説明

半導体装置

【目的】 セルサイズに対する有効なチャネル幅の比を決定する順電流有効領域比を増大した順方向特性、逆方向特性及びスイッチング特性の優れた半導体装置を得ることを目的とする。
【構成】 一導電型半導体1表面を凹凸5,6状とし、凸部6の上部に第1の逆導電型半導体領域2a、凸部の底部又は側部の一部を含む底部に第2の逆導電型半導体領域2bを形成し、第1と第2の領域がはさむ凸部の少なくとも一つの側部にショットキ3又はオ−ミック接触を形成する金属層を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明の半導体装置の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知のように、半導体装置の特性改善、特に、順方向特性、逆方向特性、スイッチング特性についての改善のため、開発が進められ、種々の構造が提案されている。
【0003】図1に従来の半導体装置についての断面構造図を示す。図1は本発明者等が特願平3−115341「ショットキバリア半導体装置」により発明した構造であり、1は一導電型半導体領域、例えば、N型シリコン半導体、1′は低抵抗の一導電型半導体領域、例えば、N+型シリコン半導体、2は逆導電型半導体領域、例えば、P+型シリコン半導体、3は一電極金属、4はオ−ミック電極金属、5はトレンチ溝による凹部、6は凸部、Aはアノ−ド、Cはカソ−ドである。
【0004】前記の特願平3−115341では、一電極金属3としてショットキバリア接触を形成する公知の金属を選択し、順方向特性を改善すると共に、逆バイ(2)アス時には一導電型半導体領域1と一電極金属3が形成するショットキバリア接触面eから延びる空間電荷層を逆導電型半導体領域2が形成するPN接合からの空間電荷層で両側からはさみ込むことにより、ある逆電圧以上で3方向の空間電荷層が併合し、接触面eにかかる電界強度Eが低い値におさえられ逆漏れ電流を改善する。なお、このような効果は接触面eがショットキバリア接触を形成する場合に限らずオ−ミック接触であっても同様である
【0005】しかして、セルサイズCW内における有効なチャネル幅を決定する相隣る逆導電型半導体領域2の最近接距離Wとすると、現在の半導体製造技術では、順電流有効領域比 α=W/CW<0.2〜0.4 程度とならざるを得ない。従って、必要とする順電流を決定する最近接距離Wを確保するためにはセルサイズCWは極めて大きくなる。即ち、特性面で優れていても半導体チップの形状が大きくなり、高価な半導体装置となる。
【0006】
【発明の目的】本発明は前記せる従来装置の問題点を解消し、逆漏れ電流、及び順電圧降下が小さく、高速でかつ、低損失の半導体装置を順電流有効領域比αの大きな構造で得ることを目的とする。
【0007】
【実施例】本発明の実施例を図2の断面構造図に示し、図1と同一符号は同一部分をあらわす。2aは凸部6の上部に形成された第1の逆導電型半導体領域、2bは凸部6の底部及び側部の下方にわたり形成された第2の逆導電型半導体領域であり、第1の領域2aと第2の領域2bがはさむ凸部6の側部に一電極金属3によりショットキ又はオ−ミックの接触面e′を形成する。
【0008】具体的には、N型シリコン半導体基板にトレンチ溝を公知の方法で形成し、凹部5及び凸部6を設けて、第1の逆導電型半導体領域2a、及び第2の逆(3)導電型半導体領域2bの位置にボロン原子をイオン注入法又は気相拡散法でP+領域として形成する。次いで、一電極金属3を蒸着法により形成した。
【0009】第2の逆導電型半導体領域2bは凸部6の底部及び側部の一部に及んで形成することが望ましいが、少なくとも底部の角部に形成する必要がある。
【0010】各部の形状については、第1の領域2aと第2の領域2bの最近接距離WL相隣る第2の領域の各2b間の最近接距離L、接触面e′から延びる零バイアス時の空間電荷層の深さWbi、絶縁破壊時の空間電荷層WB、第2の領域2bにおけるWbiの位置f点での接線が接触面e′となす角度θとすると、WL及びLが2Wbiより小さいか、又は、少なくとも2WB以内であり、θを60度≦θ≦180度に形成することが好ましい。このようにして、アノ−ドA及びカソ−ドC間に、第1の領域2aと、それぞれの第2の領域2bによりはさまれた2つの金属と半導体の接触面e′をもつ一導電型半導体1を基体とする半導体装置を形成する。即ち、図2における凸部6の左右それぞれに、接触面e′をもつ、図1R>1と同様の動作原理による半導体装置を形成できる。
【0011】図1の接触面eと図2の接触面e′を同一面積にすると、図2の本発明構造においては順電流有効領域比αを図1の従来構造の2倍にできる。
【0012】一導電型半導体表面を凹凸状とするトレンチ溝の形成においては、複数個の短冊状配列トレンチ溝により、前記の順電流有効領域比αを2倍とすることができるが、図3の平面構造図のように、複数個の島状配列トレンチ溝の形成により、セルの3次元寸法の工夫により、有効領域比αを4倍以上とすることも可能である。
【0013】以上のごとく、本発明構造は、図1での説明による逆漏れ電流抑制効果をそ(4)こなうことなく、接触面e′の拡大、即ちセル内有効面積の増大ができる同一順電流に対し、接触面e′の電流密度を減少でき、e′がショットキ接触である場合には、その順電圧降下を低減し得る。又、電流密度を図1の従来構造と同等とした場合にはチップ寸法を小さくでき、従って安価な半導体装置を得る。
【0014】又、接触面e′をオ−ミック接触とした場合は、第1の領域2a及び第2の領域2bの形成にもとづき一導電型半導体領域内に電子ポテンシアル高さに応じた電気特性を示し、接触面e′をショットキ接触とした場合と同様の順方向、逆方向の整流特性を観測できた。
【0015】図2の断面構造におけるトレンチ溝、即ち、凹部5の形状は台形、長方形に限定されず、又、第2の領域2bの形状や各部の距離、寸法関係も実施例に限定されるものではない。その他の変形、変換、付加等の変更についても本発明の要旨の範囲で本願権利に包含される。
【0016】
【発明の効果】以上、説明したように、順方向特性、逆方向特性、及びスイッチング特性の優れた半導体装置を順電流有効領域比を増大した構造で得ることができ、ショットキ又はオ−ミック接触面の電流密度の低減、又はチップサイズの減少による経済化を達成でき、パワ−用をはじめ各種の産業機器に利用される半導体装置に適用し、その効果極めて大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の半導体装置の断面構造図である。
【図2】本発明の実施例を示す断面構造図である。
【図3】(5)本発明の実施例を示す平面構造図である。
【符号の説明】
1 一導電型半導体領域
1′ 低抵抗の一導電型半導体領域
2 逆導電型半導体領域
2a 第1の逆導電型半導体領域
2b 第2の逆導電型半導体領域
3 一電極金属
4 オ−ミック電極金属
5 凹部
6 凸部
A アノ−ド
C カソ−ド
e、e′接触面
f 接点
CW セルサイズ
W 相隣る2の最近接距離
WL 2aと2b間の最近接距離
Wbi 零バイアス時の空間電荷層の深さ
WB 絶縁破壊時の空間電荷層幅
L 相隣る2bの最近接距離
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一導電型半導体表面を凹凸状にするトレンチ溝を形成した半導体装置において、凸部の上部に第1の逆導電型半導体領域、凸部の底部又は側部の一部を含む底部に第2の逆導電型半導体領域を形成し、第1と第2の逆導電型半導体領域がはさむ凸部の少なくとも一つの側部にショットキ又はオ−ミック接触を形成する金属層を設けたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−75098
【公開日】平成5年(1993)3月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−261132
【出願日】平成3年(1991)9月12日
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)