説明

半導電性ゴム組成物、架橋性ゴム組成物およびゴム架橋物

【課題】 体積固有抵抗値が適度に低く、かつ、通電耐久性に優れたゴム架橋物を与える半導電性ゴム組成物、および、該ゴム組成物に架橋剤を加えてなる架橋性ゴム組成物を提供すること。
【解決手段】 エピハロヒドリン系ゴム(a)20〜100重量%及び低電気抵抗性ゴム(a)80〜0重量%からなるゴム成分(A)100重量部に対し、ビスフェノール系老化防止剤(B)0.1〜3重量部含有してなる半導電性ゴム組成物、および、さらに発泡剤(C)5〜10重量部含有してなる前記半導電性ゴム組成物、並びに、これらの半導電性ゴム組成物に架橋剤(D)を加えてなる架橋性ゴム組成物により上記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、複写機などの電子写真装置のゴムロールやゴムブレードに好適に使用される半導電性のゴム架橋物、並びに、その材料として好適な架橋性ゴム組成物及び半導電性ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複写機などの電子写真装置には、感光体に直接接触して帯電、転写、現像等の機能をそれぞれ発現するゴムロールや、帯電、清掃、トナー制御等の機能をそれぞれ有するゴムブレード等のゴム部材が使用されている。これらのゴム部材は、一定の低電気抵抗性(半導電性)を有することが必要である。
例えば一般的なゴムであるスチレン−ブタジエン共重合ゴムに導電性充填剤を用いて半導電性を持たせるには、微量のカーボンブラックをゴム中に均一分散させる必要があるため、極めて困難である。これに対して、エチレンオキシド系ゴムやエピハロヒドリン系ゴムなどのポリエーテルゴムは、それ自体が半導電性であるため、電子写真装置用のゴムロールやゴムブレードに用いられるようになった。
特許文献1には、適度の導電性を有するゴムローラ等に用いられるゴム組成物として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びアリルグリシジルエーテルの単量体単位が(50〜95モル%)/(1〜49モル%)/(1〜10モル%)で、数平均分子量が10,000以上の三元共重合体をエピクロルヒドリン系ゴムに対して重量比0.01〜4.00で混合したゴム組成物を提案している。しかし、この組成物を架橋したゴム架橋物は、長時間使用していると電気特性が次第に変化するため、導電性ゴムローラに使用すると、画像が不鮮明となる問題があった。また、特許文献2には、上記と同様の三元共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムとの重量比70/30〜5/95の混合ゴム100重量部に対して、非ハロゲン系第四級アンモニウム塩を0.1〜7.0重量部配合してなる導電性ゴム組成物を提案している。しかしながら、この組成物のゴム架橋物も、長時間の通電により電気抵抗値が変動する場合があり、電子写真装置用のゴム部材に適しているとは言えない。
【0003】
【特許文献1】特開2002−105305号公報
【特許文献2】特開2002−212413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、体積固有抵抗値が適度に低く、かつ、長時間通電しても電気特性が安定性している、すなわち通電耐久性に優れたゴム架橋物を与える半導電性ゴム組成物、並びに、該ゴム組成物に架橋剤を加えてなる架橋性ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、エピハロヒドリン系ゴムを主とするゴム成分に特定の老化防止剤を特定量配合したゴム組成物により、上記目的が達成されることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、エピハロヒドリン系ゴム(a)20〜100重量%及び低電気抵抗性ゴム(a)80〜0重量%からなるゴム成分(A)100重量部に対し、ビスフェノール系老化防止剤(B)0.1〜3重量部含有してなる半導電性ゴム組成物が提供される。好ましくは、該組成物はさらに発泡剤(C)4〜11重量部を含有してなるものである。
別の本発明によれば、これらのゴム組成物に架橋剤(D)を加えてなる架橋性ゴム組成物が提供される。さらに別の本発明によれば、該架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、体積固有抵抗値が適度に低く、かつ、通電耐久性に優れたゴム架橋物を与える半導電性ゴム組成物、並びに、該ゴム組成物に架橋剤を加えてなる架橋性ゴム組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の半導電性ゴム組成物は、エピハロヒドリン系ゴム(a)20〜100重量%及び低電気抵抗性ゴム(a)80〜0重量%からなるゴム成分(A)100重量部に対し、ビスフェノール系老化防止剤(B)を0.1〜3重量部含有してなるものである。
【0008】
本発明の半導電性ゴム組成物に用いるエピハロヒドリン系ゴム(a)は、エピハロヒドリン単量体の開環重合体、または、エピハロヒドリン単量体及びこれと共重合可能な単量体の開環共重合体である。
エピハロヒドリン単量体としては、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリンなどがあり、なかでもエピクロルヒドリンが好ましい。
エピハロヒドリン系ゴム(a)を構成する全単量体単位に対するエピハロヒドリン単量体単位の含有量は特に限定されないが、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは25〜90モル%、特に好ましくは30〜85モル%である。エピハロヒドリン単量体単位の含有量が少なすぎると得られるゴム架橋物の吸湿性が高くなるおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性に劣る可能性がある。
【0009】
エピハロヒドリン単量体と共重合可能な単量体(以下、「共単量体」と記すことがある。)としては、オキシラン単量体が挙げられ、中でも、アルキレンオキシドが好ましい。アルキレンオキシドの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシ−4−クロロペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシイソブタン、2,3−エポキシイソブタンなどの、直鎖状または分岐鎖状アルキレンオキシド;1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロドデカンなどの環状アルキレンオキシド;などが挙げられる。これらの中でも直鎖状アルキレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドが特に好ましい。上記アルキレンオキシドは、水素の一部がハロゲンで置換されたものであってもよい。
【0010】
エピハロヒドリン系ゴム(a)を構成する全単量体単位に対するアルキレンオキシド単量体単位の含有量は特に限定されないが、好ましくは0〜80モル%、より好ましくは10〜75モル%、特に好ましくは15〜70モル%である。アルキレンオキシド単量体単位の含有量が多すぎるとゴム架橋物の吸湿性が高くなる可能性がある。
【0011】
エピハロヒドリン系ゴム(a)は、共単量体単位の一部として、架橋性官能基を有するアルキレンオキシド単量体単位を含んでいてもよい。かかる架橋性単量体としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル基含有化合物;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエートなどのグリシジルエステル基含有化合物;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−3−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンなどのエポキシ基含有不飽和炭化水素;などが挙げられる。これらの中でも、アリルグリシジルエーテルを用いると、ゴム架橋物が耐オゾン性に優れるので好ましい。
【0012】
エピハロヒドリン系ゴム(a)中の架橋性単量体単位の含有量は特に限定されないが、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。架橋性単量体単位の含有量が多すぎると、ゴム架橋物の破断伸びが小さくなるおそれがある。
【0013】
エピハロヒドリン系ゴム(a)の100℃でのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは30〜160、より好ましくは35〜120、特に好ましくは40〜100である。ムーニー粘度が低すぎても高すぎても配合剤との混練作業性が低下するので好ましくない。
【0014】
本発明の半導電性ゴム組成物に用いる低電気抵抗性ゴム(a)は、体積固有抵抗値が1013Ω・cm以下、好ましくは1×10〜9.9×1012Ω・cm、より好ましくは1×104.5〜1×1011.5Ω・cmであって、エピハロヒドリン系ゴム(a)以外のゴムである。低電気抵抗性ゴム(a)の体積固有抵抗値が小さすぎると、得られるゴム架橋物の体積固有抵抗値が低くなりすぎたり、電気的均一性に欠けたりするおそれがあり、逆に、低電気抵抗性ゴム(a)の体積固有抵抗値が大きすぎると、ゴム架橋物も体積固有抵抗値が高くなりすぎたり、電気的均一性に欠けたりする可能性がある。
【0015】
低電気抵抗性ゴム(a)としては、分子中にエーテル結合、エステル結合またはニトリル基を有するゴムが好ましく、主鎖にエーテル結合を有するゴムおよび側鎖にニトリル基を有するゴムが特に好ましい。好ましい低電気抵抗性ゴム(a)の具体例としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル基含有単量体と共役ジエン単量体またはα−オレフィン単量体との共重合体(以下、「ニトリルゴム」と記すことがある。)、その水素化物およびエチレンオキシド系重合体が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上併せて用いられる。
【0016】
前記α,β−エチレン性不飽和ニトリル基含有単量体としては、アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。前記共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。前記α−オレフィン単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが例示される。共役ジエン、α−オレフィンのなかで、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
ニトリルゴムは、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で、これらの単量体と共重合可能な単量体をさらに共重合させてもよい。ニトリルゴム中のα,β−エチレン性不飽和ニトリル基含有単量体単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル基含有単量体単位の含有量が少なすぎると該共重合体の体積固有抵抗値が高くなるおそれがあり、同含有量が多すぎると該共重合体のムーニー粘度が高くなって加工性が劣ったり、ゴム架橋物の硬度が高くなったりする可能性がある。
通常、前記ニトリルゴムの主鎖中の不飽和結合を水素添加によって飽和させたゴムは、水素添加前の共重合体と比べて体積固有抵抗値、ムーニー粘度などに実質的な変動はない。
【0017】
ニトリルゴムの100℃でのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは23〜100、より好ましくは25〜95、特に好ましくは27〜90である。ムーニー粘度が低すぎると架橋性ゴム組成物は粘着性が大きくなるおそれがあり、逆に、高すぎると加工性に劣る可能性がある。
【0018】
低電気抵抗性ゴム(a)としてのエチレンオキシド系重合体は、エチレンオキシドと、これと共重合可能なオキシラン単量体との開環共重合体であって、構成する全単量体単位に対するエチレンオキシド単位の含有量が30〜90モル%、好ましくは40〜90モル%、より好ましくは50〜89モル%の重合体である。エチレンオキシド系重合体中のエチレンオキシド単位の含有量が少なすぎると、ゴム架橋物の表面摩擦抵抗や体積固有抵抗値が大きくなりすぎたり、ゴム保管時に重合体粒子が固着する等の不具合を生じるおそれがある。一方、エチレンオキシド単位の含有量が多すぎると、エチレンオキシド系重合体が結晶化しやすくなって、ゴム架橋物の体積固有抵抗値が大きくなったり、硬度が高くなったりする可能性がある。
【0019】
エチレンオキシド系重合体におけるエチレンオキシドと共重合可能なオキシラン単量体単位の含有量は、70〜10モル%、好ましくは60〜10モル%、より好ましくは50〜11モル%である。
【0020】
エチレンオキシド系重合体における、エチレンオキシドと共重合可能なオキシラン単量体としては、プロピレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド等の、炭素数が好ましくは3〜8のアルキレンオキシド、および下記の架橋性オキシラン単量体が含まれる。これらの中ではプロピレンオキシドおよび架橋性オキシラン単量体が好ましい。
架橋性オキシラン単量体としては、前記エピハロヒドリン、p−クロロスチレンオキシドなどのハロゲン原子含有オキシラン単量体;ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、スチレンオキシド、ブタジエンモノエポキシド、グリシジルメタクリレート、グリシジル−4−ヘプテノエートなどの炭素−炭素不飽和結合含有オキシラン単量体(不飽和エポキシド類)が挙げられる。これらの架橋性オキシラン単量体のなかでもエピクロルヒドリンおよびアリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0021】
エチレンオキシド系重合体を構成する全単量体単位における架橋性オキシラン単量体単位の含有量は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは3〜20モル%、特に好ましくは5〜15モル%である。架橋性オキシラン単量体単位の含有量が前記範囲にあると、ゴム架橋物の体積固有抵抗値が環境の変化で大きく変動せず、強度、硬度および伸びのバランスに優れる。
【0022】
エチレンオキシド系重合体の100℃でのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は好ましくは40〜160、より好ましくは50〜150、特に好ましくは60〜140である。ムーニー粘度が低すぎるとゴム架橋物の機械的強度や耐摩耗性が低下したり、圧縮永久歪みが大きくなりすぎたりするおそれがあり、逆に、高すぎると架橋性ゴム組成物の成形加工が困難になってゴム架橋物の寸法安定性が低下する可能性がある。
【0023】
本発明組成物におけるゴム成分(A)のエピハロヒドリン系ゴム(a)と低電気抵抗性ゴム(a)の混合割合は、エピハロヒドリン系ゴム(a)20〜100重量%に対して低電気抵抗性ゴム(a)80〜0重量%であり、好ましくはエピハロヒドリン系ゴム(a)40〜90重量%に対して低電気抵抗性ゴム(a)60〜10重量%、より好ましくはエピハロヒドリン系ゴム(a)60〜80重量%に対して低電気抵抗性ゴム(a)40〜20重量%である。低電気抵抗性ゴム(a)の割合が多すぎるとゴム架橋物の体積固有抵抗値の環境変動幅が大きくなりすぎるおそれがある。
【0024】
本発明の半導電性ゴム組成物が含有するビスフェノール系老化防止剤(B)は、分子中にフェノール構造を2個有する、分子量が好ましくは280〜500、より好ましくは300〜480、さらに好ましくは330〜450の化合物である。該老化防止剤(B)の例としては、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのビスフェノールアルカン誘導体;4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィドなどのビスフェノールスルフィド誘導体などが挙げられる。なかでも、ビスフェノールスルフィド誘導体が好ましく用いることができる。
【0025】
本発明組成物におけるビスフェノール系老化防止剤(B)の含有量は、ゴム成分(A)100重量部に対して0,1〜3重量部、好ましくは0.2〜2.5重量部、より好ましくは0.3〜2.0重量部である。ビスフェノール系老化防止剤(B)の含有量が少なすぎるとゴム架橋物の通電耐久性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎるとゴム架橋物にブルームが生じて感光体汚染を惹き起こす可能性がある。
【0026】
本発明の半導電性ゴム組成物は、発泡剤(C)を含有するとゴム架橋物が弾力性を帯びるので好ましい。
発泡剤(C)としては、一般にゴム発泡体の成形に使用されるものであれば限定されないが、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどが好ましく例示される。これらの分解温度はそれぞれ約160℃、約195℃、約200℃である。
【0027】
本発明の半導電性ゴム組成物における発泡剤(C)の含有量は、ゴム成分(A)100重量部に対し、好ましくは4〜11重量部、より好ましくは5〜10重量部、特に好ましくは6〜9重量部である。発泡剤(C)の含有量が前記範囲にあると、正常な発泡体が得られると共に、好ましい硬度の発泡体が得られる。
【0028】
本発明の半導電性ゴム組成物は、発泡剤(C)の分解温度の低下、発泡度やセルの大きさの調整などを目的として、発泡助剤を含有することができる。発泡助剤としては尿素が好ましく用いられる。発泡助剤の使用量は、発泡剤の10重量%〜50重量%の範囲で選択される。
【0029】
本発明の架橋性ゴム組成物は、通常、上記半導電性ゴム組成物に架橋剤(D)を加えて調製される。架橋剤(D)としては、一般にゴムの架橋剤として使用されるものであれば特に限定はなく、硫黄または硫黄供与体、有機過酸化物、メルカプトトリアジン類、チオウレア類などを挙げることができる。
硫黄としては、粉末硫黄、硫黄華、脱酸硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、高分散性硫黄、不溶性硫黄などのいずれをも単独で、または二種以上併せて使用することができる。硫黄供与体は熱解離により放出される活性硫黄により架橋作用をおよぼすもので、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2)、チウラムポリスルフィド、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどが例示され、これらを単独でまたは複数併せて使用することができる。硫黄または硫黄供与体を使用したときは体積固有抵抗値の低いゴム架橋物が得られる。
有機過酸化物としてはケトンパーオキシド類、パーオキシエステル類、ジアシルパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類が好ましく例示され、これらの有機過酸化物を使用したときは耐圧縮永久歪みが良好なゴム架橋物が得られる。
チオウレア類としては、チオウレア、ジブチルチオウレア、トリエチルチオウレアなどを挙げることができる。
【0030】
本発明の架橋性ゴム組成物における架橋剤(D)の含有量は、ゴム成分(A)100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、特に好ましくは0.3〜10重量部である。架橋剤(D)の含有量が少なすぎると架橋速度が遅くてゴム架橋物の生産性が低下したり、得られるゴム架橋物を研磨して使用する場合に研磨性が低下したりするおそれがあり、逆に、多すぎるとゴム架橋物の硬度が高くなったり、架橋剤がブルームしたりする可能性がある。
【0031】
本発明の架橋性ゴム組成物において架橋剤(D)として硫黄または硫黄供与体を使用する場合は、チウラム系促進剤、チアゾール系促進剤、スルフェンアミド系促進剤などの架橋促進剤を使用することが好ましい。
チウラム系促進剤としてはテトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどが挙げられる。
チアゾール系促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどが挙げられる。
スルフェンアミド系促進剤としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどが挙げられる。
【0032】
架橋促進剤は2種以上を組み合わせて使用してもよい。架橋促進剤の配合量は、ゴム成分(A)100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、特に好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋速度が早くなりすぎたり、ゴム架橋物の表面にブルームしたりするおそれがある。
【0033】
本発明の架橋性ゴム組成物には、必要により以下に記す架橋促進助剤を配合することができ、特に架橋剤(D)が硫黄または硫黄供与体の場合に配合すると好ましい。かかる架橋促進助剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;水酸化カルシウムなどの金属水酸化物;炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛などの金属炭酸塩;ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩などが挙げられる。
また、架橋剤(D)に有機過酸化物を使用する場合には、必要により分子内に少なくとも2つの架橋性不飽和結合を有する架橋促進助剤を配合することができる。その具体例としては、エチレンジメタクリレート、ジアリルフタレート、N,N−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、液状ビニルポリブタジエンなどが挙げられる。
これら架橋促進助剤を2種以上組み合わせて使用することもできる。架橋促進助剤の配合量は、ゴム成分(A)100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、特に好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進助剤が多すぎると架橋速度が早すぎたり、ゴム架橋物の表面にブルームしたり、ゴム架橋物の硬度が高くなりすぎたりするおそれがある。
【0034】
本発明の架橋性ゴム組成物には、本発明の効果を損なわない限り、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどの、エピハロヒドリン系ゴム(a)及び低電気抵抗性ゴム(a)以外のゴム;オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ポリ塩化ビニル、クマロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂などを配合してもよい。
これらのゴム、熱可塑性エラストマーまたは樹脂の配合量は、ゴム成分(A)100重量部に対して、好ましくは合計100重量部以下である。
【0035】
本発明の架橋性ゴム組成物は、充填剤を含有しても良い。充填剤としては炭酸カルシウム、炭酸カルシウム・マグネシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;シリカなどの珪酸;珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどの珪酸塩;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩などが挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。なかでも炭酸カルシウムがゴム架橋物の硬度を適度に下げ、圧縮永久歪みを低減させるので特に好ましい。炭酸カルシウムのなかでもBET比表面積が0.5〜100m/gである炭酸カルシウムが、加工性に優れたゴム組成物と機械的特性に優れたゴム架橋物を与えるので好ましく、より好ましくは0.8〜80m/gであり、特に好ましくは1〜70m/gである。BET比表面積が小さすぎるとゴム架橋物は充分な引張強度を得ることができず、BET比表面積が大きすぎるとゴム架橋物の硬度が高すぎたり、圧縮永久歪みが大きくなったりするおそれがある。これらの充填剤の使用量は、ゴム成分(A)100重量部に対し、好ましくは1〜200重量部、より好ましくは2〜150重量部であり、特に好ましくは4〜100重量部である。
【0036】
本発明の架橋性ゴム組成物には、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含有させても良い。本発明で用いるゴム成分(A)はイオン伝導性高分子でもあり、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを導入するとゴム架橋物の体積固有抵抗値が大幅に低下する性質を有する。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、エピハロヒドリン系ゴム(a)または低電気抵抗性ゴム(a)に可溶のものであれば限定されない。例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF、PF、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8−テトラシアノ−p−キノジメタンイオンなどから選ばれる陰イオンと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウムから選ばれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンとからなる塩が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上併せて使用することができる。ゴム成分(A)100重量部に対するアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の使用量は、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.5〜3重量部である。これらの金属塩の使用量が少なすぎるとゴム架橋物の体積固有抵抗値が十分に小さくならないおそれがあり、多すぎると架橋性ゴム組成物中に十分に溶解せず、ゴム架橋物からブルームする可能性がある。
【0037】
本発明の架橋性ゴム組成物には、さらに必要に応じて、上記各成分以外に、本発明の効果、目的を阻害しない範囲で加工助剤、補強材、光安定剤、スコーチ防止剤、架橋遅延剤、可塑剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤などの添加剤を配合することができる。
【0038】
本発明の半導電性ゴム組成物および架橋性ゴム組成物を調製するには、ロール、インターミックス、ニーダ、バンバリーミキサ、スクリューミキサ等の混合機を用いて混合する方法、重合体成分を溶剤に溶解させた状態で各成分を分散させる方法、などの方法を用いることができる。
【0039】
本発明の架橋性ゴム組成物の成形方法及び架橋方法は特に限定されない。例えば、一軸や多軸の押出機を使用して上記ゴム組成物を押し出してゴム層を成形した後(ゴムロールを成形する場合は、棒状のステンレス鋼製等の軸体を取り巻くようにゴム組成物を押し出してゴム層を成形した後)、加熱して架橋する方法;射出成形機、押出ブロー成形機、トランスファー成形機、プレス成形機などを使用して金型でゴム層を成形し(ゴムロールを成形する場合は、軸体を取り囲むようにゴム層を成形し)、成形と同時に成形時の加熱で架橋する方法;などが挙げられる。中でも、押出機または射出成形機を用いる方法が最も適している。成形と架橋を同時に行うか、成形後に架橋するかは、成形方法、架橋方法、ゴム層の厚みなどに応じて選択すればよい。
【0040】
上記のように、成形に続く加熱により、または、成形時の加熱により、エピハロヒドリン系ゴム(a)及び低電気抵抗性ゴム(a)は、架橋剤(D)により架橋される。成形温度は好ましくは40〜220℃、より好ましくは60〜200℃である。架橋温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃〜250℃である。架橋温度が低すぎると架橋時間が長時間必要となったり、架橋密度が低くなったりするおそれがある。逆に、架橋温度が高すぎると架橋が短時間で進行し、成形不良を起こす可能性がある。架橋時間は、架橋方法、架橋温度、ゴム層の厚みなどにより異なるので特に限定されないが、架橋密度と生産効率の面から1分〜5時間の範囲で任意に選択すればよい。
加熱方法としては、電熱加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、UHF(超高周波)加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に通常用いられる方法を適宜選択すればよい。
【0041】
本発明の架橋性ゴム組成物を成形、架橋してなるゴム架橋物の体積固有抵抗値は適度に低くて半導電性領域にあり、好ましくは1×10〜1×1012Ω・cm、より好ましくは1×104.5〜1×1011.5Ω・cm、特に好ましくは1×10〜1×1011Ω・cmである。体積固有抵抗値が小さすぎるとゴム架橋物が帯電しにくくなるおそれがあり、逆に、大きすぎると帯電した電荷量が大きくなりすぎる可能性がある。いずれの場合も、例えば、本発明のゴム架橋物をプリンター用ゴムロールに用いた場合、印刷した画像が不鮮明になるおそれがある。
【0042】
本発明のゴム架橋物は、通電耐久性に優れるので、例えば、電子写真装置用のゴムロールに用いると長時間の通電においても電気特性が変化せず、その結果、長期間に渡り、画像を鮮明に印刷する事ができる。
【0043】
本発明のゴム架橋物の体積固有抵抗値は、環境の変化に対して安定である。例えば、高温、高湿度の環境下における体積固有抵抗値と、低温、低湿度の環境下における体積固有抵抗値との差が小さいので、環境による変動の少ない、即ち耐環境変動性に優れた電子写真装置用のゴムロールやゴムブレードを得ることが出来る。
【0044】
本発明のゴム架橋物は硬度が適度に低く、Duro type−Aは、好ましくは20〜80、より好ましくは25〜75、特に好ましくは30〜70である。硬度が上記範囲より低いと研磨しにくくなり、表面粗さの制御が難しくなるおそれがある。逆に、硬度が上記範囲より高いと、電子写真装置用のゴムロールやゴムブレードに用いられた場合に感光体の表層である感光層を傷つける可能性がある。
また、発泡剤(C)を含有する本発明の架橋性ゴム組成物を用いて発泡体のゴム架橋物を成形することも可能であり、その硬度(Duro type−C)は、好ましくは10〜70、より好ましくは15〜65、特に好ましくは20〜60である。発泡体の硬度が低すぎると研磨しにくくなり、表面粗さの制御が難しくなる等の問題が生じるおそれがある。逆に、発泡体の硬度が高すぎると感光体の表層である感光層に破壊が生じる可能性がある。
【0045】
本発明のゴム架橋物による半導電性ゴム部材を電子写真装置用のゴムロールとして使用するには、ゴム架橋物の表面を研磨して平滑な表面に仕上げることが好ましい。本発明のゴム架橋物は、研磨性が良好である。これは、該ゴム架橋物の引張応力が大きく、また、伸びが過大でないことによる。
【0046】
また、本発明のゴム架橋物の圧縮永久歪みは、JIS K6262に準じて圧縮率25%、70℃、24時間にて測定すると、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下である。圧縮永久歪みが高すぎると、例えば、プリンター用ゴムロールが変形して、印刷画像が不鮮明化したり、異音、振動などが起きたりするおそれがある。
【0047】
本発明のゴム架橋物は、プリンターや複写機、FAXなどの電子写真装置用のゴムロール(帯電ロール、現像ロールまたは転写ロール)やゴムブレード(帯電ブレード、クリーニングブレードまたはトナー制御ブレード)として、あるいは転写ベルト、中間転写体などとして使用できる。これらのゴム架橋物は、発泡体であってもよい。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。以下において「部」は特に断りのない限り重量基準である。また、各特性の評価、試験は、下記によった。
【0049】
(1)硬度
ゴム架橋物試料の硬度は、23℃、相対湿度50%の環境下でJIS K6253に準じて測定した。
【0050】
(2)体積固有抵抗値
ゴム架橋物試料の体積固有抵抗値を、SRIS(日本ゴム協会標準規格)2304に準じて測定した。測定条件は、温度23℃、湿度50%、直流500Vの電圧とした。体積固有抵抗値を常用対数で表示した。
【0051】
(通電前後の変動幅)
ゴム架橋物試料に、温度23℃、湿度50%、直流1000Vの条件で1時間通電するときの、通電を開始した直後と、1時間の通電を終了する直前の体積固有抵抗値を測定して、常用対数とした。
前記通電の前後における体積固有抵抗値の常用対数値の差を算出し、その絶対値を通電前後の変動幅とした。この値が小さいほど、体積固有抵抗が安定して優れている。
【0052】
(耐環境変動性)
高温高湿(温度32℃、湿度80%)および低温低湿(温度10℃、湿度15%)の各環境下において、直流500Vで体積固有抵抗を測定した。各環境における体積固有抵抗値の、常用対数の差を算出し、その絶対値を環境変動幅とした、この環境変動幅が小さいほど耐環境変動性に優れる。
【0053】
(実施例1)
エピクロルヒドリン系ゴム(a11)〔エピクロルヒドリン単量体単位32モル%、エチレンオキシド単量体単位62モル%、アリルグリシジルエーテル単量体単位6モル%;ムーニー粘度ML1+4(100℃)60、体積固有抵抗値3×10Ω・cm〕100部、老化防止剤(b)の4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(ノクラック300:分子量359、大内新興化学工業社製)1部、加工助剤兼架橋促進助剤のステアリン酸0.5部、架橋促進助剤の酸化亜鉛5部及び充填剤の炭酸カルシウム(シルバーW、白石工業社製、比表面積5.5m/g)30部を50℃に設定したバンバリーミキサで5分間混合した。得られた混合物を金属製の混練用6インチロールに移し、50℃にて更に硫黄(サルファックスPMC、鶴見化学工業社製)0.25部、硫黄供与体のモルホリンジスルフィド(バルノックR,大内新興化学工業社製)1部、並びに、架橋促進剤のテトラエチルチウラムジスルフィド(ノクセラーTET、大内新興化学工業社製)1部、ジベンゾチアジルジスルフィド(ノクセラーTET、大内新興化学工業社製)1.5部及び発泡剤p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド(セルマイクS、三協化成社製)7部を添加して混練し、半導電性ゴム組成物を得た。該組成物をステンレス製の長さ120mm、幅120mm、深さ2mmの型に入れ、プレス機で160℃、10MPaにて30分間プレス成形し、発泡により寸法が膨れたゴム架橋物(成形品)を作製した。
前記ゴム架橋物について硬度および各条件での体積固有抵抗値を測定し、評価した結果を表1に示す。
【0054】
(実施例2)
実施例1において、老化防止剤(b)1部に代えて、老化防止剤(b)の4,4’−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド(サンダント103:分子量470、三新化学工業社製)1部を使用した。その他は実施例1と同様に行った。実施例1と同様の試験、評価を行った結果を表1に記す。
【0055】
(実施例3)
実施例1において、エピクロルヒドリン系ゴム(a11)100部を、同70部およびニトリルゴム(a21)〔アクリロニトリル単量体単位18モル%、1,3−ブタジエン単量体単位82モル%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)32、体積固有抵抗値2×1010Ω・cm〕30部の混合に変えた他は実施例1と同様に行った。実施例1と同様の試験、評価を行った結果を表1に記す。
【0056】
(実施例4)
実施例1において、エピクロルヒドリン系ゴム(a11)100部を、同60部、ニトリルゴム(a21)30部およびエチレンオキシド系重合体(a22)〔エチレンオキシド単位80モル%、プロピレンオキシド単位5モル%、アリルグリシジルエーテル単位15モル%;ムーニー粘度ML1+4(100℃)81、体積固有抵抗値6.2×10Ω・cm〕10部の混合に変えた他は実施例1と同様に行った。実施例1と同様の試験、評価を行った結果を表1に記す。
【0057】
(比較例1)
実施例1において、エピクロルヒドリン系ゴム(a11)100部を、同15部およびエチレンオキシド系重合体(a22)85部の混合に変えた他は実施例1と同様に行った。実施例1と同様の試験、評価を行った結果を表1に記す。
【0058】
(比較例2)
実施例1において、老化防止剤(b)1部を0.05部に減じて用いた他は実施例1と同様に行った。実施例1と同様の試験、評価を行った結果を表1に記す。
【0059】
(比較例3)
実施例1において、老化防止剤(b)1部をモノフェノール系老化防止剤(b’)の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ノクラック200、大内新興化学工業社製)1.2部に代えた他は実施例1と同様に行った。実施例1と同様の試験、評価を行った結果を表1に記す。
【0060】
(比較例4)
実施例1において、老化防止剤(b)1部をアミン系老化防止剤(b’)4,4’−ビス(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(ノクラックCD、大内新興化学工業社製)1.1部に代えた他は実施例1と同様に行った。実施例1と同様の試験、評価を行った結果を表1に記す。
【0061】
(比較例5)
実施例1において、老化防止剤(b)1部を削除した他は実施例1と同様に行った。実施例1と同様の試験、評価を行った結果を表1に記す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1が示すように、本発明の要件を満たすゴム架橋物は環境条件によって体積固有抵抗値が安定であり、かつ、半導電性の体積固有抵抗値は長時間の通電に対して安定であった(実施例1〜4)。
これに対し、エピハロヒドリン系ゴムの割合15重量%、低電気抵抗性ゴムの割合85重量%からなるゴム成分(A)を用いると、通電耐久性は優れるものの、環境変動幅が大きく、耐環境変動性に劣る結果となった(比較例1)。ビスフェノール系老化防止剤の配合量が少なすぎると、通電における体積固有抵抗の上昇が大きくなった(比較例2)。老化防止剤としてモノフェノール系やアミン系のものを使用すると、通電時に体積固有抵抗の上昇が大きいゴム架橋物となった(比較例3、4)。また、老化防止剤を使用しないで得たゴム架橋物は、通電時に体積固有抵抗の上昇が大きかった(比較例5)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピハロヒドリン系ゴム(a)20〜100重量%及び低電気抵抗性ゴム(a)80〜0重量%からなるゴム成分(A)100重量部に対し、ビスフェノール系老化防止剤(B)を0.1〜3重量部含有してなる半導電性ゴム組成物。
【請求項2】
さらに発泡剤(C)を4〜11重量部含有してなる請求項1記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導電性ゴム組成物に架橋剤(D)を加えてなる架橋性ゴム組成物。
【請求項4】
請求項3記載の架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。


【公開番号】特開2007−224215(P2007−224215A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49305(P2006−49305)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】