説明

半導電性ローラおよびそれを用いた帯電ローラ

【課題】帯電ローラや現像ローラとしての良好な半導電性を有し、しかも保護膜としての特性に優れた酸化膜を備えたローラ本体を有する半導電性ローラを提供する。
【解決手段】ベースポリマと、前記ベースポリマを架橋させる架橋成分とを含み、前記ベースポリマがエピクロルヒドリンを含む二元共重合体とニトリルゴムとの混合物であるとともに、前記架橋成分がチオウレア系架橋成分と硫黄系加硫成分である半導電性ゴム組成物の架橋物からなり、外周面5に、紫外線照射による酸化膜6が形成されたローラ本体2を有する半導電性ローラ1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置において、帯電ローラや現像ローラ等として用いることができる半導電性ローラ、およびそれを用いた帯電ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記画像形成装置において、感光体の表面を一様に帯電させるための帯電ローラや、あるいは帯電させた前記表面を露光して形成される静電潜像にトナーを付着させてトナー像に現像するための現像ローラとして、従来は、半導電性ゴム組成物からなり、その外周面をウレタン系樹脂等からなるコーティング膜によって被覆したローラ本体を備えるとともに、前記ローラ本体の中心に金属等からなるシャフトを挿通した半導電性ローラが一般的に用いられてきた(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
前記ローラ本体の外周面をコーティング膜で被覆するのは、前記帯電ローラや現像ローラが、感光体と直接に接触させた状態で使用されることから、前記ローラ本体を形成する半導電性ゴム組成物中から外周面にブリードしてくる成分によって感光体が汚染されて形成画像に影響を及ぼすのを防ぐためである。また、トナーの流動性や帯電性を改善するため前記トナーに添加されるシリカ等の添加剤が前記ローラ本体の外周面に蓄積されて形成画像に影響を及ぼすのを防止するためでもある。
【0004】
しかしコーティング膜は、そのもとになる液状のコーティング剤をスプレー法、ディッピング法等の塗布方法によってローラ本体の外周面に塗布したのち乾燥させて形成され、かかる形成過程において埃等の異物の混入、厚みムラの発生等の様々な不良を生じやすいという問題がある。
しかもこれらの形成方法は既に確立された技術であって更なる改良の余地が少ないため、前記不良が発生する割合(不良率)を現状より大幅に低下させるのは難しく、このことが半導電性ローラの歩留まりおよび生産性を低下させ、製造コストを上昇させる一因ともなっている。
【0005】
そこで、ベースポリマとしてジエン系ゴムを含む半導電性ゴム組成物によってローラ本体を形成し、その外周面に紫外線照射をして前記ジエン系ゴムを酸化させることで、前記外周面にコーティング膜に代わる酸化膜を形成することが提案されている(例えば特許文献2等参照)。
かかる酸化膜は、ローラ本体の外周面に紫外線を照射して、前記外周面を形成する半導電性ゴム組成物中に含まれるジエン系ゴムそれ自体を酸化反応させて形成されるため、その形成工程において酸化膜中に埃等の異物が混入したりするおそれはない。また酸化反応は、紫外線の照射によってローラ本体の外周面で一様に進行させることができるため、酸化膜に厚みムラが生じたりするおそれもない。
【0006】
しかし現状の酸化膜は、先に説明した、半導電性ゴム組成物中から外周面にブリードしてくる成分によって感光体が汚染されたり、トナーに添加されるシリカ等の添加剤がローラ本体の外周面に蓄積されたりして形成画像に影響を及ぼすのを防ぐ保護膜としての特性が、従来のコーティング膜に比べて不十分である。
例えば発明者の検討では、温度50℃、相対湿度90%の環境下、ローラ本体の外周面を感光体の表面に接触させた状態で30日間静置したのち、前記感光体を用いて画像形成をした際に形成画像に影響が生じるか否かを調べる耐汚染性試験を実施すると、前記ローラ本体の外周面に酸化膜を形成した従来の半導電性ローラはいずれも形成画像に影響を生じることが確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3449726号公報
【特許文献2】特開2004−176056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、帯電ローラや現像ローラとしての良好な半導電性を有し、しかも保護膜としての特性に優れた酸化膜を備えたローラ本体を有する半導電性ローラと、それを用いた帯電ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、発明者は、半導電性ローラのローラ本体のもとになる半導電性ゴム組成物を構成する各成分について種々検討した。その結果、下記(1)〜(5)の5つの要件を満たしている必要があること見出し、本発明を完成するに至った。
(1) 半導電性ゴム組成物としては、ベースポリマと、前記ベースポリマを架橋させるための架橋成分とからなり、特許文献1に記載の発明のように導電性カーボンブラック等の電子導電性を有する導電性粒子を含まないことが、特に同一のローラ本体中での電気抵抗値のばらつきをなくする上で有効である。
(2) 前記エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体、エピクロルヒドリンを含む二元または三元共重合体等があるが、紫外線照射によってローラ本体の外周面に形成される酸化膜に保護膜としての優れた特性を付与するためには、このうちエピクロルヒドリンを含む二元共重合体を選択的に用いる必要がある。
(3) 前記ジエン系ゴムとしては、前記エピクロルヒドリンを含む二元共重合体との相溶性を考慮すると、かかる相溶性に優れたニトリルゴム、クロロプレンゴムが挙げられるが、紫外線照射によってローラ本体の外周面に形成される酸化膜に保護膜としての優れた特性を付与するためには、前記のうちニトリルゴムを選択的に用いる必要がある。
(4) ローラ本体に、帯電ローラや現像ローラとしての良好な半導電性を付与しながら、紫外線照射によって前記ローラ本体の外周面に形成される酸化膜に保護膜としての優れた特性を付与するためには、前記エピクロルヒドリンを含む二元共重合体EとニトリルゴムNの質量比E/N=50/50〜80/20の範囲内とする必要がある。
(5) 架橋成分としては、前記エピクロルヒドリンを含む二元共重合体を架橋させるためのチオウレア系架橋成分と、前記ニトリルゴムを加硫させるための硫黄系加硫成分とを併用する必要がある。
【0010】
したがって本発明は、少なくとも外周面が半導電性ゴム組成物の架橋物からなり、前記外周面に、紫外線照射によって形成された酸化膜が設けられたローラ本体を備えた半導電性ローラであって、
前記半導電性ゴム組成物は、ベースポリマと、前記ベースポリマを架橋させるための架橋成分とを含み、
前記ベースポリマは、エピクロルヒドリンを含む二元共重合体Eと、ニトリルゴムNとの、質量比E/N=50/50〜80/20の混合物であるとともに、
前記架橋成分は、前記エピクロルヒドリンを含む二元共重合体を架橋させるためのチオウレア系架橋成分と、前記ニトリルゴムを加硫させるための硫黄系加硫成分であることを特徴とするものである。
【0011】
なお前記チオウレア系架橋成分としては、チオウレア系架橋剤と、前記チオウレア系架橋剤による架橋反応を促進する促進剤とを併用するのが好ましい。また硫黄系加硫成分としては、硫黄および含硫黄系加硫剤からなる群より選ばれた少なくとも1種と、含硫黄系促進剤とを併用するのが好ましい。
また前記半導電性ゴム組成物は、そのイオン導電性を高めて、前記半導電性ゴム組成物を用いて形成されるローラ本体に、帯電ローラや現像ローラとしての良好な半導電性を付与することを考慮すると、イオン導電剤をも含んでいるのが好ましい。
【0012】
前記イオン導電剤としては、疎水性のイオン導電剤が好ましい。前記疎水性のイオン導電剤は吸湿性を有しないため、例えば半導電性ゴム組成物に添加するべく計量している間に吸湿して質量が変化したりすることがなく、計量が容易で、バッチ間で実際の配合量がばらつくのを防止することができる。
そのため、前記半導電性ゴム組成物のイオン導電性がバッチごとにばらつくのを抑制して、前記半導電性ゴム組成物を用いて形成するローラ本体の半導電性を、複数の半導電性ローラに亘って略一定に維持することができ、前記半導電性ローラの品質を向上することができる。
【0013】
また、前記疎水性のイオン導電剤を含むローラ本体は、環境変化、特に湿度変化によって、半導電性の指標である電気抵抗値が大きく変動するおそれがない。そのため半導電性ローラのローラ抵抗の環境依存性を小さくすることもできる。
前記疎水性のイオン導電剤としては、テトラブチルアンモニウムパークロレート、およびN−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビストリフルオロメタンスルホニルイミドからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0014】
さらに前記半導電性ゴム組成物は、前記各成分を配合し、混練して半導電性ゴム組成物を調製する際や、前記半導電性ゴム組成物をローラ本体の形状に成形する際の加工性、成形性を向上したり、成形後、加硫して得られたローラ本体の耐性や強度を向上したり、あるいはローラ本体にゴムとしての良好な特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい特性等を付与したりすることを考慮すると、加硫促進助剤、受酸剤、加工助剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、難燃剤、中和剤、および気泡防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤をも含んでいるのが好ましい。
【0015】
前記本発明の半導電性ローラは、例えばレーザープリンタ等の、電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで、感光体の表面を一様に帯電させるための帯電ローラとして好適に使用することができる。
すなわち本発明は、電子写真法を利用した画像形成装置に用いる帯電ローラであって、前記本発明の半導電性ローラからなることを特徴とするものである。
【0016】
本発明によれば、前記感光体の汚染を防止しながら、前記画像形成装置を用いて常に良好な画像を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、帯電ローラや現像ローラとしての良好な半導電性を有し、しかも保護膜としての特性に優れた酸化膜を備えたローラ本体を有する半導電性ローラと、それを用いた帯電ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】半導電性ローラのローラ抵抗を測定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〈半導電性ゴム組成物〉
本発明の半導電性ローラは、少なくとも外周面が半導電性ゴム組成物の架橋物からなり、前記外周面に、紫外線照射によって形成された酸化膜が設けられたローラ本体を備えたものであって、
前記半導電性ゴム組成物は、ベースポリマと、前記ベースポリマを架橋させるための架橋成分とを含み、
前記ベースポリマは、エピクロルヒドリンを含む二元共重合体Eと、ニトリルゴムNとの、質量比E/N=50/50〜80/20の混合物であるとともに、
前記架橋成分は、前記エピクロルヒドリンを含む二元共重合体を架橋させるためのチオウレア系架橋成分と、前記ニトリルゴムを加硫させるための硫黄系加硫成分であることを特徴とする。
【0020】
前記のうちエピクロルヒドリンを含む二元共重合体としては、エピクロルヒドリンと、前記エピクロルヒドリンと共重合可能な種々のモノマとの二元共重合体が使用可能であり、特にエピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの二元共重合体(ECO)が好ましい。
ECOにおいてエチレンオキサイドは、ローラ本体の電気抵抗値を低下させる働きをする。しかしエチレンオキサイドが多すぎる場合には前記エチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆にローラ本体の電気抵抗値が上昇する傾向がある。またローラ本体の硬度が上昇したり、架橋前の半導電性ゴム組成物の粘度が上昇して加工性、成形性が低下したりするおそれもある。
【0021】
そのためECOにおいてエチレンオキサイド含量は30モル%以上、特に50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエンゴム、NBR)としては、アクリロニトリル含量が24%以下である低ニトリルNBR、25〜30%である中ニトリルNBR、31〜35%である中高ニトリルNBR、36〜42%である高ニトリルNBR、および43%以上である極高ニトリルNBRのいずれを用いてもよい。
【0022】
前記ECO等のエピクロルヒドリンを含む二元共重合体Eと、ニトリルゴムNとの質量比E/Nが50/50〜80/20の範囲内に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち、前記範囲よりエピクロルヒドリンを含む二元共重合体の割合が少ない場合には、前記二元共重合体による、ローラ本体に、帯電ローラや現像ローラとしての良好な半導電性を付与する効果が得られない。
【0023】
一方、前記範囲よりニトリルゴムが少ない場合には、前記ニトリルゴムによる、紫外線照射によって前記ローラ本体の外周面に形成される酸化膜に保護膜としての優れた特性を付与する効果が得られない。
エピクロルヒドリンを含む二元共重合体を架橋させるためのチオウレア系架橋成分としては、分子中にチオウレア基を有し、前記二元共重合体を架橋しうる種々のチオウレア系架橋剤が使用可能である。
【0024】
前記チオウレア系架橋剤としては、例えばエチレンチオウレア(別名:2−メルカプトイミダゾリン)、ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等の1種または2種以上が挙げられる。特にエチレンチオウレアが好ましい。
前記チオウレア系架橋剤の量は、ベースポリマのうちエピクロルヒドリンを含む二元共重合体を良好に架橋させて、ローラ本体に、ゴムとしての良好な特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい特性等を付与することを考慮すると、ベースポリマの総量、つまりエピクロルヒドリンを含む二元共重合体とニトリルゴムの合計100質量部あたり0.3質量部以上、1質量部以下であるのが好ましい。
【0025】
またチオウレア系架橋成分としては、前記チオウレア系架橋剤とともに、前記チオウレア系架橋剤による架橋反応を促進する働きを有する種々の促進剤を併用することもできる。
前記促進剤としては、例えば1,3−ジフェニルグアニジン(D)、1,3−ジ−o−トリルグアニジン(DT)、1-o-トリルビグアニド(BG)等のグアニジン系促進剤などの1種または2種以上が挙げられる。
【0026】
前記促進剤の量は、チオウレア系架橋剤による、エピクロルヒドリンを含む二元共重合体の架橋反応を促進する効果を十分に発揮させることを考慮すると、前記ベースポリマの総量100質量部あたり0.3質量部以上、1質量部以下であるのが好ましい。
NBRを加硫させるための硫黄系加硫成分としては、硫黄および含硫黄系加硫剤(分子中に硫黄を有する有機化合物)からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。また含硫黄系加硫剤としては、例えば4,4′−ジチオジモルホリン(R)等が挙げられる。特に硫黄が好ましい。
【0027】
硫黄の量は、ベースポリマのうちNBRを良好に架橋させて、ローラ本体に、ゴムとしての良好な特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい特性等を付与することを考慮すると、ベースポリマの総量100質量部あたり1質量部以上、2質量部以下であるのが好ましい。また含硫黄系加硫剤は、その分子中の硫黄の量が前記範囲となるように調整するのが好ましい。
【0028】
また硫黄系加硫成分としては、前記硫黄や含硫黄系加硫剤とともに、分子中に硫黄を有し、前記硫黄または含硫黄系加硫剤による加硫反応を促進する働きを有する種々の促進剤のうち、含硫黄系促進剤を併用することもできる。
前記含硫黄系促進剤としては、例えばチアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。このうちチアゾール系促進剤とチウラム系促進剤とを併用するのが好ましい。
【0029】
チアゾール系促進剤としては、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール(M)、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(MZ)、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩(HM、M60−OT)、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール(64)、2−(4′−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(DS、MDB)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0030】
特にジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)が好ましい。
またチウラム系促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT、TMT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBT)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0031】
特にテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)が好ましい。
例えば硫黄と、チアゾール系促進剤およびチウラム系促進剤との併用系において、前記硫黄による、NBRの加硫反応を促進する効果を十分に発揮させることを考慮すると、チアゾール系促進剤の量は、ベースポリマの総量100質量部あたり1質量部以上、2質量部以下であるのが好ましい。またチウラム系促進剤の量は、ベースポリマの総量100質量部あたり0.3質量部以上、0.9質量部以下であるのが好ましい。
【0032】
半導電性ゴム組成物は、さらにイオン導電剤をも含んでいるのが好ましい。これにより前記半導電性ゴム組成物のイオン導電性を高めて、ローラ本体に、帯電ローラや現像ローラとしての良好な半導電性を付与できる。
前記イオン導電剤としては、疎水性のイオン導電剤が好ましい。前記疎水性のイオン導電剤は吸湿性を有しないため、例えば半導電性ゴム組成物に添加するべく計量している間に吸湿して質量が変化したりすることがなく、計量が容易で、バッチ間で実際の配合量がばらつくのを防止することができる。
【0033】
そのため、前記半導電性ゴム組成物のイオン導電性がバッチごとにばらつくのを抑制して、前記半導電性ゴム組成物を用いて形成するローラ本体の半導電性を、複数の半導電性ローラに亘って略一定に維持することができ、前記半導電性ローラの品質を向上することができる。
また、前記疎水性のイオン導電剤を含むローラ本体は、環境変化、特に湿度変化によって、半導電性の指標である電気抵抗値が大きく変動するおそれがない。そのため半導電性ローラのローラ抵抗の環境依存性を小さくすることもできる。
【0034】
前記疎水性のイオン導電剤としては、例えばゴム等の配合剤として使用される種々のイオン導電剤のうち疎水性であるものを選択して使用したり、例えばリチウム二次電池等の電解液として着目されている、分子性の溶剤を含まずイオンのみから構成されるいわゆるイオン液体等を使用したりすることができる。
中でも特にテトラブチルアンモニウムパークロレート、およびN−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビストリフルオロメタンスルホニルイミドからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0035】
このうちテトラブチルアンモニウムパークロレートは粉末状等の固形状で供給される。
またN−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビストリフルオロメタンスルホニルイミドは、N−ブチル−3−メチルピリジニウム(BMP+)をカチオン、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド(TFSI−)をアニオンとし、分子性の溶剤を含まず前記両イオンのみから構成されるいわゆるイオン液体である。
【0036】
なおイオン導電剤としては、疎水性でない通常の、他のイオン導電剤を使用することもできる。前記他のイオン導電剤としては、例えばフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンと、陽イオンとの塩(導電塩)が挙げられる。
前記塩を構成する、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンとしては、例えばフルオロアルキルスルホン酸イオン、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン等が挙げられる。
【0037】
また陽イオンとしては、例えばナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属のイオンや、あるいはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の第2族元素のイオン、遷移元素のイオン、両性元素の陽イオン、第4級アンモニウムイオン、イミダゾリウム陽イオン等が挙げられる。特に前記陰イオンとリチウムイオンとを組み合わせたリチウム塩が好ましい。
【0038】
前記リチウム塩としては、例えばCFSOLi、CSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(CSO)(CFSO)NLi、(FSO)(CFSO)NLi、(C17SO)(CFSO)NLi、(CFCHOSONLi、(CFCFCHOSONLi、(HCFCFCHOSONLi、〔(CFCHOSONLi、(CFSOCLi、(CFCHOSOCLi等の1種または2種以上が挙げられる。
【0039】
中でも半導電性ゴム組成物に良好なイオン導電性を付与する効果の点で、CFSOLi(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、(CFSONLi〔ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム〕が好ましく、特にトリフルオロメタンスルホン酸リチウムが好ましい。
疎水性でない前記他のイオン導電剤を使用する場合は、先に説明したようにその吸湿性に注意を払う必要がある。例えば半導電性ゴム組成物を調整する際の計量を恒温恒湿の計測室で行う等の対策を施せば十分に使用可能である。
【0040】
前記イオン導電剤の量は、半導電性ゴム組成物のイオン導電性を高めて、ローラ本体に、帯電ローラや現像ローラとしての良好な半導電性を付与することを考慮すると、ベースポリマの総量100質量部あたり0.1質量部以上、1質量部以下であるのが好ましい。
前記各成分を含む半導電性ゴム組成物には、さらに加硫促進助剤、受酸剤、加工助剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、難燃剤、中和剤、および気泡防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤を含有させることもできる。
【0041】
これにより、先に説明した各成分を配合し、混練して半導電性ゴム組成物を調製する際や、前記半導電性組成物をローラ本体の形状に成形する際の加工性、成形性を向上したり、成形後、加硫して得られたローラ本体の耐性や強度を向上したり、あるいはローラ本体にゴムとしての良好な特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい特性等を付与したりすることができる。
【0042】
加硫促進助剤としては、例えば酸化亜鉛等の金属酸化物や、ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸などの1種または2種以上が挙げられる。
前記加硫促進助剤の量は、ベースポリマの総量100質量部あたり3質量部以上、7質量部以下であるのが好ましい。
受酸剤は、半導電性ゴム組成物の加硫時にエピクロルヒドリンを含む二元共重合体から発生する塩素系ガスの残留および前記塩素系ガスによる感光体ドラムの汚染を防止する働きをする。前記受酸剤としては、ゴムに対する分散性に優れていることからハイドロタルサイト類が好ましい。
【0043】
前記受酸剤の量は、ベースポリマの総量100質量部あたり1質量部以上、5質量部以下であるのが好ましい。
加工助剤としてはステアリン酸等の脂肪酸が挙げられる。
充填剤としては酸化亜鉛、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。このうちカーボンブラックとしては、同一のローラ本体中での電気抵抗値のばらつきを生じないために絶縁性の、もしくは弱導電性のカーボンブラックが挙げられる。
【0044】
スコーチ防止剤としてはN−シクロヘキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、N−ニトロソジフェニルアミン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
その他の成分としては、従来公知の任意の化合物が使用可能である。
前記半導電性ゴム組成物は、従来同様に調製することができる。すなわち、まずエピクロルヒドリンを含む二元共重合体とニトリルゴムとを所定の割合で配合して素練りし、次いで架橋成分以外の添加剤を加えて混練した後、最後に架橋成分を加えて混練することで半導電性ゴム組成物を調製できる。
【0045】
前記混練には、例えばニーダ、バンバリミキサ、押出機等を用いることができる。
〈半導電性ローラ、および帯電ローラ〉
図1は、本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図1を参照して、この例の半導電性ローラ1は、前記半導電性ゴム組成物からなる円筒状のローラ本体2と、前記ローラ本体2の中心の通孔3に挿通されたシャフト4とを含んでいる。ローラ本体2の外周面5には、紫外線照射によって形成された酸化膜6が設けられている。
【0046】
シャフト4は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成される。ローラ本体2とシャフト4とは、例えば導電性を有する接着剤等により電気的に接合されると共に機械的に固定されて一体に回転される。
前記本発明の半導電性ローラは、例えばレーザープリンタ等の、電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで、感光体の表面を一様に帯電させるための帯電ローラとして好適に使用することができる。これにより前記感光体の汚染を防止しながら、前記画像形成装置を用いて常に良好な画像を形成することが可能となる。
【0047】
ローラ本体2の厚みは、前記帯電ローラとして使用する場合、前記帯電ローラの小型化、軽量化を図りながら適度なニップ厚を確保するために厚みが0.5mm以上、中でも1mm以上、特に3mm以上であるのが好ましく、15mm以下、中でも10mm以下、特に7mm以下であるのが好ましい。
前記ローラ本体2は、先に説明した各成分を含む半導電性ゴム組成物を用いて従来同様に形成される。すなわち半導電性ゴム組成物を、押出成形機を用いて混練しながら加熱して溶融させた状態で、前記ローラ本体2の断面形状、すなわち円環状に対応するダイを通して長尺の円筒状に押出成形し、冷却して固化させたのち、通孔3に加硫用の仮のシャフトを挿通して加硫缶内で加熱して加硫させる。
【0048】
次いで外周面に導電性の接着剤を塗布したシャフト4に装着しなおして、前記接着剤が熱硬化性接着剤である場合は加熱により前記熱硬化性接着剤を硬化させてローラ本体2とシャフト4とを電気的に接合する共に機械的に固定する。
そして必要に応じてさらにローラ本体2の外周面5を所定の表面粗さになるように研磨したのち紫外線を照射することで、前記外周面5を構成する半導電性ゴム組成物の架橋物中のニトリルゴムを酸化させて、前記外周面5を被覆する酸化膜6を生成させる。これにより図1に示す半導電性ローラ1が製造される。
【0049】
前記酸化膜6は、先に説明した各成分を含有する半導電性ゴム組成物の架橋物からなるローラ本体2の外周面5を酸化させて形成されるため、前記半導電性ゴム組成物中から外周面5にブリードしてくる成分によって感光体が汚染されたり、トナーに添加されるシリカ等の添加剤がローラ本体2の外周面5に蓄積されたりして形成画像に影響を及ぼすのを防ぐ保護膜としての特性に優れている。
【0050】
すなわち温度50℃、相対湿度90%の環境下、ローラ本体2の外周面5を感光体の表面に接触させた状態で30日間静置したのち、前記感光体を用いて画像形成をした際に形成画像に影響が生じるか否かを調べる耐汚染性試験を実施した際に、形成画像に影響を生じるのを防止することが可能である。
なおローラ本体2は、外周面5側の外層とシャフト4側の内層の2層構造に形成してもよい。その場合、少なくとも外層を前記半導電性ゴム組成物によって形成すればよい。
【0051】
前記本発明の半導電性ローラ1を帯電ローラとして使用する場合、前記半導電性ローラ1は、温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下で測定される、印加電圧500Vにおけるローラ抵抗が10Ω以上、10Ω未満であるのが好ましい。ローラ抵抗が前記範囲を外れる場合には形成画像にムラを生じるおそれがある。またローラ抵抗が前記範囲を極端に外れる場合にはハーフトーン画像を形成できないおそれもある。
【0052】
すなわち半導電性ローラ1のローラ抵抗が高すぎたり低すぎたりした場合には、感光体の表面を適性に帯電させることができないため、現像工程において感光体上にトナーが全く乗らなかったり、ハーフトーン画像を出しているにもかかわらず、ベタ画像しか出力されない場合がある。
なお半導電性ローラ1のローラ抵抗は、外周面5に酸化膜6を形成した状態での測定値である。
【0053】
図2は、半導電性ローラ1のローラ抵抗を測定する方法を説明する図である。
図1、図2を参照して、本発明では前記ローラ抵抗を、下記の方法で測定した値でもって表すこととする。
すなわち一定の回転速度で回転させることができるアルミニウムドラム7を用意し、前記アルミニウムドラム7の外周面8に、その上方から、ローラ抵抗を測定する半導電性ローラ1のローラ本体2の、酸化膜6を形成した外周面5を当接させる。
【0054】
また前記半導電性ローラ1のシャフト4と、アルミニウムドラム7との間に直流電源9、および抵抗10を直列に接続して計測回路11を構成する。直流電源9は、(−)側をシャフト4、(+)側を抵抗10と接続する。抵抗10の抵抗値rは100Ωとする。
次いでシャフト4の両端部にそれぞれ450gの荷重Fをかけてローラ本体2をアルミニウムドラム7に圧接させた状態で、前記アルミニウムドラム7を回転(回転数:40rpm)させながら、前記両者間に、直流電源9から直流500Vの印加電圧Eを印加した際に、抵抗10にかかる検出電圧Vを計測する。
【0055】
前記検出電圧Vと印加電圧E(=500V)とから、半導電性ローラ1のローラ抵抗Rは、基本的に式(1′):
R=r×E/(V−r) (1′)
によって求められる。ただし式(1′)中の分母中の−rの項は微小とみなすことができるため、本発明では式(1):
R=r×E/V (1)
によって求めた値でもって半導電性ローラ1のローラ抵抗とすることとする。測定の条件は、先に説明したように温度23±1℃、相対湿度55±1%である。
【0056】
またローラ本体2は、半導電性ローラ1の用途等に応じて任意の硬さ、圧縮永久ひずみを有するように調整できる。前記硬さ、圧縮永久ひずみ、並びにローラ抵抗等を調整するためには、例えばエピクロルヒドリンを含む二元共重合体EとニトリルゴムNとの質量比E/Nを先に説明した範囲内で調整したり、架橋成分としてのチオウレア系架橋成分、および硫黄系加硫成分の種類と量を調整したりすればよい。
【0057】
本発明の半導電性ローラは、前記帯電ローラのほか、例えば現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラ等としてレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置に用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下の実施例、比較例における半導電性ローラの作製および試験を、特記した以外は温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下で実施した。
〈実施例1〉
ベースポリマとしてのエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体〔ECO、ダイソー(株)製のエピクロマー(登録商標)D、エチレンオキサイド含量61モル%〕60質量部、およびニトリルゴム〔JSR(株)製のJSR N250 SL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量20%〕40質量部とを9Lニーダを用いて素練りしながら、下記表1に示す各成分を加えてさらに混練して半導電性ゴム組成物を調製した。両ベースポリマの質量比E/N=60/40であった。
【0059】
【表1】

【0060】
表中の各成分は下記のとおり。
粉末硫黄:加硫剤〔鶴見化学工業(株)製〕
促進剤DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド〔チアゾール系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)DM〕
促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔チウラム系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラーTS〕
チオウレア系架橋剤:エチレンチオウレア〔川口化学工業(株)製のアクセル(登録商標)22−S〕
促進剤DT:1,3−ジ−o−トリルグアニジン〔グアニジン系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラーDT〕
酸化亜鉛2種:架橋助剤〔三井金属鉱業(株)製〕
受酸剤:ハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT−4A(登録商標)−2〕
表中の質量部は、前記ベースポリマ100質量部あたりの質量部である。
【0061】
前記半導電性ゴム組成物をφ60の押出成形機に供給して外径φ13.0mm、内径φ5.5mmの円筒状に押出成形した後、外径φ3mmの加硫用の仮のシャフトを挿通して加硫缶内で160℃×30分間加硫させた。
次いで、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ6mmのシャフトに装着し直してオーブン中で150℃×60分間加熱して接着したのち両端をカットし、広幅研磨機を用いて外径がφ12.0mmになるまで外周面を研磨した。
【0062】
研磨後の外周面をアルコール拭きしたのち、UV光源から外周面までの距離を50mmとしてUV処理装置にセットし、30rpmで回転させながら紫外線を15分間照射することで前記外周面に酸化膜を形成して半導電性ローラを作製した。
〈実施例2〉
ベースポリマとしてのエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体の量を50質量部、ニトリルゴムの量を50質量部として、両ベースポリマの質量比E/N=50/50としたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0063】
〈実施例3〉
ベースポリマとしてのエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体の量を80質量部、ニトリルゴムの量を20質量部として、両ベースポリマの質量比E/N=80/20としたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0064】
〈実施例4〉
さらにイオン導電剤としてのトリフルオロメタンスルホン酸リチウム〔TFMS、森田化学工業(株)製〕0.5質量部を加えたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ローラを作製した。
〈実施例5〉
さらに疎水性のイオン導電剤としてのテトラブチルアンモニウムパークロレート〔TBAP、日本カーリット(株)製のQAP−01〕0.8質量部を加えたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ローラを作製した。
【0065】
〈実施例6〉
さらに疎水性のイオン導電剤としてのN−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビストリフルオロメタンスルホニルイミド〔BMP・TFSI、日本カーリット(株)製〕0.6質量部を加えたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ローラを作製した。
〈比較例1〉
研磨してアルコール拭きしたローラ本体の外周面に紫外線を照射しなかったこと以外は実施例1と同様にして半導電性ローラを作製した。
【0066】
〈比較例2〉
さらに導電性カーボンブラック〔電気化学工業(株)製のデンカブラック(登録商標)〕10質量部を加えたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
〈比較例3〉
ベースポリマとしてのエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体の量を45質量部、ニトリルゴムの量を55質量部として、両ベースポリマの質量比E/N=45/55としたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0067】
〈比較例4〉
ベースポリマとしてのエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体の量を85質量部、ニトリルゴムの量を15質量部として、両ベースポリマの質量比E/N=85/15としたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0068】
〈比較例5〉
硫黄系加硫成分としての硫黄、および促進剤DM、TSを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
〈比較例6〉
チオウレア系架橋成分としてのチオウレア系架橋剤、および促進剤DTを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0069】
〈比較例7〉
さらにパーオキサイド系架橋剤〔ジクミルパーオキサイド、日油(株)製のパークミル(登録商標)D〕0.50質量部を加えたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
〈比較例8〉
チオウレア系架橋成分としてのチオウレア系架橋剤、および促進剤DTを配合せず、代わりにパーオキサイド系架橋剤〔ジクミルパーオキサイド、日油(株)製のパークミルD〕0.50質量部を加えたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0070】
〈比較例9〉
チオウレア系架橋成分としてのチオウレア系架橋剤、促進剤DT、ならびに硫黄系加硫成分としての硫黄、促進剤DM、TSをいずれも配合せず、代わりにパーオキサイド系架橋剤〔ジクミルパーオキサイド、日油(株)製のパークミルD〕1.00質量部を加えたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0071】
〈比較例10〉
ベースポリマのうちニトリルゴムに代えてクロロプレンゴム〔CR、昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT〕40質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
〈比較例11〉
硫黄系加硫成分としての硫黄、および促進剤DM、TSを配合しなかったこと以外は比較例10と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0072】
〈比較例12〉
チオウレア系架橋成分としてのチオウレア系架橋剤、および促進剤DTを配合しなかったこと以外は比較例10と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
〈比較例13〉
ベースポリマとして、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体〔GECO、ダイソー(株)製のエピオン(登録商標)301〕60質量部と、クロロプレンゴム〔CR、昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT〕40質量部とを用いたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0073】
〈比較例14〉
硫黄系加硫成分としての硫黄、および促進剤DM、TSを配合しなかったこと以外は比較例13と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
〈比較例15〉
チオウレア系架橋成分としてのチオウレア系架橋剤、および促進剤DTを配合しなかったこと以外は比較例13と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0074】
〈比較例16〉
ベースポリマのうちエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体に代えてエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体〔GECO、ダイソー(株)製のエピオン301〕60質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0075】
〈比較例17〉
硫黄系加硫成分としての硫黄、および促進剤DM、TSを配合せず、代わりにパーオキサイド系架橋剤〔ジクミルパーオキサイド、日油(株)製のパークミルD〕0.50質量部を加えたこと以外は比較例16と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0076】
〈比較例18〉
チオウレア系架橋成分としてのチオウレア系架橋剤、および促進剤DTを配合せず、代わりにパーオキサイド系架橋剤〔ジクミルパーオキサイド、日油(株)製のパークミルD〕0.50質量部を加えたこと以外は比較例16と同様にして半導電性ゴム組成物を調製し、半導電性ローラを作製した。
【0077】
〈ローラ抵抗の測定〉
実施例、比較例で作製途中の半導電性ローラのローラ抵抗を、温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下で、先に説明した測定方法によって測定した。
ローラ抵抗は、10Ω未満であるとき良好、10Ω以上であるとき不良と評価した。なお表2〜表4ではローラ抵抗をlogR値で示している。
【0078】
〈実機試験〉
内部に感光体ドラムを備えたレーザープリンタ用のトナーカートリッジ〔(株)沖データ製のイメージドラムID−C4DC、シアン〕内の、感光体ドラムの表面に常時接触させて配置される純正の帯電ローラに代えて、実施例、比較例で作製した半導電性ローラを帯電ローラとして組み込んだ。
【0079】
そして前記トナーカートリッジをカラーレーザープリンタ〔(株)沖データ製のC5900dn〕に装填し、直後にハーフトーン画像、ベタ画像を印刷して、初期画像として評価した。
また2000枚/日の通紙を7日間実施した後に再びハーフトーン画像、ベタ画像を印刷して、通紙後画像として評価した。
【0080】
評価は、画像に何らかの異常が見られた場合は「×」、異常が見られなかった場合は「○」とした。
さらに前記トナーカートリッジを温度50℃、相対湿度90%の環境下、30日間静置したのち前記カラーレーザープリンタに組み込んでハーフトーン画像、ベタ画像を印刷した。そして前記静置時に半導電性ローラが接触していた位置に筋状に画像不良が見られたものを感光体汚染あり、見られなかったものを感光体汚染なしとして評価した。
【0081】
結果を表2〜4に示す。なお比較例3はローラ抵抗が高く、既に初期の段階で良好なハーフトーン画像を形成できなかったため実機試験を実施しなかった。
【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
表2の比較例1と実施例1〜6の結果より、紫外線照射をせずローラ本体の外周面に酸化膜を形成しなかった比較例1の半導電性ローラは、トナーに添加されるシリカ等の添加剤が前記ローラ本体の外周面に蓄積されて通紙試験後の形成画像に画像ムラを生じることが判った。
比較例2と実施例1〜6の結果より、導電性カーボンブラックを含有させた比較例2の半導電性ローラは、同一のローラ本体中での電気抵抗値のばらつきにより画像ムラを生じることが判った。
【0086】
比較例3と実施例1〜6の結果より、ベースポリマとしてのエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体の量が前記質量比E/N=50/50より少ない場合には、ローラ抵抗が高くなって半導電性ローラに良好な半導電性を付与できないため、先に説明したようにかかる半導電性ローラを帯電ローラとして使用しても良好なハーフトーン画像を形成できないことが判った。
【0087】
また比較例4と実施例1〜6の結果より、ベースポリマとしてのエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体の量が前記質量比E/N=80/20より多い場合には、ローラ本体の外周面に、保護膜として十分に機能しうる良好な酸化膜が形成されなかったため、トナーに添加されるシリカ等の添加剤が前記ローラ本体の外周面に蓄積されて通紙試験後の形成画像に画像ムラを生じることが判った。
【0088】
さらに表3、4の比較例5〜18と表2の実施例1〜6の結果より、ローラ本体の外周面に、保護膜として十分に機能しうる良好な酸化膜を形成して感光体汚染等を防止するためには、ベースポリマとしてエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体等のエピクロルヒドリンを含む二元共重合体と、ニトリルゴムの2種のみを併用する必要があること、架橋成分として、チオウレア系架橋成分と硫黄系加硫成分のみを併用する必要があることが判った。
【0089】
そして実施例1〜6の結果より、前記質量比E/N=50/50〜80/20の範囲内である必要があること、イオン導電剤を加えることにより、ローラ本体にさらに良好な半導電性を付与できることが判った。
〈計量容易性の評価〉
実施例4〜6において半導電性ゴム組成物を調整するために前記各成分を計量して配合する作業をした際に、実施例4では、イオン導電剤としてのトリフルオロメタンスルホン酸リチウムが、計量している間に吸湿により質量が変化しやすく、計量が容易でない場合があり、例えば恒温恒湿の計測室で計量する等の対策が必要であった。
【0090】
これに対し、イオン導電剤として疎水性のテトラブチルアンモニウムパークロレート、またはN−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビストリフルオロメタンスルホニルイミドを用いた実施例5、6は、計量している間に吸湿により質量が変化せず、計量が容易であって、前記の対策を施す必要がないことが判った。
〈ローラ抵抗の環境依存性評価〉
実施例4〜6で作製した半導電性ローラのローラ抵抗を、温度10±1℃、相対湿度20±1%の低温低湿環境(LL)下、および温度30±1℃、相対湿度80±1%の高温高湿環境(HH)下で、先に説明した測定方法によって測定した。また前記測定結果から、低温低湿環境下でのローラ抵抗RLLと、恒温高湿環境下でのローラ抵抗RHHとの比RLL/RHHを求めた。結果を、先に示した温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境(NN)下での測定結果とともに表5に示す。
【0091】
【表5】

【0092】
表より、イオン導電剤として疎水性のテトラブチルアンモニウムパークロレート、N−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビストリフルオロメタンスルホニルイミドを用いることにより、半導電性ローラのローラ抵抗の環境依存性を小さくできることが判った。
【符号の説明】
【0093】
1 半導電性ローラ
2 ローラ本体
3 通孔
4 シャフト
5 外周面
6 酸化膜
7 アルミニウムドラム
8 外周面
9 直流電源
10 抵抗
11 計測回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外周面が半導電性ゴム組成物の架橋物からなり、前記外周面に、紫外線照射によって形成された酸化膜が設けられたローラ本体を備えた半導電性ローラであって、
前記半導電性ゴム組成物は、ベースポリマと、前記ベースポリマを架橋させるための架橋成分とを含み、
前記ベースポリマは、エピクロルヒドリンを含む二元共重合体Eと、ニトリルゴムNとの、質量比E/N=50/50〜80/20の混合物であるとともに、
前記架橋成分は、前記エピクロルヒドリンを含む二元共重合体を架橋させるためのチオウレア系架橋成分と、前記ニトリルゴムを加硫させるための硫黄系加硫成分であることを特徴とする半導電性ローラ。
【請求項2】
前記チオウレア系架橋成分は、チオウレア系架橋剤と、その促進剤である請求項1に記載の半導電性ローラ。
【請求項3】
前記硫黄系加硫成分は、硫黄および含硫黄系加硫剤からなる群より選ばれた少なくとも1種と、含硫黄系促進剤である請求項1または2に記載の半導電性ローラ。
【請求項4】
前記半導電性ゴム組成物は、疎水性のイオン導電剤をも含んでいる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【請求項5】
前記疎水性のイオン導電剤は、テトラブチルアンモニウムパークロレート、およびN−ブチル−3−メチルピリジニウム・ビストリフルオロメタンスルホニルイミドからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項4に記載の半導電性ローラ。
【請求項6】
前記半導電性ゴム組成物は、加硫促進助剤、受酸剤、加工助剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、難燃剤、中和剤、および気泡防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤をも含んでいる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【請求項7】
電子写真法を利用した画像形成装置に用いる帯電ローラであって、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の半導電性ローラからなることを特徴とする帯電ローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−257723(P2011−257723A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213725(P2010−213725)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】