説明

半導体製造装置用部材

【課題】成分汚染が生じ難く、それと共に半導体製造装置におけるパーティクルの発生を十分に減少させることのできる半導体製造装置用部材を提供する。
【解決手段】搬送アーム1の載置部材16にセラミックを溶射して溶射皮膜を形成し、この溶射皮膜にレーザービームを照射して、セラミック組成物を再溶融、再凝固させて変成させたセラミック再結晶物からなる高強度セラミック層5を形成し、半導体製造装置50における外的要因により、載置部材16から脱落する粒子を、半導体製造プロセスに影響を与えない程度に低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置に組み込まれる各種の部材に関し、コーティングしたセラミック溶射皮膜を再溶融、再凝固させることで表層の機械的強度を向上させた半導体製造装置用部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造に関わる装置は、エッチング装置、CVD装置、PVD装置、レジスト塗布装置、露光装置等、多岐に渡っており、これら各種の装置で生じるパーティクルの存在は、製品の品質や歩留まりに影響することから、当該パーティクルを減少させることが必須とされている。また、半導体製造プロセスは微細化の一途をたどっており、これまで挙げられていなかったような微細なサイズのパーティクルの発生が問題視されている。
【0003】
パーティクルの発生源には様々なものがあり、半導体製造装置を構成する各種の半導体製造装置用部材におけるウェハとの接触面で発生するものがある。例えば、エッチング装置においてウェハを保持する静電チャックの表面に発生したパーティクルがあり、これはウェハの裏面に付着するバックサイドパーティクルとなる。このようなパーティクルを減少させるものとして、チャック表面をエンボス加工することで同表面に複数の突起部を形成し、その複数の突起部のエッジをアール状とした静電チャックが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献2では、ウェハを搬送するための搬送アームにおいてウェハと接触する部分をセラミックス焼結材で形成し、その表面をRa値で0.2〜0.5μmの表面粗さとすることで、ウェハの滑りや衝突による損傷を抑えている。表面粗さが0.2μm未満となる場合には、ウェハが滑り易くなることで、ウェハと搬送アームとの衝突による損傷が発生しやすくなり、表面粗さが0.5μmを超える場合には、その粗さによりパーティクルが発生し易くなるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−60035号公報
【特許文献2】特開平7−22489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
静電チャックには、ウェハの脱着による衝突、ウェハの熱膨張及び収縮による摩擦、ウェハの押し付けなどの力が作用する。特許文献1のように部材の表面に複数の突起部を設ける場合では、ウェハをより小さい面で支える必要があるため、許容できる力が比較的小さく、上記のような力に対応しきれない場合がある。生産効率を向上させるには、搬送アームの速度を速める必要がある。搬送アームの速度が速くなると、それに伴う微少な振動でウェハと小刻みに接触するときの力が作用したり、駆動・停止の際のウェハと接触する力が増大する。特許文献2では、セラミック焼結材の表面を所定の表面粗さとしてウェハの挙動を規制しているだけなので、このような力には対応することができない。また、静電チャックや搬送アーム以外の半導体製造装置用部材には、より大きい力が作用するものもあることから、特許文献1や特許文献2の方法では、パーティクルの十分な減少効果を得ることは困難である。それに加え、特許文献2のようにセラミック焼結材を用いる場合、大きな部材への対応が困難であり、焼結助剤のような不純物成分が必要で、かつ樹脂やロウ材を使うような接着を要することにより、成分汚染が生じ、製造コストも嵩むという問題もある。
【0007】
一方、半導体製造装置用部材の表面にセラミック溶射皮膜をコーティングしてパーティクルを減少させることも考えられている。セラミック溶射皮膜は、セラミック焼結材を用いる場合と比較すると、より大きな部材への対応が容易であり、焼結助剤のような不純物成分が存在せず、樹脂やロウ材を使うような接着が不要であることにより、成分汚染がなく、また、より安価に製造することが出来る。そのことから、成分汚染を嫌う半導体製造装置部材への適用が益々期待されている。ところが、セラミック溶射皮膜は、機械強度が焼結部材よりも低いため、上述した多様な力が作用した場合にパーティクルが発生するおそれがあり、その利点を活かすことが出来ないのが現状である。
【0008】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、成分汚染が生じ難く、それと共に半導体製造装置におけるパーティクルの発生を十分に減少させることのできる半導体製造装置用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、次の技術的手段を講じた。
本発明は、半導体製造装置を構成するための基部材と、この基部材の表面にコーティングされたセラミック溶射皮膜とを備える半導体製造装置用部材であって、前記セラミック溶射皮膜の表層に、前記半導体製造装置における外的要因により当該半導体製造装置用部材から脱落する粒子を、半導体製造プロセスに影響を与えない程度に低減させる高強度セラミック層が形成され、この高強度セラミック層は、前記基部材の表面にセラミックを溶射して溶射皮膜をコーティングした後、この表面にレーザービーム又は電子ビームを照射して、当該溶射皮膜の表層のセラミック組成物を再溶融、再凝固させて変成させたセラミック再結晶物からなり、前記高強度セラミック層に、網目状の亀裂が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の半導体製造装置用部材にコーティングされているセラミック溶射皮膜は、セラミックの溶射粉末をプラズマ炎等によって溶融させ、これを基部材の表面に吹き付け、その表面に溶融した粒子を堆積させた皮膜であり、本発明では、さらにこの皮膜の表層に高強度セラミック層を形成しているので、当該半導体製造装置用部材はウェハなどからの多様な力の作用に耐えうることができる。これにより、半導体製造装置用部材から脱落する粒子を、半導体製造プロセスに影響を与えない程度に低減させることができ、パーティクルの発生を十分に減少させることができる。さらに、セラミック溶射皮膜を用いるため、半導体製造装置用部材の大きさで本発明の適用が制限されることがなく、不純物成分が存在しないこと等から成分汚染がなく、より安価に製作することが出来る。
【0011】
溶融状態の粒子を堆積することによって得られるセラミック溶射皮膜は、粒子間の境界での結合力の強弱や気孔の存在、結合しない粒子の有無の量、完全に溶融しない粒子の存在等によって、皮膜の機械的強度に大きな差が生じることが知られている。そこで、本発明のように、高強度セラミック層を、セラミック組成物を再溶融、再凝固させて変成させたセラミック再結晶物とすることで緻密な層構造が得られ、半導体製造装置用部材から脱落する粒子を確実に低減させることができる。さらに、高強度セラミック層に、網目状の亀裂が形成されているため、高強度セラミック層に作用する熱応力に対して、網目状の亀裂がその緩衝機構として働き、高強度セラミック層の割れや剥離を防止することができる。
【0012】
前記網目状の亀裂を構成する多数の網目領域のうちの少なくとも90%の網目領域の各々が、直径を約1mmとする仮想円内に収まる程度の大きさとなっていることが好ましい。この場合、熱応力に対する緩衝機構を確実に働かせることができる。
【0013】
前記亀裂が、前記セラミック溶射皮膜における未再結晶層に達していることが好ましい。亀裂がセラミック溶射皮膜における未再結晶層に達していれば、高強度セラミック層に作用する熱応力に対する緩衝機構としての働きが増し、高強度セラミック層の割れや剥離の防止効果を向上させることができる。
【0014】
前記亀裂の開口部分が、封止されていることが好ましく、当該亀裂を通じた粒子の脱落を防止することができる。この場合、封止するための物質として、SiO2等の無機物や、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の有機物が挙げられる。
【0015】
前記高強度セラミック層の厚みは200μm以下であることが好ましい。セラミック溶射皮膜から脱落する皮膜粒子の低減には、200μmの層厚みがあれば十分であり、これを越す層厚みを得るには、レーザービーム又は電子ビームの出力を上げることや、長いスキャン時間を要することとなり、非効率だからである。
【0016】
前記高強度セラミック層の表面粗さはRa値で2.0μm以下となっていることが好ましい。このような表面粗さとすれば、例えばウェハと擦れた場合に、高強度セラミック層に過大な力が作用するのを防ぐことができる。
【0017】
前記セラミック溶射皮膜には多様な化合物を採用することができ、当該化合物として、例えば、酸化物系セラミック、窒化物系セラミック、炭化物系セラミック、フッ化物系セラミック、硼化物系セラミックの群から選択される1種以上の化合物からなるものが挙げられる。酸化物系セラミックとしては、アルミナ、イットリアの何れか又はこれらの混合物が好適である。
【0018】
本発明で低減できる前記粒子として、例えば、前記セラミック溶射皮膜にウェハ又はガラス基板が接触することで当該ウェハ裏面又はガラス基板裏面に生じるバックサイドパーティクルが挙げられる。この場合、ウェハやガラス基板の局所的な盛り上がり、ウェハやガラス基板の平面度の低下、及びウェハやガラス基板と半導体製造装置用部材との密着度の低下が抑えられ、パーティクルに起因する不具合の発生を減らすことができる。
【0019】
半導体製造装置用部材として、ウェハ把持部材又はガラス基板把持部材が挙げられる。これらの部材に本発明を適用することで、半導体製造プロセスにおける極めて良好な品質を有する加工品の製造が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
上記の通り、本発明によれば、セラミック溶射皮膜を用いているため成分汚染が生じ難く、それと共にセラミック溶射皮膜の表層にセラミック再結晶物からなる高強度セラミック層を形成しているので、半導体製造装置用部材から脱落する粒子を、半導体製造プロセスに影響を与えない程度に低減させることができ、パーティクルの発生を十分に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る搬送アームが半導体製造装置に組み込まれた状態を示す模式図であり、(b)は搬送アームの斜視図である。
【図2】載置部材の表面付近の断面模式図である。
【図3】(a)はAl溶射皮膜がコーティングされ、研削仕上げされた載置部材の断面模式図であり、(b)はレーザービームを照射した後の断面模式図である。
【図4】表面粗さを調整するための工程図である。
【図5】他の実施形態に係る載置部材の表面付近の断面模式図である。
【図6】(a)は試験片1の表面の電子顕微鏡写真であり、(b)はその表層の断面の電子顕微鏡写真である。
【図7】(a)は試験片2の表面の電子顕微鏡写真であり、(b)はその表層の断面の電子顕微鏡写真である。
【図8】(a)は試験片1のAl溶射皮膜の表層のX線解析チャートであり、(b)は試験片2のAl溶射皮膜の表層のX線解析チャートである。
【図9】(a)は試験片1のAl溶射皮膜の表面粗さを示すチャートであり、(b)は試験片2のAl溶射皮膜の表面粗さを示すチャートである。
【図10】(a)は試験片1と試験片2の摩耗試験の試験結果であり、(b)は試験片1と試験片2の硬さ試験の試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1(a)は本発明の一実施形態に係る搬送アーム1(半導体製造装置用部材)が半導体製造装置50に組み込まれた状態を示す模式図であり、同図(b)は搬送アーム1の斜視図である。図1のようにプロセスチャンバー51内にはウェハ52を保持するための静電チャック53が設けられており、リフターピン54でウェハ52が静電チャック53から持ち上げられ、その状態で搬送アーム1がウェハ52の下側へ入り込んでリフターピン54が下がることで、ウェハ52が搬送アーム1に載置され、この搬送アーム1がプロセスチャンバー51から出されることでウェハ52が搬送されるようになっている。
【0023】
搬送アーム1は、ステンレス鋼又はアルミニウム合金等からなり、全体として長板状となっている。この搬送アーム1には、ウェハ52を保持するための凹状の保持部15が形成されている。保持部15の両隅には、搬送アーム1の一部をなす断面L字状の載置部材16が設けられている。この載置部材16には、実際にウェハ52が載置され、当該ウェハ52の裏面の縁部分52a及び側面52bが接触する。図2は載置部材16の表面付近の断面模式図である。載置部材16は、ステンレス鋼又はアルミニウム合金等からなる基部材2と、この基部材2のウェハ52が接触する側の表面2aにコーティングされたセラミック溶射皮膜3とで構成されている。
【0024】
本実施形態のセラミック溶射皮膜3は、Al溶射皮膜3であり、このAl溶射皮膜3は、基部材2をブラスト処理で粗面化した後、この基部材2の表面2aに、Al溶射粉末を大気プラズマ溶射法で溶射して形成したものである。なお、Al溶射皮膜3を得るための溶射法は、大気プラズマ溶射法に限られず、減圧プラズマ溶射法、水プラズマ溶射法、高速および低速フレーム溶射法であってもよい。
【0025】
Al溶射粉末は、粒径5〜80μmの粒度範囲のものを採用している。その理由は、粒径が5μmよりも小さいと、粉末の流動性が低下して安定した供給ができず、皮膜の厚みが不均一となり、粒径が80μmを超えると、完全に溶融しないまま成膜され、過度に多孔質化されて膜質が粗くなるからである。
【0026】
Al溶射皮膜3の厚みは、50〜2000μmの範囲が好適であり、厚みが50μm未満では、当該溶射皮膜3の均一性が低下し、皮膜機能を十分に発揮できず、2000μmを超えると、皮膜内部の残留応力の影響により機械的強度が低下し、当該溶射皮膜3の割れや剥離に繋がってしまうからである。
【0027】
Al溶射皮膜3は多孔質体であり、その平均気孔率は5〜10%の範囲が好適である。平均気孔率は、溶射法や溶射条件によって変化する。5%よりも小さい気孔率では、Al溶射皮膜3内に存在する残留応力が大きくなり、これが機械的強度の低下に繋がる。10%を超える気孔率では、半導体製造プロセスに使用される各種のガスがAl溶射皮膜3内へ侵入し易くなり、溶射皮膜3の耐久性が低下する。
【0028】
本実施形態では、セラミック溶射皮膜3の材料としてAlを採用しているが、他の酸化物系セラミック、窒化物系セラミック、炭化物系セラミック、フッ化物系セラミック、硼化物系セラミックやそれらの混合物であってもよい。他の酸化物系セラミックの具体例としては、TiO、SiO、Cr、ZrO、Y、MgOが挙げられる。窒化物系セラミックとしては、TiN、TaN、AiN、BN、Si、HfN、NbNが挙げられる。炭化物系セラミックとしては、TiC、WC、TaC、BC、SiC、HfC、ZrC、VC、Crが挙げられる。フッ化物系セラミックとしては、LiF、CaF、BaF、YFが挙げられる。硼化物系セラミックとしては、TiB、ZrB、HfB、VB、TaB、NbB、W、CrB、LaBが挙げられる。
【0029】
載置部材16にコーティングされたAl溶射皮膜3の表層4には、高強度セラミック層5が形成されている。この高強度セラミック層5は、本実施形態における最も特徴的な部分をなしており、Al溶射皮膜3の表層4にある多孔質なAlを変成させて形成したセラミック再結晶物である。この高強度セラミック層5は、Al溶射皮膜3にレーザービームを照射し、当該溶射皮膜3の表層4の多孔質なAlを融点以上に熱し、再溶融、再凝固させて変成させることでAl再結晶物とされたものである。
【0030】
Al溶射粉末の結晶構造はα型であり、この粉末がフレームの中で十分に溶融し、基部材2に衝突して扁平形状となり、それが急速に凝固してγ型の結晶構造のAl溶射皮膜3となる。このAl溶射皮膜3の殆どはγ型であるが、フレームの中で殆ど溶融せずに、基部材2に衝突しても扁平形状とならずに取り込まれたα型のままの結晶も混在する。従って、レーザービームを照射する前のAl溶射皮膜3の結晶構造は、α型とγ型の混在状態となっている。高強度セラミック層5をなすAl再結晶物の結晶構造は、殆どα型のみとなっている。
【0031】
Al溶射皮膜3は上記のように多孔質体をなし、多数のAl粒子が積層された構造となっており、当該Al粒子間に境界が存在する。レーザービームを照射してAl溶射皮膜3の表層4を再溶融、再凝固させることで、上記の境界が無くなり、それと共に気孔数が減少する。そのため、Al再結晶物からなる高強度セラミック層5は、非常に緻密な層構造を有している。Al溶射皮膜3の表層4をなす高強度セラミック層5が、レーザービームを照射しない場合の表層と比べて非常に緻密な構造となっていることで、Al溶射皮膜3の機械的強度が向上し、載置部材16へ作用する外的な力に対する耐久性が格段に向上している。
【0032】
レーザービームを照射しない元のAl溶射皮膜のままであれば、外的な力が作用したとき、Al粒子間に存在する境界で当該粒子同士が引き剥がされ、皮膜粒子が脱落し易くなる。本実施形態のようにAl溶射皮膜3の表層4に高強度セラミック層5を形成しておけば、Al粒子間の境界の存在に起因する皮膜粒子の脱落を低減させることができる。勿論、Al溶射皮膜3で覆われている基部材2から発生する粒子の脱落も低減させることができる。本実施形態の高強度セラミック層5が形成されていることによる、皮膜粒子や基部材粒子の脱落の低減効果は、良好な半導体製造プロセスを得るには十分なものであり、当該粒子の脱落が同プロセスに影響を与えないようにすることができる。
【0033】
高強度セラミック層5の厚みは、200μm以下が好ましい。200μmを超える厚みの高強度セラミック層5とすれば、再溶融、再凝固させた表層の残留応力が過大となり、外的な力に対する耐衝撃性が低下し、かえって機械的強度を減少させることに繋がるからである。それに加え、レーザービームの出力を上げることや、長い走査時間を要することで、非効率となり製造コストのアップを招く。
【0034】
高強度セラミック層5の平均気孔率は、5%未満が好ましく、2%未満がより好ましい。即ち、Al溶射皮膜3の表層4の5〜10%の平均気孔率を有する多孔質層を、レーザービームの照射によって5%未満の平均気孔率を有する緻密化層とすることが重要であり、これにより、Al粒子間の境界が少ない十分に緻密化された高強度セラミック層5を得ることができる。
【0035】
図3(a)はAl溶射皮膜3がコーティングされ、研削仕上げされた載置部材16の断面模式図であり、(b)はレーザービームを照射した後の断面模式図である。高強度セラミック層5の表面5aは、レーザービームを照射することで表面粗さ:Ra値で2.0μm以下となっている。このような表面粗さとすれば、例えばウェハ52と擦れた場合に、高強度セラミック層5に過大な力が作用するのを防ぐことができ、その分、皮膜粒子の脱落を低減させることができる。
【0036】
図4は表面粗さを調整するための工程図である。表面粗さを調整するための工程は、溶射工程、溶射後の表面処理工程、レーザービームを照射する工程、及びレーザービームを照射した後の表面処理工程に区別される。溶射した後の表面粗さは、例えばRa値で4〜6μm程度とされるが、ここでの粗さは厳密に調整することを要しない。溶射後の表面処理工程には、研削仕上げと凹凸処理がある。研削仕上げとしては、砥石による研削やLAPによる研磨などがあり、例えばRa値で0.2〜1.0μm程度に調整される。凹凸処理としては、ブラストにより細かな凹凸を付与することや、機械加工により大きな凹凸やエンボスを付与することが挙げられ、例えばRa値で1.0μm以上に調整される。
【0037】
レーザービームを照射した後の表面粗さは、例えばRa値で(A)0.4〜2.0μmとする場合、(B)2.0〜10.0μmとする場合、及び(C)10.0μm以上とする場合などに分けられる。レーザービームを照射した後の表面処理工程には、研削仕上げと凹凸処理がある。研削仕上げは、例えばRa値で(D)0.1〜0.4μm程度に調整して、最も平坦にする場合、(E)0.4μm以上に調整して粗くする場合、及び(F)粗くした後、頂部のみを平坦にする場合などに分けられる。凹凸処理としては、ブラストにより細かな凹凸を付与することや、機械加工により大きな凹凸やエンボスを付与することなどが挙げられる。例えば、載置部材16からウェハ52への成分転写や熱伝導を防止するために、載置部材16とウェハ52との接触面積を小さくすることなどの様々な要求事項を考慮し、図4の各工程を組み合わせることで、高強度セラミック層5の表面5aの表面粗さを適切な数値に調整する。
【0038】
図2に示すように高強度セラミック層5に、全体として網目状となる亀裂6が形成されている。この亀裂6は、Al溶射皮膜3の表層4の再凝固によるものであり、当該表層4が溶融した状態から凝固するときの収縮によってつくられたものである。この亀裂6の幅は10μm以下が好ましく、実際には1μm未満のものが多い。ここでの幅は、亀裂6の開口部の幅をいう。亀裂6のエッジは、高強度セラミック層5の表面5aから突出していない。従って、亀裂6の存在で、表層4の高強度セラミック層5とウェハ52と間の摩擦力が増大することはなく、当該高強度セラミック層5の摩耗により脱落する皮膜粒子が増えることはない。
【0039】
網目状の亀裂6は、多数の小亀裂7が繋がって構成されている。小亀裂7間の間隔は、1mm以下であり、本実施形態では0.1mm位のものがほとんどである。亀裂6が網目状となっていることで、当該亀裂6はこれ以上進行し難く、拡大することがない。これにより、高強度セラミック層5の経時的な性状の変化が抑えられ、亀裂6に起因する高強度セラミック層5の機械的強度の低下が防がれている。さらに、亀裂6が網目状となっていることで、高強度セラミック層5に作用する熱応力に対して、当該亀裂6がその緩衝機構として働き、高強度セラミック層5の割れや剥離を防止することができる。なお、亀裂6は、多数の小亀裂7が完全に繋がっている必要はなく、全体として略網目状となっていればよい。
【0040】
網目状の亀裂6を構成する一つの網目領域12は、矩形状や亀甲状などのあらゆる形状をなしており、亀裂6を構成する多数の網目領域12のうちの少なくとも90%の網目領域12の各々が、直径を約1mmとする仮想円内に収まる程度の大きさとなっている。換言すると、例えば、ある範囲における100個存在する網目領域12の内の90個の各々が、直径を約1mmとする仮想円内に収まる程度の大きさとなっているということであり、それ以外の10個の網目領域12の各々は、直径を約1mmとする仮想円内の外側へその一部をはみ出させるような大きさ及び形状となっている。多数の網目領域12がこのような大きさとなっていることで、熱応力に対する緩衝機構を確実に働かせることができる。
【0041】
レーザービームを照射する条件を変えれば、亀裂6の幅(網目領域12間の隙間の間隔)及び網目領域12のサイズを制御することができる。すなわち、Al溶射皮膜3を一度に溶融させる量を多くし、かつ冷却速度を遅くすれば、亀裂6の幅及び網目領域12のサイズが大きくなる傾向があり、その逆とすれば亀裂6の幅及び網目領域12のサイズが小さくなる傾向がある。従って、レーザービームの出力及びスポット径を大きくし、走査速度を小さくすることで亀裂6の幅及び網目領域12のサイズが大きくなり、レーザービームの出力及びスポット径を小さくし、走査速度を大きくすることで亀裂6の幅及び網目領域12のサイズが小さくなる。
【0042】
亀裂6は、図2のように高強度セラミック層5よりもさらに深く入り込み、Al溶射皮膜3における未再結晶層8に達している。亀裂6がAl溶射皮膜3における未再結晶層8に達していれば、高強度セラミック層5に作用する熱応力に対する緩衝機構としての働きが増し、高強度セラミック層5の割れや剥離の防止効果を向上させることができる。
【0043】
レーザービームの照射は、載置部材16に形成されたAl溶射皮膜3上をレーザービームで走査して行う。レーザービームの走査は、ガルバノスキャナー等で行う方法や、走査の対象物としての搬送アームをX−Yステージに固定して、これをX方向及びY方向に動かして行う方法等、公知の方法で行えばよい。レーザービーム照射は、大気中で行うことが可能であるため、Alの脱酸素現象が低減される。レーザービーム照射の条件によっては、大気中であっても脱酸素現象が生じ、溶射皮膜が黒色化する場合がある。そのような場合には、レーザービーム照射中に酸素を吹き付けることや、周りをチャンバー等で囲み、酸素分圧が高い雰囲気とすることで、脱酸素現象を回避し、黒色化を防ぐことができる。これら各種の条件を調整することによって、Al溶射皮膜3の明度を低下させることや、当該Al溶射皮膜3を白色のままにすることができる
【0044】
レーザービームの照射は、COガスレーザー、YAGレーザーを用いることが好ましい。レーザービームの照射の条件としては、次の条件が推奨される。レーザー出力:5〜5000W、レーザービーム面積:0.01〜2500mm、処理速度:5〜1000mm/s。
【0045】
なお、Al溶射皮膜の表面に電子ビームを照射することで、当該溶射皮膜の表層に高強度セラミック層を形成してもよい。この場合に形成される高強度セラミック層は、上述のものと同等の性能を有し、Al溶射皮膜の機械的強度が向上し、載置部材16へ作用する外的な力に対する耐久性が格段に向上する。電子ビームの照射の条件としては、次の条件が推奨される。照射雰囲気:10〜0.005PaのArガス、照射出力:10〜10KeV、照射速度:1〜20m/s。
【0046】
本実施形態の搬送アーム1とすれば、載置部材16に形成されたAl溶射皮膜3の表層4に、Alを再溶融、再凝固させて変成させたAl再結晶物からなる高強度セラミック層5を形成して、当該表層4を緻密な層構造とし、Al溶射皮膜3の機械的強度を向上させているので、当該載置部材16を多様な力の作用に耐えうるようにすることができる。
【0047】
従って、生産効率の向上のため搬送アーム1の速度を速めた際に、微少な振動でウェハ52と小刻みに接触するときの力が作用することや、駆動・停止の際のウェハ52と接触する力が増大することがあっても、Al溶射皮膜3から脱落する皮膜粒子や、基部材2から脱落する基部材粒子を、半導体製造プロセスに影響を与えない程度に確実に低減させることができ、パーティクルの発生を十分に減少させることができる。また、Al溶射皮膜3を用いるため、不純物成分が存在しないことなどから成分汚染がなく、より安価に製作することが出来る。
【0048】
本発明ではセラミック溶射皮膜を用いるため、半導体製造装置用部材の大きさで本発明の適用が制限されることがなく、上述のように比較的小さな部材だけでなく、大型の部材への適用も可能である。上記実施形態ではセラミック溶射皮膜としてAl溶射皮膜を形成したが、上述した他の酸化物系セラミック、窒化物系セラミック、炭化物系セラミック、フッ化物系セラミック、硼化物系セラミックやこれらの混合物であっても、同様に緻密な層構造を有する高強度セラミック層が形成され、セラミック溶射皮膜から脱落する皮膜粒子や、基部材から脱落する基部材粒子を、半導体製造プロセスに影響を与えない程度に確実に低減させることができ、パーティクルの発生を十分に減少させることができる。
【0049】
他の半導体製造装置用部材である静電チャックに本発明を適用して、当該静電チャックに形成したセラミック溶射皮膜の表層に、セラミック組成物を再溶融、再凝固させて変成させたセラミック再結晶物からなる高強度セラミック層を形成した場合、ウェハの脱着による衝突、ウェハの熱膨張及び収縮による摩擦、ウェハの押し付けなどのウェハからの力や、それ以外の比較的大きな力が作用しても、セラミック溶射皮膜から脱落する皮膜粒子や、基部材から脱落する基部材粒子を、半導体製造プロセスに影響を与えない程度に確実に低減させることができ、パーティクルの発生を十分に減少させることができる。従って、静電チャックにウェハが接触することで当該ウェハ裏面に生じるバックサイドパーティクルの数を減少させることができる。バックサイドパーティクルの数が減少すると、ウェハの局所的な盛り上がり、ウェハの平面度の低下、及びウェハと静電チャックとの密着度の低下が抑えられ、パーティクルに起因する不具合の発生を減らすことができる。
【0050】
図5は他の実施形態に係る載置部材の表面付近の断面模式図である。本実施形態が上記実施形態と異なる点は、基部材2とAl溶射皮膜3との間にアンダーコート層10が形成されている点である。Al溶射皮膜3の表層4には、上記実施形態と同様の高強度セラミック層5が形成されている。アンダーコート層10は、溶射法あるいは蒸着法などによって形成されている。
【0051】
アンダーコート層の材質としては、Ni、Al、W、Mo及びTiなどの金属、この金属を一種以上含む合金、上記金属の酸化物、窒化物、硼化物、炭化物などであるセラミック、このセラミックと上記金属からなるサーメット、上記セラミックスと上記合金からなるサーメット、の群から選ばれた1種以上からなるものが好適である。
【0052】
アンダーコート層10が形成されていることによって、基部材2の表面2aが腐食性環境から遮断され、載置部材の耐食性を向上させることができ、さらに、基部材2とAl溶射皮膜3との密着性を向上させることができる。なお、アンダーコート層10の厚みは50〜500μm程度とすることが好ましい。アンダーコート層10の厚みが20μm未満では十分な耐食性が得られず、かつ均一な成膜が困難であり、厚みが500μmよりも厚くなっても耐食性及び密着性の効果は同じであり、かえってコスト高となる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。100×100×5mmのA6061の平板の片側の表面に、プラズマ溶射法でAl溶射皮膜を200μmの厚みでコーティングし、#400ダイヤ砥石で表面を研削して試験片1を作成した。100×100×5mmのA6061の平板の片側の表面に、プラズマ溶射法でAl溶射皮膜を200μmの厚みでコーティングし、#400ダイヤ砥石で表面を研削し、さらにレーザービームを照射した試験片2を作成した。溶射の際のプラズマガスにArとHを使用し、プラズマ出力は30kWで行った。レーザーの照射は、出力:5W、レーザービーム面積:0.03mm、処理速度:10mm/sで行った。
【0054】
図6(a)は試験片1の表面の電子顕微鏡写真であり、(b)はその表層の断面の電子顕微鏡写真である。図7(a)は試験片2の表面の電子顕微鏡写真であり、(b)はその表層の断面の電子顕微鏡写真である。亀裂は網目状となっており、網目状の亀裂を構成する多数の網目領域は、矩形状や亀甲状などに構成され、その内の少なくとも90%の網目領域の各々が、直径を約0.3mmとする仮想円内に収まる程度の大きさとなっている。高強度セラミック層の亀裂が、Al溶射皮膜における未再結晶層に達しているのが認められる。レーザービームを照射していない試験片1の表面は粗く平滑でない状態である。レーザービームを照射した後の高強度セラミック層の表面には、レーザービームを走査した際の微少なうねりがあるが、鋭利になっている部位は殆ど存在せず、当該表面は非常に滑らかで緻密である。従って、Al溶射皮膜の表層をなす高強度セラミック層に、外的な力が作用しても微少破壊は生じ難く、皮膜粒子の脱落を低減させることができる。
【0055】
図8(a)は試験片1のAl溶射皮膜の表層のX線解析チャートであり、(b)は試験片2のAl溶射皮膜の表層のX線解析チャートである。試験片1のAl溶射皮膜の結晶構造はα型とγ型の混在状態である。レーザービームを照射した試験片2のAl溶射皮膜の表層の結晶構造は殆どα型となっており、高強度セラミック層が形成されていることが認められる。図9(a)は試験片1のAl溶射皮膜の表面粗さを示すチャートであり、(b)は試験片2のAl溶射皮膜の表面粗さを示すチャートである。レーザービームを照射した試験片2のAl溶射皮膜の表面は、溶融されたために少し滑らかになっていることが認められる。
【0056】
試験片1と試験片2の耐摩耗性及び硬さを比較した。耐摩耗性はスガ式摩耗試験を用いて評価した。摩耗試験の条件は次のとおりである。荷重;3.25kgf、研磨紙;GC#320、往復回数;2000回の摩耗減量を測定した。試験結果を図10(a)に示す。レーザービームを照射して高強度セラミック層を形成した試験片2が、レーザービームを照射してない試験片1よりも摩耗減量が少なく、耐摩耗性が向上している。
【0057】
硬さはJISZ2244に準じるビッカース硬さ試験で評価した。硬さ試験の条件は次のとおりである。荷重;0.1kgf、測定点;10箇所、1〜10の測定点の平均値を算出した。試験結果を図10(b)に示す。レーザービームを照射して高強度セラミック層を形成した試験片2が、レーザービームを照射してない試験片1よりもビッカース硬さが高く、レーザービームの照射により硬さが上昇していることが認められる。
【0058】
次に、亀裂の幅が異なる複数の試験片を作成して、ウェハを押し付けたときの高強度セラミック層の欠けとウェハの傷の度合いをみる押し付け試験を実施した。高強度セラミック層の欠けとウェハの傷は、亀裂の角部に荷重が集中することで生じ、また、ウェハの傷は、高強度セラミック層の欠けによるパーティクルによっても生じる。亀裂の幅が大きすぎると、亀裂の角部に荷重が集中し、高強度セラミック層が欠けてパーティクルが発生し易く、この荷重の集中や発生したパーティクルがウェハに傷をつけてしまう。
【0059】
高強度セラミック層の厚みは20μmとし、0.7mmのウェハを14kPaの圧力で高強度セラミック層の表面に押し付けた。上述のとおりレーザービームを照射する条件を変えれば、亀裂の幅を制御することができる。亀裂の幅が1μm、2μm、5μm、10μm、20μmの試験片を作成し、各試験片で押し付け試験を行った。亀裂の幅が1μmの試験片は、上記試験片2と同じものであり、亀裂の幅が2μm、5μm、10μm、20μmの各試験片は、試験片2で行ったレーザーの照射条件の出力、レーザービーム面積を次第に大きくし、処理速度を次第に小さくしたものである。その結果、いずれの試験片においてもウェハの傷はみられなかったものの、亀裂の幅が20μmの試験片で高強度セラミック層の欠けが認められるようになった。
【0060】
次に、網目領域のサイズが異なる複数の試験片を作成して、加熱したときに網目領域(高強度セラミック層)の脱落をみる加熱膨張試験を実施した。加熱したときの網目領域の脱落は、非高強度セラミック層の熱膨張及び収縮による変形に、網目領域が追従できず剥離してしまうことで生じる。網目領域のサイズが大きければ、非高強度セラミック層の熱膨張及び収縮による変形に、網目領域が追従し難く、網目領域のサイズが小さければ、非高強度セラミック層の熱膨張及び収縮による変形を、網目領域間の隙間(亀裂部分)で吸収でき、網目領域が剥離し難い。
【0061】
高強度セラミック層の厚みは20μmとし、加熱温度を150℃とした。上述のとおりレーザービームを照射する条件を変えれば、網目領域のサイズを制御することができる。網目領域のサイズが最大でφ0.2、φ0.5、φ1.0、φ2.0の試験片を作成し、各試験片で加熱膨張試験を行った。網目領域のサイズが最大でφ0.2の試験片は、上記試験片2と同じものであり、網目領域のサイズが最大でφ0.5、φ1.0、φ2.0の試験片は、試験片2で行ったレーザーの照射条件の出力、レーザービーム面積を次第に大きくし、処理速度を次第に小さくしたものである。その結果、網目領域のサイズが最大でφ0.2の試験片で網目領域の脱落が僅かに認められ、網目のサイズが最大でφ0.5、φ1.0、φ2.0の試験片では、網目領域の脱落はみられなかった。
【0062】
上記で開示した実施形態及び実施例は例示であり制限的なものではない。上述のように各種の材料からなるセラミック溶射皮膜を採用することができ、例えばY溶射皮膜の場合、上記実施形態と同じ形態を有する高強度セラミック層を形成することができる。例えば、高強度セラミック層の表面に形成された亀裂の開口部分を封止してもよく、この場合、当該亀裂を通じた粒子の脱落を防止することができる。上記実施形態では、セラミック溶射皮膜にウェハが接触することを例示して説明したが、セラミック溶射皮膜にガラス基板が接触する場合にも本発明を適用でき、これにより、例えば、ガラス基板のバックサイドパーティクルを減少させることができる。搬送アームとしては、ウェハを載置するだけのタイプの他、ウェハを吸着するタイプ、ウェハを機械的に掴むタイプ、ウェハのエッジを挟み込むタイプがある。本発明に係る半導体製造装置用部材は、搬送アームに限られず、静電チャック、バキュームチャック、メカニカルチャックなどのウェハ把持部材又はガラス基板把持部材、或いはリフトピン等、その他の各種部材にも適用することができる。
【0063】
セラミック溶射皮膜に高強度セラミック層を形成した後、機械加工やブラスト処理等で表面状態を調整してもよい。レーザービームのスポット径と走査ピッチの組み合わせ、パルス照射によるドット描写、レーザービーム照射のON/OFF制御によるパターン描写等により、意図的に所望の微少形状をつくりだしてもよい。さらに、そのような微少形状をつくった後、機械加工やブラスト処理することで、表面状態を調整してもよい。或いは、レーザービームの照射前にエンボス形状を表面に付与し、これにレーザービームを照射し、さらに機械加工やブラスト処理を施すことによって特有の形状を表面に形成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 搬送アーム
2 基部材
3 Al溶射皮膜
4 表層
5 高強度セラミック層
6 亀裂
8 未再結晶部分
10 アンダーコート層
12 網目領域
16 載置部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置を構成するための基部材と、この基部材の表面にコーティングされたセラミック溶射皮膜とを備える半導体製造装置用部材であって、
前記セラミック溶射皮膜の表層に、前記半導体製造装置における外的要因により当該半導体製造装置用部材から脱落する粒子を、半導体製造プロセスに影響を与えない程度に低減させる高強度セラミック層が形成され、この高強度セラミック層は、前記基部材の表面にセラミックを溶射して溶射皮膜をコーティングした後、この表面にレーザービーム又は電子ビームを照射して、当該溶射皮膜の表層のセラミック組成物を再溶融、再凝固させて変成させたセラミック再結晶物からなり、前記高強度セラミック層に、網目状の亀裂が形成されていることを特徴とする半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記網目状の亀裂を構成する多数の網目領域のうちの少なくとも90%の網目領域の各々が、直径を約1mmとする仮想円内に収まる程度の大きさとなっていることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記亀裂が、前記セラミック溶射皮膜における未再結晶層に達していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記亀裂の開口部分が、封止されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記高強度セラミック層の厚みは200μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
前記高強度セラミック層の表面粗さはRa値で2.0μm以下となっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体製造装置用部材。
【請求項7】
前記セラミック溶射皮膜は、酸化物系セラミック、窒化物系セラミック、炭化物系セラミック、フッ化物系セラミック、硼化物系セラミックの群から選択される1種以上の材料からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導体製造装置用部材。
【請求項8】
前記酸化物系セラミックは、アルミナ、イットリアの何れか又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項7に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項9】
前記粒子は、前記セラミック溶射皮膜にウェハ又はガラス基板が接触することで当該ウェハ裏面又はガラス基板裏面に生じるバックサイドパーティクルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の半導体製造装置用部材。
【請求項10】
当該半導体製造装置用部材は、ウェハ把持部材又はガラス基板把持部材であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の半導体製造装置用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−95973(P2013−95973A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240856(P2011−240856)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000109875)トーカロ株式会社 (127)
【Fターム(参考)】