説明

半導体配線用Cu合金、Cu合金配線の製法、該製法で得られたCu合金配線を有する半導体装置、並びに半導体のCu合金配線形成用スパッタリングターゲット

【課題】 第1の目的:半導体装置に使用される配線用Cu合金であって、半導体の配線幅を狭く設計しても該配線幅に対応する凹部に確実に埋め込むことのできる半導体配線用Cu合金を提供する。第2の目的:半導体基板に設けられた凹部に上記半導体配線用Cu合金を埋め込むことによりCu合金からなる配線を形成する製法を提供する。第3の目的:上記製法で得られるCu合金配線を有する半導体装置を提供する。第4の目的:半導体のCu合金配線を形成する際に用いるスパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】 第1の目的を解決できる半導体配線用Cu合金とは、Sb:0.10〜10原子%、Bi:0.010〜1.0原子%、および、Dy:0.01〜3原子%よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなる半導体配線用Cu合金である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものであり、より具体的には、半導体配線用のCu合金、該Cu合金からなる配線を製造する方法、該製法で得られたCu合金配線を有する半導体装置、並びに半導体のCu合金配線を形成する際に用いるスパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体は、益々高性能化が進んでおり、高速化や高集積化が求められている。半導体の高速化を実現するには、信号伝達遅延の原因となる配線膜の電気抵抗を極力低減することが有効である。そのため配線膜の素材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、「Al系金属」と称することがある)から銅または銅合金(以下、「Cu系金属」と称することがある)に代わってきている。また、高速動作を可能とするには、配線幅をできるだけ狭くするのがよい。そのため従来は配線幅が0.25μm前後の半導体が主流であったが、近年では配線幅は益々狭くなる傾向がある。
【0003】
一方、半導体の高集積化を実現するために、近年では配線を多層構造にすることが検討されている。多層構造の配線を形成する方法としてはダマシン法があり、この方法は、半導体基板上に形成した絶縁膜(例えば、Si酸化膜等)に、配線を埋め込むための溝や配線同士を接続するための孔(トレンチ・ビア)等の配線パターン(以下、溝や孔をまとめて「凹部」と呼ぶことがある)を予め形成した後、スパッタリングによって表面にバリア膜を形成し、次いで電気メッキによってCu系金属を前記凹部に埋没させた後、余分なCu系金属を化学機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)処理することによって配線を形成する。そして研磨後の表面に新たな絶縁膜を形成して上記プロセスを繰り返すことにより多層構造の配線を形成する方法である。
【0004】
ところが上記凹部の幅(即ち、配線幅)が大きければ、電気メッキによってCu系金属を該凹部に容易に埋め込むことができる。しかし上述した如く近年の半導体の配線幅は益々狭くなる傾向があるが、配線幅を狭くしようとすると必然的に凹部の幅も狭くなる。その結果、該凹部にCu系金属が浸入せず、配線を形成できないという問題があった。
【0005】
Cu系金属を凹部に埋め込む方法としては、特許文献1の技術が先に提案されている。この技術は、銅系配線膜の加圧押込方法であって、孔もしくは溝が形成された基板の絶縁膜表面を、物理蒸着法により銅系の配線膜材料で被覆した後、該配線膜材料の融点以下の温度で、高圧のガス圧力を作用させて、該配線膜材料を塑性流動もしくは拡散させることによって孔もしくは溝に埋め込むものである。そしてこの文献には、物理蒸着法による成膜を、対象部材の温度を200〜400℃程度とした高温で行った後、高圧ガスによる押込み処理を行うことが記載されている。しかし本発明者らが検討したところ、孔もしくは溝の幅が狭くなると、該孔もしくは溝に上記銅系配線膜材料が埋め込まれないことがあることが分かり、改善の余地が残されていた。なお、この文献には銅系配線膜材料としてCuを主成分として合金元素としてSbを含むことが記載されているが、実施例にはSbを含有した例はなく、実際のところその添加効果は不明である。
【特許文献1】特開平11−260820号公報([特許請求の範囲]、[0011]、[0013]、[0020]、[0028]参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体装置に使用される配線用Cu合金であって、半導体の配線幅を狭く設計しても該配線幅に対応する凹部に確実に埋め込むことのできる半導体配線用Cu合金を提供することにある。本発明の他の目的は、半導体基板に設けられた凹部に上記半導体配線用Cu合金を埋め込むことによりCu合金からなる配線を形成する製法を提供することにある。更に他の目的は、上記製法で得られるCu合金配線を有する半導体装置を提供することにある。更に他の目的は、半導体のCu合金配線を形成する際に用いるスパッタリングターゲットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、Cu合金を埋め込もうとする凹部の幅を狭くした場合に、該凹部にCu系金属を確実に埋め込む方策について検討を重ねた。その結果、半導体配線用Cu合金の成分組成を厳密に規定すれば、半導体の配線幅を狭く設計しても該配線幅に対応する凹部にCu合金を確実に埋め込むことができることを見出し、本発明を完成した。また、半導体配線用Cu合金の結晶粒の平均粒径を厳密に制御しても、半導体の配線幅を狭く設計した場合に、該配線幅に対応する凹部にCu合金を確実に埋め込むことができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明に係る半導体配線用Cu合金とは、Sb:0.10〜10原子%、Bi:0.010〜1.0原子%、および、Dy:0.01〜3原子%よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなる点に要旨を有する。また、スパッタリング法で形成された半導体配線用のCu合金であって、該Cu合金は、Sb、BiおよびDyよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなり、且つ、室温で行われるスパッタリング法で形成された直後における結晶粒の平均粒径が0.01〜0.15μmで、これを熱処理すると前記結晶粒の平均粒径が0.5μm以上に成長する半導体配線用Cu合金であっても上記課題を解決できる。
【0009】
本発明におけるCu合金配線の製法とは、半導体基板の凹部にCu合金を埋め込むことによって配線を形成する方法であって、前記凹部は、最小幅が0.25μm以下(0μmを含まない)で、該最小幅に対する深さの比[深さ/最小幅]が1以上であり、前記半導体基板の表面に、上記半導体配線用Cu合金を室温で行われるスパッタリング法で形成した後、200℃以上、50MPa以上で高温高圧処理して前記半導体配線用Cu合金を前記凹部内に埋め込むことによって配線を形成する点に要旨を有する。
【0010】
本発明には、上記Cu合金配線の製法で得られた配線を有する半導体装置や、Sb:0.10〜12原子%、Bi:0.020〜3原子%、および、Dy:0.02〜3.5原子%よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなる半導体のCu合金配線形成用スパッタリングターゲットも包含される。
【0011】
なお、本発明において配線とは、線状のものに限定されず、配線同士を接続するための孔(トレンチ・ビア)も含む意味であり、半導体装置のうちCu合金が埋め込まれている部分を指す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体配線用Cu合金の成分組成を厳密に規定することによって、半導体の配線幅を狭く設計しても該配線幅に対応する凹部内に確実に埋め込むことのできる半導体配線用Cu合金を提供できる。また、特定の元素を含有する半導体配線用Cu合金における結晶粒径を厳密に制御することによっても上記と同様の効果を奏する半導体配線用Cu合金を提供できる。こうした半導体配線用Cu合金を用いれば、半導体基板に設けられた幅の狭い凹部に確実にCu合金を埋め込むことができ、Cu合金からなる配線を確実に形成できる。また本発明によれば、上記配線を有する半導体装置を提供できる。更に本発明によれば、半導体のCu合金配線を形成する際に用いるスパッタリングターゲットを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者らは上記特許文献1の技術について、凹部(即ち、半導体配線用の溝や孔)の幅を狭くすると純Cuが凹部に埋め込まれない原因を突き止めるべく検討した。その結果、こうした原因は、半導体基板表面に純Cu薄膜を被覆した場合に、純Cu薄膜の結晶粒界が安定化するところにあることが判明した。
【0014】
即ち、純Cuからなる薄膜を成膜すると、Cuの結晶粒径は薄膜の厚さとほぼ等しくなる。このときCuの結晶粒同士の界面に存在する結晶粒界が安定化するため、成膜後に高圧ガスを用いて純Cuを凹部に押し込もうとしても幅の狭い凹部に純Cuは埋め込まれない。例えば、成膜した純Cuからなる薄膜の厚さが1μmであれば、該薄膜中のCuの結晶粒は1μm程度にまで成長する。そのため薄膜中の結晶粒界は、薄膜を貫通するように形成される。こうした薄膜を貫通して形成される粒界は比較的安定なため、圧力を加えてもCuの結晶粒は移動・変形し難い。従って、純Cuは幅の狭い凹部に押し込まれないのである。
【0015】
そこで本発明者らは、薄膜を貫通するような結晶粒界を形成せず、結晶粒界を不安定な状態とすれば、加圧することによってCuの結晶粒が移動・変形し、幅の狭い凹部にもCuが埋め込まれるのではないかと考え、更に検討を重ねた。その結果、Cu系金属を成膜する方法としてスパッタリング法を採用すればよく、しかもスパッタリングを室温で行えば、成膜されたCu合金の結晶粒が微細化し、薄膜を貫通するような結晶粒界は形成されないことが分かった。但し、スパッタリングを室温で行っても純Cuでは成膜後、数時間から数日かけて粒成長が生じてCuの結晶粒が微細化しないため、各種の元素を含むCu合金でなければならない。ちなみに、電気メッキ法やCVD法ではCu合金を成膜すること自体が困難なため採用できない。
【0016】
次に、本発明者らは結晶粒を微細化したCu合金薄膜について結晶粒界の安定性を調べた。結晶粒界の安定性は、薄膜の応力温度曲線を測定することによって調べた。応力温度曲線測定とは、加熱しながら薄膜の応力を測定する評価方法であり、基板と薄膜の熱膨張率の違いから温度変化に伴って基板に生じる変形量を測定して応力を求める手法である。薄膜が高温で塑性変形し始めると、応力が緩和され始めるため、この応力の緩和が開始される温度を降伏温度(降伏点)として定義する。そして薄膜が高温で完全に流動性(以下、「高温流動性」と称することがある)を発揮すると、応力変化は観察されなくなる。こうした手法で、各種合金元素を含むCu合金の高温流動性を調べた。
【0017】
まず、バリア膜としてTaN(膜厚:500Å)を形成したシリコンウエハ表面に、Ti(0.6原子%)、Sm(6.1原子%)、Y(1.7原子%)、Gd(2.0原子%)、Tb(1.8原子%)またはAg(3.3原子%)のいずれかを含有するCu合金薄膜をスパッタリング法で成膜し、この薄膜の応力温度曲線を測定した。なお、括弧内は合金元素の含有量を示している(以下同じ)。
【0018】
バリア膜(TaN膜)はスパッタリング法で成膜し、このときの条件は、純Taターゲットを用い、成膜時の雰囲気ガス:Ar+20%N2、成膜ガス圧力:667ミリPa(5ミリTorr)、放電電力:3W/cm2、極間距離:55mm、成膜温度:室温(20℃)、とした。
【0019】
Cu合金薄膜をスパッタリング法で成膜するときの条件は、成膜時の雰囲気ガス:Ar、成膜ガス圧力:266ミリPa(2ミリTorr)、放電電力:3.3W/cm2、極間距離:55mm、成膜温度:室温(20℃)、とした。スパッタリングターゲットは上記合金元素を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなるCu合金を用いた。
【0020】
応力温度曲線の測定は、N2雰囲気中で、室温(20℃)から500℃までの昇温速度:5℃/minで加熱して行った。その結果、上記いずれかの合金元素を含有するCu合金薄膜の降伏点は、いずれも純Cu薄膜の降伏点(約350℃)よりも高かった。即ち、上記元素を添加するとCu合金の強度が増大し、却って高温流動性が低下したと考えられる。これは上記元素を添加すると、固溶強化あるいは析出強化によってCu合金薄膜が硬くなったからと考えられる。
【0021】
次に、バリア膜としてTaN(膜厚:500Å)を形成したシリコンウエハ表面に、Mg(1.44原子%)、Sn(0.9原子%)またはIn(2.3原子%)のいずれかを含有するCu合金薄膜をスパッタリング法で成膜し、この薄膜の応力温度曲線を測定した。スパッタリング条件および応力温度曲線の測定条件は上記と同じである。その結果、上記いずれかの合金元素を含有するCu合金薄膜の降伏点は、いずれも純Cu薄膜の降伏点(約350℃)とほぼ等しかった。即ち、上記元素を添加しても高温流動性は殆ど発現せず、純Cuの場合とあまり変わらないと考えられる。
【0022】
このときCu合金薄膜におけるCuの結晶粒径を測定した。結晶粒径としては、室温で行われたスパッタリング法で形成されたCu合金薄膜について、成膜直後における結晶粒の平均粒径と、このCu合金薄膜をN2(100%)雰囲気下、450℃で30分間の熱処理した後における結晶粒の平均粒径を求めた。熱処理後の結晶粒の平均粒径を求めたのは、スパッタリング後に行う高温高圧処理を模擬するためである(高温高圧処理については後述する)。そしてスパッタリング直後における結晶粒の平均粒径に比べて、熱処理後における結晶粒の平均粒径が大きければ、Cuの高温流動性が高いことを示している。Cu合金薄膜におけるCuの結晶粒径は、後述する実施例2と同じ手順で測定した。その結果、Mg、SnまたはInのいずれか1種を含むCu合金薄膜の場合、スパッタリング直後における結晶粒の平均粒径は0.01μm程度であるのに対し、熱処理後における結晶粒の平均粒径は0.05μm程度であった。よってCu合金に含まれる合金元素がMg、SnまたはInのいずれかである場合は、該Cu合金を熱処理してもCuの結晶粒は殆ど成長せず、Cuの移動・変形量が少ないことが分かる。そのためスパッタリングして成膜されたCu合金薄膜を高温高圧処理してもCu合金を幅の狭い凹部に埋め込むことはできない。
【0023】
次に、バリア膜としてTaN(膜厚:500Å)を形成したシリコンウエハ表面に、Sb(3.9原子%)、Bi(0.2原子%)またはDy(1.0原子%)のいずれかを含有するCu合金薄膜をスパッタリング法で成膜し、この薄膜の応力温度曲線を測定した。スパッタリング条件および応力温度曲線の測定条件は上記と同じである。その結果、いずれのCu合金薄膜の降伏点も、純Cuの降伏点(約350℃)よりも100℃程度低い250℃を示した。更に上記元素を添加したCu合金薄膜を300℃以上に加熱すると応力変化が観察されなくなり、良好な高温流動性を発揮すると考えられる。
【0024】
このときCu合金薄膜におけるCuの結晶粒径を後述する実施例2と同じ手順で測定した。その結果、Sb、BiまたはDyのいずれか1種を含むCu合金薄膜の場合、スパッタリング直後におけるCu結晶粒の平均粒径は0.01μm程度であるのに対し、熱処理後におけるCu結晶粒の平均粒径は1μm程度にまで成長した。よってCu合金に含まれる合金元素がSb、BiまたはDyのいずれかである場合は、該Cu合金を熱処理することによってCuの結晶粒が充分に成長することから、結晶粒界が不安定な状態であると考えられる。そのためスパッタリングの後に、高温高圧処理を施すとCuの移動・変形量が多くなり、幅の狭い凹部にCu合金を確実に埋め込むことができる。
【0025】
こうした結晶粒界の状態はスパッタリング法で成膜するときの温度に影響を受けることも分かった。スパッタリングを室温で行って成膜すると、成膜されたCu合金の結晶粒が微細化し、結晶粒界が不安定な状態となる。これに対し、スパッタリングを加熱状態(例えば、300℃)で行うと、成膜されたCu合金の結晶粒は加熱されることによって再配置され、結晶粒界が安定化する。
【0026】
本発明の半導体配線用Cu合金は、Sb:0.10〜10原子%、Bi:0.010〜1.0原子%、および、Dy:0.01〜3原子%よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、残部はCuおよび不可避不純物(例えば、AgやMg,Na、Fe,Siなど)からなるものである。
【0027】
Sb、BiおよびDyは、Cu薄膜中に結晶歪を生じてCuの結晶粒を微細化する元素である。Cuの結晶粒を微細化することによって、半導体基板に設けられた凹部の幅が狭い場合であっても、凹部にCu合金を埋め込むことができる。特にSbはマトリックス中に固溶するが、該固溶Sbは高温高圧処理時に比較的低温域から析出する。そして析出したSbはCuの結晶粒界を動き回り、この状態でCuが粒成長するためCu合金は高温流動性を発現する。
【0028】
なお、Cuの結晶粒を微細化する観点からすれば、MgやTiを合金元素として含有させてもよいと考えられる。しかしMgやTiは、Cuに固溶して固溶強化を起こし、膜自体が硬くなる。また固溶したMgやTiが高温高圧処理時に析出しても、これらの元素はCuの結晶粒界を動き回らず、析出効果を起こして却ってCuの高温流動性を損なう。
【0029】
Sbは、0.10原子%未満では添加効果を発揮しない。好ましくは0.15原子%以上、より好ましくは0.76原子%以上、さらに好ましくは1.30原子%以上である。しかし10原子%を超えると、Sbを添加することによる固溶強化効果が顕著になり、却って膜が硬くなりすぎて高温高圧処理を施しても半導体基板の凹部にCu合金を埋め込むことができない。好ましくは5原子%以下、より好ましくは4.0原子%以下、更に好ましくは3.50原子%以下である。
【0030】
特にSb含有量が0.76〜4.0原子%であれば、高温高圧処理時において比較的低温でも埋め込みが可能となり、しかも幅が0.15μm未満の凹部(即ち、溝や孔)へも容易に埋め込むことができるため好ましい。
【0031】
Biは、0.010原子%未満では添加効果を発揮しない。好ましくは0.05原子%以上、より好ましくは0.07原子%以上である。しかし1.0原子%を超えると、Biを添加することによる固溶強化効果が顕著になり、却って膜が硬くなりすぎて高温高圧処理を施しても半導体基板の凹部にCu合金を埋め込むことができない。好ましくは0.7原子%以下、より好ましくは0.5原子%以下である。
【0032】
Dyは、0.01原子%未満では添加効果を発揮しない。好ましくは0.1原子%以上、より好ましくは0.5原子%以上である。しかし3原子%を超えると、Dyを添加することによってCu結晶粒が微細化され過ぎて高温高圧処理を施しても半導体基板の凹部にCu合金を埋め込むことができない。好ましくは2.5原子%以下、より好ましくは2.1原子%以下である。
【0033】
Sb、BiおよびDyは、夫々単独で使用してもその効果を発揮するが、Sb、BiおよびDyよりなる群から任意に選ばれる2種以上を併用してもよい。異種金属を併用することにより、Cu合金薄膜の結晶粒を一層微細化でき、高温流動性を更に高めることができる。例えば、SbとBiを併用する場合は、Sb:0.3〜3.1原子%で、Bi:0.01〜0.5原子%、とすればよい。
【0034】
また本発明の半導体配線用Cu合金は、スパッタリング法で形成された半導体配線用のCu合金であって、該Cu合金は、Sb、BiおよびDyよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなり、室温で行われるスパッタリング法で形成された直後における結晶粒の平均粒径が0.01〜0.15μmであり、これを熱処理すると前記結晶粒の平均粒径が0.5μm以上に成長するものである。
【0035】
Sb、BiおよびDyは、結晶歪を生じ、Cuの結晶粒を微細化する元素である。そしてスパッタリング直後における結晶粒の平均粒径が0.01〜0.15μmであり、これを熱処理した後の結晶粒の平均粒径が0.5μm以上であれば、高温高圧処理によって高温流動性が発揮されるため、幅の狭い凹部にCu合金を確実に埋め込むことができる。
【0036】
ここで室温とは10〜60℃を指す。室温を超えて高温域でスパッタリングすると、スパッタリング時の熱でCuが再配置されて結晶粒界が安定化するからである。熱処理条件は、熱処理雰囲気:N2(100%)雰囲気下、熱処理温度:450℃、熱処理時間:30分間、熱処理圧力:常圧、である。なお、室温に60℃まで含めたのは、プラズマによる避けられない温度上昇が生じるからである。
【0037】
前記Cu合金としては、合金元素としてSb、BiおよびDyよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなり、室温で行われるスパッタリング法で形成された直後における結晶粒の平均粒径が0.01〜0.15μmであり、これを熱処理すると前記結晶粒の平均粒径が0.5μm以上に成長するものであれば、その成分組成は限定されない。結晶粒の平均粒径が上記要件を確実に満足させるようにするには、Sb、BiまたはDyの含有量を、Sb:0.10〜10原子%、Bi:0.010〜1.0原子%、Dy:0.01〜3原子%とすればよい。
【0038】
次に、半導体基板の凹部にCu合金を埋め込むことによって配線を形成する製法について説明する。半導体基板の凹部にCu合金を埋め込むには、半導体基板の表面に、Sb、BiおよびDyのうち少なくとも1種を含む半導体基板用Cu合金を、室温でスパッタリングして形成(成膜)することが重要である。特定の元素を含むCu合金を、凹部を有する半導体基板の表面に被覆することによって、下工程の高温高圧処理時に該Cu合金が良好に流動し、狭い凹部にCu合金が埋め込まれ、Cu合金配線を形成できる。
【0039】
このときスパッタリングは室温で行うことが重要である。室温でスパッタリングすることによって、半導体基板の表面に被覆されるCu合金の結晶粒が微細化するため、下工程の高温高圧処理時における高温流動性が高まり、狭い凹部にCu合金を確実に埋め込むことができるからである。
【0040】
スパッタリング時には、Sb:0.10〜12原子%、Bi:0.020〜3原子%、および、Dy:0.02〜3.5原子%よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなるスパッタリングターゲットを用いればよい。
【0041】
一般にスパッタリング法では、スパッタリングターゲットの成分組成と、スパッタリングによって得られる膜の成分組成はほぼ一致する。しかしSbやBi、Dyを含むCu合金膜をスパッタリング法で形成しようとすると、スパッタリングによって得られるCu合金の成分組成と、スパッタリングターゲットの成分組成にはズレを生じる。こうしたズレを生じる理由はSbやBi,DyはCuよりも低融点であるため、これらの元素がスパッタリング時にスパッタリングターゲットから蒸発して飛散するからである。そのため本発明の製法で用いるスパッタリングターゲットの成分組成は、スパッタリングによって成膜しようとするCu合金に含まれる合金元素量よりも多少多めに含有させる必要がある。
【0042】
スパッタリング法で形成するCu合金の厚さは特に限定されず、凹部の大きさや深さを考慮して定めればよい。一般的には、凹部の深さに対して1〜3倍程度の厚さである。具体的には0.5〜3μm程度である。厚さが0.5μm未満では、Cu合金量が少なすぎるため、半導体基板に設けられた凹部にCu合金を埋め込むことができない。一方、厚さが3μmを超えると、Cu合金の膜厚が大きくなり過ぎるため、高温高圧処理してもCu合金を凹部に埋め込むことができない。
【0043】
スパッタリング時に用いるスパッタリングターゲットの形態は特に限定されず、チップオンターゲットやCu合金ターゲットなどを用いることができる。チップオンターゲットとは、ベースとなるスパッタリングターゲットの表面に、所望の元素を含む金属チップを所定位置に所定量貼り付けたものであり、ベースと金属チップを合わせたときの成分組成が、上記範囲を満足すればよい。Cu合金ターゲットとは、上記元素を所定量含み、上記範囲を満足するスパッタリングターゲットである。
【0044】
スパッタリングターゲットの形態がチップオン型の場合は、ベースとなるスパッタリングターゲットの表面に貼り付ける金属チップの位置や枚数を調整することによってもスパッタリングで形成されるCu合金の成分組成を制御できる。即ち、マグネトロンスパッタリング装置では、スパッタリングされやすい場所とされにくい場所があり、最もスパッタされる場所はエロージョン位置と呼ばれている。そしてこのエロージョン位置と上記金属チップの貼り付け位置との距離や、このとき貼り付ける金属チップの枚数を調整することにより、スパッタリングで形成されるCu合金の成分組成を制御できるのである。なお、金属チップの貼り付け位置や貼り付け枚数はスパッタリング装置によって異なるため一律に規定できない。
【0045】
その他のスパッタリング条件は特に限定されず、公知の条件を採用できる。例えば、成膜時の雰囲気ガス:不活性ガス(不活性ガスとしては、ArやHeなど公知のものを使用できる)、成膜ガス圧力:66.7〜1333ミリPa(0.5〜10ミリTorr)、放電電力:1〜10W/cm2、極間距離:20〜100mm、とすればよい。
【0046】
本発明の製法では、特定の元素を含むCu合金を半導体基板の表面に積層することが重要であり、他の条件は特に限定されない。
【0047】
凹部を有する半導体基板は、公知の方法で形成されたものを用いることができる。即ち、半導体基板(例えば、シリコンウエハ)の表面に、絶縁膜を形成し、次いで配線を埋め込むための溝や配線同士を接続するための孔(トレンチ・ビア)等の配線パターン(凹部)を形成する。
【0048】
絶縁膜を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。絶縁膜としては、酸化シリコンや窒化シリコン、BSG(Boro-Silicate Glass)、PSG(Phospho-Silicate Glass)、BPSG(Boro-Phospho-SilicateGlass)等を形成すればよい。
【0049】
また、配線パターンを形成する方法も特に限定されず、公知の方法を採用できる。但し、配線パターンは最小幅が0.25μm以下(0μmを含まない)で、該最小幅に対する深さの比[深さ/最小幅]が1以上である。凹部の最小幅が0.25μmを超える場合であれば、本発明の製法を採用しなくとも、例えば電気メッキ法で凹部にCu合金を容易に埋め込むことができる。これに対し、本発明の製法でCu合金配線を形成しようとする凹部は、電気メッキ法では直接Cu合金を埋め込むことのできないレベルの狭いものであり、本発明の製法を採用することによって、最小幅が0.15μm以下、0.15μm未満、0.18μm以下、0.12μm以下、0.1μm以下、0.09μm以下、といった幅の狭い凹部にも確実にCu合金を埋め込むことができ、配線を形成できる。
【0050】
本発明の配線形成方法でCu合金配線を形成しようとする凹部の深さは、最小幅に対する深さの比[深さ/最小幅]が1以上である。凹部の最小幅に対して深さが浅ければ、本発明の製法を採用しなくとも、例えば電気メッキ法で凹部にCu合金を埋め込むことができる。これに対し、凹部が深くなるほど、Cu合金の埋め込みは困難となる。最小幅に対する深さの比の上限値は特に限定されないが、最小幅に対する深さの比[深さ/最小幅]が10を超えるものは実用的ではないため10以下とする。
【0051】
凹部の最小幅とは、Cu合金を埋め込む対象が溝の場合は、該溝の開口部のうち、最も狭い部分の距離を指す。一方、Cu合金を埋め込む対象が孔の場合は、該孔の開口部の直径を指し、例えば、孔が楕円の場合は短径を指す。なお、絶縁膜に幅の異なる複数の溝や孔が形成されている場合は、溝の幅や孔の直径(もしくは短径)のうち、最も短いものが上記要件を満足していればよい。
【0052】
半導体基板の表面にはスパッタリングによって表面にバリア膜を形成する。絶縁膜に形成した凹部に直接Cu合金を埋め込むと、Cuが絶縁膜方向へ拡散して絶縁膜の特性を損なうことがある。そこでこうしたCuの拡散を防止するために、絶縁膜とCu合金の間にバリア膜を形成する。
【0053】
バリア膜としては種々の素材が検討されているが、バリア性(即ち、より高温でCuの拡散を抑える特性)が良好なためTiNやTaNを形成すればよい。バリア膜の厚さは、Cuが絶縁膜へ拡散するのを防止できる程度であればよく、数nm〜数十nm程度である。具体的には、5〜50nm程度である。但し、バリア膜の膜厚を過度に厚くすると、半導体装置の小型化にマイナスとなるので好ましくない。
【0054】
高温高圧処理は200℃以上、50MPa以上で行う。なお、高温高圧処理すれば、空隙以外の微小な気孔や気泡も消滅する。
【0055】
処理温度が200℃未満では温度が低すぎるため、Cu合金の高温流動性が充分得られず、圧力を加えてもCu合金を凹部に埋め込むことができない。好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上である。処理温度の上限は特に制限されないが、650℃を超えると半導体装置を構成する他の部分(例えば、半導体基板自体やバリア膜など)へダメージを与えてしまうため、実用的ではない。よって処理温度は650℃以下とする。好ましくは500℃以下である。
【0056】
処理圧力が50MPa未満では圧力低すぎるため、Cu合金の流動性が充分に得られてもCu合金を凹部に埋め込むことができない。好ましくは70MPa以上、より好ましくは100MPa以上である。処理圧力の上限は特に制限されないが、250MPaを超えると高圧になり過ぎるため実用的ではない。よって処理圧力は250MPa以下とする。好ましくは210MPa以下である。
【0057】
処理時間は特に限定されないが、最高温度での保持時間を10分程度以下とすれば充分にCu合金を凹部に埋め込むことができる。
【0058】
処理雰囲気は不活性雰囲気下であれば特に限定されず、ArやN2雰囲気下で処理すればよい。
【0059】
次に、不要なCu合金を化学機械的研磨(CMP)処理することによって配線を形成する。そして研磨後の表面に新たな絶縁膜を形成して上記プロセスを繰り返すことにより多層構造の配線を形成できる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0061】
実験例1
バリア膜としてTaN(膜厚:500Å)を形成したシリコンウエハ(直径:2インチ)表面に、下記表1に示す形状の凹部を形成した後、DCマグネトロンスパッタリング法でCuまたはCu合金を成膜し、次いで高温高圧処理した。なお、溝の長さは100μmである。孔とは円筒状の凹部を示しており、このとき最小幅とは孔の直径を示している。
【0062】
スパッタリング条件は次の通りである。スパッタリング装置としては、島津製作所社製のHSM型スパッタ装置を用いた。スパッタリングターゲットとしては、表1に示す各種添加元素を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなるCu合金を用いた。なお、表中「−」は添加元素を含まない純Cuを示している。
【0063】
ターゲットの形態は、チップオンターゲットまたは純Cu(またはCu合金)ターゲットのいずれかを用いた。表中、「チップオンターゲット」とは、ベースとなる純Cuの表面に、所望の元素を含む金属チップを所定位置に所定量貼り付けたスパッタリングターゲットである。即ち、No.5で用いたスパッタリングターゲットは、ベースとなる純Cuターゲット(100mmφ)の表面に、10枚の5mm角Sbチップをエロージョン位置の中心から4mm離れたところに貼り付けたものである。No.16で用いたスパッタリングターゲットは、ベースとなる純Cuターゲット(100mmφ)の表面に、10枚の5mm角Sbチップをエロージョン位置の中心から2mm離れたところに貼り付けたものである。No.22で用いたスパッタリングターゲットは、ベースとなる純Cuターゲット(100mmφ)の表面に、10枚の5mm角Sbチップをエロージョン位置の中心から3mm離れたところに貼り付けたものである。「合金」とは、上記添加元素を所定量含むスパッタリングターゲットである。
【0064】
スパッタリングの成膜条件は、成膜時の雰囲気ガス:Ar、成膜ガス圧力:267ミリPa(2ミリTorr)、放電電力:2.5W/cm2、極間距離:52mm、成膜温度:室温(20℃)または300℃とした。下記表1に成膜条件として、成膜温度と成膜したCu合金の膜厚を示す。なお、Cu合金の膜厚は、DEKTAK社製の触針式膜厚計「6M」を用いて測定した。
【0065】
スッパッタリングで成膜されたCuまたはCu合金の成分組成を、島津製作所製のICP発光分光分析装置「ICP−8000型」を用いてICP発光分析法で定量分析した。結果を表1に示す。
【0066】
高温高圧処理は下記表2に示す条件で行い、CuまたはCu合金を凹部に埋め込んだ。処理雰囲気はAr下とし、処理時間は最高温度(つまり、表2に示した温度)で5分間とした。
【0067】
凹部にCu合金を埋め込んだ半導体装置について、エスアイアイナノテクノロジー社製のFIB「SMI9200」を用いて断面加工し、SIM像(イオンで励起された二次電子像)観察によってCuまたはCu合金が、基板に設けられた凹部に埋め込まれているかどうかを観察して評価した。評価基準は、完全に埋め込まれている場合を合格(○)、埋め込まれなかった場合を不合格(×)とした。評価結果を下記表2に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
表1および2から次のように考察できる。No.1〜7は、本発明で規定する要件を満足する例であって、Sb含有量の異なるCu合金を凹部に埋め込んだ例であり、埋め込み結果は良好であった。No.8〜10は、No.1〜5に対して凹部の最小幅をさらに狭くすると共に、高温高圧処理時の温度を更に低くし、より厳しい条件で埋め込みを試みた例であるが、埋め込み結果は良好であった。No.11と12は、凹部の最小幅が狭いうえに、最小幅に対する深さの比が大きく、しかも高温高圧処理時の温度をできるだけ低くして厳しい条件で埋め込みを試みた例である。埋め込み結果は良好であった。No.13は、凹部の形状を溝にした場合であるが、埋め込み結果は良好であった。No.18〜20は、本発明で規定する要件を満足する例であって、Bi含有量の異なるCu合金を凹部に埋め込んだ例であり、埋め込み結果は良好であった。No.25とNo.26を比較すると、高温高圧処理条件のうち、処理圧力が本発明で規定する要件から外れると凹部にCu合金を埋め込むことができないことが分かる。No.27とNo.28を比較すると、高温高圧処理条件のうち、処理温度が本発明で規定する範囲から外れると凹部にCu合金を埋め込むことができないことが分かる。No.29は、SbとBiを併用した例であり、併用しても埋め込み結果は良好であった。No.30は、凹部の最小幅と深さの比を大きくした例であり、本発明の配線形成方法によれば、Cu合金を凹部も埋め込むことができ、良好な配線を形成できる。
【0071】
No.14〜17、21〜22、31は、本発明で規定する要件から外れる例であり、埋め込み結果は悪かった。No.23〜24は参考例であり、スパッタリングで形成されたCu合金の膜厚が凹部の深さに対して薄すぎるか、厚すぎる例である。
【0072】
実験例2
バリア膜としてTaN(膜厚:500Å)を形成したシリコンウエハ(直径:2インチ)表面に、DCマグネトロンスパッタリング法でCu合金を成膜し、スパッタリング直後におけるCuの結晶粒の平均粒径を測定した。
【0073】
スパッタリング条件は上記実験例1と同じである。スパッタリングターゲットは、表3に示す添加元素を含み、残部はCuおよび不可避不純物からなるCu合金を用いた。スパッタリングに用いたターゲットの形態を下記表3に示す。なお、No.32については、ベースとなる純Cuターゲット(100mmφ)の表面に、10枚の5mm角Sbチップをエロージョン位置の中心から3mm離れたところに貼り付けたスパッタリングターゲットを用いた。
【0074】
スパッタリングの成膜条件も上記実験例1と同じである。なお、成膜温度は室温(20℃)であり、成膜したCu合金の膜厚は2.0μmである。
【0075】
スッパッタリングで成膜されたCu合金の成分組成を、上記実験例1と同じ条件で定量分析し、結果を下記表3に示す。
【0076】
スパッタリング直後のCu合金からエスアイアイナノテクノロジー社製のFIB装置「SMI9200」を用いて断面加工し、SIM像(イオンで励起された二次電子像)観察してCuの結晶粒の平均粒径を測定した。結果を下記表3に示す。
【0077】
次に、スパッタリングして得られたCu合金を熱処理し、熱処理直後におけるCuの結晶粒の平均粒径を測定した。
【0078】
熱処理条件は、N2(100%)雰囲気下、450℃で30分間、常圧とした。熱処理後、上記FIB装置を用いて断面加工し、SIM像観察してCuの結晶粒の平均粒径を測定した。結果を下記表3に示す。
【0079】
次に、シリコンウエハ(直径:2インチ)表面に、下記表4に示す形状の凹部を形成した後、バリア膜としてTaN(膜厚:500Å)を形成し、次いで上記と同じ条件でDCマグネトロンスパッタリング法でCu合金を成膜した後、高温高圧処理した。
【0080】
高温高圧処理は、下記表4に示す条件で行い、Cu合金を凹部に埋め込んだ。処理雰囲気はArとし、処理時間は最高温度(つまり、表4に示した温度)で5分間とした。
【0081】
凹部にCu合金を埋め込んだ半導体装置について、上記FIBを用いて断面加工し、SIM像観察によってCu合金が、基板に設けられた凹部に埋め込まれているかどうかを観察して評価した。評価結果を下記表4に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
表3および表4から明らかなように、半導体配線用のCu合金として、スパッタリング直後における結晶粒の平均粒径と熱処理直後における結晶粒の平均粒径が、本発明で規定する要件を満足するものを用いれば、該Cu合金を高温高圧処理によって最小幅が狭く、該最小幅に対する深さが大きい凹部に確実に埋め込むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sb:0.10〜10原子%、
Bi:0.010〜1.0原子%、および、
Dy:0.01〜3原子%よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなることを特徴とする半導体配線用Cu合金。
【請求項2】
スパッタリング法で形成された半導体配線用のCu合金であって、
該Cu合金は、Sb、BiおよびDyよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなり、且つ、室温で行われるスパッタリング法で形成された直後における結晶粒の平均粒径が0.01〜0.15μmで、これを熱処理すると前記結晶粒の平均粒径が0.5μm以上に成長するものであることを特徴とする半導体配線用Cu合金。
【請求項3】
半導体基板の凹部にCu合金を埋め込むことによって配線を形成する方法であって、
前記凹部は、最小幅が0.25μm以下(0μmを含まない)で、該最小幅に対する深さの比[深さ/最小幅]が1以上であり、
前記半導体基板の表面に、請求項1または2に記載の半導体配線用Cu合金を室温で行われるスパッタリング法で形成した後、
200℃以上、50MPa以上で高温高圧処理して前記半導体配線用Cu合金を前記凹部内に埋め込むことによって配線を形成することを特徴とするCu合金配線の製法。
【請求項4】
請求項3に記載の製法で得られたCu合金配線を有する半導体装置。
【請求項5】
Sb:0.10〜12原子%、
Bi:0.020〜3原子%、および、
Dy:0.02〜3.5原子%よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がCuおよび不可避不純物からなることを特徴とする半導体のCu合金配線形成用スパッタリングターゲット。

【公開番号】特開2006−93629(P2006−93629A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280444(P2004−280444)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、経済産業省、ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)からの委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】