説明

半導体製造工程用テープの基材フィルム

【課題】 半導体製造工程用テープの基材フィルムを提供する。
【解決手段】半導体製造工程用テープの基材フィルムであって、
A)エチレン及び(メタ)アクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂、並びに
B)エチレン、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合体の構成成分とする3元共重合体
を含むものからなり、前記成分B)の使用量が、成分A)+B)の総量に基づき、5質量%以上であり且つ50質量%以下の範囲である基材フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハをチップ状にダイシングする際、該半導体ウエハを固定するために用いる半導体製造工程用テープの基材フィルムに関するものであり、詳細には、ダイシング特性、エキスパンド性、柔軟性、耐熱性及び成形性に優れる、2元共重合体のアイオノマー樹脂及び3元共重合体の2成分を含む基材フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウム、砒素などの半導体ウエハは大径の状態で製造された後、パターンが形成され、素子小片に切断分離(ダイシング)されるが、この際、半導体ウエハを固定するために、主に、ウエハを固定する粘着剤層と基材フィルムから構成される半導体製造工程用テープが使用される。
ダイシングされた素子小片は、その後、ピックアップ工程を容易に行うために半導体製造工程用テープを縦横方向に均一に拡張(エキスパンド)して、素子小片の間隔を均一に広げる工程に付されることになるが、半導体製造工程用テープは、これらの工程において、高温にさらされる可能性がある。
上記のこと等から、半導体製造工程用テープに用いる基材フィルムは、基材フィルム成形時において良好な成形性を有すること、耐熱性を有すること、良好な柔軟性を有し且つ縦横方向に均一に拡張する性能(エキスパンド性)を有すること等の性能が要求される。
また、ダイシング工程は、一般に、回転しながら移動する丸刃によってウエハの切断を行うものであるが、その際、半導体製造工程の省力化と半導体品質の向上を目的として、半導体ウエハを保持する半導体製造工程用テープの基材内部まで切り込みを行うフルカットと呼ばれる切断方式が、現在の主流となってきている。しかし、該切断方式は、テープの内部まで切り込みを行う結果として、該テープが溶融・延伸されて糸状となった切削屑が発生し、該屑が素子小片に付着して半導体素子の信頼性を低下させたり、ピックアップ工程の際に認識エラーを引き起こすという新たな問題を生じている。
特許文献1(特開平09−008111号公報(特許第3845129号))には、フルカットダイジング方法においても切削屑の半導体ウエハ表面への残留を防止しうるウエハ固定用粘着テープとして、樹脂層B(基材フィルム)が主に、エチレン、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合体の構成成分とする、3元共重合体であるウエハ固定用粘着テープ並びに前記3元共重合体を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂を樹脂層B(基材フィルム)の主成分とするウエハ固定用粘着テープを開示する。
一方、引用文献2(特開2008−235716号公報)には、レーザー光による捺印加工部における硬化樹脂表面のレーザーアッシュを剥離することなく、捺印加工の視認性悪化を生じることのない半導体デバイス加工用粘着テープの基材として、エチレン及びアクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂を用いることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−008111号公報(特許第3845129号)
【特許文献2】特開2008−235716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の、エチレン、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合体の構成成分とする3元共重合体を主成分とするウエハ固定用粘着テープ
の基材フィルムは、確かに、糸状屑のような切削屑が残留せず、良好なダイシング特性を有するものであり、加えて、基材フィルム成形時において良好な成形性を有し、耐熱性を有し、良好な柔軟性を有するものであったが、エキスパンド性、即ち、縦横方向に均一に拡張する性能が不十分であった。
また、前記3元共重合体を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂を主成分とするウエハ固定用粘着テープの基材フィルムは、良好なダイシング特性を有し、耐熱性を有し、良好な柔軟性を有するものであったが、成形性が不十分で、基材フィルムの成形時にアイオノマー樹脂の吐出が安定しなかったり、タック性があるために成形してロール状に巻き取った際にフィルム同士が付着し解反性が損なわれる不具合が観察され、また、エキスパンド性も必ずしも十分なものではない場合があった。
【0005】
従って、本発明は、上記の問題点を解消する、即ち、ダイシング特性、エキスパンド性、柔軟性、耐熱性及び成形性に優れる、半導体製造工程用テープの基材フィルムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、例えば、引用文献2(本発明とはその用途・目的において異なる)に記載されるような、エチレン及び(メタ)アクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂からなる基材フィルムが、柔軟性には乏しいものの、ダイシング特性、エキスパンド性、耐熱性及び成形性に優れることを見出した。
そして、本発明者等は、前記2元共重合体のアイオノマー樹脂の優れた性能を維持したまま、柔軟性を付与し得る基材フィルムの構成につき鋭意検討した結果、前記2元共重合体のアイオノマー樹脂に、特定の構成成分から構成される3元共重合体を特定の割合で添加することにより、柔軟性が改善でき、結果として、該2成分を含む基材フィルムが、ダイシング特性、エキスパンド性、柔軟性、耐熱性及び成形性に優れる基材フィルムとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)半導体製造工程用テープの基材フィルムであって、
A)エチレン及び(メタ)アクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂、並びに
B)エチレン、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合体の構成成分とする3元共重合体
を含むものからなり、前記成分B)の使用量が、成分A)+B)の総量に基づき、5質量%以上であり且つ50質量%以下の範囲である基材フィルム、
(2)前記成分A)に使用される金属イオンが亜鉛イオンである前記(1)記載の基材フィルム、
(3)前記成分B)の3元共重合体の酸含有量が3ないし14質量%である前記(1)又は(2)記載の基材フィルム、
(4)前記成分A)、B)に加え、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤を、成分A)+B)の総量に基づき、1ないし20質量%となる量で含む前記(1)ないし(3)の何れか1つに記載の基材フィルム、
(5)粘着剤層が形成される面とは反対側の面の平均表面粗さ(Ra)が0.5ないし2μmである前記(1)ないし(4)の何れか1つに記載の基材フィルム、
(6)照射線量10ないし300KGyで電子線が照射された前記(1)ないし(5)の何れか1つに記載の基材フィルム、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ダイシング特性、エキスパンド性、柔軟性、耐熱性及び成形性に優れる
半導体製造工程用テープの基材フィルムが提供される。
加えて、本発明の半導体製造工程用テープの基材フィルムは、汎用の樹脂を使用するものであるため、コスト的にも有利である。
そのため、本発明の半導体製造工程用テープの基材フィルムは、精密電気部品の保護や半導体製造工程に使用する粘着テープなどの基材フィルムとしても、有利に使用することができる。
また、本発明の基材フィルムは、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤を添加することにより、帯電防止機能を付与することができ、また、特定の照射線量で電子線を照射することにより、耐熱性を向上させることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明の、半導体製造工程用テープの基材フィルムは、
A)エチレン及び(メタ)アクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂、並びに
B)エチレン、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合体の構成成分とする3元共重合体
を含むものからなり、前記成分B)の使用量が、成分A)+B)の総量に基づき、5質量%以上であり且つ50質量%以下の範囲となるものである。
【0010】
成分A)のアイオノマー樹脂に使用可能な金属イオンとしては、カリウムイオン(K+)、ナトリウムイオン(Na+)、リチウムイオン(Li+)、マグネシウムイオン(Mg++)、亜鉛イオン(Zn++)等が挙げられるが、この中で、亜鉛イオン(Zn++)は、架橋構造を安定化させ、それにより、ダイシング屑を出難くするという点で好ましい。尚、2元共重合体のカルボキシル基における陽イオンによる中和度は、好ましくは40〜75mol%である。
また、成分A)のアイオノマー樹脂の粘度(MFR)は、測定法としてJIS K 7210を用いた場合、5.5kg/10分以下であるのが好ましく、例えば、0.5ないし5.5kg/10分の範囲であるのが好ましい。
また、成分A)における2元共重合体の酸含有量は、測定方法としてFT−IR法を用いた場合に、3ないし12質量%となる量が好ましい。
成分A)のエチレン及び(メタ)アクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂は、合成することにより得られるものを使用してもよいが、市販のものを用いることもできる。
本発明に使用し得る市販の成分A)のアイオノマー樹脂としては、ハイミラン(登録商標) 1650、1601、MK−400、1705、1706(三井・デュポンポリケミカル社製)等が挙げられる。
【0011】
成分B)の3元共重合体における、好ましいエチレン成分の含有量は、3元共重合体の質量に基づき、50〜90質量%の範囲であり、好ましい(メタ)アクリル酸成分の含有量は、3元共重合体の質量に基づき、5〜20質量%の範囲であり、好ましい(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分の含有量は、3元共重合体の質量に基づき、5〜30質量%の範囲である。
また、成分B)の3元共重合体における酸含有量は、測定方法としてFT−IR法を用いた場合に、3ないし14質量%となる量が好ましい。
また、成分B)の3元共重合体の粘度(MFR)は、測定法としてJIS K 7210を用いた場合、例えば、5kg/10分ないし15kg/10分の範囲が挙げられ、8ないし12kg/10分の範囲であるのが好ましい。
【0012】
成分B)の3元共重合体に使用し得る(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、
炭素原子数が3以上8以下であるアルキルエステルが好ましく用いられ、具体的には、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−エチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチルブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルブチル、(メタ)アクリル酸2−メチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸1,2−ジメチルブチル等が挙げられる。
成分B)の3元共重合体は、合成することにより得られるものを使用してもよいが、市販のものを用いることもできる。
本発明に使用し得る市販の成分B)の3元共重合体としては、ニュクレル AN4213C、AN4231C、AN4217−3C(三井・デュポンポリケミカル社製)等が挙げられる。
【0013】
前記成分B)の使用量は、成分A)+B)の総量に基づき、5質量%以上であり且つ50質量%以下の範囲である。
成分B)の使用量が、5質量%未満になると、成形された基材フィルムの柔軟性が乏しいものとなり、逆に、50質量%を超えると、エキスパンド性が劣るため好ましくない。
【0014】
本発明の基材フィルムは、帯電防止機能を付与するために、更に、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤を添加することができる。
ポリエーテル系高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、エチレンオキシド−エピハロヒドリン共重合体、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体などであり、例えば、日本ゼオン(株)のゼオスパンや、三洋化成(株)のペレスタットなどが挙げられる。
ポリエーテル系高分子型帯電防止剤を使用する場合の配合量は、使用するポリエーテル系高分子型帯電防止剤の種類により異なるが、成分A)+B)の総量に基づき、1ないし20質量%となる量とするのがよい。
ポリエーテル系高分子型帯電防止剤の配合量が1質量%未満であると所望の帯電防止効果を確保することができず、また20質量%を超えて添加しても、それ以上の帯電防止効果が得られず、かえってコスト高となる。
【0015】
基材フィルムの成形は、フィルム形成に用いる慣用の方法を採用することができ、例えば、成分A)、B)及び必要により他の成分を加え、押出機を使用して押出加工することにより、基材フィルムを製造することができる。
製造する基材フィルムの厚さとしては、通常30〜300μmの範囲を採用することができ、好ましくは50〜200μmの範囲である。
上記においては、粘着剤層が形成される面とは反対側の面の平均表面粗さ(Ra)が0.5ないし2μmとなるように基材フィルムを形成するのが好ましい。
上記のような平均表面粗さを有することにより、ダイシング後のエキスパンド工程における基材フィルムの拡張を容易にすることができる。
【0016】
本発明の基材フィルムはまた、上記で成形したフィルムに電子線を照射することにより、更に耐熱性を向上させることもできる。
電子線の照射条件としては、加速電圧150〜300mV、電子流450〜500mAにおいて、照射線量10ないし300KGyとするのが好ましい。
照射量が10KGy未満であると、照射効果が得られず、照射量が300KGyを超えると、基材フィルムの柔軟性が低下すると共に、基材フィルム自体が劣化してしまい好ましくない。
【0017】
尚、半導体製造工程用テープは、本発明の基材フィルムの上面に粘着剤層を形成するこ
とにより製造することができる。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、従来公知の粘着剤の中から適宜選択して用いることができる。例えば天然ゴムや合成ゴム等を用いたゴム系粘着剤、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アルキルエステルと他のモノマーとの共重合体等を用いたアクリル系粘着剤、その他ポリウレタン系粘着剤やポリエステル系粘着剤やポリカーボネート系粘着剤などの適宜な粘着剤を用いることができ、紫外線等のエネルギー線で硬化処理するようにしたものなどであってもよい。
粘着剤層の形成は、既知の形成方法、例えば、粘着剤を塗布又は印刷することにより達成することができる。
粘着剤層の厚さは8〜35μmとすることが好ましく、より好ましくは10〜25μm程度である。
【0018】
上記のようにして製造された半導体製造工程用テープの基材フィルムは、半導体製造工程用テープに使用した際、優れたダイシング特性、エキスパンド性、柔軟性、耐熱性及び成形性を奏するものであり、また、汎用の樹脂を使用し、容易に製造できるものであるため、経済性にも優れている。
以上のことから、本発明の基材フィルムは、精密電気部品の保護や半導体製造工程に使用する粘着テープなどの基材フィルムとしての使用において非常に有利なものといえる。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<基材フィルムの製造>
実施例1
酸含有量12質量%、MFR1.5、融点96℃のエチレン−メタクリル酸2元共重合体−Zn++−アイオノマー樹脂(陽イオンによる中和度70mol%)(三井・デュポンポリケミカル社製、ハイミラン1650)80質量部と、酸含有量11質量%、MFR10、融点88℃のエチレン−メタクリル酸−(アクリル酸2−メチル−プロピル)3元共重合体樹脂(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルAN4213C)20質量部との2成分の混合物を、押出機を使用して厚さ100μmの基材フィルムを製造した。
【0020】
実施例2
上記2元共重合体のアイオノマー樹脂(ハイミラン1650)の使用量を70質量部とし、上記3元共重合体樹脂(ニュクレルAN4213C)の使用量を30質量部とした以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを製造した。
【0021】
実施例3
上記2元共重合体のアイオノマー樹脂(ハイミラン1650)の使用量を95質量部とし、上記3元共重合体樹脂(ニュクレルAN4213C)の使用量を5質量部とした以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを製造した。
【0022】
実施例4
上記2元共重合体のアイオノマー樹脂(ハイミラン1650)の使用量を50質量部とし、上記3元共重合体樹脂(ニュクレルAN4213C)の使用量を50質量部とした以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを製造した。
【0023】
実施例5
上記2元共重合体のアイオノマー樹脂(ハイミラン1650)の代わりに、酸含有量10質量%、MFR1.3、融点97℃のエチレン−メタクリル酸2元共重合体−Na+−アイオノマー樹脂(陽イオンによる中和度50mol%)(三井・デュポンポリケミカル
社製、ハイミラン1601)を用いた以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを製造した。
【0024】
実施例6
上記2元共重合体のアイオノマー樹脂(ハイミラン1650)の代わりに、エチレン−メタクリル酸2元共重合体−K+−アイオノマー樹脂(三井・デュポンポリケミカル社製、ハイミランMK400)を用いた以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを製造した。
【0025】
実施例7
上記2元共重合体のアイオノマー樹脂(ハイミラン1650)の代わりに、酸含有量15質量%、MFR0.9、融点88℃のエチレン−メタクリル酸2元共重合体−Zn++−アイオノマー樹脂(陽イオンによる中和度60mol%)(三井・デュポンポリケミカル社製、ハイミラン1706)を使用した以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを製造した。
【0026】
実施例8
上記3元共重合体樹脂(ニュクレルAN4213C)の代わりに、酸含有量12質量%、MFR10、融点96℃のエチレン−メタクリル酸−(アクリル酸2−メチル−プロピル)3元共重合体樹脂(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルAN4231C)を使用した以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを製造した。
【0027】
比較例1
上記3元共重合体樹脂(ニュクレルAN4213C)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを製造した。
【0028】
比較例2
上記2元共重合体のアイオノマー樹脂(ハイミラン1650)の使用量を40質量部とし、上記3元共重合体樹脂(ニュクレルAN4213C)の使用量を60質量部とした以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを製造した。
【0029】
比較例3
上記3元共重合体樹脂(ニュクレルAN4213C)の代わりに、酸含有量9質量%、MFR3、融点99℃のエチレン−メタクリル酸2元共重合体樹脂(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルN0903C)を使用した以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを製造した。
【0030】
比較例4
上記2元共重合体のアイオノマー樹脂(ハイミラン1650)の代わりに、酸含有量10質量%、MFR1.0、融点86℃のエチレン−メタクリル酸−(アクリル酸2−メチル−プロピル)3元共重合体−Zn++−アイオノマー樹脂(陽イオンによる中和度60mol%)(三井・デュポンポリケミカル社製、ハイミラン1855)を使用した以外は、実施例1と同様にして基材フィルムを製造した。
【0031】
試験例1
実施例1〜8及び比較例1〜4で製造した基材フィルムのダイシング特性、エキスパンド性、柔軟性、耐熱性及び成形性を評価して表1に示した。
尚、評価方法及び評価基準は以下に示した通りである。
また、表1中の、AないしHは、以下の樹脂を意味する。
A:酸含有量12質量%、MFR1.5、融点96℃のエチレン−メタクリル酸2元共重
合体−Zn++−アイオノマー樹脂(陽イオンによる中和度70mol%)(三井・デュポンポリケミカル社製、ハイミラン1650)
B:酸含有量10質量%、MFR1.3、融点97℃のエチレン−メタクリル酸2元共重合体−Na+−アイオノマー樹脂(陽イオンによる中和度50mol%)(三井・デュポンポリケミカル社製、ハイミラン1601)
C:エチレン−メタクリル酸2元共重合体−K+−アイオノマー樹脂(三井・デュポンポリケミカル社製、ハイミランMK400)
D:酸含有量15質量%、MFR0.9、融点88℃のエチレン−メタクリル酸2元共重合体−Zn++−アイオノマー樹脂(陽イオンによる中和度60mol%)(三井・デュポンポリケミカル社製、ハイミラン1706)
E:酸含有量10質量%、MFR1.0、融点86℃のエチレン−メタクリル酸−(アクリル酸2−メチル−プロピル)3元共重合体−Zn++−アイオノマー樹脂(陽イオンによる中和度60mol%)(三井・デュポンポリケミカル社製、ハイミラン1855)
F:酸含有量11質量%、MFR10、融点88℃のエチレン−メタクリル酸−(アクリル酸2−メチル−プロピル)3元共重合体樹脂(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルAN4213C)
G:酸含有量12質量%、MFR10、融点96℃のエチレン−メタクリル酸−(アクリル酸2−メチル−プロピル)3元共重合体樹脂(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルAN4231C)
H:酸含有量9質量%、MFR3、融点99℃のエチレン−メタクリル酸2元共重合体樹脂(三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレルN0903C)
【0032】
評価方法・評価基準
<ダイシング特性>
ダイシングブレードを使用し、回転数45000rpm、カットスピード100m/秒で裁断した際の切削屑の有無を評価した。
・切削屑無し ○
・長さ100μm未満の切削屑が有り △
・長さ100μm以上の切削屑が有り ×
<エキスパンド性>
25%延伸時における縦と横の荷重の比を測定した。
・縦と横の荷重の比(TD/MD)が80〜100%の範囲内 ○
・縦と横の荷重の比(TD/MD)が60〜80%未満 △
・縦と横の荷重の比(TD/MD)が60%未満 ×
<柔軟性>
JIS K 6732に準じて試験をおこなった。
・25%延伸時の応力が15MPa未満 ○
・25%延伸時の応力が15MPa以上25MPa未満 △
・25%延伸時の応力が25MPa以上 ×
<耐熱性>
幅15mm×標線10mm×5g荷重で、120℃のオーブンに15分間吊るして、状態を観察した。
・伸びきらなかった ○
・伸びきった ×
<成形性>
基材フィルム成形時におけるロール剥離性を評価した。
・良好なロール剥離性を示した ○
・良好なロール剥離性を示さなかった ×
【0033】
【表1】

【0034】
結果:
A)エチレン−(メタ)アクリル酸2元共重合体のアイオノマー樹脂及び
B)エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル3元共重合体の2成分からなり、前記成分B)の使用量が、成分A)+B)の総量に基づき、5質量%以上であり且つ50質量%以下の範囲である実施例1ないし4及び8の基材フィルムは、何れも、優れたダイシング特性、エキスパンド性、柔軟性、耐熱性及び成形性を示したが、架橋金属イオンがNa+であるアイオノマー樹脂を用いる実施例5及び架橋金属イオンがK+であるアイオノマー樹脂を用いる実施例6では、ダイシング特性が多少低下する傾向が観られ、また、架橋金属イオンがZn++であるものの、酸含有量が15質量%であるアイオノマー樹脂を用いる実施例7では、柔軟性が多少低下する傾向が観られた。
一方、成分B)エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル3元共重合体を用いなかった比較例1の基材フィルムは柔軟性が不十分であった。
また、上記成分B)の使用量が、5質量%以上であり且つ50質量%以下の範囲外である、60質量%となる比較例2の基材フィルムはエキスパンド性が不十分であった。
また、上記成分B)のエチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル3元共重合体の代わりに、エチレン−メタクリル酸2元共重合体を用いた比較例3の基材フィルムは柔軟性が不十分であった。
また、成分A)のエチレン−(メタ)アクリル酸2元共重合体のアイオノマー樹脂の代わりに、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル3元共重合体のアイオノマー樹脂を用いた比較例4の基材フィルムは成形性が不十分であり、また、エキスパンド性も多少低下する傾向が観られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造工程用テープの基材フィルムであって、
A)エチレン及び(メタ)アクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂、並びに
B)エチレン、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合体の構成成分とする3元共重合体
を含むものからなり、前記成分B)の使用量が、成分A)+B)の総量に基づき、5質量%以上であり且つ50質量%以下の範囲である基材フィルム。
【請求項2】
前記成分A)に使用される金属イオンが亜鉛イオンである請求項1記載の基材フィルム。
【請求項3】
前記成分B)の3元共重合体の酸含有量が3ないし14質量%である請求項1又は2記載の基材フィルム。
【請求項4】
前記成分A)、B)に加え、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤を、成分A)+B)の総量に基づき、1ないし20質量%となる量で含む請求項1ないし3の何れか1項に記載の基材フィルム。
【請求項5】
粘着剤層が形成される面とは反対側の面の平均表面粗さ(Ra)が0.5ないし2μmである請求項1ないし4の何れか1項に記載の基材フィルム。
【請求項6】
照射線量10ないし300KGyで電子線が照射された請求項1ないし5の何れか1項に記載の基材フィルム。

【公開番号】特開2012−89732(P2012−89732A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236363(P2010−236363)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】