説明

半導体装置

【課題】半導体素子を実装したTCPを小型化できるとともに、製造原価を上昇させることなく高品質の接続構造を提供する。
【解決手段】主面に複数の電極106、107を備えた半導体素子101と、両面に配線を備え、かつ開口部108を有するフィルム基板102とからなる半導体装置において、半導体素子101の複数の電極の一部がフィルム基板102の一方の面に形成された第1の配線とフィルム基板102の開口部108を貫通するワイヤ105によりボンディング接続された第1の接続構造と、半導体素子101の複数の電極の他部がフィルム基板102の他方の面に形成された第2の配線であるインナーリード104とバンプ109を介したボンディングにより接続された第2の接続構造を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。特に、液晶(LCD)ドライバや小型携帯機器に広く展開されている半導体素子(チップ)を実装したテープキャリアパッケージ(Tape Carrier Package(以下、TCPと略記する))に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶(LCD)やプラズマディスプレイパネル(PDP)等の平板型表示装置の大型化や携帯電話をはじめとする小型携帯機器の多機能化にともない電子装置回路の高密度実装が求められている。そのために、TCP(Tape Carrier Package)、BGA(Ball Grid Array Package)、CSP(Cip Scale Package)といった高密度実装に適した各種の半導体素子のパッケージが開発されてきている。中でも、FCP(Film Carrier Package)ともいわれるTCPは、ICチップをテープフィルムと接続して樹脂で封止するTAB(Tape Automated Bonding)技術を用いたパッケージであり、フレキシブルなテープキャリア(TABテープ)のインナーリードとIC上に形成したバンプ電極とを熱圧着する方式を用いて薄型化が可能なため、液晶表示装置のLCDドライバ等に多用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
図2は、半導体素子(チップ)を実装した一般的なTCPの構造を示す断面図である。図2に示したような一般的なTCPは、樹脂テープ1上に導体配線2が形成されたテープキャリア3と、テープキャリア3の開口領域において、そのテープキャリア3の導体配線2とその表面電極(図示せず)とがバンプ4を介して接続された半導体素子5と、導体配線2と半導体素子5の表面電極との接続部分を含む素子表面に設けられた保護用の絶縁性樹脂6とにより構成されている。
【0004】
そして、半導体パッケージの一層の小型化と高密度化を可能にするために、図3にTCPにワイヤボンディングを混在させたパッケージの構造を断面図で示したように、複数のチップを積層して配置させ、テープキャリアのリードとチップの接続をバンプ電極との熱圧着およびワイヤボンディング接続の両方を採用して三次元パッケージ化する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭56−160047号公報
【特許文献2】特開2001−118882号公報
【特許文献3】特開平4−287335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来のTCPにおいては、半導体素子の高機能化にともない半導体チップの電極数の増加する勢いは止まらず、TCPの配線収容能力の指標となる電極ピッチも微細化が進んでいるのであるが、電極ピッチを微細化することにより配線間の絶縁性能低下や断線等といった新たな課題が生じてきている。
【0006】
また、複数のチップを積層して配置させ、テープキャリアのリードとチップの接続をバンプ電極との熱圧着およびワイヤボンディング接続の両方を採用するTCPでは、確かに高機能化できるが、複数のチップを用いることによる製造原価の上昇や、実装工程においてチップ間ボンディングがトラブルを起こしやすくパッケージの品質の観点から問題になってきている。
【0007】
また、一層の高密度化を目指して、テープキャリアの両面に導体配線を形成する方法も提案されているが、このような両面フィルム基板を用いる場合、スルーホール等の層間接続を設けることが必要になって、製造原価の上昇につながり、問題となっていた。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、半導体素子を実装したTCPを小型化できるとともに、製造原価を上昇させることのない高品質の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の半導体装置は、主面に複数の電極を備えた半導体素子と、この半導体素子が搭載されかつ両面に第1および第2の配線を備えるとともに、開口部を有するフィルム基板とからなる半導体装置において、半導体素子の複数の電極のうち一部の電極がフィルム基板の一方の面に形成された第1の配線とフィルム基板の開口部を貫通するワイヤによりボンディング接続された第1の接続構造と、半導体素子の複数の電極のうちの他の電極がフィルム基板の他方の面に形成された第2の配線とバンプを介したボンディングにより接続された第2の接続構造とを備えているパッケージの構成を有している。
【0010】
この構成により、フィルム基板の片面に集中していた配線を両面に分配できることから、配線数が同じ場合は、TCPの小型化ができる。また、配線の微細化を行わなくとも同一面積で多くの配線を収容することが可能となる。
【0011】
また、本発明の半導体装置は、第1の接続構造において接続される半導体素子の電極が出力電極であり、第2の接続構造において接続される半導体素子の電極が入力電極であるパッケージの構成のみならず、半導体素子に形成した電極において、第1の接続構造により接続された半導体素子の電極は、第2の接続構造により接続された半導体素子の電極より、内側に配置されているパッケージの構成を有している。
【0012】
これらの構成により、入力信号と出力信号をフィルム基板の異なる面に分配することができるため、信号性能に適した配線や回路構成が可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィルム基板にスルーホール等の層間接続を設けることなく、フィルム基板の片面に集中していた配線を両面に分配できるので、TCPの配線収容能力を高めることができ、半導体装置の小型化ができる。また、配線の微細化を行わなくとも同一面積で多くの配線を収容することが可能となるので、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。また、入力信号と出力信号を区分できるので、ノイズ等の電磁障害を受けにくい半導体装置とすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0015】
(実施の形態)
本発明の実施の形態について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態における半導体装置の構造を示す断面図である。
【0016】
図1において、半導体素子(またはチップ)101の主面上に出力電極106と入力電極107が設けられている。また、例えばポリイミド等の絶縁耐熱性樹脂製のフィルム基板102には、例えば銅等の金属導体からなる配線103が一方の面(図1では上面)に設けられ、他方の面(図1では下面)には、例えば銅等の金属導体からなるインナーリード104が設けられている。半導体素子101の外側に設けた入力電極107は、インナーリード104とバンプ109を介して接続されている。このバンプ109は、例えば、金等の別の金属導体からなり、半導体素子101の入力電極107上またはインナーリード104の先端部にあらかじめ設けられており、200℃以上の加熱下で入力電極107とインナーリード104を位置合わせしたのちに、加圧することにより入力電極107とインナーリード104とを接続する。なお、入力電極107の少なくとも表面は、例えば金等の耐蝕性の金属で被覆されていることが望ましい。
【0017】
出力電極106は、配線103と金等のワイヤにてフィルム基板102に設けられた開口部108を貫通するように接続されている。配線103の少なくともワイヤ105によって接続されている箇所は表面が、例えば金等の耐蝕性の金属により被覆されていることが望ましい。
【0018】
また、図1において、半導体素子101上に設けられた出力電極106と入力電極107は、エリア型の電極配置を例に挙げて説明しているが、本発明の実施の形態はこの例に限定されることはなく、半導体素子101の周囲に電極を配置したペリフェラル型の電極配置であってもよい。また、図1に示した本発明の実施の形態における半導体装置とは別に、入力電極107が出力電極106より内側に設けられ、入力電極107と配線103がワイヤ105により接続され、出力電極106がインナーリード104と接続されている構造であってもよい。
【0019】
以上説明したように、本発明の実施の形態における半導体装置のパッケージの構造は、樹脂テープに導体配線が形成されたテープキャリアに開口が設けられ、テープキャリアの導体配線とその表面電極とがバンプを介して半導体素子(チップ)と接続される構成は一般的なTCPの構成と同じであり、さらに、高密度配線のためにワイヤで導体配線と接続する構成は図3に示したTCPにワイヤボンディングを混在させたパッケージの構造に類似している。しかしながら、樹脂テープの両面に導体配線が形成されたテープキャリアを用い、単一の半導体素子(チップ)の外周側、内周側のいずれかの側に出力電極、入力電極をそれぞれ別に配置し、テープキャリアの下側の導体配線をインナーリードとして半導体素子の外周側電極とバンプを介して接続させ、テープキャリアの上側の導体配線と半導体素子の内周側電極とワイヤボンディングにより接続している構造は、従来の半導体装置に用いられるパッケージであるTCPとは異なっている。
【0020】
したがって、本発明の実施の形態における半導体装置のパッケージでは、フィルム基板にスルーホール等の層間接続を設けることなく、フィルム基板の片面に集中していた配線を両面に分配できるので、TCPの配線収容能力を高めることができ、半導体装置の小型化ができ、配線の微細化を行わなくとも同一面積で多くの配線を収容することが可能となり、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。また、入力信号と出力信号を区分しているので、ノイズ等の電磁障害を受けにくい半導体装置とすることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明にかかる半導体装置は、配線収容能力を高めることが可能で、配線の微細化を行わずに高密度で配線を収容することが可能であるので、半導体装置の小型化ができ、信頼性が高く、ノイズ等の電磁障害を受けにくい半導体装置の製造に有用であり、大型の液晶(LCD)やプラズマディスプレイパネル(PDP)等の平板型表示装置に用いる半導体装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置の構造を示す断面図
【図2】半導体素子を実装した一般的なTCPの構造を示す断面図
【図3】TCPにワイヤボンディングを混在させたパッケージの構造を示す断面図
【符号の説明】
【0023】
1 樹脂テープ
2,103 (導体)配線
3 テープキャリア
4,109 バンプ
5,101 半導体素子
6 絶縁性樹脂
102 フィルム基板
104 インナーリード
105 ワイヤ
106 (出力)電極
107 (入力)電極
108 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に複数の電極を備えた半導体素子と、この半導体素子が搭載されかつ両面に第1および第2の配線を備えるとともに、開口部を有するフィルム基板とからなる半導体装置において、
前記半導体素子の複数の電極のうち一部の電極が前記フィルム基板の一方の面に形成された第1の配線と前記フィルム基板の前記開口部を貫通するワイヤによりボンディング接続された第1の接続構造と、
前記半導体素子の複数の電極のうちの他の電極が前記フィルム基板の他方の面に形成された第2の配線とバンプを介したボンディングにより接続された第2の接続構造とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
第1の接続構造において接続される半導体素子の電極が出力電極であり、
前記第2の接続構造において接続される半導体素子の電極が入力電極であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体素子に形成した電極において、第1の接続構造により接続された半導体素子の電極は、前記第2の接続構造により接続された半導体素子の電極より、内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−81093(P2007−81093A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266556(P2005−266556)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】