説明

半導体装置及び半導体装置を搭載したプリント配線板の実装構造

【課題】 半導体チップのコーナー部でのワイヤ相互間の長さの差を低減できる半導体装置並びにその実装方法を提供する。
【解決手段】 リードフレーム2a、2c、2bは円弧状に形成されたパッケージ1の外周に等間隔で配置されており、パッケージ外周側面での各リードフレーム2a、2c、2bのアウターリードの間隔は等しくなっている。そして、各リードフレーム2a、2c、2bのインナーリードがパッケージ1の外周又は各リードフレーム2a、2c、2bのアウターリードと略同心円状に配置されている。また、アイランド3aとプリント配線板の接地パターンによる容量結合により半導体装置100の接地インピーダンスを低減している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその実装方法に関するものであって、特に高周波特性に優れた半導体装置並びにその実装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置が扱う信号の高周波化、高出力化及び多機能化による半導体チップのボンディングパッド数の増加やパッケージのピン数の増加、またそれに伴うパッケージ大型化等から、半導体チップとリードフレーム間のボンディングワイヤ(以下、単にワイヤと称する)の長さが長くなり、ワイヤの持つインダクタンス成分の高周波特性に与える影響が大きくなっている。また、半導体チップとリードフレーム間のワイヤの本数が増加することによって、特に半導体チップのコーナー部のワイヤ相互間の間隔や長さの差も高周波特性の面で無視することができなくなってきている。ここで、半導体チップのコーナーとは半導体チップの4つある各頂点を、半導体チップのコーナー部とは、半導体チップのコーナーとその周辺部をあらわす。
【0003】
上記のような問題点を解決する一例として、中間配線基板を用いて半導体チップとリードフレーム間のワイヤを短くした半導体装置が開示されている。
【0004】
以下、従来の半導体装置200について、図3を参照して説明する。図3(a)はその上面図、図3(b)はその断面図であり、図3(a)はパッケージを形成する前、図3(b)はパッケージを形成した後の状態を示している。図において、11はパッケージ、12はパッケージ11内に設けられたリードフレーム、13はリードフレーム12上に載置された板形状の中間配線基板である。この中間配線基板13は、その材質が例えば有機またはセラミックであり、また、多層構造で、高周波(1GHz以上)配線が施してある高周波用の基板である。14は中間配線基板13に搭載された半導体チップ、15は半導体チップ14と中間配線基板13、および中間配線基板13とリードフレーム12をそれぞれ接続するワイヤである。なお、半導体チップのコーナーのリードフレームを12cとし、リードフレーム12cへの中間配線基板13からのワイヤを特に15cとする。
【0005】
次に、その製造方法について、説明する。まず、リードフレーム12のアイランド上に中間配線基板13を取り付ける。次に、中間配線基板13上に半導体チップ14を搭載する。次いで、半導体チップ14と中間配線基板13の間、リードフレーム12と中間配線基板13の間にワイヤ15をボンディングする。最後に、樹脂モールドしてパッケージ11を形成する。
【0006】
このようにして、有機あるいはセラミック製の多層基板に高周波配線を施した中間配線基板13を介して半導体チップ14とリードフレーム12の間を接続するようにしたので、半導体チップ14とリードフレーム12間のワイヤの長さを直接ワイヤでボンディングするよりは短くすることができ、高周波特性の劣化を抑制し、高出力化によるチップ多パッド化、パッケージの多ピン化、またそれに伴うパッケージ大型化等にも対応している(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
また図示しないが、半導体チップのワイヤ相互間の長さを均一にした別の従来の半導体装置として、パッケージ外形を円形もしくは楕円形にし、半導体チップのボンディングパッド配列をパッケージ外形と相似関係となるようにしてワイヤを放射状に配線した例がある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−163311号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開平5−211188号公報(第2頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来例の半導体装置200では、中間配線基板13を必要とし、半導体チップ14と中間配線基板13の間、リードフレーム12と中間配線基板13の間にワイヤ15をボンディングする必要があり、組立工数の面でも不利であった。また、リードフレーム12cが半導体チップのコーナーに位置しているため、これに接続されるワイヤ15cの長さは他のワイヤ15よりも長くならざるを得なくなり、半導体チップのコーナーのリードフレーム12cは高周波用途には不利となる場合が多かった。
【0009】
さらに、半導体装置のパッケージ外形を円形もしくは楕円形にした例では、表面実装時の半導体装置の外形による位置決めが困難となる他、半導体チップのパッケージへの収用性も低下するという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑み、中間配線基板等を利用せずに半導体チップのコーナー部でのワイヤ相互間の長さの差を低減できる半導体装置並びにその実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、半導体チップの外周に配置されたボンディングパッドからワイヤがリードフレームのインナーリードに接続され、パッケージからリードフレームのアウターリードが導出された半導体装置において、
パッケージは平面形状が円弧状のコーナー部を有し、コーナー部のアウターリード及び半導体チップの各コーナー部のボンディングパッドとワイヤで接続される各インナーリードが共に円弧状に配列され、コーナー部の各ワイヤの長さがほぼ等しいことを特徴とする半導体装置である。
【0012】
請求項2記載の発明は、パッケージのコーナー部のインナーリードが、等間隔に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置である。
【0013】
請求項3記載の発明は、半導体チップの外周に配置されたボンディングパッドからワイヤがリードフレームのインナーリードに接続され、パッケージからリードフレームのアウターリードが導出された半導体装置において、パッケージは平面形状が円弧状のコーナー部を有し、コーナー部のアウターリード及び半導体チップの各コーナー部のボンディングパッドとワイヤで接続される各インナーリードが共に円弧状に配列され、コーナー部の各ワイヤの長さがほぼ等しいことを特徴とする半導体装置をプリント配線板上に実装する構造であって、
リードフレームは中央に半導体チップを搭載するためのアイランドを有し、アイランドは少なくとも1つの吊りリードにより接地電位が与えられ、プリント配線板はアイランドと対面する位置に接地パターンを有することを特徴とする、半導体装置を搭載したプリント配線板の実装構造である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体装置によれば、従来技術に示したような中間配線基板等を利用せずに半導体チップのコーナー部でのワイヤ相互間の長さの差を低減でき、コーナー部のリードフレームの高周波用途への利用が可能となる。そして、パッケージのコーナー部が円弧状であるため、半導体装置を搭載するプリント配線板のパッケージのコーナー部周辺の配線も円弧状でコーナー部に沿わせることができ、従来の矩形状のパッケージに沿わせた90度の角度を持たせた配線と比較して、配線長さを短くでき、電波の不要放射の原因となる90度の配線コーナーを無くすことができる。また、パッケージ底面に絶縁された金属板を持つ構造とすることで、実装されるプリント配線板との間の容量結合を利用でき、半導体装置の高周波特性を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
半導体チップのコーナー部でのワイヤ相互間の長さの差を低減するという目的を、パッケージのコーナー部を円弧状に形成し、半導体チップのコーナー部のボンディングパッドとワイヤで接続されるインナーリード及びアウターリードをパッケージの円弧状のコーナー部に等間隔で配置することで実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例1の半導体装置100について、図1を参照して説明する。
【0017】
図1(a)はその上面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図であり、図1(a)はパッケージを封止する前、図1(b)はパッケージを封止した後の状態を示している。図において、1はパッケージ、2はパッケージ1内に設けられたリードフレームでありインナーリード及びアウターリードを含む。4は半導体チップ、5は半導体チップ4とリードフレーム2をそれぞれ接続するワイヤである。3aは半導体チップ4を搭載するためのアイランドであり、3bはリードフレーム2とアイランド3aを接続する吊りリードである。そして、リードフレーム2のうちワイヤ5がボンディングされる部分をインナーリード、はんだ等で外部と接続される部分をアウターリードとしている。
【0018】
半導体チップ4のコーナーのボンディングパッドとワイヤ接続されるパッケージ1のリードフレームを2cとし、その両側のリードフレームをそれぞれ2a、2bとする。また、各リードフレーム2a、2c、2bをコーナー部のリードフレームと称し、各リードフレーム2a、2c、2bまでのワイヤをそれぞれ5a、5c、5bとする。コーナー部の各リードフレーム2a、2c、2bは、円弧状に形成されたパッケージのコーナー部に等間隔で配置されており、パッケージ外周側面での各リードフレーム2a、2c、2bのアウターリードの間隔は等しくなっている。そして、各リードフレーム2a、2c、2bのインナーリードがパッケージ1の外周又は各リードフレーム2a、2c、2bのアウターリードと略同心円状に配置されている。
【0019】
このようにして、本実施の形態では、パッケージ1のコーナー部のリードフレーム2cとこれに隣接する両側の各リードフレーム2a、2bを円弧状に等間隔で配置するようにしたので、リードフレーム2cまでのワイヤ5cを短くした上で、各リードフレーム2a、2c、2bまでの各ワイヤ5a、5c、5bの長さの差を低減でき、コーナー部のリードフレーム2cの高周波特性を劣化させることなく他のリードフレームと同様に高周波用途に利用が可能となる。また、ワイヤ相互間の間隔が極端に接近することも拡大することもないため、隣り合う各ワイヤ間のインピーダンスのばらつきを低減できる。そして、パッケージ1のコーナー部が円弧状であるため、半導体装置100を搭載するプリント配線板のパッケージ1のコーナー部周辺の配線も円弧状でコーナー部に沿わせることができ、従来の矩形状のパッケージに沿わせた90度の角度を持たせた配線と比較して、配線長さを短くでき、電波の不要放射の原因となる90度の配線コーナーを無くすことができる。
【0020】
次に、半導体装置100を搭載したプリント配線板の実装構造について、図2を参照して説明する。6はプリント配線板、7は接地パターン、8ははんだである。そして、半導体装置のアイランド3aが、プリント配線板6に設けられた接地パターン7と対面する位置にはんだ8にて実装される。
【0021】
本実施例の実装構造によれば、アイランド3aと接地パターン7による容量結合により半導体装置100の接地インピーダンスを低減でき、高周波特性を改善することができる。
【0022】
なお、本発明の半導体装置ではコーナー部の各リードフレームは円弧状に等間隔で配置されていればよく、本数は限定されるものではない。また、本発明の半導体装置を搭載したプリント配線板の実装構造での容量形成にはアイランド3aの直下にモールド樹脂が注入されていればよく、リードフレーム2がアイランド3aと同一面に有るような構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の半導体装置は、携帯電話の送受信装置等で使用される数ギガヘルツ前後の高周波信号を扱うことのできる半導体装置に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1の半導体装置100を示す構成図。
【図2】本発明の半導体装置100の実装方法を示す断面図。
【図3】従来の実施例の半導体装置200を示す構成図。
【符号の説明】
【0025】
1 パッケージ
2、2a、2b、2c リードフレーム
3a アイランド
3b 吊りリード
4 半導体チップ
5、5a、5b、5c ワイヤ
6 プリント配線板
7 接地パターン
8 はんだ
11 パッケージ
12、12c リードフレーム
13 中間配線基板
14 半導体チップ
15、15c ワイヤ
100、200 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの外周に配置されたボンディングパッドからワイヤがリードフレームのインナーリードに接続され、パッケージからリードフレームのアウターリードが導出された半導体装置において、
前記パッケージは平面形状が円弧状のコーナー部を有し、前記コーナー部のアウターリード及び前記半導体チップの各コーナー部のボンディングパッドとワイヤで接続される各インナーリードが共に円弧状に配列され、前記コーナー部の各ワイヤの長さがほぼ等しいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記パッケージのコーナー部のインナーリードが、等間隔に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体チップの外周に配置されたボンディングパッドからワイヤがリードフレームのインナーリードに接続され、パッケージからリードフレームのアウターリードが導出された半導体装置において、前記パッケージは平面形状が円弧状のコーナー部を有し、前記コーナー部のアウターリード及び前記半導体チップの各コーナー部のボンディングパッドとワイヤで接続される各インナーリードが共に円弧状に配列され、前記コーナー部の各ワイヤの長さがほぼ等しいことを特徴とする半導体装置をプリント配線板上に実装する構造であって、
前記リードフレームは中央に前記半導体チップを搭載するためのアイランドを有し、前記アイランドは少なくとも1つの吊りリードにより接地電位が与えられ、前記プリント配線板は前記アイランドと対面する位置に接地パターンを有することを特徴とする、半導体装置を搭載したプリント配線板の実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−80407(P2006−80407A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264813(P2004−264813)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000156950)関西日本電気株式会社 (26)
【Fターム(参考)】