説明

半導体電力変換装置

【課題】半導体スイッチ素子の動作状態の情報を外部装置へ伝送するにあたって、情報の数を減らすことなく絶縁素子の使用個数を低減し、装置の小型化と低コスト化、及び、故障率の低減を実現する。
【解決手段】異なる基準電位に基づいてスイッチング動作を行う半導体スイッチ素子(1a、1b)を2個以上直列接続して構成された半導体電力変換装置(100)であって、それぞれの半導体スイッチ素子の異常検出要因および所定の物理量を状態検知情報として検知し、外部装置へ伝送する情報伝送回路部(4b)を備え、情報伝送回路部(4b)は、検知した状態検知情報に応じて、異常検出要因および所定の物理量を識別可能な二値論理信号を生成し、生成した二値論理信号を単一の絶縁素子(7b)を介して外部装置へ伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体電力変換装置に関するものであり、特に、装置内で用いられる半導体スイッチ素子の動作状態を外部へ伝送する機能の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体電力変換装置において、その装置内で用いられる半導体スイッチ素子の過電流などの異常状態の有無を、外部の別な装置へ通知するものが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来の半導体電力変換装置では、半導体スイッチ素子の破損を未然に防止するために、半導体スイッチ素子の動作状態を監視している。そして、異常状態を検出すると、半導体スイッチ素子のスイッチングを停止し、スイッチオフ状態に保持するとともに、異常状態の発生を外部装置へ知らせる。異常状態としては、例えば、次の3つが挙げられる。
(1)短絡電流(SC:Short Current)
(2)ゲート駆動電圧低下(UV:Under Voltage)
(3)過熱(Over Temperature)
【0004】
半導体スイッチ素子のスイッチング動作に際して、半導体スイッチ素子のチップが発熱して温度が上昇する要因としては、次のような事象が挙げられる。
・スイッチオン状態で電流が導通時に電流導通路の抵抗成分によって発生する損失(導通損)
・スイッチオフ状態からスイッチオン状態への遷移時(ターンオン)、あるいはスイッチオン状態からスイッチオフ状態への遷移時(ターンオフ)に発生する損失(スイッチング損)
このような事象により、過度に温度が上昇して高温となると、半導体スイッチ素子は、破損してしまう。
【0005】
短絡電流、ゲート駆動電圧低下は、いずれも半導体スイッチ素子の温度上昇につながる異常状態である。また、過熱は、温度上昇による異常状態そのものである。短絡電流に起因する半導体スイッチ素子の温度上昇は、反応の速い事象である。このため、短絡電流の異常検出は、過熱による異常検出とは別に設けられている。また、異常状態から正常状態への回復を、半導体電力変換装置の動作を指示する外部装置によって判断、制御可能なように、半導体電力変換装置内には、異常要因に対応して異常検出回路が備えられている。
【0006】
このような従来技術による半導体電力変換装置を、図9を用いて説明する。図9は、従来の半導体電力変換装置200の構成図である。この図9における従来の半導体電力変換装置200内の変換主回路110は、半導体スイッチ素子1a、1bと逆並列に接続されたフライホイールダイオード2a、2bを単位として、2つを直列接続した1つのアームとして構成されている場合を例示している。
【0007】
アームの下側(下アーム側)は、半導体スイッチ素子1aとフライホイールダイオード2aが逆並列に接続されている。一方、アームの上側(上アーム側)は、半導体スイッチ素子1bとフライホイールダイオード2bが逆並列に接続されている。ここで、図9においては、半導体スイッチ素子1a、1bとして、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を適用した場合を表記している。
【0008】
半導体スイッチ素子1aのエミッタEmは、図示されていない高電圧電源の低電位ノードNに接続されている。また、半導体スイッチ素子1bのコレクタCは、高電圧電源の高電位ノードPに接続されている。半導体スイッチ素子1aのコレクタCは、半導体スイッチ素子1bのエミッタEmと接続されており、その接続点は、中間ノードAとして、図示されていない電気負荷に接続されている。この電気負荷は、また、高電位ノードP、低電位ノードNの何れか、または両方にも接続されている。
【0009】
下アーム側の半導体スイッチ素子1aに関わる従来技術の構成、動作と、上アーム側の半導体スイッチ素子1bに関わる従来技術の構成、動作は、相似である。従って、ここでは、まず、下アーム側の半導体スイッチ素子1aに関わる構成、動作について説明する。
【0010】
半導体スイッチ素子1aのスイッチオン、スイッチオフは、図示されていない外部装置から伝送されるゲートPWM(Pulse Width Modulation)信号の指示によって切り替わる。この外部装置は、半導体スイッチ素子1aのゲートPWM信号を、絶縁素子6を介して駆動回路部5へ伝送する。ゲートPWM信号は、駆動回路部5内でゲートスイッチング処理手段51を経て、ゲート駆動アンプ52へ伝達される。この結果、半導体スイッチ素子1aのゲート電極Gに印加する電圧を切り替えることで、スイッチングが行われる。
【0011】
続いて、短絡電流(SC)、ゲート駆動電圧低下(UV)、過熱(OT)の各異常状態の検出と、図示されていない外部装置への各異常状態の通知に関して説明する。
【0012】
(1)短絡電流(SC)に関する異常状態検出について
短絡電流は、主セルと副セルに所定の比率で割り振られた半導体スイッチ素子のチップの内、副セル側に流れる電流が所定閾値を超えた場合として検出される。図9の半導体スイッチ素子1a、1bにおいては、主セルに対応するエミッタを主エミッタEmで示し、副セルに対応するエミッタをセンスエミッタEsで示している。
【0013】
副セルに流れる電流量の情報は、センスエミッタEsに接続されたセンス電流検出回路41内のセンス抵抗411の両端電圧の信号として、異常検出回路42へ入力される。次に、異常検出回路42内のコンパレータで、両端電圧信号と短絡電流異常判定閾電圧とが大小比較される。そして、センス抵抗411の両端電圧信号が、短絡電流異常判定閾電圧を上回る場合に、短絡電流(SC)異常が発生したことが検出される。
【0014】
(2)過熱(OT)に関する異常状態検出について
過熱は、半導体スイッチ素子1aのチップの近傍、あるいは、チップ構成面に形成される温度検出用ダイオード3aに基づいて行われる。温度検出用ダイオードは、所定の順バイアス電流を流しているという状態の下で、そのPN接合部の温度によって、アノードAt−カソードKt間の電圧VFが変化するという性質を持つ。
【0015】
チップ温度検出回路43は、温度検出用ダイオード3aのPN接合部温度をAt−Kt間電圧VFとして検出した上で、この電圧VFを異常検出回路42へ出力する。異常検出回路42は、内部のコンパレータで、電圧VFと過熱異常判定閾電圧との大小比較を行う。そして、電圧VFが過熱異常判定閾電圧を上回る場合に、過熱(OT)異常が発生したことが検出される。
【0016】
(3)ゲート駆動電圧低下(UV)に関する異常状態検出について
ゲート駆動電圧低下の検出は、異常検出回路42内のコンパレータで、ゲート駆動電圧低下異常判定閾電圧と異常検出回路42の電源電圧VCLとを大小比較することで行われる。電源電圧VCLは、ゲート駆動アンプ52が出力するゲート信号のハイ電圧と等しく、電源電圧VCLを監視することは、半導体スイッチ素子1aのゲート駆動電圧を監視することとなる。
【0017】
以上のようにして、異常検出回路42でいずれかの異常が検出された場合には、駆動回路部5内のゲートスイッチング処理手段51は、この情報に基づき、次のような動作をする。すなわち、ゲートスイッチング処理手段51は、絶縁素子6から伝送されるゲートPWM信号がスイッチオン指示状態であるか、スイッチオフ指示状態であるかに関わらず、スイッチオフ状態となるように設定する。この結果、半導体スイッチ素子1aは、スイッチオフとなる。
【0018】
また、異常検出回路42で検出された異常検出信号は、絶縁素子7を介して外部装置へ通知される。これは、異常なし状態での信号論理1(例えば、ハイ電圧=VCL)を信号論理0(例えば、ロー電圧=VNL)へ切り替え、別な基準電位を持つ外部装置の電圧信号として異常検出の有無を信号論理の1、0の状態にて通知するものである。
【0019】
さらに、半導体スイッチ素子の温度を外部装置に伝送する技術も、従来技術として開示されており、図9を参照して、この従来技術について説明する。上述したように、過熱異常の検出に際して、チップ温度検出回路43は、温度検出用ダイオード3aのAt−Kt間電圧VFを検出する。チップ温度信号生成部44は、電圧VFをパルス幅変調(PWM)し、絶縁素子8を介して別な基準電位を持つ外部装置へ伝送する。
【0020】
半導体スイッチ素子の温度の高低は、パルス幅変調信号の一周期に占める信号論理1と信号論理0の時間比率として表されている。そして、外部装置側には、半導体スイッチ素子1aの温度とAt−Kt間電圧VFとの関係、及び、電圧VFと半導体スイッチ素子温度情報の矩形波信号パルス幅との関係が、あらかじめ定められて記録されている。そして、外部装置は、矩形波のパルス幅を計測し、記録されている相互関係に基づいて、計測された矩形波のパルス幅を半導体スイッチ素子の温度として復号する。
【0021】
以上説明した従来技術の構成、動作、作用は、下アーム側の半導体スイッチ素子1aに関わるものであったが、同様の構成、動作、作用は、上アーム側の半導体スイッチ素子1bに関しても該当する。ただし、半導体スイッチ素子1bに関する場合には、異常検出通知手段4、駆動回路部5、及び、絶縁素子6、7、8の半導体スイッチ素子1b寄りの基準電位は、半導体スイッチ素子1bのエミッタEmの電位VNHであり、電源電圧は、VCHに置き換わる。一方、絶縁素子6、7、8の、図示されていない外部装置寄りの基準電位は、下アーム側の半導体スイッチ素子1aに関わる説明と同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2008−270548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来の半導体電力変換装置では、半導体スイッチ素子の異常状態の有無、あるいは、半導体スイッチ素子の温度を外部装置に通知する場合に、それぞれ、個別の絶縁素子を介して情報を伝送する必要があった。このため、ゲートPWM信号の伝送に用いるものを含めると、半導体スイッチ素子1つにつき、3個の絶縁素子が必要となってしまう。
【0024】
半導体電力変換装置が三相のインバータである場合には、少なくとも3つのアームを構成する6個の半導体スイッチ素子を有することとなる。従って、この場合には、合計18個の絶縁素子が必要となる。このため、装置が高コストとなる、あるいは、絶縁素子の実装スペースによって装置が大型化するといった問題が生じていた。
【0025】
また、絶縁素子としてフォトカプラを用いる場合には、他の電子回路部品と比較して相対的に故障率が高く、耐用年数が短いなどといった弱点を持つ。このような弱点は、特に、自動車向けなど、フォトカプラの温度が100℃以上の高温に達する使われ方となる半導体電力変換装置にあっては、大きな問題となる。
【0026】
一方で、絶縁素子の使用数量を低減するには、半導体スイッチ素子の温度情報の外部装置への通知本数を減らすことも考えられる。この場合には、温度非検出相の半導体スイッチ素子の過熱破壊を予防すべく、半導体スイッチ素子の導通電流量が相対的に低くなるよう、半導体電力変換装置の取り扱い電力の上限を制限するなどの別途の対策を施すことにつながる。しかしながら、このような対策は、容積、重量あたりの取り扱い電力量を向上したいという要望に対して、相反することとなる。
【0027】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、半導体電力変換装置に用いられる半導体スイッチ素子の動作状態の情報を外部装置へ伝送するにあたって、情報の数を減らすことなく絶縁素子の使用個数を低減し、装置の小型化と低コスト化、及び、故障率の低減を実現する半導体電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明に係る半導体電力変換装置は、異なる基準電位に基づいてスイッチング動作を行う半導体スイッチ素子を2個以上直列接続して構成され、半導体スイッチ素子のそれぞれのスイッチオン状態とスイッチオフ状態を切替えて電力変換を行う半導体電力変換装置であって、異なる基準電位に対応するそれぞれの半導体スイッチ素子の異常検出要因および所定の物理量を状態検知情報として検知し、基準電位が異なる外部装置へ伝送するために個別に設けられた情報伝送回路部を備え、情報伝送回路部のそれぞれは、検知した状態検知情報に応じて、異常検出要因および所定の物理量を識別可能な二値論理信号を生成し、生成した二値論理信号を単一の絶縁素子を介して外部装置へ伝送するものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る半導体電力変換装置によれば、検知した状態検知情報に応じて、異常検出要因および所定の物理量を識別可能な二値論理信号を生成し、生成した二値論理信号を単一の絶縁素子を介して外部装置へ伝送することにより、半導体電力変換装置に用いられる半導体スイッチ素子の動作状態の情報を外部装置へ伝送するにあたって、情報の数を減らすことなく絶縁素子の使用個数を低減し、装置の小型化と低コスト化、及び、故障率の低減を実現する半導体電力変換装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体電力変換装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における符号化伝送部で生成される二値論理信号の概略の説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1の図2に示した二値論理信号における、各データの詳細な波形図である。
【図4】本発明の実施の形態1における二値論理信号のパルス幅と異常検出要因との関係を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1における二値論理信号のパルス幅と各物理量との関係を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2における半導体電力変換装置が外部装置へ伝送する二値論理信号のデータフレームの波形説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2における二値論理信号のパルス幅とデータ種類との関係を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態3における三相インバータとなる半導体電力変換装置100の構成図である。
【図9】従来の半導体電力変換装置200の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の半導体電力変換装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0032】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における半導体電力変換装置の構成図である。図1において、変換主回路110は、半導体スイッチ素子1a、1bと逆並列(電流導通の順方向が相互に異なる状態での並列)に接続されたフライホイールダイオード2a、2bを単位として、2つを直列接続した1つのアームとして構成されている。
【0033】
直列接続体の下側(下アーム側)は、半導体スイッチ素子1aとフライホイールダイオード2aが逆並列に接続されている。一方、直列接続体の上側(上アーム側)は、半導体スイッチ素子1bとフライホイールダイオード2bが逆並列に接続されている。ここで、図1においては、半導体スイッチ素子1a、2aとして、IGBTを適用した場合を表記している。
【0034】
半導体スイッチ素子1aのエミッタEmは、図示されていない高電圧電源の低電位ノードNに接続されている。また、半導体スイッチ素子1bのコレクタCは、高電圧電源の高電位ノードPに接続されている。半導体スイッチ素子1aのコレクタCは、半導体スイッチ素子1bのエミッタEmと接続されており、その接続点は、中間ノードAとして、図示されていない電気負荷に接続されている。この電気負荷は、また、高電位ノードP、低電位ノードNの何れか、または両方にも接続されている。
【0035】
そして、半導体スイッチ1a、1bがスイッチングを行うことによって、中間ノードAの電位が高電位ノードP、低電位ノードNのいずれかの電位に一致する。このため、スイッチングによって高電位ノードPから低電位ノードNまでの電圧範囲で、中間ノードAの電圧を時間平均的に調整することで、電気負荷への印加電圧を調整できる。
【0036】
ここで、本発明の半導体スイッチ素子のスイッチング、異常検出、状態の検出と外部装置への情報伝送の動作、作用は、上アーム側半導体スイッチ素子、下アーム側半導体スイッチ素子双方が、各動作回路の基準電位と電源電圧が異なることを除いて同様の動作、作用となる。そこで、下アーム側の半導体スイッチ素子1aに関わる部分を代表として説明する。
【0037】
半導体スイッチ素子1aのスイッチオン、スイッチオフは、図示されていない外部装置から伝送されるゲートPWM信号の指示によって切り替わる。この外部装置は、半導体スイッチ素子1aのゲートPWM信号を、基準電位をVsecuとする矩形波信号として絶縁素子6へ出力する。絶縁素子6は、半導体スイッチ素子1aのエミッタEmの電位VNLを基準として、ゲートPWM信号を駆動回路部5へ伝送する。
【0038】
駆動回路部5内では、ゲートスイッチング処理手段51を経てゲート駆動アンプ52へゲートPWM信号が伝達される。そして、ゲート駆動アンプ52は、半導体スイッチ素子1aのスイッチオンの場合には、ハイ電圧VCLとして、スイッチオフの場合には、ロー電圧VNLとして、ゲート電極Gに印加する電圧を切替えてスイッチングを行う。
【0039】
続いて、短絡電流(SC)、ゲート駆動電圧低下(UV)、過熱(OT)の各異常状態の検出と、図示されていない外部装置への各異常状態の情報伝送に関して説明する。
【0040】
(1)短絡電流(SC)に関する異常状態検出について
短絡電流異常の検出のため、例えば、半導体スイッチ素子のチップを構成するセルを主セルと副セルに所定の比率で割り振り、主セルには電力変換用の主回路電流を導通し、副セルには電流量検出用のセンス電流を導通させるマルチエミッタ方式のチップを用いて、電流を検出するものがある。セルは、それぞれがスイッチング動作を行う微細な素子の最小単位であり、チップは、多数のセルによって構成されている。
【0041】
図1に示す半導体スイッチ素子1a、1bは、上述したように、チップを構成するセルが主セルと副セルに分かれている。そして、主セルに対応するエミッタを主エミッタEmで示し、副セルに対応するエミッタをセンスエミッタEsで示している。
【0042】
半導体スイッチ素子1aのセンスエミッタEsと主エミッタEmとは、状態検知情報伝送回路部4b内のセンス電流検出回路41に備わるセンス抵抗411を介して接続されている。そして、センスエミッタEsから流れ出た電流は、センス抵抗411を通って、主エミッタEmから流れ出た電流と合流する。主セルと副セルの各セル数を所定の比率で割り振っていることから、主エミッタEmを流れる電流の量とセンスエミッタEsを流れる電流の量もこの所定の比率となる。
【0043】
センス抵抗411の両端電圧は、センス抵抗411の抵抗値とセンスエミッタEsを流れる電流量の積である。このため、センス電流検出回路41でセンス抵抗411の両端電圧を計測することで、電力変換用の主回路電流として半導体スイッチ素子1aを流れる電流量を計測できる。このセンス抵抗411の両端電圧は、異常検出回路42内のコンパレータで短絡電流異常判定閾電圧と大小比較される。そして、センス抵抗411の両端電圧が、短絡電流異常判定閾電圧を上回る場合に、短絡電流(SC)異常が発生したことが検出される。
【0044】
(2)過熱(OT)に関する異常状態検出について
過熱の検出は、半導体スイッチ素子1aのチップの近傍、あるいは、チップ構成面に形成される温度検出用ダイオード3aに基づいて行われる。この検出は、温度検出用ダイオードの電極のアノードAtとカソードKtの間の電圧VFが、ダイオード3aのPN接合部分の温度によって変化することを利用している。
【0045】
具体的には、チップ温度検出回路43にて、半導体スイッチ素子1aのチップから伝熱し同程度の温度となっている温度検出用ダイオード3aのPN接合部温度を、At−Kt間電圧VFとして検出する。そして、異常検出回路42内のコンパレータで、検出したAt−Kt間電圧VFと過熱異常判定閾電圧との大小比較を行う。この結果、電圧VFが過熱異常判定閾電圧を上回る場合に、半導体スイッチ素子の過熱(OT)異常が発生したことが検出される。
【0046】
(3)ゲート駆動電圧低下(UV)に関する異常状態検出について
ゲート駆動電圧低下の検出は、異常検出回路42内のコンパレータで、ゲート駆動電圧低下異常判定閾電圧と異常検出回路42の電源電圧VCLとを大小比較することで行われる。電源電圧VCLは、ゲート駆動アンプ52が出力するゲート信号のハイ電圧と等しく、電源電圧VCLを監視することは、半導体スイッチ素子1aのゲート駆動電圧を監視することとなる。
【0047】
以上のようにして、異常検出回路42でいずれかの異常が検出された場合には、駆動回路部5内のゲートスイッチング処理手段51は、この情報に基づき、次のような動作をする。すなわち、ゲートスイッチング処理手段51は、絶縁素子6から伝送されるゲートPWM信号がスイッチオン指示状態であるか、スイッチオフ指示状態であるかに関わらず、スイッチオフ状態となるように設定する。この結果、半導体スイッチ素子1aは、スイッチオフとなる。
【0048】
また、これと同時に、異常検出の有無と異常検出有り時の検出要因が、符号化伝送部49へ出力される。
【0049】
続いて、チップ温度検出回路43が検出した温度検出用ダイオード3aのAt−Kt間電圧VFは、チップ温度信号生成部45に送られる。そして、チップ温度信号生成部45は、キャリア波生成手段47からの第一キャリア波471とAt−Kt間電圧VFとを突き合わせて大小比較を行う。さらに、チップ温度信号生成部45は、比較結果をパルス幅変調し、論理1と論理0の二値論理信号の矩形波として、符号化伝送部49へ出力する。
【0050】
また、センス電流検出回路41で計測された半導体スイッチ素子1aの電流量は、チップ電流信号生成部46に送られる。そして、チップ電流信号生成部46は、キャリア波生成手段47からの第一キャリア波471と半導体スイッチ素子1aの電流量とを突き合わせて大小比較を行う。さらに、チップ電流信号生成部46は、比較結果をパルス幅変調し、論理1と論理0の二値論理信号の矩形波として、符号化伝送部49へ出力する。
【0051】
また、異常検出回路42内の電源電圧VCLは、半導体スイッチ素子1aのゲート駆動電圧として、ゲート駆動電圧信号生成部48に送られる。そして、ゲート駆動電圧信号生成部48は、同様に、第一キャリア波471と電源電圧VCLとを突き合わせて大小比較を行う。さらに、ゲート駆動電圧信号生成部48は、比較結果をパルス幅変調し、論理1と論理0の二値論理信号の矩形波として、符号化伝送部49へ出力する。
【0052】
次に、符号化伝送部49は、以下の4つの信号入力に基づいて、外部装置へ情報伝送する二値論理信号を生成し、絶縁素子7bへ出力する。これらの入力信号1〜4が、状態検知情報に相当する。また、入力信号1が、半導体スイッチ素子の異常検出要因に関する情報に相当し、入力信号2〜4が、半導体スイッチ素子の所定の物理量に関する情報に相当する。
入力信号1:異常検出回路42からの異常検出の有無と、異常検出有り時の検出要因の情報
入力信号2:チップ温度信号生成部45からのチップ温度のパルス幅変調信号
入力信号3:チップ電流信号生成部46からの半導体スイッチ素子の電流量(チップ電流量)のパルス幅変調信号
入力信号4:ゲート駆動電圧信号生成部48からのゲート駆動電圧量のパルス幅変調信号
【0053】
ここで、符号化伝送部49が外部装置へ出力する二値論理信号について、詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態1における符号化伝送部49で生成される二値論理信号の概略の説明図である。当該信号は、時間ΔTを送信データの更新周期としており、時間ΔTごとに、1つの状態検知情報に対応した1つのデータフレームを送信する。図2において、最初のデータフレームは、時刻t0からt1の間に送信され、2番目のデータフレームは、時刻t1からt2の間に送信される。以下、同様に連続して、データは送信される。
【0054】
各データフレームは、識別符号部とデータ本体とで構成されている。なお、本実施の形態1では、識別符号部が先に、データ本体が後に構成される場合を示している。識別符号部は、最初のデータフレームにおいては、時刻t0から時刻t0sまでの時間Δsを占めており、2番目のデータフレームにおいては、時刻t1からt1sまでの時間Δsを占めている。
【0055】
図3は、本発明の実施の形態1の図2に示した二値論理信号における、各データの詳細な波形図である。具体的には、(a)は異常検出信号、(b)はチップ温度信号、(c)はチップ電流信号、(d)はゲート駆動電圧信号のそれぞれの二値論理信号の詳細を示している。各波形は、二値論理信号であり、信号は、論理1と論理0のいずれかの状態をとる。
【0056】
図3(a)から(d)の各信号波形にて、時刻tuから時刻tu+1までの時間が、データフレームの一単位である。また、時刻tuから時刻tu_sまでの時間Δsが、識別符号部であり、時刻tu_dからtu+1までの時間Δcが、フレーム間分離部である。そして、残る時刻tu_sから時刻tu_dまでの時間が、データ本体のパルス幅変調信号のパルス幅調整範囲となり、この時間内の何れかのタイミングで、信号は、論理1から論理0へ変化する。
【0057】
図3(a)から(d)の波形で、識別符号部は、時刻tuからの時間Δsに含まれる矩形状パルスの数により、当該データフレームが何のデータであるかを示している。すなわち、この識別符号部は、伝送される状態検知情報の属性を識別するために用いられる。図3においては、(a)の異常検出信号ではパルス数は2、(b)のチップ温度信号ではパルス数は3、(c)のチップ電流信号ではパルス数は4、そして、(d)のゲート駆動電圧信号ではパルス数は5として、それぞれ対応付けされている。
【0058】
外部装置側は、識別符号部のパルス数を数えることで、当該フレームのデータが何のデータであるか(すなわち、当該フレームの属性)を判別することができる。なお、識別符号部の伝送開始タイミングとなる時刻tuは、少なくともフレーム間分離部に該当する時間Δc以上の期間で信号論理が0であった後に、信号の論理が0から1に立上がったことに基づいて識別可能である。
【0059】
一方、各データ本体のパルス幅変調信号は、下限パルス幅が時刻tuから時刻tu_sまでの時間Δs、上限パルス幅が時刻tuから時刻tu_dまでの時間(ΔT−Δc)の範囲内でパルス幅が調整される。なお、ここでの「パルス幅」とは、時刻tuを起点として、データ本体内で、信号論理が1から0に立下がるまでの時間を意味している。そして、このデータ本体は、伝送される状態検知情報の属性に応じた内容を識別するために用いられる。図3(a)から図3(d)の信号波形と、各信号のデータ本体のパルス幅との関係は、以下のようになる。
【0060】
まず始めに、図3(a)の異常検出信号におけるデータ本体のパルス幅について説明する。図4は、本発明の実施の形態1における二値論理信号のパルス幅と異常検出要因との関係を示す説明図である。図3(a)の異常検出信号のデータ本体のパルス幅Δt_faと異常検出要因との関係は、図4のように表すことができる。図4において、横軸は、データ本体のパルス幅、縦軸は、対応する異常検出要因を示している。
【0061】
以下の4種の異常検出要因を識別するために、パルス幅の範囲がそれぞれ割り当てられている。
(1)パルス幅がΔsからΔth1の場合 :短絡電流有り
(2)パルス幅がΔth1からΔth2の場合 :過熱有り
(3)パルス幅がΔth2からΔth3の場合 :ゲート駆動電圧低下有り
(4)パルス幅がΔth3から(ΔT−Δc)の場合:予備(その他要因有り)
【0062】
従って、異常検出信号のデータ本体のパルス幅は、各区分領域ごとの代表として、ΔsからΔth1の間ではΔt_fa1を、Δth1からΔth2の間ではΔt_fa2を、Δth3からΔth4の間ではΔt_fa3を、Δth3から(ΔT−Δc)の間ではΔt_fa4が設定される(図3(a)、図4参照)。
【0063】
このように、符号化伝送部49は、外部装置へ異常検出信号を出力する場合には、識別符号部のパルス数を2に設定し、データ本体のパルス幅を、異常検出要因に対応して、Δt_fa1、Δt_fa2、Δt_fa3、Δt_fa4のいずれかに設定することとなる。
【0064】
なお、ここでは、いずれか1つの異常検出要因が検出された場合の識別方法を示している。しかしながら、データ本体のパルス幅と異常検出要因の対応付けにおいて、異常が複数生じている場合も考慮してパルス幅をあらかじめ割り当てておけば、異常検出要因が複数である場合も識別が可能となる。
【0065】
次に、図3(b)のチップ温度信号、(c)のチップ電流信号、(d)のゲート駆動電圧信号の各物理量におけるデータ本体のパルス幅について説明する。図5は、本発明の実施の形態1における二値論理信号のパルス幅と各物理量との関係を示す説明図である。図3(b)のチップ温度信号のデータ本体のパルス幅Δt_fbとチップ温度Tjとの関係は、図5(a)のように表される。図5(a)において、横軸は、データ本体のパルス幅Δt_fb、縦軸は、対応するチップ温度Tjを示している。
【0066】
パルス幅がΔsの場合は、チップ温度が最低値Tj_minに対応しており、パルス幅が(ΔT−Δc)の場合は、チップ温度が最高値Tj_maxに対応している。そして、パルス幅Δsから(ΔT−Δc)の間は、単調増加でチップ温度Tj_minからTj_maxに対応するものとしている。
【0067】
また、図3(c)のチップ電流信号のデータ本体のパルス幅Δt_fcとチップ電流Iceとの関係は、図5(b)のように表される。図5(b)において、横軸は、データ本体のパルス幅Δt_fc、縦軸は、対応するチップ電流Iceを示している。
【0068】
パルス幅がΔsの場合は、チップ電流がゼロに対応しており、パルス幅が(ΔT−Δc)の場合は、チップ電流が最大値Ice_maxに対応している。そして、パルス幅Δsから(ΔT−Δc)の間は、単調増加でチップ電流ゼロからIce_maxに対応するものとしている。
【0069】
同様に、図3(d)のゲート駆動電圧信号のデータ本体のパルス幅Δt_fdとゲート駆動電圧Vgとの関係は、図5(c)のように表される。図5(c)において、横軸は、データ本体のパルス幅Δt_fd、縦軸は、対応するゲート駆動電圧Vgを示している。
【0070】
パルス幅がΔsの場合は、ゲート駆動電圧が最小値Vg_minに対応しており、パルス幅が(ΔT−Δc)の場合は、ゲート駆動電圧が最大値Vg_maxに対応している。そして、パルス幅Δsから(ΔT−Δc)の間は、単調増加でゲート駆動電圧Vg_minからVg_maxに対応するものとしている。
【0071】
符号化伝送部49が外部装置へ出力する二値論理信号は、以上に説明したように、フレームの属性を示すための識別符号部と、その属性に応じたデータ内容の詳細を示すためのデータ本体とから構成された形態となる。
【0072】
なお、チップ温度信号はチップ温度信号生成部45で、チップ電流信号はチップ電流信号生成部46で、ゲート駆動電圧信号はゲート駆動電圧信号生成部48で、それぞれ同一のキャリア波であるキャリア波生成手段47の第一キャリア波471と突き合わせて大小比較が行われ、パルス幅変調される(図1参照)。このため、各信号のパルス幅の起点となる時刻tuは、キャリア波生成手段47の働きにより、同期することとなる。
【0073】
また、キャリア波生成手段47からは第二キャリア波472が符号化伝送部49へ出力される。この第二キャリア波472は、第一キャリア波471と同期した信号であり、識別符号部の矩形状パルス信号のキャリア波となる。
【0074】
さらに、この第二キャリア波472は、第一キャリア波471の開始タイミングptu(=三角波状に示される第一キャリア波471の谷部分であり、図1参照)からΔsの区間で、識別符号部で表現される最大数の矩形状パルスを持ち、Δsの区間を経た後は、論理0となる信号である。
【0075】
図1に示したように、符号化伝送部49には、以下の5つの信号が入力されることとなる。
入力信号1:異常検出回路42からの異常検出の有無と、異常検出有り時の検出要因の情報
入力信号2:チップ温度信号生成部45からのチップ温度のパルス幅変調信号
入力信号3:チップ電流信号生成部46からの半導体スイッチ素子の電流量(チップ電流量)のパルス幅変調信号
入力信号4:ゲート駆動電圧信号生成部48からのゲート駆動電圧量のパルス幅変調信号
入力信号5:キャリア波生成手段47からの第一キャリア波471、および第二キャリア波472
【0076】
符号化伝送部49は、入力信号1(異常検出回路42からの異常検出の有無と異常検出有り時の検出要因の情報)および第一キャリア波471に基づいて、先の図4に従ったパルス幅変調信号を生成する。すなわち、符号化伝送部49は、異常検出要因が短絡電流の場合は、パルス幅Δt_fa1、過熱の場合は、パルス幅Δt_fa2、ゲート駆動電圧低下の場合は、パルス幅Δt_fa3、その他の要因の場合は、パルス幅Δt_fa3として、パルス幅変調信号を生成する。
【0077】
次に、符号化伝送部49は、外部装置へ次周期に送出するデータ(異常検出要因あるいは所定の物理量)を選定し、選定データの波形を生成する。この際、符号化伝送部49は、まず、第二キャリア波472に対して選定データの識別符号部の矩形状パルス数と一致する数までのパルスを通過させ、これ以降の信号論理を0とすることで、識別符号部の信号を生成する。すなわち、例えば、チップ温度信号のデータ波形を生成するには、第二キャリア波472の先頭から3つの矩形状パルスを通過させ、4番目以降のパルスは通過させずに信号論理を0とする。
【0078】
また、同時に、符号化伝送部49は、第一キャリア波471の開始タイミングptuから時間Δsの区間においては、選定データのデータ本体として該当するデータのパルス幅変調信号と、上記の識別符号部の信号との間で論理積をとったものを出力する。さらに、符号化伝送部49は、時間Δs経過後、時間ΔTまでは、当該パルス幅変調信号そのものを出力して、二値論理のデータ波形を生成する。
【0079】
なお、符号化伝送部49が外部装置へ伝送する二値論理信号のデータの選定は、半導体電力変換装置の仕様に応じて様々に設定され得る。例えば、データ更新の優先順が異常検出、チップ電流、チップ温度、及び、ゲート駆動電圧の順であった場合を想定すると、次のような設定が考えられる。
・送信データとしてチップ電流を毎周期送信しつつも、異常を検出した場合には次タイミングの送信データを異常検出信号とする。
・また、チップ電流よりも変化速度が遅い信号であるチップ温度、ゲート駆動電圧については、値の変化が有った場合にのみデータを送信する。あるいは、チップ電流データを所定の回数だけ送信した後に、チップ温度、ゲート駆動電圧のデータを送信する。
【0080】
以上の内容をまとめると、本実施の形態1における半導体電力変換装置は、次のような構成および効果を有する。符号化伝送部49は、二値論理信号を生成する。この二値論理信号は、信号論理0での電位が半導体スイッチ素子1aのエミッタEmの電位VNLとなる信号である。該二値論理信号は、絶縁素子7bを介して別な基準電位VSecuを持つ外部装置の電圧信号として伝送される。
【0081】
外部装置側では、上述のように、受信した二値論理信号の符号識別部の矩形状パルス数をカウントして、当該データフレームがどの種類のデータであるかを判別する。次いで、データ本体のパルス幅の計測結果に基づき、先の図4、図5に示すパルス幅とデータの示す内容、物理量との対照関係から、データを復号する。なお、外部装置は、あらかじめ、この図4、図5に示す関係を、テーブル参照データ等の形式で記録している。
【0082】
外部装置での二値論理信号の復号は、例えば、マイクロプロセッサなどの演算用LSIにおける信号の立上がり、立下がりの回数を計数するイベントカウンタ機能と、信号の立上がり、立下がりのイベントの発生間隔を計測するイベント間隔計数機能とを用いるなどして実現される。このため、復号にあたっての演算負荷は、少なくて済む。
【0083】
下アーム側の半導体スイッチ素子1aに関わる駆動回路部5、状態検知情報伝送回路部4bの半導体スイッチ素子のスイッチング、異常検出、状態の検出と外部装置への情報伝送の動作、作用は、基準電位と電源電圧が異なることを除いて、上アーム側の半導体スイッチ素子1bに関わる駆動回路部5、状態検知情報伝送回路部4bと同様の動作、作用となる。
【0084】
すなわち、半導体スイッチ素子1bのゲートPWM信号は、基準電位をVsecuとする矩形波信号として上アーム側の絶縁素子6へ出力される。そして、絶縁素子6は、半導体スイッチ素子1bのエミッタEmの電位VNHを基準として、ゲートPWM信号を上アーム側の駆動回路部5へ伝送する。駆動回路部5内のゲート駆動アンプ52は、半導体スイッチ素子1bのスイッチオンの場合にはハイ電圧VCHとし、スイッチオフの場合にはロー電圧VNHとして、ゲート電極Gに印加する電圧を切替えてスイッチングを行う。
【0085】
また、上アーム側の状態検知情報伝送回路部4bは、半導体スイッチ素子1bの異常の検出、チップ温度、チップ電流、ゲート駆動電圧の検出を行う。さらに、上アーム側の状態検知情報伝送回路部4bは、下アーム側と同様な識別符号部とデータ本体をデータフレームの一単位とする二値論理信号を生成し、上アーム側の絶縁素子7bを介して外部装置へ伝送する。ここで、上アーム側の二値論理信号は、信号論理0での電位が半導体スイッチ素子1bのエミッタEmの電位VNHとなる信号である。上アーム側の絶縁素子7bから該二値論理信号を入力する外部装置の基準電位は、VSecuである。
【0086】
以上のように、実施の形態1によれば、異常検出要因および所定の物理量を、単一の絶縁素子を介して基準電位が異なる外部装置へ、1つの状態検知情報に対応した1つのデータフレームごとに、二値論理信号により伝送する機能を備えている。これにより、従来の半導体電力変換装置と比較して、伝送する情報の種類が増加した場合にも、絶縁素子の使用数量が少なくて済む。この結果、装置価格の上昇、あるいは装置の大型化を避けることができる。
【0087】
さらに、絶縁素子としてフォトカプラを用いる際に、自動車向けなどフォトカプラの温度が100℃以上の高温に達する使われ方となった場合にも、フォトカプラの使用数量を少なく抑えることで、半導体電力変換装置自体の故障率を低く抑えることができる。
【0088】
さらに、半導体電力変換装置から外部装置へ伝送する情報として、従来技術での半導体スイッチ素子の異常検出の有無と半導体スイッチ素子の温度に加えて、さらに、半導体スイッチ素子の異常検出時の検出要因と、半導体スイッチ素子の電流とゲート駆動電圧が追加となる。このため、半導体スイッチ素子の異常によってスイッチオフ状態となった場合にも、情報を受けた外部装置側で、検出要因に応じて、従来よりも適切にゲートPWM信号を設定することが可能となる。
【0089】
すなわち、異常発生時に、短絡電流、過熱、ゲート駆動電圧低下の各異常要因と、外部装置が認識している半導体電力変換装置の動作履歴から、従来よりも適切にゲートPWM信号を設定することが可能となる。具体的には、半導体電力変換装置の動作を停止する、あるいは、取り扱い電力を制限しつつ動作を継続するといった判定を、速く詳細に行い、ゲートPWM信号に反映して、半導体電力変換装置のスイッチングを制御することができる。
【0090】
さらに、半導体スイッチ素子の電流とゲート駆動電圧の情報を外部装置に伝送することで、半導体スイッチ素子、および半導体スイッチ素子のゲート電極に印加する電圧信号を処理する駆動回路部の動作を監視し、劣化状況を把握することなどが可能となる。これは、例えば、半導体スイッチ素子のチップを接合、固定するチップ下面のハンダの劣化による接合部の電気抵抗の増加や、駆動回路部でスイッチングの電圧信号のハイ電圧、ロー電圧を生成するアンプ回路のトランジスタの特性劣化などを、他相の半導体スイッチ素子のそれと突き合わせて比較することで、半導体スイッチ素子の劣化状況を把握できる。
【0091】
このように、半導体スイッチ素子の劣化状況を把握できれば、半導体電力変換装置の設計段階において、半導体スイッチ素子の劣化を認識できない前提に従って、あらかじめ耐久性能に対して余裕(マージン)を持たせた設計を施す必要がない。この結果、半導体電力変換装置のコストを低減し、容積を小型化することが可能となる。
【0092】
さらに、複数の情報の外部装置への伝送において、識別符号部とデータ本体をデータフレームの一単位として伝送している。このことから、情報を受信する外部装置側では、データフレーム一単位の伝送ごとに1つの情報を復号し、情報を更新可能である。情報更新の最短周期は、データフレーム一単位の送信に要する時間である。
【0093】
そこで、短周期で更新すべき情報と、長周期での更新でよい情報とを合わせ、短周期で更新すべき情報の伝送の合間に、長周期での更新でよい情報を少ない頻度で挿入して伝送することができる。これにより、情報の更新周期という観点からも、問題なく単一の絶縁素子を介して情報伝送することが可能となる。
【0094】
さらに、外部装置へ伝送するデータフレームの識別符号部は、所定時間内のパルス信号数として符号化したもので表している。これにより、伝送するデータ種類の識別にマイクロプロセッサなどの演算用LSIを利用する場合に、信号の立上がり、立下がりの回数を計数するイベントカウンタ機能を用いることができ、演算負荷が少なくて済む。また、電子回路を利用する場合には、復号用の回路の規模が小さくて済むという効果がある。
【0095】
さらに、外部装置へ伝送する半導体スイッチ素子の異常検出時の検出要因、温度、電流、ゲート駆動電圧は、データフレーム内のデータ本体のパルス幅として表したものである。このため、情報を受信する外部装置側では、絶縁素子からの入力信号処理回路をデータの種別に因らず、共通に適用できる。
【0096】
さらに、入力信号処理回路へマイクロプロセッサなどの演算用LSIを利用する場合には、信号の立上がり、立下がりのイベントの発生間隔を計測するイベント間隔計数機能を用いることができ、同様に演算負荷が少なくて済むという効果がある。これは、半導体電力変換装置から情報伝送を受ける外部装置側でも、データの復号に必要な回路規模、演算負荷の増大を抑制することにつながり、サイズの小型化や低コスト化の効果がある。
【0097】
なお、本実施の形態1では、下アーム側の状態検知情報伝送回路部4bから出力される二値論理信号の論理0の電位を、基準電位である半導体スイッチ素子1aのエミッタEmの電位VNLとし、上アーム側の状態検知情報伝送回路部4bから出力される二値論理信号の論理0の電位を、基準電位である半導体スイッチ素子1bのエミッタEmの電位VNHとして説明した。しかしながら、本願発明は、必ずしもこの通りでなくともよい。例えば、それぞれの信号論理0と信号論理1の電位が入れ替わり、下アーム側の二値論理信号の論理1の電位がVNL、上アーム側の二値論理信号の論理1の電位がVNHであってもよい。
【0098】
実施の形態2.
本実施の形態2では、フレームの属性を識別するための識別符号部の波形が、先の実施の形態1とは異なる場合について説明する。図6は、本発明の実施の形態2における半導体電力変換装置が外部装置へ伝送する二値論理信号のデータフレームの波形説明図である。当該信号は、時間ΔTを送信データの更新周期としており、時間ΔTごとに1つのデータフレームを送信する。
【0099】
先の実施の形態1では、異常検出信号、チップ温度信号、チップ電流信号、ゲート駆動電圧信号のいずれであるかを、送信データの識別符号部における矩形状パルスの数によって識別していた。これに対して、本実施の形態2では、図6に示すように、時刻tu_rから時刻tu_s迄の間を調整範囲とするパルス幅変調信号のパルス幅によって、当該データフレームの属性を識別するものである。すなわち、本実施の形態2における識別符号部は、パルス数の代わりにパルス幅によって、フレームの属性の識別を可能としている。
【0100】
識別符号部のパルス幅変調信号は、時刻tuを起点とする矩形状パルス2周期を経た後、時刻tu_rから時刻tu_s迄の間で論理0から論理1に立上がる。その後、データ本体のパルス幅を表現するタイミングで、論理1から論理0に立下がる。すなわち、識別符号部のパルス幅変調信号は、データ本体のパルス幅変調信号と一体となった1つの矩形状パルス信号である。
【0101】
識別符号部のパルス幅変調信号は、時刻tuを起点として、下限が時刻tuから時刻tu_rまでの時間Δp、上限が時刻tuから時刻tu_sまでの時間Δsとなる範囲内で論理0から論理1に立上がるタイミングが調整される。
【0102】
図7は、本発明の実施の形態2における二値論理信号のパルス幅とデータ種類との関係を示す説明図である。識別符号部のパルス幅変調信号の計測時間Δt_pと、当該データフレームがどの種類のデータであるかを示す符号の識別との関係は、図7のように表される。図7において、横軸は、識別符号部のパルス幅変調信号の計測時間Δt_p、縦軸は、対応するデータの種類を示している。
【0103】
以下の4種のデータの属性を識別するために、パルス幅(計測時間Δt_pに相当)の範囲がそれぞれ割り当てられている。
(1)計測時間Δt_pがΔpからΔty1の場合 :異常検出
(2)計測時間Δt_pがΔty1からΔty2の場合:チップ温度
(3)計測時間Δt_pがΔty2からΔty3の場合:チップ電流
(4)計測時間Δt_pがΔty3からΔsの場合 :ゲート駆動電圧
【0104】
従って、識別符号部のパルス幅変調信号の論理0から論理1への立上がりは、計測時間Δt_pが各区分領域ごとの代表として、ΔpからΔty1の間ではΔt_p1、Δty1からΔty2の間ではΔt_p2、Δty3からΔty4の間ではΔt_p3、Δty3からΔsの間ではΔt_p4となるタイミングに設定される。
【0105】
このように、符号化伝送部49は、外部装置への二値論理信号の伝送において、識別符号部のパルス幅変調信号の論理0から論理1への立上がりタイミングを、該データフレームのデータ種類に対応して、時刻tuを起点として時間Δt_p1、Δt_p2、Δt_p3、Δt_p4のいずれかに設定することとなる。
【0106】
なお、各データ本体のパルス幅変調信号は、先の実施の形態1の場合と同じく、下限パルス幅が時刻tuから時刻tu_sまでの時間Δs、上限パルス幅が時刻tuから時刻tu_dまでの時間(ΔT−Δc)の範囲内でパルス幅が調整される。データ本体のパルス幅変調信号のパルス幅と異常検出要因との関係は、先の図4に、チップ温度Tjとの関係は先の図5(a)に、チップ電流Iceとの関係は先の図5(b)に、ゲート駆動電圧Vgとの関係は先の図5(c)に、それぞれ示されたように、先の実施の形態1と同じである。
【0107】
次に、本実施の形態2における半導体電力変換装置100の動作について説明する。本実施の形態2における半導体電力変換装置100は、先の図1に示した実施の形態1における半導体電力変換装置100と比較すると、符号化伝送部49の動作が異なることを除いて。同じである。従って、異なる部分である符号化伝送部49の動作を中心に説明する。
【0108】
下アーム側の半導体スイッチ素子1aに関わる符号化伝送部49の詳細な動作は、次のようになる。まず、符号化伝送部49は、外部装置へ次周期に送出するデータ(異常検出要因あるいは所定の物理量)を選定し、選定データの波形を生成する。この際、符号化伝送部49は、まず、第二キャリア波472に対して矩形状パルスを2つ通過させるとともに、送出するデータ種別に応じて時刻t0を起点とする時間Δt_p1、Δt_p2、Δt_p3、Δt_p4の何れかのタイミングで信号を論理0から論理1へ立上げることで、識別符号部の信号を生成する。
【0109】
その後、符号化伝送部49は、選定したデータに対応し、時刻tu_sから時刻tu_dまでのパルス幅調整時間内で二値論理信号を論理1から論理0へ立下げることで、データ本体部分のパルス幅変調信号を生成する。
【0110】
以上の内容をまとめると、本実施の形態2における半導体電力変換装置は、次のような構成および効果を有する。符号化伝送部49は、二値論理信号を生成する。この二値論理信号は、信号論理0での電位が半導体スイッチ素子1aのエミッタEmの電位VNLとなる信号である。該二値論理信号は、絶縁素子7bを介して別な基準電位VSecuを持つ外部装置の電圧信号として伝送される。
【0111】
外部装置側では、上述のように、受信した二値論理信号の符号識別部の矩形状パルス2つの入力をもって、データフレームの識別符号部が始まったことを認識し、信号の起点時刻tuを識別する。次いで、信号論理0から論理1への立上がりにて、起点時刻tuからの計測時間Δt_pに基づき、先の図7に示すパルス幅とデータの種類との対照関係から、該データフレームが何れのデータであるかを判別する。
【0112】
その後、信号論理1から論理0への立下がりにて、時刻tuを起点とするデータ本体のパルス幅の計測結果に基づき、先の図4、図5のパルス幅とデータの示す内容、物理量との対照関係から、データを復号する。なお、外部装置は、あらかじめ、この図4、図5に示す関係を、テーブル参照データ等の形式で記録している。
【0113】
外部装置での二値論理信号の復号は、例えば、マイクロプロセッサなどの演算用LSIにおける信号の立上がり、立下がりの回数を計数するイベントカウンタ機能と、信号の立上がり、立下がりのイベントの発生間隔を計測するイベント間隔計数機能とを用いるなどして実現される。このため、復号にあたっての演算負荷は、少なくて済む。
【0114】
下アーム側の半導体スイッチ素子1aに関わる符号化伝送部49の動作は、基準電位と電源電圧が異なることを除いて、上アーム側の半導体スイッチ素子1bに関わる符号化伝送部49と同様の動作となる。
【0115】
以上のように、実施の形態2によれば、先の実施の形態1と同様に、異常検出要因および所定の物理量を、単一の絶縁素子を介して基準電位が異なる外部装置へ、1つの状態検知情報に対応した1つのデータフレームごとに、二値論理信号により伝送する機能を備えている。これにより、先の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0116】
なお、実施の形態2では、外部装置へ伝送するデータフレームの識別符号は、所定時間内のパルス信号幅として符号化したもので表している。これにより、伝送するデータ種類の識別にマイクロプロセッサなどの演算用LSIを利用する場合に、信号の立上がり、立下がりのイベントの発生間隔を計測するイベント間隔計数機能を用いることができ、演算負荷が少なくて済む。
【0117】
実施の形態3.
本実施の形態3では、本発明の半導体電力変換装置を、三相インバータに適用する場合について説明する。図8は、本発明の実施の形態3における三相インバータとなる半導体電力変換装置100の構成図である。図8において、半導体スイッチ素子1a、1bと逆並列に接続されたフライホイールダイオード2a、2bを単位として、2つを直列接続したアームとして構成された変換主回路110を、それぞれ三相のU相、V相、W相に対応して、3本を並列に接続している。図8においては、半導体スイッチ素子1a、1bとして、IGBTを適用した場合を表記している。
【0118】
変換主回路110の構成は、三相の各アーム同士で相似で、先の実施の形態1で説明したものと同じ構成である。三相の各アームの上側の半導体スイッチ素子1bのコレクタCは、図示されていない高電圧電源の高電位ノードPに接続されており、下側の半導体スイッチ素子1bのエミッタEmは、高電圧電源の低電位ノードNに接続されている。
【0119】
V相アームを見て、上側の半導体スイッチ素子1bのエミッタEmは、下側の半導体スイッチ素子1bのコレクタCと接続されており、その接続点は、中間ノードVとして、図示されていない三相電気負荷のV相端子に接続されている。同様に、U相アームの中間ノードUは、三相電気負荷のU相端子に、W相アームの中間ノードWは、三相電気負荷のW相端子に接続されている。三相電気負荷として、代表的には、三相交流回転機がある。
【0120】
ここで、三相アームの上側の半導体スイッチ素子1bのコレクタCは、高電圧電源の高電位ノードPに接続される。しかしながら、変換主回路を装置として配置する場合に、各アームの上側の半導体スイッチ素子1bのコレクタC間に、物理的な導電経路の距離(導電用のケーブルやバスバーの長さ)を有する。このため、このコレクタC間には、微小ながらもインダクタンス成分が生じることとなる(V相U相間にLs_1H、V相W相間にLs_2H)。
【0121】
同様に、各アームの下側の半導体スイッチ素子1aのエミッタEm間にも、インダクタンス成分が生じる(V相U相間にLs_1L、V相W相間にLs_2L)。各半導体スイッチ素子1a、1bがスイッチングを行うと、電流が断続的に流れる。このことから、この微小なインダクタンス成分に起因して、上側の半導体スイッチ素子1bのコレクタC同士、および下側の半導体スイッチ素子1aのエミッタEm同士の電位は、互いに異なるものとなる。
【0122】
このことから、特に三相の下アーム側の駆動回路部5、状態検知情報伝送回路部4bの基準電位は、互いに異なり、U相がVNUL、V相がVNVL、W相がVNWLとなる。また、上アーム側の駆動回路部5、状態検知情報伝送回路部4bの基準電位は、U相がVNUH、V相がVNVH、W相がVNWHとなる。
【0123】
以上のように、三相各アームに備わる6つの半導体スイッチ素子に対応して、外部装置へ情報伝送を行う場合には、各基準電位が異なる。このため、従来技術を適用した三相インバータでは、それぞれに絶縁素子7bを介して伝送する必要があった。これに対して、本発明によれば、異常検出の有無と検出要因、チップ温度、チップ電流、ゲート駆動電圧の情報を、1つの絶縁素子を介して伝送できる。これにより、半導体電力変換装置100の絶縁素子の使用数量を、効果的に削減できる。
【0124】
従来技術を適用した三相インバータであれば、異常検出の有無とチップ温度のみを情報伝送する場合でも、合計18個の絶縁素子が必要となっていた。これに対して、本実施の形態3の半導体電力変換装置は、情報伝送の要素として異常検出要因、チップ電流、ゲート駆動電圧の情報を追加しても、なお、絶縁素子の合計必要数は12個で済む。よって、半導体電力変換装置の価格を低減し、サイズを小型化するなど、三相インバータにおいても、先の実施の形態1、2と同様の効果を奏することができる。
【0125】
以上のように、実施の形態3によれば、先の実施の形態1、2で説明した半導体電力変換装置を三相インバータに適用することによっても、同様の効果を得ることができる。
【0126】
なお、実施の形態1〜3に記載の外部装置へ伝送する二値論理信号の波形は、一例であって、必ずしもこれに限定されない。例えば、データフレームの識別符号部が固定長Δsではなく、矩形状パルス一周期の周期を変えて(パルス周波数変調によって)、該データフレームがいずれの種類のデータであるかを識別することもできる。また、先の図5に示したデータ本体のパルス幅と、チップ温度、チップ電流、ゲート駆動電圧の物理量との関係も、適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0127】
1a、1b 半導体スイッチ素子、2a、2b フライホイールダイオード、3a、3b 温度検出用ダイオード、4b 状態検知情報伝送回路部(情報伝送回路部)、41 センス電流検出回路、411 センス抵抗、42 異常検出回路、43 チップ温度検出回路、45 チップ温度信号生成部、46 チップ電流信号生成部、47 キャリア波生成手段、471 第一キャリア波、472 第二キャリア波、48 ゲート駆動電圧信号生成部、49 符号化伝送部、5 駆動回路部、51 ゲートスイッチング処理手段、52 ゲート駆動アンプ、6、7b 絶縁素子、100 半導体電力変換装置、110 変換主回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる基準電位に基づいてスイッチング動作を行う半導体スイッチ素子を2個以上直列接続して構成され、前記半導体スイッチ素子のそれぞれのスイッチオン状態とスイッチオフ状態を切り替えて電力変換を行う半導体電力変換装置であって、
前記異なる基準電位に対応するそれぞれの半導体スイッチ素子の異常検出要因および所定の物理量を状態検知情報として検知し、基準電位が異なる外部装置へ伝送するために個別に設けられた情報伝送回路部を備え、
前記情報伝送回路部のそれぞれは、検知した前記状態検知情報に応じて、前記異常検出要因および前記所定の物理量を識別可能な二値論理信号を生成し、生成した前記二値論理信号を単一の絶縁素子を介して前記外部装置へ伝送する
ことを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体電力変換装置において、
前記情報伝送回路部のそれぞれは、検知した前記状態検知情報ごとに、前記状態検知情報の属性を示す識別符号部と、検知した前記状態検知情報の前記属性に応じた内容を示すデータ本体とから構成されたデータフレームを一単位とする前記二値論理信号を生成し、前記データフレームを一単位ごとに前記外部装置へ伝送する
ことを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体電力変換装置において、
前記情報伝送回路部のそれぞれは、前記状態検知情報の前記属性に対応してあらかじめ規定されたパルス信号数として符号化することで前記識別符号部における二値論理信号を生成する
ことを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項4】
請求項2に記載の半導体電力変換装置において、
前記情報伝送回路部のそれぞれは、前記状態検知情報の前記属性に対応してあらかじめ規定されたパルス信号幅として符号化することで前記識別符号部における二値論理信号を生成する
ことを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の半導体電力変換装置において、
前記情報伝送回路部のそれぞれは、前記状態検知情報の前記内容に対応してあらかじめ規定されたパルス信号幅として符号化することで前記データ本体における二値論理信号を生成する
ことを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれか1項に記載の半導体電力変換装置において、
前記情報伝送回路部は、前記状態検知情報の前記属性として、異常検出の有無、および前記半導体スイッチ素子の温度、電流、ゲート駆動電圧の各物理量のいずれであるかを識別可能とする前記二値論理信号を生成し、前記状態検知情報の前記内容として、前記異常検出要因の種別、および前記半導体スイッチ素子の前記温度、前記電流、前記ゲート駆動電圧の各物理量の値を識別可能とする前記二値論理信号を生成する
ことを特徴とする半導体電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−101466(P2011−101466A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253239(P2009−253239)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】