説明

半導体装置

【課題】単極性のTFTを用いて構成するデジタル型式の表示装置において、消費電流を低減することの出来る回路を提供する。
【解決手段】デジタル映像信号の保持を行うラッチ回路であって、TFT101の入力電極にデジタル映像信号が入力されると、TFT101の出力電極からは非反転出力信号が出力され、TFT102およびTFT103の出力電極からは反転出力信号が出力されるラッチ回路を提供する。出力を非反転、反転の2系統得られるため、後段のバッファを駆動する際に、電源間の直流パスが生ずる期間を短くすることが出来、消費電流の低減に寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル映像信号を入力して映像の表示を行う表示装置に関する。
なお本明細書中、表示装置とは、画素に液晶素子を用いてなる液晶表示装置および、エレ
クトロルミネッセンス(EL)素子を始めとした発光素子を用いてなる発光装置を含むもの
とする。表示装置の駆動回路とは、表示装置に配置された画素に映像信号を入力し、映像
の表示を行うための処理を行う回路を指し、シフトレジスタ回路、ラッチ回路、バッファ
回路、レベルシフト回路等を始めとするパルス出力回路や、アンプ等を始めとする増幅回
路を含むものとする。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス基板等の絶縁体上に半導体薄膜を形成した表示装置、特に薄膜トランジス
タ(以下、TFTと表記)を用いた、LCD(液晶ディスプレイ)を始めとするアクティブマ
トリクス型表示装置は、多くの製品に利用され、普及している。TFTを使用したアクテ
ィブマトリクス型表示装置は、マトリクス状に配置された数十万から数百万の画素を有し
、各画素に配置されたTFTによって各画素の電荷を制御することによって映像の表示を
行っている。
【0003】
さらに最近の技術として、画素を構成する画素TFTの他に、画素部の周辺領域にTF
Tを用いて駆動回路を基板上に同時形成するポリシリコンTFTに関する技術が発展して
きており、装置の小型化、低消費電力化に大いに貢献し、それに伴って、近年その応用分
野の拡大が著しいモバイル情報端末の表示部等に、表示装置は不可欠なデバイスとなって
きている。
【0004】
一般的に、表示装置の駆動回路を構成する回路としては、Nチャネル型TFTとPチャ
ネル型TFTを組み合わせたCMOS回路が使用されているが、工程が複雑になることか
ら、製造コストの上昇、あるいは歩留まりの低下を招いている。
【0005】
表示装置の駆動回路および画素部を構成するTFTを全て単極性とすることが出来れば
、半導体層への不純物元素の添加工程の一部を省略することが出来るため、上記の問題点
を解決することが出来る。
【0006】
ここで、一般的な表示装置の駆動回路の一例として、デジタル映像入力型式の表示装置
におけるソース信号線駆動回路の構成を図10に示す。このソース信号線駆動回路は、ク
ロック信号(S−CK)、クロック反転信号(S−CKb)、スタートパルス(SP)に従って
順次サンプリングパルスを出力するパルス出力回路1001を複数段有してなるシフトレ
ジスタ1000と、前記サンプリングパルスの入力に従って、3ビットのデジタル映像信
号(Data1〜3)の保持を行う第1のラッチ回路1002、ラッチパルス(Latch
Pulse)の入力に従ってデジタル映像信号の保持を行う第2のラッチ回路、デジタ
ル映像信号をアナログ映像信号に変換するためのD/A変換回路1004とを有している
。特に図示していないが、バッファ等を有していても良い。また、デジタル映像信号のビ
ット数は3ビットに限定しないことは言うまでもない。
【0007】
動作について簡単に説明する。クロック信号およびスタートパルスの入力に従って、シ
フトレジスタ1000は、順次サンプリングパルスを出力する。第1のラッチ回路100
2においては、サンプリングパルスが入力されるタイミングに従って、デジタル映像信号
(Data1〜3)を保持する。この動作が1水平期間分完了した後、水平帰線期間内にラ
ッチパルス(Latch Pulse)が入力され、第1のラッチ回路1002に保持され
ている1水平周期分のデジタル映像信号は、一斉に第2のラッチ回路1003へと転送さ
れる。その後、D/A変換回路1004にデジタル映像信が入力され、各階調に対応した
電圧信号へと変換され、ソース信号線(S0001〜S最終)へと書き込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような駆動回路を単極性のTFTを用いて構成する場合について述べる。
図5(A)に示しているのは、単極性のTFTによって構成したシフトレジスタである。ク
ロック信号とスタートパルスとに従ってサンプリングパルスを出力するパルス出力回路5
00を複数段用いて構成される。
【0009】
パルス出力回路単体の回路図を、図5(B)に示す。単極性のTFTによって論理回路を
構成する場合、例えばNチャネル型TFTを用いる場合には、高電位側電源に接続したN
チャネル型TFTのしきい値により、出力信号の振幅が、入力信号の振幅に比べて減衰す
るという問題点がある。ここで示したパルス出力回路は、ブートストラップ法によってそ
のような問題を解決したものであり、同発明者らによって、特願2001−141347
号にて出願されているものである。
【0010】
図5(B)に示す回路の動作について簡単に説明する。ここで、回路を構成する単極性の
TFTとは、Nチャネル型TFTであるとし、そのしきい値電圧は一律、VthNとする
。ただし、これは回路の構成をNチャネル型に限定するものではない。
【0011】
動作について説明する。なお、回路動作の説明をする際に、TFTの動作について述べ
る場合があるが、TFTがONするとは、TFTのゲート・ソース間電圧の絶対値が、T
FTのしきい値電圧の絶対値を超え、TFTのソース領域とドレイン領域とが、チャネル
形成領域を通じて導通状態となることをいい、TFTがOFFするとは、TFTのゲート
・ソース間電圧の絶対値が、TFTのしきい値電圧の絶対値を下回り、TFTのソース領
域とドレイン領域とが非導通状態となることをいうものとする。
【0012】
また、本明細書においては、TFTの接続を説明するのに、「ゲート電極、入力電極、
出力電極」と、「ゲート電極、ソース領域、ドレイン領域」とを使い分けている。これは
、TFTの動作を説明する際に、ゲート・ソース間電圧を考える場合が多いが、TFTの
ソース領域とドレイン領域とは、TFTの構造上、明確に区別することが難しいため、信
号の入出力を説明する際には、入力電極、出力電極と呼び、TFTの電極の電位の関係に
ついて説明する際は、入力電極と出力電極のうちいずれか一方をソース領域、他方をドレ
イン領域と呼ぶこととする。
【0013】
さらに、説明の際の信号の振幅は、VDD−VSS間とし、高電位側電源をVDD,低
電位側電源をVSSとする。また、VthN<(VDD−VthN)を満たすものとする。
また、各電位の関係を簡単にするため、VSS=0[V]として考える。ただし、実際に回
路を駆動する場合はこの限りでない。
【0014】
あるm段目(1<m≦n)のパルス出力回路において、TFT501、504のゲート電
極にはm−1段目の出力パルスが入力されて(m=1、すなわち第1段目の場合、SPが
入力される)Hi電位となり、TFT501、504がONする。これにより、TFT5
05のゲート電極の電位はVDD側に引き上げられ、その電位が(VDD−VthN)とな
ったところでTFT501がOFFし、浮遊状態となる(ただし、VthN<(VDD−V
thN))。従ってTFT505がONする。一方、TFT502、503のゲート電極に
はこの時点ではパルスが入力されておらず、Lo電位のままであるので、OFFしている
。よってTFT506のゲート電極の電位はLo電位であり、OFFしているので、TF
T505の入力電極から入力されるCKがHi電位となるのに伴い、出力端子(SR O
ut)の電位がVDD側に引き上げられる。
【0015】
ここで、TFT505のゲート電極と出力電極間には、容量手段507が設けてあり、
さらに今、TFT505のゲート電極は浮遊状態にあるため、出力端子(SR Out)の
電位が上昇するのに伴い、ブートストラップによってTFT505のゲート電極の電位は
(VDD−VthN)からさらに引き上げられる。これにより、TFT505のゲート電極
の電位は、(VDD+VthN)よりも高い電位を取る。よって出力端子(SR Out)の
電位は、TFT505のしきい値によって電位が低下することなく、完全にVDDまで上
昇する。
【0016】
同様にして、m+1段目においてはS−CKbに従ってパルスが出力される。
m+1段目の出力パルスは、m段目に帰還してTFT502、503のゲート電極に入力
される。TFT502、503のゲート電極がHi電位となってONすることにより、T
FT505のゲート電極の電位はVSS側に引き下げられてTFT505がOFFする。
同時にTFT506のゲート電極の電位がHi電位となってONし、m段目の出力端子(
SR Out)の電位はLo電位となる。
【0017】
続いて、単極性のTFTによってラッチ回路を構成した例を図6(A)に示す。
点線枠601で示す回路が第1のラッチ回路、点線枠602で示す回路が第2のラッチ回
路にあたる。点線枠603で示す回路はバッファ回路である。なお、バッファ603の構
成に関しては、同発明者らにより、特願2001−133431号にて出願されているも
のである。
【0018】
第1のラッチ回路601は、TFT604と容量手段605とを有し、TFT604の
入力電極には、1ビットのデジタル映像信号(Data)が入力され、TFT604のゲー
ト電極には、サンプリングパルス(Samp.Pulse)が入力される。サンプリングパ
ルスが入力されると、TFT604がONし、デジタル映像信号が容量手段605に保持
される。
【0019】
第2のラッチ回路602は、TFT606と容量手段607とを有し、TFT606の
入力電極には、第1のラッチ回路にて保持されているデジタル映像信号が入力され、TF
T606のゲート電極には、ラッチパルス(Latch Pulse)が入力される。ラッ
チパルスが入力されると、TFT606がONし、デジタル映像信号が容量手段607に
保持される。
【0020】
バッファ603は、TFT608〜611と容量手段612とを有し、TFT609お
よび611のゲート電極には、第2のラッチ回路にて保持されているデジタル映像信号が
入力される。TFT608のゲート電極は、電源VDDと接続されている。なお、TFT
608の電流能力よりも、TFT609の電流能力を十分に大きく構成している。
【0021】
TFT609および611のゲート電極にHi電位が入力されると、TFT610のゲ
ート電極の電位がLo電位となり、TFT610がOFFする。一方、TFT611がO
Nし、出力端子(Out)にはLo電位が現れる。
【0022】
TFT609および611のゲート電極にLo電位が入力されると、TFT609およ
び611は共にOFFする。よってTFT608を通じて、TFT610のゲート電極の
電位が上昇し、その電位が(VDD−VthN)となったところで浮遊状態となる。従って
TFT610がONし、出力端子(Out)の電位が上昇する。それに伴い、容量手段61
2によるTFT610のゲート電極と出力電極間の容量結合により、TFT610のゲー
ト電極の電位はさらに上昇し、(VDD+VthN)よりも高い電位となる。よって、出力
端子(Out)には、Hi電位が現れ、その電位はVDDに等しくなる。
【0023】
なお、第1のラッチ回路601と第2のラッチ回路602との間にはバッファを配置し
ても良い。
【0024】
ここで、第2のラッチ回路の出力により駆動されるバッファ603に注目する。TFT
609にHi電位が入力されてOnしている期間は、VDD−TFT608−TFT60
9−VSS間に電流パスが生ずる。この電流パスは、第2のラッチ回路からHi電位が出
力されている間、電流が流れ続ける。すなわち、ラッチ回路に入力されるデジタル映像信
号がHi電位のとき、最大1水平期間にわたって電流が流れ続けることになるため、消費
電流の多大な増加を招く。
【0025】
本発明は、回路動作時の消費電流を低減するための回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前述の課題を解決するために、本発明では以下のような手段を講じた。
【0027】
図6(A)に示したスイッチ用TFT+容量手段の構成によるラッチ回路は、1入力1出力
型である。よって、バッファ603も1入力型としている。
【0028】
バッファへの入力信号がHi電位の時、電流パスが生じないようにする方法としては、
図6(B)に示すように、 入力信号(In)に対し、反転入力信号(Inb)を用い、TFT
608、609が排他的にON、OFFするようにすれば良い。
【0029】
そこで、本発明では、ラッチ回路の出力を、出力、反転出力の2出力型とするような構
成とした。
【0030】
本発明の構成を以下に記す。
【0031】
本発明の表示装置の駆動回路は、 第1乃至第3のトランジスタと、第1および第2の
容量手段とを有する表示装置の駆動回路であって、 前記第1乃至第3のトランジスタは
いずれも同一導電型であり、 前記第1および第2のトランジスタのゲート電極は、第1
の信号入力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの入力電極は、第2の信号
入力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの出力電極と、前記第3のトラン
ジスタのゲート電極とは、いずれも第1の信号出力部と電気的に接続され、 前記第2の
トランジスタの入力電極は、第1の電源と電気的に接続され、 前記第3のトランジスタ
の入力電極は、第2の電源と電気的に接続され、 前記第2および第3のトランジスタの
出力電極は、いずれも第2の信号出力部と電気的に接続され、 前記第1の容量手段は、
前記第1の信号出力部に配置され、前記第1の信号出力部より出力される信号の電位を保
持する容量手段であり、 前記第2の容量手段は、前記第2の信号出力部に配置され、前
記第2の信号出力部より出力される信号の電位を保持する容量手段であることを特徴とし
ている。
【0032】
本発明の表示装置の駆動回路は、 第1乃至第3のトランジスタと、第1および第2の
容量手段とを有する表示装置の駆動回路であって、 前記第1乃至第3のトランジスタは
いずれも同一導電型であり、 前記第1および第2のトランジスタのゲート電極は、第1
の信号入力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの入力電極は、第2の信号
入力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの出力電極と、前記第3のトラン
ジスタのゲート電極とは、いずれも第1の信号出力部と電気的に接続され、 前記第2の
トランジスタの入力電極は、前記第1の信号入力部と電気的に接続され、 前記第3のト
ランジスタの入力電極は、第2の電源と電気的に接続され、 前記第2および第3のトラ
ンジスタの出力電極は、いずれも第2の信号出力部と電気的に接続され、 前記第1の容
量手段は、前記第1の信号出力部に配置され、前記第1の信号出力部より出力される信号
の電位を保持する容量手段であり、 前記第2の容量手段は、前記第2の信号出力部に配
置され、前記第2の信号出力部より出力される信号の電位を保持する容量手段であること
を特徴としている。
【0033】
上記の構成によって、デジタル映像信号の入力に対し、非反転出力、反転出力の2出力
を得られるため、それらの信号によって駆動される後段のバッファにおいては、電流パス
の発生を最小限に抑えることが出来る。よって、表示装置の消費電力の低減に寄与する。
【0034】
本発明の表示装置の駆動回路は、 第1乃至第3のトランジスタと、第1および第2の
容量手段と、振幅補償バッファ回路とを有する表示装置の駆動回路であって、 前記第1
乃至第3のトランジスタはいずれも同一導電型であり、 前記第1および第2のトランジ
スタのゲート電極は、第1の信号入力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタ
の入力電極は、第2の信号入力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの出力
電極は、前記第3のトランジスタのゲート電極と電気的に接続され、 前記第2のトラン
ジスタの入力電極は、第1の電源と電気的に接続され、 前記第3のトランジスタの入力
電極は、第2の電源と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの出力電極と、第1
の信号出力部との間に、前記振幅補償バッファ回路を有し、 前記第2および第3のトラ
ンジスタの出力電極と、第2の信号出力部との間に、前記振幅補償バッファ回路を有し、
前記第1の容量手段は、前記第1のトランジスタの出力電極に配置され、前記第1のト
ランジスタの出力電極より出力される信号の電位を保持する容量手段であり、 前記第2
の容量手段は、前記第2および第3のトランジスタの出力電極に配置され、前記第2およ
び第3のトランジスタの出力電極より出力される信号の電位を保持する容量手段であり、
前記振幅補償バッファ回路は、前記第1のトランジスタの出力電極に現れる信号の振幅
減衰を補償して、第1の信号出力部に出力し、前記第2および第3のトランジスタの出力
電極に現れる信号の振幅減衰を補償して、第2の信号出力部に出力することを特徴として
いる。
【0035】
本発明の表示装置の駆動回路は、 第1乃至第3のトランジスタと、第1および第2の
容量手段と、振幅補償バッファ回路とを有する表示装置の駆動回路であって、 前記第1
乃至第3のトランジスタはいずれも同一導電型であり、 前記第1および第2のトランジ
スタのゲート電極は、第1の信号入力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタ
の入力電極は、第2の信号入力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの出力
電極は、前記第3のトランジスタのゲート電極と電気的に接続され、 前記第2のトラン
ジスタの入力電極は、前記第1の信号入力部と電気的に接続され、 前記第3のトランジ
スタの入力電極は、第2の電源と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの出力電
極と、第1の信号出力部との間に、前記振幅補償バッファ回路を有し、 前記第2および
第3のトランジスタの出力電極と、第2の信号出力部との間に、前記振幅補償バッファ回
路を有し、 前記第1の容量手段は、前記第1のトランジスタの出力電極に配置され、前
記第1のトランジスタの出力電極より出力される信号の電位を保持する容量手段であり、
前記第2の容量手段は、前記第2および第3のトランジスタの出力電極に配置され、前
記第2および第3のトランジスタの出力電極より出力される信号の電位を保持する容量手
段であり、 前記振幅補償バッファ回路は、前記第1のトランジスタの出力電極に現れる
信号の振幅減衰を補償して、第1の信号出力部に出力し、前記第2および第3のトランジ
スタの出力電極に現れる信号の振幅減衰を補償して、第2の信号出力部に出力することを
特徴としている。
【0036】
本発明の表示装置の駆動回路は、 第1乃至第7のトランジスタと、第1乃至第4の容
量手段とを有する表示装置の駆動回路であって、 前記第1乃至第7のトランジスタはい
ずれも同一導電型であり、 前記第1および第2のトランジスタのゲート電極は、第1の
信号入力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの入力電極は、第2の信号入
力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの出力電極は、前記第3のトランジ
スタのゲート電極、前記第4のトランジスタのゲート電極、および前記第5のトランジス
タのゲート電極と電気的に接続され、 前記第2のトランジスタの入力電極は、第1の電
源と電気的に接続され、 前記第3のトランジスタの入力電極は、第2の電源と電気的に
接続され、 前記第2のトランジスタの出力電極は、前記第3のトランジスタの出力電極
、前記第6のトランジスタのゲート電極、および前記第7のトランジスタのゲート電極と
電気的に接続され、 前記第4のトランジスタの入力電極、および前記第7のトランジス
タの入力電極は、前記第1の電源と電気的に接続され、 前記第5のトランジスタの入力
電極、および前記第6のトランジスタの入力電極は、前記第2の電源と電気的に接続され
、 前記第4のトランジスタの出力電極と、前記第6のトランジスタの出力電極とは、い
ずれも第1の信号出力部と電気的に接続され、 前記第5のトランジスタの出力電極と、
前記第7のトランジスタの出力電極とは、いずれも第2の信号出力部と電気的に接続され
、 前記第1の容量手段は、前記第1のトランジスタの出力電極に配置され、前記第1の
トランジスタの出力電極より出力される信号の電位を保持する容量手段であり、 前記第
2の容量手段は、前記第2および第3のトランジスタの出力電極に配置され、前記第2お
よび第3のトランジスタの出力電極より出力される信号の電位を保持する容量手段であり
、 前記第3の容量手段は、前記第4のトランジスタのゲート電極と出力電極との間に配
置されて容量結合を形成する容量手段であり、 前記第4の容量手段は、前記第7のトラ
ンジスタのゲート電極と出力電極との間に配置されて容量結合を形成する容量手段である
ことを特徴としている。
【0037】
本発明の表示装置の駆動回路は、 第1乃至第7のトランジスタと、第1乃至第4の容
量手段とを有する表示装置の駆動回路であって、 前記第1乃至第7のトランジスタはい
ずれも同一導電型であり、 前記第1および第2のトランジスタのゲート電極は、第1の
信号入力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの入力電極は、第2の信号入
力部と電気的に接続され、 前記第1のトランジスタの出力電極は、前記第3のトランジ
スタのゲート電極、前記第4のトランジスタのゲート電極、および前記第5のトランジス
タのゲート電極と電気的に接続され、 前記第2のトランジスタの入力電極は、前記第1
の信号入力部と電気的に接続され、 前記第3のトランジスタの入力電極は、第2の電源
と電気的に接続され、 前記第2のトランジスタの出力電極は、前記第3のトランジスタ
の出力電極、前記第6のトランジスタのゲート電極、および前記第7のトランジスタのゲ
ート電極と電気的に接続され、 前記第4のトランジスタの入力電極、および前記第7の
トランジスタの入力電極は、前記第1の電源と電気的に接続され、 前記第5のトランジ
スタの入力電極、および前記第6のトランジスタの入力電極は、前記第2の電源と電気的
に接続され、 前記第4のトランジスタの出力電極と、前記第6のトランジスタの出力電
極とは、いずれも第1の信号出力部と電気的に接続され、 前記第5のトランジスタの出
力電極と、前記第7のトランジスタの出力電極とは、いずれも第2の信号出力部と電気的
に接続され、 前記第1の容量手段は、前記第1のトランジスタの出力電極に配置され、
前記第1のトランジスタの出力電極より出力される信号の電位を保持する容量手段であり
、 前記第2の容量手段は、前記第2および第3のトランジスタの出力電極に配置され、
前記第2および第3のトランジスタの出力電極より出力される信号の電位を保持する容量
手段であり、 前記第3の容量手段は、前記第4のトランジスタのゲート電極と出力電極
との間に配置されて容量結合を形成する容量手段であり、 前記第4の容量手段は、前記
第7のトランジスタのゲート電極と出力電極との間に配置されて容量結合を形成する容量
手段であることを特徴としている。
【0038】
上記の構成によって、デジタル映像信号の入力に対し、非反転出力、反転出力の2出力
を得られるため、それらの信号によって駆動される後段のバッファにおいては、電流パス
の発生を最小限に抑えることが出来る。よって、表示装置の消費電力の低減に寄与する。
【0039】
さらに、第1のトランジスタの出力電極から得られる非反転出力信号と、第2および第
3のトランジスタの出力電極から得られる反転出力信号とは、ブートストラップによる振
幅補償を受けるため、回路の動作をより確実にすることが出来る。
【0040】
本発明によると、 請求項1乃至請求項6のいずれか1項において、 前記第2の信号
出力部より出力される信号は、前記第1の信号出力部より出力される信号の反転信号であ
っても良い。
【0041】
本発明によると、 請求項1乃至請求項7のいずれか1項において、 前記導電型とは
、Nチャネル型であっても良い。
【0042】
本発明によると、 請求項1乃至請求項7のいずれか1項において、 前記導電型とは
、Pチャネル型であっても良い。
【0043】
本発明によると、 請求項1乃至請求項9のいずれか1項において、 前記第1乃至第
4の容量手段は、トランジスタのゲート電極と入力電極との間、もしくはトランジスタの
ゲート電極と出力電極との間の容量を用いた容量手段であっても良い。
【0044】
本発明によると、 請求項1乃至請求項9のいずれか1項において、 前記第1乃至第
4の容量手段は、半導体層を形成する材料、ゲート電極を形成する材料、配線材料のうち
いずれか2材料と、前記2材料間の絶縁膜とでなる容量手段であっても良い。
【発明の効果】
【0045】
本発明によって、単極性のTFTを用いて構成され、かつ消費電流の少ないラッチ回路
が提供された。この回路を用いることにより、デジタル映像信号を入力して映像の表示を
行う表示装置の画素部および駆動回路を、単極性のTFTのみによって構成することが出
来る。よって、作製工程中の、半導体層への不純物添加工程の一部を省略することが出来
、コスト低減や歩留まり向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態を示す図。
【図2】表示装置の概略および断面図。
【図3】本発明のラッチ回路を用いて構成したソース信号線駆動回路の構成を示す図。
【図4】ゲート信号線駆動回路の構成を示す図。
【図5】単極性のTFTを用いて構成したシフトレジスタを示す図。
【図6】単極性のTFTを用いて構成したラッチ回路およびバッファを示す図。
【図7】表示装置の作製工程例を示す図。
【図8】表示装置の作製工程例を示す図。
【図9】表示装置の作製工程例を示す図。
【図10】ソース信号線駆動回路の構成を示す図。
【図11】本発明のラッチ回路の構成例を示す図。
【図12】発光装置の作製工程例を示す図。
【図13】発光装置の作製工程例を示す図。
【図14】本発明の適用が可能な電子機器の例を示す図。
【図15】第1のラッチ回路後段に配置するバッファ回路の構成例を示す図。
【図16】本発明のラッチ回路の構成例を示す図。
【図17】ボトムゲート型TFTおよびデュアルゲート型TFTの断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1に示すのは、本発明のラッチ回路の構成であり、TFT101〜103、および容
量手段104、105を有する。TFT101、102のゲート電極には、シフトレジス
タより出力されるサンプリングパルス(Samp.Pulse)が入力され、TFT101
の入力電極には,デジタル映像信号(Digital Data)が入力される。TFT1
02の入力電極は、高電位側電源VDDに接続され、TFT103の入力電極は、低電位
側電源VSSに接続されている。
【0048】
この構成の特徴としては、デジタル映像信号の入力に対し、出力(Data Out)、
反転出力(Data Out_b)の2出力を得る点である。
【0049】
回路の動作について説明する。なお、サンプリングパルスおよびデジタル映像信号の、
入力時の振幅はいずれもVDD−VSS間とする。
【0050】
シフトレジスタより出力されたサンプリングパルスが、TFT101、102のゲート
電極に入力され、TFT101、102がONする。入力されているデジタル映像信号が
Hi電位のとき、TFT103のゲート電極にHi電位が入力されてONする。このとき
、TFT102、103がともにONしているが、TFT103の電流能力を、TFT1
02の電流能力よりも十分に高くしておくことにより、TFT102、103の出力電極
、つまり反転出力端子(Data Out_b)にはLo電位が現れる。出力端子(Dat
a Out)には、デジタル映像信号がTFT101を通じてそのまま出力される。
【0051】
一方、入力されているデジタル映像信号がLo電位のとき、TFT103のゲート電極
にはLo電位が入力されてOFFする。よって、反転出力端子(Data Out_b)に
はHi電位が現れる。出力端子(Data Out)には、デジタル映像信号がTFT10
1を通じてそのまま出力される。
【0052】
以上の動作が順次、1水平周期分行われる。出力端子(Data Out)および反転出
力端子(Data Out_b)に出力された信号は、それぞれ容量手段104、105に
よって、帰線期間までの間、保持される。
【0053】
サンプリングパルス(Samp.Pulse)がLo電位となり、サンプリング期間が終
了すると、TFT101、102がOFFする。つまり、図1に示した本発明のラッチ回
路においては、VDD−TFT102−TFT103−VSS間に電流パスが生ずるのは
、サンプリングパルスが入力されており、かつデジタル映像信号がHi電位の時に限られ
る。
【0054】
ここで、出力端子(Data Out)側に現れる出力信号の振幅は、TFT101のし
きい値の影響を受けるため、(VDD−VthN)−VSS間となり、反転出力端子(Da
ta Out_b)側に現れる出力信号の振幅は、TFT102のしきい値の影響を受け
るため、同様に(VDD−VthN)−VSS間となるが、以後、ラッチ回路の後段にバッ
ファを設けることにより、ブートストラップを用いて振幅の補償を行うため、問題とはな
らない。
【0055】
以下に、本発明の実施例について記載する。
【実施例1】
【0056】
図11は、実施形態にて説明した構成でなる回路を第1のラッチ回路とし、第2のラッ
チ回路およびバッファまでを構成した例である。第1のラッチ回路111は、TFT11
4〜116および容量手段117、118とを有し、第2のラッチ回路112は、TFT
119、120および容量手段121、122とを有し、バッファ回路113は、TFT
123〜126および容量手段127でなるインバータと、TFT128〜131および
容量手段132でなるインバータとを有する。
【0057】
1水平周期分のサンプリングが終了した後の帰線期間中に、ラッチパルス(Latch
Pulse)が入力されると、第2のラッチ回路112におけるTFT119、120
がONし、第1のラッチ回路111において、容量手段117、118にて保持されてい
る信号が、第2のラッチ回路112における容量手段121、122に書き込まれる。
【0058】
サンプリングパルス(Samp.Pulse)がLo電位となり、サンプリング期間が終
了すると、TFT114、115がOFFし、TFT116もまたOFFする。よって、
TFT119、120の入力電極は浮遊状態となる。続いて、ラッチパルス(Latch
Pulse)が入力されると、TFT119、120がONし、容量手段121、12
2に信号が書き込まれるが、このとき、TFT119、120の入力電極に電流の供給源
が接続されていないため、前述の動作は、容量手段117、118、121、122にお
ける電荷の移動のみによって行われることになる。よって容量手段121、122への書
き込みが十分に行われるようにするためには、容量手段117、118は大きく設計して
おくのが望ましい。
【0059】
続いて、第2のラッチ回路112からの出力信号は、バッファ回路113へと入力され
る。バッファ回路113は、2つのインバータを対に配置したものであるので、ここでは
、TFT123〜126および容量手段127で構成されたインバータ一方のみの動作に
ついて述べる。
【0060】
第2のラッチ回路112の一方の出力(Data Out2)がHi電位のとき、TFT
123のゲート電極にHi電位が入力されてONする。一方、TFT124、126のゲ
ート電極には、第2のラッチ回路112の他方の出力(Data Out2_b)であるL
o電位が入力されてOFFする。よって、TFT125のゲート電極の電位が上昇する。
【0061】
今、TFT123のゲート電極の電位は、(VDD−VthN)であるので、TFT12
5のゲート電極の電位が(VDD−VthN)となったところで、TFT123のゲート・
ソース間電圧がそのしきい値を下回り、OFFする。よってTFT125のゲート電極は
、その時点で一時浮遊状態となる。
【0062】
ここで、VthN<(VDD−VthN)であるならば、TFT125がONし、バッフ
ァ113の出力端子(Data Out3)にはHi電位が現れるので、電位が上昇する。
さらに、TFT125のゲート電極と出力電極との間には容量手段127を有し、今、T
FT125のゲート電極は浮遊状態であるので、出力端子(Data Out3)の電位上
昇に伴い、容量結合によってTFT125のゲート電極の電位がさらに上昇する。
【0063】
結果、TFT125のゲート電極の電位が、(VDD+VthN)よりも高くなると、出
力端子にHi電位が現れ、その電位はTFT125のしきい値の影響を受けることなく、
VDDに等しくなる。
【0064】
一方、第2のラッチ回路112の一方の出力(Data Out2)がLo電位のとき、
TFT123のゲート電極にはLo電位が入力されてOFFする。一方、TFT124、
126のゲート電極には、第2のラッチ回路112の他方の出力(Data Out2_
b)であるHi電位が入力されてONする。よってTFT125のゲート電極の電位はL
o電位となってOFFし、出力端子(Data Out3)にはLo電位が現れる。
【0065】
TFT128〜131および容量手段132でなるインバータについても動作は同様で
あり、一方の出力端子(Data Out3)にHi電位が現れるときは、他方の出力端子
(Data Out3_b)にはLo電位が現れる。
【0066】
本実施例で示したラッチ回路においては、第1のラッチ回路〜第2のラッチ回路におい
て、TFTのしきい値分の振幅減衰が生ずるため、電源電圧がある程度高い必要がある。
そこで、第1のラッチ回路の出力を、一旦バッファを介して振幅の補償を行う構成として
も良い。
【実施例2】
【0067】
本実施例においては、同一基板上に、画素部および、画素部周辺に設ける駆動回路のT
FTを同時に作製する方法について説明する。なお、例として液晶表示装置の作製工程を
挙げるが、本発明は前述のとおり、液晶表示装置に限定されない。
【0068】
まず、図7(A)に示すように、コーニング社の#7059ガラスや#1737ガラス等
に代表されるバリウムホウケイ酸ガラス、またはアルミノホウケイ酸ガラス等からなる基
盤5001上に酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜等の絶縁膜
からなる下地膜5002を形成する。特に図示していないが、下地膜5002の形成につ
いては、例えば、プラズマCVD法でSiH4、NH3、N2Oから作製される酸化窒化シ
リコン膜を10〜200[nm](好ましくは50〜100[nm])の厚さに形成し、同様にSi
4、N2Oから作製される酸化窒化水素化シリコン膜を50〜200[nm](好ましくは1
00〜150[nm])の厚さに積層形成する。
【0069】
続いて、島状の半導体層5003〜5005は、非晶質構造を有する半導体膜を。レー
ザー結晶化法や公知の熱結晶化法を用いて作製した結晶質半導体膜で形成する。この島状
の半導体層5003〜5005の厚さは25〜80[nm](好ましくは30〜60[nm])とし
て形成する。結晶質半導体層の材料には特に限定は無いが、好ましくはシリコンまたはシ
リコンゲルマニウム(SiGe)合金等で形成すると良い。
【0070】
レーザー結晶化法で結晶質半導体膜を作製するには、パルス発振型または連続発光型の
エキシマレーザーやYAGレーザー、YVO4レーザーを用いる。これらのレーザーを用
いる場合には、レーザー発振器から放射されたレーザー光を光学系で線状に集光して半導
体膜に照射する方法を用いると良い。結晶化の条件は実施者が適宜選択するものであるが
、エキシマレーザーを用いる場合にはパルス発振周波数を30[Hz]とし、レーザーエネル
ギー密度を100〜400[mJ/cm2](代表的には200〜300[mJ/cm2])とする。また、
YAGレーザーを用いる場合にはその第2高調波を用い、パルス発振周波数1〜10[kHz
]とし、レーザーエネルギー密度を300〜600[mJ/cm2](代表的には350〜500[m
J/cm2])とすると良い。そして幅100〜1000[μm]、例えば400[μm]で線状に集
光したレーザー光を基板全面に渡って照射し、このときの線状レーザーの重ねあわせ率(
オーバーラップ率)を80〜98[%]として行う。
【0071】
続いて、島状の半導体層5003〜5005を覆うゲート絶縁膜5006を形成する。
ゲート絶縁膜5006は、プラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを40〜15
0[nm]としてシリコンを含む絶縁膜で形成する。本実施例では、120[nm]の厚さで酸化
窒化シリコン膜で形成する。勿論、ゲート絶縁膜はこのような酸化窒化シリコン膜に限定
されるものではなく、他のシリコンを含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良
い。例えば、酸化シリコンを用いる場合には、プラズマCVD法でTEOS(Tetraethyl
Orthosilicate)とO2とを混合し、反応圧力40[Pa]、基板温度300〜400[℃]とし
、高周波(13.56[MHz])電力密度0.5〜0.8[W/cm2]で放電させて形成することが
出来る。このようにして作製される酸化シリコン膜は、その後400〜500[℃]の熱ア
ニールにより、ゲート絶縁膜として良好な特性を得ることが出来る。
【0072】
そして、ゲート絶縁膜5006上にゲート電極を形成するための第1の導電膜5007
と第2の導電膜5008とを積層形成する。本実施例では、第1の導電層5007をタン
タル(Ta)で50〜100[nm]の厚さに形成し、第2の導電層5009をタングステン(
W)で100〜300[nm]の厚さに形成する(図7(A))。
【0073】
Ta膜はスパッタ法で、TaのターゲットをArでスパッタすることにより形成する。
この場合、Arに適量のXeやKrを加えると、Ta膜の内部応力を緩和して膜の剥離を
防止することが出来る。また、α相のTa膜の抵抗率は20[μΩcm]程度でありゲート電
極として使用することが出来るが、β相のTa膜の抵抗率は180[μΩcm]程度でありゲ
ート電極には不向きである。α相のTa膜を形成するために、Taのα相に近い結晶構造
を有する窒化タンタル(TaN)を10〜50[nm]程度の厚さでTaの下地に形成しておく
とα相のTa膜を容易に得ることが出来る。
【0074】
W膜を形成する場合には、Wをターゲットとしたスパッタ法で形成する。その他にも6
フッ化タングステン(WF6)を用いる熱CVD法で形成することも出来る。いずれにして
もゲート電極として使用するためには低抵抗化を図る必要があり、W膜の抵抗率は20[
μΩcm]以下にすることが望ましい。W膜は結晶粒を大きくすることで低抵抗率化を図る
ことが出来るが、W中に酸素などの不純物元素が多い場合には結晶化が阻害されて高抵抗
化する。このことより、スパッタ法による場合、純度99.9999[%]のWターゲット
を用い、さらに製膜時に気相中からの不純物の混入がないように十分配慮してW膜を形成
することにより、抵抗率9〜20[μΩcm]を実現することが出来る。
【0075】
なお、本実施例においては、第1の導電膜5007をTa、第2の導電膜5008をW
としたが、特に限定されず、いずれもTa、W、Mo、Al、Cuから選ばれた元素、ま
たは前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料で形成しても良い。また、リン
等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜を用いても良い
。本実施例以外の他の組み合わせの一例としては、第1の導電膜をTaN、第2の導電膜
をWとする組み合わせ、第1の導電膜をTaN、第2の導電膜をAlとする組み合わせ、
第1の導電膜をTaN、第2の導電膜をCuとする組み合わせ等が望ましい。
【0076】
次に、レジストによるマスク5009を形成し、電極および配線を形成するための第1
のエッチング処理を行う。本実施例ではICP(Inductively coupled plasma:誘導結合
型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング用ガスにCF4とCl2とを混合し、1[Pa]
の圧力でコイル型の電極に500[W]のRF(13.56[MHz])電力を投入してプラズマ
を生成して行う。基板側(試料ステージ)にも100[W]のRF電力を投入し、実質的に負
の自己バイアス電圧を印加する。CF4とCl2とを混合した場合にはW膜およびTa膜と
も同程度にエッチングされる。
【0077】
上記エッチング条件では、レジストによるマスクの形状を適したものとすることと、基
板側に印加するバイアス電圧の効果とにより第1の導電膜および第2の導電膜の端部がテ
ーパー形状となる。テーパー部の角度は15〜45°となる。
ゲート絶縁膜上に残渣を残すことなくエッチングを行うためには、10〜20[%]の割合
でエッチング時間を増加させると良い。W膜に対する酸化窒化シリコン膜の選択比は2〜
4(代表的には3)であるので、オーバーエッチング処理により、酸化窒化シリコン膜が露
出した面は20〜50[nm]程度エッチングされることになる。こうして、第1のエッチン
グ処理により第1の導電層5010a〜5013aと第2の導電層5010b〜5013
bからなる第1の形状の導電層5010〜5013を形成する。このとき、ゲート絶縁膜
5006においては、第1の形状の導電層5010〜5013で覆われない領域は20〜
50[nm]程度エッチングされて薄くなった領域が形成される(図7(B))。
【0078】
そして、第1のドーピング処理を行い、N型を付与する不純物元素を添加する(図7(B
))。ドーピング処理は、イオンドーピング法もしくはイオン注入法で行えば良い。イオン
ドープ法にあたっての条件は、ドーズ量を1×1013〜5×1014[atoms/cm2]とし、加
速電圧を60〜100[keV]とする。N型を付与する不純物元素としては、15族に属す
る元素、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いるが、ここではPを用いる。この場
合、導電層5010〜5013がN型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、自己
整合的に第1の不純物領域5014〜5016が形成される。この第1の不純物領域50
14〜5016には、1×1020〜1×1021[atoms/cm3]の濃度範囲でN型を付与する
不純物元素を添加する。
【0079】
次に、第2のエッチング処理を行う(図7(C))。同様にICPエッチング法を用い、エ
ッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを混合して、1[Pa]の圧力でコイル型の電極に5
00[W]のRF電力を供給し、プラズマを生成して行う。基板側(試料ステージ)にも50
[W]のRF電力を投入し、第1のエッチング処理に比べ低い自己バイアス電圧を印加する
。このような条件により第2の導電層であるWを異方性エッチングし、かつ、それより遅
いエッチング速度で第1の導電層であるTaを異方性エッチングして第2の形状の導電層
5017〜5020(第1の導電層5017a〜5020aおよび第2の導電層5017
b〜5020b)を形成する。このとき、ゲート絶縁膜5006においては、第2の形状
の導電層5017〜5020で覆われない領域はさらに20〜50[nm]程度エッチングさ
れて薄くなった領域が形成される。
【0080】
W膜やTa膜のCF4とCl2の混合ガスによるエッチング反応は、生成されるラジカル
またはイオン種と反応生成物の蒸気圧から推測することが出来る。WとTaのフッ化物と
塩化物の蒸気圧を比較すると、Wのフッ化物であるWF6の蒸気圧が極端に高く、その他
のWCl5、TaF5、TaCl5については同程度である。従って、CF4とCl2の混合
ガスでは、W膜およびTa膜共にエッチングされる。しかし、この混合ガスに適量のO2
を添加するとCF4とO2が反応してCOとFになり、FラジカルまたはFイオンが多量に
発生する。その結果、フッ化物の蒸気圧が高いW膜のエッチング速度が増大する。一方、
TaはFが増大しても、相対的にエッチング速度の増加は少ない。また、TaはWに比較
して酸化されやすいので、O2を添加することでTaの表面が酸化される。Taの酸化物
はフッ素や塩素と反応しないため、さらにTa膜のエッチング速度は低下することとなる
。従って、W膜とTa膜とのエッチング速度に差を作ることが可能となる。
【0081】
そして、第2のドーピング処理を行う(図7(C))。この場合、第1のドーピング処理よ
りもドーズ量を下げて高い加速電圧の条件としてN型を付与する不純物元素ドーピングす
る。例えば、加速電圧を70〜120[keV]とし、1×1013[atoms/cm2]のドーズ量で行
い、図7(B)で島状の半導体層に形成された第1の不純物領域の内側に新たな不純物領域
を形成する。ドーピングは、第2の導電層5017b〜5020bを不純物元素に対する
マスクとして用い、第1の導電層5017a〜5020aの下側の領域にも不純物元素が
添加されるようにしてドーピングする。
こうして、第1の導電層と重なる第2の不純物領域5021〜5023が形成される。
【0082】
続いて、第3のエッチング処理を行う(図8(A))。ここでは、エッチング用ガスにCl
2を用い、ICPエッチング装置を用いて行う。本実施例では、Cl2のガス流量比を60
[sccm]とし、1 [Pa]の圧力でコイル型の電極に350[W]のRF電力を投入してプラズ
マを生成してエッチングを70秒行った。基板側(試料ステージ)にもRF電力を投入し、
実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。第3のエッチングにより、第1の導電層が後
退して第3の形状の導電層5024〜5027(第1の導電層5024a〜5027aお
よび第2の導電層5024b〜5027b)が形成され、第2の不純物領域5021〜5
023の一部は、第1の導電層と重ならない第3の不純物領域5028〜5030となる

【0083】
以上までの工程でそれぞれの島状の半導体層に不純物領域が形成される。島状の半導体
層と重なる第3の形状の導電層5024〜5027が、TFTのゲート電極として機能す
る。
【0084】
続いて、導電型の制御を目的として、それぞれの島状の半導体層に添加された不純物元
素を活性化する工程を行う。この工程はファーネスアニール炉を用いる熱アニール法で行
う。その他に、レーザーアニール法、ラピッドサーマルアニール法(RTA法)を適用する
ことが出来る。熱アニール法では酸素濃度が1[ppm]以下、好ましくは0.1[ppm]以下の
窒素雰囲気中で400〜700[℃]、代表的には500〜600[℃]で行うものであり、
本実施例では500[℃]で4時間の熱処理を行う。ただし、5024〜5027に用いた
配線材料が熱に弱い場合には、配線等を保護するため層間絶縁膜(シリコンを主成分とす
る)を形成した後で熱活性化を行うことが望ましい。
【0085】
さらに、3〜100[%]の水素を含む雰囲気中で、300〜450[℃]で1〜12時間
の熱処理を行い、島状の半導体層を水素化する工程を行う。この工程は熱的に励起された
水素により半導体層のダングリングボンドを終端する工程である。水素化するための、熱
水素化の他の方法として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)によ
って行っても良い。
【0086】
次いで、図8(B)に示すように、第1の層間絶縁膜5031を、酸化窒化シリコン膜で
100〜200[nm]の厚さで形成する。その上に有機絶縁物材料からなる第2の層間絶縁
膜5032を形成した後、第1の層間絶縁膜5031、第2の層間絶縁膜5032、およ
びゲート絶縁膜5006に対してコンタクトホールを開口し、配線材料による膜を形成し
て各配線5033〜5036、および画素電極5037をパターニング形成する。
【0087】
第2の層間絶縁膜5032としては、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、BCB(ベ
ンゾシクロブテン)等の有機樹脂を材料とする膜を用いる。特に、第2の層間絶縁膜50
32は平坦化の意味合いが強いので、平坦性に優れたアクリルが望ましい。本実施例では
TFTによって形成される段差を十分に平坦化しうる膜厚でアクリル膜を形成する。好ま
しくは1〜5[μm](さらに好ましくは2〜4[μm])とすれば良い。
【0088】
コンタクトホールの形成は、ドライエッチングまたはウェットエッチング法を用い、N
型の不純物領域5014〜5016、およびソース信号線(図示せず)、ゲート信号線(図
示せず)、電流供給線(図示せず)およびゲート電極5024〜5026に達する(図示せず
)コンタクトホールをそれぞれ形成する。
【0089】
また、配線5033〜5036として、Ti膜を100[nm]、Tiを含むAl膜を30
0[nm]、Ti膜を150[nm]、スパッタ法で連続形成した3層積層の膜を所望の形状にパ
ターニングして形成する。勿論、他の導電性材料を用いても良い。画素電極5037につ
いては、表示装置を反射型とする場合には、反射性の高い材料にて形成する。この場合、
配線と同時に形成しても良い。一方、透過型である場合には、酸化インジウム錫(Indium
Tin Oxide:ITO)等の透明導電性材料を用いて形成する。図8(B)の状態まで完了した
ものを、本明細書ではアクティブマトリクス基板と呼ぶ。
【0090】
続いて、対向基板5038を用意する。対向基板5038には、遮光膜5039が形成
される。この遮光膜は、クロム(Cr)等を用いて、100[nm]〜200[nm]の厚さで形成
する。
【0091】
一方、画素部においては対向電極5040が形成される。対向電極は、ITO等の透明
導電性材料を用いて形成する。また、可視光の透過率を高く保つために、対向電極の膜厚
は100[nm]〜120[nm]で形成することが望ましい。
【0092】
アクティブマトリクス基板と対向基板とに、配向膜5041、5042を形成する。配
向膜5041、5042の膜厚は、30[nm]〜80[nm]が望ましい。また、配向膜として
は、例えば日産化学社製SE7792等を用いることが出来る。プレチルト角の高い配向
膜を用いると、アクティブマトリクス方式により駆動される液晶表示装置の駆動時に、デ
ィスクリネーションの発生を抑制することが出来る。
【0093】
続いて、配向膜5041、5042をラビングする。ラビング方向は、液晶表示装置が
完成したときに、左巻きのTN(Twisted Nematic)配向となるようにするのが望ましい。
【0094】
本実施例においては特に図示していないが、スペーサを画素内に散布もしくはパターニ
ングにより形成して、セルギャップの均一性を向上させることも可能である。本実施例に
おいては、感光性樹脂膜を製膜、パターニングして、4.0[μm]の高さのスペーサを形
成した。
【0095】
続いて、シール剤5043により、アクティブマトリクス基板と対向基板とを貼り合わ
せる。シール剤としては、熱硬化型のシール剤である三井化学社製XN−21Sを用いた
。シール剤中にはフィラーを混入する。なお、フィラーの高さは4.0[μm]とする。そ
の後、シール剤が硬化した後に、アクティブマトリクス基板と対向基板とを、所望のサイ
ズに同時に分断する。
【0096】
続いて、液晶5044を注入する。液晶材料としては、高速応答性等を考慮すると、低
粘度のものが望ましい。本実施例においては、配向制御の容易なネマチック液晶を用いる
。勿論、高速応答が可能な強誘電性液晶、反強誘電性液晶を用いても良い。
【0097】
液晶の注入が終了したのち、注入口をUV硬化型樹脂等を用いて封止する。その後、公
知の方法により偏光板を貼り付ける。最後に、基板上に形成された素子又は回路から引き
回された端子と外部信号端子とを接続するためのコネクタ(フレキシブルプリントサーキ
ット:FPC)を取り付けて製品として完成する(図8(C))。このような出荷出来る状態
にまでした状態を本明細書中では液晶表示装置と呼ぶ。
【0098】
また、本実施例で示す工程に従えば、アクティブマトリクス基板の作製に必要なフォト
マスクの数を4枚(島状半導体層パターン、第1配線パターン(ゲート配線、島状のソース
配線、容量配線)、コンタクトホールパターン、第2配線パターン(画素電極、接続電極含
む))とすることができる。その結果、工程を短縮し、製造コストの低減及び歩留まりの向
上に寄与することができる。
【0099】
なお、本実施例においては、TFTの型式としてはトップゲート型TFTを例に挙げて
説明しているが、その他に、図17(A)に示すような活性層の下側にゲート電極を形成
したボトムゲート型TFT、あるいは図17(B)に示すような、活性層を挟み込むよう
に、上下にゲート電極を有するデュアルゲート型TFTを用いても実施が可能である。
【実施例3】
【0100】
本実施例においては、実施形態および実施例1に示した回路を用いて、実際に表示装置
を作製した例について述べる。
【0101】
図2(A)に、表示装置の概略図を示す。基板200の中央部に、画素部201が配置さ
れている。画素部201の周辺には、ソース信号線を制御するための、ソース信号線駆動
回路202および、ゲート信号線を制御するための、ゲート信号線駆動回路207が配置
されている。ゲート信号線駆動回路207は、図2(A)では画素部201の両側に対称配
置されているが、画素部201の片側のみに配置しても良い。
【0102】
ソース信号線駆動回路202、ゲート信号線駆動回路207を駆動するために外部より
入力される信号は、FPC210を介して入力される。本実施例においては、FPC21
0より入力される信号は、その電圧振幅が小さいため、本実施例では、レベルシフタ20
6によって電圧振幅の変換を受けた上で、ソース信号線駆動回路202、およびゲート信
号線駆動回路207へと入力される。
【0103】
図2(A)において、破線A−A'の断面図を図2(B)に示す。基板200上には、画素
部201、ソース信号線駆動回路202、ゲート信号線駆動回路(図示せず)が形成されて
いる。基板200と、対向基板211とは、シール剤212を用いて貼り合わされ,基板
間のギャップには液晶が注入される。液晶の注入後は、図2(A)に示すように、封止剤2
13によって、注入口を密閉する。
【0104】
引き回し配線221は、異方導電性フィルム223を介して、FPC210が有するF
PC側配線222と電気的に接続される。異方導電性フィルム223には、図2(C)に示
すように導電性のフィラー224が含まれており、基板200とFPC210とを熱圧着
することで、基板200上の引き回し配線221と、FPC210上のFPC側配線22
2とが、導電性フィラー224によって電気的に接続される。
【0105】
ソース信号線駆動回路202の構成を図3に示す。点線枠300で示されるシフトレジ
スタは、クロック信号とスタートパルスとに従ってサンプリングパルスを出力するパルス
出力回路301を複数段用いて構成される。第1のラッチ回路302〜第2のラッチ回路
303〜バッファ回路304は、実施例1にて図11に示したものを用いている。図3の
ソース信号線駆動回路には、3ビットのデジタル映像信号(Data1〜Data3)が入
力される。よって、第1のラッチ回路302〜第2のラッチ回路303〜バッファ回路3
04は、3組が並列に配置され、1つのパルス出力回路から出力されるサンプリングパル
スによって、同時に3ビットのデジタル映像信号の保持を行う。
【0106】
D/A変換回路305に関しては、本明細書では特に図示していないが、従来用いられ
ている抵抗分割型、容量型等、いずれの型式のものを用いても良い。
【0107】
D/A変換回路305にて、3ビットのデジタル映像信号は23階調のアナログ映像信
号へと変換され、それぞれ、ソース信号線(S0001〜S最終)へと書き込まれる。
【0108】
なお、外部より入力される信号は、IC等の集積回路より出力されるため、近年の低電
圧化に伴い、3[V]〜5[V]程度の低電圧振幅の信号である場合が多いため、それぞれの
レベルシフタ306〜309によって、高電圧振幅の信号へと変換された後、駆動回路へ
と入力される。
【0109】
ゲート信号線駆動回路203の構成を図4に示す。点線枠300で示されるシフトレジ
スタは、クロック信号とスタートパルスとに従ってゲート信号線選択パルスを出力するパ
ルス出力回路301を複数段用いて構成される。ゲート信号線の負荷が大きい場合には、
すなわち、シフトレジスタより出力されるゲート信号線選択パルスが、直接ゲート信号線
の電位をHi電位、Lo電位と切り替えるだけの駆動能力を有していない場合、バッファ
404を用いる必要がある。
【0110】
なお、外部より入力される信号は、IC等の集積回路より出力されるため、近年の低電
圧化に伴い、3[V]〜5[V]程度の低電圧振幅の信号である場合が多いため、それぞれの
レベルシフタ401、402によって、高電圧振幅の信号へと変換された後、駆動回路へ
と入力される。
【実施例4】
【0111】
実施例2に示した工程は、画素および周辺の駆動回路をNチャネル型TFTを用いて構
成する場合の例として説明したが、本発明はPチャネル型TFTを用いての実施も可能で
ある、
【0112】
Nチャネル型TFTの場合、ホットキャリア劣化等の抑制のため、ゲート電極と重なる
領域に、オーバーラップ領域と呼ばれる不純物領域を設けている。これに対してPチャネ
ル型TFTの場合は、ホットキャリア劣化による影響が小さいので、特にオーバーラップ
領域を設ける必要はなく、この場合、より簡単な工程で作製することが可能である。
【0113】
図9(A)に示すように、実施例4に従って、ガラス等の絶縁基板6001上に下地膜6
002を形成し、次いで島状の半導体層6003〜6005、ゲート絶縁膜6006、導
電層6007、6008を形成する。ここで、導電層6007、6008は、ここでは積
層構造としているが、特に単層であっても構わない。
【0114】
次いで、図9(B)に示すように、レジストによるマスク6009を形成し、第1のエッ
チング処理を行う。実施例4においては、積層構造とした導電層の材質による選択比を利
用して、異方性エッチングを行ったが、ここでは特にオーバーラップ領域となる領域を設
ける必要はないので、通常エッチングにて行えば良い。このとき、ゲート絶縁膜6006
においては、エッチングによって20[nm]〜50[nm]程度薄くなった領域が形成される。
【0115】
続いて、島状の半導体層にP型を付与する不純物元素を添加するための第1のドーピン
グ処理を行う。導電層6010〜6013を不純物元素に対するマスクとして用い、自己
整合的に不純物領域を形成する。P型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)等が代
表的である。ここでは、ジボラン(B26)を用いたイオンドープ法で形成し、半導体層中
の不純物濃度が2×1020〜2×1021[atoms/cm3]となるようにする。
【0116】
レジストによるマスクを除去して、図9(C)の状態を得る。以後、実施例2における図
8(B)以降の工程に従って作製する。
【実施例5】
【0117】
本実施例においては、画素部にEL素子を始めとした発光素子を用いる発光装置の作製
工程について説明する。
【0118】
実施例2に示した作製工程に従い、図8(A)〜図8(B)に示すように、第1および第2
の層間絶縁膜までを形成する。
【0119】
続いて、図12(A)に示すように、コンタクトホールを開口する。コンタクトホールの
形状は、ドライエッチングまたはウェットエッチング法を用い、不純物領域、ソース信号
線、ゲート信号線、電流供給線、およびゲート電極に達するようにそれぞれ形成する。
【0120】
次に、EL素子の陽極7001として、ITO等を代表とする透明導電膜を成膜し、所
望の形状にパターニングする。Ti、Tiを含むAlおよびTiでなる積層膜を成膜し、
所望の形状にパターニングして、配線電極7002〜7005および画素電極7006を
形成する。各層の膜厚は、実施例2と同様で良い。画素電極7006は、先に形成した陽
極7001と重なるように形成してコンタクトを取っている。
【0121】
続いて、アクリル等の有機樹脂材料等でなる絶縁膜を形成し、EL素子の陽極7001
に対応する位置に開口部を形成して第3の層間絶縁膜7007を形成する。ここで、開口
部を形成する際、なだらかなテーパー形状の側壁とすることが望ましい。開口部の側壁が
十分になだらかなテーパー形状となっていない場合、段差に起因するEL層の劣化、段切
れ等が顕著な問題となるため、注意が必要である。
【0122】
次に、EL層7008を形成した後、EL素子の陰極7009を、セシウム(Cs)を2
[nm]以下の厚さで、および銀(Ag)を10[nm]以下の厚さで形成する。EL素子の陰極7
009の膜厚を極めて薄くすることにより、EL層で発生した光は陰極7009を透過し
て出射される。
【0123】
次いで、EL素子の保護を目的として、保護膜7010を成膜する。その後、FPCの
貼付等の作業を行った後、発光装置が完成する。
【0124】
本実施例において、図12(A)に示した発光装置におけるEL素子の構成の詳細を図1
2(B)に示す。EL素子の陽極7101は、ITOを代表とする透明導電膜でなる。71
02は発光層を含むEL層である。EL素子の陰極は、いずれも極めて薄く形成されたC
s膜7103およびAg膜7104でなる。7105が保護膜である。
【0125】
EL素子の陰極側を、極めて薄い膜厚で形成することにより、EL層7102で発生し
た光は、陰極7103、7104を透過して上方に出射される。つまり、TFTが形成さ
れている領域が、発光面の面積を圧迫することがないため、開口率をほぼ100[%]とす
ることが出来る。
【0126】
以上の工程では、EL層の上側を陰極、下側を陽極とした構成について説明したが、E
L層の下側の画素電極をTiN等で形成し、EL層の上側の電極をITO等で形成するこ
とによって、EL層の上側を陽極、EL層の下側を陰極とすることも可能である。
【0127】
また、開口率はやや低下するが、EL層の下側を陽極、EL層の上側を陰極とし、EL
層の下側の電極をITO等で形成し、EL層の上側の電極については、本実施例とは異な
り、MgAg等を用いて形成することによって、EL層で発生した光を、TFTが形成さ
れている基板側、すなわち下方に出射させる型式とすることも勿論可能である。
【実施例6】
【0128】
本実施例においては、実施例6とは異なる方法によって発光装置を作製する工程につい
て説明する。
【0129】
実施例2に示した作製工程に従い、図8(A)〜図8(B)に示すように、第1および第2
の層間絶縁膜までを形成する。
【0130】
続いて、図13(A)に示すように、コンタクトホールを開口する。コンタクトホールの
形状は、ドライエッチングまたはウェットエッチング法を用い、N型の不純物領域、ソー
ス信号線、ゲート信号線、電流供給線、およびゲート電極に達するようにそれぞれ形成す
る。
【0131】
次に、配線7201〜7204、およびEL素子の陽極となる画素電極7205を、T
i膜、Tiを含むAl膜、Ti膜、および透明導電膜の積層膜として形成する。
【0132】
続いて、アクリル等の有機樹脂材料等でなる絶縁膜を形成し、EL素子の陽極7205
に対応する位置に開口部を形成して第3の層間絶縁膜7206を形成する。ここで、開口
部を形成する際、なだらかなテーパー形状の側壁とすることが望ましい。開口部の側壁が
十分になだらかなテーパー形状となっていない場合、段差に起因するEL層の劣化、段切
れ等が顕著な問題となるため、注意が必要である。
【0133】
次に、EL層7207を形成した後、EL素子の陰極7208を、セシウム(Cs)を2
[nm]以下の厚さで、および銀(Ag)を10[nm]以下の厚さで形成する。EL素子の陰極7
009の膜厚を極めて薄くすることにより、EL層で発生した光は陰極7009を透過し
て出射される。
【0134】
次いで、EL素子の保護を目的として、保護膜7209を成膜する。その後、FPCの
貼付等の作業を行った後、発光装置が完成する。
【0135】
本実施例において、図13(A)に示した発光装置におけるEL素子の構成の詳細を図1
3(B)に示す。EL素子の陽極は、Ti、Al、Tiの積層膜でなる金属膜7301およ
び、ITOを代表とする透明導電膜7302でなる。7303は発光層を含むEL層であ
る。EL素子の陰極は、いずれも極めて薄く形成されたCs膜7304およびAg膜73
05でなる。7306が保護膜である。
【0136】
本実施例で作製した発光装置は、実施例6に示した発光装置と同様、開口率をほぼ10
0[%]と出来る利点を有する。さらに、配線電極および画素電極の形成において、Ti、
Al、Tiの積層でなる金属膜と、透明導電膜とを共通のフォトマスクを用いてパターニ
ングを行うことが可能であり、フォトマスクの削減、および工程の簡略化が可能となる。
【0137】
以上の工程では、EL層の上側を陰極、下側を陽極とした構成について説明したが、E
L層の下側の画素電極をTiN等で形成し、EL層の上側の電極をITO等で形成するこ
とによって、EL層の上側を陽極、EL層の下側を陰極とすることも可能である。
【0138】
また、開口率はやや低下するが、EL層の下側を陽極、EL層の上側を陰極とし、EL
層の下側の電極をITO等で形成し、EL層の上側の電極については、本実施例とは異な
り、MgAg等を用いて形成することによって、EL層で発生した光を、TFTが形成さ
れている基板側、すなわち下方に出射させる型式とすることも勿論可能である。
【実施例7】
【0139】
図16は、図1に示した本発明のラッチ回路の接続に小変更を加えたものである。図1
においては、トランジスタ102の入力電極は、電源VDDと接続されていたが、図16
に示すラッチ回路では、TFT1602の入力電極とゲート電極には、ともにサンプリン
グパルスが入力されるように接続されている。動作については実施形態と同様であるので
、ここでは省略するが、電源線の引き回し等が占めるスペースが取れない場合には、この
ような接続としても良い。
【実施例8】
【0140】
実施例1においては、第1のラッチ回路からの出力は、直ちに第2のラッチ回路に入力
され、振幅減衰の補償は、第2のラッチ回路の後段に配置されたバッファ回路が行ってい
る。
【0141】
ただしこの場合、動作電圧が低く、かつTFTのしきい値が大きい場合、元の振幅に対
してしきい値分の減衰による影響が大きく、ラッチ回路において正常な保持動作が行われ
ないことが考えられる。
【0142】
そこで本実施例においては、第1のラッチ回路の後段に振幅補償用バッファ回路を追加
した例について説明する。
【0143】
図15に構成を示す。点線枠1500で囲まれた部分は、実施形態および実施例1にて
説明した第1のラッチ回路であり、TFT1501〜1503、および容量手段1504
、1505を有している。
【0144】
点線枠1510で囲まれた部分が、第1のラッチ回路からの出力振幅を補償するための
、振幅補償用バッファ回路であり、TFT1511〜1514、および容量手段1515
、1516を有している。
【0145】
回路の動作について説明する。ここで、TFT1511、1512および容量手段15
15で構成される回路と、TFT1513、1514および容量手段1516で構成され
る回路とは、入力される信号の極性が逆であることを除き、同様の動作をするので、ここ
では、TFT1511、1512および容量1515で構成される回路のみの動作につい
て説明する。
【0146】
第1のラッチ回路1500に、サンプリングパルス(Samp.Pulse)とデジタル
映像信号(Digital Data)とが入力され、第1の出力信号(Data Out)
および第2の出力信号(Data Out_b)が出力される。
【0147】
TFT1501の出力電極から出力される信号を第1の出力信号、TFT1502、1
503の出力電極から出力される信号を第2の出力信号とする。第2の出力信号は、第1
の出力信号に対して反転した極性を有する。
【0148】
第1のラッチ回路に入力されるデジタル映像信号(Digital Data)がHi電
位のとき、第1の出力信号はHi電位、第2の出力信号はLo電位であり、第1のラッチ
回路に入力されるデジタル映像信号(Digital Data)がLo電位のとき、第1
の出力信号はLo電位、第2の出力信号はHi電位である。
【0149】
ここで、第1および第2の出力信号の振幅は、第1のラッチ回路にてTFT1501、
1502のしきい値の影響を受けるため、(VDD−VthN)−VSS間となっている。
つまりVthNだけ、振幅の減衰を生じている。
【0150】
第1の出力信号がHi電位、第2の出力信号がLo電位である場合、TFT1511の
ゲート電極にはHi電位が入力され、TFT1512のゲート電極にはLo電位が入力さ
れる。
【0151】
一方、第1のラッチ回路でサンプリング期間が終了すると、サンプリングパルスはLo
電位となり、TFT1501、1502がOFFする。よって、TFT1511、151
2のゲート電極は、その瞬間の電位を容量手段1504、1505によって保持されつつ
、浮遊状態となる。
【0152】
このときのTFT1511のゲート電極の電位はHi電位、すなわち(VDD−Vth
N)であり、TFT1512のゲート電極の電位はVSSである。よって、TFT151
1はONし、TFT1511の出力電極の電位が上昇する。このとき、TFT1512は
OFFする。
【0153】
ここで、容量手段1515による、TFT1511のゲート電極と出力電極間の容量結
合によってブートストラップが働き、TFT1511のゲート電極の電位は(VDD−V
thN)からさらに上昇して、(VDD+VthN)よりも高い電位をとる。よって、TF
T1511の出力電極の電位、すなわちバッファ出力(Data Out')の電位は、V
DDに等しくなる。
【0154】
一方、TFT1511のゲート電極にLo電位が入力され、TFT1512のゲート電
極にHi電位が入力されると、バッファ出力はLo電位となる。
【0155】
以上の動作が、TFT1513、1514および容量手段1516によって構成される
回路においても同様になされ、バッファ出力がHi電位のとき、反転バッファ出力(Da
ta Out_b')はLo電位となり、バッファ出力がLo電位のとき、反転バッファ出
力はHi電位となる。
【0156】
よって、第1のラッチ回路の出力の振幅が補償され、正常にVDD−VSS間の振幅が
得られ、第2のラッチ回路へと入力することが出来る。
【0157】
ここで、TFT1511のゲート電極と出力電極間にブートストラップが働くとき、同
時にTFT1512のゲート電極も浮遊状態となっているため、特に容量手段を設けない
場合にも、TFT1512それ自身のゲート・ドレイン間容量によって、TFT1512
のゲート電極の電位が上昇する可能性がある。これによって、TFT1512がONする
と、誤動作を招くため、TFT1512のゲート・ドレイン間につく容量は小さくする、
すなわちTFT1512のサイズをTFT1511よりも小さくする等の対策があると望
ましい。
【実施例9】
【0158】
本発明は、様々な電子機器に用いられている表示装置の作製に適用が可能である。この
ような電子機器には、携帯情報端末(電子手帳、モバイルコンピュータ、携帯電話等)、ビ
デオカメラ、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、テレビ、携帯電話等が挙げられ
る。それらの一例を図14に示す。
【0159】
図14(A)は液晶ディスプレイもしくはOLEDディスプレイであり、筐体3001、
支持台3002、表示部3003等により構成されている。本発明は、表示部3003を
有する表示装置の駆動回路に適用が可能である。
【0160】
図14(B)はビデオカメラであり、本体3011、表示部3012、音声入力部301
3、操作スイッチ3014、バッテリー3015、受像部3016等により構成されてい
る。本発明は、表示部3012を有する表示装置の駆動回路に適用が可能である。
【0161】
図14(C)はノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3021、筐体3022
、表示部3023、キーボード3024等により構成されている。本発明は、表示部30
23を有する表示装置の駆動回路に適用が可能である。
【0162】
図14(D)は携帯情報端末であり、本体3031、スタイラス3032、表示部303
3、操作ボタン3034、外部インターフェイス3035等により構成されている。本発
明は、表示部3033を有する表示装置の駆動回路に適用が可能である。
【0163】
図14(E)は音響再生装置、具体的には車載用のオーディオ装置であり、本体3041
、表示部3042、操作スイッチ3043、3044等により構成されている。本発明は
表示部3042を有する表示装置の駆動回路に適用が可能である。また、本実施例では車
載用オーディオ装置を例に挙げたが、携帯型もしくは家庭用のオーディオ装置に用いても
良い。
【0164】
図14(F)はデジタルカメラであり、本体3051、表示部(A)3052、接眼部30
53、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056等により構成さ
れている。本発明は、表示部(A)3052および表示部(B)3055を有する表示装置の
駆動回路に適用が可能である。
【0165】
図14(G)は携帯電話であり、本体3061、音声出力部3062、音声入力部306
3、表示部3064、操作スイッチ3065、アンテナ3066等により構成されている
。本発明は、表示部3064を有する表示装置の駆動回路に適用が可能である。
【0166】
なお、本実施例に示した例はごく一例であり、これらの用途に限定するものではないこ
とを付記する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−68953(P2013−68953A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211901(P2012−211901)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【分割の表示】特願2011−181408(P2011−181408)の分割
【原出願日】平成13年8月3日(2001.8.3)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】