説明

半導体集積回路装置の製造方法

【課題】タリウム濃度低下による金メッキの不良発生を抑止できる信頼性の高い半導体集積回路装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体集積回路装置の製造方法において、非シアン系メッキ液を用いた電解金メッキ技術によって金バンプ電極を形成する工程中、メッキ液21への印加電圧をモニターすることにより、メッキ液21へのタリウムの添加量を検出して、タリウム添加濃度の減少による異常析出等のメッキ不良の発生を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置(または半導体装置)の製造方法におけるバンプ形成技術に関し、特に金バンプ形成技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本特開2006−291242号公報(特許文献1)には、TCP(Tape Carrier Package)、COF(Chip On FilmまたはChip On Flex)、COG(Chip On Glass)等の組み立て工程に供給する半導体チップ上の金バンプの形成に関して、比較的大きな粒塊の金メッキ層を形成するために、亜硫酸金系(ノンシアン系)のメッキ液の温度およびタリウム濃度を高めに設定する技術が開示されている。
【0003】
日本特開2006−322037号公報(特許文献2)には、半導体チップ上の金バンプの形成に関して、比較的硬度が低く、形状が良好な金バンプを形成するために、亜硫酸金系(ノンシアン系)のメッキ液の温度およびタリウム濃度を高めに設定する技術が開示されている。
【0004】
日本特開2009−114476号公報(特許文献3)または米国特許公開第2009−0117730号公報(特許文献4)には、半導体チップ上の金バンプの形成に関して、メッキ・カップ内の析出物に起因するバンプ電極上の突起の発生を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−291242号公報
【特許文献2】特開2006−322037号公報
【特許文献3】特開2009−114476号公報
【特許文献4】米国特許公開2008−035851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LCD(Liquid Crystal Display)ドライバ等の半導体製品では約15〜20μmの厚さの金バンプ(Bump)電極形成のためのバンプ・メッキ工程がある。この金バンプ電極に関しては、実装方法としてTCPが主流の時代にはボンディング時のチップ下層へのダメージ等を回避するために比較的軟らかいものが必要とされた。しかし、昨今のように、COGが主流になってくると、ACF(Anisotropically Conductive Film)中の導電粒子(Conductive Particle)を押し付けて、導電パスを確保する必要から比較的硬い金バンプ電極のニーズが高まっている。
【0007】
このニーズにこたえるため、本願発明者等は、環境面から現在主流である非シアン系メッキ液における適正条件を検討したところ、以下のような問題があることが明らかとなった。すなわち、通常要求される無光沢性(ミクロな荒さ)、形状平坦性(マクロな平坦性)等を確保しながら、比較的硬い金バンプ電極を電解メッキにより量産しようとすると、おのずと、低液温、高電流密度、補助剤であるタリウム(Thallium)の低濃度添加等の条件の組み合わせを選択することとなる。しかし、このような条件では、メッキ液中のタリウム濃度の維持が困難で、タリウム濃度の低下時には、異常析出によって金バンプ電極の外観不良が発生するという問題がある。従来、微量なタリウム濃度を直接にモニタする手段はなく、定期的なメッキ液の分析により管理していたが、それでは、大量の不良品の発生を阻止することはできない。
【0008】
本願の発明は、このような問題を解決するためになされたものである。
【0009】
本発明の目的は、信頼性の高い半導体集積回路装置の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0012】
すなわち、本願の一つの発明は、半導体集積回路装置の製造方法における非シアン系メッキ液を用いた電解金メッキによるバンプ電極の形成において、メッキ液への印加電圧をモニタすることにより、メッキ液へのタリウムの添加量を検出するものである。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0014】
すなわち、半導体集積回路装置の製造方法における非シアン系メッキ液を用いた電解金メッキによるバンプ電極の形成において、メッキ液への印加電圧をモニタすることにより、メッキ液へのタリウムの添加量を検出するので、タリウムの添加量の減少による異常析出等の不良の発生を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセス・フローの概要を示すプロセス・ブロック・フロー図である。
【図2】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスに使用するメッキ装置におけるメッキ槽内に析出する異物等に関する技術課題を説明するための装置およびデバイス模式断面図である。
【図3】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法による半導体集積回路装置(半導体装置)の一例を示すチップ上面図である。
【図4】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法による半導体集積回路装置(半導体装置)を液晶表示装置に実装した構造を示す断面図である。
【図5】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるバンプ形成処理前のデバイス構造を示す模式断面図である。
【図6】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるUBM(Under Bump Metal)形成工程のデバイス構造を示す模式断面図である。
【図7】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるフォトレジスト塗布工程が完了したデバイス構造を示す模式断面図である。
【図8】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるフォトレジスト現像工程が完了したデバイス構造を示す模式断面図である。
【図9】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるメッキ工程が完了したデバイス構造を示す模式断面図である。
【図10】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるレジスト除去工程が完了したデバイス構造を示す模式断面図である。
【図11】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるUBMエッチ工程が完了したデバイス構造を示す模式断面図である。
【図12】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法に使用するレジスト塗布装置の塗布部を示す斜視図である。
【図13】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスに使用する枚葉メッキ装置の上面図である。
【図14】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスに使用する枚葉メッキ装置のメッキ槽(内部が見やすいように蓋を取り除いている)の上面図である。
【図15】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスに使用する枚葉メッキ装置のカソード電極とウエハのデバイス面の導電層とのコンタクトの様子を示す拡大断面図である。
【図16】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスに使用する枚葉メッキ装置のメッキ液等の循環システムを説明するシステムブロック図である。
【図17】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの全体フローを示すブロック・フロー図である。
【図18】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの全体フローのカップ洗浄ステップの詳細フローを示すブロック・フロー図である。
【図19】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの全体フローの事前攪拌ステップの詳細フローを示すブロック・フロー図である。
【図20】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの全体フローのメッキ・ステップの詳細フローを示すブロック・フロー図である。
【図21】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのウエハ・ロード時のメッキ・カップ断面図である。
【図22】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの洗浄のためのメッキ液導入開始時のメッキ・カップ断面図である。
【図23】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの洗浄のためのメッキ液導入途中のメッキ・カップ断面図である。
【図24】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの洗浄のためのメッキ液導入完了時のメッキ・カップ断面図である。
【図25】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの洗浄のための左回り攪拌時のメッキ・カップ断面図である。
【図26】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの洗浄のためのメッキ液循環時(回転切り替え時)のメッキ・カップ断面図である。
【図27】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの洗浄のための右回り攪拌時のメッキ・カップ断面図である。
【図28】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの洗浄のためのメッキ液循環時(洗浄終了時)のメッキ・カップ断面図である。
【図29】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ(事前攪拌含む)のためのメッキ・カップ反転時のメッキ・カップ断面図である。
【図30】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ(事前攪拌含む)のためのメッキ液完全充填時のメッキ・カップ断面図である。
【図31】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ(事前攪拌含む)のための左回り攪拌時のメッキ・カップ断面図である。
【図32】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ(事前攪拌含む)のためのメッキ液循環時(回転切り替え時)のメッキ・カップ断面図である。
【図33】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ(事前攪拌含む)のための右回り攪拌時のメッキ・カップ断面図である。
【図34】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ(事前攪拌含む)のためのメッキ液循環時(メッキまたは事前攪拌終了時)のメッキ・カップ断面図である。
【図35】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ終了時のメッキ液循環時のメッキ・カップ断面図である。
【図36】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ終了後のメッキ・カップ再反転時のメッキ・カップ断面図である。
【図37】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ終了後のメッキ液排出途中のメッキ・カップ断面図である。
【図38】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ終了後のメッキ液排出途中のメッキ・カップ断面図である。
【図39】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ終了後のガス・パージ時のメッキ・カップ断面図である。
【図40】本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスのメッキ終了後のウエハ・アンロード時のメッキ・カップ断面図である。
【図41】本願の一実施形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部である金メッキ・プロセスにおけるタリウム添加量検出および濃度管理のためのシステムを説明するタリウム濃度管理システムの構成図である。
【図42】図41に説明したタリウム濃度管理システムによるメッキ電圧のピーク値とタリウム濃度の関係を示すデータプロット図である。
【図43】図41に説明したタリウム濃度管理システムによるメッキ電圧のピーク値とタリウム濃度の関係を各種の条件により取得集積した柱状グラフである。
【図44】図41に説明したタリウム濃度管理システムによるメッキ電圧の推移とウエハの外観不良の関係を示すデータプロット図である。
【図45】図44のメッキ電圧の推移を説明するためのメッキ電流オンからメッキ電圧が安定するまでのメッキ電圧推移状況説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施の形態の概要〕
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。
【0017】
1.以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)タリウムが添加された非シアン系の金メッキ液を用いて、半導体ウエハの第1主面上に電解メッキにより、金を主要な成分とする金系バンプ電極を形成する工程、
ここで、前記工程(a)は、以下の下位工程を含む:
(a1)前記金メッキ液への第1のメッキ電流の印加を開始する工程;
(a2)前記下位工程(a1)の後に、前記第1のメッキ電流の印加を終了する工程;
(a3)前記下位工程(a1)および前記下位工程(a2)の間の期間内のいずれかにおいて、前記金メッキ液への印加電圧をモニタすることにより、前記金メッキ液中の前記タリウムの添加量を監視する工程。
【0018】
2.前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記モニタは、前記印加電圧と設定された基準上限電圧との関係を監視するものである。
【0019】
3.前記1または2項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金メッキ液は、亜硫酸金系のメッキ液である。
【0020】
4.前記3項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記モニタする印加電圧は、前記期間内のピーク電圧である。
【0021】
5.前記1から4項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、更に、以下の工程を含む:
(b)前記下位工程(a3)の結果に基づいて、前記金メッキ液にタリウムまたはタリウム化合物を添加する工程。
【0022】
6.前記1から4項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)は、更に、以下の下位工程を含む:
(a4)前記下位工程(a3)の結果に基づいて、前記金メッキ液にタリウムまたはタリウム化合物を添加する工程。
【0023】
7.前記5または6項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記タリウムまたはタリウム化合物は、蟻酸タリウム、硫酸タリウム、硝酸タリウム、または酸化タリウムである。
【0024】
8.前記1から7項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)は、更に、以下の下位工程を含む:
(a5)前記下位工程(a1)の前に、前記金メッキ液への前記第1のメッキ電流よりも低い第2のメッキ電流を印加する工程。
【0025】
9.前記1から8項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記半導体集積回路装置は、LCDドライバ回路を有する。
【0026】
10.以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)タリウムが添加された非シアン系の金メッキ液を用いて、半導体ウエハの第1主面上に電解メッキにより、金を主要な成分とする金系バンプ電極を形成する工程、
ここで、前記工程(a)は、以下の下位工程を含む:
(a1)前記金メッキ液への第1のメッキ電流の印加を開始する工程;
(a2)前記下位工程(a1)の後に、前記第1のメッキ電流の印加を終了する工程;
(a3)前記下位工程(a1)および前記下位工程(a2)の間の期間内のいずれかにおいて、前記金メッキ液への印加電圧をモニタする工程;
(a4)前記下位工程(a1)の前に、前記金メッキ液中の前記タリウムの添加量を監視するための前記印加電圧の基準上限電圧を設定する工程。
【0027】
11.前記10項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記モニタは、前記印加電圧と前記基準上限電圧との関係を監視するものである。
【0028】
12.前記10または11項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金メッキ液は、亜硫酸金系のメッキ液である。
【0029】
13.前記10から12項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記モニタする印加電圧は、前記期間内のピーク電圧である。
【0030】
14.前記10から13項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、更に、以下の工程を含む:
(b)前記下位工程(a3)の結果に基づいて、前記金メッキ液にタリウムまたはタリウム化合物を添加する工程。
【0031】
15.前記10から13項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)は、更に、以下の下位工程を含む:
(a5)前記下位工程(a3)の結果に基づいて、前記金メッキ液にタリウムまたはタリウム化合物を添加する工程。
【0032】
16.前記14または15項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記タリウムまたはタリウム化合物は、蟻酸タリウム、硫酸タリウム、硝酸タリウム、または酸化タリウムである。
【0033】
17.前記10から16項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)は、更に、以下の下位工程を含む:
(a6)前記下位工程(a1)の前に、前記金メッキ液への前記第1のメッキ電流よりも低い第2のメッキ電流を印加する工程。
【0034】
18.前記10から17項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記半導体集積回路装置は、LCDドライバ回路を有する。
【0035】
〔本願における記載形式・基本的用語・用法の説明〕
1.本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0036】
更に、本願において、「半導体装置」または「半導体集積回路装置」というときは、主に、各種トランジスタ(能動素子)単体、および、それらを中心に、抵抗、コンデンサ等を半導体チップ等(たとえば単結晶シリコン基板)上に集積したものをいう。ここで、各種トランジスタの代表的なものとしては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に代表されるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を例示することができる。このとき、集積回路構成の代表的なものとしては、Nチャネル型MISFETとPチャネル型MISFETを組み合わせたCMOS(Complemetary Metal Oxide Semiconductor)型集積回路に代表されるCMIS(Complemetary Metal Insulator Semiconductor)型集積回路を例示することができる。
【0037】
今日の半導体集積回路装置、すなわち、LSI(Large Scale Integration)のウエハ工程は、通常、原材料としてのシリコンウエハの搬入からプリ・メタル(Premetal)工程(M1配線層下端とゲート電極構造の間の層間絶縁膜等の形成、コンタクト・ホール形成、タングステン・プラグ、埋め込み等からなる工程)あたりまでのFEOL(Front End of Line)工程と、M1配線層形成から始まり、アルミニウム系パッド電極上のファイナル・パッシベーション膜へのパッド開口の形成あたりまで(ウエハ・レベル・パッケージ・プロセスにおいては、当該プロセスも含む)のBEOL(Back End of Line)工程に大別できる。FEOL工程の内、ゲート電極パターニング工程、コンタクト・ホール形成工程等は、特に微細な加工が要求される微細加工工程である。一方、BEOL工程においては、ビアおよびトレンチ形成工程、特に、比較的下層のローカル配線(たとえば4層程度の構成の埋め込み配線では、M1からM3あたりまで、10層程度の構成の埋め込み配線では、M1からM5あたりまでの微細埋め込み配線)等において、特に微細加工が要求される。なお、「MN(通常N=1から15程度)」で、下から第N層配線を表す。M1は第1層配線であり、M3は第3層配線である。
【0038】
2.同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかに、そうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「金バンプ電極」等と言っても、純粋な金ばかりでなく、金を主要な成分とする金合金等も含まれるものとする。同様に「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。同様に、「酸化シリコン膜」、「酸化シリコン系絶縁膜」等と言っても、比較的純粋な非ドープ酸化シリコン(Undoped Silicon Dioxide)だけでなく、FSG(Fluorosilicate Glass)、TEOSベース酸化シリコン(TEOS-based silicon oxide)、SiOC(Silicon Oxicarbide)またはカーボンドープ酸化シリコン(Carbon-doped Silicon oxide)またはOSG(Organosilicate glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)、BPSG(Borophosphosilicate Glass)等の熱酸化膜、CVD酸化膜、SOG(Spin ON Glass)、ナノ・クラスタリング・シリカ(Nano-Clustering Silica:NCS)等の塗布系酸化シリコン、これらと同様な部材に空孔を導入したシリカ系Low-k絶縁膜(ポーラス系絶縁膜)、およびこれらを主要な構成要素とする他のシリコン系絶縁膜との複合膜等を含むことは言うまでもない。
【0039】
また、酸化シリコン系絶縁膜と並んで、半導体分野で常用されているシリコン系絶縁膜としては、窒化シリコン系絶縁膜がある。この系統の属する材料としては、SiN,SiCN,SiNH,SiCNH等がある。ここで、「窒化シリコン」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiNおよびSiNHの両方を含む。同様に、「SiCN」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiCNおよびSiCNHの両方を含む。
【0040】
なお、SiCは、SiNと類似の性質を有するが、SiONは、むしろ、酸化シリコン系絶縁膜に分類すべき場合が多い。
【0041】
窒化シリコン膜は、SAC(Self−Aligned Contact)技術におけるエッチ・ストップ膜として、多用されるほか、SMT(Stress Memorization Technique)における応力付与膜としても使用される。
【0042】
3.同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0043】
4.さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0044】
5.「ウエハ」というときは、通常は半導体集積回路装置(半導体装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、SOI基板、LCDガラス基板等の絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
【0045】
6.ウエハ処理装置について、装置の「内部」というときは、本願においてはウエハ・ポートに置かれたウエハ・カセット等のウエハ搬送容器またはウエハ・ポートに連結されたフープ等のウエハ搬送容器の内部は当該装置の内部である。一方、ウエハ・ポート外に移動するか、連結が解除されたときは、当該ウエハ搬送容器の内部は当該装置の「外部」である。
【0046】
7.メッキ槽に関するメッキ液または薬液(メッキ液等)について「排出」とは、文脈からそうでないことが明らかな場合を除き(循環等に言及する時等)、メッキ液等の液面を全部又は部分的(主に大部分)に低下させることを言う。これは、一般にメッキ槽では、メッキ時等にはメッキ液等を循環(連続的な排出と導入)させているので、それと区別する必要があるからである。また、通常「排出」と入れ替わりにガス・パージが行われる。これはメッキ槽内の圧力を一定に保つためである。一方、「導入」は文脈からそうでないことが明らかな場合を除き、メッキ液等の液面を全部又は部分的に上昇させることを言う。なお、具体的には循環状態において、導入量と排出量を調整して(どちらかをゼロにすることを含む)、「排出」と「導入」を制御する場合が多い。なお、「薬液」は水溶液等のみでなく、純水そのものであることもある。
【0047】
8.メッキ・カップのメッキ槽における導入口または排出口について、「メッキ槽の下方」というときは、メッキ・カップにロードされたウエハと対向する底面または底面近傍の側面を指す。同様に「メッキ槽の上方」というときは、メッキ・カップにロードされたウエハ近傍の上面(底面に対向する面)またはその近傍の側面を指す。すなわち、カップが反転するので、この点に限って反転の有無にかかわらず、カップが正立したときを基準として上下を定義している。
【0048】
9.メッキ液等に関して「同一組成」というときは、循環システム内のメッキ液等を各種のステップで共用する場合のように、同一物を当該各種のステップで共用することとなる場合を含むことは、言うまでもない。
【0049】
10.メッキ装置について「枚葉」とは、メッキ・カップをいくつ備えるかにかかわらず、単一のカップについて、一度に1枚のウエハを処理するものを言う。
【0050】
〔実施の形態の詳細〕
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0051】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するために、ハッチングを付すことがある。
【0052】
なお、メッキ槽内に析出する異物等に対する対策等の詳細については、日本特開2009−114476号公報(2009年5月28日公開)または、その対応米国特許公開2009−0117730号公報(2009年5月22日公開)に詳しく記載されている。
【0053】
1.本実施形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスおよび対象デバイスの概要説明(主に図1から4)
図1は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセス・フローの概要を示すプロセス・ブロック・フロー図である。図2は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスに使用するメッキ装置におけるメッキ槽内に析出する異物等に関する技術課題を説明するための装置およびデバイス模式断面図である。図2(a)は正立状態のメッキ・カップ24の断面であり、図2(b)は倒立状態(反転状態)のメッキ・カップ24の断面である。一方、図2(c)および図2(d)は図2(b)のA部分の拡大模式断面であり、析出物による突起が発生するメカニズムを示す断面フロー図である。これらに基づいて、本実施形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの概要を説明する。図1又は図2に示すように、被処理ウエハ1は先ずメッキ・カップ24にロードされる(ウエハ・ロード工程71)。このとき、ウエハ1のデバイス面1aが下(重力の方向)を向く状態となっている。このようにするのは、析出物2は比較的重いので、この位置関係の方が、析出物2がウエハ1のデバイス面1aに付着せず、上方周辺から下方への液流(循環流)にのって速やかに下方から排出されるからである。
【0054】
次に、メッキ液21をメッキ液上面がウエハ1のデバイス面1aに触れる程度に充填して、メッキ液21を循環させた状態で攪拌して析出物2を溶解する(カップ洗浄工程72)。ここで、メッキ液21を完全充填、すなわち100%充填(導入)しない理由は、装置構造上、メッキ液21の上方にガス層が残るからである。従って、そうでない場合は、100%充填してもよい。洗浄工程72が必要な理由は、析出物2がウエハ1のデバイス面1a、殊にフォトレジスト膜12の開口部に付着した状態で金バンプ電極15のメッキを実行するとメッキが異常成長して突起3が出現するからである。洗浄工程72が完了すると、一時、メッキ液の循環が停止し、その間にメッキ・カップ24が反転される(カップ反転工程74)。メッキ・カップ24は必ずしも反転させる必要はないが、反転させた状態でメッキを実行すると、重力との関係でウエハ1上への気泡の付着が減少するメリットがある。次にメッキ・カップ24を反転させた状態で、メッキ液の循環を開始すると、速やかにメッキ液21が、ほぼ100%充填(完全充填)されることとなる。メッキ液21の完全充填も必須ではないが、完全充填すると気泡を減少させる効果がある。次にメッキ・カップ24を反転させた状態のまま、メッキ液21を循環させながらメッキ処理を実行する(メッキ処理工程76)。メッキ処理が終了するとメッキ・カップ24が再反転される(メッキ・カップ再反転工程77)。メッキ・カップ24が再反転され状態で、メッキ液21が排出される。その後、ウエハ1がメッキ・カップ24からアンロードされる(ウエハ・アンロード工程78)。
【0055】
図3は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法による半導体集積回路装置(半導体装置)の一例を示すチップ上面図である。これは液晶表示装置すなわちLCD(Liquid Crystal Display)ドライバー用チップの例であり、チップ51上には回路領域52とその周辺の多数のバンプ電極15が配置されている。
【0056】
図4は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法による半導体集積回路装置(半導体装置)を液晶表示装置に実装した構造を示す断面図である。図4に示すように、液晶表示装置の液晶基板55上には複数のITO(Indium Tin Oxide)電極53等の導電体外部電極が設けられており、LCDドライバー用チップ51上の複数の金バンプ電極15と異方性導電膜54すなわちACF(Anisotropic Conductive Film)を介して電気的に接続されている。このとき、金バンプ電極15に厚さばらつきがあると、一部の電極間で接続抵抗が高くなる等の不具合を生ずる可能性が高い。
【0057】
2.本実施形態の半導体集積回路装置の製造方法の全体プロセスおよび対象デバイスの説明(主に図5から12)
次に、図5から図12に基づいて、本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法におけるバンプ形成プロセスを説明する。図5に示すように多数のデバイスや配線(酸化シリコン膜や種々のメタル層で形成されている)が形成されたウエハ1の主面上にたとえばシリコンナイトライド等(無機系のみでなく有機系の膜でもよい)のファイナル・パッシベーション膜61が形成されており、そのアルミニウム・パッド62に対応する部分には、パッド開口63が設けられている。次に図6に示すようにスパッタリングによりUBM(Under Bump Metal)膜、たとえば厚さ175マイクロメータ程度のチタン膜64(下層)、たとえば厚さ175マイクロメータ程度のパラジウム膜65(上層)が順次形成される(これらのUBM材料はあくまでも例示であって、他の同様の材料を排除するものではない。たとえば、パラジウム膜は金膜でもよいが、パラジウム膜を用いると、より信頼度が高くなる。また、金より、材料価格が若干安いメリットがある。)。図7に示すように、その上に、前記の塗布システムおよび方法を用いて、たとえば19から25ミクロン程度(たとえば20ミクロン)の厚さのポジ型レジスト膜12が形成される。ここで用いるレジスト液は、たとえば東京応化工業株式会社(Tokyo Ohka Kogyo Co., LTD.)製のジアゾ・ナフトキノン・ノボラック系厚膜用ポジ型レジスト、製品名称「PMER P-LA900PM」等がある。塗布系レジストの変わりにフィルムレジストを用いてもよい。図8に示すように、レジストを露光、現像することで開口66を形成する。図9に示すように、開口66に電解メッキでたとえば15マイクロメータ程度の厚さのバンプ電極15となる金層を埋め込む。次に図10に示すように、レジスト膜12を除去する。最後に図11に示すように、金バンプ15をマスクにしてウエットエッチングで不要なUBM膜を選択除去する。これでバンプ電極が一応完成したことになる。
【0058】
図12は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法に使用するレジスト塗布装置の塗布部を示す斜視図である。ノズル67から滴下されたレジスト液は、ウエハ1上でスピンチャック41が高速回転することによって、所定の厚さのレジスト膜12に伸ばされる。
【0059】
3.本実施形態の半導体集積回路装置の製造方法における金メッキ・プロセスに使用するメッキ装置の説明(主に図13から16)
図13は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスに使用する枚葉メッキ装置の上面図である。図13に基づいて、装置内でのウエハ1の動きを説明する。ここに使用する装置としては、たとえば、日本エレクトロプレイティング・エンジニアーズ株式会社(Electroplating Engineers of Japan Ltd.)製の300φウエハ用フルオートメッキ装置であるアリータ300等が利用可能である。図13に示すように、メッキ装置22は300φウエハ用の装置で、ウエハ収納容器26すなわちフープ(Foup)をセットするロードポート25を備える。ロードポート25にセットされたウエハ収納容器26から搬送ロボット28により被処理ウエハ1が取り出される。ウエハ1は、先ずウエハ位置合わせ部27で位置合わせされ、搬送ロボット28により洗浄部29に運ばれて、事前処理部31でウエハ1のデバイス面1aが薬液又は純水によりウエット洗浄処理される。その後、搬送ロボット28によりメッキ処理部23にある複数のメッキ・カップ24の一つに運ばれて、そこにロードされる。メッキ処理終了後、ウエハ1は搬送ロボット28によりリンス&ドライ部30(ウエット洗浄・乾燥部)に運ばれ、薬液又は純水によりリンス等のウエット洗浄処理およびスピン乾燥処理等が行われる。乾燥処理後、ウエハ1は搬送ロボット28により元のウエハ収納容器26または必要に応じて他のウエハ収納容器に移送される。
【0060】
図14は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスに使用する枚葉メッキ装置のメッキ槽(内部が見やすいように蓋を取り除いている)の上面図である。図14に基づいてメッキ・カップ24の内部構造を説明する。図14に示すように、メッキ・カップ24のメッキ槽38があり、メッキ槽38の底面にはアノード電極35が設けられている。このアノード電極35は母材であるチタン円板に酸化インジュウムをコートした酸化インジュウム電極である。この電極は白金電極との他と相違して、金が付着しないというメリットがある。従って、従来必要であった定期的なメンテナンスが不要となる。ただし、金が電極に付着しないというメリットと引き換えに、金を含む析出物が発生しやすいというデメリットがある。従って、酸化インジュウム電極を使用せず、白金電極その他のアノード電極を使用するという選択肢もある。メッキ槽38の中央部にはメッキ液21を攪拌するためのスターラ37(攪拌バー)が設けられている。スターラ37はメッキ槽38の中で左右に回転するように制御されている。メッキ槽38の底面およびアノード電極にはパージガスやメッキ液を排出するための多数のガス・液排出口36が設けられている(作図上の都合により、全部は表示せず)。メッキ槽38の側壁の上部には円周に渡り均等にパージガスやメッキ液を導入するための多数の多数のガス・液導入口34が設けられている(作図上の都合により、全部は表示せず)。側壁上面の内側には液漏れを防止するための弾性体リングすなわちリップ・シール33がある。一方、側壁上面の中央部にはウエハ1と電気的に接続するためのカソード・リング電極32が設けられている。
【0061】
図15は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスに使用する枚葉メッキ装置のカソード電極とウエハのデバイス面の導電層とのコンタクトの様子を示す拡大断面図である。図15に基づいてメッキ・カップ24へのウエハ1のロード方法の詳細を説明する。図15に示すように、ウエハ1の終端部のパラジウム層65にカソード・リング電極32が接触するようにして、上からメッキ・カップ24の蓋42でウエハ1を下方に押すとリップ・シール33が変形して、メッキ槽38をシールする。なお、カソード・リング電極32と接触する部分(レジスト膜12により覆われていないパラジウム層65の終端部)は、メッキ液に触れないようにする必要があるため、リップ・シール33はレジスト膜12の終端部の一部を覆ってシールしている。
【0062】
図16は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスに使用する枚葉メッキ装置のメッキ液等の循環システムを説明するシステムブロック図である。図16に基づいて。この循環システムを説明する。図16に示すように、メッキ・カップ24の下方の排出口から排出されたメッキ液21等(薬液、メッキ液、ガスなど)は200リットル程度の容量のタンク40に入る。タンク40と異物除去のためのフィルタ39は閉回路系を形成しており、タンク40内のメッキ液21を常に清浄な状態に保つ。一つのメッキカップから排出された未溶解異物が、他のカップに送られて、問題を起こす可能性を更に減少させる必要があるときは、各カップとタンク40の間に異物除去フィルタ等を挿入すればよい。タンク40では、混入ガスの除去および液温調整(たとえば、摂氏46度程度を例示することができる。一般に、摂氏40度から60度程度の間に調整される。なお、硬度が比較的高いバンプを形成する必要があるときは、たとえば、摂氏40度から50度程度の間が特に好適である。)が行われる。その後、メッキ液21等はポンプ152および切り替え電磁弁151を通過して、メッキ・カップ24の上方の導入口からメッキ・カップ24に戻される。循環時のメッキ液の流量はカップ一つ当たり、まとえば5リットル/分程度が適切である(ここでは、一つのメッキカップの容量を5リットルとしている)。一方、パージガス等の導入は切り替え電磁弁151を切り替えることによって行われる。ガス・パージ時の窒素ガスの流量はカップ一つ当たり、たとえば5リットル/分程度(1気圧下)が適切である。以上は循環状態について具体的に説明したが、導入又は排出もほぼ同じで、ポンプ152の送り量と排出側の流量制御機構153の調整により行われる。
【0063】
4.本実施形態の半導体集積回路装置の製造方法における金メッキ・プロセスの詳細説明(主に図17から図40)
図17は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの全体フローを示すブロック・フロー図である。図18は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの全体フローのカップ洗浄ステップ86(図17)の詳細フローを示すブロック・フロー図である。図19は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの全体フローの事前攪拌ステップ90(図17)の詳細フローを示すブロック・フロー図である。図20は本願発明の一実施の形態の半導体集積回路装置の製造方法における金バンプ・メッキ・プロセスの全体フローのメッキ・ステップ91(図17)の詳細フローを示すブロック・フロー図である。図21から図40は、図17から図20の各ステップ(繰り返し的要素の関係で、複数のステップに対応するものもある)に対応するメッキ・カップ24の状態を示す断面図である。これらに基づいて、セクション1で概要を説明した金バンプ・メッキ・プロセスの全体フローを詳細に説明する。
【0064】
図17に示すように、メッキ装置に導入された複数のウエハ1(たとえば300φウエハ、450φその他の径のウエハでもよい)はフープ内で待機している(フープ内待機ステップ81)。その後、ウエハ1は位置合わせされ(位置合わせステップ82)、ウエハ表面処理される(ウエハ表面処理ステップ83)。続いて、図21に示すように、ウエハ1がメッキ・カップ24内に導入される(カップ内導入ステップ84;図17)。なお、メッキ・カップ24の下端部(底部)には多数の排出口36からのメッキ液等を集めて循環システムへ送るための下端排出パイプ44が設けられている。次に図22に示すように、上部側面導入口34(メッキカップにセットされたウエハの近傍に設けられたメッキ液導入口)からメッキ液の導入が開始する(メッキ液または洗浄液の導入ステップ85;図17)。更に、図23に示すように、メッキ液21の液面が上昇する。このときガスの一部はメッキ液21の一部とともに下端排出パイプ44を通して排出される。ここでは、洗浄用の薬液とメッキ用のメッキ液は同一のものを使用している。その方が、プロセス安定性が高く、装置構成が簡単になるからである。しかし、金含有析出物を溶解できるものであれば、洗浄用の薬液として使用可能である。従って、洗浄用の薬液(洗浄用薬液)として、メッキ液そのものを用いると、プロセス安定性が確保され、また、装置構成も簡単になるメリットがある。しかし、必要に応じて、若干組成を変えた洗浄用薬液を用いて、洗浄条件の最適化を図ってもよい。
【0065】
また、ここではメッキ液として環境的に問題の少ない非シアン系メッキ液である亜硫酸金系のメッキ液(主要成分が亜硫酸金ナトリウム、エチレンジアミン、無機酸塩、他の微量添加物の水溶液)を用いている。主要組成等の一例を亜硫酸金系のメッキ液について示すとすれば、以下のごとくである。すなわち、たとえば金:8から12グラム/リットル、タリウム:3.5から10ミリグラム/リットル、SO2−:20から80グラム/リットル、SO2−:20から80グラム/リットル、pH:7.6から8、比重:11から25程度である。なお、タリウムは、ストレス緩和剤等として添加されている。
【0066】
また、環境について十分な配慮が払われるのであれば、シアン系メッキ液を使用することも可能であることは言うまでもない。
【0067】
このようにして、図24に示すように、メッキ槽38がほぼメッキ液21(洗浄液または薬液)で満たされると、そのままメッキ液循環状態(メッキ液循環サブステップ101;図18)となり、カップ洗浄ステップ86(図17)が開始する。このメッキ液循環サブステップ101は初回は、たとえば60秒程度である。2サイクル以降は、たとえば1秒程度となる。続いて、図25に示すように上部側面導入口34からメッキ液が導入され、下端排出パイプ44から排出される循環状態で、スターラ37の左回り回転によりメッキ液21の攪拌が行われる(左回転攪拌サブステップ102;図18)。この時点では、メッキのための電流は印加されていない。スターラ37の回転速度は、たとえば50rpm程度である。また、回転時間は、たとえば29秒程度である。その後、スターラ37の左回り回転が停止して、循環状態に戻る(メッキ液循環サブステップ103)。この時間は、たとえば1秒程度である。図27に示すように、スターラ37が右回転してメッキ液21の攪拌が行われる(右回転攪拌サブステップ104;図18)。スターラ37の回転速度は、たとえば50rpm程度である。また、回転時間は、たとえば29秒程度である。その後、図18に示すように、メッキ液循環サブステップ101から右回転攪拌サブステップ104からなる洗浄サイクル106が必要に応じて繰り返し実行される。この繰り返し回数は、通常、5回から10回程度が望ましい。この繰り返しサイクルの後、図28に示すように、洗浄ステップ終了のためのメッキ液循環サブステップ105(図18)に入る。この時間は、たとえば60秒程度である。
【0068】
カップ洗浄が終わると、メッキ液の循環が停止され、次のカップ反転ステップ88(図17)に移る。すなわち、図29に示すように、カップが180度反転(倒立状態)される。なお、循環状態でカップを反転させてもよい。ただし、装置構成は複雑となる可能性がある。カップが反転された状態で図30に示すように上部側面導入口34(先に説明したように、カップの正立、倒立によって名称を変更すると混乱するので、導入口および排出口に関しては、重力の方向にかかわらず、カップの開放端を「上方」とした)からメッキ液21が導入され、再びメッキ液の循環が開始される。このとき、カップ内部のガスはメッキ液21に押し上げられて、秩序正しく下端排出パイプ44(カップの底部であり、倒立状態であるから通常の意味では上方である)から排出されるので(メッキ液の完全充填)、気泡が残留する可能性が低減される。このようにして、図30に示すように、メッキ液21が完全充填(100%充填)されると、そのまま、メッキ液21をよく混ぜ合わせるための事前攪拌ステップ90(図17)のメッキ液循環サブステップ111(図19)に入る。ここでは、メッキのための電流はまだ流していない。続いて、図31に示すように、スターラ37が左回り回転してメッキ液21を攪拌する(左回転攪拌サブステップ112;図19)。スターラ37の回転速度は、たとえば50rpm程度である。また、回転時間は、たとえば29秒程度である。スターラ37が停止すると図32に示すように循環サブステップ113(図19)に入る。この時間は、たとえば1秒程度である。次に図33に示すように、スターラ37が右回り回転してメッキ液21を攪拌する(右回転攪拌サブステップ114;図19)。スターラ37の回転速度は、たとえば50rpm程度である。また、回転時間は、たとえば29秒程度である。その後、再びスターラ37が停止すると図34に示すようにメッキステップ91(図17)の循環サブステップ121(図20)に入る。この時間は、たとえば1秒程度である。
【0069】
図20に示すように、メッキステップ91(図17)は1段目の低電流メッキ・サイクル136(たとえば電流密度0.2アンペア/dm程度、すなわち第2のメッキ電流又は電流密度)と2段目の高電流メッキ・サイクル137(たとえば電流密度0.9アンペア/dm程度、すなわち第1のメッキ電流又は電流密度)に分けられる。これを「2段メッキプロセス」という。これは、最初から急に高電流メッキを行うと、気泡の発生が懸念されるからである。なお、本実施形態ではウエハ・フェースアップ状態でメッキ処理をしているので、当初より気泡の混入(外部気泡)は極めて少ないが、2段メッキプロセスによれば、液内部からの気泡の発生(内部気泡)も低減することができる。たとえば、トータルで15マイクロメータ程度のメッキをするのであれば、低電流メッキ・サイクル136でたとえば0.5から1マイクロメータ程度までメッキするのが望ましい。なお、時間的余裕があれば、更に延長してもよい。
【0070】
循環サブステップ121(図20)引き続き、図31に示すように、スターラ37が左回り回転してメッキ液21を攪拌する(左回転攪拌サブステップ122;図20)。このとき低電流のメッキ電流が印加されている(ここではじめてメッキ電流が印加される)。スターラ37の回転速度は、たとえば120rpm程度である。また、回転時間は、たとえば59秒程度である。その後、スターラ37が停止すると図32に示すように循環サブステップ123(図20)に入る。このときはメッキ電流は切られている。この時間は、たとえば1秒程度である。次に、図33に示すように、スターラ37が右回り回転してメッキ液21を攪拌する(右回転攪拌サブステップ124;図20)。このとき低電流のメッキ電流が印加されている。スターラ37の回転速度は、たとえば120rpm程度である。また、回転時間は、たとえば59秒程度である。この低電流メッキ・サイクル136が図20に示すように必要に応じて繰り返される。繰り返し回数は、たとえば2回から6回程度が適切である。
【0071】
低電流メッキ・サイクル136が完了すると、図34に示すように、再びスターラ37が停止し、高電流メッキ・サイクル137(図20)のメッキ液循環サブステップ131(図20)に入る。このときはメッキ電流は切られている。この時間は、たとえば1秒程度である。次に図31に示すように、スターラ37が左回り回転してメッキ液21を攪拌する(左回転攪拌サブステップ132;図20)。このとき高電流のメッキ電流が印加されている。スターラ37の回転速度は、たとえば120rpm程度である。また、回転時間は、たとえば59秒程度である。その後、スターラ37が停止すると図32に示すように循環サブステップ133(図20)に入る。このとき、メッキ電流は切られている。この時間は、たとえば1秒程度である。次に、図33に示すように、スターラ37が右回り回転してメッキ液21を攪拌する(右回転攪拌サブステップ134;図20)。このとき高電流のメッキ電流が印加されている。スターラ37の回転速度は、たとえば120rpm程度である。また、回転時間は、たとえば59秒程度である。この高電流メッキ・サイクル137が図20に示すように必要に応じて繰り返される。繰り返し回数は、全部で15マイクロメータ程度の厚さにメッキするのであれば、たとえば10回から15回程度が適切である。このとき、メッキ電流は切られ、スターラ37が停止すると、メッキ・サイクルが終了し、図34に示すように、循環サブステップ135(図20)に入る。この時間は、たとえば60秒程度である。各メッキ・サイクルの最終サイクルについては、メッキ厚さ調整の関係でサイクル途上において終了してもよい。
【0072】
続いて、図35に示すように、メッキ液21の循環も停止される。ここで、図36に示すように、メッキ・カップ24が再度、反転されて正立状態に戻る(カップ再反転ステップ92;図17)。その後、図37に示すように、メッキ液21が下端排出パイプ44から排出される。カップを再反転して、正立状態にして、メッキ液の排出を行うのは、上から下にメッキ液を流して、ウエハに異物等を付着させず、速やかにカップの底部から排出するためである。メッキ液21が減少した分、上部側面導入口34から窒素ガスがメッキ槽38に供給される(メッキ液排出ステップ93;図17)。更に図38に示すように、メッキ槽38からメッキ液21を完全に排出する。それに続いて、図39に示すように、上部側面導入口34から窒素ガスがメッキ槽38に供給され、下端排出パイプ44から排出されることにより、メッキ槽38の内部の雰囲気を置換する窒素パージ・ステップ94(図17)が行われる。最後に、メッキ・カップ24の蓋42が開いて、ウエハ1が取り出される(ウエハ取り出しステップ95;図17)。
【0073】
5.本願の一実施形態の半導体集積回路装置の製造方法の要部である金メッキ・プロセスにおけるタリウム添加量検出および、その管理の説明(主に図41から図45)
このセクションでは、他のセクションで説明したメッキ・プロセスにおけるメッキ液のタリウム添加量検出および、その管理について説明する。
【0074】
通常、非シアン系電解金メッキ液におけるタリウム添加量は、ppmオーダであるから、その検出及び管理は、タイムラグが伴うサンプル取得による化学分析によっている。しかし、これでは実時間の管理は不可能であり、量産工程においては、大規模不良の発生を阻止することができない。
【0075】
そこで、図16のメッキシステムに図41に示すようなタリウム添加量検出および管理システムを導入した。図41に示すように、メッキ・カップ24(メッキ・セル)に所定のメッキ電流を供給する定電流電源153にパラレルに接続されている電位差計154の検出信号を装置制御系155(個別または共通装置制御系)に供給して、メッキ電圧(メッキ・セルのアノードとカソード間の電位差)の推移をモニタするようになっている。このシステムの操作、条件の入力等は、制御端末156等から実行できる。このようなシステムによって得られたデータ等を以下説明する。
【0076】
図44は、図20で説明した高電流メッキ・サイクル137におけるメッキ電圧の推移を示したデータプロット図である。図44に示すように、激しく上下しているのは、メッキ液循環ステップ131,133のようなメッキ電流がオフの期間と回転撹拌ステップ132,134のようなメッキ電流がオンの期間が交互に繰り返されるためである。メッキ・サイクルを繰り返すうちに、変動は小さくなるが、これはメッキ液の状態が高電流に対応した状態になるのに時間を要するためと考えられる。また、この図44から、外観不良のあるウエハでは、正常なウエハと比較して、初期ピーク電圧および収束電圧値が高いことがわかる。これは、以下のように説明できる。すなわち、非シアン系電解メッキ液による金メッキでは、タリウムが先ずウエハ(カソード)上に析出し、その後、析出したタリウムと液中の金が置換することによって、金メッキが進行すると考えられる。しかし、タリウム量が不足したメッキ液中では、この反応経路がうまく進行しないため、定電流電源153(図41)が指定された電流を流すために出力電圧を急激に上昇させることになる。この傾向は、収束値にも同様に現れるが、初期ピーク電圧(各ステップの電流オンの直後に現れる電圧値のピーク)の方がはるかに大きな差となって現れる。これを模式的に表したのが、図45である。
【0077】
図43は、各種の電流密度および液温における初期ピーク電圧(メッキ電圧ピーク値)とタリウム濃度の関係を整理したものである。図43からわかるように、高電流密度で比較的液温が低温のとき(すなわち析出する金の粒塊が小さいときに)に初期ピーク電圧のタリウム濃度依存性が増大する。
【0078】
図44は、メッキ液温が摂氏46度のときのメッキ電圧ピーク値とタリウム濃度の関係を示したものである。これからわかるように、タリウム濃度が減少するに従って、メッキ電圧ピーク値は、単調に上昇してゆく。
【0079】
以上のことから、タリウム濃度の管理手法として、たとえば、以下のような手順を例示することができる。
(1)図41のタリウム濃度管理システムにおいて、高電流メッキ・サイクル137(図20)におけるメッキ電圧ピーク値の平均値(観測印加電圧)から図42等を参照してタリウム濃度を自動算出する。
(2)算出濃度と標準濃度(たとえば、5.7ミリグラム/リットル)を比較して、たとえば算出濃度が4.5ミリグラム/リットル(これらを総称して「基準濃度」という)以上のときは、タリウム濃度が正常と判断して、メッキ処理を続行する(たとえば、次のウエハの処理に移る。以下同じ)。
(3)たとえば算出濃度が4ミリグラム/リットル以上で4.5ミリグラム/リットル未満のときは、自動的にメッキ液タンク40(図41)にタリウムまたはタリウム化合物が添加され、メッキ処理を続行する。タリウム化合物としては、たとえば、蟻酸タリウム、硫酸タリウム、硝酸タリウム、酸化タリウム等、またはこれらの混合物を例示することができる。なお、この場合は、メッキ処理中にタリウムまたはタリウム化合物を添加してもよいし、ウエハ間(先行ウエハの処理と後続ウエハの処理の間)において、添加してもよい。ただし、図13のような複数のメッキカップでメッキ液循環系を共有する装置では、他のウエハに対するメッキ処理中に、タリウムまたはタリウム化合物を添加することとなる場合が多い。
(4)たとえば算出濃度が3.5ミリグラム/リットル以上で4ミリグラム/リットル未満のときは、一旦、メッキ処理を中断し、自動的にメッキ液タンク40(図41)にタリウムまたはタリウム化合物が添加され、メッキ液の均一化を待つ(たとえば2時間程度)。ここで、中断とは、次のウエハに対するメッキ処理に移らないことを言う。この場合は、ウエハ間(先行ウエハの処理と後続ウエハの処理の間)において、タリウムまたはタリウム化合物を添加するのが好適である。
(5)たとえば算出濃度が3.5ミリグラム/リットル未満のときは、一旦、メッキ処理を中断し、自動的にメッキ液タンク40(図41)のメッキ液を交換する。
【0080】
ここで、(3)から(5)の場合において、これらの各対応は必須ではない。たとえば、単に「タリウム濃度が低いことを表示する」ことや「アラームを発信する」等の対応をしてもよい。
【0081】
なお、基準濃度(基準上限濃度または基準上限濃度)の代わりに、観測印加電圧と図42において、基準濃度等に対応する基準メッキ電圧(基準上限電圧、基準下限電圧)の関係で同様に管理してもよい。これらの基準濃度または基準メッキ電圧の値は、事前に、制御端末156(図41)から入力される。
【0082】
また、観測印加電圧のような平均値(または中間値)ではなく、代表的なステップの印加電圧のピーク値や収束値などを基準値との比較の対象としてもよい。ただし、ピーク値を利用する場合は、感度が高いというメリットがある。
【0083】
なお、タリウム濃度検出については、図20のように複数の電流密度のメッキ・ステップを適用するときは、高電流ステップで測定するのが有利であるが、単一のステップのときは、当然、当該ステップで同様にメッキ電流の推移を観測すればよい。この場合は、低電流ステップがないと考えればよい。
【0084】
6.他のプロセスまたは装置構成の説明
本実施形態ではメッキカップを反転してメッキする形式の装置を用いたが、カップを反転せず、ウエハ・フェース・ダウンのままメッキする形式をとってもよい。その場合には、図1のカップ反転ステップ74とカップ再反転ステップ77をスキップするだけである(図17で言えば、カップ反転ステップ88およびカップ再反転ステップ92である)。すなわち、洗浄と本メッキ工程において、メッキカップの姿勢(空間での向き、すなわち、ウエハのデバイス面の向き)をそれぞれの工程に最適なものにすることにより(その結果、それらの工程でメッキカップの姿勢が異なる)、高信頼性でかつ平坦性の高いバンプメッキが可能となる。メッキカップの姿勢は、正立と倒立のみを例示したが、必要に応じて、幾分斜めの姿勢をとってもよいことは、言うまでもない。
【0085】
また、図1のカップ洗浄ステップ72をメッキ処理をする製品ウエハ1をメッキ・カップ24にセット(又はロード)して実行する例を説明したが、ウエハ1をセットせず単に蓋42を閉めて、または、製品ウエハ1の代わりにダミー・ウエハをセットして、カップ洗浄ステップ72を実行することも可能である。製品ウエハ1をセットしないやり方は、その間に製品ウエハに別の処理ができる等のメリットがある場合もある。なお、製品ウエハ1を使用しても、処理手順または時間配分等に十分留意すれば、スループット等を実質的に下げないで処理することができる。製品ウエハ1をメッキ・カップ24にロードした状態で、洗浄を行う方が、処理の流れがスムースになるメリットがある。
【0086】
更に、図17の事前攪拌ステップ90は必須ではないが、メッキ特性の安定化には有効である。
【0087】
7.サマリ
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて金バンプを形成する際のメッキプロセスを例にとって具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0088】
例えば、金以外の半田バンプ、銀バンプ等の形成において同様に適用できることは言うまでもない。また、バンプ形成に限定されるものではなく、材料を扱う際に広く適用できることは言うまでもない。
【0089】
また、本実施形態においては、レジスト膜に開口を設けて、その開口にメッキするプロセスについて説明したが、銅ダマシン・プロセス(または銀ダマシン・プロセス)のように、レジスト膜等を用いず、ウエハのほぼ全面に金属膜をメッキするプロセスにも適用できることは言うまでもない。
【0090】
更に、前記実施形態では、主に高平坦性を確保しやすいカップ反転型(ウエハ・フェース・アップ型)のメッキ装置を例にとって、具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、現時点で広く使用されているカップを反転しないウエハ・フェース・ダウン型のメッキ装置においても、ほぼそのまま適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0091】
1 ウエハ
1a ウエハの第1主面(デバイス面)
2 析出物
3 突起
12 ポジ型レジスト膜
15 金バンプ電極
21 メッキ液(薬液)
22 枚葉メッキ装置
23 メッキ処理部
24 メッキ・カップ
25 ロードポート
26 ウエハ収納容器
27 ウエハ位置合わせ部
28 搬送ロボット
29 洗浄部
30 リンス&ドライ部
31 事前処理部
32 カソード・リング電極
33 リップ・シール
34 ガス・液導入口
35 アノード電極
36 ガス・液排出口
37 スターラ
38 メッキ槽
40 タンク
41 スピンチャック
42 蓋
44 下端排出パイプ
51 LCDドライバー用チップ
52 回路領域
53 ITO電極
54 異方性導電膜
55 液晶基板
61 ファイナル・パッシベーション膜
62 アルミニウム・パッド
63 パッド開口
64 下層チタン膜
65 上層パラジウム膜
66 レジスト開口
67 ノズル
71 ウエハ・ロード工程
72 カップ洗浄工程
74 カップ反転工程
76 メッキ処理工程
77 メッキ・カップ再反転工程
78 ウエハ・アンロード工程
81 フープ内待機ステップ
82 位置合わせステップ
83 ウエハ表面処理ステップ
84 カップ内導入ステップ
85 メッキ液または洗浄液の導入ステップ
86 カップ洗浄ステップ
88 カップ反転ステップ
90 事前攪拌ステップ
91 メッキ・ステップ
92 カップ再反転ステップ
93 メッキ液排出ステップ
94 窒素パージ・ステップ
95 ウエハ取り出しステップ
101 メッキ液循環サブステップ
102 左回転攪拌サブステップ
103 メッキ液循環サブステップ
104 右回転攪拌サブステップ
105 メッキ液循環サブステップ
111 メッキ液循環サブステップ
112 左回転攪拌サブステップ
113 循環サブステップ
114 右回転攪拌サブステップ
121 循環サブステップ
122 左回転攪拌サブステップ
123 循環サブステップ
124 右回転攪拌サブステップ
131 メッキ液循環サブステップ
132 左回転攪拌サブステップ
133 循環サブステップ
134 右回転攪拌サブステップ
135 循環サブステップ
136 低電流メッキ・サイクル
137 高電流メッキ・サイクル
151 切り替え電磁弁
152 ポンプ
153 流量制御機構(定電流電源)
154 電位差計
155 装置制御系(個別または共通装置制御系)
156 制御端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)タリウムが添加された非シアン系の金メッキ液を用いて、半導体ウエハの第1主面上に電解メッキにより、金を主要な成分とする金系バンプ電極を形成する工程、
ここで、前記工程(a)は、以下の下位工程を含む:
(a1)前記金メッキ液への第1のメッキ電流の印加を開始する工程;
(a2)前記下位工程(a1)の後に、前記第1のメッキ電流の印加を終了する工程;
(a3)前記下位工程(a1)および前記下位工程(a2)の間の期間内のいずれかにおいて、前記金メッキ液への印加電圧をモニタすることにより、前記金メッキ液中の前記タリウムの添加量を監視する工程。
【請求項2】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記モニタは、前記印加電圧と設定された基準上限電圧との関係を監視するものである。
【請求項3】
前記2項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金メッキ液は、亜硫酸金系のメッキ液である。
【請求項4】
前記3項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記モニタする印加電圧は、前記期間内のピーク電圧である。
【請求項5】
前記4項の半導体集積回路装置の製造方法において、更に、以下の工程を含む:
(b)前記下位工程(a3)の結果に基づいて、前記金メッキ液にタリウムまたはタリウム化合物を添加する工程。
【請求項6】
前記4項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)は、更に、以下の下位工程を含む:
(a4)前記下位工程(a3)の結果に基づいて、前記金メッキ液にタリウムまたはタリウム化合物を添加する工程。
【請求項7】
前記5項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記タリウムまたはタリウム化合物は、蟻酸タリウム、硫酸タリウム、硝酸タリウム、または酸化タリウムである。
【請求項8】
前記4項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)は、更に、以下の下位工程を含む:
(a5)前記下位工程(a1)の前に、前記金メッキ液への前記第1のメッキ電流よりも低い第2のメッキ電流を印加する工程。
【請求項9】
前記4項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記半導体集積回路装置は、LCDドライバ回路を有する。
【請求項10】
以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)タリウムが添加された非シアン系の金メッキ液を用いて、半導体ウエハの第1主面上に電解メッキにより、金を主要な成分とする金系バンプ電極を形成する工程、
ここで、前記工程(a)は、以下の下位工程を含む:
(a1)前記金メッキ液への第1のメッキ電流の印加を開始する工程;
(a2)前記下位工程(a1)の後に、前記第1のメッキ電流の印加を終了する工程;
(a3)前記下位工程(a1)および前記下位工程(a2)の間の期間内のいずれかにおいて、前記金メッキ液への印加電圧をモニタする工程;
(a4)前記下位工程(a1)の前に、前記金メッキ液中の前記タリウムの添加量を監視するための前記印加電圧の基準上限電圧を設定する工程。
【請求項11】
前記10項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記モニタは、前記印加電圧と前記基準上限電圧との関係を監視するものである。
【請求項12】
前記11項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記金メッキ液は、亜硫酸金系のメッキ液である。
【請求項13】
前記12項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記モニタする印加電圧は、前記期間内のピーク電圧である。
【請求項14】
前記13項の半導体集積回路装置の製造方法において、更に、以下の工程を含む:
(b)前記下位工程(a3)の結果に基づいて、前記金メッキ液にタリウムまたはタリウム化合物を添加する工程。
【請求項15】
前記13項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)は、更に、以下の下位工程を含む:
(a5)前記下位工程(a3)の結果に基づいて、前記金メッキ液にタリウムまたはタリウム化合物を添加する工程。
【請求項16】
前記14項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記タリウムまたはタリウム化合物は、蟻酸タリウム、硫酸タリウム、硝酸タリウム、または酸化タリウムである。
【請求項17】
前記13項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)は、更に、以下の下位工程を含む:
(a6)前記下位工程(a1)の前に、前記金メッキ液への前記第1のメッキ電流よりも低い第2のメッキ電流を印加する工程。
【請求項18】
前記13項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記半導体集積回路装置は、LCDドライバ回路を有する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2011−105968(P2011−105968A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259711(P2009−259711)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】