、上述した観点から適宜選択されることが好ましい。例えば、水素吸蔵層の形成材料としては、AB5,AB2,AB,A2B型の各種の合金を用いることができる。AB5型としては、LaNi5,LaNi4.6Al0.4,MmNi5,MmNi4.5Mn0.5,MmNi4.5Al0.5,MmNi2.5Co2.5,MmNi4.5Cr0.5,Mm0.5Ca0.5Ni5,CaNi5が挙げられる。AB2型としては、TiMn1.5,TiCr1.8,ZrMn2,ZrV2が挙げられる。AB型としては、TiFe,TiFe0.8Mn0.2が挙げられる。A2B型としては、Mg2Niが挙げられる。また、水素吸蔵層の形成材料として、Ti0.435V0.49Fe0.075を用いても良い。
【0040】
上述した形成材料の中では、Mg2Niの水素吸蔵量は3.6質量%と多く、且つ、水素放出開始温度は、0.1MPa下で253℃であり、第3絶縁体層23を形成する工程の温度に近いことから、Mg2Niは、水素吸蔵層の材料として特に好ましい。
【0041】
本実施形態の半導体装置が備える配線の構造は、例えば、配線間隔の狭いビット配線に適用されることが好ましい。
【0042】
次に、上述した配線を備えた半導体装置の製造方法の好ましい一実施形態を、図を参照して以下に説明する。
【0043】
まず、図2に示すように、トランジスタ30と第1絶縁体層14とSiC層16とが形成された基板11が形成される。
【0044】
次に、図3に示すように、SiC層16上に、第2絶縁体層21が形成される。第2絶縁体層21の形成方法としては、例えば、化学気相成長(CVD)法又は物理気相成長(PVD)法を用いることができる。第2絶縁体層21の形成材料としては、例えば、酸化ケイ素を用いることができる。
【0045】
次に、図4に示すように、配線18a、18bが形成される部分の第2絶縁体層21及びSiC層16の部分がエッチングにより取り除かれて、溝40a、40bが形成される。溝40aの底には、第1絶縁体層14及びコンタクト15が露出する。溝40bの底には、第1絶縁体層14が露出する。
【0046】
エッチングとしては、ドライエッチングを用いることが好ましい。本実施形態では、プラズマエッチングを用いた。具体的には、圧力10.7Pa(80mTorr)、RF出力として27MHz:500W/2MHz:500W、プロセスガスとして、Ar:200sccm、O2:5sccm、CF4:60sccm、CHF3:15sccmを用いた。
【0047】
次に、図5に示すように、第2絶縁体層21上及び溝40a、40b内に、第1バリア層17が形成される。第1バリア層17は、配線18a、18bを形成する導電体が拡散することを防止する。第1バリア層17の形成材料としては、例えば、TaNを用いることができる。また、第1バリア層17の形成方法としては、例えば、スパッタリング法を用いることができる。本実施形態では、具体的には、圧力33.3Pa(250mTorr)、スパッタリング直流電力15kW、プロセスガスとして、N2:25sccm、Ar:10sccmを用いた。
【0048】
次に、図6に示すように、第1バリア17層が形成された溝40a、40b内に導電体層41が埋め込まれる。導電体層41の形成方法としては、電解メッキ法を用いることができる。本実施形態では、銅濃度40g/L、硫酸濃度10g/Lの硫酸銅水溶液を用いて、第1バリア層17に6Aの電流を流し、970nmの厚さの銅からなる導電体層41が形成された。
【0049】
次に、図7に示すように、化学機械研磨法を用いて、第2絶縁体層21が露出するまで、余分な導電体層41及び第1バリア層17の部分を研磨して、2つの配線層18a、18bが形成される。このようにして、第2絶縁体層14上に、間隔を空けて2つの配線層18a、18bが形成される。
【0050】
次に、図8に示すように、配線層18a、18b及び第2絶縁体層21上に第2バリア層22が形成される。第2バリア層22の形成方法としては、例えば、化学気相成長法又は物理気相成長法を用いることができる。第2バリア層22の形成材料としては、例えば、SiCを用いることができる。本実施形態では、プラズマCVD法を用いた。具体的には、圧力520Pa(3.9Torr)、RF出力として960W27MHz:1040W/2MHz:、プロセスガスとして、テトラメチルシラン:1300sccm、NH3:4600sccm、N2:3000sccmを用いて、厚さ50nmのSiCからなる第2バリア層が形成された。
【0051】
次に、図9に示すように、溝20a、20b、20cが形成される第2バリア層22の部分がエッチングにより取り除かれる。エッチングとしては、ドライエッチングを用いることが好ましい。本実施形態では、プラズマエッチングを用いた。具体的には、圧力16.0Pa(120mTorr)、RF出力として27MHz:600W、プロセスガスとして、Ar:200sccm、O2:20sccm、CF4:40sccm、CH2F2:12sccmを用いた。
【0052】
次に、図10に示すように、溝20a、20b、20cが形成される第2絶縁体層21の部分がエッチングにより取り除かれて、SiC層16が露出する。エッチングとしては、ドライエッチングを用いることが好ましい。本実施形態では、プラズマエッチングを用いた。具体的には、圧力10.7Pa(80mTorr)、RF出力として27MHz:500W/2MHz:500W、プロセスガスとして、Ar:200sccm、O2:5sccm、CF4:60sccm、CHF3:15sccmを用いた。
【0053】
次に、図11に示すように、水素吸蔵層19が、溝20a、20b、20c内及び第2バリア層22上に形成される。各溝20a、20b、20cの側面上に水素吸蔵層19が均等に形成されるように、等方性を有する方法を用いて、水素吸蔵層19が形成されることが好ましい。
【0054】
水素吸蔵層19の厚さは、溝内に十分な水素を放出して第3絶縁体層23を形成するプロセスガスの溝内への侵入を防止する観点から、5nm以上、特に10nm以上、更には30nm以上であることが好ましい。
【0055】
一方、水素吸蔵層19から放出される水素の量が多いと、第3絶縁体層を形成するプロセスガスが配線層18a、18bの上に拡散することが妨げられて、第3絶縁層を形成することが阻害される。また、水素吸蔵層19の厚さが厚いと、配線間の実効誘電率が増加して配線間の寄生容量が増加する。このような観点から、水素吸蔵層19の厚さは、30nm以下、特に25nm以下、更には20nm以下であることが好ましい。
【0056】
水素吸蔵層19の形成方法としては、各種公知の方法を用いることができる。特に、低温・低損傷で緻密平滑な水素吸蔵層を形成する観点から、ECR(Electron Cyclotron Resonance、電子サイクロトロン共鳴)プラズマスパッタリング法を用いることが好ましい。
【0057】
本実施形態では、ECRプラズマスパッタリング法を用いて、Mg2Niを形成材料として、水素吸蔵層19が形成された。具体的には、Mg2Niをターゲットとして、圧力0.01Pa、イオンビーム加速電圧:1.5kV、イオンビーム電流:9mA、時間:70秒を用いて、厚さ10nmの水素吸蔵層19が形成された。
【0058】
次に、図12に示すように、第2バリア層22及びSiC層16上の水素吸蔵層19の部分がエッチングにより取り除かれて、溝20a、20b、20cの底にSiC層16が露出する。このエッチングにより、配線溝18a、18bの両側面上に、水素吸蔵層19b、19c、19d、19eが形成される。また、配線溝18aに隣接する第2絶縁体層21の側面上に、水素吸蔵層19aが形成される。更に、配線溝18bに隣接する第2絶縁体層21の側面上に、水素吸蔵層19fが形成される。
【0059】
このエッチングでは、配線溝18a、18b及び第2絶縁体層21の側面上の水素吸蔵層が取り除かれないように、異方性の高い方法を用いることが好ましい。また、このエッチングは、水素吸蔵層の水素の吸蔵又は放出する働きを阻害するような化学的な反応の低い方法を用いることが好ましい。
【0060】
本実施形態では、このエッチングとして、スパッタイオンビームエッチング法を用いた。具体的には、圧力:0.03Pa、イオンビーム電圧:500V、イオンビーム電流:35mA、プロセスガスとして、Ar:8sccm、時間:60秒を用いた。
【0061】
次に、図13に示すように、水素吸蔵層19a〜19fに水素を吸蔵させる。水素吸蔵層に水素を吸蔵させるには、低温且つ高圧であることが好ましい。
【0062】
本実施形態では、水素100%の雰囲気において、室温で、水素吸蔵層に水素を吸蔵させることとした。これは、室温が、温調装置による温度制御が不要であって、工程で得られる低い温度であるためである。
【0063】
また、水素の吸蔵時に大気圧よりも高圧にしても、その後、第3絶縁体層を形成する間に圧力が下がると、高圧にしたことによって吸蔵した水素の部分は放出されてしまうので、大気圧で水素を吸蔵させることとした。
【0064】
水素を水素吸蔵層に吸蔵させる時間は、水素吸蔵層に十分に水素を吸蔵させる観点から、120秒以上であることが好ましい。一方、半導体装置の製造におけるタクトタイムを低減する観点から、水素を吸蔵させる時間は、300秒以下であることが好ましい。
【0065】
次に、図14に示すように、水素吸蔵層19a〜19fから水素を放出させながら、2つの配線層18a、18b上に、配線層間の溝20b上を跨ぐように第3絶縁体層23が形成される。
【0066】
配線層18a、18b上には、第3絶縁体層23を形成するプロセスガス42が拡散して吸着する。一方、溝20bでは、対向する一対の水素吸蔵層19c、19dから水素が放出される。従って、溝20b内は、放出された水素により圧力が高まるので、プロセスガス42が、溝20b内に侵入することが防止される。溝20a、20cにおいても、同様に、水素吸蔵層からの水素の放出によりプロセスガス42の侵入が防止される。
【0067】
また、本実施形態では、第3絶縁体層23を形成する工程を、大気圧で行うこととした。大気圧である溝20a、20b、20c内に水素吸蔵層から水素が放出されれば、溝20a、20b、20c内の圧力は、速やかに大気圧よりも高くなる。一方、配線層18a、18b上に拡散してくるプロセスガス42は、大気圧の圧力下にあるので、プロセスガス42が溝20a、20b、20c内へ拡散することが確実に防止される。
【0068】
プロセスガス42を配線層18a、18b上に導入するタイミングは、水素吸蔵層から水素を放出させることと同時か、又は、水素吸蔵層から水素を放出させることよりも後にすることが好ましい。このようにプロセスガス42の導入のタイミングをとることにより、プロセスガス42が溝20a、20b、20c内へ拡散することが、一層確実に防止される。
【0069】
第3絶縁体層23を形成する工程の温度(以下、第1温度ともいう)は、水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程の温度(以下、第2温度ともいう)よりも高い温度で行われることが好ましい。そして、第2温度から第1温度に昇温する際には、第3絶縁体層23を形成するプロセスガス42を配線層18a、18b上に導入しながら昇温することが好ましい。本実施形態では、第2温度は室温であり、第1温度は、後述するように250〜400℃とした。
【0070】
水素吸蔵層19a〜19fは、水素の放出開始温度にもよるが、第2温度から第1温度に昇温されるのと共に、水素の放出を開始又は増加する。また、第3絶縁体層23の形成は、プロセスガス42が導入されていれば、第1温度よりも低い温度から開始される場合がある。そこで、本実施形態では、水素吸蔵層から放出される水素を有効に利用する観点から、第2温度から第1温度に昇温する際には、第3絶縁体層23を形成するプロセスガス42を配線層18a、18b上に導入しながら昇温することとした。このようにして、水素吸蔵層からの水素の放出時間と、第3絶縁体層23の形成時間とが、出来るだけ重なるようにした。
【0071】
水素吸蔵層の水素の放出量は、高温且つ低圧である程多くなる。そこで、プロセスガス42が溝20a、20b、20c内へ拡散すること防止する観点から、第3絶縁体層23を形成する工程の温度及び圧力は、第3絶縁体層23の形成する製造条件の範囲内で、水素吸蔵層からの水素の放出量が多くなるように、高温且つ低圧であることが好ましい。
【0072】
また、溝20a、20b、20c内の水素吸蔵層19a〜19f上には、第3絶縁体層23を形成する絶縁体が堆積しないような第3絶縁体層23の成膜条件を用いることが好ましい。
【0073】
具体的には、第3絶縁体層23を形成する工程では、水素吸蔵層上(溝20a、20b、20cの内壁)に形成される第3絶縁体層の厚さaと、配線層18a、18b上に形成される第3絶縁体層23の厚さbとの比a/bが、0.1以下、特に0.05以下となるように、第3絶縁体層23が形成されることが好ましい。ここで、水素吸蔵層上に形成される第3絶縁体層は、第3絶縁体層23を形成する絶縁体又は第3絶縁体層23を形成する際に生じる他の反応生成物を含む意味である。このように、比a/bを小さくする第3絶縁体層23を形成するための、プロセスガスの種類、流量、温度条件等としては、各種の公知の方法を用いることができる。
【0074】
本実施形態では、第3絶縁体層23を形成する製造条件として、CVD法を用いた。具体的には、圧力:0.1MPa、基板温度:250〜400℃(平均325℃)、プロセスガスとして、O3:6sccm、テトラエトキシシラン:6sccm、N2:500sccm、時間:138秒を用いて、厚さ300nmの酸化ケイ素からなる第3絶縁体層23が形成された。
【0075】
上述したように、本実施形態では、水素吸蔵層の形成材料としてMg2Niを用いた。Mg2Niの水素放出の開始温度は、0.1MPa下で253℃であり、水素を放出する温度と、第3絶縁体層23を形成する工程の温度とが重なっている。
【0076】
水素吸蔵層から放出される水素は還元作用を有する。従って、上述したテトラエトキシシランが酸化して酸化ケイ素が合成される酸化反応を抑制する働きも有するので、溝20a、20b、20c内で酸化物が形成することが一層防止される。
【0077】
このようにして、配線層18a、18b上に、配線層間の上を跨ぐように、第3絶縁体層23が形成されて、図1に示す半導体装置が得られる。また、第3絶縁体層23は、配線18aと、隣接する第2絶縁体層21との間の溝20aの上を跨ぐように形成される。また、第3絶縁体層23は、配線18bと、隣接する第2絶縁体層21との間の溝20cの上を跨ぐように形成される。
【0078】
溝20a、20b、20cの内部は、その後の工程にもよるが、減圧された状態にあるか、又は、空気、水素、又は窒素等の低誘電率の気体によって満たされることが好ましい。真空、空気、水素、又は窒素の比誘電率は、略1であるので、配線間の寄生容量は小さいものになる。
【0079】
上述した本実施形態の配線の形成方法によれば、配線間の溝に絶縁物又は他の反応生成物が堆積することが防止される。
【0080】
また、上述した本実施形態の配線を備えた半導体装置によれば、配線間の溝に絶縁物又は他の反応生成物が堆積することが防止される。従って、配線間の寄生容量が低いので、配線を伝わる信号の遅延が防止される。また、配線間の溝に絶縁物又は他の反応生成物が堆積することが防止されるので、複数の配線それぞれに対する配線間の寄生容量が均一になるため、各配線の信号の遅延が等しくなるため、信号の伝送特性が向上する。
【0081】
更に、水素吸蔵層による溝内への水素の放出により、第3絶縁層23が溝20a、20b、20c内に垂れ下がることが防止されるので、第3絶縁層23の平坦度が向上する。
【0082】
本発明では、上述した実施形態の配線及び配線の形成方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、一の実施形態が有する構成要件は、他の実施形態にも適宜適用することができる。
【0083】
例えば、上述した実施形態では、半導体装置は、2つの配線層を有していたが、配線層の数は、適宜設定され得る。
【0084】
また、上述した半導体装置の製造方法は一例であり、例えば、他の製造条件を用いても良い。
【0085】
ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、読者が、発明者によって寄与された発明及び概念を技術を深めて理解することを助けるための教育的な目的を意図する。ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、そのような具体的に述べられた例及び条件に限定されることなく解釈されるべきである。また、明細書のそのような例示の機構は、本発明の優越性及び劣等性を示すこととは関係しない。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、その様々な変更、置き換え又は修正が本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り行われ得ることが理解されるべきである。
【0086】
以上の上述した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0087】
(付記1)
第1絶縁体層と、
前記第1絶縁体層上に間隔を空けて配置された複数の配線層と、
前記配線層の側面上に形成された水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層と、
複数の前記配線層上に、前記配線層間の上を跨ぐように形成された第2絶縁体層と、
を備えた半導体装置。
【0088】
(付記2)
隣接する前記配線層間には空洞が配置される付記1に記載の半導体装置。
【0089】
(付記3)
前記水素吸蔵層は、Mg2Niを含む付記1又は2に記載の半導体装置。
【0090】
(付記4)
前記水素吸蔵層)の厚さは、5〜30nmの範囲にある付記1〜3の何れか一項に記載の半導体装置。
【0091】
(付記5)
第1絶縁体層上に、間隔を空けて複数の配線層を形成する工程と、
前記配線層の側面上に、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層を形成する工程と、
前記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程と、
前記水素吸蔵層から水素を放出させながら、複数の前記配線層上に、前記配線層間の上を跨ぐように第2絶縁体層を形成する工程と、
を有する半導体装置の形成方法。
【0092】
(付記6)
前記第2絶縁体層を形成する工程では、
前記水素吸蔵層から水素を放出させることと同時か、又は、前記水素吸蔵層から水素を放出させることよりも後に、前記第2絶縁体層を形成するプロセスガスを前記配線層に導入する付記5に記載の半導体装置の形成方法。
【0093】
(付記7)
前記第2絶縁体層を形成する工程は、第1温度で行われ、
前記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程は、前記第1温度よりも低い第2温度で行われ、
前記第2温度から前記第1温度に昇温する際には、前記第2絶縁体層を形成するプロセスガスを前記配線層上に導入しながら昇温する付記5又は6に記載の半導体装置の形成方法。
【0094】
(付記8)
前記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程は、室温で行う付記5〜7の何れか一項に記載の半導体装置の形成方法。
【0095】
(付記9)
前記第2絶縁体層を形成する工程は、大気圧で行う付記5〜8の何れか一項に記載の半導体装置の形成方法。
【0096】
(付記10)
前記第2絶縁体層を形成する工程では、前記水素吸蔵層上に形成される前記第2絶縁体層の厚さaと、前記配線層上に形成される前記第2絶縁体層の厚さbとの比a/bが、0.05以下となるように、前記第2絶縁体層を形成する付記5〜9の何れか一項に記載の半導体装置の形成方法。
【符号の説明】
【0097】
10 半導体装置
11 基板
12 素子分離層
13 SiN層
14 第1絶縁体層
15 コンタクト
16 SiC層
17 第1バリア層
18a、18b 配線層
19a、19b、19c、19d、19e、19f 水素吸蔵層
20a、20b、20c 溝
21 第2絶縁体層
22 第2バリア層
23 第3絶縁体層
30 トランジスタ
31 ゲート絶縁層
32 ゲート電極
33a、33b 側壁
34a、34b ソースドレイン領域
40a、40b 溝
41 導電体層
42 プロセスガス
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の微細化に伴って、配線幅が狭まるのと共に、配線と配線との間隔が狭くなっている。
【0003】
このように配線と配線との間隔が狭くなると、配線間の寄生容量が増大するので、配線を伝わる信号の遅延を招くおそれがある。
【0004】
そこで、配線間の寄生容量を低減するために、配線間に配置される絶縁体として誘電率の低い材料が用いられている。このような誘電率の低い材料は、いわゆるLow−k材料と呼ばれており、例えば比誘電率が2〜3程度のものが使用されている。
【0005】
また、配線間の寄生容量を更に低減するために、配線間に空洞を設けて、実効誘電率を空気の比誘電率である1に近づけることも提案されている。
【0006】
このような場合には、間隔を空けて配置された複数の配線上に、配線間の空洞である溝の上を跨ぐように絶縁体層が形成される。そして、絶縁体層を形成する際には、配線間の溝内に絶縁体が堆積しないように、段差被覆率の小さい条件で成膜される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−107120号公報
【特許文献2】特開2004−63749号公報
【特許文献3】特開平8−97379号公報
【特許文献4】特開平11−297827号公報
【特許文献5】特開2001−28369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、配線間の溝は長さが長いので、溝には絶縁体が堆積する部分が生じ得る。また、複数の配線間の溝それぞれに堆積する絶縁体の量は均等ではない。そのため、複数の配線それぞれに影響を与える寄生容量が一定ではないので、配線ごとの信号の遅延も一定ではなくなる。更に、配線間の溝内に堆積する絶縁体の量は、半導体装置ごとにも一定ではないので、信号の遅延の程度は半導体装置ごとにも異なる。
【0009】
本明細書では、上述した問題を解決するために、配線層間に絶縁物が堆積しない配線を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本明細書では、上述した問題を解決するために、配線層間に絶縁物が堆積しない半導体装置の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に開示する半導体装置の一形態によれば、第1絶縁体層と、上記第1絶縁体層上に間隔を空けて配置された複数の配線層と、上記配線層の側面上に形成された水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層と、複数の上記配線層上に、上記配線層間の上を跨ぐように形成された第2絶縁体層と、を備える。
【0012】
また、本明細書に開示する半導体装置の形成方法の一形態によれば、第1絶縁体層上に、間隔を空けて複数の配線層を形成する工程と、上記配線層の側面上に、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層を形成する工程と、上記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程と、上記水素吸蔵層から水素を放出させながら、複数の上記配線層上に、上記配線層間の上を跨ぐように第2絶縁体層を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
上述した本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の一形態によれば、配線層間に絶縁物が堆積しない。
【0014】
また、上述した本明細書に開示する半導体装置の形成方法の一形態によれば、配線層間に絶縁物が堆積しない。
【0015】
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。
【0016】
前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の一実施形態を示す図である。
【図2】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その1)を示す図である。
【図3】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その2)を示す図である。
【図4】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その3)を示す図である。
【図5】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その4)を示す図である。
【図6】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その5)を示す図である。
【図7】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その6)を示す図である。
【図8】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その7)を示す図である。
【図9】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その8)を示す図である。
【図10】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その9)を示す図である。
【図11】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その10)を示す図である。
【図12】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その11)を示す図である。
【図13】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その12)を示す図である。
【図14】本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の製造方法の一実施形態の工程(その13)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本明細書で開示する半導体装置の好ましい実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0019】
図1は、本明細書に開示する配線を備えた半導体装置の一実施形態を示す図である。
【0020】
半導体装置10は、基板11上に形成されたトランジスタ30と、トランジスタ30の上方に配置される2つの配線層18a、18bとを有する。配線層18a、18bは、トランジスタ30を含む基板11上に配置された回路素子に対して信号の伝達を行う。
【0021】
基板11には素子分離層12によって画成された素子領域が形成されており、トランジスタ30は、この素子領域に配置されている。
【0022】
トランジスタ30は、ゲート絶縁層31と、ゲート絶縁層31上に配置されるゲート電極32と、ゲート電極32の両側に配置される側壁33a、33bと、各側壁33a、33bの外側に配置されるソースドレイン領域34a、34bとを有する。
【0023】
トランジスタ30及び基板11の上には、SiN層13が配置される。また、SiN層13上には、第1絶縁体層14が配置される。
【0024】
第1絶縁体層14上には、2つの配線層18a、18bが間隔を空けて配置される。配線層18a、18bの底部及び側面には第1バリア層17が配置される。配線層18a、18bの上には、第2バリア層22が配置される。また、第1絶縁体層14上には、配線層18a、18bと間隔を空けて、第2絶縁体層21が配置される。第2絶縁体層21と第1絶縁体層14との間には、SiC層16が配置される。
【0025】
配線18aと、トランジスタ30のソースドレイン領域34aとは、コンタクト15を介して電気的に接続する。
【0026】
隣接する2つの配線層18a、18bの間には空洞である溝20bが配置される。
【0027】
また、配線層18aと、隣接する第2絶縁体層21との間には、空洞である溝20aが配置される。同様に、配線層18bと、隣接する第2絶縁体層21との間には、空洞である溝20cが配置される。溝20a、20b、20cと第1絶縁体層14との間には、SiC層16が配置される。
【0028】
配線18a、18b及び溝20a、20b、20c及び第2絶縁体層21上には、第3絶縁体層23が配置される。第3絶縁体層23は、2つの配線層18a、18b上に、配線層間の溝20bの上を跨ぐように形成される。同様に、第3絶縁体層23は、配線層18aと隣接する第2絶縁体層21との間の溝20aの上を跨ぐように形成される。更に、第3絶縁体層23は、配線層18bと隣接する第2絶縁体層21との間の溝20cの上を跨ぐように形成される。
【0029】
第3絶縁体層23上には、図示しない他の配線層が配置されていても良い。
【0030】
空洞である溝20a、20b、20c内には、第3絶縁体層23を形成する絶縁体又は第3絶縁体層23を形成する際に生じる残渣等の物体が堆積していないことが好ましい。
【0031】
また、溝20a、20b、20cは、減圧された状態にあるか、又は、空気、水素、又は窒素等の低誘電率の気体によって満たされていることが好ましい。
【0032】
減圧された状態にあるか又は上述した気体に満たされた溝20a、20b、20cの比誘電率は、1.5以下、特に1.3以下、更には1.1以下であることが、配線18a、18bに対する配線間の寄生容量を低減して、信号の遅延を防止する観点から好ましい。
【0033】
配線層18a、18bの側面上には、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層19b、19c、19d、19eが形成されている。
【0034】
また、配線層18aに隣接する第2絶縁体層21の側面上にも、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層19aが形成されている。同様に、配線層18bに隣接する第2絶縁体層21の側面上にも、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層19fが形成されている。
【0035】
溝20aは、対向する水素吸蔵層19aと水素吸蔵層19bとに挟まれている。同様に、溝20bは、対向する水素吸蔵層19cと水素吸蔵層19dとに挟まれている。溝20cは、対向する水素吸蔵層19eと水素吸蔵層19fとに挟まれている。
【0036】
詳しくは後述するが、第3絶縁体層23を形成する際に、水素吸蔵層19a〜19fが溝20a、20b、20c内に水素を放出することによって、溝20a、20b、20c内に、第3絶縁体層23を形成する絶縁体又は残渣等が堆積することが防止される。
【0037】
水素吸蔵層19a、19bの水素の吸蔵量は、第3絶縁体層23を形成するプロセスガスが溝20aに侵入することを防止する量であることが好ましい。同様に、水素吸蔵層19c、19dの水素の吸蔵量は、第3絶縁体層23を形成するプロセスガスが溝20bに侵入することを防止する量であることが好ましい。水素吸蔵層19e、19fの水素の吸蔵量は、第3絶縁体層23を形成するプロセスガスが溝20cに侵入することを防止する量であることが好ましい。
【0038】
また、水素吸蔵層19a〜19fの水素を放出する温度は、第3絶縁体層23を形成する工程の温度と重なっていることが好ましい。
【0039】
水素吸蔵層19a〜19fを形成する材料としては、上述した観点から適宜選択されることが好ましい。例えば、水素吸蔵層の形成材料としては、AB5,AB2,AB,A2B型の各種の合金を用いることができる。AB5型としては、LaNi5,LaNi4.6Al0.4,MmNi5,MmNi4.5Mn0.5,MmNi4.5Al0.5,MmNi2.5Co2.5,MmNi4.5Cr0.5,Mm0.5Ca0.5Ni5,CaNi5が挙げられる。AB2型としては、TiMn1.5,TiCr1.8,ZrMn2,ZrV2が挙げられる。AB型としては、TiFe,TiFe0.8Mn0.2が挙げられる。A2B型としては、Mg2Niが挙げられる。また、水素吸蔵層の形成材料として、Ti0.435V0.49Fe0.075を用いても良い。
【0040】
上述した形成材料の中では、Mg2Niの水素吸蔵量は3.6質量%と多く、且つ、水素放出開始温度は、0.1MPa下で253℃であり、第3絶縁体層23を形成する工程の温度に近いことから、Mg2Niは、水素吸蔵層の材料として特に好ましい。
【0041】
本実施形態の半導体装置が備える配線の構造は、例えば、配線間隔の狭いビット配線に適用されることが好ましい。
【0042】
次に、上述した配線を備えた半導体装置の製造方法の好ましい一実施形態を、図を参照して以下に説明する。
【0043】
まず、図2に示すように、トランジスタ30と第1絶縁体層14とSiC層16とが形成された基板11が形成される。
【0044】
次に、図3に示すように、SiC層16上に、第2絶縁体層21が形成される。第2絶縁体層21の形成方法としては、例えば、化学気相成長(CVD)法又は物理気相成長(PVD)法を用いることができる。第2絶縁体層21の形成材料としては、例えば、酸化ケイ素を用いることができる。
【0045】
次に、図4に示すように、配線18a、18bが形成される部分の第2絶縁体層21及びSiC層16の部分がエッチングにより取り除かれて、溝40a、40bが形成される。溝40aの底には、第1絶縁体層14及びコンタクト15が露出する。溝40bの底には、第1絶縁体層14が露出する。
【0046】
エッチングとしては、ドライエッチングを用いることが好ましい。本実施形態では、プラズマエッチングを用いた。具体的には、圧力10.7Pa(80mTorr)、RF出力として27MHz:500W/2MHz:500W、プロセスガスとして、Ar:200sccm、O2:5sccm、CF4:60sccm、CHF3:15sccmを用いた。
【0047】
次に、図5に示すように、第2絶縁体層21上及び溝40a、40b内に、第1バリア層17が形成される。第1バリア層17は、配線18a、18bを形成する導電体が拡散することを防止する。第1バリア層17の形成材料としては、例えば、TaNを用いることができる。また、第1バリア層17の形成方法としては、例えば、スパッタリング法を用いることができる。本実施形態では、具体的には、圧力33.3Pa(250mTorr)、スパッタリング直流電力15kW、プロセスガスとして、N2:25sccm、Ar:10sccmを用いた。
【0048】
次に、図6に示すように、第1バリア17層が形成された溝40a、40b内に導電体層41が埋め込まれる。導電体層41の形成方法としては、電解メッキ法を用いることができる。本実施形態では、銅濃度40g/L、硫酸濃度10g/Lの硫酸銅水溶液を用いて、第1バリア層17に6Aの電流を流し、970nmの厚さの銅からなる導電体層41が形成された。
【0049】
次に、図7に示すように、化学機械研磨法を用いて、第2絶縁体層21が露出するまで、余分な導電体層41及び第1バリア層17の部分を研磨して、2つの配線層18a、18bが形成される。このようにして、第2絶縁体層14上に、間隔を空けて2つの配線層18a、18bが形成される。
【0050】
次に、図8に示すように、配線層18a、18b及び第2絶縁体層21上に第2バリア層22が形成される。第2バリア層22の形成方法としては、例えば、化学気相成長法又は物理気相成長法を用いることができる。第2バリア層22の形成材料としては、例えば、SiCを用いることができる。本実施形態では、プラズマCVD法を用いた。具体的には、圧力520Pa(3.9Torr)、RF出力として960W27MHz:1040W/2MHz:、プロセスガスとして、テトラメチルシラン:1300sccm、NH3:4600sccm、N2:3000sccmを用いて、厚さ50nmのSiCからなる第2バリア層が形成された。
【0051】
次に、図9に示すように、溝20a、20b、20cが形成される第2バリア層22の部分がエッチングにより取り除かれる。エッチングとしては、ドライエッチングを用いることが好ましい。本実施形態では、プラズマエッチングを用いた。具体的には、圧力16.0Pa(120mTorr)、RF出力として27MHz:600W、プロセスガスとして、Ar:200sccm、O2:20sccm、CF4:40sccm、CH2F2:12sccmを用いた。
【0052】
次に、図10に示すように、溝20a、20b、20cが形成される第2絶縁体層21の部分がエッチングにより取り除かれて、SiC層16が露出する。エッチングとしては、ドライエッチングを用いることが好ましい。本実施形態では、プラズマエッチングを用いた。具体的には、圧力10.7Pa(80mTorr)、RF出力として27MHz:500W/2MHz:500W、プロセスガスとして、Ar:200sccm、O2:5sccm、CF4:60sccm、CHF3:15sccmを用いた。
【0053】
次に、図11に示すように、水素吸蔵層19が、溝20a、20b、20c内及び第2バリア層22上に形成される。各溝20a、20b、20cの側面上に水素吸蔵層19が均等に形成されるように、等方性を有する方法を用いて、水素吸蔵層19が形成されることが好ましい。
【0054】
水素吸蔵層19の厚さは、溝内に十分な水素を放出して第3絶縁体層23を形成するプロセスガスの溝内への侵入を防止する観点から、5nm以上、特に10nm以上、更には30nm以上であることが好ましい。
【0055】
一方、水素吸蔵層19から放出される水素の量が多いと、第3絶縁体層を形成するプロセスガスが配線層18a、18bの上に拡散することが妨げられて、第3絶縁層を形成することが阻害される。また、水素吸蔵層19の厚さが厚いと、配線間の実効誘電率が増加して配線間の寄生容量が増加する。このような観点から、水素吸蔵層19の厚さは、30nm以下、特に25nm以下、更には20nm以下であることが好ましい。
【0056】
水素吸蔵層19の形成方法としては、各種公知の方法を用いることができる。特に、低温・低損傷で緻密平滑な水素吸蔵層を形成する観点から、ECR(Electron Cyclotron Resonance、電子サイクロトロン共鳴)プラズマスパッタリング法を用いることが好ましい。
【0057】
本実施形態では、ECRプラズマスパッタリング法を用いて、Mg2Niを形成材料として、水素吸蔵層19が形成された。具体的には、Mg2Niをターゲットとして、圧力0.01Pa、イオンビーム加速電圧:1.5kV、イオンビーム電流:9mA、時間:70秒を用いて、厚さ10nmの水素吸蔵層19が形成された。
【0058】
次に、図12に示すように、第2バリア層22及びSiC層16上の水素吸蔵層19の部分がエッチングにより取り除かれて、溝20a、20b、20cの底にSiC層16が露出する。このエッチングにより、配線溝18a、18bの両側面上に、水素吸蔵層19b、19c、19d、19eが形成される。また、配線溝18aに隣接する第2絶縁体層21の側面上に、水素吸蔵層19aが形成される。更に、配線溝18bに隣接する第2絶縁体層21の側面上に、水素吸蔵層19fが形成される。
【0059】
このエッチングでは、配線溝18a、18b及び第2絶縁体層21の側面上の水素吸蔵層が取り除かれないように、異方性の高い方法を用いることが好ましい。また、このエッチングは、水素吸蔵層の水素の吸蔵又は放出する働きを阻害するような化学的な反応の低い方法を用いることが好ましい。
【0060】
本実施形態では、このエッチングとして、スパッタイオンビームエッチング法を用いた。具体的には、圧力:0.03Pa、イオンビーム電圧:500V、イオンビーム電流:35mA、プロセスガスとして、Ar:8sccm、時間:60秒を用いた。
【0061】
次に、図13に示すように、水素吸蔵層19a〜19fに水素を吸蔵させる。水素吸蔵層に水素を吸蔵させるには、低温且つ高圧であることが好ましい。
【0062】
本実施形態では、水素100%の雰囲気において、室温で、水素吸蔵層に水素を吸蔵させることとした。これは、室温が、温調装置による温度制御が不要であって、工程で得られる低い温度であるためである。
【0063】
また、水素の吸蔵時に大気圧よりも高圧にしても、その後、第3絶縁体層を形成する間に圧力が下がると、高圧にしたことによって吸蔵した水素の部分は放出されてしまうので、大気圧で水素を吸蔵させることとした。
【0064】
水素を水素吸蔵層に吸蔵させる時間は、水素吸蔵層に十分に水素を吸蔵させる観点から、120秒以上であることが好ましい。一方、半導体装置の製造におけるタクトタイムを低減する観点から、水素を吸蔵させる時間は、300秒以下であることが好ましい。
【0065】
次に、図14に示すように、水素吸蔵層19a〜19fから水素を放出させながら、2つの配線層18a、18b上に、配線層間の溝20b上を跨ぐように第3絶縁体層23が形成される。
【0066】
配線層18a、18b上には、第3絶縁体層23を形成するプロセスガス42が拡散して吸着する。一方、溝20bでは、対向する一対の水素吸蔵層19c、19dから水素が放出される。従って、溝20b内は、放出された水素により圧力が高まるので、プロセスガス42が、溝20b内に侵入することが防止される。溝20a、20cにおいても、同様に、水素吸蔵層からの水素の放出によりプロセスガス42の侵入が防止される。
【0067】
また、本実施形態では、第3絶縁体層23を形成する工程を、大気圧で行うこととした。大気圧である溝20a、20b、20c内に水素吸蔵層から水素が放出されれば、溝20a、20b、20c内の圧力は、速やかに大気圧よりも高くなる。一方、配線層18a、18b上に拡散してくるプロセスガス42は、大気圧の圧力下にあるので、プロセスガス42が溝20a、20b、20c内へ拡散することが確実に防止される。
【0068】
プロセスガス42を配線層18a、18b上に導入するタイミングは、水素吸蔵層から水素を放出させることと同時か、又は、水素吸蔵層から水素を放出させることよりも後にすることが好ましい。このようにプロセスガス42の導入のタイミングをとることにより、プロセスガス42が溝20a、20b、20c内へ拡散することが、一層確実に防止される。
【0069】
第3絶縁体層23を形成する工程の温度(以下、第1温度ともいう)は、水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程の温度(以下、第2温度ともいう)よりも高い温度で行われることが好ましい。そして、第2温度から第1温度に昇温する際には、第3絶縁体層23を形成するプロセスガス42を配線層18a、18b上に導入しながら昇温することが好ましい。本実施形態では、第2温度は室温であり、第1温度は、後述するように250〜400℃とした。
【0070】
水素吸蔵層19a〜19fは、水素の放出開始温度にもよるが、第2温度から第1温度に昇温されるのと共に、水素の放出を開始又は増加する。また、第3絶縁体層23の形成は、プロセスガス42が導入されていれば、第1温度よりも低い温度から開始される場合がある。そこで、本実施形態では、水素吸蔵層から放出される水素を有効に利用する観点から、第2温度から第1温度に昇温する際には、第3絶縁体層23を形成するプロセスガス42を配線層18a、18b上に導入しながら昇温することとした。このようにして、水素吸蔵層からの水素の放出時間と、第3絶縁体層23の形成時間とが、出来るだけ重なるようにした。
【0071】
水素吸蔵層の水素の放出量は、高温且つ低圧である程多くなる。そこで、プロセスガス42が溝20a、20b、20c内へ拡散すること防止する観点から、第3絶縁体層23を形成する工程の温度及び圧力は、第3絶縁体層23の形成する製造条件の範囲内で、水素吸蔵層からの水素の放出量が多くなるように、高温且つ低圧であることが好ましい。
【0072】
また、溝20a、20b、20c内の水素吸蔵層19a〜19f上には、第3絶縁体層23を形成する絶縁体が堆積しないような第3絶縁体層23の成膜条件を用いることが好ましい。
【0073】
具体的には、第3絶縁体層23を形成する工程では、水素吸蔵層上(溝20a、20b、20cの内壁)に形成される第3絶縁体層の厚さaと、配線層18a、18b上に形成される第3絶縁体層23の厚さbとの比a/bが、0.1以下、特に0.05以下となるように、第3絶縁体層23が形成されることが好ましい。ここで、水素吸蔵層上に形成される第3絶縁体層は、第3絶縁体層23を形成する絶縁体又は第3絶縁体層23を形成する際に生じる他の反応生成物を含む意味である。このように、比a/bを小さくする第3絶縁体層23を形成するための、プロセスガスの種類、流量、温度条件等としては、各種の公知の方法を用いることができる。
【0074】
本実施形態では、第3絶縁体層23を形成する製造条件として、CVD法を用いた。具体的には、圧力:0.1MPa、基板温度:250〜400℃(平均325℃)、プロセスガスとして、O3:6sccm、テトラエトキシシラン:6sccm、N2:500sccm、時間:138秒を用いて、厚さ300nmの酸化ケイ素からなる第3絶縁体層23が形成された。
【0075】
上述したように、本実施形態では、水素吸蔵層の形成材料としてMg2Niを用いた。Mg2Niの水素放出の開始温度は、0.1MPa下で253℃であり、水素を放出する温度と、第3絶縁体層23を形成する工程の温度とが重なっている。
【0076】
水素吸蔵層から放出される水素は還元作用を有する。従って、上述したテトラエトキシシランが酸化して酸化ケイ素が合成される酸化反応を抑制する働きも有するので、溝20a、20b、20c内で酸化物が形成することが一層防止される。
【0077】
このようにして、配線層18a、18b上に、配線層間の上を跨ぐように、第3絶縁体層23が形成されて、図1に示す半導体装置が得られる。また、第3絶縁体層23は、配線18aと、隣接する第2絶縁体層21との間の溝20aの上を跨ぐように形成される。また、第3絶縁体層23は、配線18bと、隣接する第2絶縁体層21との間の溝20cの上を跨ぐように形成される。
【0078】
溝20a、20b、20cの内部は、その後の工程にもよるが、減圧された状態にあるか、又は、空気、水素、又は窒素等の低誘電率の気体によって満たされることが好ましい。真空、空気、水素、又は窒素の比誘電率は、略1であるので、配線間の寄生容量は小さいものになる。
【0079】
上述した本実施形態の配線の形成方法によれば、配線間の溝に絶縁物又は他の反応生成物が堆積することが防止される。
【0080】
また、上述した本実施形態の配線を備えた半導体装置によれば、配線間の溝に絶縁物又は他の反応生成物が堆積することが防止される。従って、配線間の寄生容量が低いので、配線を伝わる信号の遅延が防止される。また、配線間の溝に絶縁物又は他の反応生成物が堆積することが防止されるので、複数の配線それぞれに対する配線間の寄生容量が均一になるため、各配線の信号の遅延が等しくなるため、信号の伝送特性が向上する。
【0081】
更に、水素吸蔵層による溝内への水素の放出により、第3絶縁層23が溝20a、20b、20c内に垂れ下がることが防止されるので、第3絶縁層23の平坦度が向上する。
【0082】
本発明では、上述した実施形態の配線及び配線の形成方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、一の実施形態が有する構成要件は、他の実施形態にも適宜適用することができる。
【0083】
例えば、上述した実施形態では、半導体装置は、2つの配線層を有していたが、配線層の数は、適宜設定され得る。
【0084】
また、上述した半導体装置の製造方法は一例であり、例えば、他の製造条件を用いても良い。
【0085】
ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、読者が、発明者によって寄与された発明及び概念を技術を深めて理解することを助けるための教育的な目的を意図する。ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、そのような具体的に述べられた例及び条件に限定されることなく解釈されるべきである。また、明細書のそのような例示の機構は、本発明の優越性及び劣等性を示すこととは関係しない。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、その様々な変更、置き換え又は修正が本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り行われ得ることが理解されるべきである。
【0086】
以上の上述した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0087】
(付記1)
第1絶縁体層と、
前記第1絶縁体層上に間隔を空けて配置された複数の配線層と、
前記配線層の側面上に形成された水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層と、
複数の前記配線層上に、前記配線層間の上を跨ぐように形成された第2絶縁体層と、
を備えた半導体装置。
【0088】
(付記2)
隣接する前記配線層間には空洞が配置される付記1に記載の半導体装置。
【0089】
(付記3)
前記水素吸蔵層は、Mg2Niを含む付記1又は2に記載の半導体装置。
【0090】
(付記4)
前記水素吸蔵層)の厚さは、5〜30nmの範囲にある付記1〜3の何れか一項に記載の半導体装置。
【0091】
(付記5)
第1絶縁体層上に、間隔を空けて複数の配線層を形成する工程と、
前記配線層の側面上に、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層を形成する工程と、
前記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程と、
前記水素吸蔵層から水素を放出させながら、複数の前記配線層上に、前記配線層間の上を跨ぐように第2絶縁体層を形成する工程と、
を有する半導体装置の形成方法。
【0092】
(付記6)
前記第2絶縁体層を形成する工程では、
前記水素吸蔵層から水素を放出させることと同時か、又は、前記水素吸蔵層から水素を放出させることよりも後に、前記第2絶縁体層を形成するプロセスガスを前記配線層に導入する付記5に記載の半導体装置の形成方法。
【0093】
(付記7)
前記第2絶縁体層を形成する工程は、第1温度で行われ、
前記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程は、前記第1温度よりも低い第2温度で行われ、
前記第2温度から前記第1温度に昇温する際には、前記第2絶縁体層を形成するプロセスガスを前記配線層上に導入しながら昇温する付記5又は6に記載の半導体装置の形成方法。
【0094】
(付記8)
前記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程は、室温で行う付記5〜7の何れか一項に記載の半導体装置の形成方法。
【0095】
(付記9)
前記第2絶縁体層を形成する工程は、大気圧で行う付記5〜8の何れか一項に記載の半導体装置の形成方法。
【0096】
(付記10)
前記第2絶縁体層を形成する工程では、前記水素吸蔵層上に形成される前記第2絶縁体層の厚さaと、前記配線層上に形成される前記第2絶縁体層の厚さbとの比a/bが、0.05以下となるように、前記第2絶縁体層を形成する付記5〜9の何れか一項に記載の半導体装置の形成方法。
【符号の説明】
【0097】
10 半導体装置
11 基板
12 素子分離層
13 SiN層
14 第1絶縁体層
15 コンタクト
16 SiC層
17 第1バリア層
18a、18b 配線層
19a、19b、19c、19d、19e、19f 水素吸蔵層
20a、20b、20c 溝
21 第2絶縁体層
22 第2バリア層
23 第3絶縁体層
30 トランジスタ
31 ゲート絶縁層
32 ゲート電極
33a、33b 側壁
34a、34b ソースドレイン領域
40a、40b 溝
41 導電体層
42 プロセスガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁体層と、
前記第1絶縁体層上に間隔を空けて配置された複数の配線層と、
前記配線層の側面上に形成された水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層と、
複数の前記配線層上に、前記配線層間の上を跨ぐように形成された第2絶縁体層と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
隣接する前記配線層間には空洞が配置される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記水素吸蔵層は、Mg2Niを含む請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1絶縁体層上に、間隔を空けて複数の配線層を形成する工程と、
前記配線層の側面上に、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層を形成する工程と、
前記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程と、
前記水素吸蔵層から水素を放出させながら、複数の前記配線層上に、前記配線層間の上を跨ぐように第2絶縁体層を形成する工程と、
を備えた半導体装置の形成方法。
【請求項5】
前記第2絶縁体層を形成する工程では、
前記水素吸蔵層から水素を放出させることと同時か、又は、前記水素吸蔵層から水素を放出させることよりも後に、前記第2絶縁体層を形成するプロセスガスを前記配線層上に導入する請求項4に記載の半導体装置の形成方法。
【請求項6】
前記第2絶縁体層を形成する工程は、第1温度で行われ、
前記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程は、前記第1温度よりも低い第2温度で行われ、
前記第2温度から前記第1温度に昇温する際には、前記第2絶縁体層を形成するプロセスガスを前記配線層上に導入しながら昇温する請求項4又は5に記載の半導体装置の形成方法。
【請求項1】
第1絶縁体層と、
前記第1絶縁体層上に間隔を空けて配置された複数の配線層と、
前記配線層の側面上に形成された水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層と、
複数の前記配線層上に、前記配線層間の上を跨ぐように形成された第2絶縁体層と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
隣接する前記配線層間には空洞が配置される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記水素吸蔵層は、Mg2Niを含む請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1絶縁体層上に、間隔を空けて複数の配線層を形成する工程と、
前記配線層の側面上に、水素を吸蔵及び放出する水素吸蔵層を形成する工程と、
前記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程と、
前記水素吸蔵層から水素を放出させながら、複数の前記配線層上に、前記配線層間の上を跨ぐように第2絶縁体層を形成する工程と、
を備えた半導体装置の形成方法。
【請求項5】
前記第2絶縁体層を形成する工程では、
前記水素吸蔵層から水素を放出させることと同時か、又は、前記水素吸蔵層から水素を放出させることよりも後に、前記第2絶縁体層を形成するプロセスガスを前記配線層上に導入する請求項4に記載の半導体装置の形成方法。
【請求項6】
前記第2絶縁体層を形成する工程は、第1温度で行われ、
前記水素吸蔵層に水素を吸蔵させる工程は、前記第1温度よりも低い第2温度で行われ、
前記第2温度から前記第1温度に昇温する際には、前記第2絶縁体層を形成するプロセスガスを前記配線層上に導入しながら昇温する請求項4又は5に記載の半導体装置の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−80775(P2013−80775A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219175(P2011−219175)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]