説明

半導体装置用の接着フィルム、フリップチップ型半導体裏面用フィルム、及び、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム

【課題】長期間保存された後においても、製造時と同様の物性を有することが可能な半導体装置用の接着フィルムを提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂を含有し、示差走査熱量計にて測定される反応発熱ピーク温度の±80℃の温度範囲における反応発熱量が、25℃の条件下で4週間保存した後において、保存前の反応発熱量に対して0.8〜1倍の範囲である半導体装置用の接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用の接着フィルム、フリップチップ型半導体裏面用フィルム及びダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムに関する。フリップチップ型半導体裏面用フィルムは、半導体チップ等の半導体素子の裏面の保護と、強度向上等のために用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置及びそのパッケージの薄型化、小型化がより一層求められている。そのため、半導体装置及びそのパッケージとして、半導体チップ等の半導体素子が基板上にフリップチップボンディングにより実装された(フリップチップ接続された)フリップチップ型の半導体装置が広く利用されている。当該フリップチップ接続は半導体チップの回路面が基板の電極形成面と対向する形態で固定されるものである。このような半導体装置等では、半導体チップの裏面を保護フィルムにより保護し、半導体チップの損傷等を防止している場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−166451号公報
【特許文献2】特開2008−006386号公報
【特許文献3】特開2007−261035号公報
【特許文献4】特開2007−250970号公報
【特許文献5】特開2007−158026号公報
【特許文献6】特開2004−221169号公報
【特許文献7】特開2004−214288号公報
【特許文献8】特開2004−142430号公報
【特許文献9】特開2004−072108号公報
【特許文献10】特開2004−063551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記保護フィルムにより半導体チップの裏面を保護するためには、ダイシング工程で得られた半導体チップに対し、その裏面に保護フィルムを貼り付けるための新たな工程を追加する必要がある。その結果、工程数が増え、製造コスト等が増加することになる。また、近年の薄型化により、半導体チップのピックアップ工程において、半導体チップに損傷が生じる場合がある。その為、ピックアップ工程までは、半導体ウエハ又は半導体チップの機械的強度を増すため、これらを補強することが求められている。また、前記保護フィルムのような、半導体チップに貼り付けて使用されるフィルムにおいては、長期間保存された後に使用される場合がある。そして、このような長期間保存された後においても、製造時と同様の物性(例えば、引張貯蔵弾性率や接着力)を有していることが要求される。すなわち、例えば、長期間保存後に接着力が低下していると、半導体ウェハに貼り付けることができなくなり、長期間保存後に引張貯蔵弾性率が高くなっていると、接着フィルムに割れや欠けが生じ好適に使用することができない。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、長期間保存された後においても、製造時と同様の物性を有することが可能な半導体装置用の接着フィルム、フリップチップ型半導体裏面用フィルム、及びダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者等は、上記従来の問題点を解決すべく検討した結果、25℃の条件下で4週間保存した後の半導体装置用接着フィルムの反応発熱量を、保存前の反応発熱量に対して一定の範囲内とすることにより、長期間保存された後においても、製造時と同様の物性を有することが可能であることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明に係る半導体装置用接着フィルムは、熱硬化性樹脂を含有し、示差走査熱量計にて測定される反応発熱ピーク温度の±30℃の温度範囲における反応発熱量が、25℃の条件下で4週間保存した後において、保存前の反応発熱量に対して0.8〜1倍の範囲であることを特徴とする。
【0008】
前記構成によれば、25℃の条件下で4週間保存した後の半導体装置用接着フィルムの反応発熱量が、保存前の反応発熱量に対して0.8〜1倍の範囲内であり、4週間保存の後においても、硬化反応の進行が抑制されている。従って、硬化反応の進行に伴うフィルムの硬化や、接着性の低下を防止することができ、長期保存の後であっても、保存前(製造直後)と同様の物性とすることができる。その結果、半導体装置の製造に好適に使用することができる。
【0009】
前記構成においては、樹脂成分の全量に対して0.01〜0.25重量%の割合で熱硬化促進触媒を含むことが好ましい。熱硬化促進触媒の前記割合が0.01重量%以上であると、熱硬化性樹脂を好適に熱硬化させることができる。また、熱硬化促進触媒の前記割合が0.25重量%以下の割合であると、長期間の保存の際の硬化反応の進行を抑制することができる。
【0010】
前記構成においては、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であり、前記熱硬化促進触媒がイミダゾール系熱硬化促進触媒であることが好ましい。イミダゾール系硬化促進触媒は、一般的に、エポキシ樹脂に対して実質的に非溶解性を有している。従って、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である接着フィルムに対して、イミダゾール系硬化促進触媒を使用すると保存時における硬化の進行をより抑制することができる。
【0011】
前記構成においては、前記熱硬化促進触媒がリン−ホウ素系硬化促進触媒であることも好ましい。リン−ホウ素系硬化促進触媒は、一般的に、エポキシ樹脂やフェノール樹脂に対して実質的に非溶解性を有している。そのため、エポキシ樹脂やフェノール樹脂を含有する接着フィルムに、リン−ホウ素系硬化促進触媒を使用すると、保存時における硬化の進行をより抑制することができる。
【0012】
前記構成において、前記半導体装置用接着フィルムは、被着体上にフリップチップ接続された半導体素子の裏面に形成するためのフリップチップ型半導体裏面用フィルムであることが好ましい。
【0013】
本発明のフリップチップ型半導体裏面用フィルムは、被着体上にフリップチップ接続された半導体素子の裏面に形成されることで、当該半導体素子を保護する機能を果たすものである。尚、前記半導体素子の裏面とは、回路が形成された面とは反対側の面を意味する。
【0014】
また、本発明に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムは、前記に記載のフリップチップ型半導体裏面用フィルムが、ダイシングテープ上に積層されたダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムであって、前記ダイシングテープは基材上に粘着剤層が積層された構造であり、前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムは前記ダイシングテープの粘着剤層上に積層されている。
【0015】
前記構成のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムは、ダイシングテープとフリップチップ型半導体裏面用フィルムが一体的に形成されているので、半導体ウエハをダイシングして半導体素子を作製するダイシング工程やその後のピックアップ工程にも供することができる。即ち、ダイシング工程の前にダイシングテープを半導体ウエハ裏面に貼着させる際に、前記半導体裏面用フィルムも貼着させることができるので、半導体裏面用フィルムのみを貼着させる工程(半導体裏面用フィルム貼着工程)を必要としない。その結果、工程数の低減が図れる。しかも、半導体ウエハや、ダイシングにより形成された半導体素子の裏面を半導体裏面用フィルムが保護するので、ダイシング工程やそれ以降の工程(ピックアップ工程など)において、当該半導体素子の損傷を低減又は防止することができる。その結果、フリップチップ型半導体装置の製造歩留まりの向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを用いた半導体装置の製造方法の一例を示す断面模式図である。
【図3】示差走査熱量測定により得られる典型的な示差熱量曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の一形態について、図1を参照しながら説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。図1は、本実施の形態に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの一例を示す断面模式図である。なお、本明細書において、図には、説明に不要な部分は省略し、また、説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0018】
(ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム)
図1で示されるように、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、基材31上に粘着剤層32が設けられたダイシングテープ3と、前記粘着剤層上に設けられたフリップチップ型半導体裏面用フィルム(以下、「半導体裏面用フィルム」という場合がある)2とを備える構成である。フリップチップ型半導体裏面用フィルム2は、本発明の半導体装置用接着フィルムに相当するものである。また、本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムは、図1で示されているように、ダイシングテープ3の粘着剤層32上において、半導体ウエハの貼着部分に対応する部分33のみに半導体裏面用フィルム2が形成された構成であってもよいが、粘着剤層32の全面に半導体裏面用フィルムが形成された構成でもよく、また、半導体ウエハの貼着部分に対応する部分33より大きく且つ粘着剤層32の全面よりも小さい部分に半導体裏面用フィルムが形成された構成でもよい。なお、半導体裏面用フィルム2の表面(ウエハの裏面に貼着される側の表面)は、ウエハ裏面に貼着されるまでの間、セパレータ等により保護されていてもよい。
【0019】
(フリップチップ型半導体裏面用フィルム)
半導体裏面用フィルム2はフィルム状の形態を有している。半導体裏面用フィルム2は、通常、製品としてのダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの形態では、未硬化状態(半硬化状態を含む)であり、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを半導体ウエハに貼着させた後に熱硬化される。
【0020】
半導体裏面用フィルム2は、25℃の条件下で4週間保存した後の反応発熱量が、保存前の反応発熱量に対して0.8〜1倍の範囲内である。半導体裏面用フィルム2の25℃の条件下で4週間保存した後の前記反応発熱量は、保存前の反応発熱量に対して0.82〜1倍であることが好ましく、0.83〜1倍であることがより好ましい。25℃の条件下で4週間保存した後の半導体裏面用フィルム2の反応発熱量は、保存前の反応発熱量に対して0.8〜1倍の範囲内であり、4週間保存の後においても、硬化反応の進行が抑制されている。従って、硬化反応の進行に伴うフィルムの硬化や、接着性の低下を防止することができ、長期保存の後であっても、保存前(製造直後)と同様の物性とすることができる。その結果、フリップチップ接続の半導体装置の製造に好適に使用することができる。前記反応発熱量は、実施例に記載の方法によって得られる。
【0021】
前記半導体裏面用フィルムは、少なくとも熱硬化性樹脂により形成されていることが好ましく、更に少なくとも熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とにより形成されていることがより好ましい。少なくとも熱硬化性樹脂により形成することで、半導体裏面用フィルムは接着剤層としての機能を有効に発揮させることができる。
【0022】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0023】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下(好ましくは炭素数4〜18、更に好ましくは炭素数6〜10、特に好ましくは炭素数8又は9)の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。すなわち、本発明では、アクリル樹脂とは、メタクリル樹脂も含む広義の意味である。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0024】
また、前記アクリル樹脂を形成するための他のモノマー(アルキル基の炭素数が30以下のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル以外のモノマー)としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。尚、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸をいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0025】
また、前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂の他、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。熱硬化性樹脂としては、特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等含有が少ないエポキシ樹脂が好適である。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂を好適に用いることができる。
【0026】
エポキシ樹脂としては、特に限定は無く、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオンレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型エポキシ樹脂、トリスグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂若しくはグリシジルアミン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0027】
エポキシ樹脂としては、前記例示のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0028】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。フェノール樹脂は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0029】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5当量〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8当量〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0030】
前記熱硬化性樹脂の含有量としては、半導体裏面用フィルムにおける全樹脂成分に対して5重量%以上90重量%以下であることが好ましく、10重量%以上85重量%以下であることがより好ましく、15重量%以上80重量%以下であることがさらに好ましい。前記含有量を、5重量%以上にすることにより、熱硬化収縮量を2体積%以上とし易くすることができる。また、封止樹脂を熱硬化させる際に、半導体裏面用フィルムを十分に熱硬化させることができ、半導体素子の裏面に確実に接着固定させて、剥離のないフリップチップ型の半導体装置の製造が可能になる。一方、前記含有量を90重量%以下にすることにより、パッケージ(PKG:フリップチップ型の半導体装置)の反りを抑制することができる。
【0031】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の熱硬化促進触媒としては、特に制限されず、公知の熱硬化促進触媒の中から適宜選択して用いることができる。熱硬化促進触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化促進触媒としては、例えば、アミン系硬化促進触媒、リン系硬化促進触媒、イミダゾール系硬化促進触媒、ホウ素系硬化促進触媒、リン−ホウ素系硬化促進触媒などを用いることができる。なかでも、イミダゾール系硬化促進触媒、やリン−ホウ素系硬化促進触媒が好ましい。イミダゾール系硬化促進触媒は、一般的に、エポキシ樹脂に対して実質的に非溶解性を有している。従って、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である半導体裏面用フィルムやフェノール樹脂を含まない半導体裏面用フィルムに対して、イミダゾール系硬化促進触媒を使用すると、保存時における硬化の進行をより抑制することができる。また、リン−ホウ素系硬化促進触媒は、一般的に、エポキシ樹脂やフェノール樹脂に対して実質的に非溶解性を有している。そのため、エポキシ樹脂やフェノール樹脂を含有する半導体裏面用フィルムであっても、リン−ホウ素系硬化促進触媒を使用すると、保存時における硬化の進行をより抑制することができる。
【0032】
前記アミン系硬化促進剤(アミン系硬化促進触媒)としては特に限定されず、例えば、モノエタノールアミントリフルオロボレート(ステラケミファ(株)製)、ジシアンジアミド(ナカライテスク(株)製)等が挙げられる。
【0033】
前記リン系硬化促進剤(リン系硬化促進触媒)としては特に限定されず、例えば、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリ(p−メチルフェニル)フォスフィン、トリ(ノニルフェニル)フォスフィン、ジフェニルトリルフォスフィン等のトリオルガノフォスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(商品名;TPP−PB)、メチルトリフェニルホスホニウム(商品名;TPP−MB)、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド(商品名;TPP−MC)、メトキシメチルトリフェニルホスホニウム(商品名;TPP−MOC)、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(商品名;TPP−ZC)等が挙げられる(いずれも北興化学(株)製)。また、前記トリフェニルフォスフィン系化合物としては、エポキシ樹脂に対し実質的に非溶解性を示すものであることが好ましい。エポキシ樹脂に対し非溶解性であると、保存時に硬化が進行することを抑制することができる。トリフェニルフォスフィン構造を有し、かつエポキシ樹脂に対し実質的に非溶解性を示す熱硬化触媒としては、例えば、メチルトリフェニルホスホニウム(商品名;TPP−MB)等が例示できる。尚、前記「非溶解性」とは、トリフェニルフォスフィン系化合物からなる熱硬化触媒がエポキシ樹脂からなる溶媒に対し不溶性であることを意味し、より詳細には、温度10〜40℃の範囲において10重量%以上溶解しないことを意味する。
【0034】
前記イミダゾール系硬化促進剤(イミダゾール系硬化促進触媒)としては、2−メチルイミダゾール(商品名;2MZ)、2−ウンデシルイミダゾール(商品名;C11−Z)、2−ヘプタデシルイミダゾール(商品名;C17Z)、1?2−ジメチルイミダゾール(商品名;1.2DMZ)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名;2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール(商品名;2PZ)、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(商品名;2P4MZ)、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(商品名;1B2MZ)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(商品名;1B2PZ)、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(商品名;2MZ−CN)、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(商品名;C11Z−CN)、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(商品名;2PZCNS−PW)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;2MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;C11Z−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;2E4MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名;2MA−OK)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2PHZ−PW)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2P4MHZ−PW)等が挙げられる(いずれも四国化成工業(株)製)。
【0035】
前記ホウ素系硬化促進剤(ホウ素系硬化促進触媒)としては特に限定されず、例えば、トリクロロボラン等が挙げられる。
【0036】
前記リン−ホウ素系硬化促進剤(リン−ホウ素系硬化促進触媒)としては特に限定されず、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(商品名;TPP−K)、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリボレート(商品名;TPP−MK)、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(商品名;TPP−ZK)、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン(商品名;TPP−S)等が挙げられる(いずれも北興化学(株)製)。
【0037】
前記熱硬化促進触媒の割合は、樹脂成分の全量に対して0.008〜0.25重量%であることが好ましく、0.0083〜0.23重量%であることがより好ましく、0.0087〜0.22重量%であることがさらに好ましい。熱硬化促進触媒の前記割合が0.01重量%以上であると、熱硬化性樹脂を好適に熱硬化させることができる。また、熱硬化促進触媒の前記割合が0.25重量%以下の割合であると、長期間の保存の際の硬化反応の進行を抑制することができる。
【0038】
ここで、半導体裏面用フィルムは単層でもよく複数の層が積層された積層フィルムであってもよいが、半導体裏面用フィルムが積層フィルムである場合、熱硬化促進触媒の前記割合は、積層フィルム全体として樹脂成分の全量に対して0.01〜0.25重量%であればよい。
【0039】
前記半導体裏面用フィルムとしては、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含む樹脂組成物や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂を含む樹脂組成物により形成されていることが好適である。これらの樹脂は、イオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体素子の信頼性を確保できる。
【0040】
半導体裏面用フィルム2は、半導体ウエハの裏面(回路非形成面)に対して接着性(密着性)半導体裏面用フィルム2は、例えば、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂を含む樹脂組成物により形成することができる。半導体裏面用フィルム2を予めある程度架橋させておく為、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくことが好ましい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0041】
半導体裏面用フィルムの半導体ウエハに対する接着力(23℃、剥離角度180度、剥離速度300mm/分)は、0.5N/20mm〜15N/20mmの範囲が好ましく、0.7N/20mm〜10N/20mmの範囲がより好ましい。0.5N/20mm以上にすることにより、優れた密着性で半導体ウエハや半導体素子に貼着されており、浮き等の発生を防止することができる。また、半導体ウエハのダイシングの際にチップ飛びが発生するのを防止することもできる。一方、15N/20mm以下にすることにより、ダイシングテープから容易に剥離することができる。
【0042】
前記架橋剤としては、特に制限されず、公知の架橋剤を用いることができる。具体的には、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤が好適である。また、前記架橋剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−トなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。また、前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0044】
なお、架橋剤の使用量は、特に制限されず、架橋させる程度に応じて適宜選択することができる。具体的には、架橋剤の使用量としては、例えば、ポリマー成分(特に、分子鎖末端の官能基を有する重合体)100重量部に対し、通常7重量部以下(例えば、0.05重量部〜7重量部)とするのが好ましい。架橋剤の使用量がポリマー成分100重量部に対して7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。なお、凝集力向上の観点からは、架橋剤の使用量はポリマー成分100重量部に対して0.05重量部以上であることが好ましい。
【0045】
なお、本発明では、架橋剤を用いる代わりに、あるいは、架橋剤を用いるとともに、電子線や紫外線などの照射により架橋処理を施すことも可能である。
【0046】
前記半導体裏面用フィルムは着色されていることが好ましい。これにより、優れたマーキング性及び外観性を発揮させることができ、付加価値のある外観の半導体装置とすることが可能になる。このように、着色された半導体裏面用フィルムは、優れたマーキング性を有しているので、半導体素子又は該半導体素子が用いられた半導体装置の非回路面側の面に、半導体裏面用フィルムを介して、印刷方法やレーザーマーキング方法などの各種マーキング方法を利用することにより、マーキングを施し、文字情報や図形情報などの各種情報を付与させることができる。特に、着色の色をコントロールすることにより、マーキングにより付与された情報(文字情報、図形情報など)を、優れた視認性で視認することが可能になる。また、半導体裏面用フィルムは着色されているので、ダイシングテープと、半導体裏面用フィルムとを、容易に区別することができ、作業性等を向上させることができる。更に、例えば半導体装置として、製品別に色分けすることも可能である。半導体裏面用フィルムを有色にする場合(無色・透明ではない場合)、着色により呈している色としては特に制限されないが、例えば、黒色、青色、赤色などの濃色であることが好ましく、特に黒色であることが好適である。
【0047】
本実施の形態において、濃色とは、基本的には、L***表色系で規定されるL*が、60以下(0〜60)[好ましくは50以下(0〜50)、さらに好ましくは40以下(0〜40)]となる濃い色のことを意味している。
【0048】
また、黒色とは、基本的には、L***表色系で規定されるL*が、35以下(0〜35)[好ましくは30以下(0〜30)、さらに好ましくは25以下(0〜25)]となる黒色系色のことを意味している。なお、黒色において、L***表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、例えば、両方とも、−10〜10であることが好ましく、より好ましくは−5〜5であり、特に−3〜3の範囲(中でも0又はほぼ0)であることが好適である。
【0049】
なお、本実施の形態において、L***表色系で規定されるL*、a*、b*は、色彩色差計(商品名「CR−200」ミノルタ社製;色彩色差計)を用いて測定することにより求められる。なお、L***表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L***)表色系と称される色空間のことを意味している。また、L***表色系は、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。
【0050】
半導体裏面用フィルムを着色する際には、目的とする色に応じて、色材(着色剤)を用いることができる。このような色材としては、黒系色材、青系色材、赤系色材などの各種濃色系色材を好適に用いることができ、特に黒系色材が好適である。色材としては、顔料、染料などいずれであってもよい。色材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、染料としては、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料等のいずれの形態の染料であっても用いることが可能である。また、顔料も、その形態は特に制限されず、公知の顔料から適宜選択して用いることができる。
【0051】
特に、色材として染料を用いると、半導体裏面用フィルム中には、染料が溶解により均一又はほぼ均一に分散した状態となるため、着色濃度が均一又はほぼ均一な半導体裏面用フィルム(ひいてはダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム)を容易に製造することができる。そのため、色材として染料を用いると、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムにおける半導体裏面用フィルムは、着色濃度を均一又はほぼ均一とすることができ、マーキング性や外観性を向上させることができる。
【0052】
黒系色材としては、特に制限されないが、例えば、無機の黒系顔料、黒系染料から適宜選択することができる。また、黒系色材としては、シアン系色材(青緑系色材)、マゼンダ系色材(赤紫系色材)およびイエロー系色材(黄系色材)が混合された色材混合物であってもよい。黒系色材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。もちろん、黒系色材は、黒以外の色の色材と併用することもできる。
【0053】
具体的には、黒系色材としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなど)、グラファイト(黒鉛)、酸化銅、二酸化マンガン、アゾ系顔料(アゾメチンアゾブラックなど)、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライトなど)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素などが挙げられる。
【0054】
本発明では、黒系色材としては、C.I.ソルベントブラック3、同7、同22、同27、同29、同34、同43、同70、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同48、同52、同107、同109、同110、同119、同154C.I.ディスパーズブラック1、同3、同10、同24等のブラック系染料;C.I.ピグメントブラック1、同7等のブラック系顔料なども利用することができる。
【0055】
このような黒系色材としては、例えば、商品名「Oil Black BY」、商品名「OilBlack BS」、商品名「OilBlack HBB」、商品名「Oil Black 803」、商品名「Oil Black 860」、商品名「Oil Black 5970」、商品名「Oil Black 5906」、商品名「Oil Black 5905」(オリエント化学工業株式会社製)などが市販されている。
【0056】
黒系色材以外の色材としては、例えば、シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などが挙げられる。シアン系色材としては、例えば、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95;C.I.アシッドブルー6、同45等のシアン系染料;C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同15:6、同16、同17、同17:1、同18、同22、同25、同56、同60、同63、同65、同66;C.I.バットブルー4;同60、C.I.ピグメントグリーン7等のシアン系顔料などが挙げられる。
【0057】
また、マゼンダ系色材において、マゼンダ系染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同52、同58、同63、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同111、同121、同122;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、同13、同14、同21、同27;C.I.ディスパースバイオレット1;C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40;C.I.ベーシックバイオレット1、同3、同7、同10、同14、同15、同21、同25、同26、同27、28などが挙げられる。
【0058】
マゼンダ系色材において、マゼンダ系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同42、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49、同49:1、同50、同51、同52、同52:2、同53:1、同54、同55、同56、同57:1、同58、同60、同60:1、同63、同63:1、同63:2、同64、同64:1、同67、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同92、同101、同104、同105、同106、同108、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同146、同147、同149、同150、同151、同163、同166、同168、同170、同171、同172、同175、同176、同177、同178、同179、同184、同185、同187、同190、同193、同202、同206、同207、同209、同219、同222、同224、同238、同245;C.I.ピグメントバイオレット3、同9、同19、同23、同31、同32、同33、同36、同38、同43、同50;C.I.バットレッド1、同2、同10、同13、同15、同23、同29、同35などが挙げられる。
【0059】
また、イエロー系色材としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等のイエロー系染料;C.I.ピグメントオレンジ31、同43;C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同23、同24、同34、同35、同37、同42、同53、同55、同65、同73、同74、同75、同81、同83、同93、同94、同95、同97、同98、同100、同101、同104、同108、同109、同110、同113、同114、同116、同117、同120、同128、同129、同133、同138、同139、同147、同150、同151、同153、同154、同155、同156、同167、同172、同173、同180、同185、同195;C.I.バットイエロー1、同3、同20等のイエロー系顔料などが挙げられる。
【0060】
シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などの各種色材は、それぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などの各種色材を2種以上用いる場合、これらの色材の混合割合(または配合割合)としては、特に制限されず、各色材の種類や目的とする色などに応じて適宜選択することができる。
【0061】
半導体裏面用フィルム2を着色させる場合、その着色形態は特に制限されない。例えば、半導体裏面用フィルムは、着色剤が添加された単層のフィルム状物であってもよい。また、少なくとも熱硬化性樹脂により形成された樹脂層と、着色剤層とが少なくとも積層された積層フィルムであってもよい。なお、半導体裏面用フィルム2が樹脂層と着色剤層との積層フィルムである場合、積層形態の半導体裏面用フィルム2としては、樹脂層/着色剤層/樹脂層の積層形態を有していることが好ましい。この場合、着色剤層の両側の2つの樹脂層は、同一の組成の樹脂層であってもよく、異なる組成の樹脂層であってもよい。
【0062】
半導体裏面用フィルム2には、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば、充填剤(フィラー)、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤の他、増量剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0063】
前記充填剤としては、無機充填剤、有機充填剤のいずれであってもよいが、無機充填剤が好適である。無機充填剤等の充填剤の配合により、半導体裏面用フィルムに導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を図ることができる。なお、半導体裏面用フィルム2としては導電性であっても、非導電性であってもよい。前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田などの金属、又は合金類、その他カーボンなどからなる種々の無機粉末などが挙げられる。充填剤は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。充填剤としては、なかでも、シリカ、特に溶融シリカが好適である。なお、無機充填剤の平均粒径は0.1μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。無機充填剤の平均粒径は、例えば、レーザー回折型粒度分布測定装置によって測定することができる。
【0064】
前記充填剤(特に無機充填剤)の配合量は、有機樹脂成分100重量部に対して80重量部以下(0重量部〜80重量部)であることが好ましく、特に0重量部〜70重量部であることが好適である。
【0065】
また、前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。難燃剤は、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。イオントラップ剤は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0066】
半導体裏面用フィルム2は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と、必要に応じてアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して樹脂組成物を調製し、フィルム状の層に形成する慣用の方法を利用し形成することができる。具体的には、例えば、前記樹脂組成物を、ダイシングテープの粘着剤層32上に塗布する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)上に前記樹脂組成物を塗布して樹脂層(又は接着剤層)を形成し、これを粘着剤層32上に転写(移着)する方法などにより、半導体裏面用フィルムとしてのフィルム状の層(接着剤層)を形成することができる。なお、前記樹脂組成物は、溶液であっても分散液であってもよい。
【0067】
なお、半導体裏面用フィルム2が、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合、半導体裏面用フィルムは、半導体ウエハに適用する前の段階では、熱硬化性樹脂が未硬化又は部分硬化の状態である。この場合、半導体ウエハに適用後に(具体的には、通常、フリップチップボンディング工程で封止材をキュアする際に)、半導体裏面用フィルム中の熱硬化性樹脂を完全に又はほぼ完全に硬化させる。
【0068】
このように、半導体裏面用フィルムは、熱硬化性樹脂を含んでいても、該熱硬化性樹脂は未硬化又は部分硬化の状態であるため、半導体裏面用フィルムのゲル分率としては、特に制限されないが、例えば、50重量%以下(0重量%〜50重量%)の範囲より適宜選択することができ、好ましくは30重量%以下(0重量%〜30重量%)であり、特に10重量%以下(0重量%〜10重量%)であることが好適である。半導体裏面用フィルムのゲル分率の測定方法は、以下の測定方法により測定することができる。
<ゲル分率の測定方法>
半導体裏面用フィルムから約0.1gをサンプリングして精秤し(試料の重量)、該サンプルをメッシュ状シートで包んだ後、約50mlのトルエン中に室温で1週間浸漬させる。その後、溶剤不溶分(メッシュ状シートの内容物)をトルエンから取り出し、130℃で約2時間乾燥させ、乾燥後の溶剤不溶分を秤量し(浸漬・乾燥後の重量)、下記式(a)よりゲル分率(重量%)を算出する。
ゲル分率(重量%)=[(浸漬・乾燥後の重量)/(試料の重量)]×100 (a)
【0069】
なお、半導体裏面用フィルムのゲル分率は、樹脂成分の種類やその含有量、架橋剤の種類やその含有量の他、加熱温度や加熱時間などによりコントロールすることができる。
【0070】
本発明において、半導体裏面用フィルムは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されたフィルム状物である場合、半導体ウエハに対する密着性を有効に発揮することができる。
【0071】
尚、半導体ウエハのダイシング工程では切削水を使用することから、半導体裏面用フィルムが吸湿して、常態以上の含水率になる場合がある。この様な高含水率のまま、フリップチップボンディングを行うと、半導体裏面用フィルム2と半導体ウエハ又はその加工体(半導体)との接着界面に水蒸気が溜まり、浮きが発生する場合がある。従って、半導体裏面用フィルムとしては、透湿性の高いコア材料を両面に設けた構成とすることにより、水蒸気が拡散して、かかる問題を回避することが可能となる。かかる観点から、コア材料の片面又は両面に半導体裏面用フィルム2、12を形成した多層構造を半導体裏面用フィルムとして用いてもよい。前記コア材料としては、フィルム(例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、シリコン基板又はガラス基板等が挙げられる。
【0072】
半導体裏面用フィルム2の厚さ(積層フィルムの場合は総厚)は特に限定されないが、例えば、2μm〜200μm程度の範囲から適宜選択することができる。更に、前記厚さは4μm〜160μm程度が好ましく、6μm〜100μm程度がより好ましく、10μm〜80μm程度が特に好ましい。
【0073】
前記半導体裏面用フィルム2の未硬化状態における23℃での引張貯蔵弾性率は1GPa以上(例えば、1GPa〜50GPa)であることが好ましく、より好ましくは2GPa以上であり、特に3GPa以上であることが好適である。前記引張貯蔵弾性率が1GPa以上であると、半導体チップを半導体裏面用フィルム2と共に、ダイシングテープの粘着剤層32から剥離させた後、半導体裏面用フィルム2を支持体上に載置して、輸送等を行った際に、半導体裏面用フィルムが支持体に貼着するのを有効に抑制又は防止することができる。尚、前記支持体は、例えば、キャリアテープにおけるトップテープやボトムテープなどをいう。なお、半導体裏面用フィルム2が熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合、前述のように、熱硬化性樹脂は、通常、未硬化又は部分硬化の状態であるので、半導体裏面用フィルムの23℃における弾性率は、通常、熱硬化性樹脂が未硬化状態又は部分硬化状態での23℃における弾性率となる。
【0074】
ここで、半導体裏面用フィルム2は単層でもよく複数の層が積層された積層フィルムであってもよいが、積層フィルムの場合、前記未硬化状態における23℃での引張貯蔵弾性率は積層フィルム全体として1GPa以上(例えば、1GPa〜50GPa)の範囲であればよい。また、半導体裏面用フィルムの未硬化状態における前記引張貯蔵弾性率(23℃)は、樹脂成分(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)の種類やその含有量、シリカフィラー等の充填材の種類やその含有量などによりコントロールすることができる。なお、半導体裏面用フィルム2が複数の層が積層された積層フィルムである場合(半導体裏面用フィルムが積層の形態を有している場合)、その積層形態としては、例えば、ウエハ接着層とレーザーマーク層とからなる積層形態などを例示することができる。また、このようなウエハ接着層とレーザーマーク層との間には、他の層(中間層、光線遮断層、補強層、着色層、基材層、電磁波遮断層、熱伝導層、粘着層など)が設けられていてもよい。なお、ウエハ接着層はウエハに対して優れた密着性(接着性)を発揮する層であり、ウエハの裏面と接触する層である。一方、レーザーマーク層は優れたレーザーマーキング性を発揮する層であり、半導体チップの裏面にレーザーマーキングを行う際に利用される層である。
【0075】
尚、前記引張貯蔵弾性率は、ダイシングテープ3に積層させずに、未硬化状態の半導体裏面用フィルム2を作製し、レオメトリック社製の動的粘弾性測定装置「Solid Analyzer RS A2」を用いて、引張モードにて、サンプル幅:10mm、サンプル長さ:22.5mm、サンプル厚さ:0.2mmで、周波数:1Hz、昇温速度:10℃/分、窒素雰囲気下、所定の温度(23℃)にて測定して、得られた引張貯蔵弾性率の値とした。
【0076】
前記半導体裏面用フィルム2は、少なくとも一方の面がセパレータ(剥離ライナー)により保護されていることが好ましい(図示せず)。例えば、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の場合、半導体裏面用フィルムの一方の面のみにセパレータが設けられていてもよく、一方、ダイシングテープと一体化されていない半導体裏面用フィルムの場合、半導体裏面用フィルムの片面又は両面にセパレータが設けられていてもよい。セパレータは、実用に供するまで半導体裏面用フィルムを保護する保護材としての機能を有している。また、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の場合、セパレータは、更に、ダイシングテープの基材上の粘着剤層32に半導体裏面用フィルム2を転写する際の支持基材として用いることができる。セパレータは、半導体裏面用フィルム上に半導体ウエハを貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルム(ポリエチレンテレフタレートなど)や紙等も使用可能である。なお、セパレータは従来公知の方法により形成することができる。また、セパレータの厚さ等も特に制限されない。
【0077】
半導体裏面用フィルム2がダイシングテープ3に積層されていない場合、半導体裏面用フィルム2は、両面に剥離層を有するセパレータを1枚用いてロール状に巻回された形態で、両面に剥離層を有するセパレータにより保護されていてもよく、少なくとも一方の面に剥離層を有するセパレータにより保護されていてもよい。
【0078】
また、半導体裏面用フィルム2における可視光(波長:400nm〜800nm)の光線透過率(可視光透過率)は、特に制限されないが、例えば、20%以下(0%〜20%)の範囲であることが好ましく、より好ましくは10%以下(0%〜10%)、特に好ましくは5%以下(0%〜5%)である。半導体裏面用フィルム2は、可視光透過率が20%より大きいと、光線通過により、半導体素子に悪影響を及ぼす恐れがある。また、前記可視光透過率(%)は、半導体裏面用フィルム2の樹脂成分の種類やその含有量、着色剤(顔料や染料など)の種類やその含有量、無機充填材の含有量などによりコントロールすることができる。
【0079】
半導体裏面用フィルム2の可視光透過率(%)は、次の通りにして測定することができる。即ち、厚さ(平均厚さ)20μmの半導体裏面用フィルム2単体を作製する。次に、半導体裏面用フィルム2に対し、波長:400nm〜800nmの可視光線[装置:島津製作所製の可視光発生装置(商品名「ABSORPTION SPECTRO PHOTOMETR」)]を所定の強度で照射し、透過した可視光線の強度を測定する。更に、可視光線が半導体裏面用フィルム2を透過する前後の強度変化より、可視光透過率の値を求めることができる。尚、20μmの厚さでない半導体裏面用フィルム2の可視光透過率(%;波長:400nm〜800nm)の値により、厚さ:20μmの半導体裏面用フィルム2の可視光透過率(%;波長:400nm〜800nm)を導き出すことも可能である。また、本発明では、厚さ20μmの半導体裏面用フィルム2の場合における可視光透過率(%)を求めているが、本発明に係る半導体裏面用フィルムは厚さ20μmのものに限定される趣旨ではない。
【0080】
また、半導体裏面用フィルム2としては、その吸湿率が低い方が好ましい。具体的には、前記吸湿率は1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.8重量%以下である。前記吸湿率を1重量%以下にすることにより、レーザーマーキング性を向上させることができる。また、例えば、リフロー工程に於いて、半導体裏面用フィルム2と半導体素子との間でボイドの発生などを抑制又は防止することもできる。尚、前記吸湿率は、半導体裏面用フィルム2を、温度85℃、相対湿度85%RHの雰囲気下で168時間放置する前後の重量変化により算出した値である。半導体裏面用フィルム2が熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合、前記吸湿率は、熱硬化後の半導体裏面用フィルムに対し、温度85℃、相対湿度85%RHの雰囲気下で168時間放置したときの値を意味する。また、前記吸湿率は、例えば、無機フィラーの添加量を変化させることにより調整することができる。
【0081】
また、半導体裏面用フィルム2としては、揮発分の割合が少ない方が好ましい。具体的には、加熱処理後の半導体裏面用フィルム2の重量減少率(重量減少量の割合)が1重量%以下が好ましく、0.8重量%以下がより好ましい。加熱処理の条件は、例えば、加熱温度250℃、加熱時間1時間である。前記重量減少率を1重量%以下にすることにより、レーザーマーキング性を向上させることができる。また、例えば、リフロー工程に於いて、フリップチップ型の半導体装置にクラックが発生するのを抑制又は防止することができる。前記重量減少率は、例えば、鉛フリーハンダリフロー時のクラック発生を減少させ得る無機物を添加することにより、調整することができる。なお、半導体裏面用フィルム2が熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合、前記重量減少率は、熱硬化後の半導体裏面用フィルムに対し、加熱温度250℃、加熱時間1時間の条件下で加熱したときの値を意味する。
【0082】
(ダイシングテープ)
前記ダイシングテープ3は、基材31上に粘着剤層32が形成されて構成されている。このように、ダイシングテープ3は、基材31と、粘着剤層32とが積層された構成を有していればよい。基材(支持基材)は粘着剤層等の支持母体として用いることができる。前記基材31は放射線透過性を有していることが好ましい。前記基材31としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、フェルト、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体[特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など]等の適宜な薄葉体を用いることができる。本発明では、基材としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチック材における素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体等のエチレンをモノマー成分とする共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリ塩化ビニリデン;ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体);セルロース系樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂などが挙げられる。
【0083】
また基材31の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後にその基材31を熱収縮させることにより粘着剤層32と半導体裏面用フィルム2との接着面積を低下させて、半導体チップの回収の容易化を図ることができる。
【0084】
基材31の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0085】
前記基材31は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、基材31には、帯電防止能を付与する為、前記の基材31上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材31は単層あるいは2種以上の複層でもよい。
【0086】
基材31の厚さ(積層体の場合は総厚)は、特に制限されず強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば、1μm〜1000μm)、好ましくは10μm〜500μm、さらに好ましくは20μm〜300μm、特に30μm〜200μm程度であるが、これらに限定されない。
【0087】
なお、基材31には、本発明の効果等を損なわない範囲で、各種添加剤(着色剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤など)が含まれていてもよい。
【0088】
前記粘着剤層32は粘着剤により形成されており、粘着性を有している。このような粘着剤としては、特に制限されず、公知の粘着剤の中から適宜選択することができる。具体的には、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ−プ特性改良型粘着剤などの公知の粘着剤(例えば、特開昭56−61468号公報、特開昭61−174857号公報、特開昭63−17981号公報、特開昭56−13040号公報等参照)の中から、前記特性を有する粘着剤を適宜選択して用いることができる。また、粘着剤としては、放射線硬化型粘着剤(又はエネルギー線硬化型粘着剤)や、熱膨張性粘着剤を用いることもできる。粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0089】
前記粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤を好適に用いることができ、特にアクリル系粘着剤が好適である。アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体(単独重合体又は共重合体)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0090】
前記アクリル系粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が4〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適である。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状の何れであっても良い。
【0091】
なお、前記アクリル系重合体は、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分(共重合性単量体成分)に対応する単位を含んでいてもよい。このような共重合性単量体成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素含有モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどの複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子などを有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマー等が挙げられる。これらの共重合性単量体成分は1種又は2種以上使用できる。
【0092】
粘着剤として放射線硬化型粘着剤(又はエネルギー線硬化型粘着剤)を用いる場合、放射線硬化型粘着剤(組成物)としては、例えば、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するポリマーをベースポリマーとして用いた内在型の放射線硬化型粘着剤や、粘着剤中に紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分が配合された放射線硬化型粘着剤などが挙げられる。また、粘着剤として熱膨張性粘着剤を用いる場合、熱膨張性粘着剤としては、例えば、粘着剤と発泡剤(特に熱膨張性微小球)とを含む熱膨張性粘着剤などが挙げられる。
【0093】
本発明では、粘着剤層32には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤(例えば、粘着付与樹脂、着色剤、増粘剤、増量剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、架橋剤など)が含まれていても良い。
【0094】
前記架橋剤としては、特に制限されず、公知の架橋剤を用いることができる。具体的には、架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられ、イソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤が好適である。架橋剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、架橋剤の使用量は、特に制限されない。
【0095】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−トなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。また、前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0096】
なお、本発明では、架橋剤を用いる代わりに、あるいは、架橋剤を用いるとともに、電子線や紫外線などの照射により架橋処理を施すことも可能である。
【0097】
粘着剤層32は、例えば、粘着剤(感圧接着剤)と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して、シート状の層に形成する慣用の方法を利用し形成することができる。具体的には、例えば、粘着剤および必要に応じて溶媒やその他の添加剤を含む混合物を、基材31上に塗布する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)上に前記混合物を塗布して粘着剤層32を形成し、これを基材31上に転写(移着)する方法などにより、粘着剤層32を形成することができる。
【0098】
粘着剤層32の厚さは特に制限されず、例えば、5μm〜300μm(好ましくは5μm〜200μm、さらに好ましくは5μm〜100μm、特に好ましくは7μm〜50μm)程度である。粘着剤層32の厚さが前記範囲内であると、適度な粘着力を発揮することができる。なお、粘着剤層32は単層、複層の何れであってもよい。
【0099】
前記ダイシングテープ3の粘着剤層32のフリップチップ型半導体裏面用フィルム2に対する接着力(23℃、剥離角度180度、剥離速度300mm/分)は、0.02N/20mm〜10N/20mmの範囲が好ましく、0.05N/20mm〜5N/20mmの範囲がより好ましい。前記接着力を0.02N/20mm以上にすることにより、半導体ウエハのダイシングの際に半導体素子がチップ飛びするのを防止することができる。その一方、前記接着力を10N/20mm以下にすることにより、半導体素子をピックアップする際に、当該半導体素子の剥離が困難になったり、糊残りが発生するのを防止することができる。
【0100】
なお、本発明では、フリップチップ型半導体裏面用フィルム2や、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1には、帯電防止能を持たせることができる。これにより、その接着時及び剥離時等に於ける静電気の発生やそれによる半導体ウエハ等の帯電で回路が破壊されること等を防止することができる。帯電防止能の付与は、基材31、粘着剤層32乃至半導体裏面用フィルム2へ帯電防止剤や導電性物質を添加する方法、基材31への電荷移動錯体や金属膜等からなる導電層を付設する方法等、適宜な方式で行うことができる。これらの方式としては、半導体ウエハを変質させるおそれのある不純物イオンが発生しにくい方式が好ましい。導電性の付与、熱伝導性の向上等を目的として配合される導電性物質(導電フィラー)としては、銀、アルミニウム、金、銅、ニッケル、導電性合金等の球状、針状、フレーク状の金属粉、アルミナ等の金属酸化物、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。ただし、前記半導体裏面用フィルム2は、非導電性であることが、電気的にリークしないようにできる点から好ましい。
【0101】
また、フリップチップ型半導体裏面用フィルム2や、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シート(フィルム)が積層された形態で形成されていてもよい。例えば、ロール状に巻回された形態を有している場合、半導体裏面用フィルム2又は、半導体裏面用フィルム2とダイシングテープ3との積層体を、必要に応じてセパレータにより保護した状態でロール状に巻回して、ロール状に巻回された状態又は形態の半導体裏面用フィルム2やダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1として作製することができる。なお、ロール状に巻回された状態又は形態のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1としては、基材31と、前記基材31の一方の面に形成された粘着剤層32と、前記粘着剤層32上に形成された半導体裏面用フィルムと、前記基材31の他方の面に形成された剥離処理層(背面処理層)とで構成されていてもよい。
【0102】
なお、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の厚さ(半導体裏面用フィルムの厚さと、基材31及び粘着剤層32からなるダイシングテープの厚さの総厚)としては、例えば、8μm〜1500μmの範囲から選択することができ、好ましくは20μm〜850μm(さらに好ましくは31μm〜500μm、特に好ましくは47μm〜330μm)である。
【0103】
なお、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1において、半導体裏面用フィルム2の厚さと、ダイシングテープ3の粘着剤層32の厚さとの比や、半導体裏面用フィルム2の厚さと、ダイシングテープ3の厚さ(基材31及び粘着剤層32の総厚)との比をコントロールすることにより、ダイシング工程時のダイシング性、ピックアップ工程時のピックアップ性などを向上させることができ、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を半導体ウエハのダイシング工程〜半導体チップのフリップチップボンディング工程にかけて有効に利用することができる。
【0104】
(ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの製造方法)
本実施の形態に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの製造方法について、図1に示すダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を例にして説明する。先ず、基材31は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0105】
次に、基材31上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて(必要に応じて加熱架橋させて)粘着剤層32を形成する。塗布方式としては、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。なお、粘着剤層組成物を直接基材31に塗布して、基材31上に粘着剤層32を形成してもよく、また、粘着剤組成物を表面に剥離処理を行った剥離紙等に塗布して粘着剤層32を形成させた後、該粘着剤層32を基材31に転写させてもよい。これにより、基材31上に粘着剤層32を形成されたダイシングテープ3が作製される。
【0106】
一方、半導体裏面用フィルム2を形成する為の形成材料を剥離紙上に乾燥後の厚みが所定厚みとなる様に塗布し、更に所定条件下で乾燥して(熱硬化が必要な場合などでは、必要に応じて加熱処理を施し乾燥して)、塗布層を形成する。この塗布層を前記粘着剤層32上に転写することにより、半導体裏面用フィルム2を粘着剤層32上に形成する。なお、前記粘着剤層32上に、半導体裏面用フィルム2を形成する為の形成材料を直接塗布した後、所定条件下で乾燥する(熱硬化が必要な場合などでは、必要に応じて加熱処理を施して乾燥する)ことによっても、半導体裏面用フィルム2を粘着剤層32上に形成することができる。以上により、本発明に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を得ることができる。なお、半導体裏面用フィルム2を形成する際に熱硬化を行う場合、部分硬化の状態となる程度で熱硬化を行うことが重要であるが、好ましくは熱硬化を行わない。
【0107】
本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、フリップチップボンディング工程を具備する半導体装置の製造の際に好適に用いることができる。すなわち、本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、フリップチップ実装の半導体装置を製造する際に用いられ、半導体チップの裏面に、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の半導体裏面用フィルム2が貼着している状態又は形態で、フリップチップ実装の半導体装置が製造される。従って、本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、フリップチップ実装の半導体装置(半導体チップが基板等の被着体に、フリップチップボンディング方式で固定された状態又は形態の半導体装置)に対して用いることができる。
【0108】
なお、半導体裏面用フィルム2は、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1と同様に、フリップチップ実装の半導体装置(半導体チップが基板等の被着体に、フリップチップボンディング方式で固定された状態又は形態の半導体装置)に対して用いることができる。
【0109】
(半導体ウエハ)
半導体ウエハとしては、公知乃至慣用の半導体ウエハであれば特に制限されず、各種素材の半導体ウエハから適宜選択して用いることができる。本発明では、半導体ウエハとしては、シリコンウエハを好適に用いることができる。
【0110】
(半導体装置の製造方法)
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法について、図2を参照しながら以下に説明する。図2は、前記ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を用いた場合の半導体装置の製造方法を示す断面模式図である。
【0111】
前記半導体装置の製造方法は、前記ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を用いて半導体装置を製造することができる。具体的には、前記ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム上に半導体ウエハを貼着する工程と、前記半導体ウエハをダイシングする工程と、ダイシングにより得られた半導体素子をピックアップする工程と、前記半導体素子を被着体上にフリップチップ接続する工程とを少なくとも具備する。
【0112】
なお、半導体裏面用フィルム2の場合、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を用いた場合の半導体装置の製造方法に準じた方法により、半導体装置を製造することができる。例えば、半導体裏面用フィルム2はダイシングテープと貼り合わせて、ダイシングテープと一体化させたダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムとして用いて、半導体装置を製造することができる。この場合、半導体裏面用フィルム2を用いた半導体装置の製造方法は、前記ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの製造方法における工程に、さらに、半導体裏面用フィルムとダイシングテープとを、半導体裏面用フィルムとダイシングテープの粘着剤層が接触する形態で貼り合わせる工程を具備した製造方法になる。
【0113】
また、半導体裏面用フィルム2は、ダイシングテープと一体化せずに、半導体ウエハに貼着させて用いることもできる。この場合、半導体裏面用フィルム2を用いた半導体装置の製造方法は、前記ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの製造方法におけるダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム上に半導体ウエハを貼着する工程を、半導体裏面用フィルムを半導体ウエハに貼着する工程、半導体ウエハに貼着されている半導体裏面用フィルムに、ダイシングテープを、半導体裏面用フィルムとダイシングテープの粘着剤層が接触する形態で貼り合わせる工程とした製造方法になる。
【0114】
また、半導体裏面用フィルム2は、半導体ウエハを個片化した半導体チップに貼着させて用いることもできる。この場合、半導体裏面用フィルム2を用いた半導体装置の製造方法は、例えば、ダイシングテープを半導体ウエハに貼着する工程と、前記半導体ウエハをダイシングする工程と、ダイシングにより得られた半導体素子をピックアップする工程と、前記半導体素子を被着体上にフリップチップ接続する工程と、半導体素子に、半導体裏面用フィルムを貼着する工程とを少なくとも具備した製造方法であってもよい。
【0115】
[マウント工程]
先ず、図2(a)で示されるように、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の半導体裏面用フィルム2上に任意に設けられたセパレータを適宜に剥離し、当該半導体裏面用フィルム2上に半導体ウエハ4を貼着して、これを接着保持させ固定する(マウント工程)。このとき前記半導体裏面用フィルム2は未硬化状態(半硬化状態を含む)にある。また、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、半導体ウエハ4の裏面に貼着される。半導体ウエハ4の裏面とは、回路面とは反対側の面(非回路面、非電極形成面などとも称される)を意味する。貼着方法は特に限定されないが、圧着による方法が好ましい。圧着は、通常、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行われる。
【0116】
[ダイシング工程」
次に、図2(b)で示されるように、半導体ウエハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウエハ4を所定のサイズに切断して個片化(小片化)し、半導体チップ5を製造する。ダイシングは、例えば、半導体ウエハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えば、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1まで切込みを行うフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウエハ4は、半導体裏面用フィルムを有するダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1により優れた密着性で接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウエハ4の破損も抑制できる。なお、半導体裏面用フィルム2がエポキシ樹脂を含む樹脂組成物により形成されていると、ダイシングにより切断されても、その切断面において半導体裏面用フィルムの接着剤層の糊はみ出しが生じるのを抑制又は防止することができる。その結果、切断面同士が再付着(ブロッキング)することを抑制又は防止することができ、後述のピックアップを一層良好に行うことができる。
【0117】
なお、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1のエキスパンドを行う場合、該エキスパンドは従来公知のエキスパンド装置を用いて行うことができる。エキスパンド装置は、ダイシングリングを介してダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を下方へ押し下げることが可能なドーナッツ状の外リングと、外リングよりも径が小さくダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを支持する内リングとを有している。このエキスパンド工程により、後述のピックアップ工程において、隣り合う半導体チップ同士が接触して破損するのを防ぐことが出来る。
【0118】
[ピックアップ工程]
ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1に接着固定された半導体チップ5を回収する為に、図2(c)で示されるように、半導体チップ5のピックアップを行って、半導体チップ5を半導体裏面用フィルム2とともにダイシングテープ3より剥離させる。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の基材31側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。なお、ピックアップされた半導体チップ5は、その裏面が半導体裏面用フィルム2により保護されている。
【0119】
[フリップチップ接続工程]
ピックアップした半導体チップ5は、図2(d)で示されるように、基板等の被着体に、フリップチップボンディング方式(フリップチップ実装方式)により固定させる。具体的には、半導体チップ5を、半導体チップ5の回路面(表面、回路パターン形成面、電極形成面などとも称される)が被着体6と対向する形態で、被着体6に常法に従い固定させる。例えば、半導体チップ5の回路面側に形成されているバンプ51を、被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材(半田など)61に接触させて押圧しながら導電材を溶融させることにより、半導体チップ5と被着体6との電気的導通を確保し、半導体チップ5を被着体6に固定させることができる(フリップチップボンディング工程)。このとき、半導体チップ5と被着体6との間には空隙が形成されており、その空隙間距離は、一般的に30μm〜300μm程度である。尚、半導体チップ5を被着体6上にフリップチップボンディング(フリップチップ接続)した後は、半導体チップ5と被着体6との対向面や間隙を洗浄し、該間隙に封止材(封止樹脂など)を充填させて封止することが重要である。
【0120】
被着体6としては、リードフレームや回路基板(配線回路基板など)等の各種基板を用いることができる。このような基板の材質としては、特に限定されるものではないが、セラミック基板や、プラスチック基板が挙げられる。プラスチック基板としては、例えば、エポキシ基板、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板等が挙げられる。
【0121】
フリップチップボンディング工程において、バンプや導電材の材質としては、特に限定されず、例えば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材等の半田類(合金)や、金系金属材、銅系金属材などが挙げられる。
【0122】
なお、フリップチップボンディング工程では、導電材を溶融させて、半導体チップ5の回路面側のバンプと、被着体6の表面の導電材とを接続させているが、この導電材の溶融時の温度としては、通常、260℃程度(例えば、250℃〜300℃)となっている。本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムは、半導体裏面用フィルムをエポキシ樹脂等により形成することにより、このフリップチップボンディング工程における高温にも耐えられる耐熱性を有するものとすることができる。
【0123】
本工程では、半導体チップ5と被着体6との対向面(電極形成面)や間隙の洗浄を行うのが好ましい。当該洗浄に用いられる洗浄液としては、特に制限されず、例えば、有機系の洗浄液や、水系の洗浄液が挙げられる。本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムにおける半導体裏面用フィルムは、洗浄液に対する耐溶剤性を有しており、これらの洗浄液に対して実質的に溶解性を有していない。そのため、前述のように、洗浄液としては、各種洗浄液を用いることができ、特別な洗浄液を必要とせず、従来の方法により洗浄させることができる。
【0124】
次に、フリップチップボンディングされた半導体チップ5と被着体6との間の間隙を封止するための封止工程を行う。封止工程は、封止樹脂を用いて行われる。このときの封止条件としては特に限定されないが、通常、175℃で60秒間〜90秒間の加熱を行うことにより、封止樹脂の熱硬化が行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165℃〜185℃で、数分間キュアすることができる。当該工程における熱処理においては、封止樹脂だけでなく半導体裏面用フィルム2の熱硬化も同時に行われる。これにより、封止樹脂及び半導体裏面用フィルム2の双方が、熱硬化の進行に伴い硬化収縮をする。その結果、封止樹脂の硬化収縮に起因して半導体チップ5に加えられる応力は、半導体裏面用フィルム2が硬化収縮することにより相殺ないし緩和することができる。また、当該工程により、半導体裏面用フィルム2を完全に又はほぼ完全に熱硬化させることができ、優れた密着性で半導体素子の裏面に貼着させることができる。更に、本発明に係る半導体裏面用フィルム2は、未硬化状態であっても当該封止工程の際に、封止材と共に熱硬化させることができるので、半導体裏面用フィルム2を熱硬化させるための工程を新たに追加する必要がない。
【0125】
前記封止樹脂としては、絶縁性を有する樹脂(絶縁樹脂)であれば特に制限されず、公知の封止樹脂等の封止材から適宜選択して用いることができるが、弾性を有する絶縁樹脂がより好ましい。封止樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、前記に例示のエポキシ樹脂等が挙げられる。また、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物による封止樹脂としては、樹脂成分として、エポキシ樹脂以外に、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(フェノール樹脂など)や、熱可塑性樹脂などが含まれていてもよい。なお、フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤としても利用することができ、このようなフェノール樹脂としては、前記に例示のフェノール樹脂などが挙げられる。
【0126】
前記ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1や半導体裏面用フィルム2を用いて製造された半導体装置(フリップチップ実装の半導体装置)は、半導体チップの裏面に半導体裏面用フィルムが貼着されているため、各種マーキングを優れた視認性で施すことができる。特に、マーキング方法がレーザーマーキング方法であっても、優れたコントラスト比でマーキングを施すことができ、レーザーマーキングにより施された各種情報(文字情報、図研情報など)を良好に視認することが可能である。なお、レーザーマーキングを行う際には、公知のレーザーマーキング装置を利用することができる。また、レーザーとしては、気体レーザー、個体レーザー、液体レーザーなどの各種レーザーを利用することができる。具体的には、気体レーザーとしては、特に制限されず、公知の気体レーザーを利用することができるが、炭酸ガスレーザー(COレーザー)、エキシマレーザー(ArFレーザー、KrFレーザー、XeClレーザー、XeFレーザーなど)が好適である。また、固体レーザーとしては、特に制限されず、公知の固体レーザーを利用することができるが、YAGレーザー(Nd:YAGレーザーなど)、YVOレーザーが好適である。
【0127】
本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムや半導体裏面用フィルムを用いて製造された半導体装置は、フリップチップ実装方式で実装された半導体装置であるので、ダイボンディング実装方式で実装された半導体装置よりも、薄型化、小型化された形状となっている。このため、各種の電子機器・電子部品又はそれらの材料・部材として好適に用いることができる。具体的には、本発明のフリップチップ実装の半導体装置が利用される電子機器としては、いわゆる「携帯電話」や「PHS」、小型のコンピュータ(例えば、いわゆる「PDA」(携帯情報端末)、いわゆる「ノートパソコン」、いわゆる「ネットブック(商標)」、いわゆる「ウェアラブルコンピュータ」など)、「携帯電話」及びコンピュータが一体化された小型の電子機器、いわゆる「デジタルカメラ(商標)」、いわゆる「デジタルビデオカメラ」、小型のテレビ、小型のゲーム機器、小型のデジタルオーディオプレイヤー、いわゆる「電子手帳」、いわゆる「電子辞書」、いわゆる「電子書籍」用電子機器端末、小型のデジタルタイプの時計などのモバイル型の電子機器(持ち運び可能な電子機器)などが挙げられるが、もちろん、モバイル型以外(設置型など)の電子機器(例えば、いわゆる「ディスクトップパソコン」、薄型テレビ、録画・再生用電子機器(ハードディスクレコーダー、DVDプレイヤー等)、プロジェクター、マイクロマシンなど)などであってもよい。また、電子部品又は、電子機器・電子部品の材料・部材としては、例えば、いわゆる「CPU」の部材、各種記憶装置(いわゆる「メモリー」、ハードディスクなど)の部材などが挙げられる。
【0128】
上述した実施形態では、本発明の半導体装置用接着フィルムがフリップチップ型の半導体装置の製造に用いられる場合、すなわち、被着体上にフリップチップ接続された半導体素子の裏面に形成するためのフリップチップ型半導体裏面用フィルムである場合について説明した。しかしながら本発明の半導体装置用接着フィルムは、この例に限定されず、フリップチップ型の半導体装置以外の半導体装置の製造に用いてもよい。例えば、本発明の半導体装置用接着フィルムは、ダイボンドフィルムとして使用することができる。
【実施例】
【0129】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部は特記がない限りいずれも重量基準である。
【0130】
(実施例1)
<フリップチップ型半導体裏面用フィルムの作製>
エポキシ樹脂(商品名「HP4032D」DIC株式会社製):100部に対して、フェノキシ樹脂(商品名「EP4250」JER株式会社製):40部、フェノール樹脂(商品名「MEH−8000」明和化成株式会社製):90部、球状シリカ(商品名「SO−25R」株式会社アドマテックス製):1137部、染料(商品名「OIL BLACK BS」オリエント化学工業株式会社製):20部、熱硬化促進触媒0.02部(商品名「2PHZ−PW」四国化成製)をメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が23.6重量%となる樹脂組成物の溶液(「樹脂組成物溶液A」と称する場合がある)を調製した。
【0131】
上記樹脂組成物溶液Aを、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布し、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ60μmのフリップチップ型半導体裏面用フィルムを作製した。
【0132】
(実施例2)
熱硬化促進触媒の含有量を0.5部とした以外は、実施例1と同様にして実施例2に係るフリップチップ型半導体裏面用フィルムを作製した。
【0133】
(実施例3)
熱硬化促進触媒としてリン-ホウ素系触媒(商品名「TPP-K」)の含有量を0.5部とした以外は、実施例1と同様にして実施例3に係るフリップチップ型半導体裏面用フィルムを作製した。
【0134】
(実施例4)
<フリップチップ型半導体裏面用フィルムの作製>
エポキシ樹脂(商品名「HP4032D」DIC株式会社製):100部に対して、フェノキシ樹脂(商品名「EP4250」JER株式会社製):40部、球状シリカ(商品名「SO−25R」株式会社アドマテックス製):1137部、染料(商品名「OIL BLACK BS」オリエント化学工業株式会社製):20部、熱硬化促進触媒0.3部(商品名「2PHZ−PW」四国化成製)をメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が23.6重量%となる樹脂組成物の溶液(「樹脂組成物溶液A」と称する場合がある)を調製した。
【0135】
(比較例1)
熱硬化促進触媒の含有量を0.6部とした以外は、実施例1と同様にして比較例1に係るフリップチップ型半導体裏面用フィルムを作製した。
【0136】
(評価)
実施例1〜4及び比較例1で作製したフリップチップ型半導体裏面用フィルムについて、反応発熱量、熱硬化前の引張貯蔵弾性率、伸び率、を下記の方法により測定した。測定は、フリップチップ型半導体裏面用フィルムの作製直後と4週間保存した後とに行った。また、4週間保存した後のフリップチップ型半導体裏面用フィルムを下記の方法により評価した。
【0137】
<発熱量の測定方法>
各実施例および比較例に係るフリップチップ型半導体裏面用フィルムを直径4mmの円形状に打抜き、示差走査熱量計(TA Instrument製、DSC Q2000)にて−50℃から300℃まで0.5℃/分で昇温させ、観察された反応発熱ピーク温度の±80℃の温度範囲における反応発熱量を測定した。反応発熱量は、フリップチップ型半導体裏面用フィルムの作製直後と、25℃の条件下で4週間保存した後に行った。図3は、示差走査熱量測定により得られる典型的な示差熱量曲線を示す図である。具体的に、前記反応発熱量は、図3に示すベースラインBと示差熱量曲線Lとで囲まれる領域の面積を算出し、これを反応発熱量とした。結果を表1、表2に示す。なお、表2には、保存前の反応発熱量に対する、保存後の反応発熱量の割合も合わせて示した。
【0138】
<熱硬化前の引張貯蔵弾性率の測定>
フリップチップ型半導体裏面用フィルムの熱硬化前の23℃における引張貯蔵弾性率は、フリップチップ型半導体裏面用フィルムを単体で作製し、レオメトリック社製の動的粘弾性測定装置「Solid Analyzer RS A2」を用いて測定した。熱硬化前の引張貯蔵弾性率は、フリップチップ型半導体裏面用フィルムの作製直後と、25℃の条件下で4週間保存した後に行った。測定用サンプルは、サンプル幅:10mm、サンプル長さ:22.5mm、サンプル厚さ:0.2mmとした。測定条件は、引張モードにて、周波数:1Hz、昇温速度:10℃/分、窒素雰囲気下、23℃とした。結果を表1、表2に示す。
【0139】
<熱硬化前の伸び率の測定>
フリップチップ型半導体裏面用フィルムの伸び率は、フリップチップ型半導体裏面用フィルムを単体で作製し、レオメトリック社製の動的粘弾性測定装置「Solid Analyzer RS A2」を用いて測定した。熱硬化前の伸び率は、フリップチップ型半導体裏面用フィルムの作製直後と、25℃の条件下で4週間保存した後に行った。測定用サンプルは、サンプル幅:10mm、サンプル長さ:20mm、サンプル厚さ:0.2mmとした。測定は、上記動的粘弾性測定装置を用いて上下チャック間距離が10mmとなるようにサンプルを挟み、引張速度:50mm/sにて行い、得られた破断点伸び率の値を伸び率した。結果を表1、表2に示す。
【0140】
<常温保存安定性>
25℃の条件下で4週間保存した後の半導体裏面用フィルムに、割れや欠けがあるか否かを目視にて観察した。次に、25℃の条件下で4週間保存した後の半導体裏面用フィルム上に半導体ウエハ(直径8インチ、厚さ200μm;シリコンミラーウエハ)を貼り合わせた。なお、貼り合わせ条件は、下記のとおりとした。割れや欠けが発見されず、ウエハマウントができたものを○、割れや欠けが発見されたか、ウエハマウントできなかったものを×として評価した。結果を表2に示す。
【0141】
[貼り合わせ条件]
貼り付け装置:商品名「MA−3000III」日東精機株式会社製
貼り付け速度計:10mm/min
貼り付け圧力:0.15MPa
貼り付け時のステージ温度:70℃
【0142】
【表1】

【0143】
【表2】

【0144】
(結果)
表1、表2から分かる通り、実施例の半導体裏面用フィルムであると、常温保存性がよかった。また、保存前と保存後の引張貯蔵弾性率、及び、伸び率の変化が、比較例に比して少なかった。
【符号の説明】
【0145】
1 ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム
2 半導体裏面用フィルム
3 ダイシングテープ
31 基材
32 粘着剤層
33 半導体ウエハの貼着部分に対応する部分
4 半導体ウエハ
5 半導体チップ
51 半導体チップ5の回路面側に形成されているバンプ
6 被着体
61 被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を含有し、示差走査熱量計にて測定される反応発熱ピーク温度の±80℃の温度範囲における反応発熱量が、25℃の条件下で4週間保存した後において、保存前の反応発熱量に対して0.8〜1倍の範囲であることを特徴とする半導体装置用接着フィルム。
【請求項2】
樹脂成分の全量に対して0.008〜0.25重量%の割合で熱硬化促進触媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用接着フィルム。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であり、前記熱硬化促進触媒がイミダゾール系熱硬化促進触媒であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置用接着フィルム。
【請求項4】
前記熱硬化促進触媒がリン−ホウ素系硬化促進触媒であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置用接着フィルム。
【請求項5】
前記半導体装置用接着フィルムは、被着体上にフリップチップ接続された半導体素子の裏面に形成するためのフリップチップ型半導体裏面用フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の半導体装置用接着フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載のフリップチップ型半導体裏面用フィルムが、ダイシングテープ上に積層されたダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムであって、
前記ダイシングテープは基材上に粘着剤層が積層された構造であり、
前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムは前記ダイシングテープの粘着剤層上に積層されていることを特徴とするダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−21221(P2013−21221A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154827(P2011−154827)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】