説明

半導体記憶装置

【課題】データ保持のためのリフレッシュ動作の頻度を低減し、消費電力の小さいDRAMを提供する。また、DRAMに占めるキャパシタの面積を縮小し、集積度の高い半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】ビット線、ワード線、トランジスタおよびキャパシタからなる半導体記憶装置であり、トランジスタは、ソース電極およびドレイン電極と、少なくともソース電極およびドレイン電極の上面と接する酸化物半導体膜と、少なくとも酸化物半導体膜の上面と接するゲート絶縁膜とを有し、上面から見て網状の導電膜の網の目の部分に設けられる。ここで、キャパシタは、一対の電極の一方と、網状の導電膜と、一対の電極の一方および網状の導電膜の間に設けられた第2の絶縁膜と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トランジスタなどの半導体素子を含む回路を有する半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)は、1つのトランジスタと1つのキャパシタで1ビット分のデータを記憶することのできる半導体記憶装置である。DRAMは、単位メモリセルあたりの面積が小さく、モジュール化した際の集積化が容易であり、かつ安価に製造できる利点を有する。
【0003】
DRAMは、他の半導体集積回路と同様にスケーリング則に従って回路パターンの微細化が進められてきた。ところが、トランジスタの占有面積を縮小していくと、DRAMの面積の大部分はキャパシタが占めることになり、またキャパシタの面積を低減することは困難であった。これは、微細化することでトランジスタのソースおよびドレイン間のリークが増大し、キャパシタに保持される電荷が徐々に失われていくためである。即ち、DRAMのキャパシタには、前述のリークで失われる電荷の影響でデータが変動しない程度に大きな容量が必要となる。
【0004】
そのため、DRAMは、必要な電荷が失われる前に充電し直す(リフレッシュする)必要が生じる。しかしながら、キャパシタの容量が低減するとリフレッシュ動作の頻度が高まり、その結果消費電力が高くなってしまう問題がある。
【0005】
このような問題に対して、ストレージノードコンタクトから突出するように形成された筒状の側壁絶縁膜の内壁から突出端を通り、外側側壁の下端を残すようにストレージノード電極を形成することで小面積かつ大容量のキャパシタを有するDRAMが開示されている(特許文献1参照。)
【0006】
しかしながら、このような構造を有するDRAMは、構造が複雑であることからプロセス上の困難さが増し、歩留まりが低下することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−145036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のDRAMは、データを保持するために数十ミリ秒間隔でリフレッシュ動作をしなければならず、消費電力の増大を招いていた。また、頻繁にトランジスタのオン状態とオフ状態が切り換わるのでトランジスタの劣化が問題となっていた。この問題は、トランジスタの微細化が進み、記憶容量が増大するにつれて顕著になっていった。
【0009】
そこで、DRAMにおけるデータ保持のためのリフレッシュ動作の頻度を低減が可能であり、消費電力の小さい半導体記憶装置を提供することを課題の一とする。
【0010】
また、DRAMに占めるキャパシタの面積を縮小し、集積度の高い半導体記憶装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、ビット線、ワード線、トランジスタおよびキャパシタからなる半導体記憶装置である。トランジスタは、一対の電極と、少なくとも一対の電極の両方の上面と接する酸化物半導体膜と、少なくとも酸化物半導体膜の上面と接する第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜を介して酸化物半導体膜と重畳するゲート電極と、を有し、上面から見て網状の導電膜の網の目の部分に設けられる。ここで、キャパシタは、一対の電極の一方と、網状の導電膜と、一対の電極の一方および網状の導電膜の間に設けられた第2の絶縁膜と、を有する。なお、第1の絶縁膜が一対の電極の側面を覆って設けられない場合、第2の絶縁膜は一対の電極の側面を覆って設けられる。
【0012】
「網状」とは、導電膜などが縦、横に交差する形状をいう。また、「網の目」とは、縦、横に交差する形状の隙間をいう。
【0013】
なお、「一対の容量電極」とは、キャパシタの容量を形成する一対の電極をいう。また、「誘電体膜」とは、キャパシタの一対の容量電極間にある膜をいい、一対の容量電極間に電圧を印加することで分極が生じる。
【0014】
一対の電極はトランジスタのソース電極およびドレイン電極として機能する。また、第1の絶縁膜はトランジスタのゲート絶縁膜として機能する。
【0015】
ここで、ゲート電極はワード線と接続され、一対の電極の他方はビット線と接続され、網状の導電膜は接地される(GND)。
【0016】
なお、一対の電極間の空間を埋める第3の絶縁膜を設けても構わない。なお、一対の電極間の空間を埋める第3の絶縁膜を、一対の電極に挟まれる領域に第3の絶縁膜を設けると言い換えてもよい。第3の絶縁膜を設けることにより、酸化物半導体膜および第1の絶縁膜が、一対の電極の形成する段差を乗り越えて形成されなくてもよいために酸化物半導体膜および第1の絶縁膜の被覆性が増し、ゲート電極と一対の電極との間に生じるリーク電流を低減することができる。ただし、第3の絶縁膜を設けないからといって、必ずしもゲート電極と一対の電極との間でリーク電流が生じるわけではない。酸化物半導体膜および第1の絶縁膜の被覆性は、成膜方法および一対の電極の形状に起因する。例えば、一対の電極がテーパー角を有することにより、一対の電極が形成する段差における酸化物半導体膜および第1の絶縁膜の被覆性が増すこともある。
【0017】
なお、第1の絶縁膜および第3の絶縁膜の少なくとも一方が加熱処理により酸素を放出する絶縁膜であると好ましい。
【0018】
第1の絶縁膜または第3の絶縁膜から酸化物半導体膜に酸素が供給されることで、酸化物半導体膜と第1の絶縁膜または第3の絶縁膜との界面準位密度を低減できる。この結果、トランジスタの動作などに起因して、酸化物半導体膜と第1の絶縁膜または第3の絶縁膜との界面にキャリアが捕獲されることを抑制することができ、電気特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。
【0019】
さらに、酸化物半導体膜の酸素欠損に起因して電荷が生じる場合がある。一般に酸化物半導体膜の酸素欠損は、一部がドナーとなりキャリアである電子を放出する。この結果、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。第1の絶縁膜または第3の絶縁膜から酸化物半導体膜に酸素が十分に供給されることにより、しきい値電圧がマイナス方向へシフトする要因である、酸化物半導体膜の酸素欠損を低減することができる。
【0020】
第1の絶縁膜および第3の絶縁膜の少なくともいずれかに加熱処理により酸素を放出する絶縁膜を用いる場合、第2の絶縁膜として放出された酸素が透過しない(第1の絶縁膜、第3の絶縁膜よりも酸素の拡散係数が小さい)絶縁膜を用いると好ましい。第2の絶縁膜が上記のような性質を有することにより、第1の絶縁膜、第3の絶縁膜から放出された酸素の半導体記憶装置から外方拡散していく量を低減することができる。ただし、本発明の一態様は、加熱処理により酸素を放出する絶縁膜が網状の導電膜に囲まれているため、網状の導電膜が酸素を透過しない場合、第2の絶縁膜を設けない構成としても構わない。
【0021】
酸化物半導体膜として、バンドギャップが2.5eV以上、好ましくは3.0eV以上の材料を選択すればよい。バンドギャップを前述の範囲とすることによって、トランジスタのオフ電流を小さくすることができる。なお、本発明の一態様を、バンドギャップが前述の範囲に入り、かつ半導体特性を示す酸化物半導体ではない材料に置き換えて適用しても構わない。
【0022】
また、酸化物半導体膜は、間接的または直接的にキャリアを生成する不純物(水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希ガス、窒素、リンおよびホウ素など)が極少なくなるよう高純度化されていると好ましい。さらに、酸素欠損を極力低減することが好ましい。酸化物半導体膜中の不純物および酸素欠損を低減することによって、酸化物半導体膜中におけるキャリアの生成が低減され、トランジスタのオフ電流を小さくすることができる。
【0023】
このように、オフ電流の小さいトランジスタを設けることによって、DRAMのキャパシタに蓄積される電荷の保持特性を向上させることができ、結果、リフレッシュ動作の頻度を低減することが可能となる。
【0024】
なお、網状の導電膜は、容量電極の他方としての機能だけではなく、ガードリングとしての機能を有する。ガードリングとしての機能を有するため、個々のメモリセルの静電破壊を防止することができ、歩留まりが高く、信頼性の高いDRAMを得ることができる。
【0025】
また、本発明の一態様を適用することにより、キャパシタを一対の電極の他方の側面に沿って形成することができる。一対の電極の他方の側面の面積は、一対の電極の厚さを制御することで、一対の電極の他方の上面の面積より大きくできる。そのため、必要な容量を得るためのキャパシタの面積を低減できる。
【発明の効果】
【0026】
オフ電流の小さいトランジスタの適用およびキャパシタの容量増大により、DRAMにおけるデータ保持のためのリフレッシュ動作の頻度を低減し、消費電力の小さい半導体記憶装置を提供する。
【0027】
また、DRAMのキャパシタを一対の電極の他方の側面に沿って設けることで、キャパシタの容量を増大しつつ占有面積を縮小することができ、集積度の高い半導体記憶装置が提供できる。
【0028】
また、DRAMのキャパシタの容量電極でもある網状の導電膜がガードリングとして機能することによって、個々のメモリセルの静電破壊を防止でき、歩留まりが高く、信頼性の高い半導体記憶装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一態様に係る半導体記憶装置の例を示す上面図、断面図および回路図。
【図2】本発明の一態様に係る半導体記憶装置の例を示す断面図。
【図3】本発明の一態様に係る半導体記憶装置の例を示す上面図および断面図。
【図4】本発明の一態様に係る半導体記憶装置の作製方法の例を示す上面図および断面図。
【図5】本発明の一態様に係る半導体記憶装置の作製方法の例を示す上面図および断面図。
【図6】本発明の一態様に係る半導体記憶装置の作製方法の例を示す上面図および断面図。
【図7】本発明の一態様に係る半導体記憶装置の作製方法の例を示す上面図および断面図。
【図8】本発明の一態様に係る半導体記憶装置の一例を示す回路図。
【図9】本発明の一態様に係るCPUの具体例を示すブロック図およびその一部の回路図。
【図10】本発明の一態様に係る電子機器の例を示す斜視図。
【図11】酸化物半導体の一例。
【図12】酸化物半導体の一例。
【図13】酸化物半導体の一例。
【図14】移動度算出のための式。
【図15】ゲート電圧と電界効果移動度の関係。
【図16】ゲート電圧とドレイン電流の関係。
【図17】ゲート電圧とドレイン電流の関係。
【図18】ゲート電圧とドレイン電流の関係。
【図19】トランジスタの特性。
【図20】トランジスタの特性。
【図21】トランジスタの特性。
【図22】トランジスタのオフ電流の温度依存性。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0031】
以下、本発明の説明を行うが、本明細書で用いる用語について簡単に説明する。まず、トランジスタのソースとドレインについては、本明細書においては、一方をドレインと呼ぶとき他方をソースとする。すなわち、電位の高低によって、それらを区別しない。従って、本明細書において、ソースとされている部分をドレインと読み替えることもできる。
【0032】
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えばグラウンド電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧を電位と言い換えることが可能である。また、電位VH、電位VDD、電位GNDなどのように電位を表記したとしても、厳密に電位VH、電位VDD、電位GNDとなっていないことがある。よって、電位VH、電位VDD、電位GNDは、電位VH近傍、電位VDD近傍、電位GND近傍と置き換えることができる。なお、「接地する」と「GNDに接続する」は同義である。
【0033】
本明細書においては、「接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在している場合だけのこともある。
【0034】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0035】
なお、本明細書では、マトリクスにおいて特定の行や列、位置を扱う場合には、符号に座標を示す記号をつけて、例えば、「トランジスタTr_n_m」、「ビット線BL_m」というように表記するが、特に、行や列、位置を特定しない場合や集合的に扱う場合、またはどの位置にあるか明らかである場合には、「トランジスタTr」、「ビット線BL」、または、単に「トランジスタ」、「ビット線」というように表記することもある。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様を適用した半導体記憶装置について説明する。
【0037】
図1(A)は半導体記憶装置であるメモリセルアレイの一部を切り取った上面図である。図1(A)における一点鎖線A−Bに対応する断面A−Bを図1(B)に示す。また、メモリセルの回路図を図1(C)に示す。
【0038】
図1(A)より、メモリセル150は、網状の導電膜118、酸化物半導体を用いたトランジスタ140、およびキャパシタ130を有する。ここで、最小加工寸法をFとすると、メモリセル150は縦が2F、横が4Fなので、セル面積は8Fとなる。
【0039】
メモリセル150は、上面から見て網状の導電膜118の網の目に設けられている。そのため、個々のメモリセルが静電破壊することを防止するガードリングとしての機能を有する。
【0040】
また、網状の導電膜118は、キャパシタ130の容量電極としての機能を有する。なお、容量電極が図1(A)のように網状に設けられることにより、ドレイン電極108bの厚さが幅の1/3より大きいとき、図3(A)に示すメモリセル153のキャパシタ133と比較して、メモリセル150とメモリセル153の面積は同じで、キャパシタ130は表面積を大きくすることができる。
【0041】
詳細なメモリセル150の構成について、図1(B)を用いて説明する。
【0042】
メモリセル150は、基板100と、基板100上に設けられた第1の絶縁膜102と、第1の絶縁膜102上に設けられたビット線104と、ビット線104上に設けられた第2の絶縁膜106と、第2の絶縁膜106上にあり、第2の絶縁膜106に設けられた開口部を介してビット線104と接続するソース電極108aを有するトランジスタ140、およびキャパシタ130と、トランジスタ140およびキャパシタ130を覆って設けられる第5の絶縁膜116と、第5の絶縁膜116に設けられた開口部を介してトランジスタ140のゲート電極120と接続するワード線122と、を有する。
【0043】
メモリセル150を構成するトランジスタ140は、ソース電極108aと、ソース電極108aと分離して設けられ、ソース電極108aと同一層かつ同一材料であるドレイン電極108bと、ソース電極108aおよびドレイン電極108b上にあり、ソース電極108aおよびドレイン電極108bと少なくとも一部が接する酸化物半導体膜110と、少なくとも酸化物半導体膜110上に設けられた第3の絶縁膜112と、第3の絶縁膜112を介して酸化物半導体膜110と重畳するゲート電極120と、を有する。
【0044】
メモリセル150を構成するキャパシタ130は、前述のトランジスタ140を覆って設けられた第4の絶縁膜114からなる誘電体膜と、上面から見てトランジスタ140を囲って設けられる網状の導電膜118、およびドレイン電極108bからなる一対の容量電極と、を有する。
【0045】
図1(B)では、簡略化のため各層はテーパー角を有さない形状にて示しているが、これに限定されるものではない。各層はテーパー角を有する形状であっても構わない。
【0046】
なお、本明細書において、「AはBを覆って設けられる」とは、AがBの側面および上面を覆う形状を有することをいう。また、AとBとの間に、AおよびBとは異なるCがある場合についても、「AはBを覆って設けられる」と表記する。なお、Cは単層とは限らず、積層であっても構わない。
【0047】
また、本明細書において、「A上に設けられたB」とは、少なくともAの上面と一部が接してBが設けられることをいう。同様に、「Aと重畳するB」とは、上面図においてAに対してBの一部または全部が重なって設けられることをいう。
【0048】
次に、メモリセル150の回路構成について図1(C)を用いて説明する。
【0049】
メモリセル150は、トランジスタ140のソースとビット線104とが接続し、トランジスタ140のゲートとワード線122とが接続し、トランジスタ140のドレインとキャパシタ130の一対の容量電極の一方とが接続し、キャパシタ130の一対の容量電極の他方とGNDとが接続する。
【0050】
ビット線104は、センスアンプ170に接続される。
【0051】
このメモリセルに着目し、データの書き込み方法および読み出し方法について以下に説明する。
【0052】
まずは、書き込み方法について説明する。例えば、ビット線104を所定の電位VDD(キャパシタの充電に十分な電位)とし、ワード線122を所定の電位VH(トランジスタ140のしきい値電圧(Vth)にVDDを加えたよりも高い電位)とすると、キャパシタ130にVDDが充電される。次に、ワード線122の電位をGND(またはGND以下)にすることで、キャパシタ130にデータ1に対応する電荷が保持される。以上がデータ1の書き込み方法である。
【0053】
同様にビット線104の電位をGNDとし、ワード線122を所定の電位VHとすると、キャパシタ130は非充電状態になる。次に、ワード線122の電位をGND(またはGND以下)とすることでキャパシタ130にデータ0に保持される。以上がデータ0の書き込み方法である。
【0054】
このようにして書き込まれたデータは、トランジスタ140のオフ電流が小さいため、非常に長い期間に渡って保持することが可能となる。
【0055】
なお、トランジスタ140のオフ電流が小さいことを利用し、メモリセル150を多値化してもよい。その場合、キャパシタ130に保持される電位の値によって、データを区別することができる。
【0056】
次に、データの読み出し方法について説明する。まずは、ビット線104を所定の電位(定電位)とする。次に、ワード線122をVHとすることで、キャパシタ130に書き込まれたデータに対応する電位をビット線104に与える。与えられた電位をセンスアンプ170にて読み出す。なお、データは読み出されると同時に失われるため、読み出し動作後に再度データを書き込む必要がある。以上がデータの読み出し方法である。
【0057】
なお、メモリセル150を複数用いたメモリセルアレイについては、後述するためここでは説明しない。
【0058】
酸化物半導体膜110は、厚さが1nm以上40nm以下とする。好ましくは、5nm以上15nm以下とする。特に、チャネル長が30nm以下のトランジスタでは、酸化物半導体膜110の厚さを5nm程度とすることで、短チャネル効果を抑制でき、安定な電気的特性を有することができる。
【0059】
酸化物半導体膜110としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、トランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとして、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)またはアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0060】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0061】
例えば、酸化物半導体膜110として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0062】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、In、GaおよびZnを主成分として有する酸化物という意味であり、In、GaおよびZnの比率は問わない。また、In、GaおよびZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0063】
酸化物半導体膜110としてIn−Zn系酸化物を用いる場合、原子数比で、In/Zn=0.5以上50以下、好ましくはIn/Zn=1以上20以下、さらに好ましくはIn/Zn=1.5以上15以下とする。Znの原子数比を前述の範囲とすることで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることができる。ここで、化合物の原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとすると好ましい。
【0064】
酸化物半導体膜110として、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される材料を用いてもよい。ここで、Mは、Ga、Al、Fe、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0)で表記される材料を用いてもよい。
【0065】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1またはIn:Ga:Zn=2:2:1の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。または、In:Sn:Zn=1:1:1、In:Sn:Zn=2:1:3またはIn:Sn:Zn=2:1:5の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0066】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物を用いたトランジスタでは、比較的容易に高い電界効果移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物を用いたトランジスタでも、バルク内欠陥密度を低減することにより電界効果移動度を高めることができる。
【0067】
なお、例えば、In、GaおよびZnの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a―A)+(b―B)+(c―C)≦rを満たすことをいい、rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0068】
酸化物半導体膜110は、トランジスタのオフ電流を低減するため、バンドギャップが2.5eV以上、好ましくは3.0eV以上の材料を選択する。ただし、酸化物半導体膜に代えて、バンドギャップが前述の範囲である半導体性を示す材料を用いても構わない。
【0069】
酸化物半導体膜110は、水素、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などが低減され、極めて不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。そのため、酸化物半導体膜110をチャネル領域に用いたトランジスタはオフ電流を小さくできる。
【0070】
酸化物半導体膜110中の水素濃度は、5×1019cm−3未満、好ましくは5×1018cm−3以下、より好ましくは1×1018cm−3以下、さらに好ましくは5×1017cm−3以下とする。
【0071】
アルカリ金属は酸化物半導体を構成する元素ではないため、不純物である。アルカリ土類金属も、酸化物半導体を構成する元素ではない場合において、不純物となる。特に、アルカリ金属のうちナトリウム(Na)は、絶縁膜中に拡散してNaとなる。また、Naは、酸化物半導体膜内において、酸化物半導体を構成する金属と酸素の結合を分断する、または、その結合中に割り込む。その結果、例えば、しきい値電圧がマイナス方向にシフトすることによるノーマリオン化、電界効果移動度の低下などの、トランジスタ特性の劣化が起こり、加えて、特性のばらつきも生じる。この不純物によりもたらされるトランジスタ特性の劣化と、特性のばらつきは、酸化物半導体膜中の水素濃度が十分に低い場合において顕著に現れる。従って、酸化物半導体膜中の水素濃度が1×1018cm−3以下、特に1×1017cm−3以下である場合には、上記不純物の濃度を低減することが望ましい。具体的に、Na濃度の測定値は、5×1016cm−3以下、好ましくは1×1016cm−3以下、更に好ましくは1×1015cm−3以下とするとよい。同様に、リチウム(Li)濃度の測定値は、5×1015cm−3以下、好ましくは1×1015cm−3以下とするとよい。同様に、カリウム(K)濃度の測定値は、5×1015cm−3以下、好ましくは1×1015cm−3以下とするとよい。
【0072】
以上に示した酸化物半導体膜110を用いることでトランジスタのオフ電流を小さくできる。例えば、チャネル長が3μm、チャネル幅が1μmのときのトランジスタのオフ電流を1×10−18A以下、または1×10−21A以下、または1×10−24A以下とすることができる。そのため、データの保持特性に優れ、消費電力の小さいメモリセルを作製することができる。
【0073】
酸化物半導体膜110として、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)または非晶質などの状態をとる。
【0074】
好ましくは、酸化物半導体膜110は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
【0075】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0076】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは上面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0077】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の上面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し上面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0078】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは上面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または上面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは上面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0079】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0080】
CAAC−OS膜は、下地となる膜が平坦であると形成されやすい。具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下となるように下地となる膜を設ける。なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、数式(1)にて定義される。
【0081】
【数1】

【0082】
なお、数式(1)において、Sは、測定面(座標(x,y)(x,y)(x,y)(x,y)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Zは測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0083】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部については実施の形態6にて詳述する。
【0084】
基板100に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板100として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI(Silicon On Insulator)基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板100として用いると好ましい。
【0085】
また、基板100として、可とう性基板を用いてもよい。その場合は、可とう性基板上に直接的にトランジスタを作製する。なお、可とう性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可とう性基板である基板100に転置する方法もある。その場合には、非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0086】
第1の絶縁膜102は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化タンタルおよび酸化マグネシウムの一種以上を選択して、単層または積層で用いればよい。
【0087】
ビット線104は、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ag、TaおよびW、それらの窒化物、酸化物ならびに合金から一種以上選択し、単層でまたは積層で用いればよい。なお、ビット線104は、メモリセル150の長手方向に平行に設けられる。
【0088】
第2の絶縁膜106は、第1の絶縁膜102と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0089】
ソース電極108aおよびドレイン電極108bは、ビット線104と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。なお、図1(B)において、ソース電極108aおよびドレイン電極108bは、厚さが異なるように図示されているが、あくまで図を理解しやすくするための表現である。そのため、ソース電極108aおよびドレイン電極108bが同じ厚さであっても構わない。
【0090】
ドレイン電極108bは、その側面に沿ってキャパシタ130が設けられる。そのため、ドレイン電極108bの厚さが厚いほど、キャパシタ130の容量は大きくなる。ただし、ドレイン電極108bの厚さを厚くしすぎると、後に形成する層の被覆性を低下させてしまうことがある。そのため、ドレイン電極108bの厚さは、最小加工寸法Fの1/3倍以上10倍以下、好ましくは1倍以上4倍以下とする。
【0091】
第3の絶縁膜112は、第1の絶縁膜102と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0092】
第2の絶縁膜106および第3の絶縁膜112の少なくとも一方は、加熱処理により酸素を放出する絶縁膜を用いると好ましい。加熱処理により酸素を放出する膜を用いることで、酸化物半導体膜110および酸化物半導体膜110の界面近傍に生じる欠陥を修復することができ、トランジスタの電気特性の劣化を抑制できる。
【0093】
「加熱処理により酸素を放出する」とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量が1.0×1018cm−3以上、特に3.0×1020cm−3以上であることをいう。
【0094】
ここで、TDS分析を用いた酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
【0095】
TDS分析したときの気体の全放出量は、放出ガスのイオン強度の積分値に比例する。そしてこの積分値と標準試料との比較により、気体の全放出量を計算することができる。
【0096】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および絶縁膜のTDS分析結果から、絶縁膜の酸素分子の放出量(NO2)は、数式(2)で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるガスの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてほかにCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0097】
O2=NH2/H2×SO2×α (2)
【0098】
H2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、絶縁膜をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。αは、TDS分析におけるイオン強度に影響する係数である。数式(2)の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照する。なお、上記絶縁膜の酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cmの水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定した。
【0099】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0100】
なお、NO2は酸素分子の放出量である。酸素原子に換算したときの放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0101】
上記構成において、加熱処理により酸素を放出する膜は、酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))であってもよい。酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))とは、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法により測定した値である。
【0102】
第2の絶縁膜106および第3の絶縁膜112から酸化物半導体膜110に酸素が供給されることで、酸化物半導体膜110と第2の絶縁膜106との界面準位密度、および酸化物半導体膜110と第3の絶縁膜112との界面準位密度を低減できる。この結果、トランジスタの動作などに起因して、酸化物半導体膜110と第2の絶縁膜106との界面、および酸化物半導体膜110と第3の絶縁膜112との界面にキャリアが捕獲されることを抑制することができ、電気特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。
【0103】
さらに、酸化物半導体膜110の酸素欠損に起因して電荷が生じる場合がある。一般に酸化物半導体膜の酸素欠損は、一部がドナーとなりキャリアである電子を放出する。この結果、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。第2の絶縁膜106および第3の絶縁膜112から酸化物半導体膜110に酸素が十分に供給されることにより、しきい値電圧がマイナス方向へシフトする要因である、酸化物半導体膜の酸素欠損を低減することができる。
【0104】
ゲート電極120は、ビット線104と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0105】
第4の絶縁膜114は、第2の絶縁膜106および第3の絶縁膜112と比べて、温度が250℃以上450℃以下の範囲における酸素の拡散係数が小さい材料を用いればよい。このような構成とすることで、第2の絶縁膜106および第3の絶縁膜112から酸素が放出された際、メモリセル150の外側に拡散していく酸素の量を低減することができる。
【0106】
なお、第4の絶縁膜114は、第2の絶縁膜106および第3の絶縁膜112の材料として列挙した材料の中から適宜選択することができる。ただし、第2の絶縁膜106および第3の絶縁膜112として選択した材料によりも、温度が250℃以上450℃以下の範囲における酸素の拡散係数が小さい材料を用いる。例えば、第2の絶縁膜106および第3の絶縁膜112として、酸化シリコン膜を用いる場合、第4の絶縁膜114として酸化アルミニウム膜を用いればよい。酸化アルミニウム膜は、酸素が透過しにくいだけでなく、水もほとんど透過しない性質を有する。そのため、水がトランジスタ140の外部から浸入することを抑制でき、半導体記憶装置の信頼性を高めることができる。酸化アルミニウム膜は5nm以上200nm以下、好ましくは20nm以上100nm以下で設ければよい。
【0107】
網状の導電膜118は、ビット線104と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0108】
第5の絶縁膜116は、第1の絶縁膜102と同様の方法および同様の材料によって形成してもよい。第5の絶縁膜116は、ポリイミド膜、アクリル膜またはエポキシ膜などの樹脂材料としてもよく、単層または積層で設ける。なお、第5の絶縁膜116の上面は平坦であることが好ましいが、これに限定されない。第5の絶縁膜116の上面に、下地の形状による凹凸が形成されていても構わない。
【0109】
ワード線122は、ビット線104と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。ワード線122は、第5の絶縁膜116および第4の絶縁膜114に設けられた開口部を介して、ゲート電極120と接続される。なお、ワード線122は、ビット線104に直交して設けられる。
【0110】
以上に示すメモリセル150は、ドレイン電極108bの側面に沿ってキャパシタ130が形成されるため、大きな容量とすることができる。
【0111】
また、網状の導電膜118がメモリセル150を囲むように設けられるため、ガードリングとして効果が得られ、メモリセル150の静電破壊を防止することができる。
【0112】
次に、図1に示すメモリセル150の作製方法について、図4乃至図7を用いて説明する。
【0113】
まず、基板100上に第1の絶縁膜102、ビット線104および第2の絶縁膜107をこの順に形成する(図4(B)参照。)。なお、基板100上には、別途半導体素子が設けられていてもよく、第1の絶縁膜102、ビット線104および第2の絶縁膜107は、この半導体素子を作製する際に設けられても構わない。第1の絶縁膜102は、スパッタリング法、蒸着法、プラズマ化学気相成長法(PCVD法)、パルスレーザー堆積法(PLD法)、原子層堆積法(ALD法)または分子線エピタキシー法(MBE法)などを用いて成膜すればよい。なお、第1の絶縁膜102は、基板100の材料によっては熱酸化法を用いて成膜しても構わない。
【0114】
次に、第2の絶縁膜107上に、フォトリソグラフィ法によってレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて加工して、ビット線104を露出する開口部を有する第2の絶縁膜106を形成する。次に、スパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて導電膜を成膜し、フォトリソグラフィ法によってレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて、ビット線104と接続するソース電極108a、およびドレイン電極108bを形成する(図4(C)参照。)。なお、ここまでの上面図を図4(A)に示す。
【0115】
次に、スパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて酸化物半導体膜111を成膜する(図5(B)参照。)。このとき、250℃以上450℃以下の温度で加熱処理を行いながら酸化物半導体膜111を成膜すると、CAAC−OS膜が形成されやすい。または、酸化物半導体膜111の成膜後に450℃以上基板の歪み点未満の温度、好ましくは600℃以上700℃以下の温度で加熱処理を行ってもよい。なお、ここまでの上面図を図5(A)に示す。
【0116】
例えば、スパッタリング法で酸化物半導体膜111を成膜する場合、酸化物半導体膜111を成膜する成膜室の排気は、ドライポンプなどの粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ターボ分子ポンプ及びクライオポンプなどの高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。ターボ分子ポンプは大きいサイズの分子の排気が優れる一方、水素や水の排気能力が低い。そこで、水の排気能力の高いクライオポンプ及び水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを組み合わせることが有効となる。
【0117】
酸化物半導体膜111を成膜する成膜室に存在する吸着物は、吸着しているために成膜室の圧力に影響しないが、成膜室を排気した際のガス放出の原因となる。そのため、排気能力の高いポンプを用いて、成膜室に存在する吸着物をできる限り脱離し、予め排気しておくことが重要である。なお、吸着物の脱離を促すために、成膜室をベーキングしてもよい。ベーキングすることで吸着物の脱離速度を10倍程度大きくすることができる。ベーキングは100℃以上450℃以下で行えばよい。このとき、不活性ガスを導入しながら吸着物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。なお、導入する不活性ガスをベーキングの温度と同程度に加熱することで、吸着物の脱離速度をさらに高めることができる。また、ベーキングと同時にダミー成膜を行うことでも吸着物の脱離速度をさらに高めることができる。ここで、ダミー成膜とは、ダミー基板に対してスパッタリングによる成膜を行うことで、ダミー基板及び成膜室内壁に膜を堆積させ、成膜室内の不純物及び成膜室内壁の吸着物を膜中に閉じこめることをいう。ダミー基板は、放出ガスの少ない材料が好ましく、例えば基板100と同様の材料を用いてもよい。
【0118】
また、露点が−95℃以下、好ましくは露点が−110℃以下の成膜ガスを用いると、酸化物半導体膜111中の水素濃度を低減できる。
【0119】
このようにして酸化物半導体膜111を成膜することで、酸化物半導体膜111への水素の混入を抑制できる。さらには、同様の成膜室を用いて、酸化物半導体膜111と接する膜を成膜することで、酸化物半導体膜111に接する膜から酸化物半導体膜111へ水素が混入することを抑制できる。この結果、電気特性のばらつきの少ない、信頼性の高いトランジスタを作製することができる。
【0120】
次に、第3の絶縁膜を成膜する。次に、第3の絶縁膜上にフォトリソグラフィ法によってレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて加工して、第3の絶縁膜112および酸化物半導体膜110を形成する(図6(B)参照。)。酸化物半導体膜110は、少なくとも、ソース電極108aの上面およびドレイン電極108bと対向する側の一側面、ソース電極108aおよびドレイン電極108bの間にある第2の絶縁膜106の上面、ならびにドレイン電極108bの上面およびソース電極108aと対向する側の一側面と接する。
【0121】
次に、スパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて導電膜を成膜し、フォトリソグラフィ法によってレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて、ゲート電極120を形成する(図6(C)参照。)。なお、ここまでの上面図を図6(A)に示す。
【0122】
次に、第4の絶縁膜114を成膜する(図7(B)参照。)。
【0123】
次に、網状の導電膜118を形成する。(図7(C)参照。)。なお、ここまでの上面図を図7(A)に示す。
【0124】
次に、第5の絶縁膜116を形成する。次に、第5の絶縁膜116上に、第5の絶縁膜116に設けられた開口部を介してゲート電極120と接続するワード線122を形成する。以上の工程のよって図1に示すメモリセル150を作製することができる。
【0125】
なお、酸化物半導体膜111が成膜された後、第3の絶縁膜112となる第3の絶縁膜が形成された後、および第4の絶縁膜114が成膜された後の少なくともいずれかのタイミングで加熱処理を行うと好ましい。加熱処理を行うことによって、第2の絶縁膜106または第3の絶縁膜(または第3の絶縁膜112)より酸素が放出され、酸化物半導体膜111(または酸化物半導体膜110)中、または酸化物半導体膜111(または酸化物半導体膜110)が形成する界面近傍の酸素欠損を低減することができる。加熱処理は、250℃以上450℃以下の温度で行えばよい。なお、同様の加熱処理をメモリセル150の作製後に行っても構わない。
【0126】
なお、ソース電極108aおよびドレイン電極108bに対して、逆スパッタリング処理などのプラズマ処理を行っても構わない。このような処理を行うことによって、ソース電極108aおよびドレイン電極108bの上端部を曲面形状にでき、その後形成する酸化物半導体膜110、第3の絶縁膜112、ゲート電極120および網状の導電膜118の被覆性を高めることができる。
【0127】
以上のように作製されたメモリセル150は、オフ電流の小さいトランジスタ140および小面積かつ大容量のキャパシタ130により、DRAMにおけるデータ保持のためのリフレッシュ動作の頻度を低減し、消費電力を小さくすることができる。
【0128】
また、網状の導電膜118が設けられることによって、メモリセル150の静電破壊を防止でき、歩留まりおよび信頼性を高めることができる。
【0129】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0130】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示したメモリセル150とは異なる構造のメモリセルについて図2を用いて説明する。
【0131】
図2(A)に示すメモリセル151は、ソース電極108aおよびドレイン電極108bの間を埋める第6の絶縁膜224を有する点でメモリセル150と異なる。
【0132】
なお、キャパシタ130およびキャパシタ131は同一構造である。
【0133】
第6の絶縁膜224を有することによって、トランジスタ141はトランジスタ140と異なる形状になる。具体的には、酸化物半導体膜110、第3の絶縁膜112およびゲート電極120が、それぞれ酸化物半導体膜210、第3の絶縁膜212およびゲート電極220で示す構造となる。ここで、第6の絶縁膜224があるために、酸化物半導体膜210、第3の絶縁膜212およびゲート電極220を、ソース電極108aおよびドレイン電極108bが形成する段差を乗り越えない構造とすることができる。そのため、段差が起因となるリーク電流、段切れが生じにくい構造とすることができる。結果、半導体記憶装置の歩留まりを高めることができる。
【0134】
第6の絶縁膜224は、第1の絶縁膜102と同様の方法および同様の材料で形成すればよい。また、第6の絶縁膜224を加熱処理により酸素を放出する絶縁膜とすれば、より電気特性の劣化の少ないトランジスタ141を得ることができる。
【0135】
酸化物半導体膜210およびゲート電極220は、それぞれ酸化物半導体膜110およびゲート電極120と同様の方法および同様の材料で形成すればよい。
【0136】
図2(B)に示すメモリセル152は、第3の絶縁膜213が全面に設けられる点でメモリセル150とは異なる。
【0137】
なお、トランジスタ140およびトランジスタ142は同一構造である。
【0138】
第3の絶縁膜213が全面に設けられることによって、酸化物半導体膜110の側面に対しても第3の絶縁膜213より酸素を供給することが可能となる。そのため、酸化物半導体膜110の側面を通って流れるリーク電流を低減でき、トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、キャパシタ132におけるリーク電流などを低減することができ、半導体記憶装置の歩留まりを高めることができる。
【0139】
第3の絶縁膜213は、第3の絶縁膜112と同様の方法および同様の材料で形成すればよい。
【0140】
なお、図2(B)において、第6の絶縁膜224が設けられていても構わない。
【0141】
本実施の形態を適用することにより、実施の形態1と比べて歩留まりの高い半導体記憶装置を得ることができる。
【0142】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0143】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1または実施の形態2で示したメモリセルを複数設けたメモリセルアレイについて説明する。
【0144】
図8は、本発明の一態様であるメモリセルを用いたn行m列のメモリセルアレイである。
【0145】
メモリセルアレイは、m×n個のメモリセルCLと、m本のビット線BLと、n本のワード線WLと、を有する。m本のビット線BLは、それぞれm個のセンスアンプSAmpと接続される。
【0146】
メモリセルCLは、トランジスタTrおよびキャパシタCを有する。メモリセルCLは、メモリセル150、メモリセル151またはメモリセル152を適用できる。即ち、トランジスタTrは、トランジスタ140、トランジスタ141またはトランジスタ142を適用でき、キャパシタCは、キャパシタ130、キャパシタ131またはキャパシタ132を適用できる。
【0147】
次に、n行m列のメモリセルアレイの書き込み方法および読み出し方法を説明する。
【0148】
データの書き込みは行ごとに行う。例えば、メモリセルCL_1_b乃至メモリセルCL_m_bにデータを書き込む場合、ワード線WL_bに電位VHを印加した後、データ1を書き込みたいメモリセルのある列のビット線の電位をVDDとし、データ0を書き込みたいメモリセルのある列のビット線の電位をGNDとする。この動作を行ごとに行えば、全てのメモリセルに対してデータを書き込むことができる。
【0149】
データの読み出しは行ごとに行う。例えば、メモリセルCL_1_b乃至メモリセルCL_m_bのデータを読み出す場合、ビット線BL_1乃至BL_mを所定の電位(定電位)とする。次に、ワード線WL_bの電位をVHとすると、ビット線BL_1乃至BL_mの電位がデータに応じて変動する。この動作を行ごとに行うことで、全てのメモリセルのデータを読み出すことができる。
【0150】
以上のように、実施の形態1または実施の形態2で示したメモリセルを用いたn行m列のメモリセルアレイを提供することができる。
【0151】
本実施の形態によれば、個々のメモリセルCLの面積を小さくできるため、メモリセルアレイの面積も小さくすることができる。そのため、集積度の高い半導体記憶装置を作製することができる。
【0152】
また、メモリセルCL同士の間には、網状の導電膜118が設けられるため、ガードリングとしての効果により、個々のメモリセルCLの静電破壊を防止することができる。そのため、歩留まりの高い半導体記憶装置を作製することができる。
【0153】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0154】
(実施の形態4)
実施の形態1乃至実施の形態3のいずれかで示した半導体記憶装置を少なくとも一部に用いてCPU(Central Processing Unit)を構成することができる。
【0155】
図9(A)は、CPUの具体的な構成を示すブロック図である。図9(A)に示すCPUは、基板1190上に、演算回路(ALU:Arithmetic logic unit)1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース(Bus I/F)1198、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース(ROM I/F)1189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、図9(A)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0156】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
【0157】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行う。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行う。
【0158】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0159】
図9(A)に示すCPUでは、レジスタ1196に、半導体記憶装置が設けられている。レジスタ1196の半導体記憶装置には、例えば実施の形態3に示す半導体記憶装置を用いることができる。
【0160】
図9(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ1196が有する半導体記憶装置において、位相反転素子によるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。位相反転素子によるデータの保持が選択されている場合、レジスタ1196内の半導体記憶装置への、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内の半導体記憶装置への電源電圧の供給を停止することができる。
【0161】
電源停止に関しては、図9(B)または図9(C)に示すように、半導体記憶装置群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設けることにより行うことができる。以下に図9(B)および図9(C)の回路の説明を行う。
【0162】
図9(B)および図9(C)では、半導体記憶装置への電源電位の供給を制御するスイッチング素子に、酸化物半導体を活性層に用いたトランジスタを含む記憶回路の構成の一例を示す。
【0163】
図9(B)に示す記憶装置は、スイッチング素子1141と、半導体記憶装置1142を複数有する半導体記憶装置群1143とを有している。具体的に、各半導体記憶装置1142には、実施の形態3に示す半導体記憶装置を用いることができる。半導体記憶装置群1143が有する各半導体記憶装置1142には、スイッチング素子1141を介して、ハイレベルの電源電位VDDが供給されている。さらに、半導体記憶装置群1143が有する各半導体記憶装置1142には、信号INの電位と、ローレベルの電源電位VSSの電位が与えられている。
【0164】
図9(B)では、スイッチング素子1141として、酸化物半導体などのバンドギャップの大きい半導体を活性層に有するトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲートに与えられる信号SigAによりスイッチングが制御される。なお、スイッチング素子1141として、実施の形態1で示したトランジスタ140を適用しても構わない。
【0165】
なお、図9(B)では、スイッチング素子1141がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、これに限定されず、トランジスタを複数有していてもよい。スイッチング素子1141が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0166】
また、図9(C)には、半導体記憶装置群1143が有する各半導体記憶装置1142に、スイッチング素子1141を介して、ローレベルの電源電位VSSが供給されている、記憶装置の一例を示す。スイッチング素子1141により、半導体記憶装置群1143が有する各半導体記憶装置1142への、ローレベルの電源電位VSSの供給を制御することができる。
【0167】
半導体記憶装置群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0168】
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのLSIにも応用可能である。
【0169】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では実施の形態1乃至実施の形態4のいずれかを適用した電子機器の例について説明する。
【0170】
図10(A)は携帯型情報端末である。筐体9300と、ボタン9301と、マイクロフォン9302と、表示部9303と、スピーカ9304と、カメラ9305と、を具備し、携帯型電話機としての機能を有する。本発明の一態様は、電子機器の内部にあるCPUおよび半導体記憶装置に適用することができる。
【0171】
図10(B)は、デジタルスチルカメラである。筐体9320と、ボタン9321と、マイクロフォン9322と、表示部9323と、を具備する。本発明の一態様は、電子機器の内部にある半導体記憶装置に適用することができる。
【0172】
本発明の一態様を用いることで、電子機器の品質を高めることができる。また消費電力を低減し、信頼性を高めることができる。
【0173】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0174】
(実施の形態6)
CAAC−OS膜に含まれる結晶部分について以下に説明する。
【0175】
CAAC−OS膜は新規な酸化物半導体膜である。
【0176】
図11乃至図13を用いて、CAAC−OS膜の結晶部分に含まれる結晶構造の一例について説明する。
【0177】
なお、図11乃至図13において、上方向がc軸方向であり、c軸方向と直交する面がab面である。
【0178】
本実施の形態において、上半分、下半分とは、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図11において丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0179】
図11(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造Aを示す。
【0180】
ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。
【0181】
構造Aは、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。
【0182】
なお、構造Aは上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。構造Aに示す小グループは電荷が0である。
【0183】
図11(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造Bを示す。
【0184】
3配位のOは、いずれもab面に存在する。構造Bの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。
【0185】
また、Inも5配位をとるため、構造Bをとりうる。構造Bの小グループは電荷が0である。
【0186】
図11(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造Cを示す。
【0187】
構造Cの上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図12(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。構造Cの小グループは電荷が0である。
【0188】
図11(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造Dを示す。
【0189】
構造Dの上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。
【0190】
構造Dの小グループは電荷が+1となる。
【0191】
図11(E)に、2個のZnを構造Eを示す。
【0192】
構造Eの上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。構造Eの小グループは電荷が−1となる。
【0193】
本実施の形態では複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0194】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。
【0195】
6配位のInの上半分の3個のOは、下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。
【0196】
5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。
【0197】
4配位のZnの上半分の1個のOは、下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。
【0198】
この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。
【0199】
Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。
【0200】
従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。
【0201】
その理由を以下に示す。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)、4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0202】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。
【0203】
また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0204】
図12(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループAのモデル図を示す。
【0205】
図12(B)に、3つの中グループで構成される大グループBを示す。
【0206】
なお、図12(C)は、図12(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0207】
図12(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。
【0208】
同様に、中グループAにおいて、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。
【0209】
また、中グループAにおいて、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0210】
中グループAにおいて、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。
【0211】
この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0212】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。
【0213】
例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。
【0214】
そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。
【0215】
電荷−1をとる構造として、構造Eに示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。
【0216】
例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0217】
具体的には、大グループBが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。
【0218】
得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0219】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn−O系酸化物、Sn−Ga−Zn−O系酸化物、Al−Ga−Zn−O系酸化物、Sn−Al−Zn−O系酸化物や、In−Hf−Zn−O系酸化物、In−La−Zn−O系酸化物、In−Ce−Zn−O系酸化物、In−Pr−Zn−O系酸化物、In−Nd−Zn−O系酸化物、In−Sm−Zn−O系酸化物、In−Eu−Zn−O系酸化物、In−Gd−Zn−O系酸化物、In−Tb−Zn−O系酸化物、In−Dy−Zn−O系酸化物、In−Ho−Zn−O系酸化物、In−Er−Zn−O系酸化物、In−Tm−Zn−O系酸化物、In−Yb−Zn−O系酸化物、In−Lu−Zn−O系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物、Sn−Zn−O系酸化物、Al−Zn−O系酸化物、Zn−Mg−O系酸化物、Sn−Mg−O系酸化物、In−Mg−O系酸化物や、In−Ga−O系酸化物などを用いた場合も同様である。
【0220】
例えば、図13(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループLのモデル図を示す。
【0221】
中グループLにおいて、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。
【0222】
この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0223】
図13(B)に3つの中グループで構成される大グループMを示す。
【0224】
なお、図13(C)は、図13(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0225】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。
【0226】
そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0227】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、中グループLに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0228】
(実施の形態7)
酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の電界効果移動度よりも低くなる。
【0229】
電界効果移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0230】
半導体本来の移動度をμ、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、図14(A)の式Aで表される。
【0231】
Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。
【0232】
また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、図14(B)の式Bで表される。
【0233】
eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。
【0234】
なお、厚さ30nm以下の半導体層であれば、チャネルの厚さは半導体層の厚さと同一として差し支えない。
【0235】
線形領域におけるドレイン電流Iは、図14(C)の式Cで表される。
【0236】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。
【0237】
また、Vはドレイン電圧である。
【0238】
式Cの両辺をVgで割り、更に両辺の対数を取ると、図14(D)の式Dで表される。
【0239】
式Cの右辺はVの関数である。
【0240】
上式のからわかるように、縦軸をln(Id/Vg)、横軸を1/Vgとする直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。
【0241】
すなわち、トランジスタのI―V特性から、欠陥密度を評価できる。
【0242】
酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm程度である。
【0243】
このようにして求めた欠陥密度等をもとにμ=120cm/Vsが導出される。
【0244】
欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される電界効果移動度は35cm/Vs程度である。
【0245】
しかし、半導体内部および半導体と絶縁膜との界面の欠陥が無い酸化物半導体の移動度μは120cm/Vsとなると予想できる。
【0246】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁膜との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁膜界面からxだけ離れた場所における移動度μは、図14(E)の式Eで表される。
【0247】
Dはゲート方向の電界、B、Gは定数である。BおよびGは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×10cm/s、G=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。
【0248】
Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と式Eの第2項が増加するため、移動度μは低下することがわかる。
【0249】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動度μの計算結果を図15に示す。
【0250】
なお、計算にはシノプシス社製のソフトであるSentaurus Deviceを使用した。
【0251】
計算において、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、2.8電子ボルト、4.7電子ボルト、15、15nmとした。
【0252】
これらの値は、スパッタリング法により形成された薄膜を測定して得られたものである。
【0253】
さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。
【0254】
また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vは0.1Vである。
【0255】
計算結果Eで示されるように、ゲート電圧1V強で移動度100cm/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、移動度が低下する。
【0256】
なお、界面散乱を低減するためには、半導体層表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0257】
このような移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した。
【0258】
なお、計算に用いたトランジスタは酸化物半導体層に一対のn型半導体領域にチャネル形成領域が挟まれたものを用いた。
【0259】
一対のn型半導体領域の抵抗率は2×10−3Ωcmとして計算した。
【0260】
また、チャネル長を33nm、チャネル幅を40nmとして計算した。
【0261】
また、ゲート電極の側壁にサイドウォールを有する。
【0262】
サイドウォールと重なる半導体領域をオフセット領域として計算した。
【0263】
計算にはシノプシス社製のソフト、Sentaurus Deviceを使用した。
【0264】
図16は、トランジスタのドレイン電流(Id、実線)および移動度(μ、点線)のゲート電圧(Vg、ゲートとソースの電位差)依存性の計算結果である。
【0265】
ドレイン電流Idは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0266】
図16(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとして計算したものである。
【0267】
図16(B)はゲート絶縁膜の厚さを10nmと計算したものである。
【0268】
図16(C)はゲート絶縁膜の厚さを5nmと計算したものである。
【0269】
ゲート絶縁膜が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流Id(オフ電流)が顕著に低下する。
【0270】
一方、移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流Id(オン電流)には目立った変化が無い。
【0271】
図17は、オフセット長(サイドウォール長)Loffを5nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧Vg依存性を示す。
【0272】
ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0273】
図17(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとして計算したものである。
【0274】
図17(B)はゲート絶縁膜の厚さを10nmと計算したものである。
【0275】
図17(C)はゲート絶縁膜の厚さを5nmと計算したものである。
【0276】
図18は、オフセット長(サイドウォール長)Loffを15nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。
【0277】
ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0278】
図18(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとして計算したものである。
【0279】
図18(B)はゲート絶縁膜の厚さを10nmと計算したものである。
【0280】
図18(C)はゲート絶縁膜の厚さを5nmと計算したものである。
【0281】
いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、電界効果移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0282】
なお、移動度μのピークは、図16では80cm/Vs程度であるが、図17では60cm/Vs程度、図18では40cm/Vsと、オフセット長Loffが増加するほど低下する。
【0283】
また、オフ電流も同様な傾向がある。
【0284】
一方、オン電流にはオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。
【0285】
また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
本実施の形態の内容の一部又は全部は、他の全ての実施の形態又は実施例と組み合わせて実施することができる。
【実施例1】
【0286】
In、Sn、Znを含有する酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体を形成する際に基板を加熱して成膜すること、または酸化物半導体膜を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。
【0287】
なお、In、Sn、Znは組成比でそれぞれ5atomic%以上含まれていると好ましい。
【0288】
In、Sn、Znを含有する酸化物半導体膜の成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。
【0289】
また、nチャネル型のトランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせることができる。
【0290】
nチャネル型のトランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせることにより、nチャネル型のトランジスタのオフ状態を維持するための電圧の絶対値を低くすることができ、低消費電力化が可能となる。
【0291】
さらに、nチャネル型のトランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせて、しきい値電圧を0V以上にすれば、ノーマリーオフ型のトランジスタを形成することが可能となる。
【0292】
以下In、Sn、Znを含有する酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す。
【0293】
(サンプルA〜C共通条件)
組成比としてIn:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、ガス流量比をAr/O=6/9sccm、成膜圧力を0.4Pa、成膜電力100Wとして、15nmの厚さとなるように基板上に酸化物半導体層を成膜した。
【0294】
次に、酸化物半導体層を島状になるようにエッチング加工した。
【0295】
そして、酸化物半導体層上に50nmの厚さとなるようにタングステン層を成膜し、これをエッチング加工してソース電極及びドレイン電極を形成した。
【0296】
次に、プラズマCVD法を用いて、シランガス(SiH)と一酸化二窒素(NO)を用いて100nmの厚さとなるように酸化窒化珪素膜(SiON)を形成してゲート絶縁層とした。
【0297】
次に、15nmの厚さとなるように窒化タンタルを形成し、135nmの厚さとなるようにタングステンを形成し、これらをエッチング加工してゲート電極を形成した。
【0298】
さらに、プラズマCVD法を用いて、300nmの厚さとなるように酸化窒化珪素膜(SiON)を形成し、1.5μmの厚さとなるようにポリイミド膜を形成し層間絶縁膜とした。
【0299】
次に、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、50nmの厚さとなるように第1のチタン膜を形成し、100nmの厚さとなるようにアルミニウム膜を形成し、50nmの厚さとなるように第2のチタン膜を形成し、これらをエッチング加工して測定用のパッドを形成した。
【0300】
以上のようにしてトランジスタを有する半導体装置を形成した。
【0301】
(サンプルA)
サンプルAは酸化物半導体層の成膜中に基板に意図的な加熱を施さなかった。
【0302】
また、サンプルAは酸化物半導体層の成膜後であって、酸化物半導体層のエッチング加工前に加熱処理を施さなかった。
【0303】
(サンプルB)
サンプルBは基板を200℃になるように加熱した状態で酸化物半導体層の成膜を行った。
【0304】
また、サンプルBは酸化物半導体層の成膜後であって、酸化物半導体層のエッチング加工前に加熱処理を施さなかった。
【0305】
基板を加熱した状態で成膜を行った理由は、酸化物半導体層中でドナーとなる水素を追い出すためである。
【0306】
(サンプルC)
サンプルCは基板を200℃になるように加熱した状態で酸化物半導体層の成膜を行った。
【0307】
さらに、サンプルCは酸化物半導体層の成膜後であって、酸化物半導体層のエッチング加工前に窒素雰囲気で650℃1時間の加熱処理を施した後、酸素雰囲気で650℃1時間の加熱処理を施した。
【0308】
窒素雰囲気で650℃1時間の加熱処理を施した理由は、酸化物半導体層中でドナーとなる水素を追い出すためである。
【0309】
ここで、酸化物半導体層中でドナーとなる水素を追い出すための加熱処理で酸素も離脱し、酸化物半導体層中でキャリアとなる酸素欠損も生じてしまう。
【0310】
そこで、酸素雰囲気で650℃1時間の加熱処理を施すことにより、酸素欠損を低減する効果を狙った。
【0311】
(サンプルA〜Cのトランジスタの特性)
図19(A)にサンプルAのトランジスタの初期特性を示す。
【0312】
図19(B)にサンプルBのトランジスタの初期特性を示す。
【0313】
図19(C)にサンプルCのトランジスタの初期特性を示す。
【0314】
サンプルAのトランジスタの電界効果移動度は18.8cm/Vsecであった。
【0315】
サンプルBのトランジスタの電界効果移動度は32.2cm/Vsecであった。
【0316】
サンプルCのトランジスタの電界効果移動度は34.5cm/Vsecであった。
【0317】
ここで、サンプルA〜Cと同様の成膜方法で形成した酸化物半導体層の断面を透過型顕微鏡(TEM)で観察したところ、成膜時に基板加熱を行ったサンプルB及びサンプルCと同様の成膜方法で形成したサンプルには結晶性が確認された。
【0318】
そして、驚くべきことに、成膜時に基板加熱を行ったサンプルは、結晶性部分と非結晶性部分とを有し、結晶性部分の配向がc軸配向に揃っている結晶性であった。
【0319】
通常の多結晶では結晶性部分の配向が揃っておらず、ばらばらの方向を向いているため、成膜時に基板加熱を行ったサンプルは新しい構造を有している。
【0320】
また、図19(A)〜(C)を比較すると、成膜時に基板加熱を行うこと、又は、成膜後に加熱処理を行うことにより、ドナーとなる水素元素を追い出すことができるため、nチャネル型トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトできることが理解できる。
【0321】
即ち、成膜時に基板加熱を行ったサンプルBのしきい値電圧は、成膜時に基板加熱を行っていないサンプルAのしきい値電圧よりもプラスシフトしている。
【0322】
また、成膜時に基板加熱を行ったサンプルB及びサンプルCを比較した場合、成膜後に加熱処理を行ったサンプルCの方が、成膜後に加熱処理を行っていないサンプルBよりもプラスシフトしていることがわかる。
【0323】
また、水素のような軽元素は加熱処理の温度が高いほど離脱しやすいため、加熱処理の温度が高いほど水素が離脱しやすい。
【0324】
よって、成膜時又は成膜後の加熱処理の温度を更に高めればよりプラスシフトが可能であると考察した。
【0325】
(サンプルBとサンプルCのゲートBTストレス試験結果)
サンプルB(成膜後加熱処理なし)及びサンプルC(成膜後加熱処理あり)とに対してゲートBTストレス試験を行った。
【0326】
まず、基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids特性の測定を行い、加熱及びプラスの高電圧印加を行う前のトランジスタの特性を測定した。
【0327】
次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。
【0328】
次に、ゲート絶縁膜608に印加されるVgsに20Vを印加し、そのまま1時間保持した。
【0329】
次に、Vgsを0Vとした。
【0330】
次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids測定を行い、加熱及びプラスの高電圧印加を行った後のトランジスタの特性を測定した。
【0331】
以上のようにして、加熱及びプラスの高電圧印加を行う前後のトランジスタの特性を比較することをプラスBT試験と呼ぶ。
【0332】
一方、まず基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids特性の測定を行い、加熱及びマイナスの高電圧印加を行う前のトランジスタの特性を測定した。
【0333】
次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。
【0334】
次に、ゲート絶縁膜608にVgsに−20Vを印加し、そのまま1時間保持した。
【0335】
次に、Vgsを0Vとした。
【0336】
次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids測定を行い、、加熱及びマイナスの高電圧印加を行った後のトランジスタの特性を測定した。
【0337】
以上のようにして、加熱及びマイナスの高電圧印加を行う前後のトランジスタの特性を比較することをマイナスBT試験と呼ぶ。
【0338】
図20(A)はサンプルBのプラスBT試験結果であり、図20(B)はサンプルBのマイナスBT試験結果である。
【0339】
図21(A)はサンプルCのプラスBT試験結果であり、図21(B)はサンプルCのマイナスBT試験結果である。
【0340】
プラスBT試験及びマイナスBT試験はトランジスタの劣化具合を判別する試験であるが、図20(A)及び図21(A)を参照すると少なくともプラスBT試験の処理を行うことにより、しきい値電圧をプラスシフトさせることができることがわかった。
【0341】
特に、図20(A)ではプラスBT試験の処理を行うことにより、トランジスタがノーマリーオフ型になったことがわかる。
【0342】
よって、トランジスタの作製時の加熱処理に加えて、プラスBT試験の処理を行うことにより、しきい値電圧のプラスシフト化を促進でき、ノーマリーオフ型のトランジスタを形成することができることがわかった。
【0343】
図22はサンプルAのトランジスタのオフ電流と測定時の基板温度(絶対温度)の逆数との関係を示す。
【0344】
ここでは、測定時の基板温度の逆数に1000を掛けた数値(1000/T)を横軸としている。
【0345】
なお、図22ではチャネル幅1μmの場合における電流量を図示している。
【0346】
基板温度が125℃(1000/Tが約2.51)のとき1×10−19A以下となっていた。
【0347】
基板温度が85℃(1000/Tが約2.79)のとき1×10−20A以下となっていた。
【0348】
つまり、シリコン半導体を用いたトランジスタと比較して極めて低いオフ電流であることがわかった。
【0349】
なお、温度が低いほどオフ電流が低下するため、常温であればより低いオフ電流であることは明らかである。
【符号の説明】
【0350】
100 基板
102 第1の絶縁膜
104 ビット線
106 第2の絶縁膜
107 第2の絶縁膜
108a ソース電極
108b ドレイン電極
110 酸化物半導体膜
111 酸化物半導体膜
112 第3の絶縁膜
114 第4の絶縁膜
116 第5の絶縁膜
118 網状の導電膜
120 ゲート電極
122 ワード線
130 キャパシタ
131 キャパシタ
132 キャパシタ
133 キャパシタ
140 トランジスタ
141 トランジスタ
142 トランジスタ
150 メモリセル
151 メモリセル
152 メモリセル
153 メモリセル
170 センスアンプ
210 酸化物半導体膜
212 第3の絶縁膜
213 第3の絶縁膜
220 ゲート電極
224 第6の絶縁膜
1141 スイッチング素子
1142 半導体記憶装置
1143 半導体記憶装置群
1189 ROMインターフェース
1190 基板
1191 ALU
1192 ALUコントローラ
1193 インストラクションデコーダ
1194 インタラプトコントローラ
1195 タイミングコントローラ
1196 レジスタ
1197 レジスタコントローラ
1198 バスインターフェース
1199 ROM
9300 筐体
9301 ボタン
9302 マイクロフォン
9303 表示部
9304 スピーカ
9305 カメラ
9320 筐体
9321 ボタン
9322 マイクロフォン
9323 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体を用いたトランジスタと、キャパシタと、を有し、
前記キャパシタは、前記トランジスタのドレイン電極と、誘電体膜を介して該ドレイン電極の側面と対向して設けられた導電膜と、によって構成され、
前記トランジスタは前記導電膜および前記導電膜と接続された導電膜の間に設けられ、
前記トランジスタを介して前記キャパシタの電位が制御されることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
ソース電極およびドレイン電極と、少なくとも前記ソース電極および前記ドレイン電極の上面と接する酸化物半導体膜と、少なくとも前記酸化物半導体膜の上面と接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を介して前記酸化物半導体膜と重畳するゲート電極を有し、上面から見て網状の導電膜の網の目に設けられたトランジスタと、
前記ドレイン電極と、前記網状の導電膜および前記網状の導電膜と前記ドレイン電極の間に設けられた絶縁膜とを有し、前記ドレイン電極の側面に沿って設けられたキャパシタと、
を有することを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記ドレイン電極の厚さは最小加工寸法Fの0.5倍以上10倍以下であることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
前記ゲート電極はワード線と接続され、前記ソース電極はビット線と接続され、前記網状の導電膜は接地されていることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか一において、
前記ソース電極およびドレイン電極間の空間を埋める絶縁膜が設けられることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか一において、
前記ゲート絶縁膜、または前記絶縁膜が加熱処理により酸素を放出する絶縁膜であることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記絶縁膜は、温度が250℃以上450℃以下の範囲における酸素の拡散係数が、前記ゲート絶縁膜と比べて小さいことを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7において、
前記絶縁膜が酸化アルミニウム膜であり、前記ゲート絶縁膜、または前記絶縁膜が酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜であることを特徴とする半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−256856(P2012−256856A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90012(P2012−90012)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】