説明

半導体装置製造用の接着シート、ダイシングフィルム一体型半導体装置製造用の接着シート、及び、当該半導体装置製造用の接着シートを有する半導体装置

【課題】α線による影響を低減することが可能な半導体装置製造用の接着シート、ダイシングフィルム一体型半導体装置製造用の接着シート、及び、当該半導体装置製造用の接着シートを有する半導体装置を提供する。
【解決手段】α線放出量が0.002c/cm.h以下である半導体装置製造用の接着シート3。無機フィラー、及び、イオン捕捉剤を含むことを特徴とする半導体装置製造用の接着シート3。前記イオン捕捉剤は、窒素含有化合物、水酸基含有化合物、カルボン酸基含有化合物からなる群より選ばれる1種以上の有機系錯体形成化合物であることを特徴とする半導体装置製造用の接着シート3。ダイシングフィルム一体型接着シート10に於ける接着シート3の半導体ウェハ貼り付け部分3a上に半導体ウェハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する。なお、ダイシングフィルム11は、基材1上に粘着剤層2が積層された構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造用の接着シート、ダイシングフィルム一体型半導体装置製造用の接着シート、及び、当該半導体装置製造用の接着シートを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や、携帯オーディオ機器用のメモリパッケージチップを多段に積層したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及している。また、画像処理技術や携帯電話等の多機能化に伴い、パッケージの高密度化・高集積化・薄型化が推し進められている。
【0003】
一方、半導体製造のプロセス中に外部から、ウェハの結晶基板に陽イオン(例えば、銅イオンや鉄イオン)が混入し、この陽イオンがウェハ上に形成された回路形成面に到達すると、電気特性が低下するといった問題があった。また、製品使用中に回路やワイヤーから陽イオンが発生し、電気特性が低下するといった問題があった。
【0004】
上述した問題に対して、従来、ウェハの裏面を加工して破砕層(歪み)を形成し、この破砕層により陽イオンを捕捉して除去するエクストリンシック・ゲッタリング(以下、「EG」ともいう)や、ウェハの結晶基板中に酸素析出欠陥を形成し、この酸素析出欠陥により陽イオンを捕捉して除去するイントリンシック・ゲッタリング(以下、「IG」ともいう)が試みられている。
【0005】
しかしながら、近年のウェハの薄型化に伴い、IGの効果が小さくなるとともに、ウェハの割れや反りの原因となる裏面歪みが除去されることにより、EGの効果が得られなくなり、ゲッタリングの効果が充分に得られなくなるという問題があった。
【0006】
特許文献1には、銅イオンと錯形成し得る骨格を有する樹脂を含有する銅イオン吸着層を備えるフィルム状接着剤が記載されている。また、銅イオン吸着層の樹脂内部に銅イオンを化学的に吸着させることができ、銅を素材とする部材から発生する銅イオンの影響を従来よりも大幅に低減することができる、と記載されている。また、特許文献2、3には、イオン捕捉剤を含有する粘接着剤組成物が記載されており、このイオン捕捉剤は、塩素イオン等を捕捉する効果を有することが開示されている。また、特許文献4には、イオントラップ剤を含有するフィルム状接着剤が記載されており、このイオントラップ剤は、ハロゲン元素を捕捉することが記載されている。また、特許文献5には、陰イオン交換体を含む接着シートが記載されている。また、特許文献6には、キレート変性エポキシ樹脂を含み、内部のイオン性不純物を捕捉することが可能のシート状接着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−52109号公報
【特許文献2】特開2009−203337号公報
【特許文献3】特開2009−203338号公報
【特許文献4】特開2010−116453号公報
【特許文献5】特開2009−256630号公報
【特許文献6】特開2011−105875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、α線が半導体チップに突入することで引き起こされるソフトエラーが知られている。このソフトエラーは、α線の突入によって電荷および電流が発生するため、データが書き換えられてしまうというものである。
【0009】
また、α線は、半導体装置内に大量のイオンを発生させる原因ともなる。そのため、特許文献1〜6に開示されているようにイオンを捕捉するだけではなく、イオンを発生させる原因となるα線の影響を低減する必要がある。
【0010】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、α線による影響を低減することが可能な半導体装置製造用の接着シート、ダイシングフィルム一体型半導体装置製造用の接着シート、及び、当該半導体装置製造用の接着シートを有する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、半導体装置製造用の接着シートについて検討した。その結果、下記の構成を採用することにより、α線による影響を低減することが可能であることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る半導体装置製造用の接着シートは、α線放出量が0.002c/cm.h以下であることを特徴とする。
【0013】
前記構成によれば、α線放出量が0.002c/cm.h以下と少ないため、半導体チップに突入するα線量を少なくすることができる。その結果、ソフトエラーを抑制することができる。また、α線放出量が0.002c/cm.h以下と少ないため、α線によるイオンの発生を抑制することができる。その結果、イオンが半導体チップ上に形成された回路形成面に到達し難くなり、電気特性の低下が抑えられて製品信頼性を向上させることができる。
【0014】
前記構成においては、無機フィラー、及び、イオン捕捉剤を含むことが好ましい。半導体装置製造用の接着シートにおいては、要求される物性を得るために、無機フィラーを含有させることがある。しかしながら、無機フィラーは、α線を発生する場合がある。そして、α線により、半導体装置内にイオンを発生させることになる場合がある。
【0015】
前記構成によれば、イオン捕捉剤を含有しているため、α線により発生したイオンを捕捉することができる。また、半導体装置の製造における各種プロセス中に外部から混入する陽イオンや、ボンディングワイヤーから発生する陽イオンを捕捉することができる。その結果、イオンがウェハ上に形成された回路形成面に到達し難くなり、電気特性の低下が抑えられて製品信頼性を向上させることができる。
【0016】
前記構成において、前記イオン捕捉剤は、少なくとも陽イオンを捕捉するイオン捕捉剤であることが好ましい。前記イオン捕捉剤が、少なくとも陽イオンを捕捉するイオン捕捉剤であると、より効率的に陽イオンを捕捉することができる。
【0017】
前記構成においては、さらに好適に陽イオンを捕捉できる観点から、前記イオン捕捉剤は、窒素含有化合物、水酸基含有化合物、カルボン酸基含有化合物からなる群より選ばれる1種以上の有機系錯体形成化合物であることが好ましい。
【0018】
前記構成において、ウラン含有量が0.7ppb以下であり、且つ、トリウム含有量が30ppb以下であることが好ましい。ウラン含有量が0.7ppb以下であり、且つ、トリウム含有量が30ppb以下であると、α線の放出量をより少なくすることができる。
【0019】
前記構成において、ナトリウム、金、鉄、及び、鉛の各含有量が10ppm以下であることが好ましい。ナトリウム、金、鉄、及び、鉛の各含有量が10ppm以下であると、金属汚染を防止できる。その結果、パッシベーション膜が絶縁破壊することを抑制でき、信頼性を向上することができる。
【0020】
また、近年、ソフトエラーが宇宙線、特に中性子により発生することが報告されている。中性子線がシリコンチップの原子と衝突すると、アルファ線を含む大量のイオンや、Mg、Cイオンなどの重イオンを生成する。これらのイオンは自身のエネルギーがなくなるまでシリコンチップ中を移動し続け、その過程で電子・正孔対が発生する。その結果、シリコン内部の電位が反転し、ソフトエラーを起こす。中性子線がシリコンチップに突入すると半導体装置内にα線および大量のイオンを発生させる原因ともなる。そのため、特許文献1〜6に開示されているようにイオンを捕捉するだけではなく、イオンを発生させる原因となる中性子線の影響をも低減する必要がある。
前記構成において、10ppmのマグネシウムイオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの半導体装置製造用の接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中のマグネシウムイオン濃度が、0〜9.9ppmであることが好ましい。前記構成であると、中性子線により発生するマグネシウムイオンを捕捉し、ソフトエラーの発生を防止することができる。
【0021】
前記構成において、前記半導体装置製造用の接着シートは、被着体に半導体チップを固着するためのダイボンドフィルム、フリップチップ型半導体装置の半導体チップの裏面を保護するための保護フィルム、又は、フリップチップ型半導体装置の半導体チップと被着体との間を封止するための封止シートであることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係るダイシングフィルム一体型半導体装置製造用の接着シートは、前記課題を解決するために、前記の半導体装置製造用の接着シートが、ダイシングフィルム上に積層されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る半導体装置は、前記に記載の半導体装置製造用の接着シートを有することを特徴とする。前記構成によれば、前記に記載の半導体装置製造用の接着シートを有するため、製品信頼性が向上した半導体装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係るダイシングフィルム一体型半導体装置製造用の接着シートを示す断面模式図である。
【図2】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図3】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図4】本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【図5】耐HAST性評価に用いたくし型電極を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の半導体装置製造用の接着シート(以下、単に「接着シート」ともいう)は、α線放出量が0.002c/cm.h以下であり、0.0015c/cm.h以下であることが好ましく、0.001c/cm.h以下であることがより好ましい。前記α線放出量が0.002c/cm.h以下と少ないため、半導体チップに突入するα線量を少なくすることができる。その結果、ソフトエラーを抑制することができる。また、α線放出量が0.002c/cm.h以下と少ないため、α線によるイオンの発生を抑制することができる。その結果、イオンが半導体チップ上に形成された回路形成面に到達し難くなり、電気特性の低下が抑えられて製品信頼性を向上させることができる。
【0026】
前記構成においては、無機フィラー、及び、イオン捕捉剤を含むことが好ましい。半導体装置製造用の接着シートにおいては、要求される物性を得るために、無機フィラーを含有させることがある。しかしながら、無機フィラーは、α線を発生する場合がある。そして、α線により、半導体装置内にイオンを発生させることになる場合がある。しかしながら、イオン捕捉剤を含有しているため、α線により発生したイオンおよび中性子線により発生したイオンを捕捉することができる。また、半導体装置の製造における各種プロセス中に外部から混入する陽イオンや、ボンディングワイヤーから発生する陽イオンを捕捉することができる。その結果、イオンがウェハ上に形成された回路形成面に到達し難くなり、電気特性の低下が抑えられて製品信頼性を向上させることができる。前記イオン捕捉剤は、少なくとも陽イオンを捕捉する添加剤であることが好ましい。
【0027】
前記の少なくとも陽イオンを捕捉する添加剤としては、陽イオン交換体、錯体形成化合物等を挙げることができる。なかでも、耐熱性に優れる点で、陽イオン交換体が好ましく、良好に陽イオンを捕捉することができる点で、錯体形成化合物がより好ましい。
【0028】
前記陽イオン交換体としては、より好適に陽イオンを捕捉できるという観点から、無機陽イオン交換体が好ましい。
【0029】
本発明において、前記の少なくとも陽イオンを捕捉する添加剤により捕捉する陽イオンとしては、陽イオンであれば特に制限されないが、例えば、Na、K、Ni、Cu、Cr、Co、Hf、Pt、Ca、Ba、Sr、Fe、Al、Ti、Zn、Mo、Mn、V等のイオンを挙げることができる。
【0030】
(無機陽イオン交換体)
前記無機陽イオン交換体は特に制限されるものではなく、従来公知の無機陽イオン交換体を用いることができ、例えば、より好適に陽イオンを捕捉できる観点から、アンチモン、ビスマス、ジルコニウム、チタン、スズ、マグネシウム及びアルミニウムからなる群より選ばれる元素の酸化水和物を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、マグネシウム及びアルミニウムの酸化水和物が好ましい。
【0031】
前記無機陽イオン交換体の市販品としては、東亜合成株式会社製の商品名:IXE−700F、IXE−770、IXE−770D、IXE−2116、IXE−100、IXE−300、IXE−600、IXE−633、IXE−6107、IXE−6136等を挙げることができる。
【0032】
前記無機陽イオン交換体の平均粒径は、0.05〜20μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましい。前記無機陽イオン交換体の平均粒径を20μm以下とすることにより、接着力の低下を抑制することができ、0.05μm以上とすることにより、分散性を向上させることができる。
【0033】
(錯体形成化合物)
前記錯体形成化合物は、陽イオンと錯体を形成するものであれば、特に制限されるものではないが、ボンディングワイヤーに接触することによるボンディングワイヤーの損傷を抑制することができる観点から、有機系錯体形成化合物であることが好ましく、なかでも、好適に陽イオンを捕捉できるという観点から、窒素含有化合物、水酸基含有化合物、カルボン酸基含有化合物からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0034】
(窒素含有化合物)
前記窒素含有化合物としては、微粉末状のもの、有機溶媒に溶解し易いもの、又は、液状のものが好ましい。このような窒素含有化合物としては、より好適に陽イオンを捕捉できる観点から、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、又は、ビピリジル化合物を挙げることができるが、銅イオンとの間で形成される錯体の安定性の観点から、トリアゾール化合物がより好ましい。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0035】
前記トリアゾール化合物としては、特に制限されないが、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−{N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル}ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチルフェニル}−5−クロロベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル}−5−クロロベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−アミルフェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2‘−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル}ベンゾトリアゾール、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−t−オクチル−6‘−t−ブチルー4’−メチル−2,2‘−メチレンビスフェノール、1−(2’、3‘−ヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−(1’、2‘−ジカルボキシジエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2−エチルヘキシアミノメチル)ベンゾトリアゾール、2,4−ジ−t−ベンチル−6−{(H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル}フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−エチルヘキシル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−ブチルフェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−[ 2’−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジル)フェニル ]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−メトラメチルブチル)フェノール]、(2‐[2‐ヒドロキシ‐3,5‐ビス(α,α‐ジメチルベンジル)フェニル]‐2H‐ベンゾトリアゾール、メチル 3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等があげられる。
【0036】
前記トリアゾール化合物の市販品としては、特に制限はされないが、城北化学株式会社製の商品名:BT−120、BT−LX、CBT−1、JF−77、JF−78、JF−79、JF−80、JF83、JAST−500、BT−GL、BT−M、BT−260、BT−365、BASF社の商品名:TINUVIN PS、TINUVIN P、TINUVIN P FL、TINUVIN 99−2、TINUVIN 109、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 234、TINUVIN 329、TINUVIN 329 FL、TINUVIN 326、TINUVIN 326 FL、TINUVIN 571、TINUVIN 213、台湾永光化学公司製の製品名:EVESORB 81、EVESORB109、EVESORB 70、EVESORB 71、EVESORB 72、EVESORB 73、EVESORB 74、EVESORB 75、EVESORB 76、EVESORB 78、EVESORB 80等を挙げることができる。トリアゾール化合物は、防錆剤としても使用される。
【0037】
前記テトラゾール化合物としては、特に限定されないが、5−アミノ−1H−テトラゾール等が挙げられる。
【0038】
前記ビピリジル化合物としては、特に限定されないが、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリンなどが挙げられる。
【0039】
(水酸基含有化合物)
前記水酸基含有化合物としては、特に制限されないが、微粉末状のもの、有機溶媒に溶解し易いもの、又は、液状のものが好ましい。このような水酸基含有化合物としては、より好適に陽イオンを捕捉できる観点から、キノール化合物、ヒドロキシアントラキノン化合物、又は、ポリフェノール化合物を挙げることができるが、銅イオンとの間で形成される錯体の安定性の観点から、ポリフェノール化合物がより好ましい。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0040】
前記キノール化合物としては、特に限定されないが、1,2−ベンゼンジオールなどが挙げられる。
【0041】
前記ヒドロキシアントラキノン化合物としては、特に限定されないが、アリザリン、アントラルフィンなどが挙げられる。
【0042】
前記ポリフェノール化合物としては、特に限定されないが、タンニン、タンニン誘導体(没食子酸、没食子酸メチル、ピロガロール)などが挙げられる。
【0043】
(カルボン酸基含有化合物)
前記カルボン酸基含有化合物としては、特に限定されないが、カルボキシル基含有芳香族化合物、カルボキシル基含有脂肪酸化合物等が挙げられる。
【0044】
前記カルボキシル基含有芳香族化合物としては、特に限定されないが、フタル酸、ピコリン酸、ピロール-2-カルボン酸等が挙げられる。
【0045】
前記カルボキシル基含有脂肪酸化合物としては、特に限定されないが、高級脂肪酸、カルボン酸系キレート試薬、等が挙げられる。
【0046】
前記カルボキシル酸系キレート試薬の市販品としては、特に制限はされないが、キレスト株式会社製の製品名:キレストA、キレスト110、キレストB、キレスト200、キレストC、キレストD、キレスト400、キレスト40、キレスト0D、キレストNTA、キレスト700、キレストPA、キレストHA、キレストMZ−2、キレストMZ−4A、キレストMZ−8を挙げることができる。
【0047】
前記イオン捕捉剤の含有量は、前記接着シートを構成する樹脂成分100重量部に対して、0.1〜80重量部であることが好ましく、0.1〜50重量部であることがより好ましく、0.1〜20重量部であることがさらに好ましい。0.1重量部以上とすることにより、陽イオン(特に、銅イオン)を効果的に捕捉することができ、80重量部以下とすることにより、耐熱性の低下やコストの増加を抑制することができる。
【0048】
前記接着シートは、ウラン含有量が0.7ppb以下であり、且つ、トリウム含有量が30ppb以下であることが好ましい。前記ウラン含有量は、0〜0.2ppbであることがより好ましい。また、前記トリウム含有量は、0〜20ppbであることがより好ましい。ウラン含有量が0.7ppb以下であり、且つ、トリウム含有量が30ppb以下であると、α線の放出量をより少なくすることができる。ウラン含有量、及び、トリウム含有量は、イオン交換樹脂法あるいは有機溶剤抽出法等の単独処理、又は、これらを組合せた処理を行なった無機フィラーを使用することにより、コントロールすることができる。
【0049】
前記接着シートは、ナトリウム、金、鉄、及び、鉛の各含有量が10ppm以下であることが好ましい。前記ナトリウム含有量は、0〜5ppmであることがより好ましい。また、前記金含有量は、0〜5ppmであることがより好ましい。また、前記鉄含有量は、0〜5ppmであることがより好ましい。また、前記鉛含有量は、0〜5ppmであることがより好ましい。ナトリウム、金、鉄、及び、鉛の各含有量が10ppm以下であると、金属汚染を防止できる。その結果、パッシベーション膜が絶縁破壊することを抑制でき、信頼性を向上することができる。ナトリウム、金、鉄、及び、鉛の各含有量は、イオン交換樹脂法あるいは有機溶剤抽出法等の単独処理、又は、これらを組合せた処理を行なった材料を使用することによりコントロールすることができる。また、ナトリウム、金、鉄、及び、鉛の各含有量は、イオン捕捉剤の含有量によりコントロールすることができる。
【0050】
前記接着シートは、10ppmマグネシウムイオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中のマグネシウムイオン濃度が、0〜9.9ppmであることが好ましく、0〜8ppmであることがより好ましく、0〜7ppmであることがさらに好ましい。前記構成であると、中性子線により発生するシート中のマグネシウムイオンを捕捉し、ソフトエラーの発生を防止することができる。前記マグネシウムイオン濃度は、イオン交換樹脂法あるいは有機溶剤抽出法等の単独処理、又は、これらを組合せた処理を行なった材料を使用することによりコントロールすることができる。また、前記マグネシウムイオン濃度は、イオン捕捉剤の含有量によりコントロールすることができる。
【0051】
前記接着シートは、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度が、0〜9.9ppmであることが好ましく、0〜8ppmであることがより好ましく、0〜7ppmであることがさらに好ましい。前記接着シートは、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の水溶液中の銅イオン濃度が、0〜9.9ppmであると、半導体装置の製造における各種プロセス中に外部から混入する陽イオンがより捕捉され易い。その結果、外部から混入する陽イオンがウェハ上に形成された回路形成面により到達し難くなり、電気特性の低下が抑えられてより製品信頼性を向上させることができる。
【0052】
前記接着シートは、熱硬化前の140℃での溶融粘度が10Pa・s以上5000Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以上2000Pa・s以下であることがより好ましい。熱硬化前の140℃での溶融粘度が10Pa・s以上であると、ボンディングワイヤーを半導体装置製造用の接着シートに好適に埋め込むことができる。また、熱硬化前の140℃での溶融粘度が5000Pa・s以下であると、ボンディングワイヤーの変形が少ない状態でボンディングワイヤーを接着シート中に埋め込むことができる。熱硬化前の140℃での溶融粘度は、熱可塑性樹脂の重量平均分子量、熱可塑性樹脂のガラス転移温度、接着シートに対するフィラーの割合、フィラーの大きさ、フィラーの形状、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の重量組成比によりコントロールすることができる。尚、前記溶融粘度は、レオメーター(HAAKE社製、商品名;RS−1)を用いて、パラレルプレート法により測定することができる。即ち、120℃になる様に加熱しているプレートに、0.1gの接着シートを仕込み測定を開始する。測定開始から240秒後の値の平均値を溶融粘度とする。尚、プレート間のギャップは0.1mmとする。
【0053】
前記接着シートは、120℃で1時間の加熱処理後に175℃で5時間熱硬化させた後の260℃での引張貯蔵弾性率が0.5MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上1000MPa以下であることがより好ましい。熱硬化後の260℃での引張貯蔵弾性率が0.5MPa以上であると、耐リフロー性を向上させることができる。また、熱硬化後の260℃での引張貯蔵弾性率が1000MPa以下であると、リフロー時に接着シートと被着体の間で剥離が起きるのを抑制することができる。引張貯蔵弾性率の測定は、例えば、固体粘弾性測定装置(レオメトリックサイエンティック社製、形式:RSA−III)を用いることにより可能である。即ち、サンプルサイズを長さ400mm×幅10mm×厚さ200μmとし、120℃で1時間の加熱処理後に175℃で5時間熱硬化させた測定試料をフィルム引っ張り測定用治具にセットし、−50〜300℃の温度域での引張貯蔵弾性率及び損失弾性率を、周波数1Hz、昇温速度10℃/minの条件下で測定し、260℃での貯蔵弾性率(E’)を読み取ることにより得られる。
【0054】
前記接着シートは、特に限定されないが、膜厚が1〜200μmであることが好ましく、1〜150μmであることがより好ましい。前記接着シートの膜厚を1μm以上とすることにより、より良好に陽イオンを捕捉することができる。
【0055】
前記接着シートは、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。また、前記接着シートは、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含有することが好ましい。前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができ、特に、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の少なくともいずれか一方を用いることが好ましい。なかでも、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。硬化剤としてエポキシ樹脂を含有すると、高温において、接着シートとウエハとの高い接着力が得られる。その結果、接着シートとウエハとの接着界面に水が入りにくくなり、イオンが移動し難くなる。これにより、信頼性が向上する。
【0056】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0057】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0058】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0059】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0060】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体(アクリル共重合体)等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0061】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0062】
前記熱硬化性樹脂の配合割合としては、所定条件下で加熱した際に接着シートが熱硬化型としての機能を発揮する程度であれば特に限定されないが、5〜60重量%の範囲内であることが好ましく、10〜50重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0063】
前記接着シートのなかでも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及び、アクリル樹脂を含有し、アクリル樹脂100重量部に対するエポキシ樹脂、及び、フェノール樹脂の合計量が10〜2000重量部であることが好ましく、10〜1500重量部であることがより好ましく、10〜1000重量部であることがさらに好ましい。アクリル樹脂100重量部に対するエポキシ樹脂、及び、フェノール樹脂の合計量を10重量部以上とすることにより、硬化による接着効果が得られ、剥離を抑制することができ、2000重量部以下とすることより、フィルムが脆弱化して作業性が低下することを抑制することができる。
【0064】
前記接着シートを予めある程度架橋をさせておく場合には、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのがよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0065】
前記架橋剤としては、従来公知のものを採用することができる。特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、前記の重合体100重量部に対し、通常0.05〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の量が7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。その一方、0.05重量部より少ないと、凝集力が不足するので好ましくない。また、この様なポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。
【0066】
また、前記接着シートには、その用途に応じてフィラーを適宜配合することができる。フィラーの配合は、前記接着シートへの導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記フィラーとしては、無機フィラー、及び、有機フィラーが挙げられるが、取り扱い性の向上、熱電導性の向上、溶融粘度の調整、高温(例えば175〜260℃)での引張貯蔵弾性率の調整、チキソトロピック性付与等の特性の観点から、無機フィラーが好ましい。前記無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウィスカ、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカ等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。熱電導性の向上の観点からは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカが好ましい。また、上記各特性のバランスがよいという観点からは、結晶質シリカ、又は、非晶質シリカが好ましい。また、導電性の付与、熱電導性の向上等の目的で、無機フィラーとして、導電性物質(導電フィラー)を用いることとしてもよい。導電フィラーとしては、銀、アルミニウム、金、胴、ニッケル、導電性合金等を球状、針状、フレーク状とした金属粉、アルミナ等の金属酸化物、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。ただし、前記無機フィラーは、α線の放出量が少ないものを選択することが好ましい。具体的には、前記無機フィラーのウラン含有量は、0.7ppb以下であることが好ましく、0〜0.2ppbであることがより好ましい。また、前記無機フィラーのトリウム含有量は、30ppb以下であることが好ましく、0〜20ppbであることがより好ましい。
【0067】
前記フィラーの平均粒径は、0.01〜10μmとすることができる。前記フィラーの平均粒径を0.01μm以上とすることにより、被着体への濡れ性、及び、接着性を良好とすることができる。また、10μm以下とすることにより、上記各特性の付与のために加えたフィラーの効果を十分なものとすることができるとともに、耐熱性を確保することができる。なお、フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0068】
なお、前記接着シートには、前記イオン捕捉剤以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、陰イオン捕捉剤、分散剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、硬化促進剤などが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0069】
前記接着シートを形成するための接着剤組成物の製造方法としては、特に限定されず、例えば、前記熱硬化性樹脂、前記熱可塑性樹脂、及び、前記イオン捕捉剤と、必要に応じて、他の添加剤等を容器に投入して、有機溶媒に溶解させ、均一になるように攪拌することによって接着剤組成物溶液として得ることができる。
【0070】
前記有機溶媒としては、接着シートを構成する成分を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレン等が挙げられる。乾燥速度が速く、安価で入手できる点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどを使用することが好ましい。
【0071】
本実施形態に係る接着シートは、例えば、次の通りにして作製される。先ず、前記接着剤組成物溶液を作製する。次に、接着剤組成物溶液を基材セパレータ上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させる。基材セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等が使用可能である。また、塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間の範囲内で行われる。これにより、本実施形態に係る接着シートが得られる。
【0072】
(半導体装置の製造方法)
次に、半導体装置の製造方法の一実施形態について説明する。以下では、従来公知のダイシングフィルムに、本実施形態に係る接着シート3が積層されたダイシングフィルム一体型半導体装置製造用の接着シート10(以下、ダイシングフィルム一体型接着シート10ともいう)を用いた半導体装置の製造方法について説明する。なお、本実施形態に係るダイシングフィルムは、基材1上に粘着剤層2が積層された構造である。図1は、本実施形態に係るダイシングフィルム一体型半導体装置製造用の接着シートを示す断面模式図である。図2〜図4は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【0073】
先ず、図1に示すように、ダイシングフィルム一体型接着シート10に於ける接着シート3の半導体ウェハ貼り付け部分3a上に半導体ウェハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する(マウント工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。
【0074】
次に、半導体ウェハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウェハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を製造する。ダイシングは、例えば半導体ウェハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイシングフィルム一体型接着シート10まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウェハは、ダイシングフィルム一体型接着シート10により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハ4の破損も抑制できる。
【0075】
次に、ダイシングフィルム一体型接着シート10に接着固定された半導体チップを剥離する為に、半導体チップ5のピックアップを行う。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシングフィルム一体型接着シート10側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0076】
ここでピックアップは、粘着剤層2が紫外線硬化型の場合、該粘着剤層2に紫外線を照射した後に行う。これにより、粘着剤層2の接着シート3に対する粘着力が低下し、半導体チップ5の剥離が容易になる。その結果、半導体チップを損傷させることなく接着シート3付きの半導体チップ5のピックアップが可能となる。
【0077】
一方、図2に示すように、他の半導体チップ16がダイボンドフィルム13を介して被着体6上にダイボンドされた部材30を準備する。被着体6の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ16上の電極パッド(図示しない)とは、ボンディングワイヤー7で電気的に接続(ワイヤーボンディング)されている。上記ダイボンドフィルム13やボンディングワイヤー7としては従来公知のものを用いることができる。また、被着体6としては、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等が挙げられる。被着体6は、例えば、容易に変形されるような変形型被着体であってもよく、変形することが困難である非変形型被着体(半導体ウェハ等)であってもよい。図2に示す部材30は従来公知の方法により製造することができる。例えば、上記ダイボンドは圧着により行われる。ダイボンドの条件としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。具体的には、例えば、ダイボンド温度80〜160℃、ボンディング圧力5N〜15N、ボンディング時間1〜10秒の範囲内で行うことができる。また、上記ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーの併用により行われる。
【0078】
次に、図3に示すように、他の半導体チップ16の上面に、接着シート3付きの半導体チップ5をボンディングワイヤー7の一部が接着シート3内に埋め込まれるように積層する。これにより、ボンディングワイヤー7の他の半導体チップ16との接続部分が接着シート3内に埋め込まれる。この積層時の温度としては、80〜200℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。また、このときの圧力としては、0.05MPa〜0.3MPa、時間としては0.1〜3秒の範囲内とすることができる。積層時の温度を前記範囲内とすることにより、接着シート3の粘度を、ボンディングワイヤー7を好適に埋め込むことが可能な粘度とすることができる。
【0079】
次に、図4に示すように、被着体6の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続するワイヤーボンディング工程を行う。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーの併用により行われる。
【0080】
次に、図4に示すように、封止樹脂8により半導体チップ5、及び、他の半導体チップ16を封止する封止工程を行う。本工程は、被着体6に搭載された半導体チップ5、他の半導体チップ16、及び、ボンディングワイヤー7を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂8としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、通常175℃で60〜90秒間行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165〜185℃で、数分間キュアすることができる。
【0081】
次に、後硬化工程に於いて、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂8を完全に硬化させる。封止工程に於いてダイボンドフィルム13や接着シート3が熱硬化されない場合でも、本工程に於いて封止樹脂8の硬化と共にダイボンドフィルム13や接着シート3を熱硬化させて接着固定が可能になる。本工程に於ける加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度である。
【0082】
上述した実施形態では、接着シート3がダイシングフィルム上に積層されている場合について説明したが、ダイシングフィルム一体型半導体装置製造用の接着シートとせずに、ボンディングワイヤーが上面に接続されている支持部材(例えば、半導体チップ)に、前記ボンディングワイヤーの一部が前記接着シート内に埋め込まれるように、前記接着シートを直接に貼り付けてもよい。
【0083】
上述した実施形態では、ボンディングワイヤーの一部が接着シート内に埋め込まれる場合について説明したが、本発明の接着シート、及び、ダイシングフィルム一体型半導体装置製造用の接着シートは、この例に限定されず、ボンディングワイヤーが接着シート内に埋め込まれていなくてもよい。
【0084】
上述した実施形態では、接着シートがダイボンドフィルムである場合について説明したが、本発明の接着シートは、この例に限定されず、フリップチップ型半導体装置の半導体チップの裏面を保護するための保護フィルム、又は、フリップチップ型半導体装置の半導体チップと被着体との間を封止するための封止シートであってもよい。
【実施例】
【0085】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の要旨をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
【0086】
(実施例1)
下記(a)〜(f)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度50重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル樹脂(ナガセケムテックス(株)製、SG−700AS) 100部
(b)エポキシ樹脂1(新日鉄化学(株)社製、YDF−870GS) 50.4部
(c)エポキシ樹脂2(新日鉄化学(株)社製、YDCN−700−2) 15.4部
(d)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 84.2部
(e)無機フィラー(アドマテックス(株)社製、SE2030−MCV(平均一次粒径0.5μm、60%メチルエチルケトンスラリー、ウラン含有量0.7ppb、トリウム含有量22ppb) 145.83部
(f)イオン捕捉剤(東亜合成(株)社製、IXE−770、無機陽イオン交換体)
20.84部
【0087】
前記接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ25μmの実施例1に係る接着シートを作製した。
【0088】
(実施例2)
下記(a)〜(f)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度50重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル樹脂(ナガセケムテックス(株)製、SG−700AS) 100部
(b)エポキシ樹脂1(新日鉄化学(株)社製、YDF−870GS) 33.6部
(c)エポキシ樹脂2(新日鉄化学(株)社製、YDCN−700−2) 10.3部
(d)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 56.1部
(e)無機フィラー(アドマテックス(株)社製、SE2030−MCV(平均一次粒径0.5μm、60%メチルエチルケトンスラリー、ウラン含有量0.7ppb、トリウム含有量22ppb) 262.5部
(f)イオン捕捉剤(東京化学工業(株)社製、没食子酸ト゛テ゛シル)
37.5部
【0089】
(実施例3)
下記(a)〜(f)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度50重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル樹脂(ナガセケムテックス(株)製、SG−700AS) 100部
(b)エポキシ樹脂1(新日鉄化学(株)社製、YDF−870GS) 62.4部
(c)エポキシ樹脂2(新日鉄化学(株)社製、YDCN−700−2) 19.1部
(d)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 104.2部
(e)無機フィラー(アドマテックス(株)社製、SE2030−MCV(平均一次粒径0.5μm、60%メチルエチルケトンスラリー、ウラン含有量0.7ppb、トリウム含有量22ppb) 250部
(f)イオン捕捉剤(城北化学(株)社製、BT-120、ベンゾトリアゾール)
35.71部
【0090】
(比較例1)
下記(a)〜(e)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度50重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル樹脂(ナガセケムテックス(株)製、SG−700AS) 100部
(b)エポキシ樹脂1(新日鉄化学(株)社製、YDF−870GS) 50.4部
(c)エポキシ樹脂2(新日鉄化学(株)社製、YDCN−700−2) 15.4部
(d)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 84.2部
無機フィラー(電気化学工業(株)社製、SFP−30(平均一次粒径0.7μm、60%メチルエチルケトンスラリー、ウラン含有量33ppb、トリウム含有量40ppb)
245部
(e)イオン捕捉剤(東亜合成(株)社製、IXE−770、無機陽イオン交換体)
5.0部
【0091】
(比較例2)
下記(a)〜(e)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度50重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル樹脂(ナガセケムテックス(株)製、SG−700AS) 100部
(b)エポキシ樹脂1(新日鉄化学(株)社製、YDF−870GS) 50.4部
(c)エポキシ樹脂2(新日鉄化学(株)社製、YDCN−700−2) 15.4部
(d)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 84.2部
(e)無機フィラー(アドマテックス(株)社製、SC2030−MC(平均一次粒径0.5μm、60%メチルエチルケトンスラリー、ウラン含有量20ppb、トリウム含有量35ppb) 285.7部
【0092】
(α線放出量の測定)
実施例、比較例の接着シートを試料面積3000cmとなるように切り出した。次に、α線測定装置(LACS−4000M)を用いて、各サンプルのα線放出量を測定した。測定条件は、計数ガス:PR−10ガス(Ar90%、CH410%)、100ml/min、印加電圧:1.9kV、全測定時間99時間とした。結果を表1に示す。
【0093】
(ウラン含有量)
実施例、比較例の接着シートを1g切り出し、これを硝酸5ml、フッ酸5mlとともにビーカーに入れ、ホットプレート上で加熱溶解した。濃縮した溶液のウラン含有量をICP−MS(セイコーインスツルメンツ社製、SPQ8000)により測定した。結果を表1に示す。
【0094】
(トリウム含有量)
実施例、比較例の接着シートのトリウム含有量を、ウラン含有量測定と同様にして求めた。結果を表1に示す。
【0095】
(マグネシウムイオン捕捉性評価)
実施例、及び、比較例の接着シート(厚さ20μm)を、それぞれ240mm×300mmの大きさ(約2.5g)に切り出し、5回、半分に折り曲げ37.5mm×60mmのサイズにしたものを、直径58mm、高さ37mmの円柱状の密閉式テフロン(登録商標)製容器にいれ、10ppmのマグネシウムイオン水溶液50mlを加えた。その後、恒温乾燥機(エスペック(株)製、PV−231)に120℃で20時間放置した。フィルムを取り出した後、ICP−AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS−1700HVR)を用いて水溶液中のマグネシウムイオンの濃度を測定した。水溶液中のマグネシウムイオンの濃度が0〜9.8ppmの場合を○とし、9.8ppmより大きい場合を×とした。結果を表1に示す。
【0096】
(ナトリウム含有量)
実施例、比較例の接着シートを1g切り出し、これを硝酸5ml、フッ酸5mlとともにビーカーに入れ、ホットプレート上で加熱溶解した。濃縮した溶液のナトリウム含有量をICP−AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS−1700HVR)により測定した。結果を表1に示す。
【0097】
(金含有量)
実施例、比較例の接着シートを1g切り出し、これを王水10mlとともにビーカーに入れ、ホットプレート上で加熱溶解した。濃縮した溶液の金含有量をICP−AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS−1700HVR)により測定した。結果を表1に示す。
【0098】
(鉄含有量)
実施例、比較例の接着シートを1g切り出し、これを硝酸5ml、フッ酸5mlとともにビーカーに入れ、ホットプレート上で加熱溶解した。濃縮した溶液の鉄含有量をICP−AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS−1700HVR)により測定した。結果を表1に示す。
【0099】
(鉛含有量)
実施例、比較例の接着シートを1g切り出し、これを硝酸5ml、フッ酸5mlとともにビーカーに入れ、ホットプレート上で加熱溶解した。濃縮した溶液の鉛含有量をICP−AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS−1700HVR)により測定した。結果を表1に示す。
【0100】
(銅イオン捕捉性評価)
実施例、及び、比較例の接着シート(厚さ20μm)を、それぞれ240mm×300mmの大きさ(約2.5g)に切り出し、5回、半分に折り曲げ37.5mm×60mmのサイズにしたものを、直径58mm、高さ37mmの円柱状の密閉式テフロン(登録商標)製容器にいれ、10ppmの銅(II)イオン水溶液50mlを加えた。その後、恒温乾燥機(エスペック(株)製、PV−231)に120℃で20時間放置した。フィルムを取り出した後、ICP−AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS−1700HVR)を用いて水溶液中の銅イオンの濃度を測定した。水溶液中の銅イオンの濃度が0〜9.8ppmの場合を○とし、9.8ppmより大きい場合を×とした。結果を表1に示す。
【0101】
(耐湿リフロー性)
実施例、及び、比較例の接着シート(厚さ20μm)をそれぞれ温度40℃の条件下で10mm角の半導体チップに貼り付け、更に各接着シートを介して半導体チップをBGA基板にマウントした。マウント条件は、温度120℃、圧力0.1MPa、1秒とした。次に、半導体チップがマウントされたBGA基板を、乾燥機にて130℃で2時間熱処理し、その後封止樹脂(日東電工(株)社製、GE−100)でパッケージングした。封止条件は加熱温度175℃、90秒とした。その後、85℃、60%Rh、168時間の条件下で吸湿を行い、更に260℃以上で10秒間保持する様に設定したIRリフロー炉に、前記半導体チップをマウントしたBGA基板を載置した。その後、封止後の半導体装置をガラスカッターで切断し、その断面を超音波顕微鏡で観察して、各熱硬化型ダイボンドフィルムとBGA基板の境界における剥離の有無を確認した。確認は半導体チップ9個に対し行い、剥離が生じている半導体チップが2個以下の場合を○、2個以上の場合を×とした。結果を下記表1に示す。
【0102】
(耐HAST性評価)
耐HAST(Highly Accelerated Stress Test)性を下記の方法により確認した。まず、図5に示すように、ポリイミド基板14の表面に銅製のくし型電極パターン15が設けられた基板21を準備した。なお、くし型電極パターン15は、プラス電極15aとマイナス電極15bとで構成され、ライン幅/スペース幅が20μm/20μmとなるように形成されている。次に、実施例、及び、比較例の接着シートが貼り付けられた半導体チップを準備した。上記半導体チップの接着シートが貼り付けられた側の面を、上記基板21のくし型電極パターン15上に、120℃、0.2MPa、10mm/sec秒間の条件でラミネートしてサンプルを得た。その後、得られたサンプルをプレッシャーオーブンで、窒素雰囲気で5Nの圧力で150℃で1時間キュアを行った。その後、175℃で5時間加熱することで接着シート層を硬化させた。得られたサンプルの+極と−極をそれぞれHAST試験の配線にハンダで接続し、50℃、85%RH、5Vの条件で試験を行った。電気抵抗をモニターし、196時間後でも電気抵抗が急激に低下することがなく維持できているものを良品とし、電気抵抗の急激な低下が生じたものを不良品(電気的不具合発生)とした。サンプルを5つ作製してそれぞれ同様の試験を行い、不良品となったサンプルの個数が2個以下のときは○、2個より多い時は×とした。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
α線放出量が0.002c/cm.h以下であることを特徴とする半導体装置製造用の接着シート。
【請求項2】
無機フィラー、及び、イオン捕捉剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項3】
前記イオン捕捉剤は、少なくとも陽イオンを捕捉するイオン捕捉剤であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項4】
前記イオン捕捉剤は、窒素含有化合物、水酸基含有化合物、カルボン酸基含有化合物からなる群より選ばれる1種以上の有機系錯体形成化合物であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項5】
ウラン含有量が0.7ppb以下であり、且つ、トリウム含有量が30ppb以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項6】
ナトリウム、金、鉄、及び、鉛の各含有量が10ppm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項7】
10ppmのマグネシウムイオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの半導体装置製造用の接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中のマグネシウムイオン濃度が、0〜9.9ppmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項8】
前記半導体装置製造用の接着シートは、被着体に半導体チップを固着するためのダイボンドフィルム、フリップチップ型半導体装置の半導体チップの裏面を保護するための保護フィルム、又は、フリップチップ型半導体装置の半導体チップと被着体との間を封止するための封止シートであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載の半導体装置製造用の接着シートが、ダイシングフィルム上に積層されていることを特徴とするダイシングフィルム一体型半導体装置製造用の接着シート。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1に記載の半導体装置製造用の接着シートを有することを特徴とする半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28679(P2013−28679A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164522(P2011−164522)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】