説明

半導体製造装置

【課題】 均一性を改善するための、層をエッチングまたはスパッタ堆積する装置を提供する。
【解決手段】 スパッタされたターゲット材料を基板上に堆積させるためのプラズマ堆積装置において、RFコイルのインピーダンス整合ボックス内のキャパシタンスを、堆積プロセス中に、RFコイルと基板の加熱、及び薄膜の堆積が、RFコイルに沿ったRF電圧分布の「時間平均」によってより均一になるように、変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ発生装置に関し、より詳細には、半導体デバイスの製造で、材料の層をスパッタ堆積するために、または材料の層をエッチングするためにプラズマを発生させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低圧プラズマは、表面処理プロセス、堆積プロセス、及びエッチングのプロセスを含む様々な半導体デバイス製造プロセスに用いることができるエネルギを付与されたイオンと活性原子の便利な源となってきた。例えば、スパッタリング堆積プロセスを利用して材料を半導体ウェーハ上に堆積させるために、負にバイアスされたスパッタリングターゲット材料の近傍にプラズマが生成される。ターゲットに近接して生成されるイオンは、ターゲット面に衝突してターゲットから材料を離脱させる、すなわち「スパッタ」する。次いで、スパッタされた材料は半導体ウェーハ上に運ばれて堆積される。
【0003】
スパッタされた材料は、ターゲットから堆積される基板まで、基板面に対して斜めの角度で直線路を飛行する傾向がある。その結果、深さ対幅のアスペクト比の大きい開口部を有する半導体デバイスの、トレンチや穴を含む、エッチングされた開口部内に堆積する材料は、開口部の壁、特に底壁を十分に覆うことができない場合がある。多量の材料が堆積される場合、堆積した材料がブリッジでつながり、堆積層内に望ましくないキャビティができることがある。そのようなキャビティを防ぐため、基板に負バイアス(または自己バイアス)をかけ、垂直に向いた適切な電界を基板に隣接して配置することによって、スパッタされた材料をターゲットと基板との間でほぼ垂直な経路に再び向けることは、スパッタされた材料がプラズマによって十分にイオン化されていれば可能である。しかし、低密度プラズマによってスパッタリングされた材料のイオン化の程度は10%未満であることが多く、これは普通、過剰な数のキャビティの形成を防ぐには不十分である。従って、堆積層中での望ましくないキャビティ形成を減らすため、スパッタされる材料のイオン化率を高めるべく、プラズマの密度を高めることが望ましい。本明細書で用いられる、「高密度プラズマ(dense plasma)」とは、電子とイオンの密度が高く、1011〜1013個イオン/cm3のプラズマを指す。
【0004】
RF電界を用いてプラズマを励起するいくつかの公知技術があり、それには容量結合、誘導結合、及びウェーブ加熱が含まれる。標準的な誘導結合プラズマ(ICP)発生装置においては、プラズマを取り囲むコイル中を流れるRF電流が、プラズマ中に電磁流を誘導する。これらの電流は、オーム加熱によって伝導プラズマを加熱し、その結果、プラズマは定常状態に維持される。例えば、米国特許第4,362,632号明細書に示されているように、コイルを通る電流は、インピーダンス整合ネットワークを介してコイルに結合されているRF発生装置によって供給されており、コイルは変圧器の一次巻き線として作用している。プラズマは変圧器の一巻きの二次巻き線として作用している。
【0005】
堆積材料をイオン化すれば、高アスペクト比の溝やバイア内への材料の堆積が容易になるが、スパッタされたコンタクト金属の多くは、ウェーハの端よりも中心部により厚く堆積する傾向がある。この「中央が厚い」堆積プロファイルは、均一な堆積厚さが必要な多くの用途において望ましくない。
【0006】
1996年7月10日に出願され(Attorney Docket #1390-CIP/PVD/DV)、本出願の譲受人に譲渡された、同時係属中の出願である、出願番号第08/680,335号、発明の名称「プラズマ発生用及びスパッタリング用のコイル」(本明細書に全体として援用されている)に記載されているように、コイル自体が、スパッタ材料のソースになって、チャンバの主ターゲットからスパッタされる堆積材料を補うことができることが確認された。RF信号をコイルに印加すると、コイルが負バイアスを発生し、負バイアスは、陽イオンを引きつけてコイルに衝突させ、材料をコイルからスパッタさせる。コイルからスパッタされる材料はウェーハの周辺により厚く堆積する性向があるので、主ターゲットからスパッタされる材料の中央に厚い性向は、コイルからスパッタされる材料のエッジに厚い性向によって補償されることができる。その結果、均一性が改善され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の出願人らはまた、基板の不均一加熱の原因となるホットスポットをコイルが生成し得ることを認識している。コイルのこのような不均一加熱は、コイルが部分的に過熱して変形し、またコイルに堆積した微粒子を剥離させ基板を汚染する場合があるという点で、信頼性の問題を引き起こす可能性がある。1回巻きコイルは普通、比較的高レベルの電流を流す必要があるので、この問題はこのような1回巻きコイルにおいて顕著になる。
【0008】
本発明の目的は、均一性を改善するとともに上記の制約を実用目的に関して回避する、層をエッチングまたはスパッタ堆積する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記及び他の目的と利点は、プラズマ発生装置によって達成され、本発明の一局面によれば、当該装置において、RFコイルに結合されたインピーダンス回路は、RFコイルの長さに沿ってRF電圧分布をシフトさせるためのチューニング可能可変リアクタンスを有する。コイルに沿うRF電圧分布は、プラズマの密度と電位プロファイル、そしてコイル及び被堆積基板のイオン衝突のような電子とイオンの運動等のプラズマ特性に影響を及ぼすことが注目された。更に、コイルに沿う瞬間RF電圧分布は、コイルの対称軸周りに均一でない、つまり対称でないことも注目された。コイルに沿うこのような不均一で非対称な瞬間RF電圧分布は、コイルの不均一なスパッタリングリングと基板上への材料の不均一堆積のみならず、コイルと基板双方に不均一で非対称な加熱をモータらす可能性がある。
【0010】
本発明の一局面によれば、コイルに沿うRF電圧分布の最小値点と最大値点とがRFコイル上の特定の領域に固定されないように、RFコイルとアースとの間のリアクタンスを、スパッタリング作業中に、周期的且つ連続的にチューニングして、RF電圧分布をRFコイルに沿ってシフトまたは変動させることができると判明した。代わりに、RF電圧分布をコイル周りでの回転運動または他の運動で周期的に動かすこともできる。更に、RF電圧分布に関連するプラズマのイオン化パターンを、RF電圧分布の動きに連動させて同様に動かすこともできる。その結果、RFコイルと基板は、スパッタリングリングのホットスポットが避けられるので、時間平均的に、より均一に、且つ対称的に加熱することができる。更に、コイル自体も、より均一にスパッタでき、堆積材料をより均一に堆積させることができる。
【0011】
一実施形態において、チューニング可能可変リアクタンスは、容量値の異なる複数のコンデンサと、各コンデンサを順次周期的にコイルに結合する一つのスイッチとを含む。このようにして、堆積中、コイルとアースとの間のリアクタンスを周期的に変化させ、コイルに沿う電圧分布をシフトさせて均一性を改善する。
【発明の効果】
【0012】
均一性を改善するとともに上記の制約を実用目的に関して回避する、層をエッチングまたはスパッタ堆積する装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず図1と図2を参照すると、本発明の一実施形態に従って用いられるプラズマ発生装置の一例は、真空チャンバ102(図2に略図で示す)内に収容されたほぼ円筒形のプラズマチャンバ100を備えている。この実施形態のプラズマチャンバ100は、その内部に堆積される材料から真空チャンバ102の内壁を保護するチャンバシールド106によって、真空チャンバ壁の内側に保持されたヘリカルコイル104を有している。本発明の一局面によれば、RFコイル104とアースとの間のリアクタンスは、RFコイル104に沿ったRF電圧分布を周期的にシフトまたは回転させるため、及びプラズマの関連イオン化をシフトさせるため、スパッタリング作業中、連続的にまたは繰り返しチューニングすることができる。その結果、RFコイル104と基板112は、時間平均的に、より均一且つ軸対称に加熱されるとともに、堆積材料はより均一にコイルからスパッタされる。更に、RFコイルインピーダンスが一旦十分に整合されれば、RFコイル104に沿って電圧分布をシフトさせるために、RFコイル104とアースとの間のリアクタンスをくり返し変化することに抵抗することなしで、RFコイルインピーダンスを再整合させる必要性を排除することができる。
【0014】
イオン束は、プラズマチャンバ100の上方に配置されて、負にバイアスされたターゲット110に衝突する。プラズマイオンは、プラズマチャンバ100の底のペデスタル114に支持されたウェーハ或いは他のワークピースである基板112上に、ターゲット110から材料を放出させる。ターゲット110の面を掃引する磁界を生成させて、ターゲット110のスパッタリングによる均一な浸食を促進するために、ターゲット110の上方に回転磁石アセンブリをオプションとして備えることができる。
【0015】
RF発生装置300(図2)からの高周波(RF)エネルギは、コイル104からプラズマチャンバ100の内部に放射されて、プラズマチャンバ100内のプラズマにエネルギを与える。ターゲット110からスパッタされた堆積材料は、コイル104によってエネルギを与えられたプラズマを貫通してから、基板112上に堆積する。プラズマ内を貫通した一部の堆積材料は、プラズマによってイオン化される。イオン化された堆積材料は次に、基板112上の負電位に誘引される。このようにして、イオン化された堆積材料は、より垂直な経路へと向き直させられて、より多くの材料が基板内の高アスペクト比の開口部内に堆積することを容易にする。図示の実施形態はスパッタ堆積に関連して説明されているが、本発明はエッチングに関しても有用であると考えられる。
【0016】
図2は、本実施形態のプラズマ発生装置の電気接続の略図である。基板112上にターゲット材料をスパッタリングさせるには、可変DC電源302によってターゲット110に負のバイアスをかけ、プラズマによって発生するイオンを誘引することが好ましい。同様なやり方で、可変RF電源でペデスタル114に負のバイアスをかけることにより、基板112に負のバイアスをかけてイオン化された堆積材料を基板112に誘引してもよい。代替実施形態において、高周波ACパワーソースでペデスタル114に負のバイアスをかけることにより基板112にバイアスをかけ、イオン化された堆積材料をより均一に基板112に誘引してもよい。更に別の代替実施形態において、基板112に外部からバイアスをかけることを省略してもよい。
【0017】
コイル104の一端bは、アンプ396及びインピーダンス整合ネットワーク306の出力のようなRFソースに結合され、後者の入力はRF発生装置300に結合されている。コイル104の他端dは、好ましくはコンデンサ308を介してアースに結合されるが、このコンデンサは可変コンデンサであってもよい。アンプ396及びインピーダンス整合ネットワーク306は、RFエネルギがRF発生装置300に反射されずに、効率よくRF発生装置からRFコイル104に伝達されるようにRF発生装置300のインピーダンスを整合させるために、RFコイル104とネットワーク306との組合せインピーダンスを調節する。
【0018】
上述のように、コイル104に沿ったRF電圧分布がプラズマの諸特性に影響を及ぼす可能性のあることが注目された。これらのプラズマ諸特性には、プラズマの密度と電位プロファイル、及びコイル104と被堆積基板112のイオン衝撃が含まれる。コイル104に沿う瞬間RF電圧分布は均一ではなく、コイル104の対称軸周りに軸方向非対称であるので、コイルのスパッタリングと基板上への堆積が不均一になるのみならず、コイル104と基板112の両方の不均一で非対称な加熱が発生する可能性がある。このようにして、コイル104の不均一で非対称な加熱は、コイル104が部分的に過熱して変形し、ひいてはコイル104上に堆積した微粒子の剥離をモータらして基板112を汚染する可能性があるという点で、信頼性の問題を生ずる可能性がある。コイル104に沿う不均一で非対称な瞬間RF電圧分布と、その結果としての不均一効果は、コイル104が1回巻きコイルである場合に顕著である。
【0019】
本発明によれば、スパッタリングリング作業時の繰り返しサイクルで、RFコイル104とアースとの間のリアクタンスを繰り返し変化させるか、チューニングし、RF電圧分布をRFコイル104に沿って変化またはシフトさせ、それによってプラズマのイオン化プロファイルを回転させることができる。コイル周りの電圧の最小値、ピーク値、または他の基準点を、プラズマ領域の周りの軌道または他の経路内で連続的に動かすように、電圧プロファイルが変化させられるので、可変イオン化の比または率を持つプラズマ領域を実質的にプラズマ領域内の軸周りで回転させることができる。その結果、イオン化比(つまりプラズマ密度)の最高値から最低値までの領域がより等しくコイルとターゲットのスパッタリングに貢献するので、RFコイル104と基板112は、より均一且つ軸対称に加熱され、時間平均的にターゲット材料がより均一に堆積する。
【0020】
好ましい一実施形態において、Liubo Hong (Attorney Docket No. 1800/PVD/DV)により出願され、本出願の譲受人に譲渡され、本明細書に全体として援用されている、出願日 、出願番号、発明の名称「コイルスパッタ分布制御への可変インピーダンスの使用」で詳しく検討されているように、RFコイルインピーダンスが十分に整合すれば、RFコイル104に沿って電圧分布を回転させるために、RFコイル104とアースとの間のリアクタンスを周期的に変化させなくとも、RFコイルインピーダンスを再整合させる必要性が排除される。
【0021】
図3は、インピーダンス整合ネットワーク306の一実施形態の略図であって、可変キャバシタンスCinを有する入力コンデンサ310と、可変キャバシタンスCmatchを有する並列整合コンデンサ312と、インダクタンスLmatchを有するとともに真空チャンバ102を介してコイル104の一端に結合された直列整合インダクタ314とを備える。ブロッキングコンデンサ308が、真空チャンバ102を介してコイル104の他端に結合される。コイル104は、等価レジスタ316とインダクタ317によって示される、関連インダクタンスLcoilと抵抗Rとを有する。インピーダンス整合ネットワーク306の入力は、RF入力307を介してRF発生装置300に結合されている。
【0022】
ネットワーク306の一つの機能は、ネットワーク306のインピーダンスに結合された、コイル104のインピーダンスを、RF発生装置300のインピーダンスに整合させて、発生装置へのRFエネルギ反射を最小にし、コイル104からチャンバ内のプラズマへのRFエネルギの結合を最大にすることである。従って、コイル104の特定のコイルインピーダンスLcoilに関して、入力コンデンサ310、整合コンデンサ312、整合インダクタ314、及びブロッキングコンデンサ308の各値は、RF発生装置インピーダンス(例えば50オームでよい)に近似するように選ばれる。従来のインピーダンス整合回路と同様な方法で、入力コンデンサCinと整合コンデンサCinの各インピーダンスは、入力コンデンサ310と整合コンデンサ312の各可変キャパシタンスを調節することによって、より精確な整合を達成し維持するため、堆積前と堆積中に細かくチューニングすることができる。
【0023】
ブロッキングコンデンサ308の値Cblockも、従来のインピーダンス整合回路のブロッキングコンデンサの値と同様に、コイル104が実質的なDCバイアスを発生するように、コイル104に印加中のRFエネルギに大きなインピーダンスを提供するように選ばれる。しかし、それにもかかわらず、本発明の一局面によれば、ブロッキングコンデンサのインピーダンス値Cblockは、コイル104周りの電圧分布を周期的にシフトさせてコイル104の各部のスパッタリングリング率とコイル加熱の均一性を高めるために、繰り返しサイクルで変化させることができる。このことを以下に説明する。
【0024】
図3の点aから点eまでの、交流(AC)直列回路の任意の2点間の有効電位差Veffは、各点間のAC回路のインピーダンスZと有効電流Ieffの積に等しい。インダクタンスLmatchを有する直列インダクタ314の両端の点a,b間の有効電位差Vabは、次式で与えられる。
【0025】
【数1】


インダクタLmatchを有する直列インダクタ314を通るインピーダンスZabは、次式で与えられる。
【0026】
【数2】


インダクタンスLを有するインダクタの誘導リアクタンスXLは、XL=ωLで与えられ、ωは次式で与えられる瞬間電位差vの角周波数である。
【0027】
【数3】


fは周波数(単位はHz)であり、瞬間電流iは次式で与えられる。
【0028】
【数4】


インダクタンスLmatchを有する直列インダクタ314を通る瞬間電流iと、瞬間電位差vabとの間の位相角φabは次式で与えられる。
【0029】
【数5】


その結果、直列インダクタ314を通る瞬間電位差vabは、直列インダクタ314を通る瞬間電流iに90°先行し、有効電位差Vabは、直列インダクタ314の両端の点a,b間のIωLmatchに等しい。
【0030】
有効抵抗Rを有する直列抵抗316の両端の点b,c間の有効電位差Vbcは、次式で与えられる。
【0031】
【数6】


有効抵抗Rを有する直列抵抗316を通るインピーダンスZbcは次式で与えられる。
【0032】
【数7】


瞬間電位差vbcと、有効抵抗Rを有する直列抵抗316を通る瞬間電流iとの間の位相角φbcは次式で与えられる。
【0033】
【数8】


その結果、直列抵抗316を通る瞬間電位差vbcは、直列抵抗316を通る瞬間電流iと同位相となり、有効電位差Vbcは、直列抵抗316の両端の点b,c間のIRに等しくなる。
【0034】
インダクタンスLcoilを有するコイル104の両端の点c,d間の有効電位差Vcdは次式で与えられる。
【0035】
【数9】


インダクタンスLcoilを有するコイル104を通るインピーダンスZcdは次式で与えられる。
【0036】
【数10】


瞬間電位差vcdと、インダクタンスLcoilを持つコイル104を通る瞬間電流iとの間の位相角φcdは次式で与えられる。
【0037】
【数11】


その結果、コイル104を通る瞬間電位差vcdは、直列インダクタを通る瞬間電流より90°先行し、有効電位差Vcdは、コイル104の両端の点c,d間でIωLcoilに等しい。
【0038】
可変キャパシタンスCblockを有するブロッキング可変コンデンサ308の両端の点d,e間の有効電位差Vdeは、次式で与えられる。
【0039】
【数12】


可変キャパシタンスCblockを有するブロッキング可変コンデンサ308を通るインピーダンスZdeは、次式で与えられる。
【0040】
【数13】


キャパシタンスCを有するコンデンサの容量リアクタンスXcは、Xc=(ωC)1で与えられ、可変キャパシタンスCblockを有するブロッキング可変コンデンサを通る、瞬間電位差vdeと瞬間電流iとの位相角φdeは、次式で与えられる。
【0041】
【数14】


その結果、ブロッキング可変コンデンサ308を通る瞬間電位差vdeは、ブロッキング可変コンデンサ308内の瞬間電流iから90°遅れ、有効電位差Vdeは、ブロッキング可変コンデンサ308の両端の点d、e間でI(ωCblock1に等しい。
【0042】
与えられた角周波数ωに関して、ブロッキング可変コンデンサ308の両端の点d,e間の有効電位差Vde=I(ωCblock1は、コイル104の両端の点c,d間の有効電位差Vcd=IωLcoilに等しくなるように、ブロッキング可変コンデンサ308が可変キャパシタンスCblockを有するように選択されることができる。そうすると、ブロッキング可変コンデンサ308を通る瞬間電位差vdeは、コイル104を通る瞬間電位差vcdから180°遅れることになろう。従って、ブロッキング可変コンデンサ308を通る瞬間電位差vdeは、コイル104を通る瞬間電位差vcdを持つ位相から完全に外れることになろう。コイル上に誘導される、例えばほぼ一定なDCオフセットバイアス、またはDC自己バイアスのような、何らかのバイアスの効果を無視すれば、点cにおいて有効電位Vは消滅(V=0)するので、点c,e間の電位差を計測する仮想電圧計(図示せず)の読みはゼロになるだろう。
【0043】
特定の角周波数ωに関して、ブロッキング可変コンデンサ308の可変キャパシタンスCblockを、ブロッキング可変コンデンサ308の両端の点d,e間の有効電位差Vde=I(ωCblock1が、コイル104の両端の点c、d間の有効電位差Vcd=IωLcoil=2Vde=2I(ωCblock1の半分にほぼ等しくなるように選んでよい。この場合にも、ブロッキング可変コンデンサ308を通る瞬間電位差vdeは、コイル104を通る瞬間電位差vcdから180°遅れて、従って同じく、ブロッキング可変コンデンサ308を通る瞬間電位差vdeは、コイル104を通る瞬間電位差vcdを持つ位相から完全に外れることになろう。同じく、DCオフセットバイアスまたはDC自己バイアスを何れも無視すると、コイル104に沿う、点c,d間の実質的中間点における有効電位Vは消滅(V=0)するので、(点c,d間のほぼ中間の)点と点eとの間に置かれた仮想電圧計(図示せず)の読みはゼロになるであろう。
【0044】
同様に、ブロッキング可変コンデンサ308の可変キャパシタンスCblockは、ブロッキング可変コンデンサ308の両端の点d,e間の有効電位差Vde=I(ωCcoil1が、コイル104の両端の点c,d間の有効電位差Vcd=IωLcoil=nVde=nI(ωCblock1のn1倍(nは任意の正の実数)となるように、選んでよい。この場合にも、ブロッキング可変コンデンサ308を通る瞬間電位差vdeは、コイル104を通る瞬間電位差vcdから180°遅れて、従って同じく、ブロッキング可変コンデンサ308を通る瞬間電位差vdeは、コイル104を通る瞬間電位差vcdを持つ位相から完全に外れることになろう。コイル104に沿う点c,d間の実質的に(n−1)n1の点で有効電位Vは消滅(V=0)するので、(点c,d間の実質的に(n−1)n1の)点と点eとの間の電圧計(図示せず)の読みはゼロになると考えられる。nが非常に大きくなるに従がい、コイル104に沿う有効電位Vが消滅する(V=0)点は、点dに任意に近づく。
【0045】
代わりに、一定角周波数ωに関しては、ブロッキング可変コンデンサ308の可変キャパシタンスCblockは、ブロッキング可変コンデンサ308の両端の点d,e間の有効電位差Vde=I(ωCblock1が、コイル104の両端の点c,d間の有効電位差Vcd=IωLcoil=(n−1)1nVde=(n−1)1nI(ωCblock1の(n−1)n1倍(nは任意の正の実数)となるように、選ぶことができる。この場合にも、ブロッキング可変コンデンサ308を通る瞬間電位差vdeは、コイル104を通る瞬間電位差vcdから180°遅れて、従って同じく、ブロッキング可変コンデンサ308を通る瞬間電位差vdeは、コイル104を通る瞬間電位差vcdを持つ位相から完全に外れることとなろう。DCオフセットバイアスまたはDC自己バイアスを何れも無視すると、コイル104に沿った、点c,d間のn1の点における電位Vは消滅(V=0)するので、(点c,d間の実質的にn1の)点と点eとの間の電圧計(図示せず)の読みはゼロになるであろう。nが非常に大きくなるに従って、コイル104に沿う有効電位Vが消滅する(V=0)点は、点cに任意に近づく。
【0046】
上記の例は、ブロッキング可変コンデンサ308の可変キャパシタンスCblockを、コイル104に沿った、点c,d間の任意の点で有効電位Vが消滅させられる(V=0)ように、選べることを示している。コイル104に沿った、有効電位Vが消滅する(V=0)点を時間と共に変えることができるこの能力を利用して、コイル104に沿ったRF電圧分布をシフトさせ、またプラズマのイオン化をシフトさせることができる。その結果、コイル104と基板112はより均一且つ軸対称に加熱され、ターゲット110からスパッタされる材料は、時間平均的により均一にイオン化され、基板112上に堆積される。
【0047】
コイル104に、ほぼ一定なDCオフセットバイアス、またはDC自己バイアスをかけると、コイル104に沿った、点c,d間の任意の点において、有効電位Vがほぼ一定なDCオフセットバイアス、またはDCセルフバイアス(V=Vbias)に等しくなるように、ブロッキング可変コンデンサ308の可変キャパシタンスCblockを選ぶことができる。コイル104に沿った、有効電位Vがほぼ一定なDCオフセットバイアス、またはDCセルフバイアス(V=Vbias)に等しくなる、コイル104に沿った点を時間とともに変化させることのできるこの能力を利用して、コイル104に沿ったRF電圧分布をシフトさせて、またプラズマのイオン化をシフトさせることができる。その結果、コイル104と基板112はより均一且つ軸対称に加熱されて、ターゲット110からスパッタされる材料は、時間平均的により均一に、基板112上に堆積される。
【0048】
図13は、堆積中にブロッキングコンデンサのインピーダンスCblockの変化に伴って、RF電圧分布がコイルに沿ってシフトする様子の一例を示すグラフである。図13において、コイル104上のピークからピークまでのRF電圧Vppの分布は1回巻きコイル104上の位置の関数として表され、前記位置は、コイル角度α(図2)で表し、コイル角度α=0°はコイル端d(図3)に対応し、コイル角度α=360°はコイル端bに対応し、この端bにおいてRFフィードスルーがコイルに結合されている。これらの分布は、コイル上の2カ所(α=0°とα=360°)における電圧測定に基づいている。コイルの残りの位置(0°<α<360°)について描かれた電圧値は、実測値ではなく期待値である。
【0049】
一つの分布において、ブロッキングコンデンサのキャパシタンスCblockの値が0.04μfであるとき、ピークからピークまでのRF電圧Vppは、α=0°端において300ボルトから始まり、ほぼα=90°のコイル位置において0ボルトに減少すると考えられる。その後、コイルの他端b(α=360°)に達して、そこでピークからピークまでのRF電圧が約600Vとなるまで、RF電圧はコイル周りの位置とともに増加する。ピークからピークまでの電圧は、コイル角度α=360°に対応するコイル位置で最大になるので、その点でホットスポットが発生する可能性がある。しかし本発明により、堆積の進行中にブロッキングコンデンサCblockのキャパシタンスを他の値に変化させれば、ホットスポットをシフトさせることができる。
【0050】
従って、ブロッキングコンデンサのキャパシタンスCblockを、例えば0.02μfに変化させると、この例における電圧分布がシフトし、図示のように、分布は効果的に逆転する。更に詳細には、このキャパシタンスにおいて、ピークからピークまでのRF電圧Vppはα=0°端において600ボルトよりやや上から始まり、コイル周りの位置の変化とともに、α=約240°のコイル位置に達するまで連続的に減少し、そこでVppが0ボルトになると考えられる。その後、RF電圧はコイルの他端b(α=360°)に達するまで増加し、そこでのピークからピークまでのRF電圧値は約300ボルトである。従って、ホットスポットはコイル角度α=0°にあるコイルの他端にシフトする。堆積の進行につれてブロッキングコンデンサのインピーダンスCblockを適当に変化させることによって、ホットスポットをコイルの円周に沿った中間位置にシフトさせ、ホットスポットをより均一に分布させることによって、より均等にコイルを加熱し、スパッタすることができる。
【0051】
電圧分布のシフトとともに、コイルに沿った最大値と最小値も変化する。従って、図13に示したように、ブロッキングコンデンサのキャパシタンスCblockを、例えば0.01μfに変化させると、この例での電圧分布は、ピークからピークまでのRF電圧Vppはα=0°端で0ボルト付近から始まり、コイルの他端b(α=360°)に達するまで連続的に増加し、そこでのピークからピークまでのRF電圧が約800ボルトであるように、シフトするだろう。従って、堆積の進行につれて、インピーダンスが変化するので、最大値と最小値の位置のみならず電圧分布の最大値と最小値も変化して、コイルがより均等に加熱及びスパッタされる。
【0052】
高度のインピーダンスの整合性が要求される用途においては、入力コンデンサ310または整合コンデンサ312のインピーダンスを、コイル104周りの電圧分布を回転させるためにブロッキングコンデンサ308のインピーダンスの変化に合わせて良好な整合を維持するように調節することができる。しかし、用途によっては、ブロッキングコンデンサ308のインピーダンスの変化は、コイル104への良好なエネルギスループットを維持するように、この変化を素早く整合させるために困難を感じる程度のこともある。図4は別の実施形態であり、これは、コイル周りの電圧分布をシフトまたは回転させるために、コンポーネントのインピーダンスの変化に応じて整合コンポーネントのインピーダンスをチューニングする必要性を、低減または排除するものである。
【0053】
図4は、ネットワーク306と同様に、直列入力コンデンサ310、並列可変整合コンデンサ312を含むインピーダンス整合ネットワーク306aの更に別の実施形態の略図である。しかし、このネットワーク306aは、整合インダクタ314の代わりに、真空チャンバ102を介してコイル104aの一端に結合されたチューニング可能インダクタンスLtune1を有するチューニング可能直列インダクタ318を有する。このネットワークはまた、チューニング可能インダクタンスLtune2を有するチューニング可能直列インダクタ320と、キャパシタンスCblockを有するブロッキングコンデンサ308aを有するブロックインピーダンス321を備える。この実施形態によれば、ブロッキングコンデンサ以外の部品のインピーダンス値は、堆積中、コイル104周りの電圧分布をシフトさせるように周期的に変化させることができる。
【0054】
以下にこれを説明する。
【0055】
【数15】


チューニング可能インダクタンスLtune1を有するチューニング可能直列インダクタ318のインピーダンスZabは次式で与えられる。
【0056】
【数16】


従って、チューニング可能インダクタンスLtune1を有するチューニング可能直列インダクタ318を通る瞬間電流iと瞬間電位差vabとの間の位相角φabは次式で与えられる。
【0057】
【数17】


その結果、チューニング可能直列インダクタ318を通る瞬間電位差vabは、チューニング可能直列インダクタ318を通る瞬間電流iより90°進み、チューニング可能インダクタ318の両端の点a,b間の有効電位差VabはIωLtune1に等しい。
【0058】
上記のように、有効抵抗Rを有する直列抵抗316の両端の点b,c間の有効電位差Vbcは次式で与えられる、
【数18】


そして、コイル104を通る瞬間電位差vcdは、直列インダクタを通る電流iより90°進み、コイル104の両端の点c,d間の有効電位差VcdはIωLcoilに等しい。
【0059】
チューニング可能インダクタンスLtune2を有するチューニング可能直列インダクタ320の両端の点d,e間の有効電位差Vdeは次式で与えられる。
【0060】
【数19】


チューニング可能インダクタンスLtune2を有するチューニング可能直列インダクタ320を通るインピーダンスZdeは次式で与えられる。
【0061】
【数20】


チューニング可能インダクタンスLtune2を有するチューニング可能直列インダクタ320を通る瞬間電流iと瞬間電位差vdeとの間の位相角φdeは次式で与えられる。
【0062】
【数21】


従って、チューニング可能直列インダクタ320を通る瞬間電位差vdeは、チューニング可能直列インダクタ320を通る瞬間電流iより90°進み、チューニング可能インダクタ320の両端の点d,e間の有効電位差VdeはIωLtune2に等しい。
【0063】
一定のキャパシタンスCblockを有するブロッキングコンデンサ308aの両端の点e,f間の有効電位差Vefは次式で与えられる。
【0064】
【数22】


キャパシタンスCblockを有するブロッキングコンデンサ308aを通るインピーダンスZefは次式で与えられる。
【0065】
【数23】


キャパシタンスCblockを有するブロッキングコンデンサ308aを通る瞬間電流iと瞬間電位差vefとの間の位相角φefは次式で与えられる。
【0066】
【数24】


従って、ブロッキングコンデンサ308aを通る瞬間電位差vefは、ブロッキングコンデンサ308aを通る瞬間電流iより90°進み、ブロッキングコンデンサ308aの両端の点e,f間の有効電位差VefはI(ωCblock1に等しい。
【0067】
特定の角周波数ωに関して、チューニング可能インダクタ320の両端の点d,e間の有効電位差Vde=IωLtune2が、ブロッキングコンデンサ308aの両端の点e,f間の有効電位差Vef=I(ωCblock1と、コイル104の両端の点c,d間の有効電位差Vcd=IωLcoilとの差に等しくなる、すなわち、Vde=IωLtune2=Vef−Vcd=I(ωCblock1−IωLcoilとなるように、チューニング可能インダクタ320のチューニング可能インピーダンスLtune2を選ぶことができる。そのようにすると、ブロッキングコンデンサ308aを通る瞬間電位差vefは、コイル104を通る瞬間電位差vcdと、チューニング可能直列インダクタ320を通る瞬間電位差vdeとから180°遅れ、従ってブロッキング可変コンデンサ308aを通る瞬間電位差vefは、コイル104を通る瞬間電位差vcdと、チューニング可能直列インダクタ320を通る瞬間電位差vdeを持つ位相から完全に外れることになろう。DCオフセットバイアスまたはDC自己バイアスを何れも無視すると、点cで有効電位Vは消滅(V=0)することにより、点c,f間の電圧計(図示せず)の読みはゼロになるであろう。
【0068】
同様に、チューニング可能直列インダクタ320の両端の点d,e間の有効電位差Vde=IωLtune2が、ブロッキングコンデンサ308aの両端の点e,f間の有効電位差Vef=I(ωCblock1の(n−1)1倍と、コイル104の両端の点c,d間の有効電位差Vcd=IωLcoilとの差にほぼ等しくなるように、チューニング可能インダクタ320のチューニング可能インピーダンスLtune2を選ぶことができ、従って、
【数25】


となる(nは任意の正の実数)。そのようにすると、ブロッキングコンデンサ308aを通る瞬間電位差vefは、コイル104を通る瞬間電位差vcdと、チューニング可能直列インダクタ320を通る瞬間電位差vdeとから180°遅れ、従ってブロッキング可変コンデンサ308aを通る瞬間電位差vdeは、コイル104を通る瞬間電位差vcdとチューニング可能直列インダクタ320を通る瞬間電位差vdeの両方を持つ位相から完全に外れることとなろう。この場合にも、DCオフセットバイアスまたはDC自己バイアスを何れも無視すると、コイル104に沿った、点c,e間の実質的にn1の点において有効電位Vが消滅し(V=0)することにより、(点c,e間の実質的にn1の)点と点fとの間の電圧計(図示せず)の読みはゼロになるであろう。nが非常に大きくなるのに伴い、コイル104に沿った有効電位Vが消滅する(V=0)点は、点cに任意に近づく。
【0069】
このようにして、チューニング可能直列インダクタ320のチューニング可能インダクタンスLtune2は、有効電位Vがコイル104に沿った、点c、d間の実質的に任意の点で消滅(V=0)するように、選ぶことができる。コイル104に沿った有効電位Vが消滅する(V=0)点を時間と共に変化させることができるこの能力を利用して、コイル104に沿ってRF電圧分布をシフトさせ、またプラズマのイオン化パターンをシフトさせることができる。その結果、コイル104と基板112はより均一且つ軸対称に加熱され、材料はコイル104からより均一にスパッタされる。
【0070】
更に、2個のチューニング可能直列インダクタ318と320のチューニング可能インダクタンスの合計(Ltune1+Ltune2)がほぼ一定となるように、相補的にチューニングすることができる。そのような構成により、コイル104に沿った電圧分布を回転させるためチューニング可能インダクタ320のインピーダンスを変化させる際、コイル104、ブロッキングインピーダンス321、及び整合ネットワーク306aの各インピーダンスを再整合させる必要性を低減またはなくすことができる。図4に示すように、整合ネットワーク306aの整合コンデンサ312とインプットコンデンサ310とは、図4の点aから点fまで直列に結合されたコンポーネントのインピーダンスであるインピーダンスに結合されている。このインピーダンスは、インピーダンスZafとして表すことができ、次式のようにコイル104を含む上記各コンポーネントの各インピーダンスを用いて次式のように定義することができる。
【0071】
【数26】


コイル104のインピーダンス(すなわち(R2+(ωLcoil21/2)とブロッキングコンデンサ308aのインピーダンス(すなわち1/(ωCblock))を固定し、またチューニング可能インダクタンス318と320のインピーダンスの合計(すなわちωLtune1+ωLtune2)も一定であれば、図4の点aから点fまで直列に結合されたコンポーネントのインピーダンスZafは、コイル104に沿った電圧分布を回転させるためチューニング可能インダクタ320のインピーダンスωLtune2を周期的に変化させても、一定になることが分かる。実際、インピーダンスZafの時間による変化は次式によって与えられると考えられる。
【0072】
【数27】


ここでは、コイル104のインピーダンスとブロッキングコンデンサ308aのインピーダンスを固定して、チューニング可能インダクタンス318と320のインピーダンス(すなわちωLtune1+ωLtune2)が一定であれば、インピーダンスZafが一定であることが示されている。コイル104の抵抗がリアクタンスに比べて無視できれば(すなわちR<<ωLtune1+ωLcoil+ωLtune2−1/(ωCblock)であれば)、インピーダンスZafはほぼ次式のようになると考えられる。
【0073】
【数28】


従って、インピーダンスZafの時間的変化はほぼ、
【数29】


これも同じく、チューニング可能インダクタンス318と320のインピーダンスの合計(すなわちωLtune1+ωLtune2)がほぼ一定である限り、ほぼ消滅する。
【0074】
従って、チューニング可能インダクタ320への変更の結果として発生装置300とのインピーダンスの整合を維持するために、入力コンデンサ310及び/または整合コンデンサ312のインピーダンスを調節する必要はない。むしろ、入力コンデンサ310及び/または整合コンデンサ312に対する調節は、堆積継続中のプラズマへの変更または他の原因によるコイル104の有効インダクタンスの通常の変化の結果として、普通に遭遇する調節に限られる。そのような構成にすれば、コイル104に沿った電圧分布を回転させるためチューニング可能インダクタ320のインピーダンスを変化させる際、コイル104及びインピーダンス整合ネットワーク306aの各インピーダンスを再整合させる必要性を低減または解消することができる。
【0075】
通常のインピーダンス整合ネットワークを用いてコイル104のインピーダンスを再整合させるための通常の時定数は、周波数自動チューニングに関しては数秒程度であり、機械的自動チューニングに関しては数秒を超える程度である。図3の実施形態において、コイル104周りのRF電圧分布を回転させるため、またプラズマを回転させるため、可変ブロッキングコンデンサ308の可変キャパシタンスCblockを時間的に変化させると、時間平均的に、インピーダンス整合ネットワーク306を用いたコイル104のインピーダンスの再整合に要する時間は比較的長くなり、状況によっては良好な整合が困難になる可能性がある。再整合中、プラズマへのRFパワーは、発生装置に対して十分良好に整合していないコイル104とブロッキングコンデンサの各インピーダンスに起因するRFパワーの反射によって有効に遮断される可能性がある。また、数十秒といった比較的短い堆積プロセスにとっては、再整合に要する時間が長すぎる可能性もある。
【0076】
図4の実施形態において、チューニング可能インダクタンス(Ltune1+Ltune2)をほぼ一定に保持することによって、コイルに沿った電圧分布を回転させるための、ブロッキング回路321のブロッキングインピーダンスの(チューニング可能インダクタ320のインダクタンスの変更による)変化は、発生装置に対するこの回路の整合を失わせない。従って、図4の実施形態は、発生装置からの不都合なRFエネルギの反射を防ぐための良好なインピーダンス整合が必要である用途に最適である。従って、図4の実施形態は、周波数自動チューニングまたは機械的自動チューニングにより、または任意の公知の整合技法により、インピーダンス整合維持を容易に利用することができる。
【0077】
インダクタ318と320のインダクダンス(Ltune1+Ltune2)の様なチューニング可能インピーダンスの合計は、様々な編成においてほぼ一定に保持することができる。例えば図5は、2個のチューニング可能インダクタ318と320を結合して、関連するチューニング可能インピーダンスの合計(Ltune1+Ltune2)をほぼ一定にする、2個のチューニング可能インダクタ318と320を有する実施形態を示す。図5に示すように、2個のほぼ同一のコイル318aと320aが、2個のほぼ同一の金属製の箱318bと320bの中に突き合わせ配置されている。2個のほぼ同一のコア部材318cと320cは、それぞれほぼ同軸に沿った開口部を有し、それぞれコイル318aと320a内に配置され、実質的に剛性で、中空の、実質的に電気絶縁性のコネクタ340によって結合されている。剛性で電気絶縁性の案内ロッド350が、金属製の箱318bと320bの中心とコイル318aと320aの軸に沿って配置され、コア部材318cと320cの中心開口部と中空コネクタ340を貫通している。この案内ロッド350は、金属製の箱318bと320b確実に取付けられている。コア部材318cと320c及びコネクタ340は、案内ロッド350がコア部材318cと320c及びコネクタ340の動きを機械的に案内するように案内ロッド350に沿って摺動するようになっている。コア部材318cと320cはコネクタ340によって機械的に一体に接続されているので、コア部材318cと320cは図5に矢印Aで示したように連動する。コア部材318cと320cがこのように連動することによって、チューニング可能インダクタ318と320のそれぞれのインダクタンスLtune1とLtune2はほぼ同時にチューニングされる。
【0078】
コア部材318cと320cは、軟磁性コア材料のような強磁性材料またはステンレス鋼のような他の材料を含む様々な材料で製作することができる。従って、コア部材318cを例えばステンレス鋼1010で製作すると、コア部材318cの透磁率特性がコイル318aのインダクタンスLtune1を増減させる。この増加は、コア部材318cがコイル318aのほぼ中心に配置されるとき、最大になる。コイル318aの中心から、コイル318aの中心に最も近いコア部材318cのエッジまでの距離を、図5に「x」で表す。距離xの減少とともに、コイル318aのインダクタンスLtune1は増加する。逆に、距離xの増加とともに、コイル318aのインダクタンスLtune1は減少する。
【0079】
図6は、ステンレス鋼1010製のコア部材318cの使用に基づく計算結果を示すグラフである。図示のように、コイル318aのインダクタンスLtune1の変化は、内挿グラフ360で示したように、約x=−0.2インチ(−0.5cm)から約x=0.8インチ(2.0cm)まで、変位xの特定区間にわたってほぼ線形であるものとして、変位xの関数として計算した。図6の縦軸目盛はマイクロヘンリー(μH)である。図6に示したコイル318aのインダクタンスLtune1の合計変化は、約0.5μH(図示の実施形態においては約25%)であって、これはRF電圧分布に関連するイオン化パターンを回転させるため、及び1回巻きコイル104に沿ったRF電圧分布を回転させるため、多くの用途にとって十分であると考えられる。しかしまた、距離xによるコイル318aのインダクタンスLtune1の線形変化の全範囲は、図6に示した範囲より大きいとも考えられる。従って、インダクタのほぼ線形的な変化の利用可能な範囲は、堆積中に大きな変化が必要な用途に関して比較的広い可能性がある。電圧分布を回転させるために必要なインピーダンスの変化量は、スパッタリングコイル104の巻き数と、用途によってはコイル104の直径も含む、多くの要因に依存する。
【0080】
有利なRF電圧回転とプラズマイオン化回転、または他の運動を達成するため、低い最大変化を有するインピーダンス変化が使用可能であると考えられる。例えば、0と0.1μHの間で変化するインピーダンス変化により、有利なシフトを提供するようにしてよい。他方、1.5μH以上を含み、0.5μHよりほぼ大きい最大変化を有するインピーダンス変化も、均一性の改善にとって有利である。また、上記のように、インダクタのインピーダンスを最大0.5μH変化させる揺動コアを有するインダクタのような可変インピーダンスも、コアの運動の半サイクル毎にコイルの周囲周り全360°にわたって電圧分布をシフトさせるのに十分である。電圧分布は270°、180°、90°、45°、30°、15°のようにコイルの周囲のより小さい部分にわたってシフトし、小さいほど有利である。同様に、コイル周囲の全体または一部に重なってインピーダンス変化の各サイクルまたは半サイクル毎に、1巻きを超える周りに電圧分布をシフトする多巻コイル上の電圧分布シフトも有利であると考えられる。従って、例えば、インダクタコアが、コアのシフト経路の一端から他端まで動くと、電圧分布は複数巻きの周りをシフトし、コイルの周囲の周りを数回まわる。従って、電圧分布は、コアの運動の半サイクル毎に360°を超える角度距離だけシフトすることができる。
【0081】
上記のように、コア部材318cと320cはコネクタ340と案内ロッド350によって一体に結合されている。その結果、同じく図5に示したように、コイル318aの中心から、コイル318aの中心に最も近いコア部材318cのエッジまでの距離xが増加すると、それに応じて、同じく図5に示したように、コイル320aの中心と、コイル320aの中心に最も近いコア部材320cのエッジとの間の距離が減少する。線形領域において、コイル318aと320aのインダクタンスLtune1とLtune2はそれぞれ、コイル318aと320aの各中心と、コイル318aと320aの中心に最も近い各コア部材318cと320cのエッジとの間の距離xの変化とともに、ほぼ線形に且つほぼ対向して変化する。従って、コイル318aのインダクタンスLtune1の増加は、コイル320aのインダクタンスLtune2の、対応するほぼ等しい減少によって実質的に補償される。逆に、コイル318aのインダクタンスLtune1の減少は、コイル320aのインダクタンスLtune2の、対応するほぼ等しい増加によって実質的に補償される。このように、チューニング可能インダクタンスの合計(Ltune1+Ltune2)は、2個のチューニング可能直列インダクタ318と320を、図5に示したように一体に結合することによって、ほぼ一定のままとなる。コイル318aと320aの個々のインダクタンスLtune1とLtune2がそれぞれ変化しても、チューニング可能インダクタンスの合計(Ltune1+Ltune2)が上記のようにほぼ一定なままであるので、コイル104のインピーダンスをRF発生装置300に再整合させる必要はないと考えられる。
【0082】
このように、結合されたコア部材318cと320cとを、それぞれのコイル318aと320b内で前後に周期的にシフトすることによって、インダクタ318と320の各インダクタンスを、堆積の進行に伴いサイクルを繰り返しコイル104の周りのすべてのまたはほぼすべての点にわたってコイル電圧分布をシフトするような方法で連続的且つ周期的に変化させてもよい。その上、コイル318と320のインダクタンスが変化するとき、コイル318と320のインダクタンスの合計はほぼ一定のままであるので、インピーダンスの変化の結果としてインピーダンスを再整合させる必要はほぼなくなると考えられる。コア部材318cと320cは、モータ352または他の適当なアクチュエータによって駆動できる。
【0083】
代替として、コア部材318cと320cを、非強磁性の、好ましくはアルミニウムまたは銅のような良導体材料で製作することができる。例えば銅製のコア部材318cは、コイル318aのインダクタンスLtune1を減衰または減少させる。この減少は、コア部材318cがコイル318aのほぼ中心に配置されるとき最大となる。従って、図5に示したように、コイル318aの中心から、コイル318aの中心に最も近いコア部材318cのエッジまでの距離をxで表すと、距離xの減少とともに、コイル318aのインダクタンスLtune1は減少する。逆に、距離xの増加とともに、コイル318aのインダクタンスLtune1は増加する。この場合にも、コイル318aのインダクタンスLtune1の増加は、対応するコイル320aのインダクタンスLtune2の、対応する減少によってほぼ精確に補償される。逆に、コイル318aのインダクタンスLtune1の減少も同様に、コイル320aのインダクタンスLtune2の、対応する等しい増加によって実質的に補償される。この場合にも、チューニング可能インダクタンスの合計(Ltune1+Ltune2)は、2個のチューニング可能直列インダクタ318と320を図5に示したように一体結合することによって、ほぼ一定のままとなる。導電性がもっと低い亜鉛のような材料も使用可能であるが、そのような材料は、あまり効果的でないと考えられる。
【0084】
案内ロッド350は、かなりの熱を発生するコイル318aと320aの内側に実質的に配設されているので、案内ロッド350を、例えばセラミックのような耐熱材料のロッドを成形することにより、耐熱性にしてよい。案内ロッド350はまた、水冷にすることもできる。コネクタ340に関しては、コイル318aと320aの実質的に外部であってコイル318aと320aとの間に配設されているので、耐熱性の懸念はない。
【0085】
図7はもうひとつの実施形態を示し、2個の、ほぼ同時にチューニング可能な、チューニング可能直列インダクタ322と324を有し、チューニング可能インダクタンスの合計(Ltune1+Ltune2)がほぼ一定のままであるように、2個のチューニング可能直列インダクタ322と324を有する。図7に示したように、2個のほぼ同一のコイル318aと320aは、同軸ではなく、2個のほぼ同一の金属ボックス318bと320b内に並べて配設されている。2個のほぼ同一のコア部材318cと320cは、それぞれほぼ平行な軸に沿った開口部を有し、それぞれコイル318aと320aの内側に配設され、実質的に剛性で、中空の、実質的に電気絶縁性の「S」型コネクタ345によって結合されている。剛性で電気絶縁性の一対の平行な案内ロッド355aと355bが、金属ボックス318bと320bの各中心と、コイル318aと320aの各軸とに沿って配設され、中空コア部材318cと320cの軸を貫通して、中空コネクタ345の同軸端345aと345bに入っている。この案内ロッド355aと355bは、金属ボックス318bと320bに固着されている。コア部材318c、320cとコネクタ345は、案内ロッドがコア部材318c、320cとコネクタ345の動きを機械的に案内するように、案内ロッド355aと355bに沿って摺動できる。コア部材318cと320cがこのようにコイル318aと320aに対して図7の矢印Aで示したように出入運動することによって、チューニング可能直列インダクタ318と320のそれぞれのインダクタンスLtune1とLtune2がほぼ同時にチューニングされる。
【0086】
この場合にも、距離をxは、図7に示すように、コイル318aの中心と、コイル318aの中心に最も近いコア部材318cのエッジとの間の距離である。距離xの減少とともに、コイル318aのインダクタンスLtune1は減少する。逆に、距離xの増加とともに、コイル318aのインダクタンスLtune1は増加する。この場合にも、コイル318aのインダクタンスLtune1の増加は、コイル320aのインダクタンスLtune2の、対応する減少によって実質的に補償される。逆に、コイル318aのインダクタンスLtune1の減少も同様に、コイル320aのインダクタンスLtune2の、対応する増加によって実質的に補償される。このようにして、同じくチューニング可能インダクタンスの合計(Ltune1+Ltune2)は、2個のチューニング可能直列インダクタ318と320を、図7に示したように一体結合することによって、ほぼ一定のままとなる。
【0087】
図8はもうひとつの実施形態を示し、ほぼ同時にチューニング可能な、2個のチューニング可能直列インダクタ362と364を有し、チューニング可能インダクタンスの合計(Ltune1+Ltune2)をほぼ一定のままに保つように、2個のチューニング可能インダクタ362と364を有する。図8に示すように、2個のほぼ同一なコイル318aと320aが並べて置かれ、コイル318aと320aの巻き線の間に挿入された支持ロッド380からブレード370が突出している。ブレード370と支持ロッド380は、図8に矢印Bで示すように、垂直方向上下に動かすことができ、それによってチューニング可能直列インダクタ362と364のそれぞれのインダクタンスLtune1とLtune2をほぼ同時にチューニングすることができる。
【0088】
図8に示すように、距離yは、コイル318aとコイル320aとの間の中心と、コイル318aの中心軸に最も近いブレード370のエッジとの間の距離である。ブレード370が強磁性材料製である場合、距離yの増加とともにコイル318aのインダクタンスLtune1は増加すると考えられる。ブレード370が強磁性材料製である場合、逆に、距離yが減少すれば、コイル318aのインダクタンスLtune1は減少すると考えられる。
【0089】
代替として、ブレード370が非磁性材料製である場合、距離yの増加とともに、コイル318aのインダクタンスLtune1は減少すると考えられる。ブレード370が非強磁性材料製である場合、逆に、距離yが減少すれば、コイル318aのインダクタンスLtune1は増加すると考えられる。
【0090】
この場合にも、コイル318aのインダクタンスLtune1の増加は、コイル320aのインダクタンスLtune2の、対応する減少によって実質的に補償される。逆に、コイル318aのインダクタンスLtune1の減少も同様に、コイル320aのインダクタンスLtune2の、対応する増加によって実質的に補償される。このようにして、チューニング可能インダクタンスの合計(Ltune1+Ltune2)は、2個のチューニング可能直列インダクタ318と320を図8に示したように一体結合することによって、ほぼ一定に維持される。
【0091】
図5、7、及び8に示す各実施形態において、矢印A及びBで示す運動は、ほぼ線形である。非線形運動や回転運動を含め、他の運動も用いることができる。しかし、コイル318a内の運動は、例えば、2個のチューニング可能直列インダクタ318と320を一体結合することによって、コイル320a内の対応する運動により実質的に補償されることが望ましい。
【0092】
図9は、インピーダンス整合ネットワークの更にもうひとつの実施形態306bの略図であって、それぞれキャパシタンスC1、C2、C3、C4を有するブロッキングコンデンサ324、326、328、330のセットによりブロックインピーダンス321aが備えられている以外は、図3のインピーダンス整合ネットワーク306と類似する。各コンデンサは、スイッチ322を介してコイルに選択的に結合することができる。
【0093】
ここでも、コイル104にほぼ一定のDCオフセットバイアスまたはDC自己バイアスVbiasをかけると、ブロッキングコンデンサ324、326、328、330の切替え可能なセットの離散キャパシタンス値は、スイッチ322を用いて、周期的に選択されることができ、それによって、繰り返しサイクル時に、点c,d間でコイル104に沿って離間した、対応する数の点において、有効電位Vを、ほぼ一定のDCオフセットバイアスまたはDC自己バイアス(V=Vbias)に等しくさせることができる。コイルに沿ったこれらの点の数と間隔は、コンデンサの数とそれぞれの容量値によって決まる。有効電位Vがほぼ一定のDCオフセットバイアスまたはDC自己バイアス(V=Vbias)に等しくなる、コイルに沿う点を時間とともに変化させることのできるこの能力はまた、RF電圧分布をコイル104に沿うこれらの離散点にシフトするために、またプラズマのイオン化パターンをシフトするために用いることができる。その結果、コイル104と基板112は、より均一且つ軸対称に加熱され、ターゲット110からスパッタされる材料は、時間平均的に、より均一に基板112上に堆積される。コンデンサを選ぶためのスイッチ322は、機械的、電子機械的、または電子的スイッチとすることができる。堆積の進行につれて繰り返しサイクルで、電圧分布をコイル104に沿った4点に順次シフトするため、コンデンサを順次選ぶことができる。容量値を増加(または減少)順にコンデンサの値を選べば、コイル電圧分布は、コンデンサが選ばれる毎に回転させられるだろう。代替として、コイル周りの電圧分布をシフトさせて意図するコイル加熱またはコイル104上のコイルスパッタリングパターンを達成するため、コンデンサを、ランダム順序または準ランダム順序を含め、様々な順序すなわちシーケンシャルに選ぶことができる。更に、離散インダクタを、切り替えられた離散コンデンサの代わりに、またはそれらと組み合わせて用いることも考えられる。
【0094】
図10は、インピーダンス整合ネットワークの更にもうひとつの実施形態306cの略図であって、インダクタンスLmatchを有する直列整合インダクタ314の代わりに可変キャパシタンスCtuneを有する直列可変コンデンサ332が備えられている以外は、図3のインピーダンス整合ネットワーク306と類似する。この場合にも、コイル104にほぼ一定なDCオフセットバイアス、またはDC自己バイアスVbiasをかけると、コイル104に沿った、点c,d間の任意の点において、有効電位Vを、ほぼ一定なDCオフセットバイアス、またはDC自己バイアス(V=Vbias)に等しくするように、ブロッキング可変コンデンサ308の可変キャパシタンスCblockを選ぶことができ、それによってコイル104に沿ったRF電圧分布を回転させて、プラズマイオン化パターンを回転させることができ、その結果、コイル104はより均一且つ軸対称に加熱されてスパッタされ、ターゲット110からスパッタされる材料は、時間平均的に、より均一に基板112上に堆積される。更に、2個の直列可変コンデンサ332と308を一体に結合することにより、可変容量リアクタンスの合計(ωCtune1+(ωCblock1がほぼ一定のままであるように、2個の直列可変コンデンサ332と308とをほぼ同時にチューニングしてもよく、その結果、一方のコンデンサのキャパシタンスの増加が、他方のコンデンサのキャパシタンスの適切な減少によって補償されるか、またはその逆となるようにすることができる。これは例えば、前後に並んだコンデンサプレート間の各間隔を変更するようにコンデンサプレートを機械的に動かすか、または前後に並んだプレート間で誘電体を動かすか、または両方によって行なうことができる。
【0095】
その結果、コイル104とRF発生装置300(図2)との間に一旦良好な整合ができれば、インピーダンス整合ネットワーク306cを用いたコイル104のインピータンスを再整合する必要性を低減または排除することができる。
【0096】
図11は、インピーダンス整合ネットワークの更にもうひとつの実施形態306dの略図であって、可変キャパシタンスCtuneを有する直列可変コンデンサ332の代わりにチューニング可能インダクタンスLmatchを有するチューニング可能直列インダクタ334を備えていること以外は、図3のインピーダンス整合ネットワーク306cに類似している。この実施形態においては、チューニング可能直列インダクタ334と可変コンデンサ308とを一体に結合することによって、チューニング可能容量リアクタンスと可変容量リアクタンスとの差ωLtune−(ωCblockをほぼ一定に保持し、コイル104とRF発生装置300(図2)との間に一旦良好な整合ができれば、インピーダンス整合ネットワーク306dを用いたコイル104の再整合は必要がないという利点がある。
【0097】
図12は、インピーダンス整合ネットワークのもうひとつの実施形態306eの略図であって、チューニング可能インダクタンスLtune1を有するチューニング可能直列インダクタ318の代わりに可変キャパシタンスCtuneを有する直列可変コンデンサ336を備え、チューニング可能直列インダクタ320のインダクタンスがLtune2ではなくLtuneであること以外、図4のインピーダンス整合ネットワーク306aに類似する。この実施形態においても、直列チューニング可能インダクタ320と可変コンデンサ336とを一体に結合することによって、チューニング可能容量リアクタンスと可変容量リアクタンスとの差ωLtune−(ωCtune1をほぼ一定に保持し、コイル104とRF発生装置300(図2)との間に一旦良好な整合ができれば、インピーダンス整合ネットワーク306eを用いたコイル104の再整合の必要性が排除されるという利点がある。
【0098】
コイル104は、それを支持チャンバシールド106から電気的に絶縁する複数のコイルスタンドオフ120(図1)によってチャンバシールド106上に保持されている。更に、絶縁性コイルスタンドオフ120は、コイル104からチャンバシールド106に至る完全な導電路の形成を防ぎつつ、ターゲット110からコイルスタンドオフ120上への導体材料の繰り返し堆積を可能にする、内部ラビリンス構造を有する。そのような導電路が完成すると、コイル104を、チャンバシールド106(普通はアースされている)に短絡させる可能性があるので望ましくない。
【0099】
RFパワーは、絶縁性フィードスルースタンドオフ124によって支持されるフィードスルーボルトによってコイル104に供給される。フィードスルースタンドオフ124は、コイル支持スタンドオフ120と同様に、コイル104をチャンバシールド106に短絡させる可能性のある導電路を形成することなく、ターゲットからフィードスルースタンドオフ124上への導体材料の繰り返し堆積を可能にする。コイルフィードスルースタンドオフ124は、コイル支持スタンドオフ120と同様に、シールドの壁126とコイル104との間の短絡発生を防止するための内部ラビリンス構造を有する。フィードスルーは、インピーダンス整合ネットワーク306(図2に略図示)を介してRF発生装置300(同じく図2に略示)に結合されている。
【0100】
上記のように、コイル104により放射されるRFパワーは、チャンバ内のプラズマにエネルギを与え、ターゲット110からスパッタされるターゲット材料をイオン化する。スパッタされたイオン化ターゲット材料は次に、負(DCまたはRF)電位にある基板112に誘引されて、イオン化された堆積材料を基板112に誘引する。
【0101】
以上図示し検討した実施形態において、1回巻きコイル104を用いたが、もちろんその代わりに多数巻コイルを用いることができる。また更に、図示のリボン型コイル104の代わりに、コイル104の各巻きを水冷チューブ状の螺旋形つまりスパイラル状コイルとすることができる。また、1996年7月10日に出願され(Attorney Docket #1390-CIP/PVD/DV)、この出願の譲受人に譲渡された、出願番号第08/680,335号、同時係属中の出願、発明の名称「プラズマ発生用及びスパッタリングリング用のコイル」(本明細書に全体として援用されている)に記載されているように、平坦な、端部が開いた、環状のリングも用いることができる。
【0102】
以上考察した各実施形態は、プラズマチャンバ内の単一のコイルを用いる。本発明は、RFパワーを供給される2個以上のコイルまたはシールドを有するプラズマチャンバにも適用できることを認識すべきである。例えば、本発明は、前記の同時係属中の出願番号第08/559,345号、出願日1995年11月15日、発明の名称「プラズマ内にヘリコン波を放出する方法と装置」(Attorney Docket No. 938)の出願に記載されているタイプのヘリコン波を放出するための複数コイルチャンバに適用することができる。
【0103】
適切なRF発生装置と整合回路には、当業者には周知のコンポーネントが用いられる。例えば、整合回路とアンテナを有し、最適周波数整合を「周波数ハント」する能力のあるENI Genesis シリーズのようなRF発生装置が適している。コイル104へのRFパワーを発生する発生装置の周波数は2MHzが望ましいが、この範囲は変化することが予想される。例えば、1MHzから20MHzが適していると考えられる。RFパワーの設定は1.5kWが望ましいが、1.5〜5kWでも満足できる。更に、バイアス用ターゲット110のDCパワー設定は8〜12kWが望ましいが、更に広い範囲、例えば2〜24kWでも満足できる。ペデスタル114のバイアス電圧−30V,DCも適している。上記各パラメータの値は具体的な用途によって異なる。
【0104】
Ar(アルゴン)を含む種々のスパッタリングリングガスを利用することができ、NF、CF、H、O、及び他の多くの反応ガスを用いることができる。0.1〜100mTorrの種々のスパッタリングガス圧力が適している。イオン化PVD用には、10〜50mTorrの圧力が、被スパッタ材料のイオン化にしばしば好結果をもたらす。
【0105】
もちろん当業者には、本発明の変更がその種々の局面において明らかであり、十分な検討の後に明らかになる変更もあれば、単なる機械的電子的設計の定石の変更もあり得る。具体的な用途による具体的な設計による他の実施形態も可能である。従って、本発明の範囲は、この明細書に記載した特定の実施形態によっては限定されず、添付の請求項及びそれと同等の事項によってのみ定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態に従った態様によって、層をスパッタリング堆積させるためのプラズマ発生チャンバの部分断面斜視図である。
【図2】図1のプラズマ発生チャンバとの電気的相互接続の略図である。
【図3】図2のプラズマ発生チャンバとインピーダンス整合ネットワークの一実施形態の略図である。
【図4】図2のプラズマ発生チャンバとインピーダンス整合ネットワークの別の一実施形態の略図である。
【図5】本発明の一実施形態によるチューニング可能な一対のインダクタの一部断面略図である。
【図6】図5の実施形態による誘導値の計算結果を示すグラフである。
【図7】本発明の別の一実施形態によるチューニング可能な一対のインダクタの一部断面略図である。
【図8】本発明の更に別の一実施形態によるチューニング可能な一対のインダクタコイルの部分断面略図である。
【図9】図2のプラズマ発生チャンバとインピーダンス整合ネットワークの更に別の一実施形態の略図である。
【図10】図2のプラズマ発生チャンバとインピーダンス整合ネットワークの更に別の一実施形態の略図である。
【図11】図2のプラズマ発生チャンバとインピーダンス整合ネットワークの更に別の一実施形態の略図である。
【図12】図2のプラズマ発生チャンバとインピーダンス整合ネットワークの更に別の一実施形態の略図である。
【図13】インピーダンス変化の関数としての、RF電圧分布のコイルに沿ったシフトを表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に材料をスパッタリングする半導体製造装置であって、
スパッタリング用の前記材料のターゲットを有し、内部にプラズマ生成領域を有する半導体製造チャンバと、
前記チャンバに保持され、且つ、前記スパッタされたターゲット材料をイオン化して前記基板上に前記スパッタされたターゲット材料の層を形成するために前記プラズマ生成領域にエネルギを結合するように配置されたコイルと、
前記コイルに沿った電圧分布を時間平均化するためのチューニング可能可変リアクタンスを有し、前記コイルに結合されたインピーダンス整合ボックスと、を備える半導体製造装置。
【請求項2】
前記チューニング可能可変リアクタンスは、複数のコンデンサと、前記コンデンサを前記コイルに選択的に結合するためのスイッチとを含む請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
半導体製造装置であって、
内部にプラズマ生成領域を有する半導体製造チャンバと、
前記チャンバに保持され、且つ、前記プラズマ生成領域内にプラズマを維持するため、前記プラズマ生成領域にエネルギを結合するように配置されたコイルであって、前記コイルに沿って複数の電圧が分布しているコイルと、
前記コイルに沿って電圧分布をシフトさせる手段と、を備える半導体製造装置。
【請求項4】
前記シフト手段が、前記電圧分布を前記コイルに沿って周期的にシフトさせる請求項3に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記シフト手段が、複数のコンデンサと、前記コンデンサを前記コイルとアースとの間で選択的に結合するためのスイッチとを備える請求項3に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
前記シフト手段が、前記電圧分布の電圧値を所定の順序で前記コイルに沿った複数の点にシフトさせ、前記各点の位置は、選択されたコンデンサのキャパシタンスの関数である請求項5に記載の半導体製造装置。
【請求項7】
前記シフト手段が、前記電圧分布を少なくとも15°の角距離だけシフトさせる請求項3に記載の半導体製造装置。
【請求項8】
前記シフト手段が、前記電圧分布を少なくとも90°の角距離だけシフトさせる請求項3に記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記シフト手段が、前記電圧分布を少なくとも180°の角距離だけシフトさせる請求項3に記載の半導体製造装置。
【請求項10】
半導体製造装置であって、
内部にプラズマ生成領域を有する半導体製造チャンバと、
前記チャンバに保持され、且つ、前記プラズマ生成領域内にプラズマを維持するために、前記プラズマ生成領域にエネルギを結合するように配置されたコイルであって、前記コイルに沿って複数の電圧が分布しているコイルと、
複数のコンデンサと、
複数の結合状態を有し、各状態は前記複数のコンデンサの選択されたコンデンサを前記コイルとアースとの間で結合しているスイッチと、を備える半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−57639(P2009−57639A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286640(P2008−286640)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【分割の表示】特願平10−173770の分割
【原出願日】平成10年5月18日(1998.5.18)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】