説明

半導体装置

【課題】半導体パッケージを実装基板から取り外すリペアが容易であって、半導体パッケージと実装基板との接続部の耐衝撃性を向上させることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、半導体素子4が接続された半導体パッケージ1と、実装基板2とがはんだバンプ3を介して電気的及び機械的に接続されてなり、半導体パッケージ1は、半導体素子4が接続されるとともに実装基板2と接続される半導体パッケージ用配線板5を有し、半導体パッケージ用配線板5に形成された電極パッド22のコア層11側には第1応力緩和層21が配置されており、実装基板2に形成された電極パッド33の層間絶縁層31側には第2応力緩和層34が配置されており、第1応力緩和層21の25℃の弾性率が2.5GPa以下であり、第2応力緩和層34の25℃の弾性率が3GPa以下かつ第2応力緩和層34の平面方向の25℃の熱膨張係数が8×10-6/℃以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子が接続された半導体パッケージと、実装基板とがはんだを介して電気的及び機械的に接続されてなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型電話機、ノート型パーソナルコンピュータ(PC)などの電子機器の薄型化が一段と進んでいる。これに伴い、電子機器に内蔵される半導体パッケージにも薄型化が望まれている。ここで、半導体パッケージとは、半導体パッケージ用配線板に半導体素子が搭載されたものを指す。また、半導体素子が接続された半導体パッケージと、実装基板とをはんだを介して電気的及び機械的に接続されたものを半導体装置という。
半導体パッケージの薄型化が進むと、半導体素子の熱膨張係数と、半導体パッケージ用配線板の熱膨張係数との差により、半導体装置の使用環境下において半導体パッケージが反ったり、リフローはんだにより半導体パッケージを実装基板へ取り付ける工程において半導体パッケージが反ったりすることが起こり得る。これにより、半導体パッケージを実装基板へ取り付ける工程における歩留まりの低下を招く。これに対して、半導体パッケージ用配線板の熱膨張係数を半導体素子の熱膨張係数に近づける対処が採られている。
【0003】
同様に、半導体パッケージと、半導体パッケージが接続される実装基板との間にも熱膨張係数差によって、半導体装置の信頼性の低下を招くという問題がある。しかし、この問題についても、半導体パッケージの熱膨張係数と実装基板の熱膨張係数とを少しでも近づけることで解消できると考えられる。
【0004】
ところが、電子機器の高機能化に伴い、実装基板の回路は複雑化し多層化されているとともに、コストの問題から低熱膨張基材の適用が望まれないため、半導体パッケージと比べて、実装基板の熱膨張係数の低下傾向の方が緩やかである。このため、実装基板の熱膨張係数と、半導体パッケージの熱膨張係数とを近づけるように調整することは、依然として困難性が高い。
半導体パッケージの熱膨張係数と実装基板の熱膨張係数との差が増加すると、半導体パッケージと実装基板との接続部において、加熱と冷却を繰り返すことに対する耐性(耐温度サイクル性)の低下が懸念される。
【0005】
耐温度サイクル性を向上させる代表的な手法としては、半導体パッケージの熱膨張係数と実装基板の熱膨張係数とを近づける手法のほかに、アンダフィル材のような補強材料を、半導体素子と半導体パッケージ用配線板との接続部の周辺に充填する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
これに倣って、アンダフィル材のような補強材料を用いて、半導体装置においても半導体パッケージと実装基板との接続部を補強すれば、耐温度サイクル性の向上とともに、例えば、落下などの衝撃に対する耐性(耐衝撃性という)の向上も望める。
しかし、アンダフィル材を充填する手法では、半導体パッケージを実装基板から取り外すリペアが困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−71030
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、半導体パッケージを実装基板から取り外すリペアが容易であって、半導体パッケージと実装基板との接続部の耐衝撃性を向上させることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の課題を解決すべく検討を進めた結果、半導体パッケージ用配線板に形成される電極パッドに接し特定の弾性率を有する応力緩和層と、実装基板に形成される電極パッドのコア層側に配置されており該電極パッドに接し特定の弾性率を有する応力緩和層とを形成することによって、半導体パッケージと実装基板との接続部の耐衝撃性を向上できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
本発明は、以下の内容を含む。
<1>半導体素子が接続された半導体パッケージと、実装基板とがはんだを介して電気的及び機械的に接続されてなる半導体装置であって、該半導体パッケージは、半導体パッケージ用層間絶縁層と、該半導体パッケージ用層間絶縁層の表面に形成されており該はんだを介して該実装基板に電気的及び機械的に接続されるパッケージ側電極パッドと、該パッケージ側電極パッドの該半導体パッケージ用層間絶縁層側に配置されており該パッケージ側電極パッドに接する第1応力緩和層とを有し、該実装基板は、実装基板用層間絶縁層と、該実装基板用層間絶縁層の表面に形成されており該はんだを介して該半導体パッケージに電気的及び機械的に接続される実装基板側電極パッドと、該実装基板側電極パッドの該実装基板用層間絶縁層側に配置されており該実装基板側電極パッドに接する第2応力緩和層とを有し、該第1応力緩和層の25℃の弾性率が2.5GPa以下であり、該第2応力緩和層の25℃の弾性率が3GPa以下かつ該第2応力緩和層の平面方向の25℃の熱膨張係数が8×10-6/℃以下である半導体装置。
<2>第1応力緩和層の厚みが2μm以上である前記<1>の半導体装置。
<3>第2応力緩和層の厚みが30μm以上である前記<1>又は<2>の半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体パッケージを実装基板から取り外すリペアが容易であって、半導体パッケージと実装基板との接続部の耐衝撃性を向上させることができる半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の半導体装置を説明する部分断面図である。
【図2】評価試験用の半導体パッケージ用配線板のサイズ、及び配線パターンを説明する平面図である。
【図3】評価試験用の半導体パッケージ、1パッケージ分の領域を拡大した平面拡大図である。
【図4】評価試験用の半導体パッケージに用いられる実装基板を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の半導体装置は、半導体素子が接続された半導体パッケージと、実装基板とがはんだを介して電気的及び機械的に接続されてなる半導体装置であって、該半導体パッケージは、半導体パッケージ用層間絶縁層と、該半導体パッケージ用層間絶縁層の表面に形成されており該はんだを介して該実装基板に電気的及び機械的に接続されるパッケージ側電極パッドと、該パッケージ側電極パッドの該半導体パッケージ用層間絶縁層側に配置されており該パッケージ側電極パッドに接する第1応力緩和層とを有し、該実装基板は、実装基板用層間絶縁層と、該実装基板用層間絶縁層の表面に形成されており該はんだを介して該半導体パッケージに電気的及び機械的に接続される実装基板側電極パッドと、該実装基板側電極パッドの該実装基板用層間絶縁層側に配置されており該実装基板側電極パッドに接する第2応力緩和層とを有し、該第1応力緩和層の25℃の弾性率が2.5GPa以下であり、該第2応力緩和層の25℃の弾性率が3GPa以下かつ該第2応力緩和層の平面方向の25℃の熱膨張係数が8×10-6/℃以下である。
【0013】
[半導体装置]
以下、本発明の一例について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の半導体装置を説明する部分断面図である。図1には、半導体パッケージ用配線板が適用された半導体パッケージ及び半導体パッケージが接続される実装基板の一部が示されている。
図1に示す半導体装置100は、半導体パッケージ1と、実装基板2とがはんだバンプ3によって電気的及び機械的に接続されることによって形成されている。はんだバンプ3とは、半導体パッケージ1と実装基板2とを接続する接続用電極であって、はんだボールやはんだペースト等で作製されている。
【0014】
[半導体パッケージ]
<半導体パッケージの構造>
半導体パッケージ1は、半導体素子4と半導体パッケージ用配線板5とを有する。半導体素子4は、半導体パッケージ用配線板5に、はんだバンプ6によって電気的及び機械的に接続されている。半導体素子4と半導体パッケージ用配線板5との接続部分は、アンダフィル材7によって補強されていてもよい。
半導体パッケージ用配線板5は、コア層11と、コア層11の一方の表面に形成されたビルドアップ層12と、コア層11の他方の表面に形成されたビルドアップ層13とを有する。
コア層11は、半導体パッケージ用配線板5のコアを形成する層間絶縁層14と、層間絶縁層14の表面に配置された配線層15とを有する。ここで、層間絶縁層14は、半導体パッケージ用層間絶縁層を構成する。
ビルドアップ層12は、層間絶縁層16と配線層17とを有する。配線層17は、層間絶縁層16がコア層11の配線層15と接する側と反対側の表面の所定領域に形成される。配線層17が形成されていない層間絶縁層16の表面、及び配線層17の表面は、ソルダレジスト層18により覆われている。
コア層11の他方の表面に形成されるビルドアップ層13は、層間絶縁層19と、配線層20と、層間絶縁層19と配線層20との間に配置されて層間絶縁層19と配線層20とに接する第1応力緩和層21とを有する。
配線層20は、層間絶縁層19が配線層15と接する側と反対側の表面の所定領域に形成された第1応力緩和層21の表面に形成される。配線層20の一部には、はんだバンプ3が接続される電極パッド22が形成される。ここで、電極パッド22は、パッケージ側電極パッドを構成する。
配線層20が形成されていない第1応力緩和層21の表面、層間絶縁層19の表面に第1応力緩和層21が形成されていないときは層間絶縁層19の表面、及び配線層20の表面であって電極パッド22を除く部分は、ソルダレジスト層23により覆われている。
図1に示すように、半導体パッケージ用配線板5が複数の層間絶縁層と複数の配線層とを有する場合には、第1応力緩和層21は、実装基板2と電気的及び機械的に接続される電極パッド22と層間絶縁層19との間に配置される。
【0015】
図1には省略されているが、半導体パッケージ用配線板5には、配線層15,17,20を半導体パッケージ用配線板5の厚み方向に接続するビアホールやスルーホールが形成されていてもよい。
また、図1には、半導体素子4の入出力端子が半導体パッケージ用配線板5の配線層に、はんだバンプにより接続するフリップチップ方式(フェイスダウン実装)のものが説明されている。しかし、半導体素子4が半導体パッケージ用配線板5に固定されるとともに電気的に接続されればよく、フリップチップ方式に限定されない。
例えば、半導体素子4の入出力端子から導出された金ワイヤなどによって、半導体パッケージ用配線板5の配線層に直接金属間接合するワイヤボンド方式(フェイスアップ実装)であってもよい。
【0016】
<半導体パッケージ用配線板の各層の説明>
(コア層)
コア層11として、両面プリント配線板を使用することができる。両面プリント配線板は、例えば、層間絶縁層14の表面に形成された配線パターンと裏面に形成された配線パターンとが層間絶縁層14を貫通するめっきスルーホールで電気的に接続されたものである。
(コア層の層間絶縁層を形成する樹脂組成物)
コア層11を形成する層間絶縁層14用の樹脂組成物としては、絶縁層を形成することのできる従来の樹脂組成物であれば適用可能である。通常、熱硬化性樹脂と、該熱硬化性樹脂の硬化剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物を加熱及び加圧して作製される硬化物を適用可能である。熱硬化性樹脂としては、シロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
例えば、コア層11を形成する層間絶縁層14は、シロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂を含む樹脂成分100質量部に対してシリカ100〜250質量部を含有する樹脂組成物から形成することができる。
また、層間絶縁層14は、シロキサン樹脂、シアネート樹脂を含む樹脂成分100質量部に対してシリカ100〜200質量部を含有する樹脂組成物から形成することができる。
【0017】
シロキサン樹脂としては、一般式(I)で示される構造の水酸基を含有するシロキサン樹脂を用いることができる。なかでも、シロキサン樹脂の両末端がフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、又はアミノ基であると好ましい。
【0018】
【化1】

(式中、R1は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又はアルキレンオキシ基,Ar1は各々独立に単結合、アリーレン基又は炭素数1〜5のアルキレン基であり、mは5〜100の整数である。)
【0019】
両末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製、商品名X−22−1821(水酸基価:35KOHmg/g)、商品名X−22−1822(水酸基価:20KOHmg/g)が挙げられる。
また、両末端にアルコール性水酸基を有するシロキサン樹脂の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製、商品名X−22−160AS(水酸基価:112KOHmg/g)、商品名X−22−4015(水酸基価:27KOHmg/g)等が挙げられる。
また、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名KF−6001(水酸基価:62KOHmg/g)、商品名KF−6002(水酸基価:35KOHmg/g)、商品名KF−6003(水酸基価:20KOHmg/g)等が挙げられる。
また、アミノ基を含有するシロキサン樹脂の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製、商品名X−22−161A(アミノ基当量;800)が挙げられる。
【0020】
ポリイミド樹脂としては、例えば、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(成分A)と、酸性置換基を有するアミン化合物(成分B)とを反応させて得られる樹脂である。このような樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として働く。成分Aと成分Bとは、別途反応させた後、樹脂組成物に添加してもよいし、樹脂組成物を作製する際に、同時に添加してもよい。
成分Aの例としては、例えば、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス−(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
これらの中で、反応率が高く、より高耐熱性化できるビス(4−マレイミドフェニル)メタン、m−フェニレンビスマレイミド及びビス(4−マレイミドフェニル)スルホンが好ましく、安価である点からm−フェニレンビスマレイミド及びビス(4−マレイミドフェニル)メタンがより好ましく、溶媒への溶解性の点からビス(4−マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
成分Bの例としては、例えば、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン等が挙げられる。
これらの中で、溶解性や合成の収率の点からm−アミノフェノール、p−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸及び3,5−ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の点からm−アミノフェノール及びp−アミノフェノールがより好ましい。
【0021】
シアネート樹脂としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、ビスフェノールF型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等が挙げられる。これらのうち1種又は2種以上を混合して使用することができる。
中でも、誘電特性、耐熱性、難燃性、低熱膨張性、及び安価である点から、ビスフェノールA型シアネート樹脂、又は一般式(II)に示すノボラック型シアネート樹脂が好ましい。
【0022】
【化2】

(nは、0又は1以上の整数である。)
一般式(II)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し数nは、特に限定されないが、1〜30が好ましい。1より少ないと結晶化しやすくなり取り扱いが困難となる場合がある。また、30より多いと硬化物が脆くなる場合がある。
ビスフェノールA型シアネート樹脂の市販品としては、ロンザジャパン株式会社製、商品名Arocy B−10が挙げられる。また、ノボラック型シアネート樹脂の市販品としては、ロンザジャパン株式会社製、商品名プリマセットPT−30(重量平均分子量500〜1,000)、商品名プリマセットPT−60(重量平均分子量2,000〜3,000)等が挙げられる。
【0023】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂,ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂、ビスマレイミド含有アミノトリアジンノボラック樹脂等が好ましい。
硬化剤の量は、エポキシ基に対して0.5〜1.5当量とすることが好ましく、0.75〜1.25当量とすることがより好ましい。
【0024】
シリカとしては、溶融シリカを用いることができる。溶融シリカの市販品としては、アドマテック社製の商品名SO−25R)等が挙げられる。本発明の熱硬化性樹脂組成物において、溶融シリカの配合量は、樹脂成分100質量部に対して100〜250質量部とすることが好ましい。
【0025】
層間絶縁層14用の樹脂組成物は、必要に応じて、難燃剤、無機充填材等を含有していてもよい。難燃剤としては、例えば、ハロゲン含有樹脂、リン含有樹脂、窒素含有樹脂等が挙げられる。
無機充填材としては、例えば、破砕シリカ、マイカ、タルク、ガラス短繊維又は微粉末及び中空ガラス、炭酸カルシウム、石英粉末、金属水和物等が挙げられる。これらの中で、低熱膨張性や高弾性、耐熱性、難燃性の点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物を使用することが好ましい。
シリカを除いた無機充填材の量は、溶剤を除く全固形分中で20〜80質量%とすることが好ましく、30〜70質量%とすることがより好ましい。
【0026】
(層間絶縁層の構成)
コア層11を形成する層間絶縁層14は、通常、上述した熱硬化性樹脂組成物がBステージ化したシート状の樹脂組成物から形成することができる。コア層11を形成する層間絶縁層14は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物が基材に含浸し、乾燥してBステージ化して作製されたものでもよい。また、熱硬化性樹脂組成物のワニス溶液を基材に含浸することなく、乾燥してBステージ化したものでもよい。基材としては、例えば、ガラス織布やガラス不織布等のガラスクロスが挙げられる。
ガラスクロスなどの基材を用いた場合には、基材を用いない場合と比較して、平面方向の熱膨張係数が小さくなる傾向がある。このため、コア層11を形成する層間絶縁層14には、ガラスクロスなどの基材を用いることが好ましい。
ガラスクロスに用いられるガラスの種類は、特に限定されるものではないが、一般的に広くFRP用ガラスクロスに用いられるアルミノケイ酸ガラスが好適である。中でも、シリカ成分を増量して熱膨張係数を低下させた、いわゆるSガラスを用いることが好ましい。
シリカ成分は、ガラスクロス100質量部に対して60〜70質量部含まれることが好ましく、64〜66質量部含まれることがより好ましい。シリカ成分が60質量部未満になると、層間絶縁層の熱膨張係数を低減させる効果が低くなる。また、シリカ成分が70質量部を超えるとガラスクロスが割れ易くなり、半導体パッケージ用配線板が脆くなる傾向がある。
【0027】
(層間絶縁層の物性)
コア層11を形成する層間絶縁層14の平面方向の25℃〜165℃の平均の熱膨張係数は、5.5×10-6/℃以下であることが好ましく、4.5×10-6/℃以下であることがより好ましい。熱膨張係数が5.5×10-6/℃より高くなると、半導体パッケージ1の反りが大きくなる傾向にある。
また、コア層11を形成する層間絶縁層14の平面方向の165℃〜260℃の平均の熱膨張係数は、7.5×10-6/℃以下であることが好ましく、4.5×10-6/℃以下であることがより好ましい。熱膨張係数が7.5×10-6/℃以下にすると、半導体パッケージ1の反りを抑制できる。
【0028】
コア層11を形成する層間絶縁層14の平面方向の25℃〜165℃の平均の熱膨張係数、及び165℃〜260℃の平均の熱膨張係数は、上記(層間絶縁層の構成)で説明した構成によって達成される。すなわち、層間絶縁層を形成する樹脂組成物、樹脂組成物へのシリカの配合量、コア層を形成するガラスクロスなどの基材の種類、基材としてのガラスクロスにおけるシリカ成分量、半導体パッケージ用配線板の厚みに対するコア層を形成する層間絶縁層の厚み比などである。
本発明において、層間絶縁層の平面方向の熱膨張係数とは、層間絶縁層の厚み方向に垂直な方向における線膨張係数を意味し、次のように測定されるものである。
層間絶縁層を合計厚みが0.2mmとなるように積層してプレス成型したプリプレグをテストサンプルとして使用して、TMA装置(TAインスツルメンツ製、装置名:TA2940)を用いて測定する。テストサンプルのサイズは、長さ5mm×幅5mm、測定モードは圧縮、印可加重は0.05N、昇温速度は10℃/分とする。装置内でサンプルの温度を230℃程度まで上げ、その後10℃まで冷却する前処理を行ってから測定を開始し、得られた25℃〜165℃の平均の熱膨張係数、及び165℃〜260℃の平均の熱膨張係数を算出する。
【0029】
(ビルドアップ層の層間絶縁層を形成する樹脂組成物)
ビルドアップ層12及び13を形成する層間絶縁層16及び19は、コア層11を形成する層間絶縁層14用の樹脂組成物と同様のものが用いられる。
ビルドアップ層12及び13を形成する層間絶縁層16及び19の厚みは、それぞれ200μm〜10μmとすることができ、より好ましくは、100〜20μmである。ビルドアップ層の厚みが200μm以下であれば、半導体パッケージ1の反りを抑制することができる。また、ビルドアップ層の厚みが10μm以上であれば、良好な層間絶縁性を得ることができる。
【0030】
ビルドアップ層12及び13を形成する層間絶縁層16及び19用の樹脂組成物は、必要に応じて、それぞれ難燃剤、無機充填材等を含有していてもよい。難燃剤としては、例えば、ハロゲン含有樹脂、リン含有樹脂、窒素含有樹脂等が挙げられる。無機充填材としては、例えば、アルミナ、シリカ、無機水和物充填材、アルミノケイ酸塩、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0031】
ビルドアップ層12及び13を形成する層間絶縁層16及び19は、コア層11を形成する層間絶縁層14と同様に、熱硬化性樹脂組成物がBステージ化したシート状の樹脂組成物から形成されていてもよい。また、熱硬化性樹脂組成物が、ガラスクロスなどの基材に含浸し、乾燥してBステージ化して作製されてものでもよい。
【0032】
(第1応力緩和層を形成する樹脂組成物)
第1応力緩和層を形成する樹脂組成物としては、該応力緩和層の25℃の弾性率を2.5GPa以下にすることができる樹脂組成物であり、層間絶縁層と配線層との両者に対する密着性が良好な樹脂組成物を用いる必要がある。
応力緩和層を形成する樹脂組成物としては、低弾性率性を示すエポキシ樹脂やポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂など、どのような樹脂でも構わない。
これらの樹脂を低弾性率化するために、ゴム成分等を添加しても構わないし、長鎖な脂肪族炭化水素鎖やエチレングリコール鎖を導入した樹脂を用いても構わない。
【0033】
(第1応力緩和層の物性)
第1応力緩和層の25℃の弾性率は、2.5GPa以下であり、1.8GPa以下がより好ましい。第1応力緩和層の25℃の弾性率が2.5GPaより高くなると、はんだバンプや電極パッドにかかる応力を低減する効果が十分に得られなくなり、耐温度サイクル性が低下する。また、第1応力緩和層の25℃の弾性率は、0.2GPa以上であることが好ましい。0.2GPaを下回ると、配線層の平坦性が確保できなくなるため、好ましくない。
第1応力緩和層の厚みは、2μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましい。第1応力緩和層の厚みが2μm以上であると、はんだバンプや電極パッドにかかる応力を低減する効果が十分に得られ、耐温度サイクル性を向上できる。また、第1応力緩和層の厚みは、10μm以下であることが好ましい。10μm以下であれば、配線層の平坦性を確保できる。
【0034】
第1応力緩和層の25℃の弾性率は、上述した樹脂組成物の配合、応力緩和層の厚みによって達成される。
本発明において、第1応力緩和層の弾性率は、次のように測定される値である。
測定対象のサンプルは、測定の都合上、ある程度の厚みが必要となるため、測定対象の第1応力緩和層を合計厚みが0.4mmとなるように複数枚積層してプレス成型したものをテストサンプルとして使用して、引張曲げ試験機(島津製作所製、装置名:テンシロン)を用いて測定する。テストサンプルのサイズは、長さ50mm×幅25mm×厚さ0.4mm、測定モードは、3点曲げで、サンプルの支持スパンは、20mm、冶具の変位速度は1mm/分とする。
【0035】
(配線層)
コア層11及びビルドアップ層12及び13に形成される配線層15,17,及び20の材質としては、例えば、銅が挙げられる。配線層15,17,及び20の厚みは、それぞれ3〜20μmであることが好ましく、5〜18μmであることがより好ましい。3μm以上であると、配線層の剛性を高めることができ、半導体パッケージ1の反りを抑制できる。また、配線層15,17,及び20の厚みが20μm以下であると、配線層の表面に、層間絶縁層などの層を更に形成する場合に、作業性及び成形性が良好になる。
配線層に形成される電極パッドは、図1に示すように、電極パッド22及び33の一部がソルダレジスト層23及び35で覆われるSMD(Solder−Mask−Defined)タイプとすることができる。また、電極パッドがソルダレジスト層で覆われないNSMD(Non−Solder−Mask−Defined)タイプとすることもできる。電極パッド22及び35に施す後処理は、特に限定されない。例えば、半導体パッケージ1と実装基板2との接続に用いるはんだバンプの受けはんだを施してもよく、Ni−Auめっきなどの保護めっきを施してもよい。
【0036】
<半導体パッケージ用配線板の物性>
半導体パッケージ用配線板と構成する各層の厚さは、以下のようにすることが好ましい。
すなわち、コア層の厚みは、30〜300μmであり、ビルドアップ層を有する場合、ビルドアップ層の厚みは、10〜200μmであり、各配線層の厚みは、3〜30μmであり、ソルダレジスト層の厚みは、5〜30μmである。各配線層の残銅率は90%以下であることが好ましい。
各層を合成した半導体パッケージ用配線板の合計厚みDは、0.1〜0.5mmであることが好ましい。半導体パッケージ用配線板の厚みDは、さらには0.4mm以下が好ましい。厚みDが0.5mmより厚いものは、半導体パッケージ用配線板の剛性が十分に得られ、「反り」が発生しにくいため、応力緩和層による反りの低減効果が小さい。
【0037】
<半導体パッケージ用配線板の製造方法>
半導体パッケージ用配線板の製造方法について説明する。半導体パッケージ用配線板のコア層の両面にビルドアップ層を形成する場合について説明する。ビルドアップ層には、ガラスクロスを含むビルドアップ層と、ガラスクロスを含まないビルドアップ層とがある。なお、コア層の実装基板側の表面にビルドアップ層を形成しなくてもよい場合もある。
【0038】
(半導体パッケージ用配線板のコア層の外側にビルドアップ層を形成する場合)
・ガラスクロスを含むビルドアップ層
以下に示す製造工程を経ることにより、ガラスクロスを含有するビルドアップ層を有する半導体パッケージ用配線板を作製できる。
まず、コア層を作製する。層間絶縁層用の樹脂組成物をガラスクロスに含浸し、加熱して半硬化のプリプレグを得る。プリプレグの両面に配線層として銅箔を配置し、プレスにより貼り合わせ、銅張り積層板を作製する。必要に応じて、銅張り積層板にスルーホール形成及びスルーホール内壁めっき処理を行う。銅箔をエッチングすることによって、コア層の表裏に配線パターンを形成する。
続いて、ビルドアップ層を形成する。ビルドアップ層の層間絶縁層用の樹脂組成物をビルドアップ層用のガラスクロスに含浸し、加熱して半硬化したプリプレグを作製する。このプリプレグを上記コア層の両面に配置する。さらにその外側に銅箔を配置する。
このとき、プリプレグの実装基板側の表面には、予め応力緩和層が配置された銅箔を、応力緩和層がプリプレグに接するように配置する。これらをプレスにより貼り合わせる。必要に応じて、炭酸ガスレーザ等により、インナービアホールを形成するための所定の加工を行う。
続いて、銅箔をエッチングして、表裏の配線パターンを形成する。必要に応じて、配線パターンの上にソルダレジスト層を塗布する。
【0039】
・ガラスクロスを含まないビルドアップ層
以下に示す製造工程を経ることにより、ガラスクロスを含まないビルドアップ層を有する半導体パッケージ用配線板を作製できる。
まず、層間絶縁層用の樹脂組成物をガラスクロスに含浸し、加熱して半硬化のプリプレグを得る。プリプレグの両面に銅箔を配置し、プレスにより貼り合わせ、銅張り積層板を作製する。必要に応じて、コア層にスルーホール形成及びスルーホール内壁めっき処理を行う。銅箔をエッチングすることによって表裏の配線を形成する。
層間絶縁層用の樹脂組成物を所定の厚みに塗工、乾燥し、半硬化させる。半硬化させた層間絶縁層用の樹脂組成物をコア層の両面に配置し、真空加圧式ラミネータ等を用いて、真空下で加温するとともに、加圧し、熱風循環式乾燥機内で乾燥させる。このとき、実装基板側には、応力緩和層を配置する。
【0040】
必要に応じて、炭酸ガスレーザ等により、インナービアホールを形成するための所定の加工を行う。また、セミアディティブ工法によって、層間絶縁層の表裏面に配線パターンを形成する。必要に応じて、配線パターンを保護するソルダレジスト層を塗布する。
ビルドアップ層の作製に際し、層間絶縁層用の樹脂組成物の種類などは、特に限定されるものではないが、コア層に用いる層間絶縁層用の樹脂組成物と同じ種類の層間絶縁層用の樹脂組成物を用いてビルドアップ層を形成することが好ましい。これにより、コア層とビルドアップ層との熱膨張係数差がなくなり、コア層とビルドアップ層との界面において余計な応力が生じることなく、良好な密着強度が得られる。
このように製造された半導体パッケージ用配線板は、特定の熱膨張係数を有する層間絶縁層をコア層として有するとともに、応力緩和層を有するため、半導体素子の熱膨張係数と半導体パッケージ用配線板の熱膨張係数との差により、使用環境下において半導体パッケージが反ったり、リフローはんだによる実装基板への取り付け工程において半導体パッケージが反ったりすることが起こりにくく、耐温度サイクル性に優れ、半導体パッケージの薄型化に対応できる。
【0041】
(半導体パッケージ用配線板のコア層の外側にビルドアップ層を形成しない場合)
例えば、ビルドアップ層を設けない場合には、以下のような作製工程を経ることができる。コア層の層間絶縁層用の樹脂組成物をガラスクロスに含浸し、加熱して半硬化のプリプレグを得る。プリプレグの両面に配線層として銅箔を配置し、プレスにより貼り合わせ、銅張り積層板を作製する。このとき、プリプレグの実装基板側の表面には、予め応力緩和層が配置された銅箔を、応力緩和層がプリプレグに接するように配置する。これらをプレスにより貼り合わせる。
必要に応じて、炭酸ガスレーザ等により、インナービアホールを形成するための所定の加工を行って、銅張り積層板にスルーホール形成及びスルーホール内壁めっき処理を行う。
続いて、銅箔をエッチングして、表裏の配線パターンを形成する。必要に応じて、配線パターンの上にソルダレジスト層を塗布する。
このように製造された半導体パッケージ用配線板は、応力緩和層を有するため、半導体素子の熱膨張係数と半導体パッケージ用配線板の熱膨張係数との差により、使用環境下において半導体パッケージが反ったり、リフローはんだによる実装基板への取り付け工程において半導体パッケージが反ったりすることが起こりにくく、耐温度サイクル性に優れ、半導体パッケージの薄型化に対応できる。
【0042】
<半導体パッケージの組立>
半導体パッケージは、以下に示す製造工程を経ることにより、上述した半導体パッケージ用配線板に、半導体素子を接続して組み立てることができる。
半導体素子のはんだ電極が半導体パッケージ用配線板に形成された電極パッドに対向するように配置し、例えば、窒素雰囲気下のリフロー炉にて、はんだを溶融し凝固させることにより、半導体素子を半導体パッケージ用配線板に接合する。
必要に応じて、半導体素子と半導体パッケージ用配線板の間に、半導体素子と半導体パッケージ用配線板との接続部を補強するアンダフィル材を注入し、硬化させる。
【0043】
[実装基板]
<実装基板の構造>
半導体パッケージ1が接続される実装基板2は、実装基板2のコアを形成する層間絶縁層31と、配線層32とを有する。配線層32の一部には、はんだバンプ3が接続される電極パッド33が形成されている。また、実装基板2は、配線層32と、層間絶縁層31と配線層32との間に配置されて層間絶縁層31と配線層32とに接する第2応力緩和層34を有する。ここで、層間絶縁層31は、実装基板用層間絶縁層を構成し、電極パッド33は、実装基板側電極パッドを構成する。
配線層32が形成されていない第2応力緩和層34の表面、層間絶縁層31の表面に第2応力緩和層34が形成されていない部分があるときは層間絶縁層31の表面、及び配線層32の表面であって電極パッド32を除く部分は、ソルダレジスト層35により覆われている。
実装基板2の層間絶縁層31の、半導体パッケージ1が接続される面の反対側の表面にも第2応力緩和層36が形成されていてもよい。第2応力緩和層36の表面に配線層37が形成されていてもよい。
配線層37が形成されていない第2応力緩和層36の表面、層間絶縁層31の表面に第2応力緩和層36が形成されていない部分があるときは層間絶縁層31の表面、及び配線層37の表面は、ソルダレジスト層38により覆われている。
【0044】
(層間絶縁層及び配線層)
実装基板2の層間絶縁層31及び配線層32,37は、半導体パッケージ用配線板5において説明したものと同様のものを使用することができる。
【0045】
(第2応力緩和層を形成する樹脂組成物)
第2応力緩和層を形成する樹脂組成物としては、第2応力緩和層の25℃の弾性率を3GPa以下、且つ25℃における平面方向の熱膨張係数を8×10-6/℃以下にすることができる樹脂組成物であり、層間絶縁層と配線層との両者に対する密着性が良好な樹脂組成物を用いる必要がある。
第2応力緩和層を形成する樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂、低弾性樹脂、硬化促進剤、カップリング材、充填剤及びそれらをワニス化するための希釈溶剤が使用される。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂が好適に用いられる。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限されるものでは無い。具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を用いることができ、これらは、1種でも2種以上を組み合わせてもよい。これらの中から、その他の樹脂との反応性や樹脂の難燃化に良好なブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適に使用される。
フェノール樹脂は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂であれば特に制限されるものではない。具体例としては、クレゾールノボラック、フェノールノボラック、アミノトリアジンノボラック等を用いることができ、これらは、1種でも2種以上を組み合わせてもよい。これらの中から、その他樹脂との反応性が良好なクレゾールノボラックが好適に用いられる。
低弾性樹脂としては、アクリルゴムが好適に用いられる。アクリルゴムは(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマーとする共重合体であり、含まれるアルキル基には脂環式基、グリシジル基、水酸基等の置換基が用いられる。これらは(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合できる化合物であれば特に制限されるものでは無く、1種でも2種以上を組み合わせてよいが、グリシジル基を有するアクリルゴムがその他樹脂との反応性や相溶性の点から好適に用いられる。
硬化促進剤としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、イミダゾール類化合物、有機リン化合物、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩等が挙げられるが、好適にはイミダゾール化合物が用いられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール(2MZ)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。
カップリング材としては、ガラスクロス基材との密着性、充填剤の分散性及び銅箔との接着性を向上できるものであれば特に制限されるものでは無いが、好適にはシランカップリング材が用いられる。シランカップリング材としては、エポキシ系、アミン系、イソシアナト系、尿素系等が挙げられるが、尿素系シランカップリング材が銅箔との密着性が良好であることから好適に用いられる。
充填剤には、溶融シリカ、ガラス、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、窒化珪素、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、チタン酸カリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウムなどを、粉末又は球形化したビーズとして用いられる。また、ウィスカー、単結晶繊維、ガラス繊維、中空フィラー等の形状のものも用いられる。これらの中から好適には溶融シリカが用いられる。
上記樹脂材料をワニス化するための希釈溶剤は、特に制限するものではないが、ケトン系、芳香族炭化水素系、エステル系、アミド系、アルコール系等が用いられる。具体的には、ケトン系溶剤として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が、芳香族炭化水素系としては、トルエン、キシレン等が、エステル系溶剤としてはメトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等が、アミド系溶剤としてはN−メチルピロリドン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が、アルコール系溶剤としてはメタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。これらからケトン系溶剤が好適に用いられさらにはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好適に用いられる。また、これらの溶剤は1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
(第2応力緩和層の物性)
第2応力緩和層の25℃の弾性率は、3GPa以下であり、2.5GPa以下がより好ましい。第2応力緩和層の25℃の弾性率が3GPaより高くなると、はんだバンプや電極パッドにかかる応力を低減する効果が十分に得られなくなり、耐温度サイクル性が低下する。また、応力緩和層の25℃の弾性率は、0.2GPa以上であることが好ましい。0.2GPaを下回ると、実装基板2に種々の部品を実装したとき、実装基板自体の変形が大きくなり、実装基板の信頼性が低下する。
【0047】
第2応力緩和層の25℃の弾性率は、上述した樹脂組成物の配合、応力緩和層の厚みによって達成されるものである。
本発明において、第2応力緩和層の弾性率は、次のように測定されるものである。
第2応力緩和層を合計厚みが0.4mmとなるように積層してプレス成型したプリプレグをテストサンプルとして使用して、引張曲げ試験機(島津製作所製、装置名:テンシロン)を用いて測定する。テストサンプルのサイズは、長さ50mm×幅25mm×厚さ0.4mm、測定モードは、3点曲げで、サンプルの支持スパンは、20mm、冶具の変位速度は1mm/分とする。
【0048】
第2応力緩和層の25℃における平面方向の熱膨張係数は、8×10-6/℃以下であることが必須であり、7×10-6/℃以下であることがより好ましい。8×10-6/℃を超えると、汎用の半導体パッケージ1と実装基板2の熱膨張係数との差が大きくなるため、耐温度サイクル性が低下する。
また、第2応力緩和層の25℃における平面方向の熱膨張係数は、3×10-6/℃以上であることが好ましい。3×10-6/℃未満であると、第2応力緩和層が配される層間絶縁樹脂31の熱膨張係数との差が広がり、第2応力緩和層34,36と層間絶縁層31との間の剥離が生じやすくなる。
【0049】
第2応力緩和層の25℃の平面方向の熱膨張係数は、上述した樹脂組成物の配合、第2応力緩和層の厚みなどによって達成されるものである。
本発明において、第2応力緩和層の平面方向の熱膨張係数は、第2応力緩和層の厚み方向に垂直な方向における線膨張係数を意味し、次のように測定されるものである。
第2応力緩和層を形成する樹脂組成物が半硬化状態になったものを数枚重ねてプレス成型し、合計厚みを0.2mmとしたものをテストサンプルとして使用して、TMA装置(TAインスツルメンツ製、装置名:TA2940)を用いて測定する。テストサンプルのサイズは、長さ5mm×幅5mm、測定モードは圧縮、印可加重は0.05N、昇温速度は10℃/分とする。装置内でサンプルの温度を230℃程度まで上げ、その後10℃まで冷却する前処理を行ってから、測定を開始し、25℃における平面方向の熱膨張係数を測定する。
【0050】
第2応力緩和層の厚みは、30μm以上であることが好ましく、35μm以上であることがより好ましい。第2応力緩和層の厚みが30μm未満であると、はんだバンプや電極パッドにかかる応力を低減する効果が十分に得られず、耐温度サイクル性が向上する。また、落下時の衝撃を緩和する効果が十分に得られず、落下に対する耐性が低下する傾向にある。また、第2応力緩和層の厚みは、200μm以下であることが好ましい。200μmを超えると、実装基板2に種々の部品を実装したとき、実装した部品の配線層37と層間絶縁層31に対する安定性が低下し、実装基板の信頼性が低下する。
【0051】
[実装基板の作製]
実装基板2の作製方法は、特に限定されない。常法により作製できる。第2応力緩和層を形成する方法の一例としては、第2応力緩和層をビルドアップ層として設ける方法である。この場合には,以下のような作製工程を経る。
層間絶縁層を形成する絶縁性の樹脂組成物をコア層用のガラスクロスに含浸し、加熱して半硬化したプリプレグを得る。半硬化したプリプレグの両面に銅箔を配置し、プレスにより貼り合わせ、銅張りガラス布−エポキシ樹脂積層板を作製する。必要に応じて、スルーホールを形成し、スルーホールの内壁をめっき処理する。
銅張りガラス布−エポキシ樹脂積層板表面の銅箔をエッチングすることによって表裏の配線層を形成する。
次に、第2応力緩和層を形成する絶縁性の樹脂組成物をビルドアップ層用のガラスクロスに含浸し、加熱して半硬化したプリプレグを得る。この半硬化した第2応力緩和層用のプリプレグを、配線層が形成された銅張りガラス布−エポキシ樹脂積層板の一方の面又は両面に配置し、さらにその外側に配線層を形成する銅材料を配置し、所定の条件でプレスにより貼り合わせる。
必要に応じて、炭酸ガスレーザ等によりインナービアホールを形成するための所定の加工を行う。銅材料をエッチングすることによって表裏の配線層を形成する。また、必要に応じて、配線層を保護する目的でソルダレジスト層を塗布する。これにより、第2応力緩和層を有する実装基板が得られる。
【0052】
[半導体装置の作製]
上述のように作製された半導体パッケージと実装基板とを、互いの電極パッド同士を対向させて配置し、半導体素子を半導体パッケージ用配線板に搭載したときと同様に、窒素雰囲気下のリフロー炉にて、はんだを溶融し凝固させることにより、半導体パッケージと実装基板とを接合する。
【実施例】
【0053】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。まず、実施例及び比較例で行ったパッケージ反り及び耐温度サイクル性の評価方法と、各物性の測定方法について説明する。
【0054】
[評価方法]
<応力緩和層の弾性率>
第1応力緩和層の25℃の弾性率は、引張・曲げ試験機(島津製作所製、商品名:テンシロン)を用いて測定した。測定対象のサンプルは、測定の都合上、ある程度の厚みが必要となるため、測定対象の第1応力緩和層を合計厚みが0.4mmとなるように複数枚積層してプレス成型したものをテストサンプルとして使用した。サンプルサイズは長さ50mm×幅25mm×厚さ0.4mmとした。測定モードは3点曲げで、サンプルの支持スパンは20mm、冶具の変位速度は1mm/分とした。
第2応力緩和層の弾性率は、動的粘弾性測定装置(株式会社UBM製、商品名:(DVE)Reogel−E―4000)を用いて測定した。サンプルは、次に示した手順で作製した樹脂フィルムを用いて測定した。
第2応力緩和層用のワニスを18μmのロープロファイル銅箔上に乾燥後50μm厚になるように塗布した後、120℃10分乾燥し、半硬化状態の第2応力緩和層が塗布された第2応力緩和層樹脂付き銅箔を得た。第2応力緩和層樹脂付き銅箔の樹脂側同士を張り合わせて185℃/90分、圧力2.5MPaにて真空プレスし、第2応力緩和層樹脂の両面板を得た。得られた第2応力緩和層両面板の銅箔をエッチング除去し、第2応力緩和層樹脂フィルムを得た。この第2応力緩和層樹脂フィルムを幅5mm、長さ30mmに切り出して弾性率測定用サンプルとした。測定条件はチャック間距離20mm、温度範囲:−50〜280℃、昇温速度10℃/分とした。
【0055】
<熱膨張係数>
第2応力緩和層の平面方向の熱膨張係数は、TMA装置TA2940(TAインスツルメンツ製、商品名)を用いて測定した。第2応力緩和層を形成する樹脂組成物が半硬化状態になったものを数枚重ねてプレス成型し、合計厚みを0.2mmとしたものをテストサンプルとして使用した。テストサンプルのサイズは、長さ5mm×幅5mm、測定モードは圧縮、印可加重は0.05N、昇温速度は10℃/分とした。装置内でサンプルの温度を230℃程度まで上げ、その後10℃まで冷却する前処理を行ってから、測定を開始し、25℃における平面方向の熱膨張係数を測定した。
【0056】
<耐温度サイクル性>
耐温度サイクル性は、温度サイクル試験器(楠本化成製、装置名:NT1010)を用いて試験した。テストサンプルに、−55〜125℃の昇温変化を15分かけて与えて、125〜−55℃の降温変化を15分かけて与える、これを1サイクル(=1回)とする温度変化を繰り返し与え、半導体パッケージ用配線板と実装基板との間で形成されたデイジーチェーン回路の電気抵抗値を測定した。この電気抵抗値が初期値の2倍になったときをNGとし、NGになるまでの回数で表した。このほかの評価条件は、JESD22−A104Cにあるcondition Bに準拠した。
【0057】
<耐落下衝撃性>
耐落下衝撃性は,落下衝撃試験機(日立テクノロジーアンドサービス製、商品名:BIT−600S)を用いて試験した。第2応力緩和層を設けない基準となる実装基板の中心にひずみゲージを貼り付け、落下衝撃時の基板のひずみが3000μひずみになるように落下高さを設定した。設定された高さから落下させることによって落下衝撃を加えた際に,半導体装置の半導体パッケージと実装基板の間で形成されたデイジーチェーン回路の電気抵抗値をチェックし、初期値の2倍になったときをNGとした。
【0058】
[層間絶縁層の作製]
コア層及びビルドアップ層を形成する層間絶縁層用の樹脂組成物として、以下の3種類の樹脂組成物を用いた。
<層間絶縁層用の樹脂組成物>
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Arocy B−10)を500.0gと、下記一般式(1)に示すシロキサン樹脂(信越化学社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1600)を500.0gと、トルエンを1000g配合し、撹拌しながら昇温した。120℃に到達した後、ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約115〜125℃で4時間還流反応を行った後、室温に冷却し、熱硬化性樹脂の溶液を得た。
【0059】
【化3】

(式中のpは、平均して35〜40の数)
得られた熱硬化性樹脂100重量部(固形分)、及び溶融シリカ(アドマテック社製;商品名SO−25R)150重量部、及び希釈溶剤にメチルエチルケトンを使用して、混合して樹脂分60質量%の均一なワニスを得た。
【0060】
[応力緩和層用の樹脂組成物の作製]
<第1応力緩和層用の樹脂組成物A>
ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC3000S−H)を80重量部、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子(JSR株式会社製、商品名:XER−91SE−15)を2重量部、カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製、商品名:KS−23Z)を5重量部、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂(窒素含有量18%、水酸基当量151、大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:フェノライトEXB−9829)を13重量部、1,8−ジアザビシクロウンデセン(関東化学株式会社製、商品名:DBU)を0.3重量部、メチルエチルケトンを150重量部配合して樹脂組成物Aを得た。
【0061】
<第1応力緩和層用の樹脂組成物B>
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製、商品名:N−770)を60重量部、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(大日本インキ化学工業製、商品名:KA−1165)を40重量部、1,8−ジアザビシクロウンデセン(関東化学株式会社製、商品名:DBU)を0.3重量部、メチルエチルケトンを150重量部配合して樹脂組成物Bを得た。
【0062】
<第2応力緩和層用の樹脂組成物C>
ブロム化エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:エピクロン153)を42重量部、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:KA−1165)を12重量部、アクリルゴム(日立化成工業株式会社製、商品名:KH−CT−865)を45重量部、1−シアノエチルー2―フェニルイミダゾール(四国化成株式会社、商品名:2PZ−CN)を0.1重量部、尿素系シランカップリング材(東レダウコーニング株式会社製、商品名:AZ−6260)、粉砕シリカ(福島窯業株式会社製、商品名:F05−12)、メチルイソブチルケトンを220重量部配合し、攪拌して樹脂組成物Cのワニスを得た。
【0063】
<第2応力緩和層用の樹脂組成物D>
ブロム化エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:エピクロン153)を62重量部、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:KA―1165)を18重量部、アクリルゴム(日立化成工業株式会社製、商品名:KH−CT−865)を20重量部、1−シアノエチルー2−フェニルイミダゾール(四国化成株式会社、商品名:2PZ−CN)を0.1重量部、尿素系シランカップリング材(東レダウコーニング株式会社製、商品名:AZ−6260)、粉砕シリカ(福島窯業株式会社製、商品名:F05−12)、メチルイソブチルケトンを160重量部配合し、攪拌して樹脂組成物Dのワニスを得た。
【0064】
[半導体パッケージ用配線板を構成する他の材料]
<ガラスクロス>
コア層形成用のガラスクロスには、シリカ成分を増量したSガラスを用いた。また、IPC型番2117(日東紡績株式会社製)、又はIPC型番1078(日東紡績株式会社製)のものを用いた。また、ビルドアップ層形成用のガラスクロスにはIPC型番1037(日東紡績株式会社製)のものを用いた。
<配線層>
コア層及びビルドアップ層に形成する配線層としては、厚みが12μmの銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名:3EC−VLP−12)を用いた。
<ソルダレジスト層>
ソルダレジスト層として、SR7200G(日立化成工業株式会社製)を用いた。
【0065】
[半導体パッケージ用配線板の作製]
半導体パッケージ用配線板の作製方法について説明する。
図2に示すように、評価試験用の半導体パッケージ用配線板のサイズ、及び配線パターンを設定した。テスト用の半導体パッケージ用配線板のストリップサイズは、140mm×60mmとした。
ストリップから半導体パッケージの1パッケージ分のサイズをダイシングにより切り出した。1パッケージ分のサイズは、14.4mm×14.4mm(ダイシングライン0.2mmを含み、ダイシングにて個片化後は14mm×14mmになる)とした。
【0066】
<コア層の作製>
上述した層間絶縁層用の樹脂組成物を、コア層形成用のIPCの型番2117のガラスクロスを2枚重ねたものに含浸し、加熱して半硬化のプリプレグを得た。この際の加熱条件は、160℃で3分間とした。
得られたプリプレグの両面に、厚さ12μmの銅箔を重ねて配線層とし、プレス成型することにより、コア層を得た。その際のプレス条件は、230℃、90分間、2.5MPaとした。得られたコア層を形成する層間絶縁層の厚さdは、0.2mmであった。
続いて、得られたコア層に、ドリル直径0.1mm、最小ピッチ0.6mmで、1パッケージあたり272箇所に穴あけ処理を施した。その後、形成された穴内部に銅めっきを施すことにより、プリプレグの両面に形成された配線層を電気的に接続した。ダミーのスルーホールを設けた。その後、配線層をエッチングすることにより、配線パターンを作製した。スルーホール部の周囲には、パッドを形成した。配線パターン及びパッド形成後の配線層の残銅率は、60%であった。
【0067】
<ビルドアップ層の作製>
上述した層間絶縁層用の樹脂組成物を、ビルドアップ層形成用のIPCの型番1027のガラスクロスを2枚重ねたものに含浸し、加熱して半硬化のプリプレグを得た。この際の加熱条件は、160℃で3分間とした。得られたビルドアップ層を形成する層間絶縁層の厚さdは、0.04mmであった。
また、上述した第1応力緩和層用の樹脂組成物AまたはBを、12μmのロープロファイル銅箔に、乾燥後所定の厚さ(2μmあるいは4μm)になるように塗布し、160℃/10分乾燥した。これにより、第1応力緩和層付き銅箔を得た。
上記作製されたコア層の両表面に、ビルドアップ層形成用のガラスクロスを用いて作製されたプリプレグを配置した。プリプレグの一方の表面には、厚さ5μmの銅箔を重ね、プリプレグの他方の表面には、第1応力緩和層付き銅箔を重ね、プレス成型することにより、ビルドアップ層を形成した。その際のプレス条件は、230℃、90分間、2.5MPaとした。
【0068】
最外層の配線層をエッチングして、残銅率60%の配線パターンを施した。その際、半導体素子を搭載する表面の配線層には、半導体素子の搭載用電極パッド、配線及びダミーパターンを作製した。また、実装基板側の表面の配線層には、実装基板に搭載されたときにデイジーチェーン回路を形成するように、実装基板へのはんだバンプ搭載用の電極パッド、配線、及びダミーパターンを作製した。半導体素子が接続されるはんだバンプ用の電極パッドは、直径120μm、200μmピッチで、パッケージの中央部8mm×8mmのエリアに1パッケージあたり1600個配置した。また、図3に示すように、実装基板が接続されるはんだバンプ用の電極パッド22は、直径350μm、最小ピッチ500μmで、パッケージの中央13mm×13mmのエリアに1パッケージあたり480個配置した。
【0069】
続いて、配線層の表面にソルダレジスト層を形成する樹脂を塗布し、80℃、20分の条件で乾燥し、室温で300mJ/cm2で露光し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で現像した。この後、150℃、1時間の条件で後硬化を行って、厚さ20μmのソルダレジスト層を作製した。
この際に、半導体素子のはんだ電極に対応する位置に、直径100μmの開口部を形成した。また、実装基板の電極パッドに対応する位置に、直径200μmの開口部を形成した。ソルダレジスト層に形成された開口部から露呈した電極パッドに、受けめっきとして、厚み5μmのNiめっき及び厚み0.05μmのAuめっきを施し、半導体パッケージ用配線板を得た。
【0070】
[半導体パッケージの組立]
以下、評価試験に用いるテスト用の半導体パッケージの組立方法を説明する。半導体素子として、WALTS−TEG FC200JY LF(株式会社ウォルツ製)を用いた。半導体パッケージ用配線板と接続される電極は、融点217℃のSn−Ag−Cu系はんだである。半導体素子のサイズは、8mm×8mm×0.12mmであった。
半導体素子のはんだ電極に、金属表面の酸化皮膜を除去するフラックス(千住金属工業株式会社製、製品名:スパークルフラックスWF−6300LF)を厚み30μmで転写し、はんだ電極を半導体パッケージ用配線板に形成された電極パッドに対向するように半導体素子を配置した。続いて、窒素雰囲気下のリフロー炉にて、はんだを溶融し凝固させることにより、半導体素子を半導体パッケージ用配線板に搭載した。
この際、IPC/JEDEC J−STD−020Cによって定められた鉛フリーはんだ用のリフロー条件に従った。その後、フラックスを80℃以上の温水で洗浄した。
【0071】
続いて、半導体素子と半導体パッケージ用配線板の間に、半導体素子と半導体パッケージ用配線板との接続部を補強するアンダフィル材として、CEL−C−3730S(日立化成工業株式会社製)を注入し、硬化させた。このとき、アンダフィル材の硬化条件は、165℃、2時間とした。アンダフィル材を硬化させた後、得られた半導体パッケージから、14mm×14mmのテスト用パッケージをダイサを用いて切り出した。
【0072】
テスト用の半導体パッケージの、はんだバンプが接続される電極パッドに、フラックス(千住金属工業株式会社製、製品名:スパークルフラックスWF−6300LF)を厚み50μmでステンシル印刷した。この上に更に、直径0.25mmの融点217℃のSn−Ag−Cu系はんだボール(千住金属工業株式会社製、商品名:エコソルダーボールS705M)を配置し、半導体素子を半導体パッケージ用配線板に搭載したときと同様に、窒素雰囲気下のリフロー炉にて、はんだを溶融し凝固させることにより、半導体パッケージ用配線板の電極パッド上に、はんだバンプを形成した。
また、実装基板に接続される電極パッドに、はんだペースト(千住金属工業株式会社製、商品名:エコソルダーペースト M705−221BM5−42−11)を厚さ約100μmでステンシル印刷し、受けはんだを作製した。
【0073】
[実装基板の作製]
以下に、テスト用の半導体パッケージが搭載される実装基板の作製方法について説明する。実装基板の作製方法は、周知の基板作製技術によって作製できる。乾燥処理や洗浄処理などの詳細は、省略する。
実装基板用の層間絶縁層として、厚さ0.6mmのMCL−E−67の銅箔をエッチングで除去したものを用いた。
第2応力緩和層用の樹脂組成物C又はDを、IPCの型番1037のガラスクロスに含浸し、加熱して半硬化のプリプレグを得た。この際の加熱条件は、150℃で10分間とした。得られた第2応力緩和層用のプリプレグを上記実装基板用の層間絶縁層の両面に配置し、更に、18μmのロープロファイル銅箔を配置し、185℃で90分間、2.5MPaの条件で真空プレスした。
得られた実装基板の表面の配線層をエッチングして、テスト用パッケージを搭載するための電極パッドと、テスト用パッケージ搭載時に半導体パッケージ用配線板とのデイジーチェーン回路を形成する配線パターンと、導通チェック用電極とを形成した。電極パッドは、図4に示す14.4mm×14.4mmの1パッケージ分のエリアのうち、中央の13mm×13mmのエリアに、図3を用いて説明したビルドアップ層の電極パッドに対応するようにして、直径350μm、最小ピッチ500μmで、1パッケージあたり480個配置した。
【0074】
配線層の表面にソルダレジスト層を形成する樹脂を塗布し、80℃、20分の条件で乾燥し、室温で300mJ/cm2で露光し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で現像した。この後、150℃、1時間の条件で後硬化を行って、厚さ20μmのソルダレジスト層を作製した。
この際に、テスト用パッケージを搭載する電極パッドに対応する位置に、直径200μmの開口部を形成した。また、導通チェック用電極部分にも同様に、直径200μmの開口部を設けた。ソルダレジスト層に形成された開口部から露呈した電極パッドに、受けめっきとして、厚み5μmのNiめっき及び厚み0.05μmのAuめっきを施した。
テスト用パッケージを搭載するための電極パッド群の中心位置が中央になるように110mm×50mmに切断した。
【0075】
[半導体装置の作製]
はんだバンプを形成したテスト用パッケージと実装基板の電極パッド同士を対向させて配置し、半導体素子を半導体パッケージ用配線板に搭載したときと同様に、窒素雰囲気下のリフロー炉にて、はんだを溶融し凝固させることにより、実装基板にテスト用パッケージを搭載した。このようにして、耐温度サイクル性、耐落下衝撃性の評価試験に使用するテストサンプルを得た。
<実施例1>
樹脂組成物Aを用いて第1応力緩和層を形成した。また、樹脂組成物Cを用いて第2応力緩和層を形成した。第1応力緩和層の厚みを4μmに設定し、第2応力緩和層の厚みを60μmに設定して評価試験用の半導体装置を得た。
<比較例1>
樹脂組成物Bを用いて第1応力緩和層を形成した以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。
<比較例2>
第1応力緩和層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。
<比較例3>
樹脂組成物Dを用いて第2応力緩和層を形成した以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。
<比較例4>
第2応力緩和層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして半導体装置を作製した。
【0076】
[評価結果]
評価方法において説明した方法で、実施例1、及び比較例1〜4の半導体装置を評価した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例1のように、第1応力緩和層及び第2応力緩和層が設けられた半導体装置は、比較例2,4のように、第1応力緩和層又は第2応力緩和層が設けられていない半導体装置に比べて、耐温度サイクル性、耐落下衝撃性のいずれにおいても著しく向上していることが判る。
また、実施例1の半導体装置の耐落下衝撃性と比較例1の半導体装置の耐落下衝撃性とは、同程度であるが、実施例1の半導体装置の耐温度サイクル性は、樹脂組成物Bを用いて第1応力緩和層を形成した比較例1の耐温度サイクル性に比べて、著しく向上していることが判る。これは、実施例1の第1応力緩和層の25℃の弾性率が2.5GPaであることに起因する。すなわち、第1応力緩和層の25℃の弾性率が2.5GPaを上回っていると、耐温度サイクル性が低下する。
また、第1応力緩和層が同一であっても、樹脂組成物Dを用いて第2応力緩和層を形成した場合(比較例3)、すなわち、第1応力緩和層の25℃の弾性率が8×10-6/℃を上回っている場合には、耐温度サイクル性と耐落下衝撃性がともに低下する。
【符号の説明】
【0079】
1…半導体パッケージ、 2…実装基板、 3,6…はんだバンプ、 4…半導体素子、 5…半導体パッケージ用配線板 7…アンダフィル材、 11…コア層、 12,13…ビルドアップ層、 14,16,19,31…層間絶縁層、 15,17,20,32,37…配線層、 18,23,35,38…ソルダレジスト層、 21…第1応力緩和層、 22,33…電極パッド、 34,36…第2応力緩和層、 100…半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が接続された半導体パッケージと、実装基板とがはんだを介して電気的及び機械的に接続されてなる半導体装置であって、
該半導体パッケージは、
半導体パッケージ用層間絶縁層と、
該半導体パッケージ用層間絶縁層の表面に形成されており該はんだを介して該実装基板に電気的及び機械的に接続されるパッケージ側電極パッドと、
該パッケージ側電極パッドの該半導体パッケージ用層間絶縁層側に配置されており該パッケージ側電極パッドに接する第1応力緩和層と
を有し、
該実装基板は、
実装基板用層間絶縁層と、
該実装基板用層間絶縁層の表面に形成されており該はんだを介して該半導体パッケージに電気的及び機械的に接続される実装基板側電極パッドと、
該実装基板側電極パッドの該実装基板用層間絶縁層側に配置されており該実装基板側電極パッドに接する第2応力緩和層と
を有し、
該第1応力緩和層の25℃の弾性率が2.5GPa以下であり、
該第2応力緩和層の25℃の弾性率が3GPa以下かつ該第2応力緩和層の平面方向の25℃の熱膨張係数が8×10-6/℃以下である半導体装置。
【請求項2】
前記第1応力緩和層の厚みが2μm以上である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2応力緩和層の厚みが30μm以上である請求項1又は2に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−58577(P2013−58577A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195514(P2011−195514)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】