説明

半導電性ゴムローラー用積層体

【課題】加硫ゴムとステンレス鋼が強固に接着された積層体であって、加硫ゴムの環境依存性が小さく、軟質でかつ圧縮永久歪性が小さく、電子写真プロセス用の半導電性ゴムローラに適した積層体を得る。また接着に際して接着剤を使用しないことにより、低コスト化を図る。
【解決手段】下記(A)〜(D)成分を含有することを特徴とする半導電性加硫ゴム用組成物とステンレス鋼とが加硫接着されてなる積層体。
(A)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部
(B)下記一般式(I)で表される2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体 0.1〜10重量部
【化1】


(R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基)
(C)ハイドロタルサイト類 0.1〜20重量部
(D)酸化マグネシウム 0.1〜20重量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの帯電、現像、転写などの半導電性ローラーに用いられる半導電性加硫ゴム用組成物とステンレス鋼とが加硫接着されてなる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの帯電、現像、転写において、コロナ放電に代表される非接触帯電方式、非接触転写方式から、ゴムローラーを用いた接触帯電法式、接触転写方式の採用が拡大されつつある。
【0003】
前記ゴムローラーに使用されるゴム材料としては、体積抵抗率が10〜1012Ωcm程度の半導電領域の体積抵抗率を有し、高温高湿度下と低温低湿度下との体積抵抗率の変動幅が小さいこと、すなわち、周囲の環境条件の変化によっても安定した体積抵抗率を示すことが要求されている。
【0004】
また、前記ゴムローラーは、ローラーの両端部に荷重をかけて使用するため、長期にわたって、荷重変形が繰り返されることが多くゴムのへたりが問題となるため、圧縮永久歪性に優れているゴム材料が必要とされる。
【0005】
更に、前記ゴムローラーの駆動トルクを低減させるために、軟質なゴム材料であることが各種ロールには必要とされている。そこで、ロール全体の硬度を下げるため、ゴム基材に可塑剤を添加する方法が従来より用いられている。しかしながら、可塑剤を添加することにより、ゴム表面から可塑剤成分が移行してきて、保護を目的としたコーティング層をも侵食し、その結果、コピー機、プリンター等の感光体を汚染するといった問題が起こっている。この問題を解決するために、特開平9−146345には不飽和液状ゴムを添加し、硬度を下げる方法が記載されている。しかし、当然の事ながら、不飽和液状ゴムの添加により、オゾン性が低下してしまうなど、ゴム材料としての各種物性の悪化が容易に予想される。
【0006】
更に、コピー機、プリンターの低価格販売に伴い、ゴムローラーのコストダウンも要求されている。従来のゴムローラーの製造法は、チューブ状に押出し成形した未加硫ゴム組成物に、外周面に接着剤を塗布した軸体を挿入後、加硫成形する方法、もしくは外周面に接着剤を塗布した軸体と未加硫ゴム組成物を同時押出し成形後、加硫する方法がとられている(特開2003−330248、特開2001−214925)。しかしながら、上記方法では、軸体とゴム成分との接着に接着剤の使用が必要不可欠であり、その分のコストが発生してしまう。
【0007】

【特許文献1】特開平9−146345号公報
【特許文献2】特開2003−330248号公報
【特許文献3】特開2001−214925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、ゴム成分が軟質かつ優れた耐圧縮永久歪性を示し、周囲の環境変動に対しても体積抵抗率の変動が小さく、更に、軸体とゴム組成物との接着に対して接着剤を使用しないことにより、低コスト化が図れる半導電性加硫ゴム用組成物とステンレス鋼とが加硫接着されてなる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は種々研究の結果、下記(A)〜(D)成分、あるいは更に(A)〜(D)成分に加えて(E)成分を含有することを特徴とする半導電性加硫ゴム用組成物とステンレス鋼とが加硫接着されてなる積層体を用いることにより、上述の目的を達成できることを見出し本発明を完成したものである。
(A)エピクロルヒドリン系ゴム
(B)下記一般式(I)で表される2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体
【化1】

(R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基)
(C)ハイドロタルサイト類
(D)酸化マグネシウム
(E)1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7もしくはその弱酸塩
【0010】
以下、本発明の構成につき詳細に説明する。
本発明に用いられるエピクロルヒドリン系ゴム(A)は、ゴム自身が半導電性を有したポリマー材料であるため、コピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの帯電、現像、転写などのローラ、ベルトに好適である。エピクロルヒドリン系ゴム(A)としては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体が挙げられる。中でも、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が好適である。
【0011】
本発明の対象となるエピクロルヒドリン系ゴム(A)の成分組成は通常、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体では、エピクロルヒドリン成分が5mol%〜70mol%、エチレンオキサイド成分が30mol%〜95mol%であり、好ましくはエピクロルヒドリン成分が10mol%〜60mol%、エチレンオキサイド成分が40mol%〜90mol%であり、またエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体では、エピクロルヒドリン成分が5mol%〜75mol%、エチレンオキサイド成分が20mol%〜90mol%、アリルグリシジルエーテル成分が1mol%〜10mol%であり、好ましくはエピクロルヒドリン成分が10mol%〜65mol%、エチレンオキサイド成分が30mol%〜85mol%、アリルグリシジルエーテル成分が2mol%〜8mol%である。成分組成中のエチレンオキサイド成分の含有量が増加するほど、半導電性の向上、すなわち体積抵抗率の低下がみられる。
【0012】
上記、エピクロルヒドリン系ゴムの製造方法としては公知の重合法を採用できる。特に本出願人の米国特許第3,773,694号明細書に記載の有機錫−リン酸エステル縮合物を重合触媒とする方法は、重合物が高収率で得られるので好ましい。即ち、上記触媒の存在下で脂肪族又は芳香族炭化水素を溶媒として重合温度10〜70℃で5〜15時間重合させることにより、重合収率90%以上で製品を得ることができる。これ等のエピクロルヒドリン系ゴムの分子量範囲は100℃におけるムーニー粘度表示で30〜200のものが好ましく用いられる。
【0013】
本発明に用いられる2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体(B)は加硫剤として作用する。2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体(B)の例としては、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート等で挙げられ、キノキサリン−2,3-ジチオカーボネート又は6-メチルキノキサリン−2,3-ジチオカーボネートが好ましい。
【0014】
2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体(B)の配合割合は、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部が用いられる。この範囲未満の量では、優れた圧縮永久歪性を得ることが困難になり、一方、この範囲を超えると得られた加硫物が剛直になりすぎて、エピクロルヒドリン系ゴム加硫物に通常期待される物性が得られなくなる。
【0015】
本発明に用いられるハイドロタルサイト類(C)は受酸剤として作用する。ハイドロタルサイト類(C)としては、下記一般式(II)で表されるものが好ましく使用される。

MgZnyAlZ(OH)2(x+y)+3Z-2CO3・wH2O (II)

(xとyは0〜10の実数、ただしx+y=1〜10、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数を表す)
このようなハイドロタルサイトの例としては、
Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO等を挙げることができる。
【0016】
ハイドロタルサイト類(C)の配合割合は、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部が用いられる。この範囲未満の量では、優れた圧縮永久歪性を得ることが困難になり、一方、この範囲を超えても特別な効果は得られない。
【0017】
本発明に用いられる酸化マグネシウム(D)は受酸剤として作用する。酸化マグネシウム(D)としては、高活性酸化マグネシウム、中活性酸化マグネシウム、低活性酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0018】
酸化マグネシウム(D)の配合割合は、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.11〜20重量部、好ましくは1〜10重量部が用いられる。この範囲未満の量では、優れた圧縮永久歪性を得ることが困難になり、一方、この範囲を超えても特別な効果は得られない。
【0019】
本発明に用いられる1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7もしくはその弱酸塩(E)は加硫促進剤として作用する。1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7もしくはその弱酸塩(E)としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下DBUと略称する。)は、それ自身を用いても良いが、その取り扱い面から炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩、チオールとの塩等の弱酸塩として使用することもできる。これらDBU塩の代表的なものとしてはDBU-炭酸塩、DBU-ステアリン酸塩、DBU-2-エチルヘキシル酸塩、DBU-安息香酸塩、DBU-サリチル酸塩、DBU-3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、DBU-フェノール樹脂塩、DBU-2-メルカプトベンゾチアゾール塩、DBU-2-メルカプトベンズイミダゾール塩等を挙げることができる。
【0020】
DBUもしくはその弱酸塩の配合量は、含ハロゲンポリエーテル系ポリマー100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部が用いられる。この範囲未満の量では、充分に加硫が進行せず優れた圧縮永久歪性が得られない。一方、この範囲を超えるとゴム組成物の加硫速度が速くなりすぎて、加工上のトラブルを生じる。
【0021】
また、本発明における効果を大きく逸脱しない範囲内で、エピクロルヒドリン系ゴムの公知の加硫剤を本発明で用いられる2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体(B)と併用しても良い。
【0022】
上記、公知の加硫剤としては、エピクロルヒドン系ゴムの塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤、例えば、チオウレア類(エチレンチオウレア、1,3−ジエチルチオウレア等が例示される)、ポリアミン類(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が例示される)、チアジアゾール類(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等が例示される)、メルカプトトリアジン類(2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン等が例示される)、ピラジン類(ピラジン-2,3-ジチオカーボネート等が例示される)等や、側鎖二重合結合の反応性を利用する公知の加硫剤、例えば、有機過酸化物(tert−ブチルヒドロパーオキサイド等が例示される)、モルホリンポリスルフィド類(モルホリンジスルフィド等が例示される)、チオラムポリスルフィド類(テトラメチルチウラムジスルフィド等が例示される)等が挙げられる。これらの加硫剤は単独であるいは2種以上併用して用いられる。
【0023】
また、本発明における効果を大きく逸脱しない範囲内で、エピクロルヒドリン系ゴムの公知の受酸剤を本発明で用いられるハイドロタルサイト類(C)と酸化マグネシウム(D)との組み合わせで用いても良い。
【0024】
上記、公知の受酸剤としては、周期表第(II)族金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表第(IV)族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩等、および下記一般式(III)で示されるLi-Al系包接化合物が挙げられる。

〔Al2 Li(OH)6n X・mH2O (III)

(式中Xは、無機または有機のアニオンであり、nはアニオンXの価数であり、mは3以下の数)
【0025】
受酸剤の具体的な例としては、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、酸化錫、塩基性亜リン酸錫をあげることができる。
【0026】
また、加硫剤と共に公知の促進剤(加硫促進剤)および遅延剤を本発明による加硫ゴム用組成物に添加することもできる。加硫促進剤の例としては、PH=7以上である二酸化ケイ素1級、2級、3級アミン、該アミンの有機酸塩もしくはその付加物、アルデヒドアンモニア系促進剤、アルデヒドアミン系促進剤、グアニジン系促進剤、チアゾール系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸系促進剤、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5及びその弱酸塩、第4級アンモニウム化合物等を挙げることができる。また、遅延剤としては、N−シクロヘキサンチオフタルイミド、PH=7以下である二酸化ケイ素等を挙げることができる。
【0027】
1級、2級、3級アミンとしては、特に炭素数5〜20の脂肪族または環式脂肪酸の第1、第2もしくは第3アミンが好ましく、このようなアミンの代表例は、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ヘキサメチレンジアミンなどである。
【0028】
上記アミンと塩を形成する有機酸としては、カルボン酸、カルバミン酸、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジチオリン酸等が例示される。また上記アミンと付加物を形成する物質としては、アルコール類、オキシム類等が例示される。アミンの有機酸塩もしくは付加物の具体例としては、n−ブチルアミン・酢酸塩、ヘキサメチレンジアミン・カルバミン酸塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのジシクロヘキシルアミン塩等が挙げられる。
【0029】
アルデヒドアンモニア系促進剤の例としては、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドとアンモニアの反応生成物等が挙げられる。アルデヒドアミン系促進剤の例としては、アミンと少なくとも1種の炭素数1〜7のアルデヒドとの縮合生成物であり、このようなアミンの例としては、アニリン、ブチルアミン等が挙げられる。これらのなかで、アニリンと少なくとも1種の炭素数1〜7のアルデヒドとの縮合生成物が好ましい。具体例としては、アニリンとブチルアルデヒドの縮合物、アニリンとヘプタアルデヒドの縮合物、アニリンとアセトアルデヒドおよびブチルアルデヒドの縮合物などがある。
【0030】
グアニジン系促進剤の例としては、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン等が挙げられる。
【0031】
チアゾール系促進剤の例としては、2―メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2―メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩等が挙げられる。
【0032】
スルフェンアミド系加硫促進剤の具体例としては、N−エチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジ−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、などが挙げられる。
【0033】
チウラム系加硫促進剤の具体例としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0034】
ジチオカルバミン酸系促進剤の例としては、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルカルバミン酸銅等が挙げられる。
【0035】
上記、加硫促進剤および遅延剤は、無機充填剤、オイル、ポリマー等に予備分散させた形で使用しても良い。これらの加硫促進剤および遅延剤は単独で用いてもよいし、2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
【0036】
また、本発明の半導電性加硫ゴム用組成物には、当該技術分野で通常使用される他の添加剤、例えば滑剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、顔料、発泡剤等を任意に配合できる。
【0037】
更に本発明の特性が失われない範囲で、当該技術分野で通常行われているゴム、樹脂等とのブレンドを行うことも可能である。本発明に用いられるゴムを例示すれば、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等が挙げられ、また樹脂を例示すれば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PUR(ポリウレタン)樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂、EVA(エチレン/酢酸ビニル)樹脂、AS(スチレン/アクリロニトリル)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂等が挙げられる。
【0038】
更に、本発明の半導電性加硫ゴム用組成物において、導電付与剤として、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩などの金属塩、カチオン種が一般式(IV)で表され、
【化2】

(式中、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基あるいは主鎖がポリオキシエチレン鎖もしくはポリオキシプロピレン鎖で、末端にアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、水酸基を有する基である。)
アニオン種が過塩素酸イオンのような無機酸イオン、または、塩化物イオンのようなハロゲンイオンなどである第四級アンモニウム塩などを任意に添加してよい。
【0039】
これら導電付与剤となる塩において、カチオン種としては、例えば、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Baや遷移金属であるFe、Ni、Cu、Zn及びAg金属の陽イオンや、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチル2−(2−メトキシプロキシ)エチルアンモニウム、ジメチルドデシル2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアンモニウム、ジメチルオクタデシル2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアンモニウム等の第四級アンモニウムイオン、テトラメチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム等のホスホニウムイオンが挙げられる。また、アニオン種としては、例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6−、PF6−、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられ、これら任意の組み合わせから選ばれた化合物が導電付与剤として挙げられる。
【0040】
導電付与剤の量は、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0〜10重量部、例えば0〜5重量部である。
【0041】
本発明の半導電性加硫ゴム用組成物の配合方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を利用することができる。
【0042】
本発明におけるステンレス鋼は、コピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの帯電、現像、転写などのゴムローラーの軸体として利用されている。ステンレス鋼は、その化学成分によって分類され、例えば標準型オーステナイトステンレス鋼(SUS304等が例示される)、耐粒界腐食オーステナイトステンレス鋼(SUS304L等が例示される)、二層ステンレス鋼(SUS329J4L等が例示される)、高強度ステンレス鋼(SUS301等が例示される)、オーステナイト耐酸化鋼(SUS302B等が例示される)、フェライトステンレス鋼(SUS430等が例示される)等を挙げることができる。
【0043】
本発明の半導電性加硫ゴム用組成物とステンレス鋼とは、通常100〜250℃に加熱することで加硫接着された積層体とすることができる。加硫時間は温度によって異なるが、0.5〜300分の間で行われるのが普通である。加硫成型の方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線、あるいはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明による加硫ゴムとステンレス鋼との積層体は、加硫ゴムが軟質かつ優れた耐圧縮永久歪性を示し、周囲の環境変動に対しても体積抵抗率の変動が小さく(環境依存性が小さく)、更にステンレス鋼と加硫ゴムとの接着に対して接着剤を必要としないことにより低コスト化が図れる。従って、本発明の積層体は、コピー機、プリンター等の電子写真プロセスに使用される半導電性ゴムローラー等に広く応用可能であり、特に帯電、現像または転写用のローラーに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
(加硫ゴム物性) 実施例1〜3、比較例1〜6
表1に示す各材料をニーダーおよびオープンロールで混練し、未加硫ゴムシートを作製した。得られた未加硫ゴムシートを170℃で15分プレス加硫し、2mm厚の加硫物を得た。得られた加硫物を用い、引張試験の評価を行った。各評価試験は順にJIS K 6251に記載の方法に準じて行った。
【0047】
圧縮永久歪試験は次のように行った。得られた上記未加硫ゴムシートを試験片作製用金型を用いて170℃で20分プレス加硫し、直径約29mm、高さ約12.5mmの円柱状試験片加硫物を得た。得られた加硫物を用い、JIS K 6262記載の方法に準じて試験を行った。
【0048】
体積抵抗率の測定は次のように行った。加硫ゴムシート(厚さ2mm)および絶縁抵抗計(三菱油化(株)製 ハイレスタHP)を低温低湿度環境(10℃×15%RH)、中温中湿度環境(23℃×50%RH)、高温高湿度環境(35℃×85%RH)の環境条件下に設定した恒温恒湿槽中に入れ、24時間以上放置した後、10V印可し、1分後の値を読みとった。また、体積抵抗率の環境依存性は、低温低湿度環境(A)での体積抵抗率と高温高湿度環境(B)での体積抵抗率との対数をとり、その差で定義する。
【0049】
(金属との接着性) 実施例1〜3、比較例1〜8
金属との接着性は次のように行った。得られた上記未加硫ゴムシート(厚さ2mm)と金属板(厚さ2mm)とを貼り合わせ、170℃で15分プレス加硫した。得られた加硫ゴムと金属板との積層体(縦15cm、横3cm、厚さ4mm)を用いて、25℃において3kgの力で縦方向に加硫ゴム部を引張り、その接着状態を評価した。接着状態の評価は、十分に接着しているものを◎、簡単に剥離してしまうものを×とした。
【0050】
各試験方法より得られた実施例および比較例の試験結果を表2および3に示す。各表中、M100はJIS K6251の引張試験試験に定める100%伸び時の引張応力、TbはJIS K6251の引張試験試験に定める引張強さ、EbはJIS K6251の引張試験試験に定める伸び、HsはJIS K6253の硬さ試験に定める硬さをそれぞれ意味する。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
表2の実施例と比較例との比較により明らかなように、実施例1〜3では、ゴム成分が軟質かつ優れた耐圧縮永久歪性を示し、周囲の環境変動に対しても体積抵抗率の変動が小さい半導電性加硫ゴム用組成物が得られている。一方、比較例1〜4および6では、軟質であるが、圧縮永久歪性が劣っている、比較例5では加硫が進行しないため実用的ではない。更に、表3における実施例1〜3では、ステンレス鋼とゴム組成物との接着に対して接着剤を使用しなくても良好な接着性を示している。一方、比較例1〜2では、ステンレス鋼と良好な接着性を示した配合(配合1、2)でも、ニッケルめっき合金では良好な接着性を示さず、(B)〜(D)成分のいずれかを欠いたゴム組成物の配合である比較例3〜8では、良好な接着性を示さない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明による半導電性加硫ゴム用組成物とステンレス鋼とが加硫接着されてなる積層体は、ステンレス鋼と加硫ゴムとの接着に接着剤を使用しないので、低コスト化が図れる。更に該積層体は、加硫ゴムが軟質かつ優れた耐圧縮永久歪性を示し、周囲の環境変動に対しても体積抵抗率の変動が小さく(環境依存性が小さく)、コピー機、プリンター等の半導電性ゴムローラー等に広く応用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)成分を含有することを特徴とする半導電性加硫ゴム用組成物とステンレス鋼とが加硫接着されてなる積層体。
(A)エピクロルヒドリン系ゴム100重量部
(B)下記一般式(I)で表される2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体 0.1〜10重量部
【化1】

(R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基)
(C)ハイドロタルサイト類 0.1〜20重量部
(D)酸化マグネシウム 0.1〜20重量部
【請求項2】
(A)〜(D)成分に加えて、更に(E)1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7もしくはその弱酸塩を、エピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して0.1〜5重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の、半導電性加硫ゴム用組成物とステンレス鋼とが加硫接着されてなる積層体。
【請求項3】
2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体(B)がキノキサリン−2,3-ジチオカーボネート又は6-メチルキノキサリン−2,3-ジチオカーボネートである請求項1または2に記載の、半導電性加硫ゴム用組成物とステンレス鋼とが加硫接着されてなる積層体。
【請求項4】
ハイドロタルサイト類(C)が下記一般式(II)で表わされるものである請求項1または2のいずれかに記載の、半導電性加硫ゴム用組成物とステンレス鋼とが加硫接着されてなる積層体。
MgZny
AlZ (OH)2(x+y)+3Z-2 CO3・wH2O (II)
(xとyは0〜10の実数、ただしx+y=1〜10、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数を表す)
【請求項5】
請求項1〜4に記載の、半導電性加硫ゴム用組成物とステンレス鋼とが加硫接着されてなる積層体を使用することを特徴とする、コピー機、プリンター等の電子写真用プロセスに使用される半導電性ゴムローラー。

【公開番号】特開2007−98895(P2007−98895A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295013(P2005−295013)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】