説明

半導体装置

【課題】ボンディング点で局所的に熱が発生する場合に、半導体チップの表面の広い範囲に効率的に伝熱し、ボンディング点が局所的に過熱してワイヤと表面電極の接合強度が劣化する現象の発生を抑制する。
【解決手段】ワイヤ22がボンディングされている表面電極16の表面に、表面電極16よりも熱伝導率が高い材料の被覆層20が形成されている。ワイヤ22がボンディングされている表面電極16の表面に、表面電極16よりも熱伝導率が高い材料をコーティングすれば、半導体チップ14の表面の広い範囲に効率的に伝熱することができ、ボンディング点が局所的に過熱されてしまう現象の発生を防止できる。あるいは、表面電極に表面被覆層を介してワイヤをボンディングしてもよい。この場合は、表面電極の表面に、表面電極よりも熱伝導率が高い材料で、表面電極よりも厚く形成されている被覆層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの表面電極にワイヤがボンディングされている半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップで処理する電力が増大しており、半導体チップの発熱量が増大している。そこで、半導体チップに冷却装置を付設することによって半導体チップの過熱を防止する半導体装置が開発されており、その一例が特許文献1に記載されている。
特許文献1の技術では、上から順に、半導体チップと絶縁板とヒートシンクを積層している。半導体チップと絶縁板の間ははんだで接続され、絶縁板とヒートシンクの間には熱伝導グリースが介在している。半導体チップの表面には表面電極が形成されており、絶縁板の表面には配線パターンが形成されており、両者間はワイヤで接続されている。半導体チップの表面や絶縁板の表面は樹脂で封止されている。ワイヤは、樹脂内に埋め込まれている。
【0003】
【特許文献1】特開平9-134983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の半導体装置は、半導体チップに生じる発熱を絶縁板を介してヒートシンクに能率よく伝熱するために、半導体チップの過熱を防止することができる。
【0005】
しかしながら、半導体チップで処理する電力が増大するのに伴って、半導体チップの表面電極にボンディングされているワイヤを通過する電流も増大している。ワイヤでも発熱し、ボンディング点(正確にはワイヤと半導体チップの接続点の近傍に位置するために大電流が通過する範囲内の半導体チップをいう)でも発熱する。特許文献1の半導体装置では、ボンディング点に樹脂を被せて封止している。樹脂の熱伝導率は低く、ボンディング点で局所的に発熱した場合に、半導体チップの広い範囲に伝熱して温度を平均化する能率が低い。ボンディング点で局所的に発熱した場合に、そのボンディングが局所的に過熱してしまいやすい。特許文献1の半導体装置では、ワイヤでの発熱や、ボンディング点での発熱に良好に対処することができない。
【0006】
現状の技術では、半導体チップの表面電極にボンディングするワイヤを多数本に分け、ボンディング点が表面電極内で分布するように配置している。これによって、ボンディング点が局所的に過熱し、ワイヤと表面電極の接合強度が劣化してしまう現象の発生を抑制している。
【0007】
しかしながら、ボンディングするワイヤ本数を多数本に分ける技術では、ボンディング処理数が増大し、ボンディング処理に要する時間が長くかかってしまう。
【0008】
本発明は、ボンディング点で局所的に熱が発生する場合に、その熱を半導体チップの表面の広い範囲に効率的に伝熱することによって、ボンディング点が局所的に過熱する現象の発生を防止できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、半導体チップの表面電極にワイヤがボンディングされている半導体装置に関する。本発明の半導体装置は、ワイヤがボンディングされている表面電極の表面に、表面電極よりも熱伝導率が高い材料の被覆層が形成されていることを特徴とする。
前記したように、特許文献1の半導体装置の場合、ワイヤがボンディングされている表面電極の表面に、表面電極よりも熱伝導率が低い樹脂材料がコーティングされている。これでは、ボンディング点で局所的に発熱した場合に、その熱を半導体チップの表面の広い範囲に効率的に伝熱することができず、その接続点が局所的に過熱されてしまいやすい。
それに対して、ワイヤがボンディングされている表面電極の表面が、表面電極よりも熱伝導率が高い材料でコーティングされていれば、半導体チップの表面の広い範囲に効率的に伝熱することができ、ボンディング点が局所的に過熱されてしまう現象の発生を防止できる。
なお、表面電極よりも熱伝導率が高い材料でコーティングした後に、さらに樹脂をコーティングしてもよい。
【0010】
前記に代えて、半導体チップの表面電極に被覆層を介してワイヤをボンディングしてもよい。この場合は、表面電極の表面に、表面電極よりも熱伝導率が高い材料で、表面電極よりも厚く形成されている被覆層を形成する。
例えばアルミ等で表面電極を形成し、その表面にはんだとのなじみがよいニッケル層を形成し、さらにその表面に金層を形成することがある。この場合、ニッケル層や金層は、表面電極の一部ということもできるが、被覆層ということもできる。本明細書では、後者の見方をする。本明細書では、半導体チップの半導体領域に直接的に接触している膜を電極といい、その表面を覆っている層は被覆層という。
従来の技術では、表面電極の表面に、表面電極よりも熱伝導率が高い材料(例えば金)で被覆層を形成することがあるが、その被覆層は表面電極よりも薄く、伝熱能力には期待できない。
本発明の半導体装置では、表面電極の表面に、表面電極よりも熱伝導率が高い材料で、表面電極よりも厚く形成されている被覆層を形成しておいてワイヤをボンディングする。この場合、被覆層が伝熱効率を改善する。ボンディング点で局所的に発熱した場合に、被覆層によって半導体チップの表面の広い範囲に効率的に伝熱することができ、ボンディング点が局所的に過熱されてしまう現象の発生を防止できる。
【0011】
被覆層を有機材料で形成すると簡単にコーティングすることができる。この場合、カーボンナノチューブを含有する有機材料で被覆すれば、表面電極よりも高い熱伝導率を得ることができる。
【0012】
同一表面電極に複数本のワイヤがボンディングされている場合、各々のボンディング点に形成されている被覆層が分断されていてもよいし、1枚の共通の被覆層が複数のボンディング点に亘って伸びていてもよい。
前者によると使用する材料量が少なくてすむメリットが得られ、後者であれば表面電極の広い範囲に伝熱することができる。必要性にあわせて取捨選択することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ボンディング点で局所的に発生した熱を半導体チップの表面の広い範囲に効率的に伝熱することができ、ボンディング点が局所的に過熱してワイヤと表面電極の接合強度が劣化してしまう現象の発生を抑制できる。
従来の技術に比してワイヤ数を減少することができ、ボンディング点の数を減少することができる。あるいは、ワイヤ数を増加しないで、より大電力を給電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(特徴1)ワイヤをボンディングした表面電極の表面に、カーボンナノチューブを含む液状材料をたらし、その後に固化することによって被覆層を形成する。
(特徴2)ワイヤをボンディングした表面電極の表面に、表面電極よりも熱伝導率の高い金属を付着して被覆層を形成する。付着方法は、蒸着・スパッタリング・メッキ法のいずれでもよい。
(特徴3)ワイヤをボンディングする前の表面電極の表面に、表面電極よりも熱伝導率の高い金属を付着して被覆層を形成し、その後にワイヤボンディングする。付着方法は、蒸着・スパッタリング・メッキ法のいずれでもよい。
【実施例】
【0015】
(第1実施例)
図1は、半導体装置26の断面図を示している。図1において、参照番号2は、内部を冷却水が通過するヒートシンク、4は伝熱性グリース、6は絶縁性の伝熱板、8は伝熱板6の表面に形成されている導体パターン、12ははんだ層、14は半導体チップ、16は半導体チップ14の表面に形成されている表面電極、22はワイヤ、20は被覆層を示している。導体パターン8は伝熱板6の表面に形成されており、両者を総称して伝熱板10という。表面電極16は半導体チップ14の表面に形成されており、両者を総称して半導体チップ18という。
被覆層20は、表面電極16を被覆している層20aと、ワイヤ22を被覆している層20bで形成されている。両者は、一体に形成されている。
表面電極16はアルミで形成されており、ワイヤ22もアルミで形成されており、被覆層20は銅で形成されている。被覆層20の方が、表面電極16やワイヤ22よりも、熱伝導率が高い。被覆層20は、表面電極16にワイヤ22をボンディングした後に、銅を蒸着して形成されている。蒸着法に代えて、スパッタ法を用いてもよいし、メッキ法を用いてもよい。被覆層20は、金でもよいし、銀でもよい。
被覆層の20の表面を樹脂等で被覆して封止してもよい。
【0016】
(第2実施例)
以下では、第1実施例と相違する部分のみを説明する。表面電極16にワイヤ22をボンディングしている点までは第1実施例と同じである。
第2実施例では、図2に示すように、ボンディング点24の周囲にカーボンナノチューブを含む有機材料によって被覆層30を形成している。具体的には、ボンディング点24の周囲にカーボンナノチューブを含む液状樹脂をたらし、その後に固化することによって被覆層30を形成している。
図3は、第2実施例の半導体装置32の平面図を示し、1枚の表面電極16に対して3本のワイヤ22a〜22cが接続されている。各々のボンディング点24a〜24cの周囲に被覆層30a〜30cを形成している。各々の被覆層30a〜30cは、隣接する被覆層から分断されている。この場合、使用する樹脂量を節約することができる。
【0017】
(第3実施例)
図4は、第3実施例の半導体装置34の平面図を示している。縦断面図は、図2に等しい。第3実施例の半導体装置34では、1枚の表面電極16に対して3本のワイヤ22a〜22cが接続されている。3箇所のボンディング点24a〜24cが、1枚の共通被覆層30で被覆されている。この場合、表面電極16の広い範囲に、ボンディング点24a〜24cで発生する熱を伝熱することができる。ボンディング点24a〜24cの過熱防止能力が高い。
【0018】
(第4実施例)
図5は、第4実施例の半導体装置42の縦断面図を示している。第1実施例と相違する部分のみを説明する。第4実施例の半導体装置42では、ボンディング前の表面電極16の表面に、被覆層40が形成されている。表面電極16はアルミで形成されており、ワイヤ22もアルミで形成されており、被覆層40は銅で形成されている。被覆層40の方が、表面電極16やワイヤ22よりも、熱伝導率が高い。被覆層20は、表面電極16に銅を蒸着して形成されている。蒸着法に代えて、スパッタ法を用いてもよいし、メッキ法を用いてもよい。被覆層20は、表面電極16よりも厚く形成されている。
【0019】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施例の半導体装置の断面図。
【図2】第2実施例の半導体装置の断面図。
【図3】第2実施例の半導体装置の平面図。
【図4】第3実施例の半導体装置の平面図。
【図5】第4実施例の半導体装置の断面図。
【符号の説明】
【0021】
2:ヒートシンク
4:伝熱性グリース
6:伝熱板
8:配線パターン
12:はんだ
14:半導体チップ
16:表面電極
20:被覆層
22:ワイヤ
30:被覆層
40:被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの表面電極にワイヤがボンディングされている半導体装置であり、
ワイヤがボンディングされている表面電極の表面に、表面電極よりも熱伝導率が高い材料の被覆層が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体チップの表面電極に被覆層を介してワイヤがボンディングされている半導体装置であり、
表面電極の表面に、表面電極よりも熱伝導率が高い材料で表面電極よりも厚く形成されている被覆層が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記被覆層が、カーボンナノチューブを含有する有機材料で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
同一表面電極に複数本のワイヤがボンディングされており、各々のボンディング点に形成されている被覆層が分断されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
同一表面電極に複数本のワイヤがボンディングされており、1枚の共通の被覆層が複数のボンディング点に亘って伸びていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−302261(P2009−302261A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154534(P2008−154534)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】