説明

半導電性ローラ及び画像形成装置

【課題】半導電性ローラ例えば現像ローラに必要な弾力性、寸法安定性、耐密着性、電気的等質性、トナー付着性能のいずれもが優れた半導電性ローラを提供すること、およびこの半導電性ローラを利用して感光ドラムに過不足なくトナーを供給し、解像度の高い、印刷むらのない画像形成装置を提供すること。
【解決手段】軸体周囲に、充填材を含んで半導電性を有すると共に表面に空孔を有して成る弾性体層を有する半導電性ローラであって、前記空孔の平均孔径が平均トナー径に対して57〜84%であり、前記空孔の個数が11200μm中に30〜70個である半導電性ローラ及びそれを装備する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導電性ローラ及び画像形成装置に関し、詳しくはトナー搬送性が良好で生産性に優れた、例えば電子写真方式の画像形成装置に装備可能な半導電性ローラ及びこの半導電性ローラを装着した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばレーザプリンタ、複写機、ファクシミリ装置などには、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。画像形成装置の例として、図3にはモノクロプリンタの概要、また図4にはその感光ドラム及び現像ローラを備えた現像装置の主要構成を示した。図4に従って現像原理を説明すると、感光ドラム13に形成された潜像に現像ローラ11によりトナー19を供給して現像し、この現像した感光ドラム13上のトナー20を感光ドラム13の下部で接する記録紙14に転写する。図3においては、図の中央部の感光ドラム13からトナー20を転写された記録紙14は図の左方に移動し、加圧ローラ及び定着ローラによって転写されたトナーが加熱圧着、固定化され、記録紙14上に文字、図形等の画像が完全に定着して記録紙14の表面上へのプリントが完成する。カラープリンターの場合は、図5に示すように、画像形成装置中にBK、C、M、及びYの各現像装置が記録紙の搬送方向に沿って縦列に配置され、各色のトナーをそれぞれ現像ローラから感光ドラムに定量的に供給し、感光ドラムから各色のトナーの像が転写ベルトに転写されて多色の像になる仕組みになっている。
【0003】
このような画像形成装置においては、現像ローラは原料のトナーを常に均一に感光ドラムに供給できるものでなければならない。感光ドラムの表面に均一にトナーが供給されるならば、感光ドラム上の潜像がトナーにより精細に現像され、記録紙上に転写される。図4を参照して現像部分のトナーの移動を詳しく説明すると、トナー供給ローラ17により帯電したトナー18は、現像ローラ11上に静電力及び物理的付着力により付着し、回転する現像ローラ11の表面に付着するトナー18は現像ブレード12により一定の厚さに形成されたトナー19の層となって、現像ローラ11とほぼ接して回転している感光ドラム13上に到達する。感光ドラム13は帯電ローラ16によって帯電され、その上に潜像が描かれている。帯電した感光ドラム13上の潜像部分に接したトナー19は静電力により感光ドラム13側に付着して潜像を現像とする。感光ドラム13上に現像されたトナー20は感光ドラム13の回転とともに記録紙14に接触し転写ローラ15により記録紙14上に転写される。この際、前述したように、現像ローラ11により供給されるトナー19が常に均一な状態で感光ドラム13に接し、制御された静電力により感光ドラム13側に付着していくことが重要である。そのためには、現像ローラとしては弾力性、寸法安定性、電気特性等が優れており、かつこれらの性質が長期間変化せず寿命の長いものが求められる。
【0004】
このように、現像ローラは印刷むらのない、高解像度の印刷をするための重要な部品である。そのため、現像ローラは、その性能の最適化や製造方法、製造金型などが各種検討されている。例えば、特許文献1及び3はローラ成形用の金型を改良して寸法安定性、均質性の優れたゴムローラの提供を可能にしている。特許文献2は低硬度で、耐変形性、耐密着性、電気特性の優れた現像ローラを、特許文献4は導電性のばらつきの少ない現像ローラを開示している。また、特許文献5は高解像度の電子写真装置に対応したトナー搬送性に優れた表面粗度及び硬度の現像ローラに好適な樹脂組成物を開示している。
【0005】
また、従来の現像ローラの製造においては、現像ローラの表面粗さを調整することを目的に、製造金型から取り出された半完成状態にある現像ローラにおける弾性層の表面を、研磨(研磨を研削と称し、また切削と称することがある。)する研磨工程を経てから、完成品としての現像ローラを得るための最終加工が行われていた。
【0006】
【特許文献1】特開2000−271938号公報
【特許文献2】特開2003−84561号公報
【特許文献3】特開2004−74430号公報
【特許文献4】特開平6−221321号公報
【特許文献5】特開2002−338808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、現像ローラに要求される弾力性、寸法安定性、耐密着性、及び電気特性等の性能を満たし、又は向上させ、さらにトナー付着性能が安定しており、現像ローラ等に使用可能な半導電性ローラを提供することを目的としている。さらに、本発明は、この半導電性ローラを利用して感光ドラムに安定してトナーを供給し、解像度の高い、印刷むらのない画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体周囲に、充填材を含んで半導電性を有すると共に表面に空孔を有する弾性体層を有する半導電性ローラであって、前記空孔の平均孔径が平均トナー径に対して57〜84%であり、前記空孔の個数が11200μm中に30〜70個である半導電性ローラであり、
請求項2は、前記平均トナー径が、3〜20μmである請求項1に記載の半導電性ローラであり、
請求項3は、前記弾性体層表面に少なくとも1層以上のコート層を設けた請求項1または2に記載の半導電性ローラであり、
請求項4は、前記充填材が炭酸カルシウムである請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導電性ローラであり、
請求項5は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導電性ローラを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導電性ローラは、その表面の凹凸が制御されており、トナーの物理的付着性能が安定しているので、感光ドラムへの静電力によるトナーの搬送量を制御し易く、電子写真装置の印刷むらや解像度不良を防止することができる。また、本発明の半導電性ローラは、従来の現像ローラの製造方法が利用できるだけでなく、従来のように研磨(既述したようにこの「研磨」を「研削」、「切削」と称していた。)の後に行われる最終加工工程を省き押出成形や射出成形などにより効率的に生産可能である。よって、本発明の半導電性ローラを装着した画像形成装置は、印刷むらや汚れが少なく、高解像度化にも対応し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の半導電性ローラは、軸体の周囲に、充填材を含む半導電性の弾性体層を、形成して成り、弾性体層の表面には多数の空孔が存在する。本発明の半導電性ローラにおいては、この空孔がトナーを付着すべき弾性体層表面の面積を広げる効果が奏されるとともに、トナーの物理的付着力が向上し、また安定している。このため、本発明の半導電性ローラは、静電力と物理的付着力とで半導電性ローラ表面にトナーを均質に、かつ定量的に付着させ、感光ドラム上に搬送し、感光ドラムに精密に過不足なく付着させることができる。
【0011】
さらに特筆するべきことは、本発明の半導電性ローラは、その弾性体層の表面に、トナー粒子の平均粒径よりも小さな平均粒径を有する空孔が、存在することである。なお、後に詳述するが、これらの空孔は、例えば弾性体層を形成していた充填材が弾性体層の表面から脱落することにより好適に形成され得る。
【0012】
本発明の半導電性ローラにおける弾性体層の表面に形成された空孔は、通常の場合その平均孔径が平均トナー径に対して57〜84%であり、好ましくは66〜82%であり、より好ましくは73〜82%である。通常のトナーの平均粒子径は概ね3〜20μmであるから、弾性体層の表面に存在する空孔の平均孔径を平均トナー径に対して上記範囲とするのが好ましいのである。空孔の平均孔径が平均トナー径に対して84%よりも大きいと、トナーが空孔内に入り込みやすくなり、入り込んだトナーが感光ドラムに移送しにくくなって、画像のシロ抜け等といった不都合を生じることがあり、また、空孔の平均孔径が平均トナー径に対して57%よりも小さいとトナー粒子への有効な帯電付与が行われなくなるようになり、画像形成装置により形成される画像品質が低下することがある。なお、空孔の平均孔径は、走査型電子顕微鏡で観察した観察画面であって11200μmの面積中に存在する空孔それぞれの孔径を測定し、得られた孔径の算術平均である。
【0013】
本発明においては、弾性体層の表面に形成される空孔の個数は、通常の場合、11200μmの面積中に30〜70個であり、好ましくは30〜65個であり、より好ましくは45〜65個である。空孔の個数が前記上限値よりも多くなると、半導電性ローラにより搬送されるトナー粒子に粗密が生じることがあり、ひいては画像形成装置により形成される画像にムラを生じることがあり、同時に、弾性体層における炭酸カルシウムの比率も大きくなって硬度が高くなり、その結果として不良な現像ローラが形成される可能性がある。また空孔の個数が前記下限値よりも少ないと、半導電性ローラから感光ドラムへのトナー粒子の移送量が少なくなって所定濃度の画像を記録体表面に形成するのが困難になることがある。
【0014】
本発明における弾性体層は、ゴム材料に前記充填材を分散して成る弾性体で形成される。
【0015】
前記ゴム材料としては、シリコーンゴム或いはシリコーン変性ゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、エチレン・プロピレンターポリマー(EPDM)、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリエーテルゴム等のゴム材料、ポリウレタン、ポリスチレン・ポリブタジエンブロック重合体,ポリオレフィン、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエラストマーなどが挙げられ、これら一種又は二種以上の混合ゴム又は変性ゴムを用いることができる。また、上記したゴム材料は、ミラブルタイプ又は液状タイプの材料を任意に選択する事が可能であり、特にはミラブルタイプの材料が好ましい。
【0016】
前記ゴム材質の中でも、ミラブルタイプである以下のシリコーンゴム組成物の硬化体が好ましい。
【0017】
前記シリコーンゴム組成物は、(A)下記平均組成式(1):
SiO(4−n)/2 (1)
(但し、Rは、同一又は異なっていてもよい置換又は非置換の1価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の1価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。)
で示されるオルガノポリシロキサン、(B)モース硬度が2〜8である充填材、及び(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する。
【0018】
前記平均組成式(1)において、Rで示される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びドデシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びヘキセニル基などのアルケニル基、フェニル基、及びトリル基などのアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、又はシアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、及びシアノエチル基などが挙げられる。
【0019】
このオルガノポリシロキサンは分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基などで封鎖されていることが好ましい。このオルガノポリシロキサンは分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有することが好ましく、具体的には、Rのうち0.001〜5モル%、特に0.01〜0.5モル%のアルケニル基、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、及びヘキセニル基等を有することが好ましく、特にビニル基を有することが好ましい。特に、後述する硬化剤として白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの組合わせを使用する場合には、このようなアルケニル基を有するオルガポリシロキサンが通常使用される
また、このオルガノポリシロキサンは、通常選択されたオルガノハロシランの1種又は2種以上を共加水分解縮合することによって、あるいはシロキサンの3量体又は4量体などの環状ポリシロキサンをアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。このオルガノポリシロキサンは基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、一部分岐していてもよい。また、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。このオルガノポリシロキサンは、通常、25℃におけるその粘度が100cSt以上であり、好ましくは100,000〜10,000,000cStである。またこのオルガノポリシロキサンは、通常、その重合度は100以上であり、好ましくは3,000以上であり、その上限は好ましくは100,000であり、さらに10,000が好ましい。
【0020】
前記(B)成分である充填材は、一搬的に補強性シリカ等の補強性充填材とは異なり、弾性体層の表面にトナー粒子よりも小さな孔径の空孔を発生させる目的で添加される。本発明における好適な充填材としては、アルミニウムシリケート、水酸化アルミニウム、アルミナ、石英粉末、溶融石英粉末、ガラス粉末、珪藻土、炭酸カルシウム、クレイ、窒化珪素、炭化珪素、二酸化チタンや酸化亜鉛等の金属酸化物等が挙げられ、中でも珪藻土、炭酸カルシウム、酸化亜鉛等が好ましく、特に炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムのモース硬度は一般に3程度である。炭酸カルシウムは、天然物及び合成物のいずれも使用することができ、いずれを使用するにしても粉砕物が好ましい。また、カルシウムイオンを含む溶液中から粉末として生成した沈降性炭酸カルシウムも好適であり、さらに石灰石や方解石、大理石などの粉砕品も使用することができる。
【0021】
また金属微粒子、導電性金属酸化物系微粒子、グラファイト等の導電性物質も(B)成分としての充填材として使用可能である。導電性金属酸化物系微粒子としては導電性酸化亜鉛、白色導電性酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン系の微粒子等が挙げられ、導電性酸化亜鉛として具体的には、ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛23-Kが、一次粒子径も細かくモース硬度も4〜5であるので、好適に使用されることができ、白色導電性酸化チタンとしては、例えばET-500W(石原産業(株)製)を挙げることができる。また、グラファイトとしては、不定形グラファイト、球状グラファイト等が挙げられる。
【0022】
さらに充填材自身の硬さは、通常の場合、モース硬度が2〜8であり、好ましくは3〜6.5であり、特に好ましくは4〜5である。モース硬度が2〜8の充填材を使用した場合には材料中に粗粒径の充填材が多少存在しても研磨により充填材部分と周囲の部分とを同じ高さの研磨面とすることができて、結果として弾性体層の表面における空孔以外の表面粗さを細かくすることができる。充填材が硬すぎると研磨時に弾性体層の表面が充填材による凸又は凹が発生し、凸部にはトナー等がその部分に付着できなくなり、凹部にはトナー等がたまり層厚が均一になりにくい。さらに凸部となった充填材がローラ表面に接触する感光体ドラムや他のローラ等を摩耗させたり、傷つけたりする。一方、充填材がやわらかすぎると充填材自身が周囲よりも多めに削られなだらかな凹状になることが多く同様に層厚が均一になりにくい。このような充填材を使用することにより、本発明は、弾性体層の表面にはトナー粒子の粒径よりも小さな空孔を形成するともに、空孔以外の弾性体層の表面を平滑にしてなる表面状態を有する弾性体層を有する半導電性ローラを提供する。
【0023】
(B)成分の添加量は(A)成分100質量部に対し1〜500質量部、特に5〜300質量部とすることが好ましい。中でも(B)成分が絶縁性充填材の場合は5〜100質量部、特に10〜50質量部とすることが好ましい。
【0024】
前記(C)成分の導電性材料は(B)成分に属さない導電性材料であり、物理的化学的に同一材料からなるものであっても、(B)成分として規定された粒子径又はモース硬度を有しない導電性材料は(C)成分に属する。該(C)成分は導電性付与成分であり、例えば銀、ニッケル、銅等の各種金属粉、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化金属系粒子などが使用でき、カーボンブラックが好ましい。これらは単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0025】
前記カーボンブラックとしては、通常現像ローラ等に常用されているものを使用することができ、例えばケッチェンブラック,アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、及びMT等を挙げることができる。
【0026】
上記導電性材料の添加量は、弾性体層の体積抵抗値が10〜1010Ω・cmとなる量であればよいが、上述した(A)成分100質量部に対して1〜100質量部、特に5〜50質量部とすることが好ましい。添加量が1質量部未満では所望の導電性を得ることができない場合があり、100質量部を超えると物理的混合がむずかしくなったり機械的強度が低下したりする可能性があり、目的とする弾性体層を形成することができないことがある。
【0027】
本発明における弾性体層の形成に好適に使用することのできる前記シリコーンゴム組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、また、必要に応じて種々の化合物を添加剤として含有させることができ、添加剤の一例として硬化剤、シリカ微粉末、を挙げることができる。前記硬化剤としては既知の白金系触媒と架橋剤オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの組合わせ、及び有機過酸化物触媒を挙げることができる。
【0028】
前記白金系触媒としては公知のものが使用でき、具体的には白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類とのコンプレックスなどが挙げられる。白金系触媒の添加量は有効量、いわゆる触媒量でよく、(A)成分のオルガノポリシロキサンに対し、白金族金属換算で1〜2,000ppmとすることが望ましい。
【0029】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、その重合度は300以下が好ましく、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサン、末端がトリメチルシロキシ基でジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位からなる共重合体、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH3)2SiO0.5単位)とSiO2単位とからなる低粘度流体、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示される。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサンのアルケニル基に対して、ケイ素原子に直結した水素原子が50〜500モル%となる割合で用いられることが望ましい。
【0030】
有機過酸化物触媒としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のアルキル過酸化物、ジクミルパーオキサイド等のアラルキル過酸化物等の有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物触媒の使用量は触媒有効量であり、(A)成分100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましい。
【0031】
前記シリカ微粉末は、機械的強度の優れた弾性体層を得るために好適であり、この目的のためには比表面積が10m/g以上、好ましくは50〜400m/gであるシリカ微粉末を用いることが好ましい。このシリカ微粉末としては煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈殿シリカ(湿式シリカ)が例示され、煙霧質シリカ(乾式シリカ)が好ましい。なお、このシリカ微粉末の添加量は、(A)成分100質量部に対し、5〜100質量部が好ましい。添加量が5質量部未満では少なすぎて十分な補強効果が得られず、100質量部より多くすると加工性が悪くなり、5〜90質量部、特に好ましくは10〜50質量部である。
【0032】
またその他の添加剤としては必要に応じて着色剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱向上剤、ハロゲン化合物等の難燃剤、受酸剤、熱伝導向上剤、離型剤、アルコキシシラン、重合度が(A)成分よりも低いジメチルシロキサンオイル、シラノール、例えばジフェニルシランジオール、α,w−ジメチルシロキサンジオール等の両末端シラノール基封鎖低分子シロキサンやシラン等の分散剤、接着性や成形加工性を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、架橋などを阻害しない硬化、未硬化の各種オレフィン系エラストマー等を添加してもよい。添加するものが粒子状である場合は(B)成分の充填材よりも粒径が小さいことが望ましい。
【0033】
前記シリコーンゴム組成物は、上記した成分を2本ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどのゴム混練り機を用いて均一に混合することにより得ることができる。
【0034】
このようにして調製されたシリコーンゴム組成物は既知の方法で加熱硬化させることにより容易に弾性体層とすることができる。硬化方法はシリコーンゴムの架橋に必要な熱を加えられる方法であればよく、またその弾性体層の成形方法も押出成形による連続架橋、プレス、インジェクションによる型成形など、特に制限されるものではない。この場合、加熱温度は100〜500℃、特に120〜300℃、時間は数秒〜1時間、特に10秒〜30分であることが好ましい。また、必要に応じ、100〜200℃で1〜20時間程度の硬化条件で2次架橋してもよい。
【0035】
この発明に係る半導電性ローラは、その弾性体層の表面に少なくとも一層以上のコート層が形成されているのが、好ましい。特に、弾性体層が前記シリコーンゴム組成物を用いて製造されるときには、前記シリコーンゴム組成物の硬化物から低分子量シリコーン化合物等が浸出することがあるので、このコート層は前記低分子量シリコーン化合物等が感光ドラムに付着して感光ドラムの帯電状態を阻害するのを有効に防止することができる。また、コート層が弾性体層の表面に設けられていると、弾性体層の表面に直接に傷がつき、又は弾性体層の表面が摩耗してしまうのが防止される。
【0036】
コート層は、弾性体層の表面に形成された空孔が充填されてしまわないようにし、好ましくは空孔の平均孔径、個数が維持されるように、形成されるのが好ましい。このコート層の厚さは、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜20μm、さらに好ましくは1〜10μmの範囲内から、空孔の平均孔径、個数が前述した範囲を維持するように、選択されるのが望ましい。
【0037】
コート層は、通常の場合、アミノシラン系樹脂、有機フッ素化合物及び/又はシリコーン化合物、ポリエステル樹脂,ポリエーテル樹脂,フッ素樹脂,エポキシ樹脂,アミノ樹脂,ポリアミド樹脂,アクリル樹脂,アクリルウレタン樹脂,ウレタン樹脂,アルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,尿素樹脂,シリコーン樹脂,ポリビニルブチラール樹脂などで形成することができる。これら各種の樹脂の中でも、コート層を形成する樹脂としてアミノシラン系樹脂が好適である。なお、コート層には、必要に応じてカーボン等の充填材、帯電制御剤等の添加剤を添加してもよい。
【0038】
コート層は、弾性体層の表面に前記樹脂を含有する溶液を塗工する塗布法、前記溶液に前記弾性体層を浸漬するディッピング法等により、形成されることができる。
【0039】
弾性体層の表面をコート層で被覆するに際しては、被覆すべき弾性体層の表面に紫外線を照射して弾性体層の表面を活性化して、これにコート層を形成する樹脂例えばアミノシラン系樹脂を塗布すると、弾性体層とコート層との密着性が向上する。
【0040】
本発明の半導電性ローラは、例えば以下のようにして製造することができる。具体的な材料及び製造方法を例示すると、まず、軸体は、円柱又は円筒状であり、金属、又は合成樹脂等を用いて形成することができる。非導電性材料で形成された軸体は表面に導電性の被膜を形成すれば導電性の軸体となる。弾性体層は、前記したゴム材質を形成する原料と充填材とを含有する弾性体層用組成物を用いて形成することができる。弾性体層の厚さは、通常3〜50mm、好ましくは5〜30mmである。
【0041】
軸体の周囲に弾性体層を形成する手段としては、前述した押出成形による連続架橋、プレス、インジェクションによる型成形の外に、塗布、押出成形、射出成形、注型による軸体との一体成形、あるいは予め円筒状に成形され、適当な長さに裁断された弾性体に軸体を挿入し、接着するなどの方法を採ることができる。
【0042】
かくして出来上がった半導電性ローラにおける弾性体層の表面に存在する充填材を除去するために研磨する。研磨は、例えば、ローラ研磨機を使用することにより行うことができ、さらには耐水ペーパで研磨の程度を高めることにより行うこともできる。
【0043】
このようにして製造した半導電性ローラは、上述のように表面にコート層を設ければさらに好ましいものとなる。
【0044】
このようにして得られた半導電性ローラは、例えば現像ローラとして画像形成装置に装着して好適に使用することが出来る。特に、この発明に係る半導電性ローラを現像ローラとして使用すると、従来の画像形成装置におけるような現像ローラに起因するトナーの供給異常がなくなり、印刷の濃淡むらやかぶり現象がなく、高解像度が維持でき、長期にわたって好適な印刷が可能となる。
【実施例】
【0045】
(実施例1〜4、比較例1〜5)
<軸体の準備、ミラブルタイプのシリコーンゴム組成物の調製>
ステンレス鋼SUM22に無電解ニッケルメッキした直径10mm、長さ250mmの芯金を使用した。この芯金の表面をトルエンで洗浄した後、シリコーン系プライマー〔信越化学工業株式会社製:商品名プライマーNo.16〕を塗布し、ギヤーオーブン中で150℃、10分の条件で焼付処理を実施して軸体を形成した。
【0046】
次にメチルビニルシリコーン生ゴム〔信越化学工業株式会社製:商品名KE−78VBS〕100質量部に、ジメチルシリコーン生ゴム〔信越化学工業株式会社製:商品名KE-76VBS〕20質量部、カーボンブラック〔旭カーボン株式会社製:商品名アサヒサーマル〕10質量部、煙霧質シリカ系充填材〔日本アエロジル株式会社製:商品名AEROSIL200〕15質量部、白金触媒〔信越化学工業株式会社製:商品名C‐19A〕0.5質量部、(付加反応)架橋剤オルガノハイドロジェンポリシロキサン〔信越化学工業株式会社製:商品名C‐19B〕2.0質量部、充填材として表1に示される平均粒径並びに配合量の炭酸カルシウムを添加し、加圧ニーダーで混練してシリコーンゴム組成物を調製した。
【0047】
<ローラの製造>
シリコーンゴム組成物を押出機でクロスヘッドを使用して一体化して分出しし、ギヤーオーブン中で300℃、15分間加熱架橋し、軸体にφ20mmに架橋接着成形した。こうして軸体に架橋接着成形後、ギヤーオーブン中で200℃、4時間二次架橋し、弾性体層表面の充填材を除去するために、円筒研削盤で研磨して弾性体層の直径16mm、長さ210mm、硬度45(JIS A)のローラ基材を作製した。
【0048】
次に、低圧水銀灯により弾性体層外周面に紫外線・オゾン処理を施した。その後、アミノシラン〔信越化学工業株式会社製:商品名KBM603〕をスプレーコーティングして厚み5μmとし、150℃×30分間加熱硬化させてコート層を形成して半導電性ローラとした。
【0049】
<弾性体層及びコート層の表面観察>
実施例1〜4及び比較例1〜4の各半導電性ローラを4本準備し、弾性体層及びコート層の表面を走査型電子顕微鏡(JSM5300LV、加速電圧15kV、1000倍、日本電子株式会社製)で観察し、観察画像から空孔の平均孔径、空孔の個数を算出し、それらを表1に示した。
【0050】
<画像形成評価>
次いで、実施例1〜4及び比較例1〜5の各半導電性ローラを4本準備し、図5に示される電子写真式プリンタ(沖データ株式会社製、商品名:「MICROLINE 1032PS」、解像度1200dpi相当)において、現像ローラとして、配設した。なお、現像剤及び現像剤規制部材は、電子写真式プリンタに付属の現像剤及びブレードを用いた。なお、トナーの平均粒子径は6μmであった。記録体に形成された画像を、以下の評価内容にて評価した。評価結果を表1に示した。
評価
◎ かぶり、白抜け、濃度むらの発生が無く、良好であった。
○ かぶり、白抜け、濃度むらの内、いずれかが若干劣っていたが、印字に支障はなかった。
× かぶり、白抜け、濃度むらの内、いずれかが劣っていた為、印字に支障が生じた。
【0051】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明の半導電性ローラ例えば現像ローラの斜視図である。
【図2】図2は表面に被覆層を持つ本発明の現像ローラの斜視図である。
【図3】図3はモノクロプリンタの模式図である。
【図4】図4は現像装置の現像部の模式図である。
【図5】図5は電子写真式プリンタを示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1:半導電性ローラ
2:軸体
3:弾性体層
4:弾性体層表面
5:被覆層
10:現像装置の現像部
11:現像ローラ
12:現像ブレード
13:感光ドラム
14:印画用紙又は転写ベルト
15:転写ローラ
16:帯電ローラ
17:トナー供給ローラ
18,19,20:トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体周囲に、充填材を含んで半導電性を有すると共に表面に空孔を有して成る弾性体層を有する半導電性ローラであって、前記空孔の平均孔径が平均トナー径に対して57〜84%であり、前記空孔の個数が11200μm中に30〜70個である半導電性ローラ。
【請求項2】
前記平均トナー径が、3〜20μmである請求項1に記載の半導電性ローラ。
【請求項3】
前記弾性体層表面に少なくとも1層以上のコート層を設けた請求項1または2に記載の半導電性ローラ。
【請求項4】
前記充填材が炭酸カルシウムである請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導電性ローラ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導電性ローラを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−304410(P2007−304410A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133793(P2006−133793)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】