説明

半導電性ゴム組成物及び半導電性ゴム部材

【課題】 体積固有抵抗が適度に低くて圧縮永久歪みの小さい非汚染性の加硫物を与える、スコーチタイムが長いゴム組成物、及び、該組成物を加工してなる半導電性ゴム部材を提供すること。
【解決手段】 特定割合のエチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)及び低電気抵抗性ゴム(B)からなるゴム混合物、硫黄及び/又は硫黄供与体(C)、スルフェンアミド系加硫促進剤(D)並びに加工助剤(E)を含有してなり、(A)が特定ムーニー粘度を有し、特定割合のエチレンオキシド単位及びこれと共重合可能なオキシラン単量体単位を含有し、かつ、架橋性オキシラン単量体単位含有量が0.1〜20モル%で、(B)の体積固有抵抗値が1013Ω・cm以下で、(E)が、トリブチルリン酸エステル、亜リン酸アルキルエステル及び/もしくは亜リン酸アリールエステル、並びに、アルカン酸並びに/又はアルカン酸アルケニルエステル及び/もしくはアルケン酸アルケニルエステルからなるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターや複写機などの電子写真装置に使用される半導電性ゴム部材、及び、その材料として好適なゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複写機などの電子写真装置には、感光体に直接接触して帯電、転写、現像等の機能をそれぞれ発現するプリンター用ゴムロールや、帯電、清掃、トナー制御等の機能をそれぞれ有するプリンター用ゴムブレード等のゴム部材が使用されている。プリンター用ゴムロールやプリンター用ゴムブレードは、静帯電防止対策として一定の低電気抗性(半導電性)を有することが必要であり、また、感光体表層の感光層を傷つけないようにするため、ゴムの硬さが低いことが要求される。
ポリエーテルゴムはそれ自体が半導電性であり、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムの場合のように微量のカーボンブラックなどの導電付与材を均一に分散させるという困難を要しないので、プリンター用ゴムロールやプリンター用ゴムブレードにはポリエーテルゴム(エピハロヒドリンゴム含む)が用いられるようになった。
一方、低硬度のゴムを得るには、一般的には可塑剤、軟化剤、液状ポリマーなどを配合するが、これらの添加剤は組成物の成形時に粘着性を発現して加工性を低下させ、また、成形されたゴム部材にブルームやブリードを起こして感光体を汚染して印刷を不鮮明にする傾向がある。低硬度のゴムを得る別の方法として、ゴムの加硫密度を低下させる方法、未加硫ゴムを混入する方法などもあるが、これらの方法を用いると、ゴムの圧縮永久歪みが大きくなったり、ブルームやブリードによる汚染が生じたりして、やはり印刷が不鮮明になるおそれがある。
【0003】
特許文献1は、適度の導電性を有する非汚染性の電子写真装置用ゴム部材として、エピクロルヒドリンゴム、アルカン酸、トリブチルリン酸エステル、並びに、アルキル及び/又はアリールの亜リン酸エステルを含有する組成物からなるゴム部材を提案している。しかし、このゴム部材は非汚染性が不十分であり、また、圧縮永久歪みが大きいので印刷の鮮明度を阻害する欠点を有している。また、本出願人は、先に、エチレンオキシド単位70〜99モル%、それ以外の共重合可能のオキシラン単量体単位30〜1モル%を含有し、かつ、反応性官能基を有するオキシラン単量体単位が20モル%以下で、ムーニー粘度20〜200のポリエーテル系重合体及びEPDMからなるゴム組成物が非汚染性で、表面摩擦抵抗と体積固有抵抗が小さな低硬度の加硫物を与えることを開示した(特許文献2)。しかしながら、該加硫物の圧縮永久歪みは十分に改善されていない。また、スコーチタイムが長いゴム組成物材料の潜在的ニーズは今なお存在する。
【0004】
【特許文献1】特開2000−235295号公報
【特許文献2】特開2001−123028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、プリンター用ゴムロール、プリンター用ゴムブレード等に好適な、体積固有抵抗が適度に低くて圧縮永久歪みの小さい非汚染性の加硫物を与える、スコーチタイムが長いゴム組成物、及び、該組成物を加工してなる半導電性ゴム部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、エチレンオキシド系開環共重合ゴムを含む特定のゴム混合物、硫黄系加硫剤、スルフェンアミド系加硫促進剤及び組み合わせ加工助剤からなる半導電性ゴム組成物により上記目的が達成されることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして本発明によれば、以下の1〜4が提供される。
1. エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)3〜60重量%及び低電気抵抗性ゴム(B)97〜40重量%からなるゴム混合物100重量部に対し、硫黄及び/又は硫黄供与体(C)0.1〜15重量部、スルフェンアミド系加硫促進剤(D)0.1〜10重量部並びに加工助剤(E)0.1〜5重量部を含有してなるゴム組成物であって、
前記エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)が、エチレンオキシド単位50〜99.8モル%及びエチレンオキシドと共重合可能なオキシラン単量体単位50〜0.1モル%を含有し、かつ、架橋性オキシラン単量体単位含有量が0.1〜20モル%で、ムーニー粘度が20〜200であり、
前記低電気抵抗性ゴム(B)が、体積固有抵抗値が1013Ω・cm以下である、前記エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)以外のゴムであり、
前記加工助剤(E)が、トリブチルリン酸エステル、亜リン酸アルキルエステル及び/もしくは亜リン酸アリールエステル、並びに、アルカン酸並びに/又はアルカン酸アルケニルエステル及び/もしくはアルケン酸アルケニルエステルからなるものである半導電性ゴム組成物。
2. さらに、チウラム系加硫促進剤0.1〜5重量部を含有してなる上記1記載の半導電性ゴム組成物。
3. さらに、炭酸カルシウム1〜200重量部を含有してなる上記1又は2記載の半導電性ゴム組成物。
4. 上記1〜3記載のいずれかの半導電性ゴム組成物を成形、加硫してなるゴム層を有する半導電性ゴム部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、プリンター用ゴムロール、プリンター用ゴムブレード等に好適な、体積固有抵抗が適度に低くて圧縮永久歪みの小さい非汚染性の加硫物を与える、スコーチタイムが長いゴム組成物、及び、該組成物を加工してなる半導電性ゴム部材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の半導電性ゴム組成物は、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)3〜60重量%及び低電気抵抗性ゴム(B)97〜40重量%からなるゴム混合物100重量部に対し、硫黄及び/又は硫黄供与体(C)0.1〜15重量部、スルフェンアミド系加硫促進剤(D)0.1〜10重量部並びに加工助剤(E)0.1〜5重量部を含有してなるゴム組成物であって、前記エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)が、エチレンオキシド単位50〜99.8モル%及びエチレンオキシドと共重合可能なオキシラン単量体単位50〜0.1モル%を含有し、かつ、架橋性オキシラン単量体単位含有量が0.1〜20モル%で、ムーニー粘度が20〜200であり、前記低電気抵抗性ゴム(B)が、体積固有抵抗値が1013Ω・cm以下である、前記エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)以外のゴムであり、前記加工助剤(E)が、トリブチルリン酸エステル、亜リン酸アルキルエステル及び/もしくは亜リン酸アリールエステル、並びに、アルカン酸並びに/又はアルカン酸アルケニルエステル及び/もしくはアルケン酸アルケニルエステルからなるものであることを特徴とする。
【0010】
本発明組成物に用いるエチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)を構成する全単量体単位に対するエチレンオキシド(a1)単位の含有量は、50〜99.8モル%、好ましくは60〜97モル%、より好ましくは70〜95モル%である。エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)中のエチレンオキシド(a1)単位の含有量が少なすぎると、加硫物の表面摩擦抵抗や体積固有抵抗値が大きくなりすぎ、また、溶媒スラリー重合法による製造過程において重合体と溶媒とを分離する工程でクラムが互着したり、ゴム保管時に重合体粒子が固着する等の不具合を生じたりするおそれがある。一方、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)中のエチレンオキシド(a1)単位の含有量が多すぎると、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)の主鎖が結晶化しやすく、加硫物の体積固有抵抗値が大きくなったり、加硫物の硬度が高くなったりする可能性がある。
【0011】
エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)を構成する全単量体単位に対するエチレンオキシドと共重合可能なオキシラン単量体(a2)単位の含有量は、50〜0.1モル%、好ましくは40〜0.5モル%、より好ましくは30〜1モル%である。エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)中のエチレンオキシドと共重合可能なオキシラン単量体(a2)単位の含有量が少なすぎると、エチレンオキシド(a1)単位の含有量が大きくなり、ゴムの主鎖が結晶化しやすくなるので、加硫物の体積固有抵抗値が大きくなったり、硬度が高くなったりするおそれがある。一方、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)中のエチレンオキシドと共重合可能なオキシラン単量体(a2)単位の含有量が多すぎると、加硫物の表面摩擦抵抗や体積固有抵抗値が大きくなりすぎ、また、溶媒スラリー重合法による製造過程において重合体と溶媒とを分離する工程でクラムが互着したり、ゴム保管時に重合体粒子が固着するなどの不具合を生じたりする可能性がある。
【0012】
エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)において、エチレンオキシドと共重合可能なオキシラン単量体(a2)単位には架橋性オキシラン単量体が含まれる。架橋性オキシラン単量体としては、ハロゲン原子含有オキシラン単量体又は炭素−炭素不飽和結合を有するオキシラン単量体(不飽和エポキシド類)が好ましい。
【0013】
ハロゲン原子含有オキシラン単量体としては、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリンなどのエピハロヒドリン類;p−クロロスチレンオキシドなどのハロゲン置換オキシラン単量体などが挙げられ、なかでもエピクロルヒドリンが好ましい。
不飽和エポキシド類としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテルなどのアルケニルグリシジルエーテル類;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセンなどのアルケニルエポキシド類;スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテルなどのアリールエポキシド類;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンなどのジエン又はポリエンのモノエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;などが挙げられる。これらの中でも、アルケニルグリシジルエーテルが好ましく、アリルグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0014】
エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)を構成する全単量体単位に対する架橋性オキシラン単量体単位含有量は、全単量体単位中0.1〜20モル%、好ましくは0.3〜18モル%、より好ましくは0.5〜15モル%である。エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)中の架橋性オキシラン単量体単位含有量が少なすぎるとエチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)の加硫ができなかったり、得られた加硫物の強度物性が低くなったりするおそれがある。一方、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)中の架橋性オキシラン単量体単位含有量が多すぎると加硫物の硬さが高くなりすぎたり、伸びが低くなったりする可能性がある。
【0015】
エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)の100℃でのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は20〜200、好ましくは30〜170、より好ましくは40〜150である。ムーニー粘度が低すぎると得られる加硫物の機械的強度や耐摩耗性が低下し、圧縮永久歪みが大きくなるおそれがあり、逆に、高すぎると成形加工が困難になり、加硫物の寸法安定性が低下する可能性がある。
また、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)の体積固有抵抗値は、好ましくは1×10〜1×1011Ω・cmであり、より好ましくは1×104.5〜1×1010.5Ω・cm、特に好ましくは1×10〜1×1010Ω・cmである。
【0016】
本発明組成物に用いる低電気抵抗性ゴム(B)は、体積固有抵抗値が1013Ω・cm以下、好ましくは1×10〜9.9×1013Ω・cm、より好ましくは1×104.5〜1×1012.5Ω・cmであって、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)以外のゴムである。低電気抵抗性ゴム(B)の体積固有抵抗値が小さすぎると、得られる加硫物の体積固有抵抗値が低くなりすぎたり、電気的均一性に劣る場合があり、逆に、低電気抵抗性ゴム(B)の体積固有抵抗値が大きすぎると、加硫物も体積固有抵抗値が大きくなったり、電気的均一性に劣る。
【0017】
低電気抵抗性ゴム(B)の100℃で測定したムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは150〜15、より好ましくは100〜20、特に好ましくは70〜25である。 ムーニー粘度が高すぎると加工性に劣るおそれがあり、低すぎると粘着性が大きくなる可能性がある。
【0018】
低電気抵抗性ゴム(B)としては、 分子中にエーテル結合、エステル結合又はニトリル基を有するゴムが好ましく、主鎖にエーテル結合を含有するゴム又は側鎖にニトリル基を含有するゴムが特に好ましい。具体的には、共役ジエン単量体とα,β−エチレン性不飽和ニトリル基含有単量体との共重合体(以下、「ニトリルゴム」と記す。)、その水素化物及びエピハロヒドリン系ゴムが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上併せて用いられる。
【0019】
前記ニトリルゴムの製造に用いる共役ジエン単量体としては、ブタジエンが好ましく、α,β−エチレン性不飽和ニトリル基含有単量体としては、アクリロニトリルが好ましい。また、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で、これらと共重合可能な他の単量体をさらに共重合させてもよい。ニトリルゴム中の共役ジエン単量体単位の含有量は、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜85重量%であり、α,β−エチレン性不飽和ニトリル基含有単量体単位の含有量は、好ましくは60〜10重量%、より好ましくは50〜15重量%である。ニトリルゴムを構成する全単量体単位に対するα,β−エチレン性不飽和ニトリル基含有単量体単位の含有量が少なすぎると該共重合体の体積固有抵抗値が高くなるおそれがあり、同含有量が多すぎると該共重合体のムーニー粘度が高くなって加工性が劣ったり、加硫物の硬度が高くなったりする可能性がある。
また、前記ニトリルゴムの主鎖中の不飽和結合を水素添加によって飽和させたゴムは、水素添加前の共重合体と比べて、体積固有抵抗値、ムーニー粘度などに実質的な変動はない。
【0020】
前記エピハロヒドリン系ゴムは、エピハロヒドリン単量体の開環重合体、又は、エピハロヒドリン単量体及びこれと共重合可能な単量体の開環共重合体である。エピハロヒドリン単量体としては、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリンなどがあり、エピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリン単量体と共重合可能な単量体としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド単量体のほか、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテルなどが挙げられ、なかでもアルキレンオキシド単量体が好ましい。エピハロヒドリン系ゴムを構成する全単量体単位に対するエピハロヒドリン単量体単位の含有量は、好ましくは35〜90モル%、より好ましくは40〜80モル%であり、アルキレンオキシド単量体単位の含有量は、好ましくは65〜10モル%、より好ましくは60〜20モル%である。エピハロヒドリン単位の含有量が少なすぎると加硫物が吸湿しやすくなるおそれがあり、多すぎると加硫物の耐寒性に劣ったり、体積固有抵抗値が大きくなったりする可能性がある。これら以外の単量体単位の含有量は、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
【0021】
本発明組成物において、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)と低電気抵抗性ゴム(B)との混合比率は、(3〜60)重量%/(97〜40)重量%、好ましくは(4〜50)重量%/(96〜50)重量%、より好ましくは(5〜40)重量%/(95〜60)重量%である。低電気抵抗性ゴム(B)の割合が少なすぎると加硫物の体積固有抵抗値が小さくなり過ぎたり、圧縮永久歪みが大きくなったりするおそれがあり、逆に、低電気抵抗性ゴム(B)の割合が多すぎると加硫物の体積固有抵抗値が大きくなりすぎる可能性がある。
【0022】
本発明の半導電性ゴム組成物においては、加硫剤として硫黄及び/又は硫黄供与体(C)を用いる。硫黄としては、粉末硫黄、硫黄華、脱酸硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、高分散性硫黄、不溶性硫黄などのいずれをも単独で、又は二種以上併せて使用することができる。硫黄供与体は、熱解離により放出される活性硫黄により加硫作用をおよぼすもので、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2)、チウラムポリスルフィド、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどが例示され、これらを単独で又は複数併せて使用することができる。
本発明組成物における硫黄及び/又は硫黄供与体の含有量は、エチレンオキシド開環共重合ゴム(A)及び低電気抵抗性ゴム(B)からなるゴム混合物100重量部に対し0.1〜15重量部、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.25〜5重量部である。硫黄及び/又は硫黄供与体の含有量が少なすぎると加硫速度が遅くて加硫物の生産性が低下したり、得られる加硫物を研磨して使用する場合に研磨性が低下したりするおそれがあり、逆に、多すぎると加硫物の硬さが高くなったり、加硫に寄与しなかった硫黄が遊離してブルームしたりする可能性がある。
【0023】
本発明の半導電性ゴム組成物に用いられるスルフェンアミド系加硫促進剤(D)は、下記一般式(1)の化学構造を有する化合物で、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどが例示される。式中、R及びR’は独立に水素原子、シクロヘキシル基、t−ブチル基、イソプロピル基などを表わす。
【0024】
【化1】

【0025】
本発明組成物におけるスルフェンアミド系加硫促進剤(D)の含有量は、エチレンオキシド開環共重合ゴム(A)及び低電気抵抗性ゴム(B)からなるゴム混合物100重量部に対し0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部、より好ましくは0.3〜5重量部である。スルフェンアミド系加硫促進剤(D)の含有量が少なすぎると加硫物は圧縮永久歪みが大きくなったり、非汚染性が不十分になるおそれがあり、逆に、多すぎると加硫物は硬さが高くなったり、促進剤のブルームが出たりする可能性がある。
【0026】
本発明組成物においては、加硫促進剤としてスルフェンアミド系加硫促進剤(D)を他の加硫促進剤と併用することができ、特にチウラム系加硫促進剤と併用すると、加硫物の体積固有抵抗が低減する傾向があるので好ましい。
チウラム系加硫促進剤は、下記一般式(2)の化学構造を有する化合物で、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィドなどが挙げられる。式中、R及びR’は独立にメチル基、エチル基、ブチル基、シクロヘキシル基などを、また、nは1、2又は4〜6の整数を表わす。チウラム系加硫促進剤を併用するときのチウラム系加硫促進剤の使用量は、エチレンオキシド開環共重合ゴム(A)及び低電気抵抗性ゴム(B)からなるゴム混合物100重量部に対し、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜4重量部、特に好ましくは0.5〜3重量部である。チウラム系促進剤(D)の使用量が少なすぎると加硫物は体積固有抵抗値が大きくなったり、圧縮永久歪みが大きくなったりするおそれがあり、逆に、多すぎると加硫速度が速すぎたり、加硫促進剤のブルームが出たりする可能性がある。
【0027】
【化2】

【0028】
また、スルフェンアミド系加硫促進剤(D)と併用することのできるその他の加硫促進剤としては、チアゾール系促進剤(例ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールなど)、ジチオカルバミン酸塩系促進剤(ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛など)、チオウレア系促進剤〔エチレンチオウレア(2−メルカプトイミダゾリン)、ジエチルチオウレアなど〕、グアニジン系促進剤(ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジンなど)などを単独で、もしくは二種以上併せて、又はチウラム系促進剤と共に使用することができる。
【0029】
本発明の半導電性ゴム組成物が含有する、トリブチルリン酸エステル、亜リン酸アルキルエステル及び/もしくは亜リン酸アリールエステル、並びに、アルカン酸並びに/又はアルカン酸アルケニルエステル及び/もしくはアルケン酸アルケニルエステルからなる加工助剤(E)は、該ゴム組成物を調製する際の混練機やロールへの粘着を防止するので加工性を向上させる作用を有する。
前記トリブチルリン酸エステルは無色、無臭で沸点289℃(1.013×10Pa)の透明な液体で、一般にゴム加工において可塑剤として用いられているものである。
前記亜リン酸アルキルエステル及び/もしくは亜リン酸アリールエステルは、下記一般式(3)で表される化合物である。式中、R,R’及びR”は独立に水素原子、炭素数8〜12のアルキル基、シクロアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を表す。
【0030】
【化3】

【0031】
かかる亜リン酸アルキルエステル及び亜リン酸アリールエステルの例としては、アルキル(炭素数8〜12)シクロヘキシルフェニルホスファイト及びアルキル(炭素数8〜12)フェニルシクロヘキシルホスファイトが挙げられる。
【0032】
前記アルカン酸は、特に限定されないが、炭素数4〜30の直鎖状の飽和脂肪酸が好ましい。
【0033】
前記アルカン酸アルケニルエステル及び/もしくはアルケン酸アルケニルエステル(以下、これらをまとめて「アルケニルエステル化合物」と記すことがある。)は、炭素数8〜30のアルカン酸又はアルケン酸と炭素数4〜30のアルケニルアルコールとのエステルである。
【0034】
本発明組成物において、加工助剤(E)は上記成分を混合して形成されるが、本発明組成物調製前に予め混合しておいてもよいし、本発明組成物の調製時に各構成成分を個々に添加することによって混合してもよい。本発明組成物の前記各成分の含有量は、エチレンオキシド開環共重合ゴム(A)及び低電気抵抗性ゴム(B)からなるゴム混合物100重量部に対し、トリブチルリン酸エステルが好ましくは0.015〜2.5重量部、より好ましくは0.02〜2重量部;亜リン酸アルキルエステル及び/もしくは亜リン酸アリールエステルが好ましくは0.02〜2.5重量部、より好ましくは0.03〜2重量部;アルカン酸が好ましくは0〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部;アルケニルエステル化合物が好ましくは0〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部である。
【0035】
本発明組成物における加工助剤(E)の含有量は、エチレンオキシド開環共重合ゴム(A)及び低電気抵抗性ゴム(B)からなるゴム混合物100重量部に対し0.1〜5重量部、好ましくは0.15〜4重量部、より好ましくは0.2〜3重量部である。加工助剤(E)の含有量が少なすぎるとゴム組成物の素練り、混練時に混練機にゴム組成物が粘着したり、加硫物にブルームが生じたりするおそれがあり、逆に、多すぎるとゴム組成物を押出成形する時などに押出機内で滑りすぎ、計量が不安定になる可能性がある。
【0036】
本発明組成物の特性を損なわない限り、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどの、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)及び低電気抵抗性ゴム(B)以外のゴム;オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ポリ塩化ビニル、クマロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂などを配合してもよい。
これらのゴム、熱可塑性エラストマー並びに樹脂は、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)及び低電気抵抗性ゴム(B)からなるゴム混合物100重量部に対して、好ましくは合計100重量部以下配合してよい。
【0037】
本発明組成物は、充填剤を含有しても良い。充填剤としては炭酸カルシウム、炭酸カルシウム・マグネシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;シリカなどの珪酸;珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどの珪酸塩;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩などが挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。なかでも炭酸カルシウムが加硫物の硬さを適度に下げ、圧縮永久歪みを低減させるので特に好ましい。炭酸カルシウムのなかでもBET比表面積が0.5〜100m/gである炭酸カルシウムが、加工性に優れたゴム組成物と機械的特性に優れた加硫物を与えるので好ましく、より好ましくは0.8〜80m/gであり、特に好ましくは1〜70m/gである。BET比表面積が小さすぎると加硫物は充分な引張強度を得ることができず、BET比表面積が大きすぎると加硫物の硬さが高すぎたり、圧縮永久歪みが大きくなったりするおそれがある。これらの充填剤の使用量は、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)及び低電気抵抗性ゴム(B)からなるゴム混合物100重量部に対し、好ましくは1〜200重量部、より好ましくは2〜150重量部であり、特に好ましくは4〜100重量部である。
【0038】
本発明組成物には、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有させても良い。本発明で用いるゴム混合物はイオン伝導性高分子でもあり、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを導入すると加硫物の体積固有抵抗値が大幅に低下する性質を有する。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としては、本発明のエチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)又は低電気抵抗性ゴム(B)に可溶のものであれば限定されない。例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF、PF、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8−テトラシアノ−p−キノジメタンイオンなどから選ばれる陰イオンと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウムから選ばれるアルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンとからなる塩が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上併せて使用することができる。
【0039】
エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)及び低電気抵抗性ゴム(B)からなるゴム混合物100重量部に対するアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の使用量は、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.5〜3重量部である。アルカリ金属塩の使用量が小さすぎると加硫物の体積固有抵抗値が十分に小さくならないおそれがあり、大きすぎるとゴム組成物中に十分に溶解せず、加硫物からブルームしてしまう可能性がある。
【0040】
本発明組成物には、さらに必要に応じて、上記各成分以外に、本発明の効果、目的を阻害しない範囲で、補強材、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、スコーチ防止剤、加硫遅延剤、可塑剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤、発泡剤などの添加剤を配合することができる。
【0041】
本発明の半導電性ゴム組成物を調製するには、ロール、インターミックス、ニーダ、バンバリーミキサ、スクリューミキサ等の混合機を用いて混合する方法、重合体成分を溶剤に溶解させた状態で各成分を分散させる方法、などの方法を用いることができる。
【0042】
本発明の半導電性ゴム組成物は非粘着性であるので、混練機からの取り出し(ダンプアウト)などの作業が容易で、従って加工性に優れ、ゴム部材製造の生産性に優れる。
【0043】
本発明組成物の成形方法及び加硫方法は特に限定されない。例えば、一軸や多軸の押出機を使用して上記ゴム組成物を押し出してゴム層を成形した後(ゴムロールを成形する場合は、棒状のステンレス鋼製等の軸体を取り巻くようにゴム組成物を押し出してゴム層を成形した後)、加熱して加硫する方法;射出成形機、押出ブロー成形機、トランスファー成形機、プレス成形機などを使用して金型でゴム層を成形し(ゴムロールを成形する場合は、軸体を取り囲むようにゴム層を成形し)、成形と同時に成形時の加熱で加硫する方法;などが挙げられる。中でも、押出機又は射出成形機を用いる方法が最も適している。成形と加硫を同時に行うか、成形後に加硫するかは、成形方法、加硫方法、ゴム層の厚みなどに応じて選択すればよい。
【0044】
上記のように、成形に続く加熱により、又は、成形時の加熱により、エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)及び低電気抵抗性ゴム(B)が硫黄及び/又は硫黄供与体(C)で加硫される。成形における温度は好ましくは40〜220℃、より好ましくは60〜200℃である。加硫での温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃〜250℃である。加硫温度が低すぎると加硫時間が長時間必要となったり、加硫密度が低くなったりするおそれがある。逆に、加硫温度が高すぎると加硫が短時間で進行し、成形不良を起こす可能性がある。加硫時間は、加硫方法、加硫温度、ゴム層の厚みなどにより異なるので特に限定されないが、加硫密度と生産効率の面から1分〜5時間の範囲で任意に選択すればよい。
加熱方法としては、電熱加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、UHF(超高周波)加熱、熱風加熱などのゴムの加硫に通常用いられる方法を適宜選択すればよい。
【0045】
本発明の半導電性ゴム部材は、プリンター用ゴムロールなどとして使用するため、加硫物の表面を研磨して平滑な表面に仕上げることが好ましい。本発明の半導電性ゴム部材は、研磨性が良好である。これは、該ゴム部材の引張応力が大きく、また、伸びが過大でないことによる。
研磨方法としては、通常、プリンター用ゴムロールの製造に適用される方法であれば特に限定されない。例えば、砥石などの研磨材を加硫物表面に直接接触させて機械的に研磨する乾式研磨の方法や、研磨材とゴム層との間に水系の液体を介在させてゴム層を機械的に研磨する湿式研磨等の方法が挙げられる。
【0046】
本発明の半導電性ゴム部材のゴム層の厚みは、好ましくは10μm〜15mm、より好ましくは50μm〜10mm、特に好ましくは100μm〜8mmである。ゴム層の厚みが小さすぎると耐摩耗性が低下するおそれがあり、大きすぎると画像形成時に必要な電荷量が過大になり画像が不鮮明になるおそれがある。
【0047】
本発明の半導電性ゴム部材の体積固有抵抗は半導電性領域の値であり、好ましくは1×10〜1×1012Ω・cm、より好ましくは1×104.5〜1×10111.5Ω・cm、特に好ましくは1×10〜1×1011Ω・cmである。体積固有抵抗値が小さすぎるとゴム部材が帯電しにくくなるおそれがあり、逆に、大きすぎると帯電した電荷量が大きくなりすぎる可能性がある。いずれの場合も、例えば、プリンター用ゴムロールを用いて印刷した画像が不鮮明になるおそれがある。
【0048】
本発明の半導電性ゴム部材の硬さ(Duro type−A)は、好ましくは20〜80、より好ましくは25〜75、特に好ましくは30〜70である。硬さが低すぎると研磨しにくくなり、表面粗さの制御が難しくなる等の問題が生じるおそれがある。逆に、硬さが高すぎると感光体の表層である感光層に破壊が生じる可能性がある。
また、発泡剤を含有する本発明組成物を用いて発泡体を成形することも可能であり、その発泡体を使用したゴム部材の硬さ(Duro type−E)は、好ましくは10〜70、より好ましくは15〜65、特に好ましくは20〜60である。発泡体の硬さが低すぎると研磨しにくくなり、表面粗さの制御が難しくなる等の問題が生じるおそれがある。逆に、発泡体の硬さが高すぎると感光体の表層である感光層に破壊が生じる可能性がある。
【0049】
また、本発明の半導電性ゴム部材の圧縮永久歪みは、JIS K6262に準じ、圧縮率25%、70℃、24時間にて測定すると、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下である。圧縮永久歪みが高すぎると、例えば、プリンター用ゴムロールが変形して、印刷画像が不鮮明化したり、異音、振動などが起きたりするおそれがある。
【0050】
さらに、本発明の半導電性ゴム部材は、ブリード及びブルームをほとんど起こさず非汚染性に優れる。そのため、感光体は長時間にわたって清浄に保たれる。
【0051】
本発明の半導電性ゴム部材は、プリンターや複写機、FAXなどの電子写真装置用の帯電ロール、現像ロールもしくは転写ロールとして、また、帯電ブレード、クリーニングブレードもしくはトナー制御ブレードとして、あるいは転写ベルト、中間転写体などとして使用できる。これらの半導電性ゴム部材は、発泡体であってもよい。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。以下において「部」及び「%」は特に断りのない限り重量基準である。また、各特性の評価、試験は、下記によった。
【0053】
(1)ムーニースコーチタイム(t5)
ゴム組成物のムーニースコーチタイム(t5)をJIS K6300に準じて測定した。
(2)非粘着性(加工性)
硫黄、硫黄供与体及び加硫促進剤を除く配合成分を50℃に設定したバンバリーミキサで5分間混合し、その後、バンバリーミキサから混合物を取り出す際に、ロータ内部から、ゴムが排出されるかどうかで非粘着性(加工性)を判断した。
○:ロータ内部から混合物が排出される
×:混合物が粘着してロータ内部に残る
【0054】
(3)ブルーム及びブリード検査
加硫物試料を23℃、湿度55%の条件で3日間放置してから表面を観察し、下記の基準で評価した。
○:表面にブルーム又はブリードの現象が見られない
×:表面にブルーム又はブリードの現象が見られる
【0055】
(4)体積固有抵抗
加硫物試料の体積固有抵抗値を、SRIS(日本ゴム協会標準規格)2304に準じて測定した。測定条件は、温度23℃、湿度55%、直流500Vの電圧とした。
【0056】
(5)圧縮永久歪み
加硫物試料の圧縮永久歪みを、JIS K6262に準じて測定した。試験条件は、圧縮率25%、70℃、24時間とした。
【0057】
(実施例1)
エチレンオキシド系開環共重合ゴム〔エチレンオキシド単量体単位90モル%、プロピレンオキシド単量体単位3モル%、アリルグリシジルエーテル単量体単位7モル%;ムーニー粘度ML1+4(100℃)135、体積固有抵抗1×10Ω・cm〕30部、ニトリルゴム〔ブタジエン単量体単位82モル%、アクリロニトリル単量体単位18モル%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)32、体積固有抵抗7×1011 Ω・cm〕70部、加工助剤〔トリブチルリン酸エステル0.06部、亜リン酸アルキル(炭素数8〜12)シクロヘキシルフェニル0,26部及びアルカン酸(炭素数4〜30)0,18部〕0,5部、加硫促進助剤の酸化亜鉛5部及び充填剤の炭酸カルシウム(ホワイトンSB、白石カルシウム社製、BET比表面積1.2m/g)30部を50℃に設定したバンバリーミキサで5分間混合した。得られた混合物を金属製の混練用6インチロールに移し、50℃にて更に硫黄0.25部、モルホリンジスルフィド(硫黄供与体)1部、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド3部、並びに、加硫促進剤のテトラエチルチウラムジスルフィド1.5部及びジベンゾチアジルジスルフィド1部を添加して混練し、半導電性ゴム組成物を得た。該組成物をプレス機で160℃、10MPaにて30分間プレス成形して長さ15cm、幅15cm、厚み2mmの加硫物を作製した。
前記半導電性ゴム組成物についてムーニースコーチタイム及び非粘着性(加工性)を、前記加硫物についてブルーム及びブリード検査、体積固有抵抗及び圧縮永久歪みを試験、評価した結果を表1に示す。
【0058】
(実施例2〜3、比較例1〜5)
実施例1において、表1に記載の成分及び重量部数の配合を用いたほかは実施例1と同様に行った。実施例1と同様の試験、評価を行った結果を表1に記す。なお、エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリン単量体単位含有量92モル%、エチレンオキシド単量体単位2モル%、アリルグリシジルエーテル単量体単位6モル%で、ムーニー粘度ML1+4(100℃)60、体積固有抵抗1.2×1010 Ω・cmのものを用いた。また、加工助剤として、実施例2及び比較例3ではトリブチルリン酸エステル0.06部、亜リン酸アルキル(炭素数8〜12)シクロヘキシルフェニル0,15部及びアルカン(炭素数11〜24)酸アルケニルエステル(炭素数6〜24)0,29部の合計0.5部を;比較例4ではステアリン酸0.5部を;それぞれ使用した。
【0059】
【表1】

【0060】
表1が示すように、本発明の半導電性ゴム組成物はスコーチタイムが長く、これを用いて得られた加硫物はブルーム及びブリードがなく、かつ、半導電性の体積固有抵抗値を有しており、また、圧縮永久歪みが小さかった。また、ゴム組成物(硫黄、硫黄供与体及び加硫促進剤を除く)は非粘着性であった(実施例1〜3)。
これに対し、ゴムにエチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)を併用せずにエピクロルヒドリンゴムのみとした比較例1の加硫物は体積固有抵抗が大きかった。
スルフェンアミド系加硫促進剤(D)を省いた比較例2と、代わりにグアニジン化合物を用いた比較例3の組成物はスコーチタイムが短く、それらの加硫物はブルームがあり、また、体積固有抵抗が大きかった。
本発明組成物で使用する加工助剤に代えてステアリン酸を用いると、ブルームが発生した(比較例4)。また、加工助剤を一切用いないと、ゴム組成物は粘着性になった(比較例5)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)3〜60重量%及び低電気抵抗性ゴム(B)97〜40重量%からなるゴム混合物100重量部に対し、硫黄及び/又は硫黄供与体(C)0.1〜15重量部、スルフェンアミド系加硫促進剤(D)0.1〜10重量部並びに加工助剤(E)0.1〜5重量部を含有してなるゴム組成物であって、
前記エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)が、エチレンオキシド単位50〜99.8モル%及びエチレンオキシドと共重合可能なオキシラン単量体単位50〜0.1モル%を含有し、かつ、架橋性オキシラン単量体単位含有量が0.1〜20モル%で、ムーニー粘度が20〜200であり、
前記低電気抵抗性ゴム(B)が、体積固有抵抗値が1013Ω・cm以下である、前記エチレンオキシド系開環共重合ゴム(A)以外のゴムであり、
前記加工助剤(E)が、トリブチルリン酸エステル、亜リン酸アルキルエステル及び/もしくは亜リン酸アリールエステル、並びに、アルカン酸並びに/又はアルカン酸アルケニルエステル及び/もしくはアルケン酸アルケニルエステルからなるものである半導電性ゴム組成物。
【請求項2】
さらに、チウラム系加硫促進剤0.1〜5重量部を含有してなる請求項1記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項3】
さらに、炭酸カルシウム1〜200重量部を含有してなる請求項1又は2記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載のいずれかの半導電性ゴム組成物を成形、加硫してなるゴム層を有する半導電性ゴム部材。


【公開番号】特開2006−28435(P2006−28435A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212431(P2004−212431)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】