説明

半導体遮断回路

【課題】スナバ回路や波形発生回路等を用いずに、回路面積が大型になったり、生産コストを高くなったりするのを抑えることのできる半導体遮断回路を提供する。
【解決手段】制御部11が、短絡や過電流が発生したと判断し、半導体遮断器12にて電流の遮断を開始するように制御する。半導体遮断器12が電流を素早く遮断することができるように、半導体遮断器12のゲート電圧を、半導体遮断器12が遮断を開始する閾値電圧Vに向けて急激に減少させていく。その後、半導体遮断器12のゲート電圧が閾値電圧Vに達すると、半導体遮断器12のゲート電圧が、半導体遮断器12が遮断を完了する閾値電圧Vになるまで、スイッチSの電気的接続状態をオン状態、オフ状態に交互に切り替えて、半導体遮断器12のゲート電圧を徐々に減少させていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡が発生した際に回路を保護する半導体遮断回路に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源と直流電源から給電線を介して給電される負荷とを備えた給電回路においては、短絡が発生した際に回路を保護するために、電流を遮断する回路遮断器が直流電源と負荷との間に設けられている。なお、短絡には、例えば地絡が含まれる。回路遮断器としては、ヒューズや、半導体を用いた遮断器、サーキットブレーカ等が利用される。
【0003】
半導体を用いた遮断器を利用した給電回路に短絡が発生すると、コレクタとエミッタとからなるスイッチング素子によって電流の遮断が開始される。このとき、直流電源から流れる電流の時間変化と、給電回路のインダクタンスとに応じた起電力が半導体にかかる。
【0004】
これにより、半導体のコレクタとエミッタとの間の電圧値が急激に上昇し、半導体が破損してしまう恐れがある。以降、半導体を用いた遮断器のことを「半導体遮断器」といい、コレクタとエミッタとの間の電圧値のことを「半導体遮断器の両端間の電圧値」という。
【0005】
半導体が破損するのを回避するために、半導体遮断器を利用した給電回路は、スナバ回路を備えているのか一般的である。なお、スナバ回路によって半導体遮断器の両端間の電圧値の急激な上昇を抑制するための技術が例えば、非特許文献1に開示されている。
【0006】
図8は、特許文献1や非特許文献1の半導体遮断器を利用した給電回路の一例を示す図である。
【0007】
図8に示す給電回路は、直流電源80と、半導体遮断回路100と、負荷90とを備えている。
【0008】
半導体遮断回路100は、制御部11と、半導体遮断器12と、電流検出部13と、スナバ回路101とを備えている。
【0009】
スナバ回路101においては通常、図8に示すように、抵抗とコンデンサとが直列に接続され、半導体遮断器12とスナバ回路101とは、並列に接続されている。
【0010】
また、図8に示した給電回路においては、正極線51に流れる電流の電流値が電流検出部13によって検出されている。そして、検出された電流値が所定の電流値に達すると、電流検出部13は、制御部11へ信号を出力する。そして、制御部11は、電流検出部13から出力された信号を受け付けると、半導体遮断器12をオフ状態にすることにより、正極線51に流れる電流の遮断が開始する。
【0011】
半導体遮断器12が電流の遮断を開始すると、電流がスナバ回路101に転流される。これにより、半導体遮断器12の両端間の電圧値の急激な上昇が抑制され、半導体が破損するのを回避することができる。
【0012】
上記の半導体が破損するのを回避する方法の他に、直流電源80側の正極線51と負極線52の間にコンデンサを介挿させて、半導体遮断器12の遮断動作後、直流電源80側の電流がそのコンデンサに流れるようにする方法が考えられる。
【0013】
また、電流の遮断を行なう際、半導体遮断器12に過電圧を発生させないようにするために、ゲート電圧を徐々に下げることにより、半導体遮断機12に流れる電流を緩やかに制限する方法もある。この方法では、通常時には半導体遮断器12がオン状態になっているが、遮断時には素早く遮断を開始することができるように、波形発生部11aを用いて半導体遮断器12のゲート電圧を制御する必要がある。
【0014】
波形発生部11aは、遮断時には半導体遮断器12をオン状態とオフ状態とに変化させる電圧レベルまで、半導体遮断器12のゲート電圧を素早く下げ、半導体遮断機のゲートに蓄電した電荷を素早く引き抜くようにしている。その後、半導体遮断器12をオン状態とオフ状態とを変化させる電圧領域では、波形発生部11aは、波形発生部11aは半導体遮断器12のゲート電圧をゆっくりを下げる。これにより、電荷を徐々に引き抜くようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−67440号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】http://www.fujielectric.co.jp/fdt/scd/technical/application/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、スナバ回路を用いれば、半導体遮断器が破損するのを回避することができる。しかし、スナバ回路を用いた場合、スナバ回路の分だけ半導体遮断回路が大きくなる。例えば、正極線と負極線との両方に流れる電流を遮断する必要がある場合、正極線上と負極線上の両方に半導体遮断器及びスナバ回路を設けなければならず、半導体遮断回路の大型化が避けられない。この場合、半導体遮断回路を設置するためのスペースが増大してしまうという問題点がある。
【0018】
また、スナバ回路を用いた場合、半導体遮断器に流れる電流の遮断が完了した後にもスナバ回路のコンデンサを充電するために、短絡系統には電流が流れる。そのため、直流電源から出力された電流を電流分配装置によって複数の給電系統に分岐して負荷へ給電している場合、短絡が発生した給電系統において電流を遮断することによって発生する電圧変動が、短絡が発生していない給電系統に伝播してしまうという問題点がある。
【0019】
また、直流電源80側の正極線と負極線の間にコンデンサを介挿させて、半導体遮断器の遮断動作後、電源側の電流をこのコンデンサに流れるようにする方法でも、コンデンサの大きさ分、遮断回路が大きくなる。遮断後にコンデンサの電圧が上昇するので、所定の耐電圧を満たすようにコンデンサ容量を大きくする必要がある。高耐圧な素子を用いた場合であっても、短絡系統以外の系統の電圧変動が大きく生じたり、生産コストが高くなったりするといった問題がある。
【0020】
さらに、半導体遮断器12のゲート電圧を制御するための波形発生回路を用いた場合にも、半導体遮断回路が大型化したり、生産コストが高くなったりするといったことが避けられない。
【0021】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、スナバ回路や波形発生回路等を用いずに、回路面積が大型になったり、生産コストを高くなったりするのを抑えることのできる半導体遮断回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために本発明の半導体遮断回路は、直流電源からの給電線を介して給電される負荷と前記直流電源との間に設けられた半導体遮断回路であって、
前記給電線上に接続され、前記給電線に流れる電流の電流値が所定の電流値に達すると、前記給電線を流れる電流の遮断を開始する半導体遮断器と、
前記直流電源と、前記半導体遮断器のゲート端子との間に接続され、前記半導体遮断器のゲート電圧を制御するゲート電圧調整部と、
前記給電線に流れる電流の電流値が閾値電流値を超えると、前記半導体遮断器の電気的接続状態をオン状態からオフ状態へ切り替えるスイッチ切替制御部と、を有し、
前記スイッチ切替制御部は、
前記半導体遮断器が電流を遮断するとき、前記ゲート電圧調整部のスイッチング回路の電気的接続状態をオフ状態、オン状態に交互に切り替えることにより前記半導体遮断器のゲート電圧を制御する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は以上説明したように構成されているので、波形発生回路等を用いることなく半導体遮断器のゲート電圧の制御を行ったり、スナバ回路や高耐圧な素子等を用いることなく過電流対策を行うことができる。半導体遮断回路にスナバ回路や波形発生回路等を用いる必要がないことで、半導体遮断回路を小型かつ低コストで製造することができる。
【0024】
また、スナバ回路等を用いた場合よりも、半導体遮断回路を設置するためのスペースを低減することができる。
【0025】
また、スナバ回路を用いた場合よりも、電流の遮断時に、短絡が発生していない給電系統に伝搬する電圧変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の半導体遮断回路を適用した給電回路の実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1に示した半導体遮断回路の制御部11の動作の流れ(時間により半導体遮断器12のゲート電圧を制御する)を示すフローチャートである。
【図3】図1に示した半導体遮断回路の制御部11の動作(半導体遮断器12のコレクタ−エミッタ間電圧により半導体遮断器12のゲート電圧を制御する)の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の半導体遮断回路を適用した給電回路の第1の変形例の構成を示す図である。
【図5】本発明の半導体遮断回路を適用した給電回路の第2の変形例の構成を示す図である。
【図6】本発明の半導体遮断回路を適用した給電回路の第3の変形例の構成を示す図である。
【図7】本発明の半導体遮断回路を適用した給電回路の第4の変形例の構成を示す図である。
【図8】半導体遮断器を利用した従来の給電回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の好適な実施の形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等の構成要素は同一の符号によって示す。
【0028】
(実施形態)
図1は、本発明の半導体遮断回路を適用した給電回路の実施形態の構成を示す図である。
【0029】
本実施形態の給電回路は図1に示すように、半導体遮断回路10と、直流電源80と、負荷90と、直流電源91とを備えている。
【0030】
また、半導体遮断回路10と直流電源80と負荷90とは、正極線51及び負極線52から構成される給電線によって接続されている。そして、直流電源80から給電線を介して電流が流れることにより、負荷90へ給電される。また、電流検出部13は、給電線上の第1の接続点に接続され、第1の接続点に流れる電流の電流値を検出する。そして、電流検出部13は、検出された電流値が所定の電流値に達すると、制御部11へ信号を出力する。
【0031】
半導体遮断回路10は、直流電源80と負荷90との間に設けられており、制御部11と、半導体遮断器12とを備えている。
【0032】
制御部11は、スイッチ切替制御部11aと、ゲート電圧調整部11bである抵抗R,R、及びスイッチS,Sとを有する。
【0033】
スイッチ切替制御部11aは、電流検出部13から出力された信号を受け付けると、半導体遮断器12をオン状態からオフ状態へ切り替える。
【0034】
抵抗Rは、負荷90を駆動するために用いる直流電源80とは別の直流電源91の正極線53と、スイッチSを介して半導体遮断器12のゲート端子との間に接続される。抵抗Rは、直流電源91の負極線54とスイッチSを介して半導体遮断器12のゲート端子との間に接続される。抵抗R,Rは、半導体遮断器12のゲート電圧Vを制御するために用いられる。
【0035】
スイッチSは、直流電源91の正極と抵抗Rとの間に接続され、制御部11から出力されるPWM(Pulse Width Modulation)方式によるスイッチング切替制御信号φのパルス幅によって、その電気的接続状態が切り替わる。また、スイッチSは、直流電源91の負極と抵抗Rとの間に接続され、制御部11から出力されるスイッチング切替制御信号φのパルス幅によって、その電気的接続状態が切り替わる。
【0036】
上述した抵抗Rは、比較的小さな抵抗値を有するようにする。
【0037】
スイッチSの電気的接続状態がオン状態となることで半導体遮断器12のゲート電圧Vが低くなる。また、スイッチSの電気的接続状態がオフ状態となることで半導体遮断器12のゲート電圧が高くなる。半導体遮断器12が電流の遮断を開始すると、抵抗Rを電気的接続状態をオン状態にする。その後、スイッチング切替制御信号φによって、スイッチSの電気的接続状態を、オン状態、オフ状態に交互に切り替えなから、半導体遮断器12のゲート電圧の制御を行う。
【0038】
半導体遮断器12は、給電線上の第2の接続点に接続され、制御部11によってオン状態とオフ状態とが切り替えられる。半導体遮断器12は、オン状態からオフ状態に切り替えられることにより、第2の接続点に流れる電流の遮断を開始する。
【0039】
以下に、上記のように構成された給電回路における半導体遮断回路10の動作について説明する。
【0040】
まず、図1に示した給電回路に短絡が発生していない場合について説明する。
【0041】
図1に示した給電回路に短絡が発生していない場合には、半導体遮断器12は、オフ状態であるため、直流電源80から給電線を介して流れる電流は、負荷90へ流れる。なお、短絡や過電流が発生していない通常時は、スイッチSの電気的接続状態をオン状態であり、スイッチSの電気的接続状態をオフ状態である。
【0042】
次に、図1に示した給電回路に短絡が発生した場合について説明する。
【0043】
図1に示した給電回路に短絡が発生すると、直流電源80から給電線を介して流れる電流が増加していく。そして、電流検出部13で計測した第1の接続点に流れる電流の電流値が所定の電流値に達すると、電流検出部13から出力された信号を受け付けた制御部11が遮断を判定する。制御部11は、半導体遮断器12をオン状態からオフ状態へ切り替えることにより、半導体遮断器12が電流の遮断を開始する。
【0044】
短絡や過電流が発生し、半導体遮断器12が電流を遮断するとき、電流を素早く遮断することができるように、スイッチSの両方の電気的接続状態をオン状態にする。抵抗Rは、比較的小さな抵抗値を有するものであるため、抵抗Rをオンにすることで、半導体遮断器12のゲート電圧Vが急激に減少していく。半導体遮断器12のゲート電圧Vが遮断を開始する閾値電圧Vに達すると、半導体遮断器12のゲート電圧が遮断を完了する閾値電圧Vになるまで、スイッチSの電気的接続状態をオン状態、又はオフ状態に切り替えるのを繰り返すことにより、半導体遮断器12のゲート電圧Vが徐々に減少していく。
【0045】
最初に半導体遮断器12のゲート電圧Vを、半導体遮断器12が遮断を開始する閾値電圧V1に向かって急激に減少させていき、電荷を素早く引き抜く。その後、半導体遮断器12のゲート電圧Vが遮断を完了する閾値電圧Vになるまで、スイッチSの電気的接続状態を再びオン状態、オフ状態に切り替えるのを繰り返し、半導体遮断器12のゲート電圧Vを減少させていき、電荷を徐々に引き抜く。このため、電流を緩やかに切ることができるようになり、スナバ回路を用いることなく半導体遮断器に発生する電圧を低減することができる。
【0046】
以下、図2及び図3を参照して、制御部11による半導体遮断器12の電気的接続状態を切り替るための制御の流れを詳細に説明する。
【0047】
まず、図2に示すように、制御部11は、スイッチSをオン状態に切り替えるようにスイッチング切替制御信号φを出力し,スイッチSをオフ状態に切り替えるようにスイッチング切替制御信号φを出力する(ステップS101)。次に、制御部11は、電流検出部13から電流値を入力し(ステップS102)、電流値が閾値電流を超えたか否かを判断することによって、回路に短絡や過電流が発生したか判断する。制御部11は、電流値が閾値電流を超えていなく、短絡や過電流が発生していないと判断すると(ステップS103のNO)、ステップS102に戻り処理を繰り返す。また、制御部11は、電流値が閾値電流を超え、短絡や過電流が発生したと判断すると(ステップS103のYES)、スイッチSの電気的接続状態をオフ状態からオン状態に切り替える(ステップS104)。
【0048】
スイッチSの電気的接続状態がオン状態に切り替わることによって、半導体遮断器12のゲート電圧Vが減少し始める。上述したように、抵抗Rの抵抗値は比較的小さいため、半導体遮断器12のゲート電圧は、半導体遮断器12が遮断を開始する閾値電圧V1に向かって、急激に減少していく。半導体遮断器12のゲート電圧を、半導体遮断器12が遮断を開始する閾値電圧Vに達するまで減少させていく(ステップS105のNO)。
【0049】
そして、半導体遮断器12のゲート電圧Vが閾値電圧Vに達すると(ステップS105のYES)、半導体遮断器12のゲート電圧Vが閾値電圧Vになるまでの間(ステップS106のNO)、制御部11が計時する時間に応じて、スイッチSの電気的接続状態をオン状態、オフ状態に交互に切り替えるようにスイッチング切替制御信号φを出力する。
【0050】
制御部11は、時間を計時し始め(ステップS107)、時間が指定された所定の時間Tを超えるまでの間(ステップS108のNO)、スイッチSの電気的接続状態をオン状態のままにしておく。そして、時間が指定された所定の時間Tを超えると(ステップS108のYES)、制御部11は、スイッチSの電気的接続状態をオン状態からオフ状態に切り替えるようにスイッチング切替制御信号φを出力する(ステップS109)。
【0051】
そして、制御部11は、時間を計時し始め(ステップS110)、時間が指定された所定の時間Tを超えるまでの間(ステップS111のNO)、スイッチSの電気的接続状態をオフ状態のままにしておく。そして、時間が指定された所定の時間Tを超えると(ステップS111のYES)、制御部11は、スイッチSの電気的接続状態を再びオフ状態からオン状態に切り替えるようにスイッチング切替制御信号φを出力する(ステップS112)。
【0052】
そして、半導体遮断器12のゲート電圧Vが閾値電圧Vより低くなるまで、上述したステップS107〜S112の処理を繰り返してスイッチSの電気的接続状態をオン状態、オフ状態に交互に切り替える。同時に、スイッチSの電気的接続状態をオフ状態にしておく時間に対して、スイッチSの電気的接続状態をオン状態にしておく時間を少しずつ延ばしていく。これにより、半導体遮断器12のゲート電圧の急激な低下が抑制され、ゲート電圧Vを徐々に低下させ、最終的には半導体遮断器12のゲート電圧Vが閾値電圧Vより低くなるようにする。そして、半導体遮断器12のゲート電圧が閾値電圧V以下となると(ステップS106のYES)、電流値が0Aになる。
制御部11は、スイッチSをオン状態からオフ状態に切り替えるようにスイッチング切替制御信号φを出力し(ステップS113)遮断に係る一連の制御が完了する。
【0053】
また、上述したように各スイッチをオン状態またはオフ状態にしている時間に応じて半導体遮断器12の接続状態を切り替える以外にも、例えば半導体遮断器12のコレクタ−エミッタ間電圧に応じて半導体遮断器12の接続状態を切り替えることもできる。
【0054】
図3に示すように、制御部11は、ステップS201〜S206の各処理を、上述したステップS101〜S106の各処理と同様に行う。そして、半導体遮断器12のゲート電圧Vが閾値電圧V以下になるまでの間(ステップS106のNO)、半導体遮断器12のコレクタ−エミッタ間電圧に応じて、スイッチSの電気的接続状態をオン状態、オフ状態に交互に切り替えるようにスイッチング切替制御信号φを出力する。
【0055】
半導体遮断器12のコレクタ−エミッタ間電圧が所定の閾値電圧Vを超えるまでの間(ステップS207のNO)、スイッチSの電気的接続状態をオン状態のままにしておく。そして、半導体遮断器12のコレクタ−エミッタ間電圧が閾値電圧Vを超えると(ステップS207のYES)、制御部11は、スイッチSの電気的接続状態をオン状態からオフ状態に切り替えるようにスイッチング切替制御信号φを出力する(ステップS208)。
【0056】
そして、半導体遮断器12のコレクタ−エミッタ間電圧が閾値電圧Vよりも低い閾値電圧V以下になるまでの間(ステップS209のNO)、スイッチSの電気的接続状態をオフ状態のままにしておく。そして、半導体遮断器12のコレクタ−エミッタ間電圧が閾値電圧V以下になると(ステップS209のYES)、制御部11は、スイッチSの電気的接続状態を再びオフ状態からオン状態に切り替えるようにスイッチング切替制御信号φを出力する(ステップS210)。
【0057】
そして、半導体遮断器12のゲート電圧Vが閾値電圧Vより低くなるまで、上述したステップS207〜S210の処理を繰り返してスイッチSの電気的接続状態をオン状態、オフ状態に交互に切り替える。同時に、スイッチSの電気的接続状態をオン状態にしておく時間に対して、スイッチSの電気的接続状態をオフ状態にしておく時間を少しずつ延ばしていく。これにより、半導体遮断器12のゲート電圧の急激な低下が抑制され、ゲート電圧Vを徐々に低下させ、最終的には半導体遮断器12のゲート電圧Vが閾値電圧Vより低くなるようにする。
【0058】
そして、半導体遮断器12のゲート電圧が閾値電圧V以下となると(ステップS206のYES)、電流値が0Aになる。そこで制御部11は、スイッチSをオン状態からオフ状態に切り替えるようにスイッチング切替制御信号φを出力し(ステップS211)、遮断に係る一連の制御が完了する。
【0059】
上述したように、回路に短絡が発生すると、スイッチSをオン状態にして、半導体遮断器12のゲート電圧Vを急激に減少させる。その後、スイッチSの電気的接続状態をオン状態、オフ状態に交互に切り替えて、半導体遮断器12のゲート電圧Vを徐々に減少させる。これによって、波形発生回路等を用いて行っていた半導体遮断器12のゲート電圧Vを制御を、波形発生回路等を用いなくても行うことができる。
【0060】
(変形例)
なお、上述した実施形態おいては、半導体遮断器12及び電流検出部13が正極線51上に接続される場合を一例として説明したが、半導体遮断器12及び電流検出部13は、負極線52上に接続されていてもよい。また、半導体遮断器12と電流検出部13との一方が正極線51上に接続され、他方が負極線52上に接続されていてもよい。さらに、短絡や過電流を検出するのに際しても、電流検出部13を用いる以外の方法によって短絡や過電流を検出することもできる。
【0061】
また、上述した実施形態において、半導体遮断器12はN型MOSFETを用いて構成されるものであったが、これに限らない。図4に示す半導体遮断回路30のように、半導体遮断器12はP型MOSFETを用いて構成されるものであっても良い。この場合、図示するように、スイッチSは直流電源91の負極線54と接続され、スイッチSは直流電源91の正極線53と接続される。
【0062】
また、上述した実施形態において、負荷90を駆動するために用いる直流電源80とは別に直流電源91を設けていた。但し、図5に示すように、直流電源91を用いる代わりに、絶縁型DC/DCコンバータ92を用いて給電線から給電される電圧を変換して、半導体遮断器12のゲート電圧を制御するための電圧を生成しても良い。
【0063】
また、図6に示すように、半導体遮断器12が正極線51上に設けられ、その半導体遮断器12がP型MOSFET等で構成され、半導体遮断器12のゲート端子に−の電圧を印加されて通電・遮断動作を行うものである場合には、非絶縁型DC/DCコンバータ93を用いて、給電線から給電される電圧を変換して、半導体遮断器12のゲート電圧を制御するための電圧を生成しても良い。なお、半導体遮断器12が負極線52上に設けられ、その半導体遮断器12がN型MOSFET等で構成され、半導体遮断器12のゲート端子に+の電圧を印加されて通電・遮断動作を行うものである場合には、非絶縁DC/DCコンバータ93を設けて、給電線から給電される電圧を変換して、半導体遮断器12のゲート電圧を制御するための電圧を生成しても良い。
【0064】
なお、上述の直流電源80の電圧が半導体遮断器12のゲート電圧に適合している場合には、上述の絶縁型DC/DCコンバータ92や非絶縁型DC/DCコンバータ93を設けないで、正極線51及び負極線52とゲート電圧調整部11bとを直接接続して、直流電源80の電圧をそのままゲート端子の制御に利用しても良い。
【0065】
また、上述した実施形態において、例えば、電流検出部13が所定の電流値を検出してから、半導体遮断器12が電流の遮断を開始するまでの間の電流の増加を抑制するために、図7に示すように、給電線上にインダクタ94,95が接続されていても良い。
【0066】
また、スイッチS,Sが共にオン状態になるときには、半導体遮断器12のゲート電圧Vが、半導体遮断器12を動作させる電圧Vと同程度になるように、抵抗R,Rの抵抗値を決めておくことで、遮断開始時にスイッチS,Sを共にオン状態にしたときに、ゲート電圧Vを電圧Vにすることができる。そして、その後はスイッチSをオフの状態、スイッチSをオンの状態と、スイッチSをオンの状態、スイッチSをオフの状態とを繰り返すことでゲート電圧Vを緩やかに低減させ、電流を遮断する。このようにすることで、制御が容易になる。
【0067】
また、スイッチS,Sが共にオン状態になるときには、半導体遮断器12のゲート電圧Vが、半導体遮断器12を動作させる電圧V2と同程度になるように、抵抗R,Rの抵抗値を決めておくことで、遮断開始時にスイッチS,Sを共にオン状態にしたときに、ゲート電圧Vを電圧Vまで低減させる。そして、その後はスイッチSをオンに固定した状態で、スイッチSをオンの状態とオフの状態とを繰り返すことでゲート電圧Vを緩やかに低減させることができ、電流を遮断する。この場合、スイッチSをのみを高速で制御すればよいため、制御が容易になる。
【0068】
(まとめ)
スナバ回路や波形発生回路等を用いることなく、半導体遮断器12を破損させずに電流を遮断することができる。制御部11が、短絡や過電流が発生したと判断すると、半導体遮断器12のゲート電圧Vを半導体遮断器12が遮断を開始する閾値電圧Vに向けて急激に減少させていくための制御を行う。その後、制御部11が、スイッチSの電気的接続状態をオン状態にするのと、オフ状態にするのを交互に繰り返して半導体遮断器12のゲート電圧Vを徐々に減少させていくための制御を行う。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、直流電源で動作する様々な負荷を短絡や過電流から保護するための半導体遮断回路として用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
10 半導体遮断回路
11 制御部
11a スイッチ切替制御部
11b ゲート電圧調整部
12 半導体遮断器
13 電流検出部
51 正極線
52 負極線
80 直流電源
90 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの給電線を介して給電される負荷と前記直流電源との間に設けられた半導体遮断回路であって、
前記給電線上に接続され、前記給電線に流れる電流の電流値が所定の電流値に達すると、前記給電線を流れる電流の遮断を開始する半導体遮断器と、
前記直流電源と、前記半導体遮断器のゲート端子との間に接続され、前記半導体遮断器のゲート電圧を制御するゲート電圧調整部と、
前記給電線に流れる電流の電流値が閾値電流値を超えると、前記半導体遮断器の電気的接続状態をオン状態からオフ状態へ切り替えるスイッチ切替制御部と、を有し、
前記スイッチ切替制御部は、
前記半導体遮断器が電流を遮断するとき、前記ゲート電圧調整部のスイッチング回路の電気的接続状態をオフ状態、オン状態に交互に切り替えることにより前記半導体遮断器のゲート電圧を制御する半導体遮断回路。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体遮断回路において、
前記ゲート電圧調整部は、
前記給電線の一方の極線と、前記半導体遮断器のゲート端子との間に接続された第1の抵抗と、
前記給電線の他方の極線と、前記半導体遮断器のゲート端子との間に接続された第2の抵抗と、
前記一方の極線と、前記第1の抵抗との間に接続された第1のスイッチング素子と、
前記他方の極線と、前記第2の抵抗との間に接続された第2のスイッチング素子と、からなる半導体遮断回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体遮断回路において、
前記スイッチ切替制御部は、
前記給電線に流れる電流の電流値が所定の電流値に達する前、前記第1のスイッチング素子の電気的接続状態をオン状態に切り替え、前記第2のスイッチング素子の電気的接続状態をオフ状態に切り替え、
前記給電線に流れる電流の電流値が所定の電流値に達すると、前記第2のスイッチング素子の電気的接続状態をオン状態に切り替え、
前記半導体遮断器のゲート電圧が当該半導体遮断器の遮断開始電圧である第1の閾値電圧以下になり、当該半導体遮断器の遮断完了電圧である第2の閾値電圧以下になるまでの間、前記第2のスイッチング素子の電気的接続状態をオフ状態、オン状態に交互に切り替え、
前記半導体遮断器のゲート電圧が前記第2の閾値電圧以下になると、前記第1のスイッチング素子の電気的接続状態をオフ状態に切り替えることで前記半導体遮断器のゲート電圧を制御する半導体遮断回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体遮断回路において、
時間を計測する計時部を有し、
前記スイッチ切替制御部は、
前記半導体遮断器のゲート電圧が前記第1の閾値電圧以下になると、前記計時部にて計測された時間が第1の時間を超えた場合、前記第2のスイッチング素子の電気的接続状態をオフ状態に切り替え、前記計時部にて計測された時間が第2の時間を超えた場合、前記第2のスイッチング素子の電気的接続状態をオン状態に切り替えることで前記半導体遮断器のゲート電圧を制御する半導体遮断回路。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体遮断回路において、
前記半導体遮断器のコレクタ−エミッタ間の電圧を検出する電圧検出部を有し、
前記スイッチ切替制御部は、
前記半導体遮断器のゲート電圧が前記第1の閾値電圧以下になると、前記電圧検出部にて検出された前記半導体遮断器のコレクタ−エミッタ間の電圧が第3の閾値電圧を超えた場合、前記第2のスイッチング素子の電気的接続状態をオフ状態に切り替え、前記電圧検出部にて検出された前記半導体遮断器のコレクタ−エミッタ間の電圧が前記第3の閾値電圧よりも低い第4の閾値電圧以下になった場合、前記第2のスイッチング素子の電気的接続状態をオン状態に切り替えることで前記半導体遮断器のゲート電圧を制御する半導体遮断回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体遮断回路において、
前記直流電源は、
前記負荷を駆動するための駆動用直流電源と、前記半導体遮断器を制御するための制御用直流電源とであって、
前記ゲート電圧調整部は、
前記制御用直流電源と、前記半導体遮断器のゲート端子との間に接続され、前記半導体遮断器のゲート電圧を制御する半導体遮断回路。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体遮断回路において、
前記ゲート電圧調整部は、
DC/DCコンバータを介して前記給電線と接続され、前記半導体遮断器のゲート電圧を制御する半導体遮断回路。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体遮断回路において、
前記ゲート電圧調整部は、
インダクタが接続された前記給電線と接続され、前記半導体遮断器のゲート電圧を制御する半導体遮断回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−49615(P2012−49615A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187130(P2010−187130)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】