説明

半導体装置

【課題】十分な電流を流すことのできるトランジスタを備えた半導体装置を提供することを可能にする。
【解決手段】一実施形態の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に設けられ、上面および側面が鞍形状を形成し、上面における鞍点を含む領域における第1方向の両端に凸部をそれぞれ有する半導体領域と、凸部の上面を除いた半導体領域の上面と、第1方向に沿った側面と、第1方向に直交する第2方向に沿った、上面における鞍点を含む領域側の前記凸部の側面との上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極であって、上面における鞍点を含む領域の直上に設けられた本体部と、本体部に接続され半導体領域の第1方向に沿った側面を覆う脚部と、を有し、脚部の第1方向における長さが上面における鞍点を含む領域の直上に設けられた本体部の第1方向における長さよりも長くなるように構成されたゲート電極と、ゲート電極の両側の半導体基板に設けられた第1および第2不純物領域と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAMのセルトランジスタにはRCAT(Recessed Channel Array Transistor)と呼ばれるトランジスタが使われている。このトランジスタには通常のプラナ型のMOSFETに対し、オフリーク電流を抑えられるというメリットがある。しかし、MRAMのように駆動電流も要求される場合はRCAT構造では困難である。
【0003】
そこでRCATよりもチャネル幅Wの大きいS−Fin型の電界効果トランジスタ(Saddle Fin type Field Effect Transistor)が提案されている。しかし、S−Fin型のトランジスタもRCATと比較してトランジスタのソース部の大きさは広がっていないため、要求に応えるだけの駆動電流を達成することは困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M. Yoshida et al, "Recessed Channel Fin Field-Effect Transistor Cell Technology for Future-Generation Dynamic Random Access Memories", Japanese Journal of Applied Physics, Vol.47, No. 4, 2008, pp2672-2675
【非特許文献2】S. Chung et al, "Highly Scalable Saddle-Fin(S-Fin) Transistor for Sub-50nm DRAM Technology", 2006 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、十分な電流を流すことのできるトランジスタを備えた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられ、上面および側面が鞍形状を形成し、前記上面における鞍点を含む領域における第1方向の両端に凸部をそれぞれ有する半導体領域と、前記凸部の上面を除いた前記半導体領域の上面と、前記第1方向に沿った側面と、前記第1方向に直交する第2方向に沿った、前記上面における鞍点を含む領域側の前記凸部の側面との上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極であって、前記上面における鞍点を含む領域の直上に設けられた本体部と、前記本体部に接続され前記半導体領域の前記第1方向に沿った側面を覆う脚部と、を有し、前記脚部の前記第1方向における長さが前記上面における鞍点を含む領域の直上に設けられた前記本体部の前記第1方向における長さよりも長くなるように構成されたゲート電極と、前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に設けられた第1および第2不純物領域と、を備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1(a)乃至1(d)は第1実施形態による半導体装置を示す断面図。
【図2】図2(a)乃至2(c)は比較例による半導体装置を示す断面図。
【図3】第1実施形態と比較例のオン電流およびオフ電流のソース/ドレインの深さ依存性を示す図。
【図4】第1実施形態の半導体装置のサイズの範囲を説明する。
【図5】図5は、第1実施形態の半導体装置の上面図。
【図6】図6(a)乃至図6(e)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図7】図7(a)乃至図7(e)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図8】図8(a)乃至図8(e)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図9】図9(a)乃至図9(e)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図10】図10(a)乃至図10(e)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図11】図11(a)乃至図11(e)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図12】図12(a)乃至図12(e)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図13】図13(a)乃至図13(e)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図14】図14(a)乃至図14(e)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図15】図15(a)乃至図15(e)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図16】第2実施形態による半導体装置を示す回路図。
【図17】第2実施形態の半導体装置に用いられるMTJを示す断面図。
【図18】第3実施形態の半導体装置のメモリセルを示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態の半導体装置を図1(a)乃至図1(d)に示す。この第1実施形態の半導体装置はトランジスタ1を有し、このトランジスタの断面図を図1(a)に示す。また、第1実施形態のトランジスタを図1(a)に示す切断線B−B、C−C、D−Dでそれぞれ切断した場合の断面図を図1(b)、1(c)、1(d)に示す。なお、図1(a)は、図1(b)に示す切断線A−Aで切断した断面図となっている。
【0010】
この第1実施形態のトランジスタ1は、例えばSi基板である半導体基板10の素子領域13に設けられる。この素子領域13は、絶縁体の素子分離領域12によって素子分離されている。トランジスタ1は、半導体基板10上に半導体基板10と同じ材料からなるチャネル領域11を備えている。このチャネル領域11は、上面および側面が鞍(saddle)形状を形成している。すなわち、図1(a)に示すように、チャネル領域11の上面における鞍点を含む領域11aにおける、第1の方向(電流が流れる方向)の両端にそれぞれ凸部11bが存在し(図1(a)、1(c))、第1の方向と直交する第2の方向においては、鞍点を含む領域11aが半導体基板10から最も高い面となっている(図1(a)、1(b))。そして、上記鞍点を含む領域11aは本実施形態では平坦となっている(図1(a)、1(b))。
【0011】
凸部11bを除いたチャネル領域11の上面および第1の方向に沿った側面上にゲート絶縁膜14が設けられている。なお、鞍点を含む領域11a側における凸部11bの側面もゲート絶縁膜14で覆われている。また、ゲート絶縁膜は、チャネル領域11の直下における素子領域(半導体基板)10の側面の一部にも延在している(図1(a)、1(b))。そして、ゲート絶縁膜14を覆うように、ゲート電極16が設けられている。このゲート電極16は、チャネル領域の鞍点を含む領域11a上に設けられた本体部16aと、チャネル領域11の側部およびチャネル領域11の直下における素子領域13の側面の一部にゲート絶縁膜14を間に挟んで設けられた脚部16bと、を備えている。なお、脚部16b上にも本体部16aは延在している(図1(a)、1(b)、1(c))。したがって、脚部16b上に延在している本体部16aの第1方向における長さは脚部16bの第1の方向における長さとほぼ同じ長さとなっている。また、脚部16bの第1の方向における長さは、図1(a)に示すゲート電極16のゲート長Lgよりも長くなっている。なお、このゲート電極16は、鞍形状のチャネル領域11に「人」が乗っている形状に例えることができ、脚部16bは「人」の脚に相当し、本体部16aは「人」の胴体に相当する。チャネル領域11の第1の方向における長さは、ゲート電極16の第1の方向における長さよりも長く(図1(a))、チャネル領域11の第2の方向における長さは、ゲート電極16の第2の方向における長さよりも短い(図1(b))。
【0012】
図1(a)に示すように、ゲート電極16の両側の半導体基板10上には、不純物が導入されたソース領域18aおよびドレイン領域18bがチャネル領域11およびゲート電極16を挟んで第1の方向に離間されて設けられている。そして、図1(a)に示すように、ソース領域18aおよびドレイン領域18bは、チャネル領域11の凸部11bの上面および第1の方向に直交するチャネル領域11の側面の一部を覆うように設けられている。したがって、ソース領域18aおよびドレイン領域18bと、半導体基板10とのそれぞれの界面がチャネル領域11の凸部11bの上面よりも低く(図1(a))、ゲート電極16の脚部16bの下面よりも高い位置となるように、ソース領域18aおよびドレイン領域18bは設けられている。また、ソース領域18aおよびドレイン領域18bの上面がゲート電極16の本体16aの底面よりも高い位置となるように、ソース領域18aおよびドレイン領域18bは設けられている。第1の方向に直交するゲート電極16の側面には、絶縁体であるゲート側壁20が設けられている。ソース領域18aおよびドレイン領域18bがn型の不純物領域であれば、トランジスタ1はnチャネルトランジスタとなり、ソース領域18aおよびドレイン領域18bがp型の不純物領域であれば、トランジスタ1はpチャネルトランジスタとなる。
【0013】
(比較例)
次に第1実施形態の比較例によるトランジスタを図2(a)、2(b)、2(c)に示す。この比較例のトランジスタの断面図を図2(a)に示す。また、比較例のトランジスタを図2(a)に示す切断線B−B、C−Cでそれぞれ切断した場合の断面図を図2(b)、2(c)に示す。なお、図2(a)は、図2(b)に示す切断線A−Aで切断した断面図となっている。
【0014】
この比較例のトランジスタは、ゲート電極16の脚部16bの第1方向における長さが図1(a)乃至図1(d)に示す第1実施形態のトランジスタと異なっている以外は、第1実施形態のトランジスタと同じ構成となっている。すなわち、比較例のトランジスタは、ゲート電極16の脚部16bの第1方向における長さが第1実施形態のトランジスタのそれよりも短くし、ゲート電極のゲート長Lgとほぼ同じ長さとなっている。なお、この比較例のトランジスタは、公知のS−Fin型トランジスタである。
【0015】
次に、第1実施形態のトランジスタおよび比較例のトランジスタに対して、ソース/ドレイン領域の深さDを変えたときの、オン電流Ionと、オフリーク電流Ioffとをシミュレーションによって求めた結果を図3に示す。なお、シミュレーションに用いた第1実施形態および比較例のトランジスタのパラメータは、ゲート長Lgが25nm、ゲート幅が32nm、ゲート絶縁膜の膜厚が1.8nmである。また、ソース/ドレイン領域と半導体基板との界面からゲート絶縁膜14の下面までの長さが60nmであり、半導体基板の不純物濃度が4×1017/cmである。
【0016】
図3からわかるように、比較例に比べて、第1実施形態のトランジスタは、オフリーク電流Ioffを同一にした場合はオン電流Ionが増大し、オン電流Ionを同一にした場合はオフリーク電流Ioffを低減することができる。
【0017】
以上説明したように、第1実施形態によれば、ゲート電極16の脚部16bがゲート長Lgよりも長く、ソース/ドレイン領域と半導体基板との界面がチャネル領域11の鞍点を含む領域11aよりも深い位置にあるため、チャネル領域に電子が注入されやすくなり駆動電流が増加する。また、ソース/ドレイン領域と半導体基板との界面がチャネル領域11の鞍点を含む領域11aよりも深い位置にあるので、チャネル領域11の側面をより有効に電流経路として使えるようになり、駆動電流を増加することができる。
【0018】
比較例においても、ソース/ドレイン領域の深さを深くすることで、チャネルの側面を電流経路として使えるようにすることも可能であるが、パンチスルーによるオフリーク電流も大きくなってしまうという問題がある。
【0019】
本実施形態の場合、チャネル領域11に凸部11bを設けたことにより、ゲート長を実効的に長くすることが可能となり、パンチスルーを抑えることができ、これにより、オフリーク電流を抑えることができる。
【0020】
また、ゲート電極16の脚部16bが第1の方向に沿って長くなっていることで、チャネル領域11に電子が注入されやすくなり駆動電流を増加することができる。
【0021】
なお、図4に示すように、第1実施形態のトランジスタ1においては、ゲート電極16の脚部16bの第1の方向における長さaは、ゲート長をLgとしたとき、1.8Lg〜2.0Lgの範囲にあることが好ましい。長さaが1.8Lg未満であるとオフリーク電流の抑制効果が低下する。また、本実施形態のトランジスタ1をメモリのセルトランジスタに用いた場合に、長さaが2Lgを超えると、隣接して設けられるセルトランジスタのゲート電極の脚部と接触する可能性が高くなるからである。また、チャネル領域11の凸部11bの高さbは「0」より大きければ、パンチスルーによるオフリーク電流を抑制することができる。また、ソース/ドレイン領域18a、18bと半導体基板10との界面は、ゲート電極16の脚部16bの下面よりも浅い位置にあることが好ましい。そして、ソース/ドレイン領域18a、18bの上面からゲート電極16の脚部16bの下面までの長さcは、1.2Lg〜2Lgの範囲にあることが好ましい。そしてチャネル領域の鞍点を含む11aの上面からゲート電極の脚部bの下面までの長さcは、1.2Lg〜2Lgの範囲にあることが好ましい。長さcが2Lgを超えてもオフリーク電流を抑制する効果は増えない。したがって、ソース/ドレイン領域18a、18bの深さ、すなわち上面から下面までの長さは、1.2Lg〜2Lgの範囲にあることが好ましい。
【0022】
(製造方法)
次に、第1実施形態のトランジスタ1の製造方法を図5乃至図15(e)を参照して説明する。図5は、セルトランジスタ1が集積化して形成された場合の上面図である。図6(a)、図7(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)、図11(a)、図12(a)、図13(a)、図14(a)、図15(a)は、図5に示す切断線A−Aで切断したときの製造工程を示す断面図である。図6(b)、図7(b)、図8(b)、図9(b)、図10(b)、図11(b)、図12(b)、図13(b)、図14(b)、図15(b)は、図5に示す切断線B−Bで切断したときの製造工程を示す断面図である。図6(c)、図7(c)、図8(c)、図9(c)、図10(c)、図11(c)、図12(c)、図13(c)、図14(c)、図15(c)は、図5に示す切断線C−Cで切断したときの製造工程を示す断面図である。図6(d)、図7(d)、図8(d)、図9(d)、図10(d)、図11(d)、図12(d)、図13(d)、図14(d)、図15(d)は、図5に示す切断線D−Dで切断したときの製造工程を示す断面図である。図6(e)、図7(e)、図8(e)、図9(e)、図10(e)、図11(e)、図12(e)、図13(e)、図14(e)、図15(e)は、図5に示す切断線E−Eで切断したときの製造工程を示す断面図である。
【0023】
まず、半導体基板10に、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)等の素子分離領域12を形成し、セルトランジスタ1を形成するための素子領域13を形成する(図5、図6(a)乃至図6(e))。続いて、例えばSiNであるハードマスク材料を半導体基板10上に成膜し、リソグラフィー技術を用いてハードマスク材料をパターニングすることにより、ハードマスク22を形成する(図6(a)乃至図6(e))。このハードマスク22は、素子領域13と素子分離領域12にそれぞれ開口を有している。
【0024】
次に、図7(a)乃至図7(e)に示すように、ハードマスク22を用いて、素子領域13および素子分離領域12をエッチングし、素子領域13および素子分離領域12にそれぞれ凹部23a、23bを形成する。続いて、ハードマスク22を用いて、素子領域13を選択的にエッチングする。この際、素子分離領域12はほとんどエッチングされない(図8(a)乃至図8(e))。
【0025】
次に、図9(a)乃至図9(e)に示すように、素子領域13の凹部23aの側部および素子分離領域12の凹部23bの側部にそれぞれ、絶縁体、例えばSiNである側壁24を形成する。続いて、図10(a)乃至図10(e)に示すように、ハードマスク22および側壁24をマスクとして、選択性の高い等方性エッチングにより、素子分離領域12を加工する。すると、図10(b)、10(d)に示すように、素子分離領域12の凹部23bに接続する空洞25が形成されるとともに、図10(c)に示すように、露出している素子分離領域12の上面が低くなる。その後、図11(a)乃至図11(e)に示すように、ハードマスク22および側壁24を選択的に除去する。
【0026】
次に、図12(a)乃至図12(e)に示すように、露出している素子領域13の表面を覆うようにゲート絶縁膜14を形成する。続いて、空洞部25および凹部23a、23bを埋め込むように、ポリシリコン膜26を堆積し、その後、ポリシリコン膜26の上面を平坦化する。
【0027】
次に、図13(a)乃至図13(e)に示すように、リソグラフィー技術を用いてポリシリコン膜26をゲート電極形状にパターニングし、ゲート電極16を形成する。続いて、素子領域13上に露出しているゲート電極の側部に絶縁体の側壁20を公知の技術を用いて形成する。続いて、図14(a)乃至図14(e)に示すように、素子分離領域12を選択的にエッチングする。
【0028】
次に、図15(a)乃至図15(e)に示すように、イオン注入またはプラズマドーピング等の方法を用いて、露出している素子領域に不純物を導入し、その後、導入された不純物を活性化するためのアニールを行い、ソース/ドレイン領域18a、18bを形成する。その後、層間絶縁膜を堆積し、ソース/ドレイン領域18a、18bおよびゲート電極16に接続する開口を層間絶縁膜にそれぞれ設け、これらの開口を電極材料で埋込み、コンタクトを形成する。続いて、層間絶縁膜上に上記コンタクトと接続する配線を形成することによりトランジスタが完成する。
【0029】
以上説明したように、第1実施形態によれば、十分な電流を流すことができるトランジスタを備えた半導体装置を提供することができる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の半導体装置について図16および図17を参照して説明する。第2実施形態の半導体装置はMRAMであって、このMRAMの回路図を図16に示す。本実施形態のMRAMは、MTJ101をメモリセルの記憶素子として用い、第1実施形態のトランジスタ1をセルトランジスタとして用いている。
【0031】
なお、MTJ101は、例えば図17に示すように、磁化(またはスピン)の向きが可変の磁性層を有する磁化自由層101aと、磁化の向きが固定された磁性層を有する磁化固定層101c(参照層101cともいう)と、磁化自由層101a(記憶層101aともいう)と磁化固定層101cとの間に設けられたトンネルバリア層101bとを備えている。ここで、磁化の向きが「可変」であるとは、後述する書込み電流を流した前後で磁化の向きが反転、すなわち180度回転することを意味し、磁化の向きが「固定」であるとは、書込み電流を流した前後で磁化の向きが変わらないことを意味する。なお、磁化自由層および磁化固定層は、複数の磁性層と、これらの磁性層間に設けられる非磁性層とを有する積層構造であってもよい。
【0032】
磁化自由101aの磁化の向きを変化させるにはMTJ101に流す電流の方向を変えることで対応する。例えば磁化自由層101aと磁化固定層101cのスピンの向きを平行状態から反平行状態に変える場合には、磁化自由層101aからトンネルバリア層101bを通して磁化固定層101cに向けて電子を注入する。この場合、磁化自由層101aを通過した電子はスピン偏極され、このスピン偏極された電子がトンネルバリア層101bを通して磁化固定層101cに送られる。磁化固定層101cの磁化と同じ向きを有するスピン偏極された電子は磁化固定層101cを通過するが、磁化固定層101cの磁化と反対の向きを有するスピン偏極された電子はトンネルバリア層101bと磁化固定層101cとの界面で反射され、磁化自由層101aに送られ、磁化固定層101cの磁化と反対の向きを有するスピン偏極された電子によって、磁化自由層101aの磁化が反転される。これにより、磁化自由層101aの磁化の向きが磁化固定層101cの磁化の向きと反平行に書き込まれる。
【0033】
また、磁化自由層101aと磁化固定層101cのスピンの向きを反平行状態から平行状態に変える場合には、磁化固定層101cからトンネルバリア層101bを通して磁化自由層101aに向けて電子を注入する。この場合、磁化固定層101cを通過した電子は、スピン偏極され、このスピン偏極された電子がトンネルバリア層101bを通して磁化自由層101aに送られる。磁化固定層101cの磁化と同じ向きを有するスピン偏極された電子によって磁化自由層101aの磁化が反転され、磁化固定層101cの磁化の向きに平行になる。なお、磁化自由層101aの磁化の向きと磁化固定層101cの磁化の向きが平行状態のときはMTJ101の電気的抵抗は低く、反平行状態のときはMTJ101の電気的抵抗は高い。
【0034】
また、第2実施形態のMRAMは、マトリクス状に配列された複数のメモリセルMCを有するメモリセルアレイ100を備えている。メモリセルアレイ100には、それぞれが列(カラム)方向に延在するように、複数のビット線対BL、/BLが配設されている。また、メモリセルアレイ100には、それぞれが行(ロウ)方向に延在するように、複数のワード線WLが配設されている。
【0035】
ビット線BLとワード線WLとの交差部分には、メモリセルMCが配置されている。各メモリセルMCは、MTJ101、およびnチャネルMOSトランジスタからなるセルトランジスタ1を備えている。MTJ101の一端は、ビット線BLに接続されている。MTJ101の他端は、セルトランジスタ1のドレイン端子に接続されている。セルトランジスタ1のゲート端子は、ワード線WLに接続されている。セルトランジスタ1のソース端子は、ビット線/BLに接続されている。
【0036】
ワード線WLには、ロウデコーダ110が接続されている。ビット線対BL、/BLには、書き込み回路124及び読み出し回路125が接続されている。書き込み回路124及び読み出し回路125には、カラムデコーダ120が接続されている。各メモリセルMCは、ロウデコーダ110及びカラムデコーダ120により選択される。
【0037】
メモリセルMCへのデータの書き込みは、以下のように行われる。先ず、データ書き込みを行うメモリセルMCを選択するために、このメモリセルMCに接続されたワード線WLが活性化される。これにより、セルトランジスタ1がオン状態となる。ここで、MTJ101には、書き込みデータに応じて、双方向の書き込み電流Iwが供給される。具体的には、MTJ101に、図16において左から右へ書き込み電流Iwを供給する場合、書き込み回路124は、ビット線BLに正の電圧を印加し、ビット線/BLに接地電圧を印加する。また、MTJ101に、図16において右から左へ書き込み電流Iwを供給する場合、書き込み回路124は、ビット線/BLに正の電圧を印加し、ビット線BLに接地電圧を印加する。このようにして、メモリセルMCにデータ“0”、或いはデータ“1”を書き込むことができる。
【0038】
次に、メモリセルMCからのデータ読み出しは、以下のように行われる。まず、データ読み出しを行うメモリセルMCを選択するために、このメモリセルMCに接続されたワード線WLが活性化される。これにより、選択されたメモリセルMCのセルトランジスタ1がオン状態となる。読み出し回路125は、MTJ101に、例えば図16において右から左へ流れる読み出し電流Irを供給する。そして、読み出し回路125は、この読み出し電流Irに基づいて、MTJ101の抵抗値を検出する。このようにして、MTJ101に記憶されたデータを読み出すことができる。
【0039】
第2実施形態によれば、第1実施形態のトランジスタ1を用いてMRAMを構成することができる。このMRAMは、オフリーク電流が少なく、大きな電流駆動力を得ることができる。
【0040】
また、このMRAMは不揮発性メモリでありながら、DRAMと同程度の高速動作が可能である。またDRAMの記憶素子であるキャパシタよりもMRAMの記憶素子であるMTJのほうが微細化に向けて有利であり、より微細化に適しているとされている。また、MRAMは、いわゆるCMOSロジックLSIの中で使われる混載メモリとして用いることができる。
【0041】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の半導体装置について図18を参照して説明する。第3実施形態の半導体装置はDRAMであって、このDRAMは少なくとも1個のメモリセルを有し、このメモリセルを図18に示す。第3実施形態によるDRAMのメモリセルMCは、記憶素子となる1個のキャパシタ200と、nチャネルのセルトランジスタ1とを備えている。このセルトランジスタ1として、第1実施形態のトランジスタ1を用いている。セルトランジスタ1のゲートはワード線WLに接続され、ドレインがビット線BLに接続され、ソースがキャパシタ200の一端に接続されている。なお、キャパシタ200の他端は接地されている。
【0042】
第3実施形態によれば、第1実施形態のトランジスタ1を用いてDRAMを構成することができる。このDRAMは、オフリーク電流が少なく、大きな電流駆動力を得ることができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 トランジスタ
10 半導体基板
11 チャンネル領域
11a 鞍点を含む領域
11b 凸部
12 素子分離領域
13 素子領域
14 ゲート絶縁膜
16 ゲート電極
16a 本体部
16b 脚部
18a ソース領域
18b ドレイン領域
20 ゲート側壁
22 ハードマスク
23a、23b 凹部
24 側壁
25 空洞部
26 ポリシリコン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられ、上面および側面が鞍形状を形成し、前記上面における鞍点を含む領域における第1方向の両端に凸部をそれぞれ有する半導体領域と、
前記凸部の上面を除いた前記半導体領域の上面と、前記第1方向に沿った側面と、前記第1方向に直交する第2方向に沿った、前記上面における鞍点を含む領域側の前記凸部の側面との上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極であって、前記上面における鞍点を含む領域の直上に設けられた本体部と、前記本体部に接続され前記半導体領域の前記第1方向に沿った側面を覆う脚部と、を有し、前記脚部の前記第1方向における長さが前記上面における鞍点を含む領域の直上に設けられた前記本体部の前記第1方向における長さよりも長くなるように構成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に設けられた第1および第2不純物領域と、
を備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極の脚部の一部は,前記第1および第2不純物領域の第1方向に沿った側面上に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1および第2不純物領域は,前記半導体領域の凸部に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記上面における鞍点を含む領域の直上の前記本体部の前記第1方向における長さをLgとしたとき、前記ゲート電極の脚部の第1方向における長さは、1.8Lg〜2.0Lgの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記上面における鞍点を含む領域の直上の前記本体部の前記第1方向における長さをLgとしたとき、前記第1および第2不純物領域のそれぞれと前記半導体基板との界面は、前記ゲート電極の脚部の下面よりも浅い位置にあり、前記上面における鞍点を含む領域の上面からゲート電極の脚部の下面までの長さは、1.2Lg〜2Lgの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−186191(P2012−186191A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46151(P2011−46151)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】