説明

半導電性樹脂組成物および電線・ケーブル

【課題】体積抵抗率の温度依存性が小さく、かつ押出加工性に優れた半導電性樹脂組成物、およびそのような組成物を用いた電線・ケーブルを提供する。
【解決手段】半導電性樹脂組成物は、(A)下記(i)〜(iii)の要件を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を30〜80質量%含有するオレフィン系ポリマー100質量部に対し、(B)導電性カーボンブラック40〜90質量部を含有する。また、電線・ケーブルは、そのような半導電性樹脂組成物からなる半導電層を導体外周に有する。
(i)α−オレフィンが、1−ブテンである
(ii)非共役ポリエンが、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンおよびビニルノルボルネンからなる群より選ばれる少なくとも1種である
(iii)非共役ポリエン含有量が5質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線・ケーブルの内部半導電層あるいは外部半導電層の形成に適した半導電性樹脂組成物およびこれを用いた電線・ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル)などのゴム・プラスチック絶縁電力ケーブルにおいては、導体および絶縁体の外周に電気的ストレスの緩和やコロナ放電の防止などを目的として半導電層が設けられる。この半導電層の形成には、従来、エチレン・酢酸ビニル共重合体やエチレン・アクリル酸エチル共重合体などのエチレン系ポリマーに導電性カーボンブラックを配合した組成物が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、従来の組成物は、体積抵抗率の温度依存性が大きいため、ケーブルの品質や特性が安定化しないという実用上の問題があった。
【0004】
すなわち、電力ケーブルは通電によって導体が発熱して温度が上昇する。通電電流は一定ではなく最大許容電流範囲内で常に変化しているため、導体の発熱温度は変化し、それに伴いケーブル温度も変化する。そして、このケーブル温度の変化に伴い半導電層の体積抵抗率も変化する(一般に、温度の上昇に伴い体積抵抗率も上昇する)が、従来の組成物は体積抵抗率の温度依存性が大きいため、半導電層の体積抵抗率は大きく変化する。その結果、電力ケーブルの品質や特性の安定性が低下するおそれがあった。
【0005】
このような温度変化に伴う体積抵抗率の上昇は、例えば導電性カーボンブラックの配合量を増大させることである程度対処することができるが、粘度が上昇するため、押出加工性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−208340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、体積抵抗率の温度依存性が小さく、かつ押出加工性に優れた半導電性樹脂組成物、およびそのような導電性樹脂組成物を用いた高信頼性の電線・ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定のエチレン系三元共重合体を特定の割合で混合したオレフィン系ポリマーに、導電性カーボンブラックを配合することにより、体積抵抗率の温度依存性が小さく、かつ押出加工性に優れた半導電性樹脂組成物、およびこれを用いた電線・ケーブルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、上記目的を解決するため、請求項1に記載された発明は、(A)下記(i)〜(iii)の要件を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を30〜80質量%含有するオレフィン系ポリマー100質量部に対し、(B)導電性カーボンブラック40〜90質量部を含有することを特徴とする半導電性樹脂組成物である。
(i)α−オレフィンが、1−ブテンである
(ii)非共役ポリエンが、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンおよびビニルノルボルネンからなる群より選ばれる少なくとも1種である
(iii)非共役ポリエン含有量が5質量%以下である
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の半導電性樹脂組成物において、非共役ポリエンが、ジシクロペンタジエンおよび/またはエチリデンノルボルネンであることを特徴とする半導電性樹脂組成物である。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の半導電性樹脂組成物において、(A)成分が、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする半導電性樹脂組成物である。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項1または2記載の半導電性樹脂組成物において、(A)成分が、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体およびエチレン・メタクリル酸エチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする半導電性樹脂組成物である。
【0013】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の半導電性樹脂組成物において、(B)成分の導電性カーボンブラックは、アセチレンブラックを含むことを特徴とする半導電性樹脂組成物である。
【0014】
請求項6に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の半導電性樹脂組成物において、105℃における体積抵抗率が、23℃における体積抵抗率の10倍以下であることを特徴とする半導電性樹脂組成物である。
【0015】
請求項7に記載された発明は、導体外周に請求項1乃至6のいずれか1項記載の半導電性樹脂組成物からなる半導電層を有することを特徴とする電線・ケーブルである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、体積抵抗率の温度依存性が小さく、かつ押出加工性に優れた半導電性樹脂組成物、およびそのような導電性樹脂組成物を用いた高信頼性の電線・ケーブルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電力ケーブルの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の電力ケーブルの他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
まず、本発明の半導電性樹脂組成物について説明する。
【0020】
本発明の半導電性樹脂組成物は、(A)特定のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含有するオレフィン系ポリマーと、(B)導電性カーボンブラックとを含有するものである。
本発明の半導電性樹脂組成物において使用される(A)成分のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、下記(i)〜(iii)の要件を満たす。
(i)α−オレフィンが、1−ブテンである
(ii)非共役ポリエンが、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンおよびビニルノルボルネンからなる群より選ばれる少なくとも1種である
(iii)非共役ポリエン含有量が5質量%以下である
【0021】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体における非共役ポリエンとしては、なかでもジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンが好ましく、特にジシクロペンタジエンが好ましい。この非共役ポリエンの含有量はエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体中の5質量%以下であり、5質量%を超えるとスコーチ時間が短くなり加工性が悪くなる。ただし、非共役ポリエンの含有量が少な過ぎると体積抵抗率の温度依存性が大きくなるため、含有量は2質量%以上、5質量%以下の範囲であることが好ましい。なお、エチレンおよびα−オレフィン(1−ブテン)の各単位成分については特に限定されるものではないが、好ましくはエチレン含有量は60〜85質量%であり、α−オレフィン含有量は10〜25質量%である。
【0022】
本発明においては、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体以外のオレフィン系ポリマーを少なくとも1種含有する。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体以外のオレフィン系ポリマーとしては、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン;ポリプロピレン(PP);ポリイソプチレン;エチレンに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、パーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどのビニルエステルを共重合させたエチレン・ビニルエステル共重合体;エチレンに、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステルを共重合させたエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレンに、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどの不飽和カルボン酸を共重合させたエチレン・不飽和カルボン酸共重合体;エチレンに、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンを共重合させたエチレン・α−オレフィン共重合体;イソブチレン・イソプレン共重合体などが挙げられる。また、上述した(i)〜(iii)の要件を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体以外のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体も使用することができる。導電性カーボンを多量に添加する観点からは、なかでも、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体が好ましく、特に、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチルが好ましい。
【0023】
なお、上述した(i)〜(iii)の要件を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体以外のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を使用する場合は、(A)成分中の第3成分として使用することが好ましい。
【0024】
(i)〜(iii)の要件を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の(A)成分中の割合は30〜80質量%であり、好ましくは30〜70質量%であり、より好ましくは40〜60質量%である。(A)成分中の割合が30質量%未満では、体積抵抗率の温度依存性を改善することができない。また、押出加工性も低下する。逆に、80質量%を超えても、体積抵抗率の温度依存性を改善する効果はさほど変わらず、材料コストが上昇する。
【0025】
本発明の半導電性樹脂組成物において使用される(B)成分の導電性カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。(B)成分の導電性カーボンブラックとしては、なかでも、アセチレンブラックが好ましい。
【0026】
この(B)成分の導電性カーボンブラックの配合量は、(A)成分のオレフィン系ポリマー100質量部に対して、40〜90質量部、好ましくは45〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部である。配合量が40質量部未満では、体積抵抗率が大きくなり、また、90質量部を超えると、組成物の粘度が上昇して押出加工が実質的にできなくなる。また、機械的強度、特に伸びが低下する。
【0027】
本発明の半導電性樹脂組成物は、被覆後もしくは成形後にポリマー成分を架橋させてもよい。架橋させることにより耐熱性を向上させることができる。架橋方法は、予め半導電性樹脂組成物に架橋剤を添加しておき、成形後に架橋させる化学架橋法や、電子線照射による電子線架橋法などを用いることができる。化学架橋法を行う場合に用いる架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0028】
なお、架橋を行わない場合、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体以外のオレフィン系ポリマーとして、融点の高い(例えば、120℃以上)ポリエチレンを使用すると、耐熱性を高めることができる。また、架橋を行う場合、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体以外のオレフィン系ポリマーとして、エチレン・アクリル酸エチル共重合体の使用が好ましい。
【0029】
本発明の半導電性樹脂組成物には、以上説明した成分の他、さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、無機充填剤、加工助剤、架橋助剤、難燃剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、軟化剤、可塑剤、滑剤、その他の添加剤を配合することができる。
【0030】
本発明の半導電性樹脂組成物は、以上の各成分をバンバリーミキサ、タンブラー、加圧ニーダ、混練押出機、ミキシングローラなどの通常の混練機を用いて均一に混合することにより容易に製造することができる。
【0031】
本発明の半導電性樹脂組成物は、105℃における体積抵抗率が、23℃における体積抵抗率の10倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましい。
【0032】
次に、上記半導電性樹脂組成物を用いた本発明の電力ケーブルについて説明する。
本発明の電線・ケーブルは、前述した方法で調製した組成物を、導体外周に直接もしくは他の被覆を介して押出し被覆するか、あるいはテープ状に成形したものを巻き付けることにより製造される。なお、前述したように、組成物は、被覆後もしくは成形後、架橋することができる。
【0033】
図1は、本発明の電線・ケーブルの一実施形態(電力ケーブル)を示す横断面図である。
【0034】
図1において、11は、例えば多数本の銅素線を撚り合わせ円形圧縮加工を施してなる導体を示している。この導体11上には、内部半導電層12、架橋ポリエチレンなどからなる絶縁体13、外部半導電層14、遮蔽層15、アルミなどからなる金属シース16およびポリエチレン樹脂などからなる防食層17が順に設けられている。そして、このケーブルにおいては、内部半導電層12および外部半導電層14が前述した半導電性樹脂組成物の押出被覆により形成されている。
【0035】
このように構成される電力ケーブルにおいては、内部半導電層12および外部半導電層14がいずれも体積抵抗率の温度依存率の小さい半導電性樹脂組成物で形成されているため、高温時でも良好かつ安定したケーブル特性を有している。
【0036】
本発明の電線・ケーブルは、半導電層を備えたものであれば、従来知られる各種電線・ケーブルに広く適用可能である。
【0037】
例えば、図2は、遮蔽層15上に、防食層を兼ねるポリエチレン樹脂などからなるプラスチックシース18が設けられている点を除いて、図1に示す電力ケーブルと同様に構成されている。このように構成される電力ケーブルにおいても、内部半導電層12および外部半導電層14がいずれも体積抵抗率の温度依存率の小さい半導電性樹脂組成物で形成されているため、高温時でも良好かつ安定したケーブル特性を有している。
【0038】
本発明は、以上説明した実施の形態の記載内容に限定されるものではなく、構造や材質、各部材の配置等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例および比較例で用いた成分は以下の通りである。
・高密度ポリエチレン:
日本ポリエチレン(株)製 商品名 ノバテックHD230
(密度0.946g/cm、MFR0.9g/10分)
・エチレン・アクリル酸エチル共重合体:
日本ユニカー(株)製 商品名 DPDJ−9169
・エチレン・ブテン−1・ジシクロペンタジエン共重合体:
三井化学(株)製 商品名 EPT X−75
(エチレン:76質量% ブテン−1:19.5質量%
ジシクロペンタジエン:4.5質量%)
・アセチレンブラック:
電気化学工業(株)製 商品名 デンカブラック
・酸化防止剤:
チバジャパン(株)製 商品名 イルガノックス1035
・架橋剤:
ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン;
日油(株)製 商品名 パーブチルP
【0040】
実施例1
エチレン・アクリル酸エチル共重合体70質量部、エチレン・ブテン−1・ジシクロペンタジエン共重合体30質量部、アセチレンブラック60質量部、酸化防止剤0.5質量部、および架橋剤1質量部を加圧ニーダを用いて均一に混練して半導電性樹脂組成物を調製した。
【0041】
実施例2〜6、比較例1、2
配合成分および配合量を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして半導電性樹脂組成物を調製した。
【0042】
上記各実施例および各比較例で得られた導電性樹脂組成物について、下記に示す方法で各種特性を評価した。
【0043】
[体積抵抗率]
半導電性樹脂組成物を180℃で20分間プレス成形して作成した厚さ約1mmのシートを、φ50mmの主電極およびφ80mmの対電極で挟み込み、デジタルマルチメータにて測定した。測定は23℃、60℃、90℃および105℃の各温度にて実施した。
【0044】
[押出加工性]
JIS K 6300に準拠して150℃におけるムーニースコーチテストを行い、その測定により得たムーニースコーチ時間により評価した。
[ゲル分率]
JIS C 3005に準拠して測定した。
【0045】
これらの結果を表1の下欄に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1から明らかなように、実施例に係る半導電性樹脂組成物は、いずれも体積抵抗率の温度依存性が小さく、かつ押出加工性にも優れていた。これに対し、エチレン・ブテン−1・ジシクロペンタジエン共重合体が過少配合された比較例1、2では、体積抵抗率の温度依存性が大きいうえに押出加工性も不良であった。
【符号の説明】
【0048】
11…導体、12…内部半導電層、13…架橋ポリエチレン絶縁体、14…外部半導電層、15…遮蔽層、16…金属シース、18…プラスチックシース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(i)〜(iii)の要件を満たすエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を30〜80質量%含有するオレフィン系ポリマー100質量部に対し、(B)導電性カーボンブラック40〜90質量部を含有することを特徴とする半導電性樹脂組成物。
(i)α−オレフィンが、1−ブテンである
(ii)非共役ポリエンが、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンおよびビニルノルボルネンからなる群より選ばれる少なくとも1種である
(iii)非共役ポリエン含有量が5質量%以下である
【請求項2】
非共役ポリエンが、ジシクロペンタジエンおよび/またはエチリデンノルボルネンであることを特徴とする請求項1記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分が、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体およびエチレン・メタクリル酸エチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分の導電性カーボンブラックは、アセチレンブラックを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項6】
105℃における体積抵抗率が、23℃における体積抵抗率の10倍以下であることを特徴とする半徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項7】
導体外周に請求項1乃至6のいずれか1項記載の半導電性樹脂組成物からなる半導電層を有することを特徴とする電線・ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−46891(P2011−46891A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198837(P2009−198837)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】