半径方向の高い強度を備えたステントおよびその製造方法
展開後の破壊靭性および反跳への耐性を有するポリマーステントが、かかるステントの製造方法と共に開示される。機械的特性の改善および他の改善は、個々のステントストラットの軸に近い方向かまたは軸と一致した方向に配向された個々のステントストラット内にポリマー鎖を有することによって、達成できる。ポリマー分子の所望される配向は、軸方向に配向されたポリマー鎖を誘起するように中空チューブの中へポリマーを押し出す工程、軸方向に配向されたポリマー鎖を誘起するようにポリマーチューブに引張荷重を加える工程、および円周に配向されたポリマー鎖を誘起するように径方向にポリマーチューブを拡張する工程、の1つまたは任意の組合せによって達成することができる。ステントパターンは、菱形形状のセルおよび/またはW形状のセルを画成するストラットを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は拡張可能な内部人工器官に関し、特に、ポリマーステントおよびポリマーステントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「内部人工器官」は、身体の内部に(特に、解剖学的管腔内に)配置される人工装置に該当する。「管腔」は、血管などの管状臓器の空洞を指す。
【0003】
ステントは、かかる内部人工器官の一例である。ステントは一般的に円筒形状の装置であり、血管または尿路および胆管などの他の解剖学的管腔の一部を開いた状態に保ち、時には拡張するように機能する。ステントは、血管のアテローム性動脈硬化型狭窄の治療において多用される。「狭窄」は、身体の流路または開口部の直径の狭小化または収縮を指す。かかる治療において、ステントは、身体血管を補強し、血管系における血管形成術後の再狭窄を予防する。「再狭窄」は、外見上は成功した(バルーン血管形成術、ステント留置術、または弁形成術などによる)治療後の、血管または心臓弁における狭窄の再発を指す。
【0004】
ステントによる患部または病変の治療は、ステントの送りおよび展開の両方を含む。「送り」は、治療を必要とする血管内の病変などの領域へ、身体の管腔を通してステントを導入および輸送することを指す。「展開」は、治療領域における管腔内部でのステントの拡張に該当する。ステントの送りおよび展開は、カテーテルの一端回りにステントを配置し、皮膚を通して身体の管腔内へカテーテルの端部を挿入し、身体の管腔内で所望される治療部位までカテーテルを進め、治療部位でステントを拡張し、管腔からカテーテルを取り出すことによって達成される。
【0005】
バルーン拡張ステントの場合、ステントはカテーテル上に配置されたバルーンに搭載される。ステントの取り付けは、典型的にはステントをバルーンに圧着するか、又はクリンプする(縮みしわを付けるように押しつける)ことを含む。次にステントは、バルーンを膨張させることによって拡張される。続いてバルーンを収縮させ、カテーテルを引き抜く。自己拡張型ステントの場合、ステントは、引き込み可能なシースまたはソックス状のカバーを介してカテーテルに固定してもよい。ステントが身体の所望部位にあるときに、シースを引き抜いてステントを自己拡張させることができる。
【0006】
ステントは多数の機械的要件を満たさねばならない。まず、ステントは、血管壁を支持する際に、ステントに掛かる構造的負荷(すなわち半径方向の圧縮力)に耐えられなくてはならない。したがって、ステントは適切な径方向の強度を持たなくてはならない。径方向の強度(ステントが径方向の圧縮力に耐える能力のことである)は、ステントの円周方向にわたる強度および剛性に由来する。したがって、径方向の強度および剛性は、フープまたは円周方向の強度および剛性としても説明できる。
【0007】
いったん拡張したならば、ステントは、それに課せられることになる様々な力(鼓動する心臓によって誘起される周期的負荷を含む)にもかかわらず、その耐用年数にわたってサイズおよび形状を適切に維持しなくてはならない。例えば、径方向に向けられた力は、ステントを内方へ反跳(後退)させる傾向があり得る。一般的には、反跳を最小限にすることが望ましい。
【0008】
さらに、ステントは、圧着、拡張、及び周期的負荷を許容するのに十分な可撓性を持たなくてはならない。ステントを蛇行性の血管経路を通して操作できるようにするために、そして直線状でなかったり、屈曲にさらされたりする展開部位に適合できるようにするために長手方向の可撓性が重要である。最後に、ステントは任意の有害な血管反応を引き起こさないように、生体適合性がなくてはならない。
【0009】
ステントの構造は、典型的には当該技術分野においてしばしばストラット(支柱)またはバーアーム(棒腕)と呼ばれる相互接続構造要素のパターンまたはネットワーク(網目状構造)を含むスキャフォールド(骨格)で構成されている。スキャフォールドは、ワイヤ、チューブ、または円筒形状に巻かれた材料シートから形成可能である。ステントが(クリンプできるように)径方向に圧縮可能であり、かつ(展開できるように)径方向に拡張可能であるように、スキャフォールドは設計される。従来のステントは、互いに対する個々の構造要素の動きを介して拡張および収縮可能となる。
【0010】
さらに、薬剤入ステントは、活性または生物活性の薬剤または薬物を含むポリマー担体で金属性スキャフォールドまたはポリマースキャフォールドの表面をコーティングすることによって、作製してもよい。ポリマースキャフォールドは、活性薬剤または活性薬物の担体としても使用できる。
【0011】
さらに、ステントは生体分解性であることが望ましい。多くの治療用途において、例えば、血管の開路維持および/または薬物送り等の意図された機能を果たし終えるまでの、限られた期間の間、ステントが体内に存在する必要がある。したがって、生体吸収性ポリマー等の、生体分解性、生体吸収性、および/または生体侵食性の材料から作製されたステントは、それらの臨床的必要性が終了した後にのみ、完全に侵食されるように構成すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ステントなどの埋込型(埋め込み可能な)医療機器用の材料としてポリマーを使用することは、潜在的な欠点がある。ポリマーステントがステントの臨床的および機械的要件を満たすことができるように、かかる欠点に対処するステントの製造プロセスが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
簡潔かつ一般的に言えば、本発明は内部人工器官、および内部人工器官の作製方法に関する。本発明の態様において、本方法は、ポリマーチューブの径方向の強度を増加させるように、径方向にポリマーチューブを変形させることを含む。本方法は、変形したポリマーチューブから直線状のリングストラットおよび湾曲したヒンジ要素を形成することをさらに含み、リングストラットはヒンジ要素によって互いに接続され、リングストラットおよびヒンジ要素は複数のリングを画成し、ヒンジ要素はリングが非変形形態(configuration)から変形形態に移行可能なように適合される。リングストラットは、リングが非変形形態にあるとき、100度を超える内角で互いに対して配向される。
【0014】
本発明のさらなる態様において、内角は約124度〜約130度の間である。他の態様において、径方向の変形後のポリマーチューブの外径は、径方向の変形前のポリマーチューブの内径の約5倍以上である。さらに別の態様において、径方向の変形後のポリマーチューブの外径は、径方向の変形前のポリマーチューブの内径の約6倍以上である。
【0015】
本発明の詳細な態様において、各リングストラットは、リングが非変形形態にあるときに、ポリマーチューブが径方向に変形された方向に対して0度でない約40度未満の角度で配向される。他の詳細な態様において、各リングは中心点を有し、少なくとも2つの中心点は中心軸を定義し、本方法はリングをともに接続する連結ストラットを形成する工程をさらに備え、連結ストラットは中心軸に平行または実質的に平行に配向され、ここでリングストラット、ヒンジ要素、および連結ストラットは複数のW字状のクローズドセル(閉じた小区画)を画成(define)し、各W字状のセルは他の6つのW字状のセルに接し、各W字状のセルは8つのリングストラット、2つの連結ストラット、および10のヒンジ要素含む周囲部を有する。
【0016】
内部人工器官は、本発明の態様において、直線状のリングストラットおよび湾曲したヒンジ要素を備え、リングストラットはヒンジ要素によって互いに接続され、リングストラットおよびヒンジ要素は複数のリングを画成し、ヒンジ要素はリングが非変形形態から変形形態に移行可能なように適合される。リングストラットは、リングが非変形形態にあるとき、100度を超える内角で互いに対して配向される。
【0017】
本発明の他の態様において、内部人工器官の作製方法は、拡張後のポリマーチューブの外径が、拡張前のポリマーチューブの内径の約4倍より大きくなるように径方向にポリマーチューブを拡張する工程を備える。本方法はリングストラットおよび連結ストラットを径方向に拡張されたポリマーチューブから形成する工程をさらに備え、リングストラットは非変形形態から変形形態に移行可能な複数のリングを画成し、各リングは中心点を有し、少なくとも2つの中心点は中心軸を定義し(define)、連結ストラットは中心軸に平行または実質的に平行に配向されてリングをともに接続し、連結ストラットおよびリングストラットはW字状のクローズドセルを画成し、各W字状のセルは他の6つのW字状のセルに当接する。リングストラットは、リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される。
【0018】
内部人工器官は、本発明の態様において、拡張前のポリマーチューブの内径の約4倍より大きい拡張後の外径を有する径方向に拡張されたポリマーチューブから形成されたリングストラットおよび連結ストラットを備え、リングストラットは非変形形態から変形形態に移行可能な複数のリングを画成し、各リングは中心点を有し、少なくとも2つの中心点は中心軸を定義し、連結ストラットは中心軸に平行または実質的に平行に配向されてリングをともに接続し、連結ストラットおよびリングストラットはW字状のクローズドセルを画成し、各W字状のセルは他の6つのW字状のセルに当接する。リングストラットは、リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される。
【0019】
本発明のさらなる態様において、内角は約124度〜約130度の間である。他の態様において、拡張後のポリマーチューブの外径は、拡張前のポリマーチューブの内径の約6倍以上である。詳細な態様において、各リングストラットは、リングが非変形形態にあるときに、中心軸に垂直な面に対して約25度〜約28度の間の角度で配向される。他の詳細な態様において、連結ストラットおよびリングストラットの長さは、等しいかまたは実質的に等しい。さらに詳細な態様において、各リング上のリングストラットは、互いに交互に現れる一連のクレスト(尾根状部)およびトラフ(谷状部)を画成し、各リング上の各クレストは連結ストラットの1つによって他のリング上の他のクレストに接続される。
【0020】
本発明の特徴および利点は、添付の図面と併用して読むべき以下の詳細な説明から、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、ステントを示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るプロセスフロー図である。
【図3】図3は、平面または平面状態で観察したステントパターンを示す図である。
【図4】図4は、平面または平面状態で観察した他のステントパターンを示す図である。
【図5】図5は、円筒状態にある図4のステントパターンを簡易化して示す図である。
【図6】図6は、図4のステントパターンの一部の詳細図であり、非変形形態の初期直径を有するリングを示す図である。
【図7】図7は、図4からのリングの部分図であり、初期直径未満の直径まで径方向に折り畳まれた後の変形形態のリングを示す図である。
【図8】図8は、図4からのリングの部分図であり、製造後の他の変形形態のリングを示し、初期直径よりも大きな直径で展開されているリングを示す図である。
【図9】図9は、図4のステントパターンを有するステントの写真的画像を示す図である。
【図10】図10は、平面または平面状態で観察されるステントパターンを図示し、円周方向において変化するサイズを有するW字状のセルを有するステントパターンを示す図である。
【図11】図11は、平面または平面状態で観察されるステントパターンを図示し、軸方向において変化するサイズを有するW字状のセルを有するステントパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の様々な実施の形態は、ポリマーステント、および好ましい機械特性を備えたポリマーステントの作製方法に関する。本発明は、自己拡張可能なステント、バルーン拡張可能なステント、ステント移植(ステントグラフト)および移植(例えば大動脈の移植)を含む装置に適用可能であるが、これらに限定されない。
【0023】
図1は、複数の相互に接続する構造要素あるいはストラットのパターンを含む、例示的なステント100の部分斜視図を示す。ステント100は、軸160を備えた円筒形状を有しており、多数の相互に接続する構造要素またはストラット110を備えたパターンを含んでいる。軸160は円筒形状の中心を通って伸長する。一般に、解剖学的管腔を通す経皮送りを可能にするように半径方向にステントを圧縮することができ、次に解剖学的管腔の所望部分への埋込みのために展開できるように、ステントパターンは設計されている。本明細書において使用されるように、ステントの展開とは、患者にステントを埋め込むための、ステントの径方向の拡張を指す。圧縮および展開の間に関与する応力は、ステントパターンの様々な構造要素の全体にわたって通常分配される。
【0024】
ステント100の下層構造あるいは基材は、典型的にはステントの径方向の強度の主要な供給源である。基材は、完全にまたは少なくとも部分的に、生分解性ポリマーもしくは生分解性ポリマーの組合せ、生体安定性ポリマーもしくは生体安定性ポリマーの組合せ、または生体分解性ポリマーおよび生体安定性ポリマーの組合せから作ることができる。さらに、基材上に適用されるポリマーベースのコーティングは、生分解性ポリマーもしくは生分解性ポリマーの組合せ、生体安定性ポリマーもしくは生体安定性ポリマーの組合せ、または生体分解性および生体安定性ポリマーの組合せを含むことができる。
【0025】
本発明の埋込み可能な医療機器を作製またはコーティングに使用することができるポリマーの代表的な実施例は、ポリ(N−アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ハイドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、コ−ポリ(エーテル−エステル)(例えばPEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸など)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−アルファオレフィンのコポリマー、ポリアクリレート以外のアクリルポリマーおよびアクリルコポリマー、ハロゲン化ビニルポリマーおよびハロゲン化ビニルコポリマー(ポリ塩化ビニルなど)、ポリビニルエーテル(ポリビニルメチルエーテルなど)、ポリハロゲン化ビニリデン類(ポリ塩化ビニリデンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレンなど)、ポリビニルエステル(ポリ酢酸ビニルなど)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(ナイロン66およびポリカプロラクタムなど)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、ならびにカルボキシメチルセルロースを含むが、これらに限定されない。使用することができるポリ(乳酸)に基づいた他のタイプのポリマーは、グラフトコポリマー、およびAB型ブロックコポリマー(「ジブロックコポリマー」)もしくはABA型ブロックコポリマー(「トリブロックコポリマー」)などのブロックコポリマー、またはその混合物を含む。
【0026】
埋込み可能な医療機器の作製またはコーティング用に特に適切でありうるポリマーのさらなる代表例は、エチレンビニルアルコールコポリマー(通常は一般名EVOHまたは商標名EVALにより知られている)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロ プロペン)(例えば、Solvay Solexis PVDF, Thorofare, NJから入手可能なSOLEF 21508)、ポリフッ化ビニリデン(もしくはKYNARとして知られており、ATOFINA Chemicals、フィラデルフィア、ペンシルバニアから入手可能である)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、およびポリエチレングリコールを含む。
【0027】
ステント100は、ポリマーチューブ、またはチューブを形成するために巻いて接合したポリマーシートから作製することができる。ステントパターンは、チューブまたはシートの一部を切り取るレーザーによって、解剖学的管腔の壁を支持するためにスキャフォールド(骨格)として機能するストラットおよび他の部材のみを残して、ポリマーチューブまたはシート上に形成することができる。使用可能なレーザーの代表例には、エキシマー、二酸化炭素およびYAGを含むが、これらに限定されない。
【0028】
図1におけるステント100のパターンは、径方向の拡張および圧縮ならびに長手方向の撓曲を可能にする。このパターンは、直線状または比較的直線状のストラットを含む(一例は部分120である)。さらに、パターンは屈曲要素130、140および150を含むことができる。解剖学的管腔を通しての送りに備えて、ステントの径方向の圧縮を可能にするようにステントがクリンプされるときに、屈曲要素は内側へ屈曲する。解剖学的管腔内でのステントの径方向の拡張を可能にするようにステントが展開されるときに、屈曲要素は外側へも屈曲する。展開後、ステント100は、血管壁からの静止荷重および周期的な圧縮荷重にさらされる。したがって、屈曲要素は使用中に変形することができる。
【0029】
上で示されるように、ステントには特定の機械的要件がある。ステントは、血管または他の解剖学的管腔の壁を支持するように、ステントに課される構造的負荷(すなわち径方向の圧縮力)に耐えるのに十分な径方向の強度を有していなければならない。さらに、ステントは、クリンピング、展開および周期的な負荷を可能にする、十分な可撓性を持たなければならない。さらに、十分にロープルロフィル(小型)であること(ストラットの直径およびサイズを含む)が重要である。ステントの外形が小さくなるにつれて、送りはより容易になり、血流の混乱がより少なくなる。
【0030】
ポリマーは、ステントの基材物質としての使用において、多数の欠点を有する傾向がある。金属と比較して、ポリマーの強度重量比は金属よりも小さい。不十分な径方向の強度を備えたポリマーステントは、機械的破損をもたらすか、または血管内への埋め込み後に内側へ反跳(後退)しうる。金属と比較して、ポリマーの比較的低い弾性係数を補償するために、ポリマーステントは金属ステントよりも大幅に厚いストラットを必要とし、それは望ましくない大きな外形をもたらしうる。
【0031】
ポリマーの他の欠点は、生分解性ポリマーなどの多くのポリマーが、生理学的条件あるいは人体内の条件下で脆弱な傾向があるということである。具体的には、約37℃の人体温度を超えたガラス転移温度(Tg)を有するいくつかの生分解性ポリマーは、塑性変形が破損の前にほとんどまたは全くない脆性破壊メカニズムを示す。その結果として、かかるポリマーから作製されたステントは、ステントの使用範囲においては不十分な靭性を有しうる。特に、ステントの使用範囲(すなわちクリンピング、送り、展開)にわたって、および所望される治療期間中、破壊に耐えることが、ステントにとって重要である。
【0032】
ポリマーステントに関する潜在的な問題は機械的クリープ変形である。クリープは、適用荷重にさらされた構造の緩やかな変形を指す。応力に対するポリマー鎖の遅延反応が、ポリマーステントにおけるクリープ挙動を引き起こすと考えられている。クリープは、展開させたステントを径方向に内側へ引き込むかまたは反跳させることができ、所望される血管の開通維持におけるステントの有効性を減少させる。
【0033】
これらおよび他の問題に対処するため、ポリマーの機械特性を、様々な加工技術を介して(ポリマーに応力を加えることなどによって)修正できる。応力の適用によって、応力の方向に沿う分子配向を誘起することができ、それは適用される応力の方向に沿う機械特性を修正することができる。例えば、強度および弾性係数は、ポリマー内のポリマー鎖の配向に依存する重要な特性のうちのいくつかである。分子配向は、ポリマー鎖の縦軸あるいは共有結合軸に沿ったポリマー鎖の相対的な配向を指す。
【0034】
ポリマーは、完全に非晶性か、部分的に結晶性か、またはほぼ完全に結晶性であり得る。部分的に結晶性のポリマーは、非晶質領域によって隔てられた結晶質領域を含む。結晶質領域は、必ずしもポリマー鎖の同一または類似する配向を有する必要はない。しかしながら、結晶子の高度な配向は半結晶性ポリマーに応力を加えることによって誘起することができる。応力は、非晶質領域での配向も誘起することができる。配向した非晶質領域もまた、ポリマー鎖の配列軸に沿って高い強度および高い弾性係数を有する傾向がある。さらに、ある条件下におけるポリマーについては、非晶性ポリマー中に誘起された配置構造には、非晶性ポリマーの規則構造への結晶化が付随しうる。これは応力誘起結晶化として知られている。
【0035】
上で示されたように、使用中にステントに課される応力の大きさおよび方向に起因して、軸方向および円周方向における強度および弾性係数などの適切な機械特性を有することが、ステントの機械的安定性のために重要である。したがって、軸方向、円周方向またはその両方において適用される応力から誘起された配向によって、ステントパターンの作製に用いられるポリマーチューブまたはポリマーシート基材の機械特性を修正することは有利となり得る。ポリマー中の高配向領域は、より高い強度および弾性係数と関連する傾向にあるので、1つまたは複数の好ましい軸あるいは方向に沿ったポリマー鎖の配列を誘起するプロセスを、ステントの作製に組み込むことが、望ましいかもしれない。
【0036】
チューブの径方向の拡張の程度、そのように誘起された円周配向および径方向の強度は、次に示す径方向の拡張比によって、定量化することができる:
RE=(拡張したチューブの外径、ODE)/(チューブの元の内径、IDO)
RE比率はまた、次のようにパーセント拡張としても表わすことができる:
%RE=(RE−1)×100%
【0037】
いくつかの実施の形態において、ポリマーチューブ形状のステント基材はブロー成形によって変形することができる。ブロー成形において、チューブ内へ流体を送ることでチューブ内の圧力を増加させることによって、チューブを径方向に変形あるいは拡張することができる。流体は、空気、窒素、酸素、またはアルゴンなどのガスであり得る。ポリマーチューブは、一端の張力源により張力を加える一方、他端を静止して保持することによって、軸方向に変形あるいは拡張することができる。あるいは、チューブの両端に張力を加えてもよい。チューブは、径方向の拡張の前、その間、および/またはその後に、軸方向に引き伸ばしてもよい。
【0038】
いくつかの実施の形態において、ブロー成形はチューブ状の型の中にまずチューブを設置する工程を含んでもよい。型はチューブの外径の変形あるいは表面の変形を型の内径に制限することによって、チューブの径方向の変形の程度を制御するように作動することができる。型の内径は、ポリマーチューブの所望される直径以下の直径に対応することができる。あるいは、流体の温度および圧力を、型の使用に対する代替として、または型の使用と組み合わせて、チューブの内径の変形を制限することによって、径方向の変形の程度を制御するように使用してもよい。
【0039】
チューブの温度は、変形を容易にするように変形の間にポリマーのTgより高い温度まで加熱することができる。ポリマーチューブは、変形の前、その間、およびそれに続いて、加熱することもできる。
【0040】
破壊靭性などのポリマーの特性は、全体的な結晶化度、ならびに半結晶性ポリマー中の結晶性ドメインの数およびサイズに影響される。非晶性ドメインに囲まれたポリマー内に多数の小さな結晶性ドメインを有することによって、破壊靭性が増加することが観察された。かかる結晶構造は、クリープを減少または防止することもできる。
【0041】
図2は、本発明の実施の形態に係るステントの製造方法を示す。本方法は、基材から製造されたステントの内側へ反跳を除去または減少させるために、ステント基材の径方向の強度を増加させる工程200を含む。ステント基材はポリマーチューブまたはシートであり得る。径方向の強度を増加させる工程600は、径方向にステント基材を拡張する工程210を含んでもよい。径方向の拡張210は、後に基材から形成される個々のステントストラット中のポリマー鎖を、軸方向と比較して円周方向において優先的な配向を有するように誘起220してもよい。軸の方向または配向は、図1の軸160、ならびに図3および4のA−A線によって表わされるステント全体の縦方向(長手方向)に対応する。円周の方向または配向は、図3および4のB−B線、ならびに図5の円728によって表わされるステント基材の円周に沿った方向に対応する。
【0042】
径方向の拡張210は、ポリマーチューブ形状のステント基材のブロー成形によって達成することができる。径方向の拡張210の前に、チューブは元の内径IDOを有する。径方向の拡張210の後に、チューブは外径ODEを有する。いくつかの実施の形態において、径方向の拡張率%RE((ODE/IDO−1)×100%に等しい)が、約300%〜400%の間である(それはIDOの約4倍〜IDOの約5倍の間のODEに対応する)ように、径方向の拡張210が実行される。他の実施の形態において、%REは約400%〜500%の間であり、それはIDOの約5倍〜IDOの約6倍の間のODEに対応する。さらに他の実施の形態において、%REが約500%以上(それはIDOの約6倍以上のODEに対応する)になるまで、径方向の拡張210が実行される。
【0043】
ステント基材中のポリマー鎖は、押出加工、射出成形、引張荷重、機械加工、またはステント基材を形成するために使用される他のプロセスの結果として、軸方向における優先的な配向を最初に有することができる。いくつかの実施の形態においては、最初の軸配向を備えたポリマー鎖を有するステント基材の半径方向の拡張210は、ポリマー鎖を円周の配向を有するように再配向または誘起する220だろう。他の実施の形態においては、最初の軸配向を備えたポリマーを有するステント基材の半径方向の拡張210は、二軸配向を有するようにポリマー分子鎖を誘起すること230ができる。二軸配向においては、ポリマー鎖は、円周方向に優先的に配向するのでもなく、軸方向に優先的に配向するのでもない。このようにして、ポリマー鎖は、ステントの全体の半径方向の強度を増加させるように、個々のステントストラットの縦軸(長手方向軸)に平行かまたは実質的に平行な方向で配向させることができる。
【0044】
本方法は、特定の優先的な配向を有するようにポリマー鎖を誘起した後に、基材からステントパターンを作製する工程240も含む。ステントパターンの作製240は、レーザー切断および/または化学エッチングによって基材の一部を取り除き250、ステントストラット、屈曲要素、および他の必要な構造のみを残す工程を含むことができる。ステントパターン中の個々の構造要素の所望される強度、靭性、および/または可撓性はかかる要素を、ポリマー分子鎖の配向に平行または実質的に平行に形成することによって達成することができる。ステントパターンは、図3および4に示されるもの、または図3および4の変形物でよい。
【0045】
任意で、ステントパターンの作製240後に、ステントはバルーンカテーテルまたは他のステント送り装置上にクリンプすること260ができる。クリンピング260前またはその間に、ステントをクリンピング温度Tcまで加熱することができる。いくつかの実施の形態においては、クリンピング後のより大きな直径へのステントの外側に向かう反跳を最小限にするかまたは防止するためTcは環境の室温Taよりも大きい。外側に向かう反跳は、ステントの送り外形を望ましくなく増加させ、血管内の標的治療部位への送りの間に、カテーテルからの時期尚早な離脱をステントに引き起こしうる。さらに、クリンピング中の応力緩和を減少または除去するように、TcはTgより低いのが好ましい。クリンピング中、またはその後の応力緩和は、後続するステント展開中にクラッキングが起こる可能性をより高くする。かかるクラッキングを減少または防止するために、応力誘起結晶化を介してTgを増加させることによって、TcとTgとの差を最大にすることができる。
【0046】
製造後に、ステントは、クリンプされた直径から展開させた外径ODDまで血管内部で展開させること270ができる。いくつかの実施の形態においては、ODDはODE(ステント基材の径方向への拡張の結果としての外径)よりも大きい。好ましくは、展開中にステント内にクラックが形成されないように、ODDが選択される。いくつかの実施の形態においては、ODDは3.5mm(0.1378インチ)である。他の実施の形態においては、ODDは4.0mm(0.1575インチ)である。
【0047】
ステントがバルーンカテーテル上へクリンプされた場合260、ステントの展開270は、クリンプされた形態から拡張展開された形態までステントの移行を促すために、バルーンカテーテルを膨張させる工程を含むことができる。他の実施の形態においては、ステントは自己拡張型であり得、ステントの展開270は、ステントの自己拡張を可能にするように、ステントの周りからシースまたは他の抑制装置を取り除く工程を含むことができる。
【0048】
図2の方法は多くのタイプの身体管腔または器官に対して適用可能であることが理解される。かかる器官の例は、例えば冠動脈または肝静脈などの脈管の器官;例えば尿道および尿管などの腎臓の器官;例えば胆管などの胆管の器官;例えば気管、気管支および細気管支などの肺の器官;ならびに例えば食道および大腸などの胃腸の器官を含むが、これらに限定されない。
【0049】
図3は、ポリマー基材から切り出された例示的なステントパターン300を図示する。パターンを明瞭に観察できるように、ステントパターン300は平らな(展開された)状態で示されている。ステントパターン300は、円筒形状にあるときに、径方向に拡張可能なステントを形成する。ステントパターン300は、複数の菱形形状のセル310を含む各リングを備えた複数の円筒リング305を含んでいる。ステントパターン300の実施の形態は、ステントの所望される長さに応じた任意の数のリング305を有することができる。参考のために、A−A線は長手方向あるいは軸方向に延び、これは図1の軸160と同一方向である。菱形形状のセル310は屈曲要素315および320を含んでいる。ステントパターン300は屈曲要素325および330も含むことができる。屈曲要素315、320、325および330の角度は、角度θ1、θ2、θ3およびθ4に対応する。角度θ1、θ2、θ3およびθ4は、それぞれ、42度、42度、41度および21度に等しい、またはそれらにおよそ等しい。他の実施の形態においては、角度θ1、θ2、θ3は約24度〜約29度であり、角度θ4は約12度〜約15度である。菱形形状のセル310は、屈曲要素315を形成するバーアーム335および340、屈曲要素320を形成するバーアーム345および350で構成される。
【0050】
ステント300がクリンプされるときに、屈曲要素315、320、325および330は内側へ屈曲し、角度θ1、θ2、θ3およびθ4は減少し、ステントを径方向に圧縮可能にする。要素315、320および325の屈曲に関して、屈曲要素のいずれかの側のストラットは互いに向かって屈曲する。しかしながら、屈曲要素330においては、菱形形状要素のストラットは、クリンピングの間、長手方向軸に対して比較的平行なままである連結アーム355に向かって屈曲する傾向がある。
【0051】
パターン300は、隣接する円筒リングを接続する連結アーム355を含んでいる。連結アーム355は、A−A線に対して平行であり、1つのリングの円周方向に隣接した菱形形状の要素310の交点360と、隣接したリングの円周方向に隣接した菱形形状の要素310の交点360との間で隣接したリングを接続する。図示されるように、連結要素は円周に沿って1交差おきに接続する。
【0052】
ステントがクリンプおよび展開されるときに、屈曲要素の湾曲部分は実質的な応力およびひずみを受ける。したがって、高い強度および靭性はこれらの領域において非常に重要である。理想的には、破壊靭性を改善する最も効果的なポリマー鎖配向は、ストラットの軸の長さに沿うものである。B−B線によって示されるように、径方向の拡張は円周方向に沿う配向および破壊靭性を与える。
【0053】
図4は、本発明の実施の形態に係る他のステントパターン700を示す。ステントパターン700は、異なる方向に配向させた様々なストラット702およびストラットの間のギャップ703を含んでいる。各ギャップ703、およびギャップ703を直接囲むストラット702は、クローズドセル704を画成する。ステントの近位端部および遠位端部で、ストラット706は、くぼみ、袋孔、または患者内部のステントの位置決定を可能にする放射線不透過性マーカーの保持に適した貫通孔を含んでいる。
【0054】
セルの形状およびサイズを図示するために、セル704のうちの1つをハッチ線により示す。図示された実施の形態において、セル704はすべて同一のサイズおよび形状を有している。他の実施の形態においては、セル704の形状およびサイズは変化してもよい。
【0055】
ステントパターン700は、図解の容易性および明瞭性のために平面図または平らになった概観図において示されるが、実際にはA−A線がステントの中心軸に対して平行かまたは実質的に平行なように、ステント上のステントパターン700はステントの周りに及ぶ。パターン700は底縁部708および頂縁部710で図示されている。ステント上で、B−B線がステントの周りに円を形成するように、底縁部708は頂縁部710に接合する。このように、ステントパターン700は、円周方向に配置されたストラット群を含む、正弦曲線の輪またはリング712を形成する。リング712は、互いに交互に現れる一連のクレスト707およびトラフ709を含んでいる。リング712の正弦波変動は、径方向ではなく、主として軸方向で生じる。すなわち、各リング712の外面上のすべての点は、ステントの中心軸から径方向に離れる方向に、同一かまたは実質的に同一の距離にある。
【0056】
さらに図4を参照して、リング712は、A−A線に対して平行かまたは実質的に平行である個々の縦軸713を有する他の群のストラットによって互いに接続される。リング712は、クリンピングの間により小さな直径に折り畳む(つぶす)ことができ、血管内での展開の間に元の直径またはより大きな直径まで拡張できる。
【0057】
他の実施の形態において、ステントには図4で示されるものとは異なる数のリング712およびセル704を有することができる。リング712およびセル704の数は、ステントの所望される軸方向の長さおよび展開された直径に応じて変更可能である。例えば、血管の疾患セグメントが比較的小さいかもしれず、そのような場合はより少数のリングを有するステントを使用して、疾患セグメントを治療することができる。
【0058】
図5は、ステントパターン700の簡略図を円筒状チューブの形状で示す。リング712の正弦曲線の変動、およびリングを互いに連結するストラットは、明確にするために省かれている。リング712は中心点720を有する。少なくとも2つの中心点720が、ステントの中心軸724を定義する。中心軸724、ならびに図4および6中のA−A線は、互いに平行かまたは実質的に平行である。リングは反管腔側表面692および管腔表面694を有する。反管腔側表面692は外側に面し、通常はステントが展開される解剖学的管腔の壁に接触する。管腔表面694は、展開された場合、管腔の中心に向かって内側に面している。
【0059】
図6は、図4のステントパターン700の部分716の詳細図を示す。リング712は、直線状のリングストラット730および湾曲したヒンジ要素732を含んでいる。リングストラット730はヒンジ要素732によって互いに接続される。いくつかの実施の形態において、リングストラットおよびヒンジ要素はポリマー基材から形成され、図5中の点線の円728、ならびに図4および6中のB−B線によって表わされた円周方向で径方向に拡張される。
【0060】
ステントパターン700の形成に使用される基材の径方向の拡張は好ましくは約300%〜約700%の間であり、それはIDOの約4〜約8倍の間であるODEに対応する。いくつかの実施の形態において、径方向の拡張は約400%〜約600%の間であり、それはIDOの約5〜約7倍の間であるODEに対応する。他の実施の形態において、径方向の拡張は500%または約500%であり、それはIDOの6倍または約6倍であるODEに対応する。
【0061】
ヒンジ要素732は撓曲するように適応し、それはリング712が非変形形態から変形形態まで動くことを可能にする。本明細書において使用されるように、「非変形形態」は、解剖学的管腔を通した送りのために、より小さな直径にクリンプされる前のリングの状態を指す。例えば、径方向に拡張したポリマーチューブのレーザー切断によって、ステントが形成される実施の形態において、非変形形態は、ポリマーチューブの径方向の拡張後およびリングを形成するためにそのポリマーチューブをレーザー切断した後のリングの状態である。本明細書では、「変形形態」はクリンピングまたは展開などのある種の変形を行なったリングの状態を指す。
【0062】
図3〜6は非変形形態におけるリング712を示す。図5を参照して、非変形形態にあるときに、リング712は初期外径729を有する。いくつかの実施の形態において、リング712の初期外径729は、ODE(ステント基材が径方向に拡張された後のステント基材の外径)に等しいかまたは実質的に等しい。
【0063】
図6を再び参照して、B−B線は中心軸724(図5)に対して垂直な基準面上にある。図6で示されるように、リング712が非変形形態にあるときに、各リングストラット730は基準面に対して0でない角度Cで配向される。図示された実施の形態において、0でない角度Cは40度未満である。好ましくは、0でない角度Cは35度未満であり、より狭義には、角度Cは約25度〜約28度の間である。他の実施の形態において、角度Cは他の値でありうる。
【0064】
さらに、リングストラット730は互いに対して内角Dで配向される。図示された実施の形態において、内角Dは100度より大である。好ましくは、内角Dは110度より大であり、より狭義には、角度Dは約124度〜約130度の間である。他の実施の形態において、内角Dは他の値を有することができる。
【0065】
もう一度図6を参照して、ステントは、リング712をともに接続する連結ストラット734も含んでいる。連結ストラット734は、A−A線および中心軸724(図5)に平行かまたは実質的に平行に配向される。リングストラット730、ヒンジ要素732、および連結ストラット734は、複数のW形状のクローズドセル736を画成する。1つのW形状のセル736の境界あるいは周囲部を、図6においてわかりやすくするために影を付ける。W形状は、反時計回りに90度回転したように見える。W形状のセル736の各々は、6個の他のW形状のセル736によって直接囲まれ、各W形状のセル736の周囲部が、6個の他のW形状のセル736の周囲部の一部に合体されることを意味する。別の言い方をすれば、各W形状のセル736は、6個の他のW形状のセル736に当接するかあるいは接触している。
【0066】
各W形状のセル736の周囲部は、8つのリングストラット730、2つの連結ストラット734、および10のヒンジ要素732を含んでいる。8つのリングストラットのうちの4つは、セル周囲部の近位側面を形成し、他の4つのリングストラットは、セル周囲部の遠位側面を形成する。近位側面および遠位側面上で対向するリングストラットは、互いに平行かまたは実質的に平行である。
【0067】
ヒンジ要素732の各々の内に、リングストラット730および連結ストラット734が収斂する交点738がある。リングストラット730および連結ストラット734の各端部に隣接する交点738がある。リングストラット730の端部に隣接する交点間の距離740は、各リングストラット730について同一かまたは実質的に同一である。図10において示されるような他の実施の形態においては、距離740が変化するように、リングストラット730のうちのいくつかは他のリングストラット730よりも長くなりうる。例えば、距離740はステントの異なる部分での機械的特性の変動を可能にするように変化することができる。
【0068】
図6を再び参照すると、水平な連結ストラット734の端部に隣接する交差点間の距離742は、各連結ストラット734について同一かまたは実質的に同一である。図11において示されるような他の実施の形態においては、ステントの異なる部分での機械的特性の変動を可能にするために距離742が変化するように、連結ストラット734のうちのいくつかは他の連結ストラット734よりも長くしてもよい。
【0069】
同様に、距離740は距離742と同一かまたは実質的に同一である。他の実施の形態においては、ステントの異なる部分での機械的特性の変動を可能にするように、距離740および距離742は互いに異なる。
【0070】
リングストラット730は、リングストラットの個々の長手方向軸713に沿って一様な幅737を有する。連結ストラット734もまた、連結ストラットの個々の縦軸713に沿って一様な幅739を有する。
【0071】
図6において示されるように、各W形状のセル736の内部空間はA−A線に平行な寸法744、およびB−B線に平行な寸法746を有する。軸方向寸法744は、円周方向の位置に関して一定かまたは実質的に一定である。すなわち、セル736の頂端部および底端部に隣接する軸方向寸法744Aは、端部からさらに離れた軸方向寸法744Bと同一かまたは実質的に同一である。一定の軸方向寸法744は、図3のステントパターンと比較して、改善されたストラット分布を提供する。
【0072】
図6の図示された実施の形態において、軸方向寸法および円周方向寸法(744および746)はW形状のセル736の中で同一である。他の実施の形態においては、軸方向寸法744および/または円周方向寸法746は、ステントの異なる部分での機械的特性の変動を可能にするようにセル736の中で異ならせてもよい。
【0073】
図7および8は、2つの異なる変形した形態における1つのリング712の部分を示す。図7において、リング712は、ステントがカテーテル上にクリンプされるときなどに、その初期外径729(図5)未満の直径に径方向に圧縮される。かかる圧縮の間に、リングストラット730が互いに向かってヒンジ要素732の周りを枢動することで、リングストラット730が互いに向かって折り畳まれ、B−B線によって表わされる基準面に対して角度Eで配向されるようになる。角度Eは、非変形形態におけるリング712を示す図6中の対応する角度Cよりも大きい。同様に、リングストラット730は互いに対して内角Fで配向される。角度Fは、図6中の対応する角度Dよりも小さい。
【0074】
図8において、製造後に、リング712は径方向に展開した形態まで拡張された。リング712の径方向の拡張は、製造の間のステント基材の径方向の拡張と混同されるべきではない。リング712が径方向に拡張するときに、リングストラット730はヒンジ要素732の周りを枢動し、リングストラット730は、B−B線によって表わされる基準面に対して角度Gで配向されるようになる。リング712が、変形していない初期直径729(図5)よりも大きな直径まで拡張するときに、角度Gは、図6中の対応する角度Cよりも小さい。同様に、リングストラット730は互いに対して内角Hで配向される。角度Hは、図6中の対応する角度Dよりも大きい。
【0075】
製造中に径方向に拡張されたポリマーチューブ基材から形成された異なるステントパターンを使用して、長期の管腔開通を研究するための試験が行なわれた。実施例1は、2.13mm(0.084インチ)の直径まであらかじめ径方向に300%拡張したポリマーチューブ基材から切り出された図3のステントパターンを有するステントに対応する。実施例2は、3.48mm(0.137インチ)の直径まであらかじめ径方向に500%拡張したポリマーチューブ基材から切り出された図4および6のステントパターンを有するステントに対応する。両方の場合において、ポリマーチューブは生体吸収性ポリマーであるポリ(L−ラクチド)の押出チューブであった。図9は、実施例2のステントの一部を写した写真状の図である。
【0076】
実施例1において、リングストラット335、340、345および350は、非変形形態にある場合、円周方向(それは半径方向の拡張の方向である)に対して、約75度〜約78度であった。同様に、リングストラット335および345は、リングストラット340および350に対して、約24度〜約29度の内角(図3中のθ1およびθ3)で配向された。
【0077】
実施例2において、リングストラット730は、非変形形態にある場合、円周方向から25度〜28度であった。同様に、リングストラット730は、互いに対して、約124度〜約130の内角(図6中の角度D)で配向された。
【0078】
実施例1と比較して、実施例2は展開後のより少ない内側への反跳(直径の減少)を示し、より大きな管腔、および周囲の組織とステントのより良い圧着あるいは接触を結果として生じた。試験の結果は、図4および6(実施例2)のパターンに配置されたストラットと組み合わせた500%の径方向の拡張が、図3(実施例1)のパターンに配置されたストラットと組み合わせた300%の径方向の拡張よりも大きな径方向の強度を提供することを示す。この結果は、基材の過度の径方向への拡張は、クリンピングの間に、または展開に際して、ストラットの破損の増加を招くことが知られており、しかも過度に大きな内角はステントの容易で且つ制御された様式でのクリンピングを妨げることが知られているという点で予想外であった。
【0079】
実施例1のポリマー鎖は、実施例2と比較して、リングと容易に並ばず、実施例2と比較して機械的クリープ変形にそれほど耐性のないステントを招くと考えられている。実施例2の500%の径方向の拡張により、ポリマー鎖は実質的に円周方向に配向される。実施例2のステントストラットの間の内角は、ステントストラットが円周方向に配向されたポリマー鎖と良好に並ぶことを可能にする。拡張負荷は基材の「グレイン」に対して(すなわちポリマー鎖の円周方向の配向に対して)適用されるので、実施例2中のものよりも小さな内角は、破損の可能性を増加させるとも考えられる。
【0080】
他の試験において、ステントは、異なるレベル(すなわち400%、500%、600%、および700%)まで径方向に拡張したポリ(L−ラクチド)基材のチューブから作製された。ステントを異なるクリンピング温度でクリンプし、展開し、次に破損の有無を検査した。約50℃のクリンピング温度で、径方向に500%拡張したチューブから作製したステント群は、平均破損数が最も低かった。約30℃、50℃および60℃のクリンピング温度で、径方向に700%拡張したチューブから作製されたステントの群は、平均破損数が最も高かった。
【0081】
上で開示されたステントパターンが非ポリマーステント基材に対しても同様に適用できることが理解される。ステントの非ポリマー基材は、金属材料、またはコバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼(例えばBIODUR108)、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、ELASTINITE(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタン合金、プラチナ−イリジウム合金、金、マグネシウム、もしくはそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない合金で作製することができる。「MP35N」および「MP20N」は、Standard Press Steel社(ジェンキンタウン、ペンシルバニア州)から入手可能な、コバルト、ニッケル、クロミウムおよびモリブデンの合金の商標名である。「MP35N」は、35%コバルト、35%ニッケル、20%クロミウム、および10%モリブデンからなる。「MP20N」は、50%コバルト、20%ニッケル、20%クロミウム、および10%モリブデンからなる。
【0082】
本発明の複数の特定の形態を図示および記述してきたが、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更を行なうことができることもまた明らかだろう。例えば、W形状のセル736は、図10において示されるように、円周方向(B−B線方向)で、サイズを変えられる。さらなる例として、W形状のセル736は、図11において示されるように、軸方向(A−A線方向)で、サイズを変えられる。また、開示された実施の形態の具体的な特徴および態様の様々な組合せまたは部分的な組合せは、本発明の種々の態様を形成するために互いに組み合わせられ、または互いに置換できると考えられる。従って、添付の特許請求の範囲による以外は、本発明が限定されることを意図していない。
【技術分野】
【0001】
本発明は拡張可能な内部人工器官に関し、特に、ポリマーステントおよびポリマーステントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「内部人工器官」は、身体の内部に(特に、解剖学的管腔内に)配置される人工装置に該当する。「管腔」は、血管などの管状臓器の空洞を指す。
【0003】
ステントは、かかる内部人工器官の一例である。ステントは一般的に円筒形状の装置であり、血管または尿路および胆管などの他の解剖学的管腔の一部を開いた状態に保ち、時には拡張するように機能する。ステントは、血管のアテローム性動脈硬化型狭窄の治療において多用される。「狭窄」は、身体の流路または開口部の直径の狭小化または収縮を指す。かかる治療において、ステントは、身体血管を補強し、血管系における血管形成術後の再狭窄を予防する。「再狭窄」は、外見上は成功した(バルーン血管形成術、ステント留置術、または弁形成術などによる)治療後の、血管または心臓弁における狭窄の再発を指す。
【0004】
ステントによる患部または病変の治療は、ステントの送りおよび展開の両方を含む。「送り」は、治療を必要とする血管内の病変などの領域へ、身体の管腔を通してステントを導入および輸送することを指す。「展開」は、治療領域における管腔内部でのステントの拡張に該当する。ステントの送りおよび展開は、カテーテルの一端回りにステントを配置し、皮膚を通して身体の管腔内へカテーテルの端部を挿入し、身体の管腔内で所望される治療部位までカテーテルを進め、治療部位でステントを拡張し、管腔からカテーテルを取り出すことによって達成される。
【0005】
バルーン拡張ステントの場合、ステントはカテーテル上に配置されたバルーンに搭載される。ステントの取り付けは、典型的にはステントをバルーンに圧着するか、又はクリンプする(縮みしわを付けるように押しつける)ことを含む。次にステントは、バルーンを膨張させることによって拡張される。続いてバルーンを収縮させ、カテーテルを引き抜く。自己拡張型ステントの場合、ステントは、引き込み可能なシースまたはソックス状のカバーを介してカテーテルに固定してもよい。ステントが身体の所望部位にあるときに、シースを引き抜いてステントを自己拡張させることができる。
【0006】
ステントは多数の機械的要件を満たさねばならない。まず、ステントは、血管壁を支持する際に、ステントに掛かる構造的負荷(すなわち半径方向の圧縮力)に耐えられなくてはならない。したがって、ステントは適切な径方向の強度を持たなくてはならない。径方向の強度(ステントが径方向の圧縮力に耐える能力のことである)は、ステントの円周方向にわたる強度および剛性に由来する。したがって、径方向の強度および剛性は、フープまたは円周方向の強度および剛性としても説明できる。
【0007】
いったん拡張したならば、ステントは、それに課せられることになる様々な力(鼓動する心臓によって誘起される周期的負荷を含む)にもかかわらず、その耐用年数にわたってサイズおよび形状を適切に維持しなくてはならない。例えば、径方向に向けられた力は、ステントを内方へ反跳(後退)させる傾向があり得る。一般的には、反跳を最小限にすることが望ましい。
【0008】
さらに、ステントは、圧着、拡張、及び周期的負荷を許容するのに十分な可撓性を持たなくてはならない。ステントを蛇行性の血管経路を通して操作できるようにするために、そして直線状でなかったり、屈曲にさらされたりする展開部位に適合できるようにするために長手方向の可撓性が重要である。最後に、ステントは任意の有害な血管反応を引き起こさないように、生体適合性がなくてはならない。
【0009】
ステントの構造は、典型的には当該技術分野においてしばしばストラット(支柱)またはバーアーム(棒腕)と呼ばれる相互接続構造要素のパターンまたはネットワーク(網目状構造)を含むスキャフォールド(骨格)で構成されている。スキャフォールドは、ワイヤ、チューブ、または円筒形状に巻かれた材料シートから形成可能である。ステントが(クリンプできるように)径方向に圧縮可能であり、かつ(展開できるように)径方向に拡張可能であるように、スキャフォールドは設計される。従来のステントは、互いに対する個々の構造要素の動きを介して拡張および収縮可能となる。
【0010】
さらに、薬剤入ステントは、活性または生物活性の薬剤または薬物を含むポリマー担体で金属性スキャフォールドまたはポリマースキャフォールドの表面をコーティングすることによって、作製してもよい。ポリマースキャフォールドは、活性薬剤または活性薬物の担体としても使用できる。
【0011】
さらに、ステントは生体分解性であることが望ましい。多くの治療用途において、例えば、血管の開路維持および/または薬物送り等の意図された機能を果たし終えるまでの、限られた期間の間、ステントが体内に存在する必要がある。したがって、生体吸収性ポリマー等の、生体分解性、生体吸収性、および/または生体侵食性の材料から作製されたステントは、それらの臨床的必要性が終了した後にのみ、完全に侵食されるように構成すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ステントなどの埋込型(埋め込み可能な)医療機器用の材料としてポリマーを使用することは、潜在的な欠点がある。ポリマーステントがステントの臨床的および機械的要件を満たすことができるように、かかる欠点に対処するステントの製造プロセスが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
簡潔かつ一般的に言えば、本発明は内部人工器官、および内部人工器官の作製方法に関する。本発明の態様において、本方法は、ポリマーチューブの径方向の強度を増加させるように、径方向にポリマーチューブを変形させることを含む。本方法は、変形したポリマーチューブから直線状のリングストラットおよび湾曲したヒンジ要素を形成することをさらに含み、リングストラットはヒンジ要素によって互いに接続され、リングストラットおよびヒンジ要素は複数のリングを画成し、ヒンジ要素はリングが非変形形態(configuration)から変形形態に移行可能なように適合される。リングストラットは、リングが非変形形態にあるとき、100度を超える内角で互いに対して配向される。
【0014】
本発明のさらなる態様において、内角は約124度〜約130度の間である。他の態様において、径方向の変形後のポリマーチューブの外径は、径方向の変形前のポリマーチューブの内径の約5倍以上である。さらに別の態様において、径方向の変形後のポリマーチューブの外径は、径方向の変形前のポリマーチューブの内径の約6倍以上である。
【0015】
本発明の詳細な態様において、各リングストラットは、リングが非変形形態にあるときに、ポリマーチューブが径方向に変形された方向に対して0度でない約40度未満の角度で配向される。他の詳細な態様において、各リングは中心点を有し、少なくとも2つの中心点は中心軸を定義し、本方法はリングをともに接続する連結ストラットを形成する工程をさらに備え、連結ストラットは中心軸に平行または実質的に平行に配向され、ここでリングストラット、ヒンジ要素、および連結ストラットは複数のW字状のクローズドセル(閉じた小区画)を画成(define)し、各W字状のセルは他の6つのW字状のセルに接し、各W字状のセルは8つのリングストラット、2つの連結ストラット、および10のヒンジ要素含む周囲部を有する。
【0016】
内部人工器官は、本発明の態様において、直線状のリングストラットおよび湾曲したヒンジ要素を備え、リングストラットはヒンジ要素によって互いに接続され、リングストラットおよびヒンジ要素は複数のリングを画成し、ヒンジ要素はリングが非変形形態から変形形態に移行可能なように適合される。リングストラットは、リングが非変形形態にあるとき、100度を超える内角で互いに対して配向される。
【0017】
本発明の他の態様において、内部人工器官の作製方法は、拡張後のポリマーチューブの外径が、拡張前のポリマーチューブの内径の約4倍より大きくなるように径方向にポリマーチューブを拡張する工程を備える。本方法はリングストラットおよび連結ストラットを径方向に拡張されたポリマーチューブから形成する工程をさらに備え、リングストラットは非変形形態から変形形態に移行可能な複数のリングを画成し、各リングは中心点を有し、少なくとも2つの中心点は中心軸を定義し(define)、連結ストラットは中心軸に平行または実質的に平行に配向されてリングをともに接続し、連結ストラットおよびリングストラットはW字状のクローズドセルを画成し、各W字状のセルは他の6つのW字状のセルに当接する。リングストラットは、リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される。
【0018】
内部人工器官は、本発明の態様において、拡張前のポリマーチューブの内径の約4倍より大きい拡張後の外径を有する径方向に拡張されたポリマーチューブから形成されたリングストラットおよび連結ストラットを備え、リングストラットは非変形形態から変形形態に移行可能な複数のリングを画成し、各リングは中心点を有し、少なくとも2つの中心点は中心軸を定義し、連結ストラットは中心軸に平行または実質的に平行に配向されてリングをともに接続し、連結ストラットおよびリングストラットはW字状のクローズドセルを画成し、各W字状のセルは他の6つのW字状のセルに当接する。リングストラットは、リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される。
【0019】
本発明のさらなる態様において、内角は約124度〜約130度の間である。他の態様において、拡張後のポリマーチューブの外径は、拡張前のポリマーチューブの内径の約6倍以上である。詳細な態様において、各リングストラットは、リングが非変形形態にあるときに、中心軸に垂直な面に対して約25度〜約28度の間の角度で配向される。他の詳細な態様において、連結ストラットおよびリングストラットの長さは、等しいかまたは実質的に等しい。さらに詳細な態様において、各リング上のリングストラットは、互いに交互に現れる一連のクレスト(尾根状部)およびトラフ(谷状部)を画成し、各リング上の各クレストは連結ストラットの1つによって他のリング上の他のクレストに接続される。
【0020】
本発明の特徴および利点は、添付の図面と併用して読むべき以下の詳細な説明から、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、ステントを示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るプロセスフロー図である。
【図3】図3は、平面または平面状態で観察したステントパターンを示す図である。
【図4】図4は、平面または平面状態で観察した他のステントパターンを示す図である。
【図5】図5は、円筒状態にある図4のステントパターンを簡易化して示す図である。
【図6】図6は、図4のステントパターンの一部の詳細図であり、非変形形態の初期直径を有するリングを示す図である。
【図7】図7は、図4からのリングの部分図であり、初期直径未満の直径まで径方向に折り畳まれた後の変形形態のリングを示す図である。
【図8】図8は、図4からのリングの部分図であり、製造後の他の変形形態のリングを示し、初期直径よりも大きな直径で展開されているリングを示す図である。
【図9】図9は、図4のステントパターンを有するステントの写真的画像を示す図である。
【図10】図10は、平面または平面状態で観察されるステントパターンを図示し、円周方向において変化するサイズを有するW字状のセルを有するステントパターンを示す図である。
【図11】図11は、平面または平面状態で観察されるステントパターンを図示し、軸方向において変化するサイズを有するW字状のセルを有するステントパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の様々な実施の形態は、ポリマーステント、および好ましい機械特性を備えたポリマーステントの作製方法に関する。本発明は、自己拡張可能なステント、バルーン拡張可能なステント、ステント移植(ステントグラフト)および移植(例えば大動脈の移植)を含む装置に適用可能であるが、これらに限定されない。
【0023】
図1は、複数の相互に接続する構造要素あるいはストラットのパターンを含む、例示的なステント100の部分斜視図を示す。ステント100は、軸160を備えた円筒形状を有しており、多数の相互に接続する構造要素またはストラット110を備えたパターンを含んでいる。軸160は円筒形状の中心を通って伸長する。一般に、解剖学的管腔を通す経皮送りを可能にするように半径方向にステントを圧縮することができ、次に解剖学的管腔の所望部分への埋込みのために展開できるように、ステントパターンは設計されている。本明細書において使用されるように、ステントの展開とは、患者にステントを埋め込むための、ステントの径方向の拡張を指す。圧縮および展開の間に関与する応力は、ステントパターンの様々な構造要素の全体にわたって通常分配される。
【0024】
ステント100の下層構造あるいは基材は、典型的にはステントの径方向の強度の主要な供給源である。基材は、完全にまたは少なくとも部分的に、生分解性ポリマーもしくは生分解性ポリマーの組合せ、生体安定性ポリマーもしくは生体安定性ポリマーの組合せ、または生体分解性ポリマーおよび生体安定性ポリマーの組合せから作ることができる。さらに、基材上に適用されるポリマーベースのコーティングは、生分解性ポリマーもしくは生分解性ポリマーの組合せ、生体安定性ポリマーもしくは生体安定性ポリマーの組合せ、または生体分解性および生体安定性ポリマーの組合せを含むことができる。
【0025】
本発明の埋込み可能な医療機器を作製またはコーティングに使用することができるポリマーの代表的な実施例は、ポリ(N−アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ハイドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、コ−ポリ(エーテル−エステル)(例えばPEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸など)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−アルファオレフィンのコポリマー、ポリアクリレート以外のアクリルポリマーおよびアクリルコポリマー、ハロゲン化ビニルポリマーおよびハロゲン化ビニルコポリマー(ポリ塩化ビニルなど)、ポリビニルエーテル(ポリビニルメチルエーテルなど)、ポリハロゲン化ビニリデン類(ポリ塩化ビニリデンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレンなど)、ポリビニルエステル(ポリ酢酸ビニルなど)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(ナイロン66およびポリカプロラクタムなど)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、ならびにカルボキシメチルセルロースを含むが、これらに限定されない。使用することができるポリ(乳酸)に基づいた他のタイプのポリマーは、グラフトコポリマー、およびAB型ブロックコポリマー(「ジブロックコポリマー」)もしくはABA型ブロックコポリマー(「トリブロックコポリマー」)などのブロックコポリマー、またはその混合物を含む。
【0026】
埋込み可能な医療機器の作製またはコーティング用に特に適切でありうるポリマーのさらなる代表例は、エチレンビニルアルコールコポリマー(通常は一般名EVOHまたは商標名EVALにより知られている)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロ プロペン)(例えば、Solvay Solexis PVDF, Thorofare, NJから入手可能なSOLEF 21508)、ポリフッ化ビニリデン(もしくはKYNARとして知られており、ATOFINA Chemicals、フィラデルフィア、ペンシルバニアから入手可能である)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、およびポリエチレングリコールを含む。
【0027】
ステント100は、ポリマーチューブ、またはチューブを形成するために巻いて接合したポリマーシートから作製することができる。ステントパターンは、チューブまたはシートの一部を切り取るレーザーによって、解剖学的管腔の壁を支持するためにスキャフォールド(骨格)として機能するストラットおよび他の部材のみを残して、ポリマーチューブまたはシート上に形成することができる。使用可能なレーザーの代表例には、エキシマー、二酸化炭素およびYAGを含むが、これらに限定されない。
【0028】
図1におけるステント100のパターンは、径方向の拡張および圧縮ならびに長手方向の撓曲を可能にする。このパターンは、直線状または比較的直線状のストラットを含む(一例は部分120である)。さらに、パターンは屈曲要素130、140および150を含むことができる。解剖学的管腔を通しての送りに備えて、ステントの径方向の圧縮を可能にするようにステントがクリンプされるときに、屈曲要素は内側へ屈曲する。解剖学的管腔内でのステントの径方向の拡張を可能にするようにステントが展開されるときに、屈曲要素は外側へも屈曲する。展開後、ステント100は、血管壁からの静止荷重および周期的な圧縮荷重にさらされる。したがって、屈曲要素は使用中に変形することができる。
【0029】
上で示されるように、ステントには特定の機械的要件がある。ステントは、血管または他の解剖学的管腔の壁を支持するように、ステントに課される構造的負荷(すなわち径方向の圧縮力)に耐えるのに十分な径方向の強度を有していなければならない。さらに、ステントは、クリンピング、展開および周期的な負荷を可能にする、十分な可撓性を持たなければならない。さらに、十分にロープルロフィル(小型)であること(ストラットの直径およびサイズを含む)が重要である。ステントの外形が小さくなるにつれて、送りはより容易になり、血流の混乱がより少なくなる。
【0030】
ポリマーは、ステントの基材物質としての使用において、多数の欠点を有する傾向がある。金属と比較して、ポリマーの強度重量比は金属よりも小さい。不十分な径方向の強度を備えたポリマーステントは、機械的破損をもたらすか、または血管内への埋め込み後に内側へ反跳(後退)しうる。金属と比較して、ポリマーの比較的低い弾性係数を補償するために、ポリマーステントは金属ステントよりも大幅に厚いストラットを必要とし、それは望ましくない大きな外形をもたらしうる。
【0031】
ポリマーの他の欠点は、生分解性ポリマーなどの多くのポリマーが、生理学的条件あるいは人体内の条件下で脆弱な傾向があるということである。具体的には、約37℃の人体温度を超えたガラス転移温度(Tg)を有するいくつかの生分解性ポリマーは、塑性変形が破損の前にほとんどまたは全くない脆性破壊メカニズムを示す。その結果として、かかるポリマーから作製されたステントは、ステントの使用範囲においては不十分な靭性を有しうる。特に、ステントの使用範囲(すなわちクリンピング、送り、展開)にわたって、および所望される治療期間中、破壊に耐えることが、ステントにとって重要である。
【0032】
ポリマーステントに関する潜在的な問題は機械的クリープ変形である。クリープは、適用荷重にさらされた構造の緩やかな変形を指す。応力に対するポリマー鎖の遅延反応が、ポリマーステントにおけるクリープ挙動を引き起こすと考えられている。クリープは、展開させたステントを径方向に内側へ引き込むかまたは反跳させることができ、所望される血管の開通維持におけるステントの有効性を減少させる。
【0033】
これらおよび他の問題に対処するため、ポリマーの機械特性を、様々な加工技術を介して(ポリマーに応力を加えることなどによって)修正できる。応力の適用によって、応力の方向に沿う分子配向を誘起することができ、それは適用される応力の方向に沿う機械特性を修正することができる。例えば、強度および弾性係数は、ポリマー内のポリマー鎖の配向に依存する重要な特性のうちのいくつかである。分子配向は、ポリマー鎖の縦軸あるいは共有結合軸に沿ったポリマー鎖の相対的な配向を指す。
【0034】
ポリマーは、完全に非晶性か、部分的に結晶性か、またはほぼ完全に結晶性であり得る。部分的に結晶性のポリマーは、非晶質領域によって隔てられた結晶質領域を含む。結晶質領域は、必ずしもポリマー鎖の同一または類似する配向を有する必要はない。しかしながら、結晶子の高度な配向は半結晶性ポリマーに応力を加えることによって誘起することができる。応力は、非晶質領域での配向も誘起することができる。配向した非晶質領域もまた、ポリマー鎖の配列軸に沿って高い強度および高い弾性係数を有する傾向がある。さらに、ある条件下におけるポリマーについては、非晶性ポリマー中に誘起された配置構造には、非晶性ポリマーの規則構造への結晶化が付随しうる。これは応力誘起結晶化として知られている。
【0035】
上で示されたように、使用中にステントに課される応力の大きさおよび方向に起因して、軸方向および円周方向における強度および弾性係数などの適切な機械特性を有することが、ステントの機械的安定性のために重要である。したがって、軸方向、円周方向またはその両方において適用される応力から誘起された配向によって、ステントパターンの作製に用いられるポリマーチューブまたはポリマーシート基材の機械特性を修正することは有利となり得る。ポリマー中の高配向領域は、より高い強度および弾性係数と関連する傾向にあるので、1つまたは複数の好ましい軸あるいは方向に沿ったポリマー鎖の配列を誘起するプロセスを、ステントの作製に組み込むことが、望ましいかもしれない。
【0036】
チューブの径方向の拡張の程度、そのように誘起された円周配向および径方向の強度は、次に示す径方向の拡張比によって、定量化することができる:
RE=(拡張したチューブの外径、ODE)/(チューブの元の内径、IDO)
RE比率はまた、次のようにパーセント拡張としても表わすことができる:
%RE=(RE−1)×100%
【0037】
いくつかの実施の形態において、ポリマーチューブ形状のステント基材はブロー成形によって変形することができる。ブロー成形において、チューブ内へ流体を送ることでチューブ内の圧力を増加させることによって、チューブを径方向に変形あるいは拡張することができる。流体は、空気、窒素、酸素、またはアルゴンなどのガスであり得る。ポリマーチューブは、一端の張力源により張力を加える一方、他端を静止して保持することによって、軸方向に変形あるいは拡張することができる。あるいは、チューブの両端に張力を加えてもよい。チューブは、径方向の拡張の前、その間、および/またはその後に、軸方向に引き伸ばしてもよい。
【0038】
いくつかの実施の形態において、ブロー成形はチューブ状の型の中にまずチューブを設置する工程を含んでもよい。型はチューブの外径の変形あるいは表面の変形を型の内径に制限することによって、チューブの径方向の変形の程度を制御するように作動することができる。型の内径は、ポリマーチューブの所望される直径以下の直径に対応することができる。あるいは、流体の温度および圧力を、型の使用に対する代替として、または型の使用と組み合わせて、チューブの内径の変形を制限することによって、径方向の変形の程度を制御するように使用してもよい。
【0039】
チューブの温度は、変形を容易にするように変形の間にポリマーのTgより高い温度まで加熱することができる。ポリマーチューブは、変形の前、その間、およびそれに続いて、加熱することもできる。
【0040】
破壊靭性などのポリマーの特性は、全体的な結晶化度、ならびに半結晶性ポリマー中の結晶性ドメインの数およびサイズに影響される。非晶性ドメインに囲まれたポリマー内に多数の小さな結晶性ドメインを有することによって、破壊靭性が増加することが観察された。かかる結晶構造は、クリープを減少または防止することもできる。
【0041】
図2は、本発明の実施の形態に係るステントの製造方法を示す。本方法は、基材から製造されたステントの内側へ反跳を除去または減少させるために、ステント基材の径方向の強度を増加させる工程200を含む。ステント基材はポリマーチューブまたはシートであり得る。径方向の強度を増加させる工程600は、径方向にステント基材を拡張する工程210を含んでもよい。径方向の拡張210は、後に基材から形成される個々のステントストラット中のポリマー鎖を、軸方向と比較して円周方向において優先的な配向を有するように誘起220してもよい。軸の方向または配向は、図1の軸160、ならびに図3および4のA−A線によって表わされるステント全体の縦方向(長手方向)に対応する。円周の方向または配向は、図3および4のB−B線、ならびに図5の円728によって表わされるステント基材の円周に沿った方向に対応する。
【0042】
径方向の拡張210は、ポリマーチューブ形状のステント基材のブロー成形によって達成することができる。径方向の拡張210の前に、チューブは元の内径IDOを有する。径方向の拡張210の後に、チューブは外径ODEを有する。いくつかの実施の形態において、径方向の拡張率%RE((ODE/IDO−1)×100%に等しい)が、約300%〜400%の間である(それはIDOの約4倍〜IDOの約5倍の間のODEに対応する)ように、径方向の拡張210が実行される。他の実施の形態において、%REは約400%〜500%の間であり、それはIDOの約5倍〜IDOの約6倍の間のODEに対応する。さらに他の実施の形態において、%REが約500%以上(それはIDOの約6倍以上のODEに対応する)になるまで、径方向の拡張210が実行される。
【0043】
ステント基材中のポリマー鎖は、押出加工、射出成形、引張荷重、機械加工、またはステント基材を形成するために使用される他のプロセスの結果として、軸方向における優先的な配向を最初に有することができる。いくつかの実施の形態においては、最初の軸配向を備えたポリマー鎖を有するステント基材の半径方向の拡張210は、ポリマー鎖を円周の配向を有するように再配向または誘起する220だろう。他の実施の形態においては、最初の軸配向を備えたポリマーを有するステント基材の半径方向の拡張210は、二軸配向を有するようにポリマー分子鎖を誘起すること230ができる。二軸配向においては、ポリマー鎖は、円周方向に優先的に配向するのでもなく、軸方向に優先的に配向するのでもない。このようにして、ポリマー鎖は、ステントの全体の半径方向の強度を増加させるように、個々のステントストラットの縦軸(長手方向軸)に平行かまたは実質的に平行な方向で配向させることができる。
【0044】
本方法は、特定の優先的な配向を有するようにポリマー鎖を誘起した後に、基材からステントパターンを作製する工程240も含む。ステントパターンの作製240は、レーザー切断および/または化学エッチングによって基材の一部を取り除き250、ステントストラット、屈曲要素、および他の必要な構造のみを残す工程を含むことができる。ステントパターン中の個々の構造要素の所望される強度、靭性、および/または可撓性はかかる要素を、ポリマー分子鎖の配向に平行または実質的に平行に形成することによって達成することができる。ステントパターンは、図3および4に示されるもの、または図3および4の変形物でよい。
【0045】
任意で、ステントパターンの作製240後に、ステントはバルーンカテーテルまたは他のステント送り装置上にクリンプすること260ができる。クリンピング260前またはその間に、ステントをクリンピング温度Tcまで加熱することができる。いくつかの実施の形態においては、クリンピング後のより大きな直径へのステントの外側に向かう反跳を最小限にするかまたは防止するためTcは環境の室温Taよりも大きい。外側に向かう反跳は、ステントの送り外形を望ましくなく増加させ、血管内の標的治療部位への送りの間に、カテーテルからの時期尚早な離脱をステントに引き起こしうる。さらに、クリンピング中の応力緩和を減少または除去するように、TcはTgより低いのが好ましい。クリンピング中、またはその後の応力緩和は、後続するステント展開中にクラッキングが起こる可能性をより高くする。かかるクラッキングを減少または防止するために、応力誘起結晶化を介してTgを増加させることによって、TcとTgとの差を最大にすることができる。
【0046】
製造後に、ステントは、クリンプされた直径から展開させた外径ODDまで血管内部で展開させること270ができる。いくつかの実施の形態においては、ODDはODE(ステント基材の径方向への拡張の結果としての外径)よりも大きい。好ましくは、展開中にステント内にクラックが形成されないように、ODDが選択される。いくつかの実施の形態においては、ODDは3.5mm(0.1378インチ)である。他の実施の形態においては、ODDは4.0mm(0.1575インチ)である。
【0047】
ステントがバルーンカテーテル上へクリンプされた場合260、ステントの展開270は、クリンプされた形態から拡張展開された形態までステントの移行を促すために、バルーンカテーテルを膨張させる工程を含むことができる。他の実施の形態においては、ステントは自己拡張型であり得、ステントの展開270は、ステントの自己拡張を可能にするように、ステントの周りからシースまたは他の抑制装置を取り除く工程を含むことができる。
【0048】
図2の方法は多くのタイプの身体管腔または器官に対して適用可能であることが理解される。かかる器官の例は、例えば冠動脈または肝静脈などの脈管の器官;例えば尿道および尿管などの腎臓の器官;例えば胆管などの胆管の器官;例えば気管、気管支および細気管支などの肺の器官;ならびに例えば食道および大腸などの胃腸の器官を含むが、これらに限定されない。
【0049】
図3は、ポリマー基材から切り出された例示的なステントパターン300を図示する。パターンを明瞭に観察できるように、ステントパターン300は平らな(展開された)状態で示されている。ステントパターン300は、円筒形状にあるときに、径方向に拡張可能なステントを形成する。ステントパターン300は、複数の菱形形状のセル310を含む各リングを備えた複数の円筒リング305を含んでいる。ステントパターン300の実施の形態は、ステントの所望される長さに応じた任意の数のリング305を有することができる。参考のために、A−A線は長手方向あるいは軸方向に延び、これは図1の軸160と同一方向である。菱形形状のセル310は屈曲要素315および320を含んでいる。ステントパターン300は屈曲要素325および330も含むことができる。屈曲要素315、320、325および330の角度は、角度θ1、θ2、θ3およびθ4に対応する。角度θ1、θ2、θ3およびθ4は、それぞれ、42度、42度、41度および21度に等しい、またはそれらにおよそ等しい。他の実施の形態においては、角度θ1、θ2、θ3は約24度〜約29度であり、角度θ4は約12度〜約15度である。菱形形状のセル310は、屈曲要素315を形成するバーアーム335および340、屈曲要素320を形成するバーアーム345および350で構成される。
【0050】
ステント300がクリンプされるときに、屈曲要素315、320、325および330は内側へ屈曲し、角度θ1、θ2、θ3およびθ4は減少し、ステントを径方向に圧縮可能にする。要素315、320および325の屈曲に関して、屈曲要素のいずれかの側のストラットは互いに向かって屈曲する。しかしながら、屈曲要素330においては、菱形形状要素のストラットは、クリンピングの間、長手方向軸に対して比較的平行なままである連結アーム355に向かって屈曲する傾向がある。
【0051】
パターン300は、隣接する円筒リングを接続する連結アーム355を含んでいる。連結アーム355は、A−A線に対して平行であり、1つのリングの円周方向に隣接した菱形形状の要素310の交点360と、隣接したリングの円周方向に隣接した菱形形状の要素310の交点360との間で隣接したリングを接続する。図示されるように、連結要素は円周に沿って1交差おきに接続する。
【0052】
ステントがクリンプおよび展開されるときに、屈曲要素の湾曲部分は実質的な応力およびひずみを受ける。したがって、高い強度および靭性はこれらの領域において非常に重要である。理想的には、破壊靭性を改善する最も効果的なポリマー鎖配向は、ストラットの軸の長さに沿うものである。B−B線によって示されるように、径方向の拡張は円周方向に沿う配向および破壊靭性を与える。
【0053】
図4は、本発明の実施の形態に係る他のステントパターン700を示す。ステントパターン700は、異なる方向に配向させた様々なストラット702およびストラットの間のギャップ703を含んでいる。各ギャップ703、およびギャップ703を直接囲むストラット702は、クローズドセル704を画成する。ステントの近位端部および遠位端部で、ストラット706は、くぼみ、袋孔、または患者内部のステントの位置決定を可能にする放射線不透過性マーカーの保持に適した貫通孔を含んでいる。
【0054】
セルの形状およびサイズを図示するために、セル704のうちの1つをハッチ線により示す。図示された実施の形態において、セル704はすべて同一のサイズおよび形状を有している。他の実施の形態においては、セル704の形状およびサイズは変化してもよい。
【0055】
ステントパターン700は、図解の容易性および明瞭性のために平面図または平らになった概観図において示されるが、実際にはA−A線がステントの中心軸に対して平行かまたは実質的に平行なように、ステント上のステントパターン700はステントの周りに及ぶ。パターン700は底縁部708および頂縁部710で図示されている。ステント上で、B−B線がステントの周りに円を形成するように、底縁部708は頂縁部710に接合する。このように、ステントパターン700は、円周方向に配置されたストラット群を含む、正弦曲線の輪またはリング712を形成する。リング712は、互いに交互に現れる一連のクレスト707およびトラフ709を含んでいる。リング712の正弦波変動は、径方向ではなく、主として軸方向で生じる。すなわち、各リング712の外面上のすべての点は、ステントの中心軸から径方向に離れる方向に、同一かまたは実質的に同一の距離にある。
【0056】
さらに図4を参照して、リング712は、A−A線に対して平行かまたは実質的に平行である個々の縦軸713を有する他の群のストラットによって互いに接続される。リング712は、クリンピングの間により小さな直径に折り畳む(つぶす)ことができ、血管内での展開の間に元の直径またはより大きな直径まで拡張できる。
【0057】
他の実施の形態において、ステントには図4で示されるものとは異なる数のリング712およびセル704を有することができる。リング712およびセル704の数は、ステントの所望される軸方向の長さおよび展開された直径に応じて変更可能である。例えば、血管の疾患セグメントが比較的小さいかもしれず、そのような場合はより少数のリングを有するステントを使用して、疾患セグメントを治療することができる。
【0058】
図5は、ステントパターン700の簡略図を円筒状チューブの形状で示す。リング712の正弦曲線の変動、およびリングを互いに連結するストラットは、明確にするために省かれている。リング712は中心点720を有する。少なくとも2つの中心点720が、ステントの中心軸724を定義する。中心軸724、ならびに図4および6中のA−A線は、互いに平行かまたは実質的に平行である。リングは反管腔側表面692および管腔表面694を有する。反管腔側表面692は外側に面し、通常はステントが展開される解剖学的管腔の壁に接触する。管腔表面694は、展開された場合、管腔の中心に向かって内側に面している。
【0059】
図6は、図4のステントパターン700の部分716の詳細図を示す。リング712は、直線状のリングストラット730および湾曲したヒンジ要素732を含んでいる。リングストラット730はヒンジ要素732によって互いに接続される。いくつかの実施の形態において、リングストラットおよびヒンジ要素はポリマー基材から形成され、図5中の点線の円728、ならびに図4および6中のB−B線によって表わされた円周方向で径方向に拡張される。
【0060】
ステントパターン700の形成に使用される基材の径方向の拡張は好ましくは約300%〜約700%の間であり、それはIDOの約4〜約8倍の間であるODEに対応する。いくつかの実施の形態において、径方向の拡張は約400%〜約600%の間であり、それはIDOの約5〜約7倍の間であるODEに対応する。他の実施の形態において、径方向の拡張は500%または約500%であり、それはIDOの6倍または約6倍であるODEに対応する。
【0061】
ヒンジ要素732は撓曲するように適応し、それはリング712が非変形形態から変形形態まで動くことを可能にする。本明細書において使用されるように、「非変形形態」は、解剖学的管腔を通した送りのために、より小さな直径にクリンプされる前のリングの状態を指す。例えば、径方向に拡張したポリマーチューブのレーザー切断によって、ステントが形成される実施の形態において、非変形形態は、ポリマーチューブの径方向の拡張後およびリングを形成するためにそのポリマーチューブをレーザー切断した後のリングの状態である。本明細書では、「変形形態」はクリンピングまたは展開などのある種の変形を行なったリングの状態を指す。
【0062】
図3〜6は非変形形態におけるリング712を示す。図5を参照して、非変形形態にあるときに、リング712は初期外径729を有する。いくつかの実施の形態において、リング712の初期外径729は、ODE(ステント基材が径方向に拡張された後のステント基材の外径)に等しいかまたは実質的に等しい。
【0063】
図6を再び参照して、B−B線は中心軸724(図5)に対して垂直な基準面上にある。図6で示されるように、リング712が非変形形態にあるときに、各リングストラット730は基準面に対して0でない角度Cで配向される。図示された実施の形態において、0でない角度Cは40度未満である。好ましくは、0でない角度Cは35度未満であり、より狭義には、角度Cは約25度〜約28度の間である。他の実施の形態において、角度Cは他の値でありうる。
【0064】
さらに、リングストラット730は互いに対して内角Dで配向される。図示された実施の形態において、内角Dは100度より大である。好ましくは、内角Dは110度より大であり、より狭義には、角度Dは約124度〜約130度の間である。他の実施の形態において、内角Dは他の値を有することができる。
【0065】
もう一度図6を参照して、ステントは、リング712をともに接続する連結ストラット734も含んでいる。連結ストラット734は、A−A線および中心軸724(図5)に平行かまたは実質的に平行に配向される。リングストラット730、ヒンジ要素732、および連結ストラット734は、複数のW形状のクローズドセル736を画成する。1つのW形状のセル736の境界あるいは周囲部を、図6においてわかりやすくするために影を付ける。W形状は、反時計回りに90度回転したように見える。W形状のセル736の各々は、6個の他のW形状のセル736によって直接囲まれ、各W形状のセル736の周囲部が、6個の他のW形状のセル736の周囲部の一部に合体されることを意味する。別の言い方をすれば、各W形状のセル736は、6個の他のW形状のセル736に当接するかあるいは接触している。
【0066】
各W形状のセル736の周囲部は、8つのリングストラット730、2つの連結ストラット734、および10のヒンジ要素732を含んでいる。8つのリングストラットのうちの4つは、セル周囲部の近位側面を形成し、他の4つのリングストラットは、セル周囲部の遠位側面を形成する。近位側面および遠位側面上で対向するリングストラットは、互いに平行かまたは実質的に平行である。
【0067】
ヒンジ要素732の各々の内に、リングストラット730および連結ストラット734が収斂する交点738がある。リングストラット730および連結ストラット734の各端部に隣接する交点738がある。リングストラット730の端部に隣接する交点間の距離740は、各リングストラット730について同一かまたは実質的に同一である。図10において示されるような他の実施の形態においては、距離740が変化するように、リングストラット730のうちのいくつかは他のリングストラット730よりも長くなりうる。例えば、距離740はステントの異なる部分での機械的特性の変動を可能にするように変化することができる。
【0068】
図6を再び参照すると、水平な連結ストラット734の端部に隣接する交差点間の距離742は、各連結ストラット734について同一かまたは実質的に同一である。図11において示されるような他の実施の形態においては、ステントの異なる部分での機械的特性の変動を可能にするために距離742が変化するように、連結ストラット734のうちのいくつかは他の連結ストラット734よりも長くしてもよい。
【0069】
同様に、距離740は距離742と同一かまたは実質的に同一である。他の実施の形態においては、ステントの異なる部分での機械的特性の変動を可能にするように、距離740および距離742は互いに異なる。
【0070】
リングストラット730は、リングストラットの個々の長手方向軸713に沿って一様な幅737を有する。連結ストラット734もまた、連結ストラットの個々の縦軸713に沿って一様な幅739を有する。
【0071】
図6において示されるように、各W形状のセル736の内部空間はA−A線に平行な寸法744、およびB−B線に平行な寸法746を有する。軸方向寸法744は、円周方向の位置に関して一定かまたは実質的に一定である。すなわち、セル736の頂端部および底端部に隣接する軸方向寸法744Aは、端部からさらに離れた軸方向寸法744Bと同一かまたは実質的に同一である。一定の軸方向寸法744は、図3のステントパターンと比較して、改善されたストラット分布を提供する。
【0072】
図6の図示された実施の形態において、軸方向寸法および円周方向寸法(744および746)はW形状のセル736の中で同一である。他の実施の形態においては、軸方向寸法744および/または円周方向寸法746は、ステントの異なる部分での機械的特性の変動を可能にするようにセル736の中で異ならせてもよい。
【0073】
図7および8は、2つの異なる変形した形態における1つのリング712の部分を示す。図7において、リング712は、ステントがカテーテル上にクリンプされるときなどに、その初期外径729(図5)未満の直径に径方向に圧縮される。かかる圧縮の間に、リングストラット730が互いに向かってヒンジ要素732の周りを枢動することで、リングストラット730が互いに向かって折り畳まれ、B−B線によって表わされる基準面に対して角度Eで配向されるようになる。角度Eは、非変形形態におけるリング712を示す図6中の対応する角度Cよりも大きい。同様に、リングストラット730は互いに対して内角Fで配向される。角度Fは、図6中の対応する角度Dよりも小さい。
【0074】
図8において、製造後に、リング712は径方向に展開した形態まで拡張された。リング712の径方向の拡張は、製造の間のステント基材の径方向の拡張と混同されるべきではない。リング712が径方向に拡張するときに、リングストラット730はヒンジ要素732の周りを枢動し、リングストラット730は、B−B線によって表わされる基準面に対して角度Gで配向されるようになる。リング712が、変形していない初期直径729(図5)よりも大きな直径まで拡張するときに、角度Gは、図6中の対応する角度Cよりも小さい。同様に、リングストラット730は互いに対して内角Hで配向される。角度Hは、図6中の対応する角度Dよりも大きい。
【0075】
製造中に径方向に拡張されたポリマーチューブ基材から形成された異なるステントパターンを使用して、長期の管腔開通を研究するための試験が行なわれた。実施例1は、2.13mm(0.084インチ)の直径まであらかじめ径方向に300%拡張したポリマーチューブ基材から切り出された図3のステントパターンを有するステントに対応する。実施例2は、3.48mm(0.137インチ)の直径まであらかじめ径方向に500%拡張したポリマーチューブ基材から切り出された図4および6のステントパターンを有するステントに対応する。両方の場合において、ポリマーチューブは生体吸収性ポリマーであるポリ(L−ラクチド)の押出チューブであった。図9は、実施例2のステントの一部を写した写真状の図である。
【0076】
実施例1において、リングストラット335、340、345および350は、非変形形態にある場合、円周方向(それは半径方向の拡張の方向である)に対して、約75度〜約78度であった。同様に、リングストラット335および345は、リングストラット340および350に対して、約24度〜約29度の内角(図3中のθ1およびθ3)で配向された。
【0077】
実施例2において、リングストラット730は、非変形形態にある場合、円周方向から25度〜28度であった。同様に、リングストラット730は、互いに対して、約124度〜約130の内角(図6中の角度D)で配向された。
【0078】
実施例1と比較して、実施例2は展開後のより少ない内側への反跳(直径の減少)を示し、より大きな管腔、および周囲の組織とステントのより良い圧着あるいは接触を結果として生じた。試験の結果は、図4および6(実施例2)のパターンに配置されたストラットと組み合わせた500%の径方向の拡張が、図3(実施例1)のパターンに配置されたストラットと組み合わせた300%の径方向の拡張よりも大きな径方向の強度を提供することを示す。この結果は、基材の過度の径方向への拡張は、クリンピングの間に、または展開に際して、ストラットの破損の増加を招くことが知られており、しかも過度に大きな内角はステントの容易で且つ制御された様式でのクリンピングを妨げることが知られているという点で予想外であった。
【0079】
実施例1のポリマー鎖は、実施例2と比較して、リングと容易に並ばず、実施例2と比較して機械的クリープ変形にそれほど耐性のないステントを招くと考えられている。実施例2の500%の径方向の拡張により、ポリマー鎖は実質的に円周方向に配向される。実施例2のステントストラットの間の内角は、ステントストラットが円周方向に配向されたポリマー鎖と良好に並ぶことを可能にする。拡張負荷は基材の「グレイン」に対して(すなわちポリマー鎖の円周方向の配向に対して)適用されるので、実施例2中のものよりも小さな内角は、破損の可能性を増加させるとも考えられる。
【0080】
他の試験において、ステントは、異なるレベル(すなわち400%、500%、600%、および700%)まで径方向に拡張したポリ(L−ラクチド)基材のチューブから作製された。ステントを異なるクリンピング温度でクリンプし、展開し、次に破損の有無を検査した。約50℃のクリンピング温度で、径方向に500%拡張したチューブから作製したステント群は、平均破損数が最も低かった。約30℃、50℃および60℃のクリンピング温度で、径方向に700%拡張したチューブから作製されたステントの群は、平均破損数が最も高かった。
【0081】
上で開示されたステントパターンが非ポリマーステント基材に対しても同様に適用できることが理解される。ステントの非ポリマー基材は、金属材料、またはコバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼(例えばBIODUR108)、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、ELASTINITE(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタン合金、プラチナ−イリジウム合金、金、マグネシウム、もしくはそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない合金で作製することができる。「MP35N」および「MP20N」は、Standard Press Steel社(ジェンキンタウン、ペンシルバニア州)から入手可能な、コバルト、ニッケル、クロミウムおよびモリブデンの合金の商標名である。「MP35N」は、35%コバルト、35%ニッケル、20%クロミウム、および10%モリブデンからなる。「MP20N」は、50%コバルト、20%ニッケル、20%クロミウム、および10%モリブデンからなる。
【0082】
本発明の複数の特定の形態を図示および記述してきたが、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更を行なうことができることもまた明らかだろう。例えば、W形状のセル736は、図10において示されるように、円周方向(B−B線方向)で、サイズを変えられる。さらなる例として、W形状のセル736は、図11において示されるように、軸方向(A−A線方向)で、サイズを変えられる。また、開示された実施の形態の具体的な特徴および態様の様々な組合せまたは部分的な組合せは、本発明の種々の態様を形成するために互いに組み合わせられ、または互いに置換できると考えられる。従って、添付の特許請求の範囲による以外は、本発明が限定されることを意図していない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーチューブの半径方向の強度を増加させるために径方向に前記ポリマーチューブを変形させる工程;および
変形した前記ポリマーチューブから直線状のリングストラットおよび湾曲したヒンジ要素を形成する工程を備え;
前記リングストラットは前記ヒンジ要素によって互いに接続され、前記リングストラットおよび前記ヒンジ要素は複数のリングを画成し、前記ヒンジ要素は前記リングの非変形形態から変形形態への移行を可能にするように適応し、
前記リングストラットは、前記リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される;
内部人工器官を作製する方法。
【請求項2】
前記内角が約124度〜約130度の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
径方向への変形後の前記ポリマーチューブの外径が、径方向の変形前の前記ポリマーチューブの内径の約5倍以上となる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
径方向への変形後の前記ポリマーチューブの外径が、径方向の変形前の前記ポリマーチューブの内径の約6倍以上となる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各リングストラットが、前記リングが非変形形態にあるときに、前記ポリマーチューブが径方向に変形された方向に対して約40度未満の0でない角度で配向される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各リングが中心点を有し、少なくとも前記2つの中心点が中心軸を定義し、前記リングをともに接続する連結ストラットを形成する工程をさらに備え、前記連結ストラットは前記中心軸に平行かまたは実質的に平行に配向され、ここで前記リングストラット、前記ヒンジ要素、および前記連結ストラットは複数のW形状のクローズドセルを画成し、各W形状のセルは6個の他のW形状のセルに接し、各W形状のセルは8つの前記リングストラット、2つの前記連結ストラット、および10個の前記ヒンジ要素を含む周囲部を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
直線状のリングストラットと湾曲したヒンジ要素を備え、
前記リングストラットは前記ヒンジ要素によって互いに接続され、前記リングストラットおよび前記ヒンジ要素は複数のリングを画成し、前記ヒンジ要素は前記リングの非変形形態から変形形態までの移行可能にするように適応し、
前記リングストラットは、前記リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される、
内部人工器官。
【請求項8】
前記内角が、約124度〜約130度の間である、請求項7に記載の内部人工器官。
【請求項9】
前記のリングストラットおよび前記ヒンジ要素が径方向に拡張されたポリマーチューブから形成され、前記径方向に拡張されたポリマーチューブは拡張前の前記チューブの内径の約5倍以上の外径を有する、請求項7に記載の内部人工器官。
【請求項10】
前記のリングストラットおよび前記ヒンジ要素が径方向に拡張されたポリマーチューブから形成され、前記径方向に拡張されたポリマーチューブは拡張前の前記チューブの内径の約6倍以上の外径を有する、請求項7に記載の内部人工器官。
【請求項11】
各リングストラットが、前記リングが非変形形態にあるときに、前記のポリマーチューブが径方向に変形された方向に対して約40度未満の角度で配向される、請求項10に記載の内部人工器官。
【請求項12】
各リングが中心点を有し、少なくとも前記2つの中心点が中心軸を定義し、前記リングをともに接続する連結ストラットを形成する工程をさらに備え、前記連結ストラットは前記中心軸に平行かまたは実質的に平行に配向され、ここで前記リングストラット、前記ヒンジ要素、および前記連結ストラットは複数のW形状のクローズドセルを画成し、各W形状のセルは6個の他のW形状のセルに接し、各W形状のセルは8つの前記リングストラット、2つの前記連結ストラット、および10個の前記ヒンジ要素を含む周囲部を有する、請求項7に記載の内部人工器官。
【請求項13】
拡張後のポリマーチューブの外径が拡張前の前記ポリマーチューブの内径の約4倍よりも大きいように、径方向に前記ポリマーチューブを拡張する工程;と
リングストラットおよび連結ストラットを径方向に拡張した前記ポリマーチューブから形成する工程を備え;
前記リングストラットは非変形形態から変形形態まで移行可能な複数のリングを画成し、各リングは中心点を有し、少なくとも2つの前記中心点が中心軸を定義し、前記連結ストラットは前記中心軸に平行かまたは実質的に平行に配向されて前記リングをともに接続し、前記連結ストラットおよび前記リングストラットはW形状のクローズドセルを画成し、各W形状のセルは6つの他のW形状のセルに接し、
前記リングストラットは、前記リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される、内部人工器官を作製する方法。
【請求項14】
前記内角が約124度〜約130度の間である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
拡張後の前記ポリマーチューブの外径が、拡張前の前記ポリマーチューブの内径の約6倍以上である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
各リングストラットが、前記リングが非変形形態にあるときに、前記径方向の拡張の方向に対して約25度〜約28度の間の角度で配向される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
各リング上の前記リングストラットが、互いに交互に現れる一連のクレストおよびトラフを画成し、各リング上の各クレストは前記連結ストラットの1つによって他のリング上の他のクレストに接続される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
拡張前のポリマーチューブの内径の約4倍よりも大きい拡張後の外径を有する径方向に拡張された前記ポリマーチューブから形成されたリングストラットおよび連結ストラットを備え;
前記リングストラットは非変形形態から変形形態まで移行可能な複数のリングを画成し、各前記リングは中心点を有し、少なくとも2つの前記中心点が中心軸を定義し、前記連結ストラットは前記中心軸に平行かまたは実質的に平行に配向されて前記リングをともに接続し、前記連結ストラットおよび前記リングストラットはW形状のクローズドセルを画成し、各W形状のセルは6つの他のW形状のセルに当接し、
前記リングストラットは、前記リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される、
内部人工器官。
【請求項19】
前記内角が約124度〜約130度の間である、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項20】
拡張後の前記ポリマーチューブの外径が、拡張前の前記ポリマーチューブの内径の約6倍以上である、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項21】
各リングストラットが、前記リングが非変形形態にあるときに、前記中心軸に垂直な平面に対して約25度〜約28度の間の角度で配向される、請求項20に記載の内部人工器官。
【請求項22】
前記の連結ストラットおよびリングストラットの長さが、等しいか実質的に等しい、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項23】
各リング上の前記リングストラットが、お互いに交互に現れる一連のクレストおよびトラフを画成し、各リング上の各クレストは前記連結ストラットの1つによって他のリング上の他のクレストに接続される、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項24】
前記ポリマーチューブが、外面および内面を有し、前記リングは反管腔表面および管腔表面を有し、前記反管腔表面は前記ポリマーチューブの前記外面に対応し、前記管腔表面は前記ポリマーチューブの前記内面に対応する、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項25】
前記W形状のセルが、円周方向でサイズが変化する、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項26】
前記W形状のセルが、前記軸方向でサイズが変化する、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項1】
ポリマーチューブの半径方向の強度を増加させるために径方向に前記ポリマーチューブを変形させる工程;および
変形した前記ポリマーチューブから直線状のリングストラットおよび湾曲したヒンジ要素を形成する工程を備え;
前記リングストラットは前記ヒンジ要素によって互いに接続され、前記リングストラットおよび前記ヒンジ要素は複数のリングを画成し、前記ヒンジ要素は前記リングの非変形形態から変形形態への移行を可能にするように適応し、
前記リングストラットは、前記リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される;
内部人工器官を作製する方法。
【請求項2】
前記内角が約124度〜約130度の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
径方向への変形後の前記ポリマーチューブの外径が、径方向の変形前の前記ポリマーチューブの内径の約5倍以上となる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
径方向への変形後の前記ポリマーチューブの外径が、径方向の変形前の前記ポリマーチューブの内径の約6倍以上となる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各リングストラットが、前記リングが非変形形態にあるときに、前記ポリマーチューブが径方向に変形された方向に対して約40度未満の0でない角度で配向される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各リングが中心点を有し、少なくとも前記2つの中心点が中心軸を定義し、前記リングをともに接続する連結ストラットを形成する工程をさらに備え、前記連結ストラットは前記中心軸に平行かまたは実質的に平行に配向され、ここで前記リングストラット、前記ヒンジ要素、および前記連結ストラットは複数のW形状のクローズドセルを画成し、各W形状のセルは6個の他のW形状のセルに接し、各W形状のセルは8つの前記リングストラット、2つの前記連結ストラット、および10個の前記ヒンジ要素を含む周囲部を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
直線状のリングストラットと湾曲したヒンジ要素を備え、
前記リングストラットは前記ヒンジ要素によって互いに接続され、前記リングストラットおよび前記ヒンジ要素は複数のリングを画成し、前記ヒンジ要素は前記リングの非変形形態から変形形態までの移行可能にするように適応し、
前記リングストラットは、前記リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される、
内部人工器官。
【請求項8】
前記内角が、約124度〜約130度の間である、請求項7に記載の内部人工器官。
【請求項9】
前記のリングストラットおよび前記ヒンジ要素が径方向に拡張されたポリマーチューブから形成され、前記径方向に拡張されたポリマーチューブは拡張前の前記チューブの内径の約5倍以上の外径を有する、請求項7に記載の内部人工器官。
【請求項10】
前記のリングストラットおよび前記ヒンジ要素が径方向に拡張されたポリマーチューブから形成され、前記径方向に拡張されたポリマーチューブは拡張前の前記チューブの内径の約6倍以上の外径を有する、請求項7に記載の内部人工器官。
【請求項11】
各リングストラットが、前記リングが非変形形態にあるときに、前記のポリマーチューブが径方向に変形された方向に対して約40度未満の角度で配向される、請求項10に記載の内部人工器官。
【請求項12】
各リングが中心点を有し、少なくとも前記2つの中心点が中心軸を定義し、前記リングをともに接続する連結ストラットを形成する工程をさらに備え、前記連結ストラットは前記中心軸に平行かまたは実質的に平行に配向され、ここで前記リングストラット、前記ヒンジ要素、および前記連結ストラットは複数のW形状のクローズドセルを画成し、各W形状のセルは6個の他のW形状のセルに接し、各W形状のセルは8つの前記リングストラット、2つの前記連結ストラット、および10個の前記ヒンジ要素を含む周囲部を有する、請求項7に記載の内部人工器官。
【請求項13】
拡張後のポリマーチューブの外径が拡張前の前記ポリマーチューブの内径の約4倍よりも大きいように、径方向に前記ポリマーチューブを拡張する工程;と
リングストラットおよび連結ストラットを径方向に拡張した前記ポリマーチューブから形成する工程を備え;
前記リングストラットは非変形形態から変形形態まで移行可能な複数のリングを画成し、各リングは中心点を有し、少なくとも2つの前記中心点が中心軸を定義し、前記連結ストラットは前記中心軸に平行かまたは実質的に平行に配向されて前記リングをともに接続し、前記連結ストラットおよび前記リングストラットはW形状のクローズドセルを画成し、各W形状のセルは6つの他のW形状のセルに接し、
前記リングストラットは、前記リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される、内部人工器官を作製する方法。
【請求項14】
前記内角が約124度〜約130度の間である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
拡張後の前記ポリマーチューブの外径が、拡張前の前記ポリマーチューブの内径の約6倍以上である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
各リングストラットが、前記リングが非変形形態にあるときに、前記径方向の拡張の方向に対して約25度〜約28度の間の角度で配向される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
各リング上の前記リングストラットが、互いに交互に現れる一連のクレストおよびトラフを画成し、各リング上の各クレストは前記連結ストラットの1つによって他のリング上の他のクレストに接続される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
拡張前のポリマーチューブの内径の約4倍よりも大きい拡張後の外径を有する径方向に拡張された前記ポリマーチューブから形成されたリングストラットおよび連結ストラットを備え;
前記リングストラットは非変形形態から変形形態まで移行可能な複数のリングを画成し、各前記リングは中心点を有し、少なくとも2つの前記中心点が中心軸を定義し、前記連結ストラットは前記中心軸に平行かまたは実質的に平行に配向されて前記リングをともに接続し、前記連結ストラットおよび前記リングストラットはW形状のクローズドセルを画成し、各W形状のセルは6つの他のW形状のセルに当接し、
前記リングストラットは、前記リングが非変形形態にあるときに、100度を超える内角で互いに対して配向される、
内部人工器官。
【請求項19】
前記内角が約124度〜約130度の間である、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項20】
拡張後の前記ポリマーチューブの外径が、拡張前の前記ポリマーチューブの内径の約6倍以上である、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項21】
各リングストラットが、前記リングが非変形形態にあるときに、前記中心軸に垂直な平面に対して約25度〜約28度の間の角度で配向される、請求項20に記載の内部人工器官。
【請求項22】
前記の連結ストラットおよびリングストラットの長さが、等しいか実質的に等しい、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項23】
各リング上の前記リングストラットが、お互いに交互に現れる一連のクレストおよびトラフを画成し、各リング上の各クレストは前記連結ストラットの1つによって他のリング上の他のクレストに接続される、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項24】
前記ポリマーチューブが、外面および内面を有し、前記リングは反管腔表面および管腔表面を有し、前記反管腔表面は前記ポリマーチューブの前記外面に対応し、前記管腔表面は前記ポリマーチューブの前記内面に対応する、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項25】
前記W形状のセルが、円周方向でサイズが変化する、請求項18に記載の内部人工器官。
【請求項26】
前記W形状のセルが、前記軸方向でサイズが変化する、請求項18に記載の内部人工器官。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−525903(P2010−525903A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506710(P2010−506710)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/062607
【国際公開番号】WO2008/137821
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509268314)アボット カルディオバスキュラー システムズ インコーポレーテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】Abbott Cardiovascular Systems Inc.
【住所又は居所原語表記】3200 Lakeside Drive,Santa Clara,California 95054,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/062607
【国際公開番号】WO2008/137821
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509268314)アボット カルディオバスキュラー システムズ インコーポレーテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】Abbott Cardiovascular Systems Inc.
【住所又は居所原語表記】3200 Lakeside Drive,Santa Clara,California 95054,United States of America
【Fターム(参考)】
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