説明

半導体装置

【課題】 特にICカードのような小型の半導体装置に適した熱抵抗の小さい放熱経路を設けて、電子部品から発生した熱を効率的に外部に放散させ、半導体装置の小型化、高機能化を図る。
【解決手段】 基板25のサーマルビアホール36を設けた位置にCPU21を実装し、基板のCPU実装面と反対側に配置された下パネル29との間に、半流動性のシリコンゴムのような、変形可能で電気的絶縁性を有する高熱伝導性材料37を充填する。CPUから発生した熱は、その大部分がサーマルビアホールを介して基板のCPU実装面と反対側に、高熱伝導性材料から下パネルに伝達され、その表面から直接大気中に放散する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回路基板にICチップやLSI等の電子部品を搭載した半導体装置に関し、例えば所謂ICカードや電子手帳、ノートブック型又はパームトップ型のコンピュータやワードプロセッサのような特に画定された特定の空間内に電子部品を実装した半導体装置に適した放熱構造に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、半導体素子などの電子部品を動作させると、電力を消費することにより熱が発生し、その温度が高くなり過ぎると、電子部品の機能や特性を低下させたり、電子部品の製品寿命を縮めることがある。例えば相補型金属酸化膜半導体(CMOS)集積回路の場合、環境温度又はそれ自体の温度が、規定されている温度以上に上昇すると、トランジスタ素子の応答速度が著しく低下し、動作クロック周波数やアクセスタイムなどの特性に影響を与える。
【0003】そこで、電子部品から発生する熱を外部に放散させるために、電子機器のケーシングにスリット構造を設けて外部から空気を自然対流させたり、その内部をファンで空気を送風又は排気して強制冷却する方法が一般的である。更に、CPUなどの発熱量の多い半導体デバイスの場合、放熱板、放熱フィンなどのヒートシンクを取り付けて放熱面積を増やしたり、水冷ジャケットなどのヒートパイプを設けて冷却するなどの工夫がなされている。例えば図10に示すように、放熱フィン1は、回路基板2に実装した半導体チップ3の樹脂パッケージ4上面に、熱伝導性の接着剤5で接着される。また図11に示すノートブック型の小型コンピュータ6では、そのケース7内部に放熱板8が、回路基板9に実装したCPU10のパッケージ11表面に接するように設けられ、消費電力が最も大きいCPU10からの熱を放熱板8を介して外部に伝達することにより、該CPUの特性を低下させず、コンピュータの性能維持を図っている。
【0004】電子部品から発生した熱は、そのアウタリードから回路基板の配線パターンを介して外部に逃がすこともできる。例えば、図10及び図11の従来例では、それぞれボンディングワイヤ12、13からアウタリード14、15を介して回路基板上の配線パターン16、17へ熱が伝達される。更に、ワイヤボンディングやCOB(chip on board)方式による表面実装の場合は、一般に半導体部品を樹脂封止するポッティング材の熱伝導率が低いので、回路基板にサーマルビアホールを設けて内層の導体パターン、例えばグランド層、電源層から外部に熱を放散させる方法が知られている。また、上述したCOB方式やTCP(tape carrier package)方式では、半導体素子を低電圧で動作させるなどにより消費電流を少なくし、発熱量をできる限り少なくする方法も採用されている。
【0005】他方、電子部品を実装した回路基板をカード形状の金属製ケース内に収納した所謂ICカードの場合、例えば特開平3−182397号公報に開示されるように、半導体チップをパッケージした半導体素子を基板上に実装し、その半導体素子と外装の金属パネルとの間に充填した高熱伝導率物質を介して、半導体素子から発生した熱を外装金属パネルから外部に放散させる構造が提案されている。更に、実開平4−7175号明細書に記載されるICカードでは、前記金属パネルの外面に放熱フィンを設けることによって、放熱効果を高めている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の送風ファンやヒートシンク、ヒートパイプなどの放熱手段は、装置全体が大型化するので、小型の半導体装置にとっては好ましくない。図10のような放熱フィンは、それ自体が高価であり、かつそれを半導体部品に取り付けるための組立工程が増えるので、製造コストが高くつく。しかも、ノートブック型コンピュータや電子手帳のような携帯用情報機器などに使用される小型の半導体装置は、その取扱い上落下などによる機械的衝撃を受ける可能性が高く、そのために放熱フィンの接着剤が剥がれて放熱機能が低下し、場合によっては内部に蓄積される高熱により機器の性能を損なう虞がある。
【0007】また、図11のCPU10のような半導体部品は、一般にパッケージ11を形成するモールド樹脂の熱抵抗が高く、かつその厚さがCPUを保護するために数百μmと厚いので熱抵抗がより一層高くなっている。このため、同図のように放熱板8を用いてパッケージ11上面から熱を逃がすだけの従来構造では、十分な放熱効果が得られない。これは、上記特開平3−182397号公報などに記載されるICカードについても、半導体素子のパッケージの一方の表面のみから熱を放散させようとする点で同様である。この種の小型半導体装置では、十分な熱対策を図ることが、高機能化・高性能化を促進する重要な要素である。
【0008】また、スリット構造による自然対流は、構造が簡単で装置全体が大型化しない利点はあるが、それだけでは放熱効果が低い。更に、特にICカードのような小型の民生機器にとっては、使用上重要な防塵・防水機能が低下するので好ましくない。
【0009】また、COB方式などによる表面実装において、サーマルビアホールによる放熱経路だけの構造では、十分な放熱効果は期待できない。しかも、サーマルビアホールの数を増やせば、それだけ内層の導体パターンの面積が減少するので、却って熱伝達効率が低下する。
【0010】また、その消費電流を少なくして発熱を抑制するために半導体素子を低電圧で動作させると、クロック周波数やアクセスタイムなどの半導体素子の特性が低下する虞があり、逆に半導体装置の高機能化及び性能の安定化を妨げるという問題がある。
【0011】そこで、本発明の半導体装置は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体装置自体を大型化することなく、また半導体素子の定格電圧を不必要に低下させて特性を低下させることなく、熱抵抗の小さい放熱経路を設けることによって、電子部品から発生した熱を効率的に外部に放散させることができ、それにより小型化、高機能化を図ることができる優れた放熱構造の半導体装置を提供することにある。
【0012】また本発明の半導体装置は、特にICカードのような小型の半導体装置に適した放熱構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述した目的を達成するためのものであり、以下にその内容を図面に示した実施例を用いて説明する。本発明の半導体装置は、所望の位置にサーマルビアホールを設けた基板と、該基板のサーマルビアホールを設けた位置に実装された電子部品と、基板の電子部品実装面と反対側に配置された放熱部材とからなり、前記サーマルビアホールを設けた位置において基板と放熱部材との間に高熱伝導性材料が配設されていることを特徴とする。
【0014】従って、電子部品から発生した熱は、サーマルビアホールを介して基板の電子部品実装面と反対側に伝達され、高熱伝導性材料から放熱部材に伝達されて放散させることができる。この放熱経路は、サーマルビアホールが金属で形成されて熱伝導率が高く、しかも電子部品の実装面から放熱部材まで熱の伝達距離が短くかつ断面積が大きいので、熱抵抗が小さく、効率よく放熱させることができる。特に、ベアチップの電子部品をボンディング剤で基板に表面実装した場合には、シリコンと金属間における熱伝達が良好であることから、熱抵抗がより小さい放熱経路が得られる。
【0015】高熱伝導性材料には、電気的絶縁性を有するものを使用すると、電子部品が放熱部材から電気的に絶縁されるため、静電気などの外来の電気的なサージが放熱部材に加えられても、電子部品には印加されないので、その誤動作や破壊などから保護することができる。半導体装置の組立作業の観点から、前記高熱伝導性材料が、柔軟性や半流動性のシリコンゴムなどであると、その形状が基板と放熱部材との間隔に応じて変形するので有利である。また、シート形状のものは、取扱いが容易なため、組立工程を簡単化することができる。
【0016】また、本発明によれば、高熱伝導性材料を基板と放熱部材との間で金属板を挟んで積層することができ、それらの間隙が比較的大きい場合でも、それに対応して上述した放熱経路を確保することができる。このとき、金属板を挟んで基板側の高熱伝導性材料に電気的絶縁性を有するものを使用すると、放熱部材との間で熱抵抗を小さく維持しつつ、電子部品を外来のサージなどから保護することができる。また、基板と放熱部材との間隔が両面実装などの理由で大きい場合に、放熱部材の基板側の面に突部を形成し、かつ該突部と基板との間に高熱伝導性材料を設けることによって、同様にサーマルビアホールを介して基板の裏面から放熱させる上述した熱抵抗の小さい放熱経路を確保することができる。ここで、基板を放熱部材の突部にねじ止めして固定すると、外部からの衝撃などによっても、基板と突部との間隔を狭く維持できるので、熱伝導グリースなどの油脂を高熱伝導性材料に使用できる。
【0017】前記基板が多層基板の場合には、サーマルビアホールを基板内層の導体パターンに接続するように形成することができ、電子部品からの熱の一部をサーマルビアホールから基板内層を介して外部に伝達する別の放熱経路が得られる。この放熱経路は、電子部品の信号線が基板表面に配線され、かつグランド層又は電源層が基板内層に設けられるようにすることによって、該基板の電子部品近傍の領域から、電源用又は接地用のスルーホールを残して、信号用のスルーホールを排除することができる。これによってスルーホールの存在による内層のグランド層又は電源層の面積減少を最小限に抑えることができ、効率よく放熱させることができる。特にCPUとASICと基板上に近接させて配置すると、これらの信号線を1対1対応で接続できるので、特に発熱量の大きいCPUの周囲から信号用のスルーホールを完全に排除することができる。
【0018】更に、基板が多層基板の場合には、基板表面に凹所を形成して該基板のグランド層を露出させ、該凹所にサーマルビアホールを形成し、かつグランド層が露出する凹所底面に電子部品をボンディング剤で接着する。これによりサーマルビアホールの長さが短くなるので、電子部品から放熱部材まで熱を伝達する距離が短くなり、より効率的に放熱が行われる。前記凹所は、その側面にも基板のグランド層が露出しているで、更に電子部品と凹所との隙間をボンディング剤で充填することによって、該ボンディング剤を介して電子部品から熱が基板のグランド層に直接伝達される。このような複数の放熱経路が組み合わされることによって、装置全体の放熱効果が一層向上する。
【0019】本発明の半導体装置は、前記基板を収容するケースを形成する金属部分を前記放熱部材とすることによって、表面積の大きいケースから直接大気中に熱を放散させることができ、熱抵抗が小さくより効率的な放熱が行われる。従って、小型の半導体装置であっても、従来の送風ファンや大きなヒートシンク又はヒートパイプを用いる必要がなく、装置の小型化と高機能化を同時に実現できる。更に、放熱部材又はケースの基板と反対側の面に凹凸部が一体的に形成されていると、その表面積即ち放熱面積を大幅に増大させることができ、それだけ放熱効果が増大する。
【0020】また、本発明によれば、前記ケースが金属製の上下1対のパネルとフレームとからなる薄いカード形状の箱体をなし、基板が両パネルの間に配置して収容された所謂ICカードに適用することができ、その一方のパネルを放熱部材としてケースから熱を放散させる。ICカードは、非常に小型かつ薄型で、内部に送風ファンやヒートシンクなどの特別の放熱手段を配置できないが、本発明のように構成することによって、熱抵抗が小さいかつ効率的な放熱経路が得られる。これにより、ICカードの高機能化が図られる。更に、基板の電子部品実装面側において、電子部品とケースとの間に高熱伝導性材料を配設することによって、電子部品からの熱が、基板の両側からケースに伝達されるので、より一層放熱の効率が高くなる。
【0021】
【発明の実施の形態】図1は、本発明を適用した所謂ICカードやメモリカード等と略同一のカード形状をなす半導体装置の好適実施例を示している。この半導体装置20はコンピュータの制御回路部を構成し、図2に併せて示すように、中央演算ユニット(CPU)21、メモリ22、受動素子23及び各種コントローラ24などの電子部品を搭載した基板25が金属ケース26内に収容されている。金属ケース26は、金属製のフレーム27及び上下パネル28、29からなり、該フレームの一方の側部に設けられたコネクタ30が、端子31を介して基板25の回路と電気的に接続されている。半導体装置20には、図2に示すように、前記コンピュータの入出力用にキーボードや表示装置などの各種周辺機器32が、コネクタ30を介して接続される。このような小型化されたカード型の半導体装置を各種情報機器などに組み込むことによって、機器全体の小型化、それによる可搬性、高機能化を同時に実現できる。
【0022】本実施例の半導体装置においては、消費電力が大きくそのために発熱量の大きいCPU21が、カード形金属ケース26の狭い空間に収容されているので、その特性の低下を防止するために、熱対策の一つとして放熱構造が非常に重要である。本実施例のCPU21は、図11のような樹脂封止されたパッケージ部品ではなく、図1に良く示すようにべアチップであり、COB方式により銀ペースト33で基板25表面に直接実装されている。CPU21の電極は、ボンディングワイヤ34で前記基板上の端子と接続され、かつこれら全体がモールド樹脂35で封止されている。また、CPU21の基板25へのマウントには、銀ペースト以外に、銅ペースト又ははんだのような従来から知られた熱伝導性の良いろう材又は接着剤などをボンディング剤として用いることができる。
【0023】基板25には、CPU21を実装する領域に多数のサーマルビアホール36が形成されている。サーマルビアホール36は、基板25に貫通する孔を形成しかつその内周面に金属をめっきしためっきスルーホールであり、通常の基板の製造工程において、特別な工程を追加することなく容易に形成することができる。また、サーマルビアホール36は、前記めっきスルーホールの中に樹脂を充填して穴埋めしても良く、又は基板25の貫通孔に銅ペーストなどの熱伝導性材料を充填して形成することもできる。
【0024】サーマルビアホール36を形成した領域の基板25の裏面と下パネル29との間には、熱伝導性の高い充填材37を配設する。本実施例では、サーマルビアホール36及び基板25裏面の電位が該基板の表面即ちCPU実装面と同電位であるので、CPU21を静電気等の外来サージから保護する観点からすれば、充填材37として電気的絶縁性を有する材料を使用し、基板25を金属製の下パネル29から電気的に絶縁することが好ましい。また、半導体装置20の組立作業を容易にするためには、充填材37は、柔軟性を有するもの、容易に変形可能なものやシート状のものが好ましい。このような材料として、例えば半流動性を有するシリコンゴム、シリコン樹脂や熱伝導グリースなどが好都合である。
【0025】本実施例の半導体装置20は、CPU21から発生する熱が、次の3つの主要な経路を介して放熱される。第1の経路は、熱がCPU21の下面から銀ペースト33及びサーマルビア36を介して基板25裏面の充填材37に、更に該充填材から下パネル29に伝達される。下パネル29に伝達された熱は、その大部分が該下パネル表面から直接大気中に放射され、かつ一部がフレーム27及びコネクタ30を介して外部に伝達される。第2の経路では、熱がCPU21の上面及び側面からモールド樹脂35を介して、かつその表面から金属ケース26内の空間に直接放射される。第3の経路では、CPU21からボンディングワイヤ34を介して基板25の配線パターンに伝達され、該配線パターンからフレーム27及び上下パネル28、29に伝達される。
【0026】前記第1の経路は、熱の伝達距離が比較的短くかつその断面積が大きく、前記銀ペースト及びサーマルビアホールが金属で熱伝達性に優れ、しかもベアチップであるCPU21のシリコン面と銀ペースト33の金属面との間は熱伝達率が高いので、熱抵抗の非常に小さい放熱経路である。これに対し、前記第2及び第3の経路は、上述した従来の放熱経路であり、前記第1の経路に比して熱抵抗が相当大きい。従って、本実施例では、CPU21から発生する熱の大部分が、前記第1の経路によって効率良く放熱され、従来の放熱ファン、ヒートシンク又はヒートパイプのような特別な放熱手段を用いることなく、装置内部の温度上昇を抑制した優れた放熱効果が得られるので、小型化を損なわずに高機能化を実現することができる。
【0027】図3は、図1の実施例に変形を加えた本発明による半導体装置の第2実施例を示している。本実施例の半導体装置は、下パネル29の外面が平坦ではなく、その略全面に亘って短い放熱フィンのような凹凸部38が形成されている点において、図1の第1実施例と異なる。このような凹凸部38を設けることによって、本実施例では、下パネル29外面の表面積を図1の場合より約3倍に増大させることができた。これにより、前記第1の経路における下パネル29の放熱面積を大幅に増大できるので、それだけより大きな放熱効果が得られる。
【0028】下パネル29は、亜鉛、アルミニウム、銅等の金属材料をプレス加工又は切削加工することにより、もしくはダイカスティングによって凹凸部38と一体に形成することができる。従って、前記ケースの組立作業において、従来の放熱フィンのような特別の取付工程を必要とせず、また組立後に外部からの衝撃等により凹凸部38が下パネル29から剥がれて放熱機能を損なう虞もない。また、別の実施例では、金属板をプレス加工することによって凹凸部を波形に形成することもできる。
【0029】図4には、本発明による半導体装置の第3実施例の要部が示されている。上記第1、第2実施例と同様に、サーマルビアホール36を設けた基板25の表面にCPU21のべアチップが銀ペースト33で接着されている。基板25の裏面には、前記銀ペーストのサーマルビアホール36からの漏出を防止するべくポリイミド樹脂フィルム39が貼着されているが、本発明の放熱構造において必ずしも必要な構成要素ではない。また当然ながら、サーマルビアホール36の内部が樹脂などで予め充填されている場合には、フィルム39を用いる必要がない。
【0030】上記第2実施例と同様に凹凸部38を形成した良好な熱伝導体である下パネル29とフィルム39又は基板25との間には、金属板40を挟んで上下に熱伝導率の高い充填材41、42が設けられている。金属板40には、銅、亜鉛、アルミニウムなどの高熱伝導材料を使用する。このように金属板40を挟んで充填材を積層することによって、基板25と下パネル29との間隔が大きい場合でも、それらの間を連続する熱伝達経路を確保することができる。また、前記間隔がより大きい場合には、更に別の金属板と充填材とを積層することもできる。
【0031】上側の充填材41は、図1の実施例に関連して説明したように、基板25を下パネル29から電気的に絶縁してCPU21を静電気等の外来サージから保護するために、電気的絶縁性を有するシリコンゴム、シリコン樹脂や熱伝導グリースなどの材料が好ましい。これに対して、下側の充填材42は、シリコンゴム、シリコン樹脂、熱伝導グリース又は接着剤の他に、下パネル29への熱の伝導を促進するために、はんだ、銀ペースト、銅ペーストなどのろう材を用いることができる。
【0032】本実施例では、CPU21及びボンディングワイヤ34を封止しているモールド樹脂35と上パネル28との間にも、熱伝導率の高い充填材43が配設されている。上パネル28の外面には、少なくとも充填材43と接する付近の領域に、下パネル29と同様に放熱フィンのような凹凸部44が一体に形成されている。充填材43には、シリコンゴム、シリコン樹脂、熱伝導グリース、接着剤、はんだ、銀ペースト、銅ペーストなどが用いられる。上パネル28は、下パネル29と同様に亜鉛、アルミニウム、銅などの金属材料をプレス加工、切削加工することにより、又はダイカスティングによって形成される。
【0033】本実施例の放熱経路は、上記第1、第2実施例と同様にサーマルビアホール36を介して基板25の裏面側から下パネルに至る第1の経路、モールド樹脂35を介して金属ケース内の空間に直接放熱する第2の経路、及びボンディングワイヤ34を介して基板25に熱伝達する第3の経路に加えて、モールド樹脂35から充填材43を介して上パネル28に熱伝達する第4の経路がある。第1の経路は、熱の伝達距離が第1、第2実施例に比して長くなっているが、熱抵抗が小さいので、CPU21から発生する熱の大部分を効率良く放熱させることができる。しかも、第4の放熱経路が付加されたことによって、装置全体としてより大きな放熱効果が得られる。
【0034】また、別の実施例では、上述した基板25と下パネル29間の充填材41、金属板40、充填材42からなる積層構造を、上パネル28と基板25との間にも適用することができる。即ち、基板25と上下パネル28、29との間隔などに応じて、モールド樹脂35と上パネル28との間に金属板を挟んで充填材を積層し、かつ基板25と下パネル29との間には充填材のみを介装して、図4の放熱構造とは上下逆の構成を採用したり、また、基板25と前記上下パネルとの間双方にそれぞれ金属板を挟んだ充填材の積層構造を設けることができる。
【0035】図5には、図4の第3実施例に変形を加えた本発明による半導体装置の第4実施例が示されている。第4実施例では、基板25がその裏面にも半導体部品45がCOB方式で実装される両面実装板であるため、該基板と下パネル29との間隔が比較的大きい。このため、下パネル29の内面に台形状の突部46を設け、かつその上面と前記基板との間に熱伝導率の高い充填材47を介装した点において、第4実施例は第3実施例と異なる。充填材47は、上記第1実施例の場合と同様に、シリコンゴムなどのような電気的絶縁性を有する材料が好ましい。
【0036】従って、本実施例における第1の放熱経路は、CPU21からの熱が銀ペースト33、サーマルビアホール36を介して充填材47から突部46に即ち下パネル29に直接伝達される。熱の伝達距離は、基板25と下パネル29との間隔が大きいことによってそれだけ長くなるが、突部46は下パネル29と一体に形成されているので、熱抵抗は小さく、第3実施例のように充填材を介在させる場合よりも効率よく熱伝達が行われ、大きな放熱効果が得られる。
【0037】別の実施例では、基板25の裏面に実装された半導体部品45についても、これを封止するモールド樹脂48と下パネル29との間に充填材を設け、かつ/又は基板25にサーマルビアホールを設けて上パネル28との間に充填材を介装することによって、同様に半導体部品45から発生する熱の一部を前記上下パネルの一方又は双方から逃がすことができる。これにより、半導体装置全体としてより一層放熱効果を高めることができる。
【0038】図6は、図5の第4実施例の変形例を示している。この変形例では、突部46の外面に凹み49が設けられ、かつその中に放熱フィンのような凹凸部50が一体的に形成されている。凹凸部50は、金属ケースを厚さ方向に大きくすることなく、その表面積を最大にするように、その先端が下パネルの29の下面と同一平面をなすように設計されている。従って、装置全体の厚さを維持したまま、上記第4実施例の優れた作用効果をそのまま維持して高い放熱効果を得ることができる。
【0039】図7は、図5の第4実施例の別の変形例を示している。本実施例は、突部46が大きく形成され、かつ基板25が該突部上面に、その間に充填材51を挟装してねじ52で固定されている点で、第4実施例と異なる。これにより、充填材51に半流動性の材料を用いても外部からの衝撃などによって前記基板と突部との間隔や位置がずれる虞が無いので、熱伝導率の高い熱伝導グリースのような充填材を用いることが容易になる。また、図7の実施例では、基板25下面と突部46上面との間隔に応じて、フィルム39又は充填材51のいずれか一方のみを用いることが可能である。この場合には、熱の伝達距離が更に短くなり、熱伝導が効率よく行われるので、放熱効果が高められる。
【0040】図8には、本発明による半導体装置の第5実施例が示されている。本実施例では、基板25が多層基板で、その表裏面及び内層にグランド層53〜56及び電源層57が設けられている。基板25の表面には、内層のグランド層55を露出させるように、CPU21を実装するための凹所58が形設されている。凹所58の側面には、基板表面のグランド層53及び内層のグランド層54の断面がそれぞれ露出している。凹所58の底面には、上記各実施例と同様の多数のサーマルビアホール59が形成されている。前記サーマルビアホールは、基板25裏面に貼着したポリイミド樹脂のフィルム39で閉塞されている。
【0041】ベアチップのCPU21は、凹所58底面のグランド層55にボンディング剤60で直接接着され、かつボンディングワイヤ34で基板25表面の端子と電気的に接続されている。ボンディング剤60には、銀ペースト、銅ペースト又ははんだのような熱伝導率の高いろう剤を使用する。ボンディング剤60は、CPU21外周と凹所58側面との間を完全に埋めるように、その隙間に充填する。前記CPU及びボンディングワイヤの上には、従来と同様にポッティング剤が被覆される。これにより、CPU21の上面を除く4つの側面及び下面が、ボンディング剤60を介して前記基板の各グランド層又は電源層と低い熱抵抗で熱伝達可能に接続される。また、フィルム39を貼着した前記基板裏面と下パネル29との間には、充填材61が設けられている。充填材61は、上記第1実施例と同様に電気的絶縁性を有すると好都合である。
【0042】本実施例において、前記CPUから発生した熱は、ボンディング剤60及びグランド層56からサーマルビアホール59、充填材61を介して下パネル29に伝達される第1の経路、及びボンディングワイヤ34を介して基板25の配線パターンに伝達される第2の経路に加えて、CPU21の上面を除く各面からボンディング剤60を介して前記基板のグランド層及び電源層に伝達される第3の経路によって放熱される。本実施例の第1の経路は、サーマルビアホール59が基板25の厚さよりも短いので、上記各実施例と比較して熱の伝達距離が短く、熱抵抗がより小さくなっている。更に第3の経路は、ボンディングワイヤ34を介する第2の経路より効率良く熱が伝達するので、全体として放熱効果をより一層向上させることができる。
【0043】図9には、本発明による半導体装置の第6実施例が示されている。本実施例では、CPU21と接続されるASIC62が該CPUの近傍に配置されている。CPU21は、第1実施例と同じくCOB方式で表面実装され、かつサーマルビア36及び充填材37を介して下パネル29と熱伝達可能に接続されている。ASIC62は、前記CPUと同様にCOB方式により銀ペースト63で基板25表面に接着され、かつボンディングワイヤ64で前記基板上の配線パターンと接続されている。基板25は、ASIC62の下側にも多数のサーマルビアホール65が形成されると共に、下パネル29との間に熱伝導率の高い充填材66が設けられている。基板25は多層基板であり、内層及び裏面にグランド層67、68や電源層が設けられている。
【0044】図9Aに良く示されるように、CPU21の各信号線69は、基板25表面に配線されて1対1対応でASIC62と結線されている。これにより、基板25は、前記CPU近傍の領域から信号用ビアホールの全部又は大部分が排除され、グランド層又は電源層と接続するためのビアホールからなる最少限のビアホールが形成されることになる。従って、前記グランド層及び電源層は、その平面内を貫通するビアホールの数が従来より少なくなり、従来より広い面積及び連続した平面を確保することができるので、熱がグランド層及び電源層を介してより効率良く伝達される。本実施例によれば、サーマルビアホール36、65を介して下パネル29に放熱する第1の経路に加えて、ボンディングワイヤ34、64及びサーマルビアホール36、65から前記グランド層、電源層に熱伝達する放熱経路の熱伝達効率が改善されるので、装置全体として放熱効果が向上する。
【0045】以上、本発明の好適実施例について詳細に説明したが、本発明はその技術的範囲内で上記実施例に様々な変形・変更を加えて実施することかできる。例えば、図8に示す第5実施例の基板は、他の各実施例の基板に適用することができ、それによってより高い放熱効果が得られる。また、上記各実施例は、主にICカードについて説明したが、ノートブック型の小型コンピュータや電子手帳など、様々な用途、機能の半導体装置に同様に適用することができる。更に、特に発熱量の多い電子部品としてCPUの放熱経路を中心に説明したが、熱を発生する他の半導体部品、その他の電子部品についても同様に適用することができる。
【0046】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。本発明の半導体装置によれば、基板のサーマルビアホールを設けた位置に電子部品を実装し、該サーマルビアホールを介して電子部品から出る熱をその実装面と反対側から放熱部材に、基板との間に充填された高熱伝導性材料を介して伝達することによって、熱の伝達距離が短くかつ断面積が大きく、従って熱抵抗の小さい放熱経路が得られ、効率の良い放熱が可能になる。特に本発明によれば、ICカードのような小型の半導体装置に適用できるので、装置の小型化と高機能化を同時に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したICカード型の半導体装置の実施例を示す断面図である。
【図2】図1の半導体装置の機能ブロック図である。
【図3】図1の変形例である本発明の第2実施例を示す図1と同様の断面図である。
【図4】本発明の第3実施例を示す要部断面図である。
【図5】本発明の第4実施例を示す要部断面図である。
【図6】図5の変形例を示す要部断面図である。
【図7】図5の別の変形例を示す要部断面図である。
【図8】本発明の第5実施例を示す要部断面図である。
【図9】A図は本発明の第6変形例を示す平面図、B図はその断面図である。
【図10】従来の放熱フィンを用いた放熱構造を示す断面図である。
【図11】従来の放熱板を用いたノートブック型コンピュータを示す断面図である。
【符号の説明】
1 放熱フィン
2 回路基板
3 半導体チップ
4 樹脂パッケージ
5 接着剤
6 小型コンピュータ
7 ケース
8 放熱板
9 回路基板
10 CPU
11 パッケージ
12、13 ボンディングワイヤ
14、15 アウタリード
16、17 配線パターン
20 半導体装置
21 中央演算ユニット(CPU)
22 メモリ
23 受動素子
24 コントローラ
25 基板
26 金属ケース
27 フレーム
28 上パネル
29 下パネル
30 コネクタ
31 端子
32 周辺機器
33 銀ペースト
34 ボンディングワイヤ
35 モールド樹脂
36 サーマルビアホール
37 充填材
38 凹凸部
39 フィルム
40 金属板
41〜43 充填材
44 凹凸部
45 半導体部品
46 突部
47 充填材
48 モールド樹脂
49 凹み
50 凹凸部
51 充填材
52 ねじ
53〜56 グランド層
57 電源層
58 凹所
59 サーマルビアホール
60 ボンディング剤
61 充填材
62 ASIC
63 銀ペースト
64 ボンディングワイヤ
65 サーマルビアホール
66 充填材
67、68 グランド層
69 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所望の位置にサーマルビアホールを設けた基板と、前記基板の前記サーマルビアホールを設けた位置に実装された電子部品と、前記基板の電子部品実装面と反対側に配置された放熱部材とからなり、前記サーマルビアホールを設けた位置において前記基板と前記放熱部材との間に高熱伝導性材料が配設されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 前記電子部品がベアチップであり、前記基板にボンディング剤で表面実装されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】 前記高熱伝導性材料が電気的絶縁性を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】 前記高熱伝導性材料が半流動性のシリコンゴムであることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】 前記高熱伝導性材料がシート形状をなすことを特徴とする請求項1又は3記載の半導体装置。
【請求項6】 前記高熱伝導性材料が金属板を挟んで積層されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】 前記金属板を挟んで前記基板側の前記高熱伝導性材料が電気的絶縁性を有することを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】 前記放熱部材の前記基板側の面に突部が形成され、かつ前記突部と前記基板との間に前記高熱伝導性材料が配設されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】 前記基板が前記放熱部材の前記突部にねじ止めされていることを特徴とする請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】 前記基板が多層基板であり、かつ前記サーマルビアホールが前記基板の内層の導体パターンに接続されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】 前記電子部品の信号線が前記基板の表面に配線され、かつグランド層又は電源層が前記基板の内層に設けられていることを特徴とする請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】 前記電子部品が前記基板の同一面に互いに近接して実装されたCPUとASICとであり、かつ前記CPU及びASICの信号線が前記基板表面で互いに1対1対応で接続されていることを特徴とする請求項11記載の半導体装置。
【請求項13】 前記基板の表面に凹所が、前記基板のグランド層を露出させるように形成され、前記サーマルビアホールが前記凹所に形成され、かつ前記電子部品が前記凹所底面に露出する前記グランド層上にボンディング剤で接着されることを特徴とする請求項10記載の半導体装置。
【請求項14】 前記電子部品と前記凹所との隙間を前記ボンディング剤で充填することを特徴とする請求項13記載の半導体装置。
【請求項15】 前記放熱部材が前記基板を収容するケースを形成する金属部分であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項16】 前記放熱部材の前記基板と反対側の面に凹凸部が一体的に形成されていることを特徴とする請求項1又は15記載の半導体装置。
【請求項17】 前記ケースが金属製の上下1対のパネルとフレームとからなる薄いカード形状の箱体をなし、前記基板が前記パネルの間に配置され、かつ前記放熱部材が一方の前記パネルであることを特徴とする請求項15記載の半導体装置。
【請求項18】 前記基板の前記電子部品実装面側において、前記電子部品と前記ケースとの間に高熱伝導性材料を配設したことを特徴とする請求項15又は17記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開平9−55459
【公開日】平成9年(1997)2月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−162518
【出願日】平成8年(1996)6月4日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)