説明

半導体高分子製品に有用な単量体の新規な製造

【課題】半導体高分子の製造に有用な単量体、特に非対称フルオレン化合物の中間体を提供することである。
【解決手段】化学式(VI)の化合物:


(式中、Pはハロゲン原子から、それぞれ独立して選ばれたものであり、R1はC1〜10のアルキル基であり、R2はC1〜10のアルコキシ基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単量体の新規な合成方法、とりわけ半導体高分子の製造に有用な単量体の新規な合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気活性ポリマーは、国際公開特許90/13148号明細書に開示されている高分子発光ダイオード(「PLEDs」)、国際公開特許第96/16449号明細書に開示されている光起電装置、米国特許第5,523,555号明細書に開示されている光検知器などのような、多くの光学素子に頻繁に使われている。
【0003】
エレクトロルミネセント高分子の1種類は、例えばAdv.Mater.200012(23)1737−1750に開示されているようなポリフルオレン類である。これらポリフルオレン類は、従来の有機溶媒に溶けるという利点があり、良好なフィルム形成能を持つ。その上フルオレン単量体は、得られた高分子の位置規則性や、国際公開特許第00/55927号明細書に開示されているような異なったブロックが異なった機能を有するブロック共重合体の構造を、高いレベルで制御できるスズキまたはヤマモト重合(Suzuki or Yamamoto Polymerization)に対して敏感に反応する。
【0004】
これらポリフルオレン類のそれぞれのフルオレン繰り返し単位は通常、重合体の特性を変えるために、2つの9位に置換基がつけられる。例えば重合体の溶解性を上げるために、アルキル基が9位の置換基として用いられる。フェニル基のような他の置換基も用いられる。
【0005】
2つの9位の置換基は通常、製造を単純にするために同一であるが、これはフルオレン
繰り返し単位が、対称なフルオレン繰り返し単位を含む重合体は凝集する傾向のあるとい
う点で問題があると確認されている、対称であることを意味する。
【0006】
この問題を克服するため、国際公開特許第第00/22026号明細書や独国特許第19,846,767号明細書で開示されている、非対称のフルオレン単量体、すなわち2つの9位の置換基が異なるフルオレン単量体を製造する方向に、努力がなされている。これらの文献で開示されている工程は、フルオレノンまたはビフェニル−2−カルボン酸エステルと、2つの異なる有機金属化合物との反応を有している。
【0007】
ビフェニル−2−アミドが知られている。例えば、国際公開特許第00/00374号明細書や米国特許第6,329,534号明細書を参照。しかしこれらの開示は、重合可能な基を含むカルボキサミド類、これらの非対称な置換、またはこれらの単量体の合成方法を示していない。Tetrahedron Letters 22(39),3815−3818,1981には、ケトン類を合成するためのN−メトキシアミドと有機金属試薬との反応工程が記載されている。この反応は、アルコールを形成する過剰反応に耐性のある5員環中間体を経て進む。この開示は、非対称系、多環系、または単量体の製造に関与していない。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明者らは、非対称化合物、特に非対称フルオレン化合物を製造する従来技術に欠点があることを見出した。出発物質にエステルを用いたとき、本発明者らは、出発物質のいくつかは最初の有機金属化合物と全く反応せず、一部は第二の有機金属化合物と反応して対称なフルオレンを作ることを見出した。付加的な副生成物もできる。それゆえ所望のケトン中間体は、少量しか存在しないだけでなく、他の化合物や残留した出発物質と分離することも難しい。
【0009】
したがって、本発明の目的は、過剰反応により対称の物質を形成することに対して影響を受けず、所望の生成物を単離する難しさが存在しない、非対称の単量体を形成する物質を提供することである。さらにまた本発明の目的は、前述の物質を経由して単量体を製造する方法を提供することである。
【0010】
本発明者らは、アミドを出発物質として、非対称な置換基を持つ多環式化合物、特に単量体としての使用に好適な化合物を製造する方法を発明した。アミドの反応に加え本発明の方法は、得られたケトンと、さらに等量の異なる有機金属試薬を反応させる工程、及び脱離閉環反応の更なる工程を有する。
【0011】
したがって、第一の態様によれば、本発明は化学式(IV)の化合物を製造するスキーム1に示す方法を提供する。
【0012】
【化1】

【0013】
前記の方法は次の工程を含む。
【0014】
a)化学式(I)の化合物と化学式S−Mの化合物を反応させ、化学式(II)の化合物を得る工程、
b)化学式(II)の化合物と化学式S−Mの化合物を反応させ、化学式(III)の化合物を得る工程、及び
c)化学式(III)の化合物からHXを脱離させて、化学式(IV)の化合物を得る工程。
【0015】
式中、ArおよびArはそれぞれ独立して置換されていてもよいアリール基または
ヘテロアリール基から選ばれ;
XはO、S、NH、及びNRから選ばれ;
Lは結合、または1〜2原子の連結基であり、
R及びRはそれぞれ独立して置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、及びヘテロアリール基から選ばれ;
はアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアリールチオ基、及びアリールアルキルチオ基から成る群から選ばれ;
HはArの炭素原子C’と結合し;
C’及びC=Xの炭素原子は、3〜5個の原子によって離れており;
及びSは置換されていてもよいアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基からそれぞれ選ばれ;
Mは金属を含み;そして、
Mは炭素−金属結合によってS及びSと結合している。
【0016】
好ましくは、アルキル基はC〜C20のアルキル基で、それぞれ直鎖、分岐、または環状のものでよく、1つまたはそれ以上の隣接していないCH基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基、特に好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、s−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、またはシクロオクチル基によって置き換わっていてもよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0017】
好ましくは、アリールアルキル基はC〜C20のアリールアルキル基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基、特に好ましくは、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジ−i−プロピルフェニル基、2,6−ジ−t−ブチルフェニル基、o−t−ブチルフェニル基、m−t−ブチルフェニル基、またはp−t−ブチルフェニル基によって置き換わっていてもよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0018】
好ましくは、アルキルアリール基はC〜C20のアルキルアリール基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基、特に好ましくは、ベンジル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、またはナフタリニルメチル基によって置き換わっていてもよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0019】
好ましくは、アリール基はC〜C20のアリール基で、特に好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、トリフェニレニル基、[1,1’,3’,1”]ターフェニル−2’−イル基、ビナフチル基、またはフェナントレニル基である。
【0020】
好ましくは、ヘテロアリール基はC〜C20のヘテロアリール基で、特に好ましくは、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、キノリニル基、イソキノリニル基、アクリジニル基、ベンゾキノリニル基、またはベンゾイソキノリニル基である。
【0021】
好ましくは、アルコキシ基はC〜C20のアルコキシ基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基、特に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、またはt−ブトキシ基によって置き換わっていてもよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0022】
好ましくは、アリールオキシ基はC〜C20のアリールオキシ基で、特に好ましくは、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、アントラセニルオキシ基、またはフェナントレニルオキシ基である。
【0023】
好ましくは、アリールアルキルオキシ基はC〜C20のアリールアルキルオキシ基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基によって置き換わっていてもよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0024】
好ましくは、アルキルアリールオキシ基はC〜C20のアルキルアリールオキシ基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基によって置き換わっていてもよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0025】
好ましくは、アルキルチオ基はC〜C20のアルキルチオ基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基によって置き換わっていてもよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0026】
好ましくは、アリールチオ基はC〜C20のアリールチオ基である。
【0027】
好ましくは、アルキルアリールチオ基はC〜C20のアルキルアリールチオ基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基によって置き換わっていてもよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0028】
好ましくは、アリールアルキルチオ基はC〜C20のアリールアルキルチオ基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基によって置き換わっていてもよく、R10、11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0029】
中間の生成物(II)及び(III)は、本発明の第一の態様の方法によってその後に続く工程の前に、単離されていても、単離されていなくてもよい。
【0030】
それぞれのアリール基、Ar及びArは、単環系または縮合環系化合物を含みうる。
【0031】
好ましくは、Ar及びArは、それぞれフェニル基または置換フェニル基である。
【0032】
好ましくは、XはOまたはSである。
【0033】
好ましくは、Lは結合である。
【0034】
好ましくは、RはC10のアルキル基である。
【0035】
好ましくは、RはC10のアルキル基である。
【0036】
好ましくは、RはC10のアルコキシ基である。
【0037】
好ましくは、Mはリチウム、亜鉛、またはMg−Halで、この際Halはハロゲン原子である。
【0038】
好ましくは、S及びSはそれぞれ独立して置換されていてもよいアリール基、またはアルキル基から選ばれ、特に好ましくはS及びSはお互いに異なっているものである。
【0039】
本発明の第1の態様の第1の好ましい実施形態において、化学式(I)の化合物のAr及びArは、それぞれ重合可能な置換基Pで置換されたものである。
【0040】
本発明の第1の態様の第2の好ましい実施形態においては、化学式(II)、(III)、または(IV)の化合物のそれぞれのAr及びArを、重合可能な置換基Pで置換する更なる工程を有する。
【0041】
好ましくは、重合可能な置換基Pは重縮合反応、さらに好ましくはニッケルまたはパラジウム錯体触媒との金属挿入反応に関与することができる、それぞれ独立した脱離基である。最も好ましくは、Pがそれぞれ独立してハロゲン原子(好ましくは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子、最も好ましくは臭素原子)から選ばれるか;ホウ素酸基、ホウ素酸エステル基及びボラン基から選ばれるホウ素誘導体基から選ばれるか;またはZが置換されていてもよいアルキル基及びアリール基から成る群より選ばれた化学式−O−SO−Zの一部である。
【0042】
本発明の第1の態様の方法は、好ましくは、重合可能な置換基Pの反応によって、化学式(IV)の化合物を重合する工程を含む。重合の1つの好ましい方法によれば、それぞれの重合可能な置換基Pはハロゲン原子であり、化学式(IV)の化合物を、化学式(IV)の化合物の重合を触媒するのに好適な触媒量のニッケル(0)触媒を含む反応混合物中で重合させる。
【0043】
重合のもう1つの好ましい方法によれば、重合可能な置換基Pの少なくとも1つがホウ素誘導体基であり、化学式(IV)の化合物を、化学式(IV)の化合物の重合を触媒するのに好適な触媒量のパラジウム触媒と、ホウ素誘導体基をホウ素酸エステルアニオン基に変換させるのに十分な量の塩基とを含む反応混合物中で重合させる。
【0044】
化学式(IV)の化合物は、重合前に形成された反応混合物から単離されていても、単離されていなくてもよい。
【0045】
第2の態様によれば、本発明は光学素子または光学素子の構成成分の製造方法を提供し、その方法は基板を準備すること、本発明の第一の態様に従って重合体を製造すること、及び基板上に重合体を蒸着させることを含む。好ましくは、光学素子はエレクトロルミネセント素子である。
【0046】
第3の態様によれば、本発明は置換されていてもよい化学式(V)の化合物を提供する:
【0047】
【化2】

【0048】
式中、Ar、Ar、L、X、R、及びRは図1の化学式(I)で定義されている;Pはハロゲン原子、好ましくは塩素原子、臭素原子、もしくはヨウ素原子、最も好ましくは臭素原子、またはホウ素酸基、ホウ素酸エステル基、及びボラン基から選ばれるホウ素誘導体基であり、HはArの炭素原子C’と結合しており、C’とC=Xの炭素原子は3個から5個の原子によって離れている。
【0049】
好ましくは、Ar及びArのそれぞれはフェニル基、または置換フェニル基である。
【0050】
好ましくは、XはO、Sである。
【0051】
好ましくは、Lは結合である。
【0052】
好ましくは、Pはハロゲン原子、またはホウ素酸基、ホウ素酸エステル基、及びボラン基から選ばれるホウ素誘導体基から、それぞれ独立して選ばれる。
【0053】
好ましくは、RはC10のアルキル基である。
【0054】
好ましくは、RはC10のアルコキシ基である。
【0055】
好ましくは、本発明の第3の様態の化合物は、化学式(VI)の化合物である:
【0056】
【化3】

【0057】
式中、P、R、Rは上記の化学式(V)で定義されている。
【0058】
本発明者らは驚くことに、化学式(IV)の化合物が、対称な化合物を作る過剰反応なしに、本発明の方法によって作ることができ、生成物が高純度で得られることを見出した。特に化学式(IV)の化合物は、化学式(VI)の化合物を使って得ることができる。さらに本発明者らは驚くことに、従来技術の方法が、有機リチウムのようなより反応性に富む試薬にしか効果的でないことに反して、本発明の方法は標準的な有機金属試薬(例えば有機リチウムまたはグリニャール試薬)に効果的であるということを見出した。最終的に、本発明者らは、上記の従来技術の方法によるよりも、本発明の方法によって、置換基S及び/またはSのより広範囲のものが生成できることを見出した。結果として、広範囲の非対称な単量体への容易な経路は、改良された溶解性、形態などを持つ重合体及び共重合体の合成に関して、より大きな柔軟性を次々に作ることに利用されうる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
発明の詳細な説明
本発明の方法は、例えば2つの置換基が特にフェニル基のような芳香族、2つの置換基が特にC10の分岐状または直鎖状のアルキル基のような脂肪族、または1つの置換基が芳香族でもう1つの置換基が脂肪族のような、対称または非対称な化合物、特に対称または非対称なフルオレン類を作るために利用されうる。それゆえ、異なる置換基やそれにより異なる電気的性質を持った、広範囲の物質を製造することができる。
【0060】
この方法により作ることができる非対称な化合物の例としては、下記に図示したような非対称なフルオレン及び非対称なインデノフルオレンが挙げられる:
【0061】
【化4−1】

【0062】
【化4−2】

【0063】
【化4−3】

【0064】
本発明によって得られる物質は、特に電気活性高分子、さらに言えば半導体高分子を生成するための単量体として有用である。これらの高分子は、単独重合体または共重合体である。
【0065】
本発明の単量体には、好ましくは、直鎖の重合体が作られるための2つの反応性基Pだけでなく、例えば架橋重合体を製造するために、2つのP基より多くの反応性基Pを持った単量体が含まれ、これもまた本発明の範囲内である。
【0066】
本発明の非対称な単量体は、以下のS及びSの組み合わせの範囲から作られるが、その組み合わせに限定されない:
=非置換のフェニル基;S=1つもしくはそれ以上のアルキル基またはアルコキシ基を有するフェニル基;
及びSは両方ともフェニル基で、それぞれ異なるアルキル基またはアルコキシ基を有する、及び/または、違う位置に同一のアルキル基またはアルコキシ基を有する;
=置換されていてもよいフェニル基またはヘテロアリール基;S=置換されていてもよいアルキル基;
=置換されていてもよいフェニル基;S=置換されていてもよいヘテロアリール基。
【0067】
本発明の化学式(IV)の化合物は、好ましくは置換基S及びSを有するフルオレンである。
【0068】
本発明の単量体を使って作られた重合体は、単独重合体または共重合体である。本発明の単量体とともに重合に使われるための広範囲のコモノマーは、当業者には明らかであろう。コモノマーの例としては、例えば国際公開特許第99/54385号明細書に開示されているトリアリールアミン類、及び例えば国際公開特許第00/46321号明細書や国際公開00/55927号明細書に開示されているヘテロアリール単位が挙げられる。
【0069】
本発明の重合体が共重合体の場合、本発明の繰り返し単位とともに、1つまたはそれ以上の異なった相互の繰り返し単位を持っていてもよい。相互の繰り返し単位の一類は、アリーレン繰り返し単位、特にJ.Appl.Phys.1996,79,934に開示されている1,4−フェニレン繰り返し単位、欧州特許第0842208号明細書に開示されているフルオレン繰り返し単位、例えばMacromolecules,2000,33(6),2016−2020で開示されているトランス−インデノフルオレン繰り返し単位、例えば欧州特許第0707020号明細書に開示されているスピロビフルオレン繰り返し単位、及び国際公開03/020790号明細書に開示されているスチルベン繰り返し単位(通常「OPV」繰り返し単位として知られている)、などである。これらそれぞれの繰り返し単位は、置換されていてもよい。置換基の例は、C20のアルキル基、またはアルコキシ基のような可溶化させる置換基、フッ素基、ニトロ基、またはシアノ基のような電子吸引性基、及び例えばtert−ブチル基、または置換されていてもよいアリール基のように嵩高い、重合体のガラス転移温度(Tg)を上昇させる置換基を含む。
【0070】
そのような共重合体の特に好ましいトリアリールアミン繰り返し単位としては、化学式1〜6の単位が挙げられる:
【0071】
【化5】

【0072】
X及びYは、同一または異なっていてもよい置換基である。A、B、C、及びDは同一または異なっていてもよい置換基である。1つまたはそれ以上のX、Y、A、B、C、及びDは、アルキル基、アリール基、パーフルオロアルキル基、チオアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基から成る群より、独立して選ばれるのが好ましい。1つまたはそれ以上のX、Y、A、B、C、及びDは水素原子であってもよい。1つまたはそれ以上のX、Y、A、B、C、及びDは、それぞれ独立した非置換のイソブチル基、n−アルキル基、n−アルコキシ基、またはトリフルオロメチル基であることが好ましい。なぜならばそれらは、HOMOレベルを選択するのを助けること、及び/または重合体の溶解性を改良することに好適だからである。
【0073】
このような共重合体の、ヘテロアリール基繰り返し単位の特に好ましいものとしては、化学式7〜24の単位が挙げられる:
【0074】
【化6】

【0075】
式中、R及びRは、同一または異なっており、それぞれ独立した置換基である。好ましくは、1つまたはそれ以上のR、R、R、またはRは水素原子、アルキル基、アリール基、パーフルオロアルキル基、チオアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、またはアリールアルキル基から選ばれる。これらの基は、X、Y、A、B、C、及びDに関して議論した同様の理由で好ましい。実用的な理由から、好ましくはRとRは同一である。より好ましくは、それらは同一で、それぞれフェニル基である。
【0076】
【化7−1】

【0077】
【化7−2】

【0078】
【化7−3】

【0079】
【化7−4】

【0080】
式中Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、またはアルキルアリールオキシ基からそれぞれ独立して選ばれる。
【0081】
好ましくは、置換されていてもよいアルキル基は、C〜C20のアルキルで、それぞれ直鎖状、分岐状、または環状でよく、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基、特に好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、s−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、またはシクロオクチル基によって置き換わっていてもよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0082】
好ましくは、アリールアルキル基はC〜C20のアリールアルキル基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基、特に好ましくは、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジ−i−プロピルフェニル基、2,6−ジ−t−ブチルフェニル基、o−t−ブチルフェニル基、m−t−ブチルフェニル基、またはp−t−ブチルフェニル基によって置き換わっていてもよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0083】
好ましくは、アルキルアリール基はC〜C20のアルキルアリール基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基、特に好ましくは、ベンジル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、またはナフタリニルメチル基によって置き換わっていて
もよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0084】
好ましくは、アリール基はC〜C20のアリール基で、特に好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、トリフェニレニル基、[1,1’,3’,1”]ターフェニル−2’−イル基、ビナフチル基、またはフェナントレニル基である。
【0085】
好ましくは、ヘテロアリール基はC〜C20のヘテロアリール基で、特に好ましくは、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、キノリニル基、イソキノリニル基、アクリジニル基、ベンゾキノリニル基、またはベンゾイソキノリニル基である。
【0086】
好ましくは、アルコキシ基はC〜C20のアルコキシ基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基、特に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、またはt−ブトキシ基によって置き換わっていてもよく、R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0087】
好ましくは、アリールオキシ基はC〜C20のアリールオキシ基で、特に好ましくは、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、アントラセニルオキシ基、またはフェナントレニルオキシ基である。
【0088】
好ましくは、アルキルアリールオキシ基はC〜C20のアルキルアリールオキシ基で、1つまたはそれ以上の隣接していないCH2基は、酸素、硫黄、−CO−基、−COO−基、−O−CO−基、−NR10−基、−(NR1112−A基、またはCONR13−基によって置き換わっていてもよい。R10、R11、R12、R13は同一または異なっており、水素原子、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素ラジカルである。
【0089】
この重合体は、正孔輸送、電子輸送及び/または放出特性を持っている。この重合体は、これらの特性の中の1つまたはそれ以上の特性を持っている。この重合体がこれらの特性の中の1つより多くの特性を持っている場合、異なる特性は、特に国際公開特許第第00/55927号明細書に記述されている重合体の主鎖のセグメントや、国際公開特許第02/26859号明細書に記述されているペンダント基のような、重合体の異なるセグメントによって与えられている。あるいは、もし本発明の重合体が正孔輸送、電子輸送、及び電子放出の特性の中で、1つまたは2つのみの特性しか持っていないのであれば、その重合体は、残りの必要とする特性を持つ1つまたはそれ以上の重合体と混合してもよい。
【0090】
これらの単量体の好ましい重合方法は、例えば国際公開特許第00/53656号明細書に記載されているスズキ重合(Suzuki Polymerisation)や、例えばT.Yamamoto,“Electrically Conducting And Thermally Stable π−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes”,Progress in Polymer Science 1993,17,1153−1205 or Stille coupling.に記載されているヤマモト重合(Yamamoto Polymerisation)である。例えばヤマモト重合(Yamamoto Polymerisation)による直鎖状重合体の合成では、2つの反応性ハロゲン基Pを持った単量体が使用される。同様にスズキ重合(Suzuki Polymerisation)の方法によれば、少なくとも1つの反応性基Pはホウ素誘導体基である。
【0091】
上述のハロゲンに代わるものとして、Zは上記に定義されている、化学式−O−SOZの脱離基が用いられうる。このような脱離基の具体例としては、トシレート基、メシラート基、及びトリフレート基が挙げられる。
【0092】
スズキ重合(Suzuki Polymerisation)ではPd(0)錯体またはPd(II)塩を用いる。好ましいPd(0)錯体は、Pd(PhP)のような少なくとも1つのホスフィン配位子が付いた錯体である。もう1つの好ましいホスフィン配位子は、トリス(オルト−トリル)ホスフィン、すなわちPd(o−Tol)である。
【0093】
好ましいPd(II)塩としては酢酸パラジウム、すなわちPd(OAc)が挙げられる。スズキ重合(Suzuki Polymerisation)は、例えば炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、または炭酸テトラエチルアンモニウムのような有機塩基などの、塩基の存在下で起こる。
【0094】
ヤマモト重合(Yamamoto Polymerisation)では、ビス(1,5−シクロオクタジエル)ニッケル(0)のようなNi(0)錯体を使う。
【0095】
スズキ重合(Suzuki Polymerisation)は、位置規則性を有するブロック及びランダム共重合体を作るために使う。特に、1つの反応性基Pがハロゲン基で、もう1つの反応性基Pがホウ素誘導体基のとき、ランダム共重合体ができる。それに対して、ブロックまたは位置規則性のある、特にABのような共重合体は、第一の単量体の両方の反応性基がホウ素であり、第二の単量体の両方の反応性基がハロゲン原子である場合にできる。
【0096】
本発明により作られた重合体は、前述の光学素子の任意のものに使われる。これらの素子を作る際、特に欧州特許第0880303号明細書に開示されているようなスピンコーティング、インクジェット印刷、欧州特許第0851714号明細書に開示されているようなレーザー転写、フレキソ印刷、スクリーン印刷、及びドクターブレード塗布のような技術を含むどんな範囲の技術によっても、重合体は溶液から蒸着される。PLEDは陽極と陰極との間にエレクトロルミネセント重合体を有し、基板上に支持されている。
【0097】
光学素子は、水分や酸素に敏感な傾向がある。それゆえ基板は、素子への水分と酸素の進入を防ぐための良い阻止能力を持っていたほうが好ましい。基板は通常ガラスであるが、特に素子の柔軟性が望まれるところには別の基板が使われる。例えば、米国特許第6,268,695号明細書に開示されている、プラスチックと障壁層の交互層、または欧州特許第0949850号明細書に開示されている薄いガラスのラミレートとプラスチックの交互層、のようなプラスチックを含んでもよい。
【0098】
本質的ではないが、陽極上の有機正孔注入物質層の存在は、陽極から半導体高分子の層へ正孔注入するのを助けるのに好ましい。有機正孔注入物質の例としては、欧州特許第0901176号明細書や欧州特許第0947123号明細書に開示されているPEDT/PSS、または米国特許第5,723,873号明細書や米国特許第5,798,170号明細書に開示されているポリアニリンが挙げられる。
【0099】
陰極は、電子が素子へ効果的に注入されるように選ばれ、そのようなものとしては、アルミニウム層のような単一の導電体が含まれる。
【0100】
あるいは、陽極は複数の金属、例えば国際公開特許第98/10621号明細書に開示
されているようなカルシウムとアルミニウムとの二重層、または例えば国際公開特許第0
0/48258号明細書に開示されている、電子注入を助けるフッ化リチウムのような誘
電性物質の薄層を含む。
【0101】
素子は水分や酸素の進入を防ぐため、封入材料で封入されているほうが好ましい。好適な封入材料としては、ガラス板、国際公開特許第01/81649号明細書に開示されている、高分子と誘電体の交互層のような好適な障壁特性を有するフィルム、または例えば国際公開特許第01/19142号明細書に開示されている密閉容器などである。
【0102】
実用的な素子では、少なくとも1つの電極は、光を吸収できる(光反応性素子の場合)、または光を放射できる(PLEDの場合)ように半透明である。陽極が透明の場合、それは通常インジウムスズ酸化物から成っている。
【0103】
透明な陰極の例は、例えば英国特許第2,348,316号明細書に開示されている。
【0104】
PLEDは静的な画像装置、すなわち単一像のみを映す素子である。最も簡単な場合では、素子は陽極、陰極、及びエレクトロルミネセント高分子から成り、それぞれはパターン化されていない。そのような素子は、照明への使用や固定した画像を映す標示に好適である。一方、その素子は可変画層素子、すなわちエレクトロルミネセント層の異なる範囲が独立して処置する素子である。そのような素子は、単純マトリクス型、またはアクティブマトリクス型に分かれる。
【0105】
本発明の方法により作られた重合体はまた、スイッチング素子にも使われる。特にそれらは、第一の側面と第二の側面とを有する絶縁体を持つ電界効果トランジスタに使われる;ゲート電極は絶縁体の第一の側面にあり;本発明の方法により作られた重合体は絶縁体の第二の側面にあり;重合体の上にはドレイン電極及びソース電極がある。上述のオプトエレクトロニクス素子とは違って、透明な電極はスイッチング素子には必要でないということは十分に理解できるであろう。そのような電界効果トランジスタは、集積回路に使われてもよい。
【実施例】
【0106】
2−(N−メチル−N−メトキシアミド)−4,4’−ジブロモビフェニル
【0107】
【化8】

【0108】
NMRはTMSを標準として、(特記しない限り)CDClを用い、Varian400MHz装置を用いる。
【0109】
(1)2,7−ジブロモフルオレノン
還流冷却器、排ガス洗浄装置、機械式攪拌器、及び窒素バブラーが取り付けられた3Lの丸底フラスコに、フルオレノン(100.006g、0.555mol)、五酸化リン(110.148g、0.776mol)、及び亜リン酸トリメチル(1200mL)を加えた。機械的攪拌の下、臭素(63mL、1.23mol)の亜リン酸トリメチル溶液(200mL)を素早く加えた。次いでこの透明な溶液を120℃に22時間加熱した。混合物を放置して室温に冷却し、水3Lの中へ注いだ。チオ硫酸ナトリウム(50.045g)を加えると、混合物は黄色に変わった。攪拌をそのまま1時間続け、その後黄色い固体をろ過した。この固体を、メタノール中で熱しモノ臭素化化合物を取り除き、176.183gを得た(HPLCの分析で98%の純度、収率94%)。
【0110】
HNMR(CDCl)7.73(2H,d,J2.0),7.61(2H,dd,J7.6,2.0),7.36(2H,d,J8.0);13CNMR(CDCI)142.3,137.5,135.3,127.9,123.3,121.8,109.8.
(2)4,4’−ジブロモ−2−カルボン酸−1,1’−ビフェニル
還流冷却器、窒素バブラー、及び高い位置の機械式攪拌器が取り付けられた5Lの3つ口フラスコに、2,7−ジブロモフルオレノン(533.0g、1.582mol)、水酸化カリウム(微粉末フレーク、300.0g、5.357mol、3.39当量)、及びトルエン(3000mL)を加えた。次いで得られた混合物を120℃に6時間加熱し、室温に冷却するまで放置した。この間、溶液の外観は明るい橙色の薄い懸濁液から、完全に白色の濃い懸濁液に変わった。
【0111】
機械式攪拌器を取り付けた10Lのビーカーに、脱イオン水を加え、その後冷却した懸濁液を3分以上かけて加えた。フラスコに残留した物質は、追加のトルエン(2×500mL)ですすいだ。カリウム塩が溶解するように、得られた混合物を室温で30分攪拌した。トルエン相を取り除き、脱イオン水(1000mL)で2回抽出した。その後トルエン相を廃棄し、水相を合わせて滴下漏斗から滴下した濃塩酸(10M)を用いて、pH1〜3に酸性化した。この間、生成物は白い懸濁液になった。混合物を安定させ、過剰の水をデカンテーションによって取り除いた。次いで得られた生成物スラリーをろ過し、液体がpH約3から4になるまでケークを新鮮な水(100mL)ですすいだ。ケークを風乾し、その後65℃で18時間真空乾燥した。生成物は灰色がかった固体として得られた。HNMR((CDCO)8.00(1H,d,J2.0),7.77(1H.dd,J8.0,2.4),7.57(2H,d,J8.0),7.34(1H.d,J8.4),7.29(2H,d,J8.8);13CNMR((CDCO)167.1,140.4,139.8,134.2,133.5,132.8,132.7,131.2,130.6,121.4,121.1.
(3)4,4’−ジブロモ−2−メチルエステル−1,1’−ビフェニル
還流冷却器、窒素バブラー、及び機械式攪拌器が取り付けられた5Lの3つ口丸底フラスコに、4,4’−ジブロモ−2−カルボン酸(467.8g、1.264mol)及びメタノール(3000mL)を加えた。その後硫酸(50mL)を慎重に加え、次いで混合物を90℃に21時間加熱した。この後、浮遊していた固体はすべて溶け、透明な液体へ変わった。溶液を放置して少し冷却し(約10℃)、固体の炭酸ナトリウム(〜75g)を、気泡の兆しが収まるまで分割して加えた。熱い溶液を5分間攪拌し、その後攪拌を止め、固体を安定させた。次いで、熱い溶液を、機械式攪拌器の付いた5Lの丸底フラスコへ静かに注ぎ(ろ過は、生成物の早い結晶化の原因となることがわかった)、一晩結晶化させた。固体をろ過で集め、冷メタノールで洗浄した。固体を風乾し、その後45℃で真空乾燥した。生成物を白い固形物として分離した(354g、76%)。
【0112】
HNMR(CDCI)7.99(1H,d,J2.0),7.64(1H,dd,J8.0,1.6),7.51(2H,d,J8.4),7.19(1H,d,J8.8),7.13(2H,d,J8.8),3.67(3H,s);13CNMR(CDCl)167.1,140.3,139.1,134.4,132.9,132.1,132.0,131.3,129.8,121.9,121.5,52.3.GCMS:M=370,純度99.5%+.
参考文献:J.Am.Chem.Soc.,114,15(1992)
(4)アミド中間体:2−(N,N−ジメチルアミド)−4,4’−ジブロモ−1,1’−ビフェニル
還流冷却器、窒素バブラー、500mLの目盛りつき等圧滴下漏斗、内部低温温度計(−100から30℃まで)及び機械式攪拌器が取り付けられた5Lの3つ口丸底フラスコに、4,4’−ジブロモ−2−メチルエステル−1,1’−ビフェニル(716.49g、1.936mol、1.0当量)の無水テトラヒドロフラン(1500mL)溶液を加えた。攪拌している溶液中へ、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(288g、3.0mol、1.55当量)を加え、得られた懸濁液を−20℃まで冷却した。次いで塩化イソプロピルマグネシウム(2.0MのTHF溶液)を、約1時間を超える時間をかけて加え、混合物の内温が約−5℃を超えないようにした。その後、生成した溶液を放置し、約16時間以上かけて室温まで暖めた。反応混合物を慎重にトルエン(2L)で希釈し、その後2Mの塩酸水溶液5Lが入った10Lビーカーへ入れ、反応を止めた。得られた混合物を室温で30分間攪拌し、トルエン相を分離した。水相をトルエン(2L)で抽出し、有機相を集めて、乾固するまで減圧下で濃縮した。次いで得られた生成物をメタノール(1500mL)から砕いて粉末状にした。生成物(白色固体)をろ過で集め、冷メタノール(500mL)で洗浄した。その後、生成物を45℃で16時間真空乾燥した。生成物は白色固体(521g、67%)として得られ、純度はGCMSの分析で99.5%以上であった。
【0113】
このアミドを、以下アミド1とも称し、下記のスキームに従って、様々な非対称な化合物を生成させるために使った。この際、S、S、及びMは特許請求の範囲の中で定義している。
【0114】
【化9】

【0115】
ケトン1:4,4’−ジブロモ−1,1’−ビフェニル−2−イル−4”−t−ブチルフェニルメタノン
【0116】
【化10】

【0117】
機械式攪拌器、低温温度計(−100から30℃まで)、窒素注入口及びバブラー、及び500mLの目盛り付き等圧滴下漏斗が取り付けられた3Lの3つ口丸底フラスコに、アミド1(275.67g、0.691mol、1.0当量)及び無水THF(500mL)を加えた。得られた懸濁液を窒素下で攪拌し、−5℃(MeOH−Cardice)まで冷却し、その後、塩化tert−ブチルフェニルマグネシウム(2Mのジエチルエーテル溶液、380mL、0.76mol、1.1当量)を、容器の内温が−5から0℃の間に保たれるような速度で加えた。次いで得られた懸濁液を、室温に暖まるまで放置し、16時間攪拌した。
【0118】
反応混合物をトルエン(1L)で慎重に希釈し、2Mの塩酸水溶液が入った5リットルのビーカーに注ぎ、混合物を機械式攪拌器で30分間攪拌した。攪拌器を止め、相を安定させた。有機相を残留物から真空移送で取り除き、水相を追加の1Lのトルエンで抽出した。有機相を集め、ロータリーエバポレータで減圧下、乾固するまで濃縮した。得られた粗生成物をメタノール(1250mL)中で懸濁させ、室温で16時間攪拌した(粉砕)。その後生成物を、ブフナー装置を使ったろ過により回収し、ケークを新鮮なメタノール(2×350mL)で洗浄した。このケークを風乾し、その後固体を45℃で16時間真空乾燥した。
【0119】
生成物のケトンは白色固体として得られた(266.95g、74%)。生成物をGC−MSにより分析し、m/z472(M)のところに単一のピークが見られた(推定純度99.8%)。
【0120】
非対称化合物1の前駆体:4,4’−ジブロモ−2−フェニル(4−tert−ブチルフェニル)ヒドロキシメチル−1,1’−ビフェニル
【0121】
【化11】

【0122】
低温温度計(−100から30℃まで)、磁気攪拌子、100mLの目盛り付き等圧滴下漏斗、窒素注入口及びバブラーが取り付けられた250mLの丸底フラスコに、ブロモベンゼン(7.98g、5.35mL、50.82mol、1.2当量)及び無水THF(50mL)を入れ、得られた溶液を−72℃まで冷却した(アセトン−Cardice)。N−ブチルリチウム(2.5Mのヘキサン溶液)(22.02mL、55.06mol、1.3当量)を内温が−65℃未満に保たれるように滴下した。滴下終了後、溶液を−70℃に保ち、1時間攪拌した。ケトン1(20.0g、42.35mmol、1.0当量)の無水THF(50.0mL)溶液を加え、内温を−60℃未満に保った。溶液を4時間以上かけて室温に暖め、次いで2M塩酸水溶液の中へ入れ、反応を止めた。生成物をトルエン(2×250mL)で抽出し、有機相を集め、ロータリーエバポレータで乾固するまで減圧濃縮した。IPAを加え(200mL)、生成物を16時間以上かけて結晶化させた。生成物はろ過により回収し、ケークを冷イソプロピルアルコール(50mL)で洗浄した。その後生成物を風乾し、45℃で16時間真空乾燥した。第二の生成物が液体から結晶化した。
【0123】
生成物は白色固体として得られた(18.63g、80%)。生成物をGC−MSにより分析し、m/z532のところにm/zHOのピークが見られた。純度は推定99%以上であった。
【0124】
非対称化合物1:9−フェニル−9’−(tert−ブチルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン
【0125】
【化12】

【0126】
磁気攪拌子、還流冷却器、窒素注入口及びバブラーが取り付けられた250mLの丸底フラスコに、非対称化合物1の前駆体(6.87g、12.5mmol、1.0当量)及び氷酢酸(100mL)を加えた。室温で攪拌した懸濁液に、濃塩酸(2mL)を加え、得られた懸濁液を還流するまで加熱した。還流を始めて5時間後に、反応過程での検査が、反応が終了したことを示した(GCMS)。溶液を室温に冷えるまで放置し、水(200mL)の中へ注ぎ10分間攪拌した。この結果、生成物の沈殿が起こり、この沈殿をろ過により回収した。ろ過ケークを水(2×100mL)で洗浄し、次いでメタノール(100mL)で置換洗浄した。粗生成物をアセトニトリルとトルエンとの混合液から再結晶し、白色固体の非対称化合物1が得られた(3.2g、48%)。
【0127】
HPLCは99.2%の純度を示した。GCMSは正しい生成物であることを示した(m/z532)。
【0128】
非対称化合物2の前駆体:4,4’−ジブロモ−2−ビフェニル(tert−ブチルフェニル)ヒドロキシメチル−1,1’−ビフェニル
【0129】
【化13】

【0130】
低温温度計(−100から30℃まで)、磁気攪拌子、100mLの目盛り付き等圧滴下漏斗、窒素注入口及びバブラーが取り付けられた、250mLの丸底フラスコに、4−ブロモビフェニル(15.99g、68.6mol、1.2当量)及び無水THF(100mL)を加え、得られた溶液を−72℃まで冷却した(アセトン−Cardice)。N−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液)(29.73mL、74.30mmol、1.3当量)を、内温が−65℃未満を維持するように滴下した。滴下終了後、溶液を−70℃に保ち、1時間攪拌した。ケトン1(27.0g、57.2mmol、1.0当量)の無水THF(75mL)溶液を加え、内温を−60℃より低く保った。溶液を4時間以上放置して室温に暖め、2Mの塩酸水溶液(500mL)の中へ入れ、反応を止めた。生成物をトルエン(2×350mL)中へ抽出し、有機相を集め、中性になるまで水(3×500mL)で洗浄した。有機相を集め、乾固するまでロータリーエバポレータで減圧濃縮した。アセトニトリル(200mL)を加え、生成物を16時間以上かけて結晶化させた。ろ過により生成物を回収し、ケークを冷アセトニトリルで洗浄した。生成物を風乾後、45℃で16時間真空乾燥した。第二の生成物が液体から結晶化した。
【0131】
生成物は白色固体として得られた(26.5g、74%)。生成物をGC−MSにより分析し、m/z611のところにm/z−HOのピークが見られた。純度は推定95%以上であった。
【0132】
非対称化合物2:9−ビフェニル−9−(4−tert−ブチルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン
【0133】
【化14】

【0134】
磁気攪拌子、還流冷却器、窒素注入口及びバブラーが取り付けられた250mLの丸底フラスコに、非対称化合物2の前駆体(26g、41.5mmol、1.0当量)及び氷酢酸(500mL)を加えた。室温で攪拌している懸濁液へ濃塩酸(1mL)を加え、得られた懸濁液を還流するまで加熱した。還流して2時間後、反応過程での検査が、反応が終了したことを示した(GCMS)。溶液が室温に冷えるまで放置し、水(2L)に注ぎ10分間攪拌した。これにより生成物が沈殿し、生成物をろ過で回収した。ろ過したケークを水(3×1L)で洗浄し、その後メタノール(500mL)で置換洗浄した。粗生成物を、アセトニトリルとトルエンとの混合溶媒で再結晶し、生成物を白色結晶として得た(13.7g、54%)。HPLCでは99.42%の純度を示し、GCMSでは正しい生成物であることを示した(m/z609)。
【0135】
非対称化合物3の前駆体:4,4’−ジブロモ−2−(4’−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル)−(tert−ブチルフェニル)ヒドロキシメチル−1,1−ビフェニル
【0136】
【化15】

【0137】
低温温度計(−100から+30℃まで)、機械式攪拌器、100mLの目盛り付き等圧滴下漏斗、窒素注入口及びバブラーが取り付けられた500mLの丸底フラスコに、4−tert−ブチル−4’−ブロモ−1,1’−ビフェニル(11.36g、39.28mmol、1.2当量)及び無水THF(100mL)を加え、得られた溶液を−72℃まで冷却した(アセトン−Cardice)。N−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液)(21.28mL、42.55mmol、1.3当量)を、内温が−65℃を超えないように滴下した。滴下終了後、溶液を−70℃に保ち、1時間攪拌した。ケトン1(15.45g、32.73mmol、1.0当量)の無水THF(125.0mL)溶液を加え、内温が−60℃を超えないように保った。溶液を室温になるまで4時間以上放置し、次いで2M塩酸水溶液(500mL)へ入れ、反応を止めた。生成物をトルエン(2×500mL)中へ抽出し、有機相を集め、水(3×500mL)で中性になるまで洗浄した。トルエン相を、乾固するまでロータリーエバポレータで減圧濃縮した。アセトニトリル(200mL)を加え、生成物を16時間以上かけて結晶化させた。ろ過により生成物を回収し、このケークを冷IPA(50mL)で洗浄した。生成物を風乾後、45℃で16時間真空乾燥した。第二の生成物が液体から結晶化した。
【0138】
生成物は白色固体として得られた(14g、52%)。純度は推定99%以上であった。
【0139】
非対称化合物3:9−(4’−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル)−9−(4−tert−ブチルフェニル)−2,7−ジブロモフルオレン
【0140】
【化16】

【0141】
磁気攪拌子、還流冷却器、窒素注入口及びバブラーが取り付けられた1Lの丸底フラスコに、非対称化合物3の前駆体(14g、20.5mmol、1.0当量)及び氷酢酸(500mL)を加えた。室温で攪拌している懸濁液へ濃塩酸(2mL)を加え、得られた懸濁液を還流するまで加熱した。還流して3時間後、反応過程での検査が、反応が終了したことを示した(GCMS)。溶液が室温に冷えるまで放置し、水(2L)に注ぎ10分間攪拌した。これにより生成物が沈殿し、生成物をろ過で回収した。ろ過ケークを水(2×1L)で洗浄した。粗生成物を、アセトニトリルとトルエンとの混合溶媒から再結晶し、非対称化合物3を白色固体として得た(10.63g、78%)。HPLCでは99.6%の純度を示し、GCMSは正しい生成物であることを示した(m/z664)。
【0142】
非対称化合物4の前駆体:4,4’−ジブロモ−2−(4−tert−ブチルフェニル)−2−チエニル−ヒドロキシメチル−1,1’−ビフェニル
【0143】
【化17】

【0144】
低温温度計(−100から+30℃まで)、機械式攪拌器、100mLの目盛り付き等圧滴下漏斗、窒素注入口及びバブラーが取り付けられた500mLの丸底フラスコに、2−ブロモチオフェン(6.21g、38.11mmol、1.2当量)及び無水THF(100mL)を加え、得られた溶液を−72℃まで冷却した(アセトン−cardice)。N−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液)(20.46mL、41.29mmol、1.3当量)を、内温が−65℃を超えないように滴下した。滴下終了後、溶液を−70℃に保ち1時間攪拌した。ケトン1(15.0g、31.76mmol、1.0当量)の無水THF(125.0mL)溶液を加え、内温が−60℃を超えないように保った。溶液が室温になるまで4時間以上放置し、2M塩酸水溶液中(500mL)へ入れ反応を止めた。生成物をトルエン(2×300mL)中へ抽出し、有機相を集め、水(3×500mL)で中性になるまで洗浄した。トルエン相を、乾固するまでロータリーエバポレータで減圧濃縮した。生成物はジクロロメタンとヘキサンとの(1:1)混合物を用いたカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0145】
生成物は赤色固体として得られた(15g、72%)。生成物をGCMSで分析し、m/z538のところにm/z−H2Oが見られた。純度は推定96.8%以上であった。
【0146】
非対称化合物4:9−(4−tert−ブチルフェニル)−9−チエン−2−イル−2,7−ジブロモフルオレン
【0147】
【化18】

【0148】
磁気攪拌子、還流冷却器、窒素注入口及びバブラーが取り付けられた500mLの丸底フラスコに、非対称化合物4の前駆体(15.1g、27.15mmol、1.0当量)及び氷酢酸(500mL)を加えた。室温で攪拌している懸濁液へ濃塩酸(2mL)を加え、得られた懸濁液を還流するまで加熱した。還流して4時間後、反応過程での検査が、反応が終了したことを示した(GCMS)。溶液が室温に冷えるまで放置し、水(1000mL)に注ぎ10分間攪拌した。これにより生成物の沈殿が起こり、この生成物をろ過で回収した。ろ過ケークを水(2×1L)で洗浄した。粗生成物をヘキサンで粉砕し、非対称化合物4を黒色結晶として得た(14g、90%)。
【0149】
HPLCでは80%を超える純度を示した。
【0150】
ケトン2:[4,4−ジブロモ−1,1’−ビフェニル]−2−イル−n−オクチルケトン
【0151】
【化19】

【0152】
機械式攪拌器、還流冷却器、窒素注入口及びバブラー、100mLの目盛り付き等圧滴下漏斗、低温温度計(−100から30℃まで)が取り付けられた500mLの3つ口丸底フラスコに、アミド1(30.0g、75.2mmol、1.0当量)及び無水THF(200mL)を加えた。得られた懸濁液を窒素下で攪拌し、−20℃(MeOH−Cardice)まで冷却した。臭化n−オクチルマグネシウム(2MTHF溶液、48.7mL、97.7mol、1.3当量)を、容器の内温が−10℃を超えないように滴下した。滴下終了後、溶液が室温になるまで一晩放置した。反応混合物を2M塩酸水溶液(500mL)へ注ぎ、生成物をトルエン(2×300mL)中へ抽出した。このトルエン抽出物を水(3×500mL)で洗浄した。トルエン相を、乾固するまでロータリーエバポレータで減圧濃縮した。
【0153】
粗生成物は100%ヘキサンからジクロロメタンとヘキサンとの4:1までを溶離液として用いた、カラムクロマトグラフィーで精製した。生成物は油として得られた(22.91g、収率67.4%)。GCMSはm/z452を示し、純度はほぼ100%であった。
【0154】
非対称化合物5の前駆体:4,4’−ジブロモ−2−n−オクチル−2−フェニルヒドロキシメチル−1,1’−ビフェニル
【0155】
【化20】

【0156】
低温温度計(−100から+30℃まで)、機械式攪拌器、100mLの目盛り付き等圧滴下漏斗、窒素注入口及びバブラーが取り付けられた500mLの丸底フラスコに、ブロモベンゼン(9.55g、60.79mmol、1.2当量)及び無水THF(150mL)を加え、得られた溶液を−72℃まで冷却した(アセトン−cardice)。N−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液)(26.34mL、65.86mmol、1.3当量)を、内温が−65℃を超えないように滴下した。滴下終了後、溶液を−70℃に保ち1時間攪拌した。ケトン2(22.91g、50.66mmol、1.0当量)の無水THF(125.0mL)溶液を加え、内温が−60℃を超えないように保った。溶液が室温になるまで4時間以上放置し、2M塩酸水溶液(500mL)へ注ぎ、反応を止めた。生成物をトルエン(2×300mL)中へ抽出し、有機相を集め、水(3×500mL)で中性になるまで洗浄した。トルエン相は、乾固するまでロータリーエバポレータで減圧濃縮した。生成物はジクロロメタンとヘキサンとの混合物(1:4)を用いた、カラムクロマトグラフィーで精製した。
【0157】
生成物は無色油として得られた(12.1g、45%)。生成物をGCMSで分析し、m/z512のところにm/z−HOが見られた。純度は推定87%以上であった。
【0158】
非対称化合物5:9−n−オクチル−9−フェニル−2,7−ジブロモフルオレン
【0159】
【化21】

【0160】
磁気攪拌子、還流冷却器、窒素注入口及びバブラーが取り付けられた500mLの丸底フラスコに、非対称化合物5の前駆体(12.1g、22.83mmol、1.0当量)及び氷酢酸(500mL)を加えた。室温で攪拌している懸濁液へ濃塩酸(2mL)を加え、得られた懸濁液を還流するまで加熱した。還流して4時間後、反応過程での検査が、反応が終了したことを示した(GCMS)。溶液が室温に冷えるまで放置し、水(1L)に注ぎ10分間攪拌した。これにより生成物の沈殿が起こり、生成物をろ過で回収した。ろ過ケークを水(2×1L)で洗浄した。粗生成物をヘキサンから粉砕し、非対称化合物4を油として得た(10g、83%)。
【0161】
GCMSでは97.06%の純度を示した。
【0162】
ケトン3:[4,4’−ジブロモ−1,1’−ビフェニル]−2−イルフェニルケトン
【0163】
【化22】

【0164】
機械式攪拌器、低温温度計(−100から30℃まで)、窒素注入口及びバブラー、500mL目盛り付き等圧滴下漏斗が取り付けられた2Lの3つ口丸底フラスコに、アミド1(150g、0.376mol、1.0等量)及び無水THF(500mL)を加えた。得られた溶液を窒素下で攪拌し、−5℃(MeOH−cardice)まで冷却した。その後、臭化フェニルマグネシウム(3M THF溶液、140mL、0.414mol、1.1当量)を、容器の内温が−5から0℃の間を保つような速度で滴下した。次いで、得られた懸濁液を室温になるまで放置し、16時間以上攪拌した。
【0165】
反応混合物をトルエン(1L)で慎重に希釈し、2M塩酸水溶液(2L)が入った5Lビーカーへ注ぎ、この混合物を機械式攪拌器で30分間攪拌した。攪拌を止め、相が安定するまで放置した。有機相は残留物真空移送で除去し、水相をさらに1Lのトルエンで抽出した。有機相を集め、乾固するまでロータリーエバポレータで減圧濃縮した。得られた粗生成物をメタノール(750mL)中で懸濁させ、室温で16時間攪拌した(粉砕)。次いで生成物を、ブフナー装置を使ったろ過により回収し、ケークを新鮮なメタノール(2×250mL)で洗浄した。ケークを風乾し、その後固体を45℃で16時間真空乾燥した。
【0166】
生成物のケトンは白色固体として得られた(147.84g、収率94%)。生成物をGC−MSにより分析し、m/z416(M)のところに単一ピークが見られた。(純度は推定99.8%)。
【0167】
非対称化合物6の前駆体:4,4’−ジブロモ−2−フェニル(4−デシロキシフェニル)ヒドロキシメチル−1,1’−ビフェニル
【0168】
【化23】

【0169】
低温温度計(−100から+30℃まで)、磁気攪拌子、100mLの目盛り付き等圧滴下漏斗、窒素注入口及びバブラーが取り付けられた250mLの丸底フラスコに、4−デシロキシベンゼン(16.5g、53.0mmol、1.1当量)及び無水THF(100mL)を加え、得られた溶液を−72℃まで冷却した(アセトン−cardice)。N−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液)(23.0mL、58.0mmol、1.2当量)を、内温が−65℃を超えないように滴下した。滴下終了後、溶液を−70℃に保ち1時間攪拌した。ケトン3(20.0g、48.0mmol、1.0当量)の無水THF(50.0mL)溶液を加え、内温が−60℃を超えないように保った。溶液が室温になるまで4時間以上放置し、2M塩酸水溶液(250mL)へ注ぎ、反応を止めた。生成物をトルエン(2×250mL)中へ抽出し、有機相を集め、乾固するまでロータリーエバポレータで減圧濃縮した。イソプロピルアルコール(200mL)を加え、生成物を16時間以上かけて結晶化させた。生成物をろ過により回収し、ケークを冷イソプロピルアルコール(50mL)で洗浄した。生成物を風乾し、45℃で16時間真空乾燥した。
【0170】
生成物は白色固体として得られた(18.6g、90%)。生成物をGCMSで分析したところ、生成物の混合物であった。
【0171】
非対称化合物6の前駆体:2,7−ジブロモ−9−フェニル−9−(4−デシロキシフェニル)フルオレン
【0172】
【化24】

【0173】
非対称化合物6は、上述の非対称化合物1の合成で記述した方法を用い、非対称化合物5の脱水により合成した。
【0174】
非対称化合物1のピナコールジエステル(方法1):9−フェニル−9−tert−ブチルフェニルフルオレン−2,7−ピナコラートボロンエステル
【0175】
【化25】

【0176】
機械式攪拌器、還流冷却器、窒素注入口及びバブラー、低温温度計(−100から+30℃まで)、250mLの目盛り付き等圧滴下漏斗(使用前に窒素で不活性化した)が取り付けられた2Lの3つ口丸底フラスコに、非対称化合物1(54.97g、0.103mol、1.0当量)及び無水THF(550mL)を加えた。得られた溶液を−78℃まで冷却し(アセトン−cardice)、N−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液)(90.64mL、0.227mol、2.2当量)を、内温が−65℃を超えないように滴下した。滴下終了後、溶液が−78℃から8℃に上がるまでさらに1時間攪拌し、無水THF(160mL)に溶かしたホウ素酸トリイソプロピル(58.12g、71mL、0.309mol、3.0当量)を加え、再度内温が−65℃を超えないように保った。得られた溶液はその後、ゆっくりと室温になるまで放置した。
【0177】
溶液を0℃まで冷却し(氷浴)、HClのエーテル溶液(2M)(134mL、0.27mol、2.6当量)を加え、溶液を室温に暖まるまで放置した。No.3の気孔率がある、焼結漏斗を通してろ過した(沈殿した無機塩を除去するため)。溶媒を減圧下で除去し、残留物をトルエン(250mL)に再溶解した。溶液を冷却し、1Lフラスコへ(ろ過紙で)ろ過した。ピナコール(58.12g、0.27mol、3.0当量)を加え、次にp−トルエンスルホン酸(1g)を加え、ディーン−スターク(Dean−Stark)条件下で4時間加熱した。溶液が冷えるまで放置し、2gの炭酸カリウムを加えた。混合物を室温で30分間攪拌し、ろ過後、溶液が乾固するまで減圧濃縮した。固体をトルエン/アセトニトリル混合物で再結晶し、ろ過により生成物を回収した。
【0178】
生成物を45℃で16時間真空乾燥した。表題の化合物は白色固体として得た(43g、66%)。HPLCでは93%の純度(npa)を示した。
【0179】
非対称化合物1のピナコールジエステル(方法2):9−フェニル−9−tert−ブチルフェニルフルオレン−2,7−ピナコラートボロンエステル
【0180】
【化26】

【0181】
還流冷却器、機械式攪拌器、及びセプタム栓(使用前に窒素下で冷却されたもの)が取り付けられた500mLの3つ口丸底フラスコに、非対称化合物1(33g、62mmol、1.0当量)、無水トルエン(400mL)、PdCl[(o−tol)P](2.44g、3.1mmol、5mol%)、及びオルト−トリルホスフィン(1.89g、10mol%)を加えた。溶液を窒素を1時間噴霧することにより脱気した後、ト
リエチルアミン(37.64g、0.186mmol、6.0当量)を加え、さらに15分間脱気した。その後ピナコールボラン(23.80g、0.186mol、3.0当量)を加え、溶液を還流するまで4時間加熱した。反応混合物が室温に冷えるまで放置し、トルエン(500mL)で溶離しながら、短く詰めたシリカゲルを通してろ過した。トルエン溶液は、乾固するまで減圧濃縮した。未精製の固体を、トルエン/アセトニトリル混合物から再結晶することにより精製し、ろ過で回収して生成物を得た。
【0182】
生成物を45℃で16時間乾燥した。表題化合物は白色固体(15g、39%)として得られた。HPLCは99%の純度(npa)を示し、GC−MSは正しい質量を示した(m/z626)。
【0183】
比較例
アミド1の代わりに下に示すエステル1を使用した以外は、上記の方法によってケトン1の合成を試みた:
【0184】
【化27】

【0185】
生成した混合物は、出発物質、ケトン1、及びケトン1とグリニャール試薬との過剰反応で生成したアルコールから成っていることを確認した。これらの化合物を分離しようと試みたが、難しさに直面した。
【0186】
本発明を具体的な実施例の点から説明したが、ここで開示した様々な変形、交代、及び/または特徴の組み合わせは、特許請求の範囲に示す本発明の技術的思想とその範囲から逸脱していないことが、当業者にとって明らかであることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(V)の化合物:
【化1】

式中、Pはハロゲン原子から、それぞれ独立して選ばれ;
ArおよびArはそれぞれ独立してアリール基またはヘテロアリール基から選ばれ;
XはO、Sから選ばれ;
Lは結合であり、
はアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、及びヘテロアリール基から選ばれ;
はアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアリールチオ基、及びアリールアルキルチオ基から成る群から選ばれ;
HはArの炭素原子C’と結合し;
C’及びC=Xの炭素原子は、3〜5個の原子によって離れており;
前記アルキル基はC〜C20のアルキル基、アリールアルキル基はC〜C20のアリールアルキル基、アルキルアリール基はC〜C20のアルキルアリール基、アリール基はC〜C20のアリール基、ヘテロアリール基はC〜C20のヘテロアリール基、アルコキシ基はC〜C20のアルコキシ基、アリールオキシ基はC〜C20のアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基はC〜C20のアリールアルキルオキシ基、アルキルアリールオキシ基はC〜C20のアルキルアリールオキシ基、アルキルチオ基はC〜C20のアルキルチオ基、アリールチオ基はC〜C20のアリールチオ基、アルキルアリールチオ基は、C〜C20のアルキルアリールチオ基、アリールアルキルチオ基はC〜C20のアリールアルキルチオ基、である。
【請求項2】
Ar及びArはそれぞれ、フェニル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
はC1〜10のアルキル基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
はC1〜10のアルコキシ基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
化学式(VI)の化合物:
【化2】

式中、Pはハロゲン原子から、それぞれ独立して選ばれたものであり、RはC1〜10のアルキル基であり、RはC1〜10のアルコキシ基である。
【請求項6】
a)化学式(V)の化合物と化学式S−Mの化合物を反応させ、化学式(VII)の化合物を得る工程、
b)化学式(VII)の化合物と化学式S−Mの化合物を反応させ、酸の水溶液で反応を止め、化学式(VIII)の化合物を得る工程、及び
c)化学式(VIII)の化合物からHXを脱離させて、化学式(IX)の化合物を得る工程を有する、
【化3】

式中、Pはハロゲン原子から、それぞれ独立して選ばれ;
ArおよびArはそれぞれ独立してアリール基またはヘテロアリール基から選ばれ;
XはO、Sから選ばれ;
Lは結合であり、
はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、及びヘテロアリール基から選ばれ;
はアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアリールチオ基、及びアリールアルキルチオ基から成る群から選ばれ;
Ar−HのHはArの炭素原子C’と結合し;
C’及びC=Xの炭素原子は、3〜5個の原子によって離れており;
及びSはアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基からそれぞれ選ばれ;
Mはリチウム、亜鉛、またはMg−Halであり、この際Halはハロゲン原子であり;そして、
Mは炭素−金属結合によってS及びSと結合しており、
前記アルキル基はC〜C20のアルキル基、アリールアルキル基はC〜C20のアリールアルキル基、アルキルアリール基はC〜C20のアルキルアリール基、アリール基はC〜C20のアリール基、ヘテロアリール基はC〜C20のヘテロアリール基、アルコキシ基はC〜C20のアルコキシ基、アリールオキシ基はC〜C20のアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基はC〜C20のアリールアルキルオキシ基、アルキルアリールオキシ基はC〜C20のアルキルアリールオキシ基、アルキルチオ基はC〜C20のアルキルチオ基、アリールチオ基はC〜C20のアリールチオ基、アルキルアリールチオ基は、C〜C20のアルキルアリールチオ基、アリールアルキルチオ基はC〜C20のアリールアルキルチオ基である、
化学式(IX)の化合物を製造するための、化学式(V)の化合物の使用。
【請求項7】
前記化学式(V)の化合物が化学式(VI)の化合物である、請求項6に記載の使用。
【化4】


【公開番号】特開2012−72178(P2012−72178A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270721(P2011−270721)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【分割の表示】特願2004−547609(P2004−547609)の分割
【原出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】