説明

半導体装置

【課題】放熱性に優れるとともに、機械的強度の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】 この発明の半導体装置1は、金属ベース板4,8上に樹脂絶縁層5,9および導体層6,10が形成され導体層6,10同士が対向して配置される一対の絶縁金属基板3,7と、両絶縁金属基板3,7の導体層6,10に接続された半導体チップ2と、両絶縁金属基板3,7の導体層6,10に接続されたリード11〜13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年IGBT、スーパージャンクション型のMOSなどを搭載する半導体装置では、半導体チップの面積あたりの許容電流が大きくなっており、チップ温度が上昇し、放熱が困難になっている。そのため、半導体装置の許容電流量が、パッケージの放熱性で決められてしまうことになっている。
【0003】
図8に一般的な半導体装置を示す。このような半導体装置は、例えば特許文献1に開示されている。図8に示すように、半導体装置200は、フレーム201、リード204〜206、半導体チップ202およびこれらを封止する樹脂203から構成される。フレーム201上に半導体チップ202がマウントされる。フレーム201に連結されていないリード205,206は、図示しないワイヤボンディングにより半導体チップ202に接続される。この半導体装置200は、フレーム201の一端側で放熱部材であるヒートシンク206にビス205を用いて固定される。フレーム201は裏面(図で見て右面)が露出しており、半導体装置200は発熱するために、この裏面をヒートシンク206に密着させることで放熱を行う。半導体装置200は、リード204を、プリント基板210に設けられたスルホールに挿入し、半田付けによりこの挿入部を固定して使用される。
【0004】
半導体装置200は側面から見て非対称な形状をしており、放熱はほぼヒートシンク206が取付けられた裏面(図8の左の)からのみ行われている。そのため、半導体装置200の表裏で温度が異なるため、発熱による変形(反り)を制御することが困難であった。例えば図8でみて、表面である左側は、熱が逃げにくいために変形量が大きい。このため、半導体装置200が左に凸に反り、結果ヒートシンク206と半導体装置200の密着性も損なわれる。変形量が著しい場合、半導体チップ202とフレーム201との接合部が剥がれるなどして、部品が破損するおそれがある。
【0005】
そこで、特許文献2では、図9に示すように、半導体チップ302を、セラミック基板303,304の両面に金属板305〜308を備えた絶縁基板(例えば、DBC(Direct Bonding Copper)基板など。)により狭持し、半導体チップ302に圧接される金属板305,307にリード309〜311を接続し、リード309〜311の一部および金属板306,308のセラミック基板303,304と反対側の面306A,308Aを残して全体を樹脂312で封止して構成することが開示されている。
【0006】
この構成では、放熱部材として機能する金属板306,308が半導体装置300の表裏両側に存在するため、有効な放熱面積を稼げ、樹脂312の変形を抑制出来る反面、絶縁基板に主に強度を与えているのが脆性を有するセラミック基板303,304であるため、衝撃や外的応力が半導体装置300に作用するとセラミック基板303,304が割れるおそれがある。したがって、半導体装置300の強度が十分でなく、汎用性に乏しくなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−077355号公報
【特許文献2】特開2010−239033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みて、放熱性に優れるとともに、機械的強度の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の半導体装置は、金属ベース板上に樹脂絶縁層および導体層が形成され前記導体層同士が対向して配置される一対の絶縁金属基板と、前記両絶縁金属基板の前記導体層に接続された半導体チップと、前記両絶縁金属基板の前記導体層に接続されたリードと、を備える。
【0010】
この構成によると、放熱部材として機能する金属ベース板が半導体装置の表裏両側に存在するため、有効な放熱面積を稼げ、樹脂の変形を抑制出来る。また、絶縁金属基板に強度を与える基材として、じん性を有する厚みの大きな金属ベース板を使用している。したがって、一対の絶縁金属基板が割れにくくなる。これにより、半導体装置の機械的強度が向上する。
【0011】
また、本発明の半導体装置では、前記一対の絶縁金属基板間の隙間に充填され、前記導体層、前記半導体チップ、および前記リードを封止する樹脂層を備える。
【0012】
この構成によると、十分な厚みがある金属ベース板の樹脂層以外の面全体が空気に露出されているので、金属ベース板自体がヒートシンクとして機能する。このため、別途ヒートシンクを設ける必要がなく、半導体装置をプリント基板に搭載する際の搭載スペースを縮小でき、半導体装置をヒートシンクに取り付けるためのビス穴などが不要になり、半導体装置を小型化することに寄与する。
【0013】
また、本発明の半導体装置では、前記両絶縁基板に形成された前記導体層の面積がほぼ等しくされる。
【0014】
この構成によると、半導体チップの熱が両方の導体層に均一に伝達されるため、半導体装置の表裏両面から均等に放熱することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、放熱性に優れるとともに、機械的強度の高い半導体装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】半導体チップの一例であるIGBTを示す上面図(a)、下面図(b)および断面図(c)である。
【図3】第1の絶縁金属基板を導体層の側から見た平面図である。
【図4】第1の絶縁金属基板上に半導体チップおよびリードをマウントした状態を示す平面図である。
【図5】第2の絶縁金属基板を導体層の側から見た平面図である。
【図6】第2の絶縁金属基板の導体パターンとの半導体チップの配置関係を説明する平面図である。
【図7】第1の絶縁金属基板上に半導体チップおよびリードをマウントした状態で、第2の絶縁金属基板を重ねて絶縁層に半導体チップを固定する工程を説明する断面図である。
【図8】従来技術の一例に係る半導体装置を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図9】従来技術の他の例に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態に係る半導体装置を添付図面を参照しながら説明する。半導体装置1は、図1に断面図を示すように、半導体チップ2、第1,第2の絶縁金属基板3,7、およびリード11〜13を有している。
【0018】
半導体チップ2としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やスーパージャンクション型のMOSが好適に使用されるが、これらに限定されない。図2は、IGBTの一例を示しており、ウエハ21の表面には、一隅部を残してほぼ全面にエミッタ22が、一隅部にゲート23が形成されている。ウエハ21の裏面には、全面にコレクタ24が形成されている。
【0019】
図1に示すように、第1の絶縁金属基板3は、金属ベース板4上に樹脂絶縁層5および導体層6が順に積層される。第2の絶縁金属基板7も同様に、金属ベース板8上に樹脂絶縁層9および導体層10が順に積層される。このような絶縁金属基板は、IMS(Insulated Metal Substrate)として一般に入手可能なものである。金属ベース板は、アルミ等の高熱伝導性の金属材料から形成され、熱拡散層として機能する。また金属ベース板は材料自体に靭性があり、しかも図示のごとく樹脂絶縁層や導体層よりも厚みが大きく形成されているため、絶縁金属基板に十分な強度を与えている。樹脂絶縁層5,9は、エポキシ樹脂などの樹脂材料から形成され、絶縁層として機能する。導体層6,10は、銅箔などの導体材料から形成される。導体層6,10は、半導体チップ2のエミッタ22、ゲート23、コレクタ24と導通を取るためのパターンがエッチングにより形成される。
【0020】
図3に、第1の絶縁金属基板3の導体層6のパターン形状を示す。樹脂絶縁層5上に、半導体チップ2のコレクタ24(図2参照。)に面するコレクタパターン61Aとこのコレクタパターン61Aに連続して設けられたチップリードパターン61Bとから成る、凸字を上下反転させた形状の裏面側パターン61が形成され、その裏面側パターン61のチップリードパターン61Bの左右に、リードパターン62,63が形成されている。
【0021】
図5、図6に、第2の絶縁金属基板7の導体層10のパターン形状を示す。樹脂絶縁層9上に、第1の表面側パターン101および第2の表面側パターン102が形成される。第1の表面側パターン101は、半導体チップ2の表面のエミッタ22と面するエミッタパターン101Aとこのエミッタパターン101Aに連続して設けられたリードパターン101Bとから構成される。第1の表面側パターン101は、半導体チップ2のゲート23に接しないような切欠が設けられた、階段形状を呈している。第2の表面側パターン102は、第1の表面側パターン101の切欠に位置するゲートパターン102Aとこのゲートパターン102Aに連続して設けられたリードパターン102Bとから構成される。第2の表面側パターン102は、まずL字状のパターンを形成し、その後途中に絶縁部14を形成し、2つの絶縁されたゲートパターン102Aとリードパターン102Bから構成される。これらゲートパターン102Aとリードパターン102B間の絶縁層14により、半導体チップ2のゲート23とリードパターン102Bに接続されるリード13とを絶縁している。
【0022】
このように、導体層6,9のパターンは非常に類似した形状をしており、面積もほぼ等しい。そのため、半導体チップ2の熱は何れか一方に早く伝達することがなく、両方に均一に伝達するため、絶縁金属基板3,7の両方から均等に放熱することが出来る。従って、表裏で温度差が生じることがないため、半導体装置1の変形を抑制し、高い放熱効果を得ることが出来る。
【0023】
上記のようなパターンが形成された第1および第2の絶縁金属基板3,7上に半導体チップ2およびリード11〜13がマウントされる。図3〜図6に基づいて、各絶縁金属基板3,7のパターンと半導体チップ2との配置関係を説明する。図4は、半導体装置1を図1の上側から見て絶縁金属基板7を省略した状態を示す。図のように、第1の絶縁金属基板3の導体層6のコレクタパターン61A上に、半導体チップ2の裏面のコレクタ24が位置している。図6は、半導体装置1を図1の下側から見て絶縁基板3、及び半導体チップ2のコレクタ24とウエハ21を省略した状態を示す。図のように、第2の絶縁金属基板7の導体層10のエミッタパターン101Aおよびゲートパターン102A上に半導体チップ2の表面のエミッタ22およびゲート23がそれぞれ位置している。そして、チップリードパターン61B,103にリード11の一端部が位置し、リードパターン62、101Bにリード12の一端部が位置し,リードパターン63,102Bに、リード13の一端部がそれぞれ位置している。リード11〜13の一端部を除く部分は絶縁金属基板3,7の外部に導出されている。
【0024】
次に、上記のように構成される半導体装置1の製造手順を図3〜図7を参照して説明する。まず、金属基板4の絶縁層5上に、図3に示すパターン形状に導体層6を形成して製造された第1の絶縁金属基板3に、図4に示す配置のように、コレクタパターン61A上に、半導体チップ2のコレクタ24側を半田付けする。その後、同図に示すように、チップリードパターン61B、リードパターン62,63に、リード11,12,13の一端部を配置して半田付けする。なお、半田の代わりに、導電性の接着剤を使用しても構わない。
【0025】
次に、金属基板8の絶縁層8上に、図5に示すパターン形状に導体層10を形成して製造された第2の絶縁金属基板7を、図7のように、第1の絶縁金属基板3の角部A1,A2,B1,B2(図3参照。)と、第2の絶縁金属基板7の角部A1’,A2’,B1’,B2’(図5参照。)を対向させて、半導体チップ2とリード11〜13とを第1、第2の絶縁金属基板3,7で挟み込んで、図6の配置に第2の絶縁金属基板7のエミッタパターン101A、ゲートパターン102Aに半導体チップ2のエミッタ22、ゲート23をそれぞれ半田付けするとともに、チップリードパターン103、リードパターン101B,102Bにそれぞれリード11〜13を半田付けする。なお、半田の代わりに、導電性の接着剤を使用しても構わない。最後に、第1、第2の絶縁金属基板3,7間の隙間に樹脂15を充填し、全体を一体的に固定する。これにより、導体層6,10、半導体チップ2、およびリード11〜13の一部が封止される。
【0026】
本実施の形態によると、放熱部材として機能する金属ベース板4,8が半導体装置200の表裏両側に存在するため、有効な放熱面積を稼げ、放熱効果を高めることが出来る。また、半導体装置1は表裏両側で対称な構造なので、何れか一方のみ樹脂の変形量が大きくなることがなく、樹脂の変形を抑制出来、半導体チップ2が導体層6,9から剥離したり破損したりすることが防止出来る。また、金属ベース板4,8は厚みが十分あり、また金属ベース板4,8の内側以外の面が全て空気に露出されているので、金属ベース板4,8自体がヒートシンクとして機能する。このため、別途ヒートシンクを設ける必要がなく、半導体装置1をプリント基板に搭載する際の搭載スペースを縮小することに寄与する。このように、ヒートシンクを省略することができるため、半導体装置をヒートシンクに取り付けるためのビス穴などを形成するスペースを設ける必要がく、半導体装置を小型化することが出来る。
【0027】
本実施の形態に係る半導体装置1では、絶縁金属基板3,7に強度を与える基材として、じん性を有する厚みの大きな金属ベース板4,8を使用している。したがって、第1,第2の絶縁金属基板3,7が割れにくくなる。これにより、半導体装置1の機械的強度が向上する。
【0028】
また、樹脂を大量に充填する場合、気泡が混入することで熱伝導が妨げられたり、樹脂が破損しやすくなるなどの問題が発生することがあるが、本実施例に拠れば、絶縁金属基板3,7間にできる隙間にのみ樹脂を充填して半導体装置1を一体化しているため、充填する樹脂量が少ないので、気泡の混入を抑制することが出来る。そのため、割れにくく、高い放熱効果を持つ半導体装置を得ることが出来る。
【0029】
更に、本実施の形態によれば、絶縁金属基板3,7に類似した形状のほぼ等しい面積の導体層6,9を形成しているため、半導体チップの熱が両方の導体層に均一に伝達され、半導体装置の表裏両面から均等に放熱することが出来る。そのため、熱の偏りがなく、半導体装置の変形を抑制する効果がある。
【0030】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、この発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0031】
1…半導体装置
2…半導体チップ
3…第1の絶縁金属基板
7…第2の絶縁金属基板
4,8…金属ベース板
5,9…樹脂層
6,10…導体層
11〜13…リード
15…樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ベース板上に樹脂絶縁層および導体層が形成され前記導体層同士が対向して配置される一対の絶縁金属基板と、
前記両絶縁金属基板の前記導体層に接続された半導体チップと、
前記両絶縁金属基板の前記導体層に接続されたリードと、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記一対の絶縁金属基板間の隙間に充填され、前記導体層、前記半導体チップ、および前記リードを封止する樹脂層を備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記両絶縁基板に形成された前記導体層の面積がほぼ等しくされる請求項1又は2に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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