説明

半導体装置

【課題】多層配線プロセスでSOGエッチバックにて平坦化を行なうプロセスにて、ヒューズ開口部に起因する水分の浸入における長期信頼性の劣化を防止する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】ヒューズ開口部からの水分侵入を防ぐためのメタル1層目のガードリングの下部まで多結晶シリコンが伸びているヒューズ形状にする。これによりヒューズの電極をとるためのメタル配線とガードリングのメタル配線の高さがそろい、SOG層がIC内部に到達することを防ぐことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMOSトランジスタおよび抵抗を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧検出器などのアナログICにおいては、電圧に対する所望の特性を得るために、たとえば多結晶シリコン等の薄膜抵抗で構成されたレーザートリミング用のヒューズを配置しておき、レーザー照射によって選択的にヒューズを焼き切ることにより抵抗体の組み合わせパターンを調節し、前工程における量産バラツキによる特性のバラツキや、回路の狙い値を調節する施策が一般的にとられている。
【0003】
このようなアナログICにおけるレーサートリミング用のヒューズについて図4から図6を参考に説明する。図4は平面図、図5は切断線C−C'にそった断面模式図、そして図6は切断線D−D'にそった断面模式図である。多結晶シリコンの薄膜抵抗からなるヒューズ306にレーザーが照射できるよう保護膜である窒化膜317や多層配線間の層間絶縁膜313、315を部分的にエッチングし、開口部318を形成するため、ヒューズ開口部の窒素膜や層間絶縁膜の側壁がむき出しとなる。そしてダブルメタルプロセスもしくはそれ以上の多層配線プロセスにおいては、平坦化の1つの技術として例えばSOG(Spin on Glass)からなるSOG層314をコートしたのちエッチバックする技術があるが、エッチバック技術の場合、積層している層間絶縁膜の間のSOG層314があることで、そのSOG層より水分が浸入することによりICの素子特性変動をおこし、長期信頼性に関わる問題を生じうる。特にPMOSトランジスタにおいては高温状態において負のゲートバイアスを加えた場合に起こるNBTI(Negative Bias Temperature Instability)によりトランジスタの閾値電圧シフトが発生する。
【0004】
そのヒューズ開口部からの水分侵入に起因する長期信頼性の劣化をさせない施策として、ヒューズ開口部よりICの内部に、障壁となるようメタルを用いてガードリングを形成することで水分の侵入を防止する対策が、例えば、特許文献1および特許文献2において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−63091号公報
【特許文献2】特開平07−22508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5および図6を用いてSOG層からの水分浸入について説明する。図5はヒューズ306に沿った断面を示している。すなわち、図4のヒューズトリムレーザー照射部320がある部分の断面である。ヒューズ306の上には中間絶縁膜311を介してシールリング319が形成され、第1のTEOS(313)と第2のTEOS(315)の間のSOG層314はヒューズ開口部318に露出してはいるもののシールリング319で寸断され、IC内部のSOG層314と繋がることはない。一方、図6はヒューズトリムレーザー照射部320が無い部分の断面を示している。この断面においてヒューズ306はヒューズ端子部321に相当する部分だけであり、ヒューズトリムレーザー照射部320に相当する部分は図には出てこないで、中間絶縁膜311が下地のフィールド絶縁膜303上に直接堆積している。このためシールリング319は第1の金属配線312よりも低い位置に形成されることになり、結果として第1のTEOS313と第2のTEOS315の間のSOG層314がシールリング319を越えIC内部のSOG層314と繋がってしまい、IC内部に水分が侵入することになる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、ヒューズ開口部に起因する水分の浸入によるIC特性の劣化を防止するための半導体装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、請求項1記載の発明では、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられたフィールド絶縁膜と、前記フィールド絶縁膜上に設けられた、レーザートリミングされるヒューズトリムレーザー照射部およびその両端に設けられたヒューズ端子を有する、多結晶シリコンからなるヒューズと、前記ヒューズを覆っている中間絶縁膜と、前記中間絶縁膜の上に設けられた第1のTEOS層と、前記第1のTEOS層を平坦化しているSOG層と、前記SOG層および前記SOG層に覆われていない前記第1のTEOS層の上に設けられた第2のTEOS層と、前記第2のTEOS層の上に設けられた保護膜と、前記保護膜から前記第1のTEOS層にかけて前記ヒューズトリムレーザー照射部の上部に設けられた開口部と、前記開口部を取り囲んで前記中間絶縁膜の上に設けられた第1層の金属配線層からなるシールリングと、から成り、前記ヒューズ端子は前記ヒューズトリムレーザー照射部より幅が大きく、前記シールリングの下部にまで延伸されている半導体装置とした。
【0009】
また、請求項2記載の発明では、前記ヒューズ端子の一部が前記シールリングにより規定される領域の内部にまで延伸されている請求項1記載の半導体装置とした。
【0010】
また、請求項3記載の発明では、前記シールリングに含まれる前記ヒューズトリムレーザー照射部を有する前記ヒューズの本数をN、前記ヒューズの前記ヒューズトリムレーザー照射部の幅をそれぞれW1からWNとした場合に、前記ヒューズ端子の上を通過している前記シールリングの長さの総和Lは、L>2×(W1+・・・WN)なる不等式を満たしている請求項1記載の半導体装置とした。
【発明の効果】
【0011】
多層配線を形成するICにおいて、長期信頼性劣化の起因となるような、ヒューズ開口部から積層された層間絶縁膜のSOG層からの水分進入経路を確実に遮断し、NBTIにおけるICの特性劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のヒューズ部の模式平面図。
【図2】図1の切断線A−A´に沿った本発明に係る半導体装置の模式断面図。
【図3】図1の切断線B−B´に沿った本発明に係る半導体装置の模式断面図。
【図4】従来のヒューズ部の模式平面図。
【図5】図4の切断線C−C´に沿った従来の半導体装置の模式断面図。
【図6】図4に切断線D−D´に沿った従来の半導体装置の模式断面図。
【図7】本発明に係る半導体装置の製造工程を示す図。
【図8】図7に引き続いて本発明に係る半導体装置の製造工程を示す図。
【図9】図8に引き続いて本発明に係る半導体装置の製造工程を示す図。
【図10】図9に引き続いて本発明に係る半導体装置の製造工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に本発明の半導体装置のヒューズ部の平面図を、図2および図3に本発明の半導体装置の模式断面図を示す。
【0014】
図1を従来の構造を示した図4と比較することにより分かるように、本発明の半導体装置の特徴とするところはヒューズ端子121の一部と金属配線112と同じ金属配線層からなるシールリング119の一部が重畳している点である。図1の右側に示すヒューズ106は矩形のヒューズ端子121とヒューズ開口部118内に位置する矩形のヒューズトリムレーザー照射部120からなる形状であり、左側に示すヒューズ106はヒューズ端子121とヒューズトリムレーザー照射部120との接合部が、ヒューズトリムレーザー照射部120からヒューズ端子121にかけて徐々に太くなっている形状である。いずれのヒューズにおいてもヒューズ端子はヒューズトリムレーザー照射部よりも幅が広くなっており、ヒューズ端子と第1層金属配線層からなるシールリングとは平面視的に重なるように配置されている。
【0015】
図2は図1の切断線A−A′に沿った半導体装置の模式断面図である。P型シリコン半導体基板101上のPMOS領域に形成されたN型ウエル拡散層102と、LOCOS法により形成された酸化膜のフィールド絶縁膜103とが配置されている。
【0016】
そして熱酸化によるゲート絶縁膜104とN型もしくはP型の多結晶シリコン膜によるゲート電極105およびレーザートリミングでカットされるヒューズ106とが配置されている。さらに、第2の多結晶シリコンによる高抵抗抵抗体107が配置されている。高抵抗抵抗体107はP型抵抗体でもN型抵抗体でもどちらでもかまわない。
【0017】
PMOSトランジスタのドレイン・ソースとなるP型高濃度不純物領域108、特に図示しないがNMOSトランジスタのソースおよびドレインとなるN型高濃度不純物領域が配置される。同時に、抵抗体のコンタクト部分の低抵抗化を図る為に、同時にP型またはN型の高濃度不純物がイオン注入された高濃度領域110が低濃度領域109の両端に配置される。
【0018】
中間絶縁膜111に第一のコンタクトホールを形成し、第1の金属配線112を設ける。このとき、コンタクトホールには例えばタングステンなどの高融点金属を埋め込んだプラグ構造としても構わない。金属配線112にはAl−SiやAl−Si−Cu、Al−Cuを用いても構わない。さらにはコンタクトのスパイク防止の為にこの金属の下にTi、TiNからなるバリアメタル層を敷いてもよい。
【0019】
多層配線とするために、たとえばP−CVD法によるTEOSが層間絶縁膜として配置される。この層間絶縁膜の第1のTEOS層113上に平坦性をよくするためSOG層114をコートしたのちエッチバック法を施し、さらに絶縁膜である第2のTEOS層115を設け、最終的な層間絶縁膜としている。
【0020】
第2のコンタクトホールを形成し、第2の金属配線116を配置する。この金属配線は例えばAl−SiやAl−Si−Cu、Al−Cuを用いても構わない。保護膜117にPadとヒューズ部分の開口となるヒューズ開口部118を設け、本発明の実施形態である半導体装置となる。
【0021】
ヒューズ106の上には中間絶縁膜111を介して第1層の金属配線層からシールリング119が形成されている。第1のTEOS113と第2のTEOS115の間のSOG層114はヒューズ開口部118に露出してはいるものの、ヒューズ106の上に配置されたシールリング119で寸断され、ヒューズ開口部118に露出したSOG層114とヒューズ開口部から離れた内部に残されたSOG層114とが繋がることはない。
【0022】
図3は図1の切断線B−B′に沿った半導体装置の模式断面図である。ヒューズ開口部118においてはヒューズ106の形状が図2に示すものと異なり、ヒューズトリムレーザー照射部120に相当する部分が無く、中間絶縁膜111が下地のフィールド絶縁膜103上に堆積している。シールリング119は中間絶縁膜111を介してヒューズ106の端部であるヒューズ端子部121の上方に配置されている。このとき、ヒューズ端子部121と接合する金属配線112とシールリング119の高さが同一になる。このため、第1のTEOS層113と第2のTEOS層115の間のSOG層114はヒューズ開口部118に露出してはいるもののシールリング119の上方で寸断され、IC内部のSOG層114と繋がることはない。
【0023】
なお、図1の左側のヒューズ106のような形状であってもシールリング119下部に多結晶シリコンが形成されているため、ヒューズ端子部と接合する金属配線112とシールリング119の高さが同一となりSOG層を寸断できるため、SOGを介しての水分侵入を防ぐことが可能となり、NBTIにおけるICの特性劣化を防止することができる。ここで、ひとつの閉じたシールリングに含まれるヒューズトリムレーザー照射部を有するヒューズの本数をN、各ヒューズのヒューズトリムレーザー照射部の幅をそれぞれW1からWNとした場合に、ヒューズ端子の上を通過しているシールリングの長さの総和Lは、L>2×(W1+・・・WN)なる不等式を満たしていることが分かる。
【0024】
さらに、ヒューズ端子部121の形状を変化させ、シールリング119の下部をヒューズ端子部121から伸びている多結晶シリコンの層がほとんど占めるようにすることも可能であり、さらに水分の浸入を防ぐことが可能となる。また、ヒューズ端子部とは接続されていない多結晶シリコンの層をシールリング119の下部に配置することで、やはり、同様の効果が得られることは明らかであろう。
【0025】
次に、図1から図3を用いて説明した半導体装置の製造方法を図7から図10を用いて説明する。
まず、図7に示すように、P型シリコン半導体基板101上のPMOS領域に形成されたN型ウエル拡散層102と、特に記載はしないがNMOS領域にP型ウエル拡散層を形成し、LOCOS法により形成された酸化膜のフィールド絶縁膜103を例えば4000〜8000Å程形成する。
【0026】
次に、図8に示すように、熱酸化によるゲート絶縁膜104を100〜400Å程度形成し、所望の閾値電圧を得るようにイオン注入を行なった後、CVD法でゲート電極となる多結晶シリコン膜を堆積させ、フォトレジストでパターニングを施しゲート電極105とレーザートリミングでカットされるヒューズ106を形成している。このときゲート電極105およびヒューズ106となる多結晶シリコン膜中に、リンまたはボロンをイオン注入法やDoped−CVD法で拡散させ、電極の極性をN型もしくはP型多結晶シリコンにしている。その後、第2の多結晶シリコンを堆積し、抵抗体となるよう、第2の多結晶シリコンに低濃度不純物を注入する。ここではP型抵抗体でもN型抵抗体でもどちらを形成してもかまわない。また、Doped−CVD法で形成してもかまわない。その後、フォトリソグラフィー工程の後、エッチングを施しパターンを形成し、高抵抗抵抗体107を形成する。
【0027】
そして、図9に示すように、PMOSトランジスタのドレイン・ソースとなるP型高濃度不純物領域108、特に図示しないがNMOSトランジスタのソースおよびドレインとなるN型高濃度不純物領域を形成する。また、抵抗体のコンタクト部分の低抵抗化を図る為に、同時にP型またはN型の高濃度不純物のイオン注入を抵抗体の低濃度領域109に対して行い、高濃度領域110を形成する。
【0028】
引き続き、中間絶縁膜111を形成したのち第一のコンタクトホールを形成し、第1の金属配線112を例えばスパッタ法で堆積させる。このとき、コンタクトホールには例えばタングステンなどの高融点金属を埋め込んだプラグ構造としても構わない。金属配線112にはAl−SiやAl−Si−Cu、Al−Cuを用いても構わない。さらにはコンタクトのスパイク防止の為にこの金属の下にTi、TiNからなるバリアメタル層を敷いてもよい。そして第1の金属配線112をフォトリソグラフィー、エッチング工程で形成する。
【0029】
その後、図10に示すように、多層配線とするため層間絶縁膜をたとえばP−CVD法によるTEOSで形成する。この層間絶縁膜の第1のTEOS層113上に平坦性をよくするためSOG層114をコートしたのちエッチバック法を施し、さらに絶縁膜である第2のTEOS層115を堆積させ最終的な層間絶縁膜としている。
【0030】
以降図示しないが、第2のコンタクトホールを形成し、第2の金属配線116を形成する。この金属配線は例えばAl−SiやAl−Si−Cu、Al−Cuを用いても構わない。そして、保護膜117の形成とPadとヒューズ部分の開口118の形成を経て、図1ないし図3に示す半導体装置が形成される。
【符号の説明】
【0031】
101 P型シリコン半導体基板
102 N型ウエル拡散層
103、303 フィールド絶縁膜
104 ゲート絶縁膜
105 ゲート電極
106、306 ヒューズ
107 高抵抗抵抗体
108 P型高濃度不純物領域
109 抵抗体の低濃度領域
110 抵抗体の高濃度領域
111、311 中間絶縁膜
112、312 第1の金属配線
113、313 第1のTEOS層
114、314 SOG層
115、315 第2のTEOS層
116 第2の金属配線
117、317 保護膜
118、318 ヒューズ開口部
119、319 シールリング
120、320 ヒューズトリムレーザー照射部
121、321 ヒューズ端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられたフィールド絶縁膜と、
前記フィールド絶縁膜上に設けられた、レーザートリミングされるヒューズトリムレーザー照射部およびその両端に設けられたヒューズ端子を有する、多結晶シリコンからなるヒューズと、
前記ヒューズを覆っている中間絶縁膜と、
前記中間絶縁膜の上に設けられた第1のTEOS層と、
前記第1のTEOS層を平坦化しているSOG層と、
前記SOG層および前記SOG層に覆われていない前記第1のTEOS層の上に設けられた第2のTEOS層と、
前記第2のTEOS層の上に設けられた保護膜と、
前記保護膜から前記第1のTEOS層にかけて前記ヒューズトリムレーザー照射部の上部に設けられた開口部と、
前記開口部を取り囲んで前記中間絶縁膜の上に設けられた第1層の金属配線層からなるシールリングと、から成り、
前記ヒューズ端子は前記ヒューズトリムレーザー照射部より幅が大きく、前記シールリングの下部にまで延伸されている半導体装置。
【請求項2】
前記ヒューズ端子の一部が前記シールリングにより規定される領域の内部にまで延伸されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記シールリングに含まれる前記ヒューズトリムレーザー照射部を有する前記ヒューズの本数をN、前記ヒューズの前記ヒューズトリムレーザー照射部の幅をそれぞれW1からWNとした場合に、前記ヒューズ端子の上を通過している前記シールリングの長さの総和Lは、L>2×(W1+・・・WN)なる不等式を満たしている請求項1記載の半導体装置。

【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−84908(P2013−84908A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171416(P2012−171416)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】