説明

半導電性樹脂組成物及び電力ケーブル

【課題】成形品としての特性を損なうことなく、1×10Ω・cm以下の体積抵抗率を有する成形品を、成形性よく製造できる半導電性樹脂組成物、及び該組成物を用いて得られた成形品の提供。
【解決手段】(A)エチレン−プロピレン−ジエンゴム100質量部、(B)導電性カーボンブラック20〜70質量部、及び(C)有機過酸化物系架橋剤2〜7質量部が配合されてなることを特徴とする半導電性樹脂組成物;かかる半導電性樹脂組成物を用いて得られた半導電層を備えたことを特徴とする電力ケーブル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性樹脂組成物、及び該組成物を用いて成形した半導電層を備えた電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力ケーブル、特に高圧電力ケーブルでは、導体を被覆する絶縁層とこの導体との界面において、電界の集中を緩和したり、部分的な放電を防止する目的で、絶縁層の径方向内側及び外側の双方に、半導電層が設けられている。ここで、絶縁層とは、例えば、1×1013Ω・cm以上の体積抵抗率を有するものを指す。そして、半導電層は、1×10Ω・cm以下の体積抵抗率を有するもので構成され、通常は、半導電性ゴムの成形品からなる。
【0003】
半導電層等の半導電性成形品の製造方法としては、これまでに、カーボンブラック等の導電性物質が配合された半導電性樹脂組成物を用いて成形する方法(例えば、特許文献1参照)がよく知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−311745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の製造方法は、半導電性成形品の体積抵抗率を1×10Ω・cm以下とすることに主眼が置かれており、半導電性樹脂組成物は製造時の成形性が劣るという問題点があった。より具体的には、体積抵抗率を下げるため、カーボンブラック等の導電性物質を多量に配合すると、半導電性樹脂組成物は成形時における溶融粘度が高くなるために、押出速度が低下してしまう。また、このような半導電性樹脂組成物は、溶融粘度が変動し易くなるため、製造条件の調節が必要であり、生産性が低いという問題点があった。さらに、場合によっては、得られた成形品の特性が損なわれてしまうという問題点もあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、成形品としての特性を損なうことなく、1×10Ω・cm以下の体積抵抗率を有する成形品を、成形性よく製造できる半導電性樹脂組成物、及び該組成物を用いて得られた成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、
本発明は、(A)エチレン−プロピレン−ジエンゴム100質量部、(B)導電性カーボンブラック20〜70質量部、及び(C)有機過酸化物系架橋剤2〜7質量部が配合されてなることを特徴とする半導電性樹脂組成物を提供する。
かかる半導電性樹脂組成物は、(B)導電性カーボンブラックの配合量が前記範囲であることで、溶融粘度が低くて成形性に優れるとともに、得られる成形品が目的とする半導電性を安定して有するものとなる。また、(C)有機過酸化物系架橋剤の配合量が前記範囲であることで、成形品の特性が損なわれることもない。すなわち、得られる成形品は体積抵抗率が低減されるとともに、良好な伸縮性を有するものとなる。
本発明の半導電性樹脂組成物においては、前記(C)有機過酸化物系架橋剤が、ジクミルパーオキサイドであることが好ましい。
有機過酸化物系架橋剤が、ジクミルパーオキサイドであることにより、架橋反応が良好に進行し、より優れた特性の成形品が得られる。
また、本発明は、上記本発明の半導電性樹脂組成物を用いて得られた半導電層を備えたことを特徴とする電力ケーブルを提供する。
かかる電力ケーブルは、前記半導電性樹脂組成物を用いて半導電層に成形する時の成形性に優れるため、容易に製造できる。また、前記半導電層は、成形品としての特性を損なうことなく、目的とする体積抵抗率を有するものとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形品としての特性を損なうことなく、1×10Ω・cm以下の体積抵抗率を有する成形品を、成形性よく製造できる半導電性樹脂組成物、及び該組成物を用いて得られた成形品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る組成物を用いて得られた半導電層を備えた電力ケーブルを例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<半導電性樹脂組成物>
本発明に係る半導電性樹脂組成物(以下、「組成物」と略記することがある)は、(A)エチレン−プロピレン−ジエンゴム(以下、「EPDM」と略記することがある)100質量部、(B)導電性カーボンブラック20〜70質量部、及び(C)有機過酸化物系架橋剤(以下、「架橋剤」と略記することがある)2〜7質量部が配合されてなることを特徴とする。通常、(B)導電性カーボンブラックの配合量により、得られる導電性成形品(以下、「成形品」と略記することがある)の体積抵抗率が調節されるが、一方で(B)導電性カーボンブラックの配合量が多くなり過ぎると、組成物の溶融粘度が高くなり、成形性が悪化してしまう。本発明においては、(B)導電性カーボンブラックの配合量だけでなく、(C)架橋剤の配合量でも体積抵抗率を調節するので、(B)導電性カーボンブラックの配合量を低減でき、組成物の成形性を悪化させること無く、目的とする体積抵抗率(すなわち、半導電性)を有する成形体が得られる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0011】
(A)EPDMは、主たるモノマーとしてエチレン及びプロピレンを使用し、さらに、重合性不飽和結合(二重結合)を有する非共役ジエンモノマーを少量使用して、これらモノマーを共重合させて得られたものであり、主鎖中に二重結合を有する。(A)EPDMは、本発明に係る前記組成物において、ベースポリマーに相当する。
【0012】
前記ジエンモノマーとしては、公知のものが使用でき、好ましいものとして5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ビニルノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)が例示できる。
前記ジエンモノマーは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0013】
(A)EPDMとしては、市販品を使用してもよいし、公知の方法にしたがって合成したものを使用してもよい。
(A)EPDMは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0014】
前記組成物において、配合成分の総量に占める(A)EPDMの配合量は、40〜90質量%であることが好ましく、50〜75質量%であることが好ましい。このような範囲とすることで、特性がより良好な成形品が得られる。
【0015】
(B)導電性カーボンブラックは、公知のものでよく、好ましいものとしてアセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラックが例示できる。
(B)導電性カーボンブラックは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0016】
前記組成物において、(B)導電性カーボンブラックの配合量は、(A)EPDMの配合量100質量部あたり20〜70質量部である。下限値以上とすることで、得られる成形品は、目的とする半導電性を安定して有するものとなる。下限値よりも少なくなると、成形品の体積抵抗率は急激に上昇し易くなり、成形品を安定した品質で製造するのが困難となる。一方、上限値以下とすることで、組成物の溶融粘度を低下させることができ、流動性が良好で成形性に優れた組成物とすることができる。そして、これら効果がより顕著に得られることから、(B)導電性カーボンブラックの前記配合量は、25〜65質量部であることが好ましく、30〜60質量部であることがより好ましい。
【0017】
(C)架橋剤は、有機過酸化物系のものであれば特に限定されず、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等が例示できる。そして、架橋反応が良好に進行し、より優れた特性の成形品が得られる点から、(C)架橋剤は、ジアルキルパーオキサイドであることが好ましく、ジクミルパーオキサイドであることがより好ましい。
【0018】
(C)架橋剤は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよいが、通常は、一種で十分である。
【0019】
前記組成物において、(C)架橋剤の配合量は、(A)EPDMの配合量100質量部あたり2〜7質量部である。下限値以上とすることで、成形性が悪化することなく、得られる成形品は体積抵抗率が低減され、1×10Ω・cm以下となる。これは、(A)EPDMが十分に架橋され、得られた樹脂中に(B)導電性カーボンブラックが満遍なく分散することによると推測される。また、(A)EPDMが十分に架橋されるので、成形品の形状を安定して維持できる。一方、上限値以下とすることで、過度な架橋が抑制され、得られる成形品は良好な伸縮性を有するものとなる。前記組成物から得られる、後述する成形品は、半導電性ゴムに分類されるが、過度に架橋された半導電性ゴムは、伸縮性が不十分であるため、その形状の維持が困難である。そのため成形品としての特性を欠いており、実用には適さない。
【0020】
前記組成物は、(A)EPDM、(B)導電性カーボンブラック及び(C)架橋剤以外に、本発明の効果を妨げない範囲内において、さらに(D)その他の成分が配合されてなるものでもよい。
(D)その他の成分としては、公知のものが適宜使用でき、架橋助剤、軟化剤、老化防止剤、安定剤、充填材、補強剤、顔料等が例示できる。
例えば、前記架橋助剤を配合することで、前記組成物の(A)EPDMの架橋反応を、より円滑に進行させることができる。
また、前記軟化剤を配合することで、前記組成物をより容易に成形できる。また、前記老化防止剤又は安定剤を配合することで、得られる成形品は安定性がより向上する。
【0021】
(D)その他の成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0022】
前記組成物において、配合成分の総量に占める、(A)EPDM、(B)導電性カーボンブラック及び(C)架橋剤の総配合量の比率は、75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。前記比率の上限値は特に限定されず、100質量%であってもよいが、通常は97質量%であることが好ましい。下限値以上とすることで、目的とする半導電性及びその他の特性により優れた成形品が得られる。また、上限値以下とし、(D)その他の成分を配合することで、(D)その他の成分の種類に応じた有利な効果が得られる。
【0023】
前記組成物は、(A)EPDM、(B)導電性カーボンブラック及び(C)架橋剤、並びに必要に応じて(D)その他の成分を配合することで製造できる。
各成分の配合時には、これら成分を添加して、各種手段により十分に混合することが好ましい。そして、各成分は、これらを順次添加しながら混合してもよいし、全成分を添加してから混合してもよい。
【0024】
前記各成分の混合方法は、特に限定されず、例えば、撹拌翼、ボールミル、超音波分散機、混錬機等を使用して、常温又は加熱条件下で所定時間混合する公知の方法を適用すればよい。
また、組成物の製造後に直ちにこれを混錬し、加熱成形して成形品を製造したい場合には、組成物の製造を兼ねて混錬を行ってもよい。
(D)その他の成分として、架橋助剤を使用する場合には、架橋助剤は成形品製造直前に組成物に配合することが好ましい。
【0025】
前記組成物は、(C)架橋剤の配合量を前記範囲内に設定したことにより、成形性が悪化することなく、伸縮性、体積抵抗率、及びその他の特性が良好な成形品とすることができる。成形品製造時の架橋剤の配合量は、原料成分の架橋反応を必要とされる程度まで行うことができる範囲内において、できるだけ少量にするのが一般的である。これは、架橋剤を必要以上に使用することで、得られる成形体中の架橋剤又は架橋剤に由来する不純物の残存量が増大することを避けるためである。これらの残存量が増大し過ぎると、成形体の機械特性をはじめとする諸特性に悪影響の出ることが危惧される。例えば、先に挙げた「特開平4−311745号公報」には、架橋性樹脂成分、導電性カーボンブラック及び架橋剤が配合されてなる半導電性樹脂組成物が開示され、かかる組成物において、架橋剤の配合量を架橋性樹脂成分の配合量100質量部あたり0.2〜5質量部とすることが記載されている。しかし、具体的に効果が確認されている架橋剤の前記配合量は0.5質量部のみであり、0.5質量部よりも前記配合量が多い組成物は実質的に何ら開示されていない。これに対して、本発明に係る前記組成物においては、後述するように、(A)EPDMの配合量100質量部あたりの(C)架橋剤の配合量を2〜7質量部とすることにより、伸縮性等の諸特性が良好な成形品が得られることを具体的に確認している。本発明に係る前記組成物は、(C)架橋剤の配合量が通常よりも多いにもかかわらず、成形品の品質が良好である点で、従来のものとは全く相違するものである。さらに、本発明に係る前記組成物は、(B)導電性カーボンブラック等の一般的な導電性物質ではなく、(C)架橋剤の配合量を調節することで、成形品の体積抵抗率を調節できる点で、従来にない優れたものである。(B)導電性カーボンブラックの配合量だけでなく、(C)架橋剤の配合量でも体積抵抗率を調節するので、(B)導電性カーボンブラックの配合量を低減できるからである。
【0026】
<成形品>
本発明に係る前記組成物は、加熱成形することで半導電性成形品とすることができる。前記成形品としては、特に、電力ケーブルの被覆に使用される半導電層が好適である。このような電力ケーブルは、半導電層として前記組成物を用いて得られたものを備えた点以外は、従来の電力ケーブルと同様に構成できる。
【0027】
図1は、本発明に係る前記組成物を用いて得られた半導電層を備えた電力ケーブルを例示する概略断面図である。
ここに示す電力ケーブル1は、導体11上に、径方向内側から外側へ向けて、第一の半導電層12、絶縁層13、第二の半導電層14、金属遮蔽層15及びシース16を、この順に同心状に備える。ここでは、第一の半導電層12は内部半導電層に、第二の半導電層14は外部半導電層に、それぞれ相当する。
【0028】
導体11は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の単体金属又は合金からなる。
第一の半導電層12は、導体11を被覆しており、前記組成物を用いて成形したものである。第一の半導電層12の厚さは、0.01〜3mmであることが好ましい。
絶縁層13は、第一の半導電層12を被覆しており、例えば、ポリエチレン又は架橋ポリエチレンからなる。絶縁層13の厚さは、1〜30mmであることが好ましい。
第二の半導電層14は、絶縁層13を被覆しており、第一の半導電層12と同様に、前記組成物を用いて成形したものである。第二の半導電層14の厚さは、0.01〜3mmであることが好ましい。第一の半導電層12及び第二の半導電層14は、互いに同じ材質でもよいし、異なる材質でもよい。
金属遮蔽層15は、第二の半導電層14を被覆しており、例えば、銅等の金属からなる。金属遮蔽層15の厚さは、0.001〜0.5mmであることが好ましい。
シース16は、金属遮蔽層15を被覆しており、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の樹脂からなる。
【0029】
ここでは、電力ケーブル1として、半導電層を2層備えたものを示しているが、本発明に係る電力ケーブルはこれに限定されず、半導電層は、導体層及び絶縁層間に配置されていれば、その層数は1でもよいし3以上でもよく、目的に応じて任意に調節できる。
【0030】
電力ケーブル1は、前記組成物を使用すること以外は、従来の電力ケーブルと同様の方法で製造できる。例えば、以下の通りである。
まず、本発明に係る前記組成物を二軸押出機、ニーダ、バンバリーミキサ等を使用して溶融混練した後、押出機を使用して導体11上に押出し、導体11を被覆する。この時、前記組成物は、溶融混練後に造粒機でペレットにしてから、押出に供してもよい。
押出時の前記組成物は、溶融粘度が低いので流動性が良好であり、所望の形状に速やかに成形できるなど、成形性に優れる。
【0031】
次いで、被覆後の前記組成物を加熱して架橋させることにより、加熱成形を完了し、第一の半導電層12を形成する。
この時の加熱は、例えば、水蒸気を吹き付けるなど、公知の方法で行えばよい。加熱温度は150〜200℃であることが好ましく、加熱時間は1〜45分間であることが好ましい。このような範囲とすることで、第一の半導電層12の特性がより良好となる。
【0032】
次いで、押出機を使用して、絶縁層とするための組成物を第一の半導電層12上に押出し、第一の半導電層12を被覆することにより、絶縁層13を形成する。絶縁層13の形成に架橋が必要である場合には、被覆後に加熱を行えばよい。
なお、第一の半導電層12を形成するための加熱は、上記のように絶縁層13の形成前ではなく、絶縁層13の形成時に同時に、又は絶縁層13の形成後に行ってもよい。
また、第一の半導電層12及び絶縁層13を形成するためのそれぞれの組成物は、二層同時押出により、一挙に押出してもよい。
【0033】
次いで、第一の半導電層12の場合と同様の方法で、本発明に係る前記組成物を絶縁層13上に押出し、絶縁層13を被覆する。
この押出時の前記組成物も、溶融粘度が低いので流動性が良好であり、所望の形状に速やかに成形できるなど、成形性に優れる。
【0034】
次いで、第一の半導電層12の場合と同様の方法で、被覆後の前記組成物を加熱して架橋させることにより、加熱成形を完了し、第二の半導電層14を形成する。
なお、第一の半導電層12及び/又は絶縁層13を形成するための加熱は、上記のように第二の半導電層14の形成前ではなく、第二の半導電層14の形成時に同時に行ってもよい。
また、第一の半導電層12、絶縁層13及び第二の半導電層14を形成するためのそれぞれの組成物は、三層同時押出により、一挙に押出してもよい。
【0035】
次いで、第二の半導電層14上に金属遮蔽層15を形成する。金属遮蔽層15は、例えば、金属製テープを第二の半導電層14上に捲回することにより形成できる。
【0036】
次いで、絶縁層13の場合と同様の方法で、金属遮蔽層15上にシース16を形成することにより、電力ケーブル1が得られる。
【0037】
ここでは、前記成形品として、電力ケーブルの被覆に使用される半導電層について説明したが、その他の成形品も、適宜成形方法を選択し、上記と同様の加熱条件で前記組成物を架橋させることにより、同様に製造できる。押出成形以外の成形方法としては、射出成形、金型成形等、公知の方法が適用できる。
【0038】
前記組成物を用いて得られた成形品は、伸縮性など、成形品としての特性を損なうことなく、目的とする体積抵抗率を有するものとなる。
例えば、体積抵抗率は、日本ゴム協会標準規格「SRIS 2301−1969導電性ゴムおよびプラスチックの体積抵抗率試験方法」に準拠した方法による測定値で、1×10Ω・cm以下、好ましくは1×10Ω・cm以下、より好ましくは1×10Ω・cm以下とすることができる。
また、伸縮性については、「JIS K 6251」に準拠した方法による伸びの測定値で、好ましくは150%以上、より好ましくは170%以上とすることができる。
【実施例】
【0039】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0040】
[実施例1〜4、比較例1〜2]
<組成物及び成形品の製造>
表1に示す配合量となるように、(A)EPDM、(B)導電性カーボンブラック、(C)架橋剤及び(D)その他の成分を添加し、ロール混錬機(大竹機械工業社製)を使用して80℃でこれらを混錬することにより、組成物を製造した。なお、(D)その他の成分の配合量は適宜調節し、配合成分の総量に占める、(A)EPDM、(B)導電性カーボンブラック及び(C)架橋剤の総配合量の比率が、90〜95質量%となるようにした。
【0041】
なお、表1中の各成分の略号はそれぞれ以下のものを意味する。
(A)EPDM
(A)−1:EPT3045(三井化学社製)
(B)導電性カーボンブラック
(B)−1:アセチレンブラック(電気化学工業社製)
(C)架橋剤
(C)−1:ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ社製)
(D)その他の成分
(D1)軟化剤
(D1)−1:サンパー2100(日本サン石油社製)
(D2)老化防止剤
(D2)−1:ノクラックNS−5(大内新興社製)
(D3)安定剤
(D3)−1:亜鉛華(三井金属鉱業社製)
【0042】
次いで、プレス装置(江東工業所製)を使用して、得られた前記組成物を160℃で40分間加熱プレスし、成形品として厚さ2mmのシートを製造した。
【0043】
<組成物の評価>
得られた前記組成物について、成形前にレオメータ試験を行った。レオメータ試験は、樹脂組成物の押出特性や架橋特性を試験するものであり、「JIS K 6300−2」に準拠して、ねじり振動式ディスク加硫試験機を使用して行い、縦軸にトルク、横軸に加硫時間を割り当てた加硫曲線を作成した。結果を表2に示す。表2中のレオメータ試験に関する各略号は、それぞれ以下のものを意味する。
:トルクの最大値(N・m)
:トルクの最小値(N・m)
10:試験開始からトルクの値が0.1Mに到達するまでの時間(分)
90:試験開始からトルクの値が0.9Mに到達するまでの時間(分)
【0044】
<成形品の評価>
得られた前記成形品について、下記方法により体積抵抗率及び伸びを測定した。結果を表2に示す。
(体積抵抗率)
日本ゴム協会標準規格「SRIS 2301−1969導電性ゴムおよびプラスチックの体積抵抗率試験方法」に準拠して行った。すなわち、絶縁板上に成形品を載せ、一対の電極を成形品上に70mmの間隔を空けて配置し、これら電極に均等に荷重及び電圧を印加し、ホイートストンブリッジを使用して電極間の抵抗値を測定することにより、体積抵抗率(Ω・cm)を求めた。
(伸び)
「JIS K 6251」に準拠し、前記成形品をダンベル状に打ち抜いて試験片とし、引張試験機を使用して、この試験片の伸び(%)を測定した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
上記結果から明らかなように、実施例1〜4において、組成物はレオメータ測定値が良好で溶融粘度が低く、これら測定値も安定しており、優れた成形性を安定して有していた。そして、成形品は体積抵抗率及び伸びがいずれも良好であり、半導電性成形品としての特性に優れていた。例えば、成形品の体積抵抗率は、いずれも上限値の目安となる1×10Ω・cmよりも大幅に低い値を示した。
これに対して比較例1においては、組成物の(C)架橋剤の配合量が多過ぎたことにより、成形品の伸びが著しく劣っていた。このような成形品はくずれ易く、その形状の維持が困難であるため、実用には適さない。また、比較例2においては、組成物の(B)導電性カーボンブラックの配合量が多過ぎたことにより、Mが著しく高くなった。Mは、例えば、組成物の押出成形時における溶融粘度の指標となる重要な値であり、比較例2は、組成物の流動性が悪く、成形性が著しく劣るものであった。
これら実施例及び比較例において、成形品の伸びは、(C)架橋剤の配合量が増えるほど低下する傾向を示した。また、成形品の体積抵抗率は、(C)架橋剤の配合量が2質量部よりも多い領域で、その配合量が増えるほど低下する傾向を示した。また、レオメータ測定値のうち、t10、t90及びMは、(C)架橋剤の配合量が増えるほど低下する傾向を示し、Mは、(C)架橋剤の配合量が増えるほど上昇する傾向を示した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、半導電性成形品全般に利用可能であり、特に電力ケーブルの半導電層とするのに有用である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・電力ケーブル、11・・・導体、12・・・第一の半導電層、13・・・絶縁層、14・・・第二の半導電層、15・・・金属遮蔽層、16・・・シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン−プロピレン−ジエンゴム100質量部、(B)導電性カーボンブラック20〜70質量部、及び(C)有機過酸化物系架橋剤2〜7質量部が配合されてなることを特徴とする半導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)有機過酸化物系架橋剤が、ジクミルパーオキサイドであることを特徴とする請求項1に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導電性樹脂組成物を用いて得られた半導電層を備えたことを特徴とする電力ケーブル。

【図1】
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【公開番号】特開2013−82813(P2013−82813A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223708(P2011−223708)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】