説明

半導体装置

【課題】配線からの金属イオンの析出によるマイグレーション発生を防止できる、高信頼性の半導体装置を提供する。
【解決手段】ベースフィルム1に複数の配線9が配置されたフレキシブル配線基板11と、上記フレキシブル配線基板11に搭載された半導体チップ5と、フレキシブル配線基板11と半導体チップ5との間に、少なくとも一部が配線9に接するように配置された封止樹脂6を有し、封止樹脂6に金属イオン結合剤が混合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に配線のマイグレーションを抑制する半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を配線基板に搭載した半導体装置として、フレキシブル配線基板上に半導体素子を接合・搭載した半導体装置(COF:Chip On Film)や、フレキシブル配線基板上に連続して半導体素子が接続された半導体装置(TCP:Tape Carrier Package)が知られている。COFやTCPは、主に、液晶ドライバICを搭載した半導体装置に適用されている。
【0003】
近年、液晶ドライバの多出力化の要求に応えるため、液晶ドライバICを搭載するフレキシブル配線基板の配線パターンのファインピッチ化が急速に進んでいる。現在の所、TCPと比べ、COFの方が配線パターンのファインピッチ化に適しているため、液晶ドライバICの実装形式はCOFが主流となっている。
【0004】
以下に、従来のCOFのアセンブリ方法を図9を参照して説明する。
【0005】
初めに、フレキシブル配線基板50を作製する方法を示す。まず、ポリイミド基材51の上にスパッタ法でバリア機能を有する金属の層を形成し、さらにメタライジング法にて銅箔を形成する(銅メッキ処理をする)。次に、銅箔の上にフォトレジストを塗布・硬化させ、その後フォトレジストにパターン露光し、現像して所望の配線パターン形状のフォトレジストパターンを形成する。そして、フォトレジストパターンに応じて銅箔およびバリア機能を有する金属の層をエッチングしたあと、フォトレジストを剥離処理することで、所望のパターン形状を転写する。これにより、配線パターン形状のバリア層52と銅からなる導体層53が形成される。そして、導体パターン全面に一様に厚さ0.4〜0.6μmのスズメッキ58を施すことで、配線59が完成する。さらに、配線59の保護のために、配線59表面における半導体チップとの接続に関与しない部分に、ソルダーレジスト57を被覆保護する。これにより、フレキシブル配線基板50が完成する。
【0006】
作製されたフレキシブル配線基板50は、金バンプ54(突起電極)を形成した半導体チップと接合される。このとき、スズメッキ58と金バンプ54とをスズ−金共晶接合させる。なお、この接合工程はインナーリードボンディング(ILB)と呼ばれる。
【0007】
ILB後に、半導体チップ55の保護を目的として、半導体チップ55とフレキシブル配線基板50との間にアンダーフィルの(すなわち熱硬化性の)封止樹脂56を充填し、加熱処理にて封止樹脂を硬化させる。
【0008】
その後、最終的な電気的特性テストを行って、COFのアセンブリが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−144527(公開日:1999年5月28日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような半導体装置において、最近では、より一層の多出力化が求められており、配線59にかかる電圧の高圧化、配線パターンのファインピッチ化が進んでいる。しかしながら、従来の半導体装置では、この配線59の高圧化ファインピッチ化に対応しきれず、配線59間のマイグレーションが生じてしまっていた。マイグレーションは、高湿度下において向かい合う配線に直流電圧が印加されたときに、電気化学反応により配線材料の金属がイオン化して溶出し、配線の材料が、本来の配線配置位置でない場所に析出成長していく現象である。つまり、1つの配線59にかかる電圧が高くなると、隣接する配線59にかかる電圧との電位差が大きくなり、配線59間でマイグレーションが発生しやすくなり、また、配線59間のスペースがファイン化すると、配線59が隣接する配線59におよぼす電界強度が強くなり、マイグレーションが発生しやすくなるのである。
【0011】
マイグレーションが発生すると、配線59同士の間にも金属イオンが析出することにより、配線59の間を短絡させ、絶縁破壊に至る現象を生じるので、半導体装置の信頼性が失われる。そこで、長期間にわたってマイグレーションの発生を抑えることが、半導体装置の信頼性を確保する上で、重要な課題となる。
【0012】
マイグレーションの発生を抑制する方法としては、第1に、高湿度となることを防ぐために、配線間に水分の進入を防ぐ防湿手段を設けることが考えられる。防湿手段としては、配線への水分の侵入経路となるフレキシブル配線基板の基材、ソルダーレジスト及び封止樹脂に防湿性を付与することが考えられる。
【0013】
しかし、これらのいずれの部材も透水性のある有機高分子材料を使用することが必要であるため、水分の進入を完全に遮断することは困難である。また、防水塗膜を施す手法もあるが、多大な手間とコストを要し、マイグレーション抑制の効果も不十分である。
【0014】
第2に、配線材料の金属イオンの溶出を加速する、塩化物イオンなどのハロゲンイオンの混入を減らす方法が考えられる。しかし、ハロゲンイオンは使用する原材料自身に既に混入しており、ハロゲンイオン等の不純物イオンを完全に除去することは困難である。
【0015】
第3に、配線にかかる電界強度を低減することによって、配線材料の金属イオンの溶解速度を減らす方法が考えられる。しかし、半導体装置の高密度実装及び半導体チップの高機能化を達成するために、搭載する半導体チップとフレキシブル配線基板との接続ピッチのファイン化、あるいは配線への印加電圧の高電圧化は避けられず、配線パターンにかかる電界強度が強くなることは避けられない。
【0016】
このように、COFの半導体装置では、配線をファイン化、あるいは配線に高電圧を印加した場合に、コストをかけずにマイグレーションの発生を防ぐことができず、半導体装置の高機能化の妨げとなっていた。
【0017】
一方、特許文献1には、電子部品を基板に接着する導電ペーストにおいて発生する銀イオンのマイグレーションを防ぐために、導電ペーストに、イオン化した銀イオンと鎖体を形成する銀イオン結合剤を混合することが記載されている。しかし、このような導電ペーストは半導体の配線には適用できず、配線のマイグレーションを解決することはできない。
【0018】
本発明は、配線からの金属イオンの析出によるマイグレーション発生を防止できる、高信頼性の半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の半導体装置は、上記課題を解決するために、基材に複数の配線が配置された配線基板と、上記配線基板に搭載された半導体素子と、を含む、COF構造若しくはTCP構造を有する半導体装置において、上記配線基板がフィルム状のフレキシブル基板であり、上記配線基板と半導体素子との間に、少なくとも一部が配線に接するように配置された封止樹脂を有し、金属イオン結合剤が、上記封止樹脂に混合されており、上記金属イオン結合剤、ベンゾトリアゾール類のイソシアヌル酸付加物を含むことを特徴としている。
【0020】
これにより、配線から放出された材料の金属イオンが、配線と接する部材に含まれる金属イオン結合剤と接触し、金属イオンを捕捉するので、金属イオンが析出することを防げる。
【0021】
配線から流出した金属イオンが析出すると、配線から金属が成長していき(マイグレーション)、最後には配線が隣接する配線に接続する。この場合、配線間の絶縁性が破壊され、半導体素子が良好に外部装置に接続できず、動作不良を起こす。
【0022】
本発明によれば、このような配線からの金属の析出が防がれるので、金属の成長も防がれ、半導体装置がこのような動作不良を起こすことがなくなる。また、このような半導体装置では、特に配線のファインピッチ化、高電圧化が求められているので、本発明により、配線からの金属イオンの析出を防ぐことで、半導体装置の高性能化が可能となる。
【0023】
また、本発明の半導体装置は、さらに、上記配線基板と半導体素子との間に、少なくとも一部が配線に接するように配置された封止樹脂を有し、封止樹脂が金属イオン結合剤を含んでいることを特徴としている。
【0024】
ここで、封止樹脂は、配線基板、半導体素子、その接続部の保護、および接続の補強のために、一般的に設けられるものである。
【0025】
これによれば、封止樹脂に金属イオン結合剤が含まれているので、封止樹脂に含まれる金属イオン結合剤が配線に作用できる。つまり、配線から流出した金属イオンが、封止樹脂中の金属イオン結合剤に接触し、捕捉されるので、金属イオンが封止樹脂中にとどめられ、析出しない。
【0026】
したがって、従来の半導体装置において製造工程や部材数を増やすことなく、封止樹脂に金属イオン結合剤を添加するだけで、配線からの金属イオンの析出が防がれる。よって、配線からの金属の成長が防がれ、半導体装置の動作不良が防がれる。
【0027】
本発明の半導体装置は、上記封止樹脂が、配線基板と半導体素子との間に充填されるときに、粘度50mPa・s以上1250mPa・s以下であることを特徴としている。
【0028】
封止樹脂は、硬化する前の流動性がある状態で、配線基板と半導体素子との間に隙間なく充填された後、硬化される。したがって、金属イオン結合剤を添加した場合も、隙間なく充填ができる程度の流動性を有していることが好ましい。
【0029】
そこで、封止樹脂の硬化前、すなわち、配線基板と半導体素子との間に充填されるときに、粘度を上記範囲とすることで、容易に塗布でき、配線基板と半導体素子との間に隙間なく充填できる程度の流動性が封止樹脂に備えられる。
【0030】
なお、粘度が粘度50mPa・sより小さいと、流動性が高すぎ、封止樹脂が流れ出たり、半導体素子側に、特に半導体素子側面に付着できないという問題が生じる。一方、粘度が1250mPa・sより大きいと、流動性が低すぎ、ディスペンサーから流出しにくく、封止樹脂内に空隙が残る可能性がある。
【0031】
また、本発明の半導体装置は、上記封止樹脂が、上記金属イオン結合剤を0.5重量%以上10.0重量%以下含んでいることを特徴としている。
【0032】
これによれば、硬化前の状態で、容易に塗布でき、配線基板と半導体素子との間に隙間なく充填できる程度の流動性を備え、かつ、金属イオン結合剤による十分なマイグレーション抑制効果も有する。
【0033】
金属イオン結合剤に含有率が0.5重量%より低いと、マイグレーション抑制の効果が不十分となり、10重量%より多いと、粘度が高くなり、塗布しにくく、充填後に封止樹脂内に空隙が残る可能性が生じる。
【0034】
また、本発明の半導体装置は、上記配線が基材表面に形成されており、基材に金属イオン結合剤を含んでいることを特徴としている。
【0035】
これによれば、基材に金属イオン結合剤が含まれているので、基材に含まれる金属イオン結合剤が配線に作用できる。つまり、配線から流出した金属イオンが、基材中の金属イオン結合剤に接触し、捕捉されるので、金属イオンが基材中にとどめられ、析出しない。
【0036】
したがって、従来の半導体装置において製造工程や部材数を増やすことなく、基材に金属イオン結合剤を添加するだけで、配線からの金属イオンの析出が防がれる。よって、配線からの金属の成長が防がれ、半導体装置の動作不良が防がれる。
【0037】
また、本発明の半導体装置は、さらに、配線表面にソルダーレジストが形成されており、ソルダーレジストに金属イオン結合剤を含んでいることを特徴としている。
【0038】
ここで、ソルダーレジストとは、一般的に、配線におけるのショートや断線を防ぐために設けられているもので、配線における電気的に接続を行わない領域を覆って、ゴミの付着や機械的ストレスを受けることを防ぐものである。
【0039】
これによれば、ソルダーレジストに金属イオン結合剤が含まれているので、ソルダーレジストに含まれる金属イオン結合剤が配線に作用できる。つまり、配線から流出した金属イオンが、接するソルダーレジストの金属イオン結合剤に接触し、捕捉されるので、金属イオンがソルダーレジスト中にとどめられ、析出しない。したがって、配線からの金属の成長も防がれるので、半導体装置の動作不良が防がれる。
【0040】
したがって、従来の半導体装置において製造工程や部材数を増やすことなく、ソルダーレジストの材料に金属イオン結合剤を添加するだけで、配線からの金属の成長も防がれ、半導体装置の動作不良が防がれる。
【0041】
また、本発明の半導体装置は、上記金属イオン結合剤が、ベンゾトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類のイソシアヌル酸付加物、トリアジン類のイソシアヌル酸付加物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことを特徴としている。
【0042】
これによれば、これらの化合物が、銅イオンなどの配線から流出する金属イオンと錯体を形成することで、捕捉できるので、析出を防ぐことができる。
【0043】
また、本発明の半導体装置は、半導体素子が、テープキャリア方式により配線基板に搭載されていることを特徴としている。
【0044】
ここで、テープキャリア方式とは、テープ状のフレキシブル基板の長手方向に、半導体素子の搭載領域が並んでいるものである。この方式は、半導体搭載時には、搭載領域に半導体素子を機械的に連続して搭載でき、また、製品の取り扱いをリールtoリールで行うことができることから、半導体装置製造の自動化に対して有利な方式である。
【0045】
このような半導体装置では、近年、高密度実装、高機能化、多出力化にともない、特に配線のファインピッチ化、高電圧化が求められているので、本発明により、配線からの金属イオンの析出を防ぐことが、半導体装置の高性能化が可能となる。
【0046】
また、本発明の半導体装置は、液晶表示素子が搭載されていることを特徴としている。
【0047】
このような半導体装置では、特に配線のファインピッチ化、高電圧化が求められているので、本発明により、配線からの金属イオンの析出を防ぐことで、半導体装置の高性能化が可能となる。
【発明の効果】
【0048】
本発明の半導体装置は、以上のように、基材に複数の配線が配置された配線基板と、上記配線基板に搭載された半導体素子と、を含む、COF構造若しくはTCP構造を有する半導体装置において、上記配線基板がフィルム状のフレキシブル基板であり、上記配線基板と半導体素子との間に、少なくとも一部が配線に接するように配置された封止樹脂を有し、金属イオン結合剤が、上記封止樹脂に混合されており、上記金属イオン結合剤、ベンゾトリアゾール類のイソシアヌル酸付加物を含む。
【0049】
これにより、配線から放出された材料の金属イオンが、配線と接する部材に含まれる金属イオン結合剤と接触し、金属イオンを捕捉するので、金属イオンが析出することを防げる。よって、配線からの金属の成長も防がれるので、半導体装置の動作不良が防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)は本発明の実施形態にかかる半導体装置を示す平面図であり、(b)はこの半導体の製造工程においてテープキャリアに搭載されている状態を示す図面である。
【図2】図1(a)の半導体装置のA−A’断面を示す断面図である。
【図3】図1(a)の半導体装置のB−B’断面を示す断面図である。
【図4】マイグレーションを起こした半導体装置を示す平面図である。
【図5】封止樹脂のマイグレーション抑制効果を測定するための、櫛歯配線基板を示す平面図であり、(a)が全体の(b)がA部を拡大した図面である。
【図6】図5の櫛歯配線がマイグレーションを起こした場合を示す平面図である。
【図7】金属イオン結合剤を含む封止樹脂のマイグレーション抑制効果を示す図面である。
【図8】半導体装置に粘度の高い封止樹脂を充填した場合の気泡を含む封止樹脂を示す断面図である。
【図9】従来の半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、COF(Chip On Film)等の方式の半導体装置において、配線材料が高湿度化でイオン化し、析出することでマイグレーションを起こすという問題を解決するために、金属イオンと錯体を形成する金属イオン結合剤を、配線に接する主要構成材料中に混合させる、または配線の表面に均一に塗布処理を行うものである。これによりマイグレーションによる金属イオンの析出を抑制させ、配線パターンのファイン化及び高電圧化にも対応出来る高信頼性のCOFを提供できる。
【0052】
本発明の一実施形態について図1ないし図8に基づいて説明すると以下の通りである。
【0053】
図1(a)は、本発明の半導体装置の平面図であり、図2は図1(a)におけるA−A’平面の断面図であり、図3は図1(a)におけるB−B’平面の断面図である。
【0054】
本発明の半導体装置11は、図2に示すように、フレキシブル配線基板10と、半導体チップ5と、封止樹脂6と、からなる。
【0055】
フレキシブル配線基板10は、ベースフィルム(基材)1に、複数の配線9、ソルダーレジスト7をこの順に積層したもので、半導体チップ5が適切に外部機器に接続できるように配線9が形成された搭載用基板である。ベースフィルム1は、ポリイミドからなるフィルムであり、フレキシブル配線基板10の基材となるものである。配線9は、一端を搭載する半導体チップ5に、他端を外部機器に接続できるようになっており、これにより、半導体チップ5と外部機器とを電気的に接続させている。つまり、半導体チップ5上の金バンプ4と配線9は熱圧着により金−スズ共晶合金を形成し接合されている。また、ソルダーレジスト7は、配線9のショートや断線を防ぐための、保護カバーである。
【0056】
ここで、配線9は、ベースフィルム1表面において、半導体チップ5の搭載位置からベースフィルム1の辺に向かうように、線状に形成されている。また、配線9は、バリア層2と導電層3とスズメッキ8とからなる。バリア層2は、配線9のベースフィルム1側に設けられたクロム−ニッケル合金からなる層である。バリア層2は、導体層3を保護する機能、および配線9のベースフィルム1への接着性を高める機能を有する。導電層3は銅からなり、配線9において電気を良好に導く機能を有する。スズメッキ8は導電層3の表面部全面に施されている。配線9は、隣り合う配線9との間隔が30μmのファインピッチとなっている。
【0057】
また、ソルダーレジスト7は、ベースフィルム1上に、配線9を覆うように設けられており、形成位置は、半導体チップ5の搭載位置からわずかに間隔をあけた周辺部分となっている。ソルダーレジスト7は、このように、配線9における電気的に接続を行わない領域を全てを保護することによって、ショートや断線を防いでいる。つまり、配線9間の距離(配線ピッチ)が例えば30μm程度の狭ピッチになると、外部からのゴミによるショートや、外部からの機械的ストレスによる断線を発生しやすくなっているので、これを防ぐために、ソルダーレジスト7で保護しているのである。また、ソルダーレジスト7は、配線9の電気絶縁特性及びフレキシブル配線基板10の耐折り曲げ性を向上させる働きもある。
【0058】
半導体チップ5は、フレキシブル配線基板10との接合面に、金からなる突起状のバンプ4を有している。半導体チップ5は、フレキシブル配線基板10上にて、このバンプ4が配線9と加熱圧着により、金−スズ共晶合金を形成し接合されている。これにより、配線9の一端が半導体チップ5に接続された状態で搭載されていることになる。
【0059】
封止樹脂6は、半導体チップ5の側面および接合面と、フレキシブル配線基板10の搭載面との間に位置し、半導体チップ5を保護する機能を有する。
【0060】
ここで、半導体装置11を作製する方法を示す。
【0061】
半導体装置11は、図1(b)に示すように、長尺のスプロケットホール41つきのポリイミドフィルム40の長手方向に一列に形成される。すなわち、ポリイミドフィルム40に半導体チップの搭載領域を一列に形成していき、この搭載領域に半導体チップ5を搭載する。そして、使用時には、個々の半導体チップ5をポリイミドフィルム40ごと破線部にて切り離してそれぞれが図1(a)に示す半導体装置11となる。なお、以下の説明では、ポリイミドフィルム40における破線部内の部分、および、切り離された後のポリイミドフィルムを含めてポリイミド基材1と称している。
【0062】
製造方法を詳しく説明すると、図2に示すように、まず、ポリイミド基材1の上にスパッタ法で、ニッケル−クロム合金からなる金属層を形成する。そして、金属層表面にメタライジング法にて銅箔を形成する(つまり、銅メッキ処理をする)。次に、銅箔の上にフォトレジストを塗布・硬化させ、その後フォトレジストに配線パターンをパターン露光・現像して、フォトレジストを所望のパターン形状にする。そして、フォトレジストパターンに応じて金属層、および銅箔をエッチングし、そのあと、フォトレジストを剥離処理する。これにより、金属層および銅箔に所望のパターン形状が形成される。そして、形成したパターン全面に、0.4〜0.6μmのスズ8のメッキ処理を施し、配線9が形成される。さらに、配線9における、半導体チップ5の搭載領域から間隔を置いた周辺部に、ソルダーレジスト7を被覆する。
【0063】
そして、半導体チップ5上に設けられたバンプ4(突起電極)と配線9のスズメッキ8との金−スズ共晶により、半導体チップ5の搭載領域に対する半導体チップ5の接合がなされる。なお、この加熱・圧着の金−スズ共晶による接合工程はインナーリードボンディング(ILB)と呼ばれる。
【0064】
ILB後に、半導体チップの保護を目的として、半導体チップ5とフレキシブル配線基板10との間にアンダーフィルの(すなわち熱硬化樹脂の)封止樹脂を充填し、加熱処理にて封止樹脂を硬化させる。
【0065】
その後、最終的な接続テストを行って、半導体装置のアセンブリが完了する。
【0066】
このようにして製造された半導体装置では、特に、高温高湿度環境下において、配線9に含まれる金属(つまり、バリア層2、導体層3、スズメッキ8の材料である金属)がイオン化し、金属イオン(主に銅イオン)が発生しやすくなっている。この金属イオンは、図4に示すように、配線9外に析出して配線間に析出金属20として表れ(マイグレーション)、隣接する配線9と電気的な絶縁が破壊されてしまう原因となる。このマイグレーションによる絶縁破壊は、配線9同士の間隔が50μm以下、特に30μm以下のときに生じやすくなっている。そこで、この金属イオンの析出を防ぐために、発生した銅イオンが析出する前に金属イオン結合剤により捕捉できるような構成となっている。
【0067】
すなわち、金属イオン結合剤を、配線9に接する部材の少なくとも1つを製造する際に、部材の材料に混合しておくか、あるいは直接配線9に塗布している。配線9に接する部材は、封止樹脂6、ベースフィルム1、ソルダーレジスト7等である。
【0068】
例えば、封止樹脂6は、図2に示すとおり、半導体チップ5とフレキシブル配線基板10との間に充填されており、半導体チップ5のバンプ4の接続部周辺で、配線9の間に入り込んでいる。したがって、金属イオンと錯体を形成する金属イオン結合剤を、封止樹脂6に混合させておけば、配線9から封止樹脂6に流出する金属イオンが、封止樹脂6中に含まれる金属イオン結合剤に捕捉される。これにより、封止樹脂6中の金属イオン溶解度が増加する。つまり、より多くの金属イオンを封止樹脂6中に流入させて留まらせられる。したがって、配線9中の金属イオンの増加を抑制でき、配線9全体からの金属イオンの析出を遅らせられる。
【0069】
同様に、ソルダーレジスト7は、図2、3に示すとおり、配線9を覆うように形成されているので、配線9同志の間に入り込んでいる。したがって、金属イオンと錯体を形成する金属イオン結合剤を、ソルダーレジスト7に混合させておけば、配線9からソルダーレジスト7に流出する金属イオンが、ソルダーレジスト7中に含まれる金属イオン結合剤に捕捉される。これにより、ソルダーレジスト7中の金属イオン溶解度が増加する。つまり、より多くの金属イオンを封止樹脂6中に流入させて留まらせられる。したがって、配線9中の金属イオンを抑制でき、配線9全体からの金属イオンの析出を遅らせられる。
【0070】
また、ベースフィルム1は、表面に配線9を形成されているので、配線9のバリア層2全面と接触している。したがって、金属イオンと錯体を形成する金属イオン結合剤を、ベースフィルム1に混合させておけば、配線9から流出する金属イオンであって、ベースフィルム1上を流動するものが、金属イオン結合剤に捕捉される。これにより、ベースフィルム1中の金属イオン溶解度が増加する。つまり、より多くの金属イオンをベースフィルム1中に留まらせられる。したがって、配線9中の金属イオンの増加を抑制でき、金属イオンの析出を遅らせられる。
【0071】
さらに、配線9に金属イオン結合剤を塗布することでも、配線9を流動する金属イオンが金属イオン結合剤に捕捉される。これにより、配線9中の金属イオンの増加を抑制でき、金属イオンの析出を遅らせられる。なお、配線9に金属イオン結合剤を塗布する方法としては、フレキシブル配線基板10の製造工程における配線パターン形成直後に、フレキシブル配線基板10を、金属イオン結合剤の溶液に浸漬する方法や、金属イオン結合剤を吹き付けにより配線9表面に塗布する方法が挙げられる。
【0072】
このようにして、配線9から流出する金属イオンの析出を抑えれば、高湿度環境下でも半導体装置の各配線9間の電気絶縁性は安定し、短絡を抑制できる。
【0073】
金属イオン結合剤としては、銅イオンあるいはその他の金属イオンと錯体を形成する化合物を用いればよい。これにより、発生した例えば銅イオンが金属イオン結合剤と錯体を形成することで捕捉され、配線9のパターン間に銅が析出することが防がれる。したがって、隣り合う配線9と電気的に接続することが防がれる。
【0074】
金属イオン結合剤としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、あるいは、これらのイソシアヌル付加物類等が挙げられる。
【0075】
ベンゾトリアゾール系は、化学式(1)に示される基本形のベンゾトリアゾールを始めとし、メタノールの付加物である1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノール(化学式(2))や、トリアゾール側にアルキル基を付加したもの(化学式(3))、ベンゼン側にアルキル基を付加したもの(化学式(4))が挙げられる。
【0076】
【化1】

【0077】
トリアジン系は、化学式(5)に示されるものであり、例えば、化学式(6)に示される2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジンや、化学式(7)に示される2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4−メチルイミダゾール−(1)]−エチル−S−トリアジン、化学式(8)に示される2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジンが挙げられる。
【0078】
【化2】

【0079】
イソシアヌル酸付加物は、上記したトリアジン系あるいはベンゾトリアゾール系の化合物に、化学式(9)に示すイソシアヌル酸を付加したものである。トリアジン系の化合物のイソシアヌル酸付加物は化学式(10)に示され、例えば、化学式(11)に示される2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジン・イソシアヌル酸や、化学式(12)に示される2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジンが挙げられる。
【0080】
【化3】

【0081】
以下にこれら金属イオン結合剤のマイグレーション抑制効果を調べた実験について説明する。実験には、図5(a)に示す電気絶縁性測定用の櫛歯配線パターンを用いた。櫛歯配線パターンは、ポリイミドからなる基板30に、陰極に接続した櫛歯電極31aと、陽極に接続した櫛歯電極31bとを、互いの間隔(図5(b)の距離C)が30μmとなるように形成したものである。また、櫛歯電極31a・31bは、厚さ8μmの銅の上にスズメッキを施したものである。
【0082】
この櫛歯配線パターンは、半導体装置の配線パターンと同等のものであり、半導体装置における配線のマイグレーションの発生しやすさを擬似的に観察でき、マイグレーションをリーク電流として測定できる。つまり、櫛歯電極31a、31bから流出した金属イオンが析出し、マイグレーションを起こすと、図6に示すように、櫛歯電極31aと31bとの間に金属が成長し、最終的には櫛歯電極31aと31bとが接続する。このときに、櫛歯電極31a、31bに電圧印加すると、リーク電流が急増することから、リーク電流を測定することで、櫛歯電極31aと31bとの接続を観測できる。
【0083】
実験では、表1に示す金属イオン結合剤について、所定の濃度となるように純水に分散させ、櫛歯配線パターンに全面・均一に所定量を滴下した。滴下後、櫛歯電極31a・31bに所定の直流電圧を印加し、その後に、室内環境にて放置し、所定時間毎に、リーク電流値の変化を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
これによれば、比較例の純水ではマイグレーション抑制効果が全くなく、ベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノール、2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジン・イソシアヌル酸については非常に良好なマイグレーション抑制効果があった。また、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4−メチルイミダゾール−(1)]−エチル−S−トリアジンについてもマイグレーション抑制効果があった。さらに、2−ビニル−4、6ジアミノ−S−トリアジンにもわずかにマイグレーション抑制効果が認められた。
【0086】
次に、マイグレーション抑制効果が非常に優れていた金属イオン結合剤について、樹脂との溶解(混合により凝集することなく分散できる性質)を調べたところ、ベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノールは樹脂との相性がよく良好に樹脂中に分散した。一方、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸は樹脂との相性が悪く、樹脂中に分散しにくかった。
【0087】
このような樹脂成分との相性の悪い金属イオン結合剤を樹脂成分に混合すると、封止樹脂中に分散せず、凝集して、金属イオン結合剤が不均一に存在する状態となる。特に、2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物は、酸無水物等の樹脂成分と混合しにくく、凝集を起こしやすい。したがって、このような樹脂、例えば封止樹脂6として用いた場合に、部分的に金属イオンの捕捉が起こりにくい箇所が生じる。
【0088】
したがって、金属イオン結合剤として、2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物のような、樹脂中に分散しにくい金属イオン結合剤を使用する場合は、金属イオン結合剤を微粉砕化と均一な分散・混合が必要である。このとき、金属イオン結合剤を平均直径が0.5μm以下となるまで微粉砕化することが好ましく、1μm以下とすることがより好ましい。さらに、金属イオン結合剤の凝集を防止するために、1μmメッシュの微細カットフィルターによるろ過処理を施すことも有効である。また、金属イオン結合剤の微粉砕、および均一な分散のための混合方法としては、封止樹脂の混練をロールミル装置又はビーズミル装置を用いて粉砕、混合処理を行うことが好ましい。
【0089】
次に、金属イオン結合剤を封止樹脂6に混合させる場合を例に挙げ、金属イオン結合剤を混合した封止樹脂材料の製造について説明する。
【0090】
封止樹脂6の樹脂成分としては、エポキシ樹脂や酸無水物等が用いられる。これに、微紛状の上記した金属イオン結合剤、染料、硬化促進剤を添加して、混練する。配合比としては、例えば、エポキシ樹脂および硬化剤を99.6重量%、金属イオン結合剤を2.5重量%、染料および硬化促進剤を0.9重量%とすればよい。
【0091】
ここで、封止樹脂6において、良好にマイグレーション抑制でき、かつ良好な流動性を得られる金属イオン結合剤の含有量を調べた。
【0092】
まず、マイグレーション抑制機能を発揮するために必要な金属イオン結合剤の含有量を調べた。実験方法としては、エポキシ樹脂に、金属イオン結合剤としての、2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物を0,0.5,1.5,2.5,5.0,10.0、15.0重量%となるように添加した樹脂を用意し、図5の櫛歯配線パターン全面に、均一に覆って、直流電圧40Vを印加しながら、85℃雰囲気下、85%RHの環境下に放置して、リーク電流を調べた。ここで、金属イオン結合剤と樹脂との混合には、ロールミルまたはビーズミル装置を用いた。また、これらの樹脂は、主要構成としてエポキシ樹脂と金属イオン結合剤で構成されており、金属イオン結合剤0重量%としては、エポキシ樹脂及び硬化剤が99.3重量%、染料および硬化促進剤を0.7重量%が含まれているものを用いた。
【0093】
結果を図7に示す。図7の横軸は放置時間であり、縦軸はリーク電流から計算される、櫛歯電極31a、31b間の絶縁抵抗値の変化を測定した結果である。これによると、金属イオン結合剤無添加の樹脂では、500時間後に配線から生じた銅の析出に起因するマイグレーションにより、絶縁破壊が生じた。一方、金属イオン結合剤を0.5%添加した樹脂では700時間後まで絶縁破壊が起こらず、配線9のマイグレーションを遅らされたことが分かる。そして、金属イオン結合剤を1.5%含む樹脂では900時間後まで良好な絶縁性が保たれたあと、絶縁性が低下していた。したがって、絶縁性の低下がさらに遅らされ、また観測した1000時間まで絶縁性が完全に破壊されることはなかった。その他の、金属イオン結合剤の添加量が2.5重量%以上の樹脂では観測した1000時間後でも電気絶縁性は安定していた。つまり、金属イオン結合剤の添加量が多くなるほど、高温高湿度環境下でも電気絶縁性は良好であることがわかった。従って、金属イオン結合剤を含む樹脂を塗布して、良好なマイグレーション抑制効果を得るためには、樹脂に、金属イオン結合剤を0.5重量%以上含むことが好ましく、特に、2.5重量%以上含むことが好ましい、と言える。
【0094】
次に、封止樹脂に必要な流動性を保つことができる金属イオン結合剤への含有量を調べた。すなわち、上記した金属イオン結合剤は、金属イオンと錯体を形成する機能を有する一方、樹脂と混合した場合に、その分子構造から、樹脂の硬化を促進させる。したがって、金属イオン結合剤を封止樹脂6に混合し過ぎると、封止樹脂6の粘度が過度に上昇し、封止樹脂6の充填が困難になる。つまり、封止樹脂6は、ディスペンサーにより半導体チップ5とフレキシブル配線基板10との間に充填されるが、封止樹脂6の粘度が高いと、ディスペンサーからの安定吐出ができなくなる。また、封止樹脂はその流動性により、半導体チップ5とフレキシブル配線基板10との間を、隙間なく充填するものであるが、封止樹脂6の粘度が高いと、流動性が低くなり、半導体チップ5とフレキシブル配線基板10との間に封止樹脂を隙間無く充填することができなくなる。したがって、封止樹脂6に金属イオン結合剤を混合する場合は、粘度の上昇に考慮し、流動性が損なわれないようにする必要がある。なお、重点に適切な封止樹脂6の粘度としては、50mPa・s以上1250mPa・s以下であり、より好ましくは、200mPa・s以上1000mPa・s以下である。
【0095】
このためには、封止樹脂6において、10重量%以下となるように混合することが好ましく、5重量%以下となるように混合することがより好ましい。
【0096】
ここで、エポキシ樹脂に、金属イオン結合剤として2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物を0重量%〜15重量%添加した封止樹脂の粘度を測定した結果を表2に示す。なお、ここで用いている封止樹脂は、主要構成としてエポキシ樹脂と金属イオン結合剤で構成されている。
【0097】
【表2】

【0098】
これによれば、金属イオン結合剤を含まない封止樹脂(0重量%)が粘度850mPa.sであるのに対し、金属イオン結合剤の添加量に相関して、封止樹脂の粘度は増大している。金属イオン結合剤が5重量%以下のときは、粘度が1000mPa.sより低く、樹脂吐出性(ディスペンサーから樹脂が良好に流れ出る性質)、および充填性(半導体チップ5とフレキシブル配線基板10との間を隙間なく充填できる性質)が良好である。しかし、金属イオン結合剤が10重量%では、粘度が1250mPa.sとなり、若干樹脂吐出安定性、充填性が損なわれる。そして、金属イオン結合剤が15重量%となると、粘度が1500mPa.sとなり、ディスペンサーからの樹脂吐出がスムーズにできなくなる。さらに、半導体チップ5とフレキシブル配線基板10の間に充填すると、図8に示すように部分的に充填できない箇所が生じ、この箇所に気泡21ができてしまう。このように、半導体チップ5とフレキシブル配線基板10との間に、気泡21ができると、半導体チップ5が確実にフレキシブル配線基板10に固定されず、接続不良を起こす可能性がある。また、気泡に水分が溜まり、半導体チップ保護の信頼性低下を招く可能性がある。
【0099】
また、封止樹脂の粘度増加の抑制のためには、封止樹脂に使用する硬化促進剤の作用を調整する方法もある。例えば、硬化促進剤の成分をカプセルにしみ込ませることで、低温時に硬化反応を抑制したり、硬化促進剤の分子構造の調整により、低温時において硬化反応を抑えることが考えられる。
【0100】
さらに、封止樹脂の粘度や添加する効果促進剤を調整することで、樹脂ライフの短縮、不純物イオン濃度の増加を防ぐようにしてもよい。
【0101】
また、金属イオン結合剤をソルダーレジスト7に混合する場合は、ソルダーレジスト7の材料が硬化する前の状態の時に、0.5重量%以上の金属イオン結合剤を混ぜ、その後硬化させることで、配線9のマイグレーションを抑制できるソルダーレジストとなる。また、ソルダーレジスト7は印刷されて形成される場合は、印刷に適した特性となるよう、金属イオン結合剤の混合を10.0重量%以下とすることが好ましい。
【0102】
また、金属イオン結合剤をベースフィルム1に混合する場合は、ベースフィルム1の材料が硬化する前に、0.5重量%以上の金属イオン結合剤を混ぜ、その後硬化させることで、配線9のマイグレーションを抑制できる。また、この場合は、材料特性の確保のために、金属イオン結合剤の混合を10.0重量%以下とすることが好ましい。
【0103】
また、金属イオン結合剤を配線9に塗布する場合は、溶剤として例えば純水を用い、0.5重量%以上の金属イオン結合剤を混ぜることが好ましい。これにより、配線9のマイグレーションを抑制できる。
【0104】
本発明は、以上のように、ファインにピッチの配線においても、隣接する配線との絶縁破壊を抑制できる。従って、配線のファインピッチ化や高電圧化が求められている、基材がフレキシブル基板である半導体装置、テープキャリア方式の半導体装置、液晶表示阻止を搭載した半導体装置に特に好ましく適用できる。
【0105】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0106】
また、本発明は、以下の構成とすることもできる。
【0107】
配線パターンが形成されたフィルム状のフレキシブル基板に半導体素子が搭載された半導体装置において、配線パターン間の電気絶縁特性を向上させる為に、半導体チップ保護用の封止樹脂内又は、ソルダーレジスト内又は、ベース基材内にマイグレーション抑制剤(金属イオン結合剤)を添加・混合又は配線パターン表面に塗布したことを特徴とする第1の半導体装置。
【0108】
上記第1の半導体装置において、使用するマイグレーション抑制剤はベンゾトリアゾール類、トリアジン類、イソシアヌル酸類、トリアジン類とイソシアヌル酸付加物の組成をもつ物質を封止樹脂又は、ソルダーレジスト又は、ベース基材内に添加・混合又は配線パターン表面に塗布したことを特徴とする第2の半導体装置。
【0109】
上記第1または第2の半導体装置において、使用するマイグレーション抑制剤を添加する際に生じる樹脂の高粘度化及びマイグレーション抑制剤の凝集を抑える為に封止樹脂又は、ソルダーレジスト又は、ベース基材内に上記マイグレーション抑制剤を0.5〜10.0重量%添加・混合した材料を使用したことを特徴とする第3の半導体装置。
【0110】
上記第1の半導体装置において、保護用の封止樹脂として使用するマイグレーション抑制剤について樹脂内に添加する際に生じる高粘度化を抑える為に、増粘度抑制効果のある硬化促進剤を使用し、粘度調整を行った粘度50〜1250mPa・sの封止樹脂にて保護されていることを特徴とする第4の半導体装置。
【0111】
配線パターンが形成されたフィルム状のフレキシブル基板に半導体素子が搭載された半導体装置において、配線パターン間の電気絶縁特性を向上させる為に、フレキシブル基板上の配線パターン表面にマイグレーション抑制剤を使って、表面処理(マイグレーション抑制剤を含浸又は吹きつけ)を施し、配線パターン表面にマイグレーション抑制剤を塗布したフレキブル基板を使用したことを特徴とする第5の半導体装置。
【0112】
上記第1〜5の半導体装置において、フィルム状のフレキシブル基板が長尺のテープ状であり、半導体素子が連続的にフレキシブル基板に搭載されたテープキャリア型の半導体装置であることを特徴とする第6の半導体装置。
【0113】
上記第1〜5の半導体装置において、液晶表示素子や周辺部品が搭載された液晶モジュールの半導体装置であることを特徴とする第7の半導体装置。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の半導体装置は、配線からの金属の析出を防ぎ、配線間の絶縁破壊を防げるので、特に配線ピッチが狭い半導体装置に好適であり、例えば、基材がフレキシブル基板である半導体装置、テープキャリア方式の半導体装置、液晶表示阻止を搭載した半導体装置に適用できる。
【符号の説明】
【0115】
1 ベースフィルム(基材)
5 半導体チップ(半導体素子)
6 封止樹脂
7 ソルダーレジスト
8 スズメッキ
9 配線
10 半導体装置
11 フレキシブル配線基板(配線基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に複数の配線が配置された配線基板と、
上記配線基板に搭載された半導体素子と、を含む、COF構造若しくはTCP構造を有する半導体装置において、
上記配線基板がフィルム状のフレキシブル基板であり、
上記配線基板と半導体素子との間に、少なくとも一部が配線に接するように配置された封止樹脂を有し、
金属イオン結合剤が、上記封止樹脂に混合されており、
上記金属イオン結合剤、ベンゾトリアゾール類のイソシアヌル酸付加物を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
上記封止樹脂が、配線基板と半導体素子との間に充填されるときに、粘度50mPa・s以上1250mPa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
上記金属イオン結合剤は、平均直径が1μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
上記配線が基材表面に形成されており、
基材が金属イオン結合剤を含んでいることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
さらに、配線表面を覆うようにソルダーレジストが形成されており、
ソルダーレジストが金属イオン結合剤を含んでいることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
上記封止樹脂が、上記金属イオン結合剤を0.5重量%以上10.0重量%以下含んでいることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体素子が、テープキャリア方式により配線基板に搭載されていることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
液晶表示素子が搭載されていることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
上記配線同士の間隔が50μm以下であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−119758(P2011−119758A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30965(P2011−30965)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【分割の表示】特願2007−270704(P2007−270704)の分割
【原出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】