説明

半導体試験装置のベースユニット

【課題】半導体試験装置のベースユニットにおいて、プローブカードが、高温測定時の熱等の影響によって被試験デバイス方向に変形することを防ぐ。
【解決手段】ベースユニット本体と、ベースユニット本体の下方向に配置され、ベースユニット本体に対する傾きを変更可能な、プローブカードを固着するユニットの上部に設けられ、下面の両側に斜面が形成されたテーパブロックと、ベースユニットの下部において、テーパブロックの傾斜方向に設けられたガイド沿って直線移動可能であり、テーパブロックを挟んで配置された1対の下部プレートとを備え、1対の下部プレートは弾性手段により互いに連結され、それぞれの下部プレートは、ガイドに対する停止手段と、テーパブロックの斜面と接触する位置に設けられ、移動方向に回転する回転手段とを備えているベースユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体試験装置のベースユニットに係り、特にプローブカードおよびプローブカードを固着するユニットが、高温測定時の熱等の影響によって被試験デバイス方向に変形することを防ぐ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、半導体デバイスの性能・機能等を試験するために半導体試験装置が用いられている。半導体試験装置では、テストヘッドに実装されたベースユニットを、プローバに実装されたプローブカードに接続して被試験デバイス(DUT:Device Under Test)の試験を行なう。
【0003】
図4は、従来のベースユニットの構成を模式的に示す図である。本図において、ベースユニット本体300は、本図上方向に位置する図示しないテストヘッドによって保持され、トッププレート310は、本図下方向に位置する図示しないプローバにより保持されている。
【0004】
リング320は、着脱可能なプローブカード200を固着するユニットであり、トッププレート310に固定されている。リング320の上面には、本図左右方向に斜面が形成されたテーパブロック330が設けられている。
【0005】
ベースユニット本体300の下面には、シリンダ340によってベースユニット本体とテーパブロック330との間を左右に移動するくさび350が備えられている。シリンダ340およびくさび350は、テーパブロック330の斜面に対応して1対備えられており、シリンダ340の動作は、外部のシーケンサ等からの制御信号に基づいて駆動制御部360により行なわれる。
【0006】
図4に示すように、シリンダ340によりくさび350が中央方向に位置しているときには、くさび350がテーパブロック330およびベースユニット本体300に接触することにより、被試験デバイスとの接触時にプローブカード200にかかるコンタクト荷重をベースユニット本体300でも支えることができるようになる。この機構がないと、図5に示すように、コンタクト荷重を受けたときに、プローブカード200が上方に撓むように変形してしまい、プローブカード200のコンタクト高さにバラツキが生じ、プローブカード200と被試験デバイスとが正常にコンタクトできなくなってしまう。
【0007】
一方、プローブカード200のオートレベリング時には、トッププレート310の傾きを変化可能とするために、図6に示すように、シリンダ340によりくさび350を外側方向に移動させる。これにより、くさび350とテーパブロック330との接触状態が解除され、トッププレート310が動けるようになって、傾きを調整することができるようになる。ここで、オートレベリングは、図7に示すように、ウエハチャック211に搭載された被試験デバイス212と、プローブカード200とを平行にするために、トッププレート310の傾きをプローバが調整する動作である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−50437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、半導体試験装置では、高温測定を行なう場合、ウエハチャック211側から被試験デバイス212に熱が加えられる。この熱が、トッププレート310、リング320、プローブカード200に伝わると、トッププレート310、リング320、プローブカード200は膨張して変形してしまう。
【0010】
上述のように、トッププレート310、リング320、プローブカード200は、上面に斜面が形成されたテーパブロック330とくさび350によって上方向への変形が抑えられているが、下方向については、トッププレート310の外周が図示しないプローバによって支えられているのみである。
【0011】
このため、熱による膨張により、トッププレート310、リング320、プローブカード200は、下方向に撓むように変形しがちとなる。この結果、プローブカード200のコンタクト高さにバラツキが生じ、プローブカード200と被試験デバイスとが正常にコンタクトできなくなってしまうおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、半導体試験装置のベースユニットにおいて、プローブカードが、高温測定時の熱等の影響によって被試験デバイス方向に変形することを防ぐ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の半導体試験装置のベースユニットは、ベースユニット本体と、前記ベースユニット本体の下方向に配置され、前記ベースユニット本体に対する傾きを変更可能な、プローブカードを固着するユニットの上部に設けられ、下面の両側に中央部が厚くなる方向で斜面が形成されたテーパブロックと、前記ベースユニットの下部において、前記テーパブロックの傾斜方向に設けられたガイド沿って直線移動可能であり、前記テーパブロックを挟んで配置された1対の下部プレートとを備え、前記1対の下部プレートは弾性手段により互いに連結され、それぞれの下部プレートは、前記ガイドに対する停止手段と、前記テーパブロックの下面に形成された斜面と接触する位置に設けられ、前記移動方向に回転する回転手段とを備えていることを特徴とする。
【0014】
ここで、前記プローブカードを固着するユニットの前記ベースユニット本体に対する傾きを変更する際に、前記停止手段を解除し、傾きの変更終了後に、前記停止手段を作動させる駆動制御部をさらに備えるようにしてもよい。
【0015】
また、前記テーパブロックは、前記下面両側の斜面に加え、前記下面の直交する両方向にも斜面が形成され、前記ベースユニットの下部において、前記ガイドと直交する方向に設けられた第2ガイドに沿って直線移動可能であり、前記テーパブロックを挟んで配置された1対の第2下部プレートをさらに備え、前記1対の第2下部プレートは第2弾性手段により互いに連結され、それぞれの下部プレートは、前記第2ガイドに対する停止手段と、前記テーパブロックの下面に形成された前記第2ガイド方向の斜面と接触する位置に設けられ、前記移動方向に回転する回転手段とを備えるようにしてもよい。
【0016】
また、前記テーパブロックは、前記下面両側の斜面に加え、上面の両側にも中央部が厚くなる方向で斜面が形成され、前記ベースユニットの下部において、前記ガイド沿って直線移動可能であり、前記テーパブロックを挟んで前記1対の下部プレートの内側に配置された1対の上部プレートをさらに備え、前記1対の上部プレートは弾性手段により互いに連結され、それぞれの上部プレートは、前記ガイドに対する停止手段と、前記テーパブロックの上面に形成された斜面と接触する位置に設けられ、前記移動方向に回転する回転手段とを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体試験装置のベースユニットにおいて、プローブカードが、高温測定時の熱等の影響によって被試験デバイス方向に変形することを防ぐ機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態のベースユニットの構成を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態のテーパブロックと上部プレートと下部プレートとを模式的に示す斜視図である。
【図3】本実施形態のベースユニットのオートレベリング動作時の様子を示す図である。
【図4】従来のベースユニットの構成を模式的に示す図である。
【図5】シリンダとくさびのよる機構がない場合の問題を説明する図である。
【図6】シリンダによりくさびが外側方向に移動した場合を示す図である。
【図7】オートレベリング動作を説明するための図である。
【図8】高温試験時のプローブカードの変形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態におけるベースユニットの構成を模式的に示す図である。本図おいて、ベースユニット本体100は、本図上方向に位置する図示しないテストヘッドによって保持され、トッププレート110は、本図下方向に位置する図示しないプローバにより外周部分が保持されている。
【0020】
リング120は、着脱可能なプローブカード200を固着するユニットであり、トッププレート110に固定されている。リング120の上面には、上面および下面の左右両側に、中央部が厚くなるような方向で斜面が形成されたテーパブロック130が設けられている。なお、テーパブロック130のリング120に取り付ける支柱部分の形状は任意とすることができる。
【0021】
ベースユニット本体100の下面には、リニアガイド140がテーパブロック130の傾斜方向に設けられており、リニアガイド140に沿って本図左右方向に直線移動する1対の上部プレート150および1対の下部プレート160が備えられている。1対の上部プレート150は、1対の下部プレート160よりも内側に配置している。
【0022】
1対の上部プレート150は、弾性手段である引っ張りバネ154によって連結されており、リニアガイド140に沿った移動を行なうためのリニアガイドブロック151と、リニアガイド140に対して停止する停止手段として機能するブレーキ152とを備えている。ブレーキ152は、例えば、エア駆動によって作動時にリニアガイド140を挟み込む構造とすることができる。
【0023】
また、それぞれの上部プレート150には、テーパブロック130の上面の斜面と接触する位置に、上部プレート150の移動方向に回転するローラ153が備えられている。ローラ153は、回転手段として機能する。ローラ153は、例えば、車輪型や円筒型とすることができるが、球状等としてもよい。
【0024】
1対の下部プレート160は、弾性手段である引っ張りバネ164によって連結されており、リニアガイド140に沿った移動を行なうためのリニアガイドブロック161と、リニアガイド140に対して停止する停止手段として機能するブレーキ162とを備えている。ブレーキ162は、例えば、エア駆動によって作動時にリニアガイド140を挟み込む構造とすることができる。
【0025】
また、それぞれの下部プレート160には、テーパブロック130の下面の斜面と接触する位置に、下部プレート160の移動方向に回転するローラ163が備えられている。ローラ163は、回転手段として機能する。ローラ163は、例えば、車輪型や円筒型とすることができるが、球状等としてもよい。
【0026】
図2は、テーパブロック130と上部プレート150と下部プレート160とを模式的に示した斜視図である。なお、両プレートに備えられるリニアガイドとブレーキは省略している。本図の例では、1対の上部プレート150を連結する引っ張りバネ154は、テーパブロック130上方に渡されており、1対の下部プレート160を連結する引っ張りバネ164は、テーパブロック130と干渉しないように、テーパブロック130の外側を渡されている。このため、引っ張りバネ164は、本図における前後方向2箇所にテーパブロック130を挟むように配置している。なお、テーパブロック130の支柱部分の前後方向の厚さを薄くすることで、下部プレート160の厚さを薄くすることができる。
【0027】
ブレーキ152およびブレーキ162の動作は、外部のシーケンサ等からの制御信号に基づいて駆動制御部170により行なわれる。オートレベリング時において、駆動制御部170は、図2に示すように、ブレーキ152およびブレーキ162を解除して、上部プレート150および下部プレート160がリニアガイド140に沿って左右に動けるようにする。
【0028】
1対の上部プレート150は、引っ張りバネ154により中央方向に寄ろうとするので、両ローラ153は、常にテーパブロック130の上面に形成された斜面に接することになる。また、1対の下部プレート160は、引っ張りバネ164により中央方向に寄ろうとするので、両ローラ163は、常にテーパブロック130の下面に形成された斜面に接することになる。
【0029】
駆動制御部170は、オートレベリングが終了するとブレーキ152およびブレーキ162を作動させて、上部プレート150および下部プレート160をリニアガイド140に固定し、動かないようにする。ただし、下部プレート160のブレーキ162は、通常は解除状態にしておき、高温試験等を行なうときに作動させるようにしてもよい。
【0030】
この状態でプローブカード200を被試験デバイスと接触させると、プローブカード200にかかるコンタクト荷重を、テーパブロック130の上面に形成された斜面に接触している上部プレート150のローラ153を介してベースユニット本体100でも支えることができ、プローブカード200が上方に撓む変形を防ぐことができる。
【0031】
また、高温測定を行なうためにウエハチャック側から被試験デバイスに加えられた熱がトッププレート110、リング120、プローブカード200に伝わったとしても、下部プレート160のローラ163が、テーパブロック130の下面に形成された斜面を支えるため、トッププレート110、リング120、プローブカード200が下方に撓む変形を防ぐことができる。このため、プローブカード200と被試験デバイスとの安定したコンタクトが可能となる。
【0032】
本実施形態のベースユニットによれば、ブレーキ152およびブレーキ162を解除することにより、トッププレート110のオートレベリング動作が可能となり、ブレーキ152を作動させることにより、プローブカード200と被試験デバイスとの接触時にコンタクト荷重を支えることができるようになるとともに、ブレーキ162を作動させることにより、トッププレート110、リング120、プローブカード200が熱により下方に変形することを防ぐことができる。
【0033】
ブレーキ152を解除した状態で、ローラ153は引っ張りバネ154により常にテーパブロック130の上面の斜面に接した状態となり、ブレーキ162を解除した状態で、ローラ163は引っ張りバネ164により常にテーパブロック130の下面の斜面に接した状態となるため、トッププレート110の動きに追従することができ、また、ベースユニット本体100とトッププレート110とが平行でない状態でも、コンタクト荷重をベースユニット本体100で支えることができるとともに、プローブカード200の下方への変形を防ぐことができる。
【0034】
なお、上記の例では、テーパブロック130の上面および下面の左右に斜面を形成し、片面につき2点でテーパブロック130を支えるようにしていたが、テーパブロックの上面および下面の左右の斜面に直交する前後方向にも斜面を形成するとともに、リニアガイド140に直交する前後方向にもリニアガイドを設け、上部プレート150および下部プレート160と同様の構成の引っ張りバネにより連結された1対の上部プレートおよび下部プレートを備えるようにしてもよい。これにより、片面につき4点でテーパブロック130を支えることができ、より大きな力に対応することができるようになる。もちろん、テーパブロック130の上面、下面の一方について前後方向にも斜面を形成して4点で支えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
100…ベースユニット本体、110…トッププレート、120…リング、130…テーパブロック、140…リニアガイド、150…上部プレート、151…リニアガイドブロック、152…ブレーキ、153…ローラ、154…引っ張りバネ、160…下部プレート、161…リニアガイドブロック、162…ブレーキ、163…ローラ、164…引っ張りバネ、170…駆動制御部、200…プローブカード、211…ウエハチャック、212…被試験デバイス、300…ベースユニット本体、310…トッププレート、320…リング、330…テーパブロック、340…シリンダ、360…駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースユニット本体と、
前記ベースユニット本体の下方向に配置され、前記ベースユニット本体に対する傾きを変更可能な、プローブカードを固着するユニットの上部に設けられ、下面の両側に中央部が厚くなる方向で斜面が形成されたテーパブロックと、
前記ベースユニットの下部において、前記テーパブロックの傾斜方向に設けられたガイド沿って直線移動可能であり、前記テーパブロックを挟んで配置された1対の下部プレートとを備え、
前記1対の下部プレートは弾性手段により互いに連結され、それぞれの下部プレートは、前記ガイドに対する停止手段と、前記テーパブロックの下面に形成された斜面と接触する位置に設けられ、前記移動方向に回転する回転手段とを備えていることを特徴とする半導体試験装置のベースユニット。
【請求項2】
前記プローブカードを固着するユニットの前記ベースユニット本体に対する傾きを変更する際に、前記停止手段を解除し、傾きの変更終了後に、前記停止手段を作動させる駆動制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体試験装置のベースユニット。
【請求項3】
前記テーパブロックは、前記下面両側の斜面に加え、前記下面の直交する両方向にも斜面が形成され、
前記ベースユニットの下部において、前記ガイドと直交する方向に設けられた第2ガイドに沿って直線移動可能であり、前記テーパブロックを挟んで配置された1対の第2下部プレートをさらに備え、
前記1対の第2下部プレートは第2弾性手段により互いに連結され、それぞれの下部プレートは、前記第2ガイドに対する停止手段と、前記テーパブロックの下面に形成された前記第2ガイド方向の斜面と接触する位置に設けられ、前記移動方向に回転する回転手段とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体試験装置のベースユニット。
【請求項4】
前記テーパブロックは、前記下面両側の斜面に加え、上面の両側にも中央部が厚くなる方向で斜面が形成され、
前記ベースユニットの下部において、前記ガイド沿って直線移動可能であり、前記テーパブロックを挟んで前記1対の下部プレートの内側に配置された1対の上部プレートをさらに備え、
前記1対の上部プレートは弾性手段により互いに連結され、それぞれの上部プレートは、前記ガイドに対する停止手段と、前記テーパブロックの上面に形成された斜面と接触する位置に設けられ、前記移動方向に回転する回転手段とを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体試験装置のベースユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−29410(P2013−29410A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165407(P2011−165407)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】