説明

半導電性ゴム組成物

【課題】本発明は、かかる事情を背景としてなされたものであり、コピー機、プリンター等に使用される電子写真プロセスの帯電、現像、転写などの半導電性ゴムロール及び半導電性ベルトに用いられる半導電性ゴム組成物及びその加硫物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は(1)エピクロルヒドリンに由来する構成単位として10〜40mol%、(2)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(3)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位として0〜10mol%を有するゴム組成物において、該エピクロルヒドリン系ゴム組成物の100℃におけるメルトフローレートが3×10−2cm/秒以上であり、該組成物の重量平均分子量が80万以上である半導電性ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導電性ゴム組成物に関する。本発明の半導電性ゴム組成物及びその加硫物はその半導電特性により、コピー機、プリンター等における電子写真プロセスの現像ロール、帯電ロール、転写ロールを構成する材料として有用であり、加工性及び押出性に優れているため、押出及びインジェクション成形時の生産性が向上する点で好ましい。
【背景技術】
【0002】
近年、接触帯電方式に用いられる帯電ロール、転写ロール、現像ロールにおいて、より高画質化、高速化及び製造過程での高生産性が要求されてきており、それに伴って基材部分であるゴム材料の更なる機能向上が求められている。
【0003】
OA用ロールの製造方法としては押出成形、インジェクション成形がある。これらは基材となるゴムに必要な配合剤を混合した後に高温にして溶融させ成形する手法であるが、混合した後のコンパウンドの粘度が高いと溶融が十分に起こらず、インジェクション成形での充填不足などの不具合や押出成形時の流れ性の低下による生産性の悪化といったことが起こる。
【0004】
従来、コンパウンドの粘度を下げるには例えば様々な液状の可塑剤等を加えてきた。しかし、可塑剤等はロールへの通電や湿度等の周囲環境の変化に伴ってブリードし、接触している感光体への汚染が問題となる。このブリードを防ぐために、低分子量で低粘度であるゴムを加えたり、分子量の大きい可塑剤を加えることで粘度の改良が試みられてきたが、体積抵抗率の悪化などの問題が起こっていた。そこで、体積抵抗率等の物性を低下させないためにゴム自体の粘度改良が兼ねてより要求されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−298821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情を背景としてなされたものであり、コピー機、プリンター等に使用される電子写真プロセスの帯電、現像、転写などの半導電性ゴムロール及び半導電性ベルトに用いられる半導電性ゴム組成物及びその加硫物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、(1)エピクロルヒドリンに由来する構成単位として10〜40mol%、(2)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(3)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位として0〜10mol%を有するゴム組成物において、該ゴム組成物の100℃におけるメルトフローレートが3×10−2cm/秒以上であり、該組成物の重量平均分子量が80万以上である半導電性ゴム組成物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明により得られた半導電性ゴム加硫物はこれまで帯電ロール、現像ロール、転写ロール等に使用されてきたゴムと同様に半導電性を持ち、かつ加工性及び成形性に優れているため押出及びインジェクション成形における生産性が良好であり、その加硫物はコピー機、プリンター等の半導電性ゴムロール及びベルト等に非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の半導電性ゴム組成物は、(1)エピクロルヒドリンに由来する構成単位として10〜40mol%、(2)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(3)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位として0〜10mol%を有するゴム組成物において、該ゴム組成物の100℃におけるメルトフローレートが3×10−2cm/秒以上であり、該組成物の重量平均分子量が80万以上である半導電性ゴム組成物である。
【0011】
本発明の半導電性ゴム組成物は、単独のゴム、又は2種以上のブレンドゴムとして(1)エピクロルヒドリンに由来する構成単位として10〜40mol%、(2)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(3)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位として0〜10mol%を有する半導電性ゴム組成物であればよい。
【0012】
本発明の半導電性ゴム組成物においては、(1)エピクロルヒドリンに由来する構成単位として10〜40モル%を有するが好ましく、10〜35モル%を有することがより好ましく、15〜30モル%を有することが特に好ましい。
【0013】
本発明の半導電性ゴム組成物においては、(2)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%を有するが好ましく、60〜80モル%を有するがより好ましく、65〜80モル%を有することが特に好ましい。また、アルキレンオキサイドに由来する構成単位はエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドから選択されるアルキレンオキサイドに由来する構成単位であることが好ましく、半導電性の観点からエチレンオキサイドに由来する構成単位であることが特に好ましい。
【0014】
本発明の半導電性ゴム組成物においては、(3)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位として0〜10mol%であることが好ましく、2〜10モル%有することが好ましく、3〜7モル%有することが特に好ましい。また、エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位はアリルグリシジルエーテルに由来する構成単位であることが好ましい。
【0015】
本発明の半導電性ゴム組成物の好ましい具体例としては、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体及び/又はエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体が例示され、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体及び/又はエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体とエピクロルヒドリン単独重合体及び/又はエピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体とのブレンドであってもよい。
【0016】
メルトフローレート
本発明における半導電性ゴム組成物のメルトフローレートは3×10−2cm/秒以上であり、5×10−2cm/秒以上であることが好ましく、7×10−2cm/秒以上であることが特に好ましい。メルトフローレートの上限は特に限定されないが、5.0×10−1cm/秒以下であることが好ましい。メルトフローレートはJIS K 7210のB法に準拠して測定することができる。
【0017】
重量平均分子量
本発明における半導電性ゴム組成物の重量平均分子量は80万以上であり、90万以上であることが好ましく、100万以上であることが特に好ましい。重量平均分子量の上限は150万以下であることが好ましく、145万以下であることが特に好ましい。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算により測定することができる。
【0018】
加硫剤
本発明の半導電性ゴム組成物を加硫するために用いられる加硫剤は、塩素原子の反応性を利用する公知の加硫剤が使用できる。例示すると、例えば、ポリアミン系加硫剤、チオウレア系加硫剤、チアジアゾール系加硫剤、メルカプトトリアジン系加硫剤、ピラジン系加硫剤、キノキサリン系加硫剤、ビスフェノール系加硫剤等である。また、側鎖二重結合の反応性を利用する公知の加硫剤としては硫黄系加硫剤、有機酸化物系加硫剤等があげられる。
【0019】
ポリアミン系加硫剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p−フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等があげられる。
【0020】
チオウレア系加硫剤としては、エチレンチオウレア、1,3−ジエチルチオウレア、1,3−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等があげられる。
【0021】
チアジアゾール系加硫剤としては、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−5−チオベンゾエート等があげられる。
【0022】
メルカプトトリアジン系加硫剤としては、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−ヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−シクロヘキサンアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン等があげられる。
【0023】
ピラジン系加硫剤としては、2,3−ジメルカプトピラジン誘導体等があげられ、2,3−ジメルカプトピラジン誘導体を例示すると、ピラジン−2,3−ジチオカーボネート、5−メチル−2,3−ジメルカプトピラジン、5−エチルピラジン−2,3−ジチオカーボネート、5,6−ジメチル−2,3−ジメルカプトピラジン、5,6−ジメチルピラジン−2,3−ジチオカーボネート等があげられる。
【0024】
キノキサリン系加硫剤としては、2,3−ジメルカプトキノキサリン誘導体等があげられ、2,3−ジメルカプトキノキサリン誘導体を例示すると、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−エチル−2,3−ジメルカプトキノキサリン、6−イソプロピルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート等があげられる。
【0025】
ビスフェノール系加硫剤としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、1,1−シクロヘキシリデン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)、2−クロロ−1,4−シクロヘキシレン−ビス (4−ヒドロキシベンゼン)、2,2−イソプロピリデン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールA)、ヘキサフルオロイソプロピリデン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールAF)および2−フルオロ−1,4−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゼン)等があげられる。
【0026】
硫黄系加硫剤としては、硫黄、モルホリンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタンメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィドが挙げられる。
【0027】
有機酸化物系加硫剤としては、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエートが挙げられる。
【0028】
加硫剤の配合量は、本発明における半導電性ゴム組成物100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
【0029】
加硫促進剤
また、加硫剤と共に用いられる公知の促進剤(即ち、加硫促進剤)を本発明の半導電性ゴム組成物に、そのまま用いることができる。
【0030】
前記加硫促進剤の例としては、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤等を挙げることができる。
【0031】
例示するならば、チアゾール系促進剤の例としては、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩等が挙げられる。スルフェンアミド系加硫促進剤の具体例としては、N−エチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジ−イソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジ−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシ−ジ−エチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等が挙げられる。チウラム系加硫促進剤の具体例としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0032】
加硫促進剤の配合量は本発明における半導電性ゴム組成物100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましく、0.3〜3重量部であることがより好ましい。
【0033】
受酸剤
本発明で用いられる受酸剤としては、公知の受酸剤を使用できるが、好ましくは金属化合物および/または無機マイクロポーラス・クリスタルである。金属化合物としては、周期表第II族(2族および12族)金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表III族(3族および13族)金属の酸化物、水酸化物、カルボン酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、周期表第IV族(4族および14族)金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等の金属化合物が挙げられる。
【0034】
前記金属化合物の具体例としては、マグネシア、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、リサージ、鉛丹、鉛白、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性炭酸鉛、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜リン酸錫、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛等を挙げることができ、炭酸ナトリウム、マグネシア、水酸化マグネシウム、生石灰、消石灰、ケイ酸カルシウム、亜鉛華等が好ましい。
【0035】
前記無機マイクロポーラス・クリスタルとは、結晶性の多孔体を意味し、無定型の多孔体、例えばシリカゲル、アルミナ等とは明瞭に区別できるものである。このような無機マイクロポーラス・クリスタルの例としては、ゼオライト類、アルミノホスフェート型モレキュラーシーブ、層状ケイ酸塩、合成ハイドロタルサイト、チタン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。特に好ましい受酸剤としては、合成ハイドロタルサイトが挙げられる。
【0036】
前記ゼオライト類は、天然ゼオライトの外、A型、X型、Y型の合成ゼオライト、ソーダライト類、天然ないしは合成モルデナイト、ZSM−5などの各種ゼオライトおよびこれらの金属置換体であり、これらは単独で用いても2種以上の組み合わせで用いても良い。また金属置換体の金属はナトリウムであることが多い。ゼオライト類としては酸受容能が大きいものが好ましく、A型ゼオライトが好ましい。
【0037】
前記合成ハイドロタルサイトは下記一般式(1)で表される。
MgZnAl(OH)(2(X+Y)+3Z−2)CO・wHO (1)
[式中、xとyはそれぞれx+y=1〜10の関係を有する0〜10の実数、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数をそれぞれ示す。]
【0038】
前記一般式(1)で表されるハイドロタルサイト類の例として、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)14CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO、MgZnAl(OH)12CO・3.5HO、MgZnAl(OH)12CO等を挙げることができる。
【0039】
受酸剤の配合量は本発明における半導電性ゴム組成物100重量部に対して0.2〜50重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることがより好ましい。
【0040】
本発明の半導電性ゴム組成物に対しては、本発明の効果を損なわない限り、上記以外の配合剤、例えば、滑剤、老化防止剤、充てん剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、難燃剤、顔料等を任意に配合し、半導電性ゴム材料用組成物としてもよい。さらに本発明の特性が失われない範囲で、当該技術分野で通常行われている、ゴム、樹脂等のブレンドを行うことも可能である。
【0041】
加工方法
本発明の半導電性ゴム組成物又は半導電性ゴム材料用組成物の加工方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を用いることができる。
【0042】
成型方法
成型方法としては、金型による圧縮成型、押出成型、インジェクション成型等が例示できるが、本発明の半導電性ゴム組成物を用いた押出成型、インジェクション成型することが好ましい。
【0043】
加硫方法
本発明の半導電性ゴム組成物を用いた加硫物は、前記半導電性ゴム組成物に所定の加硫剤等を加えて、通常100〜200℃に加熱する事で得られ、加硫時間は温度により異なるが、0.5〜300分の間で行われるのが通常である。
【0044】
実施例、比較例
以下において、代表的な例として実施例を挙げるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
重合触媒の合成
温度計および攪拌装置を伏した三ツ口フラスコにジブチル錫オキシド10.0g、トリブチルホスフェート23.4gをいれ、窒素気流下に攪拌しながら260℃で15分間加熱して留出物を留去させ、残留物として固体状の縮合物質を得た。この縮合物質を触媒として以下の重合を行った。
【0046】
実施例1
内容量20LのSUS反応器(温度計および攪拌装置付き)の内部を窒素置換し、上記縮合物質触媒7.2g、水分10ppm以下のノルマルヘキサン4500g、エピクロルヒドリン560g、エチレンオキサイド820gの60%量、アリルグリシジルエーテル120g、ノルマルブタノール0.12gを仕込み35℃にて20時間反応させた。なお反応時間1.5時間目と2.5時間目におのおのエチレンオキサイドの25%量、15%量を添加した。反応溶液を除去した後、減圧下60℃にて8時間乾燥し、ゴム組成物を得た。
【0047】
実施例2
内容量20LのSUS反応器(温度計および攪拌装置付き)の内部を窒素置換し、上記縮合物質触媒7.2g、水分10ppm以下のノルマルヘキサン4500g、エピクロルヒドリン560g、エチレンオキサイド820gの60%量、アリルグリシジルエーテル120g、ノルマルブタノール0.06gを仕込み35℃にて20時間反応させた。なお反応時間1.5時間目と2.5時間目におのおのエチレンオキサイドの25%量、15%量を添加した。反応溶液を除去した後、減圧下60℃にて8時間乾燥し、ゴム組成物を得た。
【0048】
実施例3
内容量20LのSUS反応器(温度計および攪拌装置付き)の内部を窒素置換し、上記縮合物質触媒7.2g、水分10ppm以下のノルマルヘキサン4500g、エピクロルヒドリン560g、エチレンオキサイド820gの60%量、アリルグリシジルエーテル120g、ノルマルブタノール0.03gを仕込み35℃にて20時間反応させた。なお反応時間1.5時間目と2.5時間目におのおのエチレンオキサイドの25%量、15%量を添加した。反応溶液を除去した後、減圧下60℃にて8時間乾燥し、ゴム組成物を得た。
【0049】
比較例1
内容量20LのSUS反応器(温度計および攪拌装置付き)の内部を窒素置換し、上記縮合物質触媒7.2g、水分10ppm以下のノルマルヘキサン4500g、エピクロルヒドリン560g、エチレンオキサイド820gの60%量、アリルグリシジルエーテル120g、ノルマルブタノール0.24gを仕込み35℃にて20時間反応させた。なお反応時間1.5時間目と2.5時間目におのおのエチレンオキサイドの25%量、15%量を添加した。反応溶液を除去した後、減圧下60℃にて8時間乾燥し、ゴム組成物を得た。
【0050】
比較例2
ダイソー株式会社製のエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体「EPION−301」を比較例2とした。
【0051】
重合体の分析
得られたゴム組成物の共重合組成について、塩素含有量及びヨウ素価により求める。
塩素含有量はJIS K7229に記載の方法に従い、電位差滴定法によって求めた。
電位差滴定は電極に複合銀電極C−878を備えた京都電子工業株式会社製AT−420N電位差滴定装置を用いて行い、得られた塩素含有量からエピクロルヒドリンに由来する構成単位のモル分率を算出する。
ヨウ素価はJIS K6235に準じた方法で測定した。共栓付きフラスコにサンプル約0.70gとクロロホルム80mLを加えて40℃に加熱してサンプルを溶解させた後、ウィイス試薬20mLと酢酸ナトリウム水溶液10mLを加えてよく振り混ぜ、暗所で20分間静置する。次に20%ヨウ化カリウム水溶液5mLを加えてよく振り混ぜる。その後、微量複合白金電極(酸化還元滴定)を備えた自動滴定装置を用いて0.1N−チオ硫酸ナトリウム水溶液で電位差滴定を行い、得られたヨウ素価からエチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位のモル分率を算出する。
アルキレンオキサイドのモル分率は、エピクロルヒドリンに由来する構成単位のモル分率、エチレン性不飽和基含有モノマーユニットのモル分率より算出する。
【0052】
重量平均分子量の測定
分子量の測定方法としては、ゴムを溶剤であるテトラヒドロフラン(THF)に溶解させてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算により数平均分子量及び重量平均分子量を測定した。すなわち、株式会社島津製作所製GPC装置RID−6A、Shodex社製カラムKF−801、KF−802、KF−803、KF−804、KF−806Lを用いて、流量1.0mL/min、濃度を30mgポリマー/THF10mLとし、注入量200μL、カラム温度40℃で測定を行った。重量平均分子量の測定結果を表1に組成とともに示した。
【0053】
メルトフローレート
メルトフローレートはJIS K 7210のB法に準拠して測定した。すなわち、株式会社島津製作所製CFT500Cを用いて、ピストン断面積1cm、ダイ穴径1mm、ダイ長さ10mmの装置において、予熱時間300秒、試料温度を100℃、シリンダー圧力を200kgf/cm、フローレート測定位置を3mm〜7mmとしてメルトフローレート(cm/秒)を測定した。測定結果を表1に示した。
【0054】
加工性評価
加工性は二本ロールでの作業性で評価した。具体的には蒸気を用いて70〜80℃に加熱した二本ロールへ各実施例及び比較例に示すゴムを投入し、ロールへの粘着性を観察し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:粘着性がなく作業性が良い
×:粘着性があり作業性が悪い
【0055】
押出性評価
押出性はメルトフローレート測定時の押出肌で評価した。具体的にメルトフローレート測定後に押し出したサンプルの表面を観察し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:押出表面がなめらか
×:押出表面が荒い
【0056】
表1の各種ゴムを表2に示す各材料とともにオープンロールで混練し、未加硫ゴムシートを作製した。得られた未加硫ゴムシートを用い、170℃で15分プレス加硫した。得られた架橋シートを23℃/50%RH環境下にて状態調整を行った後、JIS K6271に準拠し、二重リング電極を用いた三菱油化株式会社製ハイレスタを用いて、10V印加、1分後の体積抵抗率を測定した。測定値を表3に示した。
【0057】
以下に実施例、比較例で用いた配合剤を示す。
※1 ダイソー株式会社製 エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体「EPION−301」
※2 大内新興化学株式会社製 チアゾール系加硫促進剤「ノクセラーDM」
※3 大内新興化学株式会社製 チウラム系加硫促進剤「ノクセラーTS」
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
表1に示すように、実施例1〜3及び比較例1〜2はそれぞれ(1)エピクロルヒドリン(2)エチレンオキサイド(3)アリルグリシジルエーテルを含んだ組成物である。その加工性において、比較例1は分子量が低すぎるためにロールへの粘着が起こり混練りできず、加工性が悪い。また、押出性についてはメルトフローレートが本発明に記載された範囲ではない比較例2は押出表面が荒い。一方、重量平均分子量が80万以上であり、メルトフローレートが3×10−2cm/秒以上である実施例1〜3は加工性、押出性とも良好であった。
また、本発明のゴム組成物を用いた半導電性ゴム材料である実施例4〜6は表3に示すように23℃/50%RHでの体積抵抗率が1.1×10と半導電性を維持していた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の対象となる半導電性ゴム組成物は、半導電性を維持しつつ、液状可塑剤等を混合せずとも生産性の向上した材料として、レーザープリンタ、コピー機における現像、帯電、転写ロールとして幅広く応用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)エピクロルヒドリンに由来する構成単位として10〜40mol%、(2)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(3)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位として0〜10mol%を有するゴム組成物において、該ゴム組成物の100℃におけるメルトフローレートが3×10−2cm/秒以上であり、該組成物の重量平均分子量が80万以上である半導電性ゴム組成物。
【請求項2】
メルトフローレートが5×10−2cm/秒以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導電性エピクロルヒドリン系ゴム組成物。
【請求項3】
メルトフローレートが7×10−2cm/秒以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導電性エピクロルヒドリン系ゴム組成物。
【請求項4】
重量平均分子量が100万以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項5】
重量平均分子量が100万以上150万以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項6】
(2)アルキレンオキサイドに由来する構成単位がエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドから選択されるアルキレンオキサイドに由来する構成単位である請求項1〜5いずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項7】
(3)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位がアリルグリシジルエーテルに由来する構成単位である請求項1〜6いずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載の半導電性ゴム組成物を加硫してなる半導電性ゴム材料。
【請求項9】
請求項1〜7いずれかに記載の半導電性ゴム組成物を用いて押出成形又はインジェクション成形で成形し、加硫してなる半導電性ゴム材料。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の半導電性ゴム材料を用いた半導電性ゴムロール又はベルト。
【請求項11】
請求項1〜7いずれかに記載された半導電性ゴム組成物を用いて押出成形又はインジェクション成形により成形することを特徴とする半導電性ゴム材料の製造方法。

【公開番号】特開2012−224749(P2012−224749A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93554(P2011−93554)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】