説明

半導体装置形成方法

【課題】金属層の下方に配置されたレジストが、種々の要因によって劣化する。
【解決手段】半導体装置形成方法は、基板上に、第1波長の光で感光する下層レジストおよび第1波長と異なる第2波長の光で感光する上層レジストがこの順序で配された加工対象を準備する段階と、第2波長の光によるフォトリソグラフィを用いて、上層レジストにパターンを形成する段階と、上層レジストのパターンを用いて金属層のパターンを形成する段階と、第1波長の光を金属層のパターンに照射して、近接場光を発生させることにより、金属層のパターンよりも微細なパターンを下層レジストに形成する段階と、下層レジストのパターンを基板上に転写する段階とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パターニングされた金属層によって発生させた近接場光によりレジストを露光する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
[特許文献1] 特開2008−98265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
金属層の下方に配置されたレジストが、種々の要因によって劣化するといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体装置を形成する基板上に、第1波長の光で感光する下層レジストおよび前記第1波長の光とは異なる第2波長の光で感光する上層レジストがこの順序で配された加工対象を準備する準備段階と、前記第2波長の光によるフォトリソグラフィを用いて、前記上層レジストにパターンを形成する上層パターン形成段階と、前記上層レジストのパターンを用いて金属層のパターンを形成する金属パターン形成段階と、前記第1波長の光を前記金属層のパターンに照射して、近接場光を発生させることにより、前記金属層の前記パターンよりも微細なパターンを前記下層レジストに形成する下層パターン形成段階と、前記下層レジストの前記パターンを前記基板上に転写する基板転写段階とを備える半導体装置形成方法を提供する。
【0005】
本発明の第2の態様においては、半導体装置を形成する基板上に、下層レジスト、金属層、反射防止層および上層レジストがこの順序で配された加工対象を準備する準備段階と、前記上層レジストにパターンを形成する上層パターン形成段階と、前記上層レジストのパターンを前記反射防止層に転写する反射防止層転写段階と、前記下層レジストが前記金属層で被覆された状態で、前記パターンが形成された前記上層レジストを除去する上層レジスト除去段階と、前記反射防止層のパターンを前記金属層に転写する金属層転写段階と、前記反射防止層を除去する反射防止層除去段階と、前記金属層のパターンに光を照射して近接場光を発生させることにより、前記金属層の前記パターンよりも微細なパターンを前記下層レジストに形成する下層パターン形成段階と、前記下層レジストの前記パターンを前記基板上に転写する基板転写段階とを備える半導体装置形成方法を提供する。
【0006】
本発明の第3の態様においては、半導体装置を形成する基板上に、下層レジスト、および、開口が形成された金属層が、この順序で配された加工対象を準備する準備段階と、前記金属層に近接場光を発生させることにより、前記金属層の前記開口よりも微細なパターンを前記下層レジストに露光する下層露光段階と、前記下層レジストにおける前記金属層の前記開口から露出している領域を失活させる失活段階と、前記金属層を除去する金属層除去段階と、露光された前記下層レジストを現像する下層現像段階と、前記下層レジストの前記パターンを前記基板上に転写する基板転写段階と、を備える半導体装置形成方法を提供する。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図2】半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図3】半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図4】半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図5】半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図6】半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図7】半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図8】半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図9】半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図10】半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図11】上層レジストの側面に金属層を形成する半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図12】上層レジストの側面に金属層を形成する半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図13】上層レジストの側面に金属層を形成する半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図14】上層レジストの側面に金属層を形成する半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図15】上層レジストの側面に金属層を形成する半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図16】反射防止層をマスクとして用いる半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図17】反射防止層をマスクとして用いる半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図18】反射防止層をマスクとして用いる半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図19】反射防止層をマスクとして用いる半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図20】反射防止層をマスクとして用いる半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図21】反射防止層をマスクとして用いる半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図22】反射防止層をマスクとして用いる半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図23】反射防止層をマスクとして用いる半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図24】失活を用いて半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図25】失活を用いて半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図26】失活を用いて半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図27】失活を用いて半導体装置形成方法を説明する工程図である。
【図28】円形状の開口318のパターンを説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1から図10は、半導体装置形成方法を説明する工程図である。図1に示すように、まず準備段階において、下層レジスト12と、上層レジスト14とが、この順で半導体装置を形成する基板10の一方の面に配された加工対象を準備する。
【0011】
基板10は、半導体装置を形成可能な基板であればよく、例えば、シリコン等の半導体材料、GaAs等の化合物半導体材料、ガラス等の絶縁材料によって構成される。尚、この段階で、半導体装置が、基板10に形成されていてもよい。
【0012】
下層レジスト12は、例えば、半導体装置の一部を構成する配線層をパターニングする。下層レジスト12は、基板10の一面に密着して形成される。下層レジスト12の一例は、KrFエキシマレーザから出力される248nmの波長の光で感光するKrFポジレジストである。KrFポジレジストとして、酸分解剤と酸発生剤とを含む化学増幅型のレジストを適用できる。酸分解剤の一例は、エチルアセタール系ポリマー、ESCAP系ポリマーである。光発生剤の一例は、オニウム塩、スルホン酸エステルである。下層レジスト12の厚みの一例は、15nmから100nmであって、好ましくは、15nmから20nmである。下層レジスト12は、スピンコートまたは吹きつけ等によって基板10の一面の全面に塗布された後、プリベークにより仮硬化される。
【0013】
上層レジスト14は、後述する金属層をリフトオフによりパターニングする。上層レジスト14は、下層レジスト12の一面に密着して形成される。上層レジスト14の一例は、TMAH(=水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)またはアセトン等の有機溶剤に対して溶解性を有するArFネガレジストである。ArFネガレジストを構成する材料の一例は、例えば、特開平11−119433号公報に記載の脂環式メタクリレート樹脂と、光酸発生剤と、溶剤とからなる化学増幅系レジストと通常のアルカリ現像液、もしくは通常のArFレジストとネガ型有機溶剤現像液の組み合わせ等である。上層レジスト14は、スピンコートまたは吹きつけ等によって下層レジスト12の一面に塗布された後、プリベークにより仮硬化される。
【0014】
次に、図2に示すように、上層パターン形成段階において、ArFエキシマレーザから出力された193nmの波長のレーザ光58によるフォトリソグラフィを用いて、上層レジスト14にパターンを形成する。上層レジスト14にパターンを形成する方法の一例は、位相シフトマスク50を介して、レーザ光58を上層レジスト14に照射する位相シフト法である。位相シフトマスク50は、透過部52と、位相シフト部54と、遮光部56とを有する。位相シフト部54は、透過部52に対して、レーザ光58の位相をシフトさせる。遮光部56は、透過部52と位相シフト部54との間に配置され、レーザ光58を遮光する。透過部52、位相シフト部54、及び、遮光部56の幅の一例は、対象のパターンの約4倍である。これにより、上層レジスト14が、位相シフトマスク50の透過部52及び位相シフト部54による一次回折光によって、透過部52及び位相シフト部54よりも微細なパターンで露光される。この後、位相シフトマスク50を除去する。尚、位相シフト法に代えて、水等の液体を介在させて露光する液浸を、上層レジスト14の露光方法として適用してもよい。
【0015】
この後、透過部52及び位相シフト部54を透過した一次回折光によって露光されなかった領域の上層レジスト14を、パドル現像によって除去する。パドル現像では、TMAHまたはアセトン等の有機溶剤を表面張力によって上層レジスト14の全面に塗布する。これにより、露光された領域の上層レジスト14が残り、図3に示すパターンが形成される。上層レジスト14の幅の一例は、約45nmである。上層レジスト14は、紙面表裏方向に延びる線状である。尚、2本の上層レジスト14の列が並列して形成されるが、以下の説明においては、1本のみを表示して説明する。ここで、ポジレジストである下層レジスト12は、まだ、感光されていないので、有機溶剤では除去されない。
【0016】
次に、図4に示すように、金属パターン形成段階のリフトオフ段階において、上層レジスト14のパターンの一面及び下層レジスト12の露出領域に金属層16を形成する。金属層16は、真空蒸着によって形成されたアルミニウムにより構成される。尚、金属層16は、低温で蒸着することが好ましい。金属層16は、アルミニウム以外の金属によって構成してもよい。金属層16の厚みの一例は、50nmから100nmである。
【0017】
次に、図5に示すように、上層レジスト14、及び、上層レジスト14の一面に形成された金属層16を、有機溶剤を用いて除去する。これにより、上層レジスト14のパターンを用いて金属層16のパターンが形成される。具体的には、上層レジスト14のパターンが形成されている領域に開口18が形成された金属層16のパターンが形成される。
【0018】
次に、図6に示すように、下層パターン形成段階において、KrFエキシマレーザから出力された248nmの波長の偏光であるレーザ光60を、マスクとして機能する金属層16に照射する。レーザ光60の偏光方向は、開口18の幅方向である。金属層16の開口18は、レーザ光60の波長よりも小さい。従って、金属層16の開口18は、レーザ光60をほとんど伝搬させない。これにより、金属層16の開口18から露出している領域の下層レジスト12は、伝搬光によってほとんど露光しない。
【0019】
表面プラズモンが、偏光のレーザ光60によって、金属層16の開口18の側壁に形成される。これにより、金属層16の下端であって、開口18の両側のエッジから近接場光62が発生する。この近接場光62は、急激に減衰する光である。従って、近接場光62は、開口18のエッジの近傍の領域の下層レジスト12へと局所的に入射する。この急激に減衰する近接場光62により、当該領域の下層レジスト12を構成する分子の各電子が、異なる位相、異なる振幅、異なる方向で振動する。これにより、当該分子が化学反応を起こして、当該領域が感光する。この結果、近接場光62によって露光された露光領域64が、開口18の両側のエッジの下方の領域の下層レジスト12に、例えば約10nmの幅で形成される。尚、金属層16をアルミニウム以外の金属によって構成する場合、近接場光62の強度を強くするため、表面プラズモン共鳴を生じさせる波長の偏光により近接場光62を発生させることが好ましい。
【0020】
次に、図7に示すように、金属層16を酸性あるいは塩基性溶剤によるウエットエッチング、もしくは塩素系ガスによるドライエッチングによって除去する。塩素系ガスの一例は、Cl、BCl、SiClである。尚、塩素系ガスに代えて、Br系のガスによって金属層16をドライエッチングしてもよい。
【0021】
次に、図8に示すように、下層レジスト12をTMAH等によってパドル現像する。下層レジスト12は、ポジ型なので、露光領域64が除去される。これにより、下層レジスト12には、金属層16の開口18よりも微細な開口20を含むパターンが形成される。この結果、基板10の一部が開口20から露出する。
【0022】
次に、図9に示すように、基板転写段階において、下層レジスト12と、開口20から露出した基板10の面とに、蒸着によって、配線層22を形成する。配線層22は、アルミニウム等の導電性材料によって構成される。
【0023】
次に、図10に示すように、下層レジスト12とともに、下層レジスト12の一面に形成された配線層22をTMAHまたはアセトン等の有機溶剤により除去する。これにより、下層レジスト12のパターンが、配線層22に転写される。この結果、パターニングされて紙面表裏方向に延びる線状の配線層22であって、半導体装置の一部を構成する配線層22が、基板10の一面上に形成される。例えば、配線層22の1本の配線の幅は10nmであって、配線間隔は20nmから30nmである。
【0024】
上述したように、本実施形態では、上層レジスト14を感光するレーザ光58の波長が、下層レジスト12を感光するレーザ光60の波長と異なる。これにより、上層レジスト14を感光する工程において、上層レジスト14を感光するレーザ光58により下層レジスト12が感光して劣化することを抑制できる。
【0025】
図11から図15は、上層レジストの側面に金属層を形成する半導体装置形成方法を説明する工程図である。図11に示すように、まず準備段階において、半導体装置を形成する基板10の一方の面に下層レジスト12と、上層レジスト114とを、この順で積層して加工対象を準備する。
【0026】
上層レジスト114は、後述する金属層をパターニングする。上層レジスト114は、下層レジスト12の一面に密着して形成される。上層レジスト114の一例は、化学増幅型のArFポジレジストである。ArFポジレジストは、下層レジスト12を構成するKrFレジストを感光する248nmの波長の光と異なるArFエキシマレーザから出力される198nmの光によって感光される。ArFレジストの一例は、脂環アクリレート樹脂、主脂環系材料等である。上層レジスト114の厚みの一例は、100nmである。上層レジスト114は、スピンコートまたは吹きつけ等によって下層レジスト12の一面に塗布された後、プリベークにより仮硬化される。
【0027】
次に、図12に示すように、上層パターン形成段階において、位相シフトマスク50を介して、ArFエキシマレーザから出力された193nmの波長のレーザ光58を上層レジスト114に照射して、位相シフト法により上層レジスト114をフォトリソグラフィする。これにより、上層レジスト114が、一次回折光によって、露光される。尚、位相シフト法に代えて、水等の液体を介在させて露光する液浸を、上層レジスト114の露光方法として適用してもよい。
【0028】
次に、図13に示すように、透過部52及び位相シフト部54を透過した一次回折光による露光領域の上層レジスト114を、TMAH等の有機溶剤を用いたパドル現像によって除去する。これにより、露光されていない領域の上層レジスト114が残り、露光領域に開口115が形成されたパターンが形成される。上層レジスト114の開口115の幅の一例は、約50nmから60nmである。尚、2本の開口115が並列して形成されるが、以下の説明においては、1本のみを表示して説明する。
【0029】
次に、図14に示すように、上層レジスト114の上面に対して、傾斜した方向から金属ビームを供給して、上層レジスト114の露出領域に金属層116を真空蒸着させる。これにより、金属層116は、上層レジスト114のパターンの上面及び開口115の両側面に沿って成膜される。金属層116は、アルミニウムにより構成される。上層レジスト114の上面に形成される金属層116の厚みの一例は、50nmから100nmであって、上層レジスト114の側面に形成される金属層116の厚みは、その厚みよりも薄い。また、一方の側面に形成された金属層116と、他方の側面に形成された金属層116との間には開口118が形成されている。
【0030】
次に、図15に示すように、KrFエキシマレーザから出力された248nmの波長の偏光であるレーザ光60を、マスクとして機能する金属層116に照射する。レーザ光60の偏光方向は、開口118の幅方向である。これにより、表面プラズモンが、レーザ光60によって、金属層116の開口118の側壁に形成されるので、開口118の両側のエッジから近接場光62が発生する。この結果、近接場光62によって露光された露光領域64が、開口118の両側のエッジの下方の領域の下層レジスト12に、例えば約10nmの幅で形成される。
【0031】
次に、金属層116を酸性あるいは塩基性溶剤によるウエットエッチング、もしくは塩素系ガスによるドライエッチングによって除去した後、上層レジスト114を酸素系のプラズマのアッシングにより除去する。下層レジスト12をTMAH等によってパドル現像した後、上述の実施形態と同様の方法によって配線層22を形成する。
【0032】
上述したように、本実施形態では、上層レジスト114を感光するレーザ光58の波長が、下層レジスト12を感光するレーザ光60の波長と異なる。これにより、上層レジスト114を感光する工程において、上層レジスト114を感光するレーザ光58により下層レジスト12が感光して劣化することを抑制できる。
【0033】
図16から図23は、反射防止層をマスクとして用いる半導体装置形成方法を説明する工程図である。図16に示すように、まず準備段階において、半導体装置を形成する基板210の一方の面上に下層レジスト212と、金属層216と、反射防止層224と、上層レジスト214とを、この順で積層して加工対象を準備する。尚、準備段階から後述する下層パターン形成段階において、加工対象の温度は、下層レジスト212のガラス転移点以下に維持される。
【0034】
基板210は、半導体装置を形成可能な基板であればよく、例えば、シリコン等の半導体材料、GaAs等の化合物半導体材料、ガラス等の絶縁材料によって構成される。尚、この段階で、半導体装置が、基板210に形成されていてもよい。
【0035】
下層レジスト212は、例えば、半導体装置の一部を構成する配線層をパターニングする。下層レジスト212は、基板210の一面に密着して形成される。下層レジスト212の一例は、化学増幅型であって、ArFポジレジストである。ArFレジストの一例は、脂環アクリレート樹脂、主脂環系材料等である。下層レジスト212の厚みの一例は、15nmから80nmであって、好ましくは、15nmから20nmである。下層レジスト212は、スピンコートまたは吹きつけ等によって基板210の一面の全面に塗布された後、プリベークにより仮硬化される。尚、下層レジスト212のガラス転移温度は、160℃から200℃である。
【0036】
金属層216は、側面に生じる表面プラズモンを介して、下端に近接場光を生成して、下層レジスト212を感光してパターニングする。金属層216は、下層レジスト212の一面に密着して形成されている。金属層216は、真空蒸着によって形成されたアルミニウムによって構成される。尚、金属層216は、基板210を低温、または、非加熱で蒸着することが好ましい。金属層216は、アルミニウム以外の金属によって構成してもよい。金属層216の厚みの一例は、50nmから100nmである。
【0037】
反射防止層224は、金属層216をパターニングする。また、反射防止層224は、金属層216の反射によって上層レジスト214の内部に発生する定在波を抑制する。反射防止層224は、金属層216の一面に密着して形成されている。反射防止層224は、スピンコート法によって形成された無機系の材料であるSiNによって構成される。反射防止層224は、SiN以外の材料、例えば、Al2O3等の無機材料単体、SiO2と炭素の混合物、無機材料の多層積層物等の無機材料によって構成してもよい。反射防止層224の厚みの一例は、25nmである。
【0038】
上層レジスト214は、反射防止層224をパターニングする。上層レジスト214は、反射防止層224の一面に密着して形成される。上層レジスト214の一例は、下層レジスト212と同一材料のArFポジレジストである。即ち、上層レジスト214及び下層レジスト212は、同じ波長の光であるArFエキシマレーザの光に対して感光する。下層レジスト212は、上層レジスト214よりも薄い。上層レジスト214の厚みの一例は、100nmである。上層レジスト214は、スピンコートまたは吹きつけ等によって下層レジスト212の一面に塗布された後、プリベークにより仮硬化される。ここで、上層レジスト214の材料は、下層レジスト212の材料よりも粘性の高い状態で塗布される。粘性を低くする場合、溶媒の比率を高くすればよい。これにより、上層レジスト214は、下層レジスト212よりも厚くなる。
【0039】
次に、図17に示すように、上層パターン形成段階において、位相シフトマスク50を介して、ArFエキシマレーザから出力された193nmの波長のレーザ光58を上層レジスト214に照射して、位相シフト法により上層レジスト214をリソグラフィーする。これにより、上層レジスト214が、一次回折光によって、露光される。ここで、上層レジスト214の下層に形成されている反射防止層224が、上層レジスト214の内部の定在波の発生を抑制する。尚、位相シフト法に代えて、水等の液体を介在させて露光する液浸を、上層レジスト214の露光方法として適用してもよい。
【0040】
この後、図18に示すように、透過部52及び位相シフト部54を透過した一次回折光による露光領域の上層レジスト214を、TMAH等の現像液を表面張力によって全面に塗布するパドル現像によって除去する。これにより、露光されていない領域が残り、上層レジスト214にパターンが形成される。上層レジスト214の開口215の幅の一例は、約45nmである。尚、2本の開口215が並列して形成されるが、以下の説明においては、1本のみを表示して説明する。
【0041】
次に、図19に示すように、反射防止層転写段階において、上層レジスト214をマスクとして、反射防止層224をフッ素系のガスによって反応性イオンエッチング(=RIE)する。反応性イオンエッチングにおけるエネルギーを低く設定して、エッチング速度を遅い方が好ましい。尚、エッチング用のガスは、フッ素系のガスに限定されるものではなく、金属層216が耐性を有するガスであればよい。これにより、上層レジスト214から露出している領域の反射防止層224が除去されて、開口225が形成される。この結果、上層レジスト214のパターンが反射防止層224に転写される。
【0042】
次に、図20に示すように、上層レジスト除去段階において、パターンが形成された上層レジスト214を酸素系のプラズマのアッシングによって除去する。上述したように、上層レジスト214のパターンは反射防止層224に転写されている。これにより、金属層216がパターニングされていない状態、即ち、下層レジスト212が金属層216に被覆されている状態で、上層レジスト214を除去できる。これにより、上層レジスト214を除去する酸素系のプラズマのアッシングによって、下層レジスト212が劣化することを抑制できる。
【0043】
次に、図21に示すように、金属層転写段階において、反射防止層224をマスクとして、金属層216を塩素系のガスによって反応性イオンエッチングする。これにより、反射防止層224の開口225から露出している領域の金属層216が除去されて、開口218が形成される。この結果、反射防止層224のパターンが金属層216に転写される。
【0044】
次に、図22に示すように、反射防止層除去段階において、反射防止層224をフッ素系ガスによって除去する。この後、下層パターン形成段階において、ArFエキシマレーザから出力された193nmの波長の偏光であるレーザ光58を、マスクとして機能する金属層216のパターンに照射する。レーザ光58の偏光方向は、開口218の幅方向である。これにより、表面プラズモンが、レーザ光58によって、金属層216の開口218の側壁に形成されるので、開口218の両側のエッジから近接場光62が発生する。この結果、近接場光62によって露光された露光領域64が、開口218の両側のエッジの下方の領域の下層レジスト212に、例えば約10nmの幅で形成される。
【0045】
次に、図23に示すように、金属層216を塩素系ガスによる反応性イオンエッチングにより除去した後、下層レジスト212をTMAH等によってパドル現像する。これにより、下層レジスト212には、金属層216の開口218よりも微細な開口220を含むパターンが形成される。この後、基板転写段階において、上述の実施形態と同様のリフトオフ法等によって、下層レジスト212のパターンを基板210上に転写して、配線層22を形成する。
【0046】
上述したように、本実施形態では、金属層216をパターニングする前に、上層レジスト214を除去する。これにより、上層レジスト214を除去する酸素系のプラズマのアッシングの工程において、金属層216が下層レジスト212を保護するので、下層レジスト212が劣化することを抑制できる。
【0047】
図24から図27は、失活を用いて半導体装置形成方法を説明する工程図である。まず、図21までの工程、及び、反射防止層224を除去する工程を含む準備段階を実行する。これにより、図24に示すように、半導体装置を形成する基板210上に、下層レジスト212、及び、開口218が形成された金属層216が、この順で配された加工対象が形成される。下層レジスト212の一例は、化学増幅型であって、ArFポジレジストである。金属層216を構成する材料の一例は、アルミニウムである。
【0048】
次に、図25に示すように、下層露光段階において、ArFエキシマレーザから出力された193nmの波長の偏光であるレーザ光58を、マスクとして機能する金属層216に照射する。レーザ光58の偏光方向は、開口218の幅方向である。これにより、表面プラズモンが、レーザ光58によって、金属層216の開口218の側壁に形成されるので、開口218の両側のエッジから近接場光62が発生する。この結果、近接場光62によって露光された露光領域64が、開口218の両側のエッジの下方の領域の下層レジスト212に、例えば約10nmの幅で形成される。ここで、下層レジスト212のうち、金属層216の開口218から露出している露出領域226の一部が、伝搬光によって露光される。
【0049】
次に、図26に示すように、失活段階において、下層レジスト212における金属層216の開口218から露出した領域を失活させる。これにより、露光により生じた下層レジスト212中の当該領域の水素イオンを除去する。失活方法の一例は、開口218から露出している露出領域226の水による洗浄である。これにより、露出領域226の水素イオンが除去される。失活方法の別の例は、露出領域226を温水によって洗浄してもよい。これにより、水素イオンの除去とともに、加工対象が加熱されて、下層レジスト212の露出領域226をポストベークできる。失活方法の更に別の例は、アルカリ性のガス、例えば、アンモニアガスに下層レジスト212の露出領域226を晒してもよい。これにより、露出領域226の水素イオンが中和される。
【0050】
次に、図27に示すように、金属層除去段階において、金属層216を塩素系ガスによる反応性イオンエッチングにより除去する。この後、下層現像段階において、露光された下層レジスト212をTMAH等によってパドル現像して、下層レジスト212開口220を形成する。ここで、露出領域226は、失活されている。従って、近接場光62によって一度露光された領域であっても、露出領域226に含まれる領域は、現像によって除去されない。これにより、上述した各実施形態よりも、下層レジスト212において、除去される領域が小さくなる。
【0051】
この後、基板転写段階において、上述の実施形態と同様のリフトオフ法等によって、下層レジスト212のパターンを基板210上に転写して、配線層22を形成する。
【0052】
上述したように、本実施形態では、金属層216の開口218から露出しているので、下層レジスト212を感光する段階で、感光されて劣化した露出領域226を失活させている。これにより、レーザ光58によって感光された露出領域226の水素イオンを除去することができるので、現像の段階で露出領域226の下層レジスト212が除去されることを抑制できる。
【0053】
上述した各実施形態における各構成の材料、形状、厚み等の数値は適宜変更してよい。また、各実施形態の一部または全部を組み合わせてもよい。例えば、レジスト材料、レジスト材料のポジ型とネガ型の変更、露光用の光、エッチング液及びエッチングガス等の組み合わせは適宜変更してよい。
【0054】
上述の実施形態では、線状のパターンを例にあげたが、円形状または正方形状等の他の形状のパターンを形成してもよい。図28は、円形状の開口318のパターンを説明する平面図である。金属層16に形成されるパターンとなる円形状の開口318の直径の一例は、45nmである。このパターンに偏光を照射すると、円形状の開口318の偏光方向の両端に近接場光62が生成される。この場合、最終的に得られるパターンの一例は、40nmの間隔で配置される直径20nmの2個の楕円形状である。
【0055】
上述の実施形態では、配線層22を形成することを目的とするパターンを形成したが、配線層22を切断するためのパターンを形成することを目的としてもよい。
【0056】
上述の実施形態では、ArFエキシマレーザ及びKrFエキシマレーザによって、レジストを感光したが、157nmの波長のレーザ光を出力するFレーザ等のレーザによって感光してもよい。
【0057】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0058】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0059】
10 基板
12 下層レジスト
14 上層レジスト
16 金属層
18 開口
20 開口
22 配線層
50 位相シフトマスク
52 透過部
54 位相シフト部
56 遮光部
58 レーザ光
60 レーザ光
62 近接場光
64 露光領域
114 上層レジスト
115 開口
116 金属層
118 開口
210 基板
212 下層レジスト
214 上層レジスト
215 開口
216 金属層
218 開口
220 開口
224 反射防止層
225 開口
226 露出領域
318 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置を形成する基板上に、第1波長の光で感光する下層レジストおよび前記第1波長の光とは異なる第2波長の光で感光する上層レジストがこの順序で配された加工対象を準備する準備段階と、
前記第2波長の光によるフォトリソグラフィを用いて、前記上層レジストにパターンを形成する上層パターン形成段階と、
前記上層レジストのパターンを用いて金属層のパターンを形成する金属パターン形成段階と、
前記第1波長の光を前記金属層のパターンに照射して、近接場光を発生させることにより、前記金属層の前記パターンよりも微細なパターンを前記下層レジストに形成する下層パターン形成段階と、
前記下層レジストの前記パターンを前記基板上に転写する基板転写段階と
を備える半導体装置形成方法。
【請求項2】
前記金属パターン形成段階は、前記上層レジストのパターン上に金属層を形成してから、前記上層レジストとともに対応する前記金属層の一部を除去するリフトオフ段階を含む請求項1に記載の半導体装置形成方法。
【請求項3】
前記上層レジストは有機溶剤に対して溶解性を有するネガレジストであり、前記金属パターン形成段階において、有機溶剤を用いて除去される請求項1または2に記載の半導体装置形成方法。
【請求項4】
前記金属パターン形成段階は、前記上層レジストのパターンにおける少なくとも側面に沿って金属層を成膜する段階を含む請求項1に記載の半導体装置形成方法。
【請求項5】
前記第1波長はKrFレーザの波長であり、前記第2波長はArFレーザの波長である請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置形成方法。
【請求項6】
半導体装置を形成する基板上に、下層レジスト、金属層、反射防止層および上層レジストがこの順序で配された加工対象を準備する準備段階と、
前記上層レジストにパターンを形成する上層パターン形成段階と、
前記上層レジストのパターンを前記反射防止層に転写する反射防止層転写段階と、
前記下層レジストが前記金属層で被覆された状態で、前記パターンが形成された前記上層レジストを除去する上層レジスト除去段階と、
前記反射防止層のパターンを前記金属層に転写する金属層転写段階と、
前記反射防止層を除去する反射防止層除去段階と、
前記金属層のパターンに光を照射して近接場光を発生させることにより、前記金属層の前記パターンよりも微細なパターンを前記下層レジストに形成する下層パターン形成段階と、
前記下層レジストの前記パターンを前記基板上に転写する基板転写段階と
を備える半導体装置形成方法。
【請求項7】
前記上層レジストおよび前記下層レジストは、同じ波長の光に対して感光する請求項6に記載の半導体装置形成方法。
【請求項8】
前記上層レジストおよび前記下層レジストは、ArFレーザの光に対して感光し、
前記上層パターン形成段階および前記下層パターン形成段階は、ArFレーザの光を用いて露光する請求項7に記載の半導体装置形成方法。
【請求項9】
前記上層レジストおよび前記下層レジストは、同一材料により形成される請求項7または8に記載の半導体装置形成方法。
【請求項10】
前記上層レジストよりも前記下層レジストの方が薄い請求項9に記載の半導体装置形成方法。
【請求項11】
前記準備段階から前記下層パターン形成段階までにおいて、前記加工対象を前記下層レジストのガラス転移点以下に維持する請求項6から10のいずれか1項に記載の半導体装置形成方法。
【請求項12】
前記反射防止層は無機系の材料で形成され、
前記金属層はAlで形成され、
前記反射防止層転写段階は、フッ素系のガスを用いて前記パターンを転写し、
前記上層レジスト除去段階は、酸素系のプラズマを用いて前記上層レジストを除去する請求項6から11のいずれか1項に記載の半導体装置形成方法。
【請求項13】
半導体装置を形成する基板上に、下層レジスト、および、開口が形成された金属層が、この順序で配された加工対象を準備する準備段階と、
前記金属層に近接場光を発生させることにより、前記金属層の前記開口よりも微細なパターンを前記下層レジストに露光する下層露光段階と、
前記下層レジストにおける前記金属層の前記開口から露出している領域を失活させる失活段階と、
前記金属層を除去する金属層除去段階と、
露光された前記下層レジストを現像する下層現像段階と、
前記下層レジストの前記パターンを前記基板上に転写する基板転写段階と
を備える半導体装置形成方法。
【請求項14】
前記下層レジストは化学増幅型のレジストである請求項13に記載の半導体装置形成方法。
【請求項15】
前記失活段階は、前記下層露光段階の後であって前記金属層除去段階の前において、前記下層レジスト中に露光により生じた水素イオンを除去する段階を含む請求項13または14に記載の半導体装置形成方法。
【請求項16】
前記失活段階において、水で洗浄することにより水素イオンを除去する請求項15に記載の半導体装置形成方法。
【請求項17】
前記失活段階において、温水で洗浄することにより前記加工対象を加熱しつつ水素イオンを除去する請求項16に記載の半導体装置形成方法。
【請求項18】
前記下層露光段階の後であって前記下層現像段階の前に加工対象を加熱する加熱段階をさらに備え、
前記失活段階は、前記下層レジスト中に露光により生じた水素イオンを中和する段階を含む請求項13または14に記載の半導体装置形成方法。
【請求項19】
前記失活段階において、アルカリ性のガスに晒すことにより水素イオンを中和する請求項18に記載の半導体装置形成方法。
【請求項20】
前記金属層はAlであって、前記下層露光段階は、ArFレーザの光を用いて露光する請求項13から19のいずれか1項に記載の半導体装置形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−80869(P2013−80869A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221047(P2011−221047)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】