説明

半導体装置

【課題】CMOS回路の横に配置されたMEMS振動子の温度を上記CMOS回路内で容易に検出する。
【解決手段】本発明に係る半導体装置(1)は、MEMS振動子(11)と、CMOS回路(12)とを含む。上記CMOS回路は、温度検出のための温度センサ(16)と、上記CMOS回路で消費する電流を検出可能な電流センサ(19)と、上記電流センサでの検出結果に基づいて上記CMOS回路の温度上昇分を求め、それに基づいて、上記温度センサで得られた温度情報を補正する温度情報補正回路(17)と、上記温度情報補正回路で補正された温度情報に基づいて、上記クロック信号の周波数を補正するための回路(15)とを含む。CMOS回路の横にMEMS振動子が配置されることで、MEMS振動子とCMOS回路との間に温度差を生じている場合でも、上記温度情報補正回路での補正によって、MEMS振動子の温度情報を容易に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electromechanical Systems)振動子を共振器として用いて成るMEMS発振器を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子の代わりに、MEMS振動子を用いたMEMS発振器が注目されている。MEMS発振器は水晶発振器に比べて小型化が可能であり、また高周波への対応が容易とされる。MEMS振動子はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路とは異なるプロセスで製造される。従ってMEMS発振器を備えた半導体装置は、MEMS振動子チップとCMOS回路チップとが1つのパッケージ内に封止されたSiP(System in Package)として提供される。
【0003】
特許文献1には、MEMS振動子を共振器として用いたMEMS発振器が記載されている。このMEMS発振器においては、MEMS振動子の温度補償が行われる。MEMS振動子の温度補償では、MEMS振動子の共振周波数の温度変化に対して、該温度変化と逆の共振周波数の変化を与えるバイアス電圧が、検出電圧に対応してMEMS振動子に与えられる。
【0004】
特許文献2には、微細電気機械発振器での周波数調整や位相補償の技法が記載されている。ここで微細電気機械発振器は、MEMS発振器とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−200888号公報
【特許文献2】特表2007−518351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、MEMS振動子を共振器として用いて成るMEMS発振器を備えた半導体装置について検討し、以下の課題を見いだした。
【0007】
MEMS振動子の共振周波数は、温度に依存して変化するため、温度センサでの温度検出結果に基づいて、周波数の補正が必要となる。温度センサは、CMOS回路側に構築する場合が多い。温度センサをCMOS回路側に構築する場合、MEMS振動子がCMOS回路の上に積層される構造(これを「積層型構造」という)が採用される。積層型構造が採用されるのは、CMOS回路内の温度センサによって、MEMS振動子の温度を正しく検出するためである。つまり、CMOS回路内のMCUで発生した熱をMEMS振動子に伝達し易くすることで、CMOS回路とMEMS振動子との温度差を可能な限り小さくする必要があるためである。
【0008】
MEMS振動子をCMOS回路の横に置く構造(これを「横置き型構造」という)の場合、MEMS振動子をCMOS回路に密着させることができないから、CMOS回路内のMCU等で発生した熱をMEMS振動子に伝達し難くなり、CMOS回路とMEMS振動子との温度差を小さくすることができない。このため、CMOS回路の横に配置されたMEMS振動子の温度をCMOS回路内の温度センサで検出するのは困難とされる。
【0009】
本発明の目的は、CMOS回路の横に配置されたMEMS振動子の温度を上記CMOS回路内で容易に検出するための技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0012】
すなわち、半導体装置は、MEMS振動子と、上記MEMS振動子を共振器として用いることでクロック信号を形成するCMOS回路とを含む。上記CMOS回路は、温度検出のための温度センサと、上記CMOS回路で消費する電流を検出可能な電流センサと、上記電流センサでの検出結果に基づいて上記CMOS回路の温度上昇分を求め、それに基づいて、上記温度センサで得られた温度情報を補正する温度情報補正回路と、上記温度情報補正回路で補正された温度情報に基づいて、上記クロック信号の周波数を補正するための回路とを含む。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0014】
すなわち、CMOS回路の横に配置されたMEMS振動子の温度を上記CMOS回路内で容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる半導体装置の構成例ブロック図である。
【図2】MEMS振動子がCMOS回路の上に積層された積層型構造と、MEMS振動子がCMOS回路の横に形成された横置き型構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0017】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る半導体装置(1)は、MEMS振動子(11)と、上記MEMS振動子を共振器として用いることでクロック信号を形成するCMOS回路(12)とを含む。上記CMOS回路は、温度検出のための温度センサ(16)と、上記CMOS回路で消費する電流を検出可能な電流センサ(19)と、上記電流センサでの検出結果に基づいて上記CMOS回路の温度上昇分を求め、それに基づいて、上記温度センサで得られた温度情報を補正する温度情報補正回路(17)と、上記温度情報補正回路で補正された温度情報に基づいて、上記クロック信号の周波数を補正するための回路(15)とを含む。
【0018】
MEMS振動子は発熱体では無いため、MEMS振動子の温度は、当該MEMS振動子の周囲温度に等しくなる。一方、上記CMOS回路の発熱は、上記CMOS回路での電流消費によるものであるから、上記電流センサでの電流検出結果に基づいて上記CMOS回路の温度上昇分を求め、それに基づいて、上記温度情報を補正することによって、MEMS振動子の温度を容易に求めることができる。従って、MEMS振動子がCMOS回路の横に形成された横置き型構造において、MEMS振動子とCMOS回路との間に温度差を生じている場合でも、温度情報補正回路で補正された温度情報に従って分周回路での分周比が制御されることにより、良好な周波数補正を行うことができる。尚、上記温度情報補正回路での温度補正は、MEMS振動子がCMOS回路の上に積層された積層型構造の場合においても有効である。このよにMEMS振動子がCMOS回路の横に形成された横置き型構造の場合でも、MEMS振動子がCMOS回路の上に積層された積層型構造の場合でも、良好な周波数補正を行うことができるので、半導体装置1のSiP設計の自由度が増す。
【0019】
〔2〕上記〔1〕において、上記温度情報補正回路は、上記CMOS回路で消費する電流と、上記CMOS回路の温度上昇との関係からCMOS回路の温度上昇分を算出し、上記温度センサで得られた温度情報から上記CMOS回路の温度上昇分を差し引くことで、MEMS振動子の温度情報を容易に得ることができる。
【0020】
〔3〕上記〔1〕及び〔2〕の作用効果により、上記MEMS振動子のチップを上記CMOS回路のチップの横に配置し、上記CMOS回路のチップとともに1つのパッケージ内に封止することができる。
【0021】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0022】
《実施の形態1》
図1には、本発明にかかる半導体装置が示される。
【0023】
図1に示される半導体装置1は、MEMS振動子11と、CMOS回路12とを含む。MEMS振動子11とCMOS回路12とは、1つのパッケージ内に封止される。MEMS振動子11は、CMOS回路12とは別のプロセスで半導体材料により構成された振動子である。CMOS回路12は、バイアス回路13、励振アンプ14、分周回路15、温度センサ16、温度情報補正回路17、MCU及びその周辺回路18、電流センサ19を含み、公知の半導体集積回路製造技術により単結晶シリコン基板などの一つの半導体基板に形成される。MEMS振動子11、バイアス回路13、励振アンプ14、分周回路15、温度センサ16、及び温度情報補正回路17を含んでMEMS発振器が形成される。
【0024】
バイアス回路13は、所定のバイアス電圧をMEMS振動子11に供給する。励振アンプ14は、MEMS振動子11の一方の端子から出力される電圧を増幅してMEMS振動子11の他方の端子に供給することによって、MEMS振動子11を共振器として駆動する。励振アンプ14には、特に制限されないが、インバータを適用することができる。分周回路15は、励振アンプ14の出力信号(クロック信号)を分周する。この分周回路15の出力は、MCU及びその周辺回路12に伝達されるとともに、このCMOS回路12の外部に出力可能とされる。温度センサ16は、CMOS回路12内で温度検出を行う。温度センサ16の出力は温度情報とされる。温度情報補正回路17は、温度センサ16から伝達された温度情報を補正する。補正された温度情報は分周回路15に伝達される。分周回路15は、温度情報補正回路17から伝達された温度情報に応じてクロック信号の分周比を制御する。
【0025】
電流センサ19は、このCMOS回路12に高電位側電源Vddが供給されることにより、このCMOS回路12で消費される電流を検出する。電流センサ19での電流検出結果は、温度情報補正回路17に伝達される。温度情報補正回路17は、上記電流センサでの検出結果に基づいて上記CMOS回路12の温度上昇分を求め、それに基づいて、上記温度センサで得られた温度情報を補正する。具体的には、上記温度情報補正回路17において、CMOS回路12で消費される電流とCMOS回路12の温度上昇との関係(「消費電流対温度上昇に関する情報」という)からCMOS回路の温度上昇分が算出され、温度センサ19で得られた温度情報から上記CMOS回路12の温度上昇分が差し引かれることで、MEMS振動子11の温度情報が得られる。消費電流対温度上昇に関する情報は、予め測定されたものを使用することができる。その場合、消費電流対温度上昇に関する情報をMCU内のフラッシュメモリ等に格納しておき、その情報を、MCUのリセット処理などにおいて、温度情報補正回路17内のレジスタなどに書き込むように構成することができる。それにより温度情報補正回路17は、このレジスタ内の情報を参照して、CMOS回路12の温度上昇分を求めることができる。
【0026】
図2には、MEMS振動子11がCMOS回路12の上に積層された積層型構造(A)と、MEMS振動子11がCMOS回路12の横に形成された横置き型構造(B)とが示される。本例では、横置き型構造(B)が採用されている。
【0027】
積層型構造(A)の場合、MEMS振動子11がCMOS回路12の上に積層されているため、CMOS回路12内のMCUで発生した熱をMEMS振動子11に容易伝達することができるため、CMOS回路12とMEMS振動子11との温度差を小さくすることができ、MEMS振動子の温度を正しく検出することができる。一方、横置き型構造(B)の場合には、MEMS振動子11がCMOS回路12に直接接触されていない。このため、MEMS振動子11とCMOS回路12との間には、図示されないモールド材などが介在され、良好な温度伝達が行われないため、両者間に温度差を生じてしまう。
【0028】
しかしながら本例では、横置き型構造であるにもかかわらず、温度情報補正回路17において、CMOS回路12で消費される電流とCMOS回路12の温度上昇との関係(消費電流対温度上昇に関する情報)からCMOS回路12の温度上昇分が算出され、温度センサ19で得られた温度情報から上記CMOS回路12の温度上昇分が差し引かれることで、MEMS振動子11の温度情報が求められる。このため、温度情報補正回路17で補正された温度情報に従って、分周回路15での分周比が制御されることにより、良好な周波数補正を行うことができる。
【0029】
実施の形態1によれば、以下の作用効果を奏する。
【0030】
(1)温度情報補正回路17は、電流センサ19での検出結果に基づいてCMOS回路12の温度上昇分を求め、それに基づいて、温度センサ16で得られた温度情報を補正する。このような温度補正が行われることにより、MEMS振動子がCMOS回路の横に形成された横置き型構造の場合において、MEMS振動子とCMOS回路との間に温度差を生じている場合でも、温度情報補正回路で補正された温度情報に従って分周回路での分周比が制御されることにより、良好な周波数補正を行うことができる。
【0031】
上記温度情報補正回路17での温度補正は、MEMS振動子がCMOS回路の上に積層された積層型構造の場合においても有効である。図1に示される構成によれば、MEMS振動子11がCMOS回路12の横に形成された横置き型構造の場合でも、MEMS振動子11がCMOS回路12の上に積層された積層型構造の場合でも、良好な周波数補正を行うことができるので、半導体装置1のSiP設計の自由度が増すという利点もある。
【0032】
(2)温度情報補正回路17は、CMOS回路12で消費する電流と、CMOS回路12の温度上昇との関係からCMOS回路12の温度上昇分を算出し、温度センサ16で得られた温度情報からCMOS回路12の温度上昇分を差し引くことで、上記温度情報の補正を行うように構成することができ、それにより、簡単な演算処理により温度情報の補正を行うことができる。
【0033】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0034】
例えば、温度情報補正回路17の出力に基づいて、バイアス回路13で生成されるバイアス電圧を制御するようにしても、クロック信号の良好な周波数補正を行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
1 半導体装置
11 MEMS振動子
12 CMOS回路
13 バイアス回路
14 励振アンプ
15 分周回路
16 温度センサ
17 温度情報補正回路
18 MCU及びその周辺回路
19 電流センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMS振動子と、
上記MEMS振動子を共振器として用いることでクロック信号を形成するCMOS回路とを含み、
上記CMOS回路は、温度検出のための温度センサと、
上記CMOS回路で消費する電流を検出可能な電流センサと、
上記電流センサでの検出結果に基づいて上記CMOS回路の温度上昇分を求め、それに基づいて、上記温度センサで得られた温度情報を補正する温度情報補正回路と、
上記温度情報補正回路で補正された温度情報に基づいて、上記クロック信号の周波数を補正するための回路と、を含む半導体装置。
【請求項2】
上記温度情報補正回路は、上記CMOS回路で消費する電流と、上記CMOS回路の温度上昇との関係から上記CMOS回路の温度上昇分を算出し、上記温度センサで得られた温度情報から上記CMOS回路の温度上昇分を差し引くことで、上記温度情報の補正を行う請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
上記MEMS振動子のチップは、上記CMOS回路のチップの横に配置され、上記CMOS回路のチップとともに1つのパッケージ内に封止されて成る請求項2記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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