説明

半田付け方法及び装置

【課題】半田付けによる接合対象物の損傷を抑制しつつ、信頼性の高い半田付けを実現し、半田付けによって製造される製品の品質の向上を図ること。
【解決手段】各接合対象物にそれぞれ形成された各接合パッド間を半田にて接合する半田付け方法であって、各接合対象物を接合位置に配置する接合対象物配置工程と、各接合対象物にそれぞれ形成された各接合パッド間に半田を配置し、当該半田に加熱ビームを照射して半田付けを行う半田付け工程と、を有し、半田付け工程の前、及び/又は、半田付け工程と平行して、少なくとも一方の接合対象物を加熱する接合対象物加熱工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付け方法及び装置にかかり、特に、電子部品を基板に半田付けする方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に電子部品を接合する方法として、半田付けが多く利用されている。このように、半田付けを用いることで、電子部品を基板に固定できると共に、電子部品に形成された端子と基板に形成された端子とを電気的に接続することができる。例えば、後述するように、磁気ディスク装置に搭載されるヘッドジンバルアセンブリを製造する場合に、電子部品である磁気ヘッドスライダをフレキシブルプリント基板が一体化されたサスペンション(フレキシャ)に半田付けする、というように利用される。
【0003】
但し、上述したように半田付けによる接合対象が電子部品である場合には、半田付け時の加熱によって、電子部品が耐熱温度以上の高温になってしまうことがありうる。すると、半田付けの加熱によって電子部品が損傷する、という問題が生じうる。このため、従来より、レーザ等による半田の加熱を短時間に制限することが行われている。また、下記特許文献1に示すように、半田付け時に接合対象である電子部品の本体から放出される熱を測定し、当該電子部品の耐熱温度以下で半田付けするよう制御する、という方法も開示されている。一方で、半田の加熱を短時間に制限してしまうと、加熱時間が短いため半田の溶融が十分でなく、安定した半田付けが実現できない、という問題が生じる。
【0004】
また、基板に電子部品を接合するなど2つの接合対象物間を半田付けする場合には、各接合対象物の構成や半田付け状況等によって、各接合対象物の各接合パッドの温度上昇率が相違する場合がある。このとき、各接合パッドの温度上昇率があまりに大きく異なると、一方の接合対象物側の温度が低く、半田付けを確実に行うことができない、という問題が生じる。一方で、半田付けを確実に行うために半田に多くの熱を印加すると、他方の接合対象物側の温度が過剰に高くなる場合が生じ、当該他方の接合対象物に加熱による損傷が生じることもありうる。その一例を、ディスク装置に搭載されるヘッドジンバルアセンブリのサスペンション(フレキシブルプリント基板)に磁気ヘッドスライダを半田付けする場合を例示して、図17乃至図22を参照して説明する。
【0005】
磁気ヘッドスライダの半田付けは、まず、図17(a)に示すように、磁気ヘッド素子121を有する磁気ヘッドスライダ102を搬送ノズル104で吸引保持し、この搬送ノズルを矢印Y101に示すように移動させて、磁気ヘッドスライダ102をフレキシャ112に一体形成されたフレキシブルプリント基板113の接合箇所に配置する。このとき、例えば、図17(b)に示すように、磁気ヘッドスライダ102の磁気ヘッド素子121に形成されたスライダ側パッド122と、フレキシブルプリント基板113に形成されたサスペンション側パッド114と、が近接するよう配置する。
【0006】
その後、図17(a)の矢印Y102に示すように、半田ボール103が先端に吸引されて保持されているレーザ照射ノズル106を移動させて、図17(b)に示すように、半田ボール103を半田接合箇所となるスライダ側パッド122とサスペンション側パッド114とに当接させる。そして、この状態で、図18(a)に示すように、レーザ照射ノズル106からレーザビームL101を半田103に対して照射する。
【0007】
すると、レーザビームL101が照射された半田ボール103は溶融し、各パッド間を接合するはずであるが、各接合パッド122,114つまり磁気ヘッドスライダ側とサスペンション側とに対して均等に加熱することが困難な場合がある。特に、この半田付け例では、磁気ヘッドスライダ102は搬送ノズル104に吸引され、あるいは、接触しているため、図18(a)の矢印に示すように、レーザ照射ノズル106からのレーザビームL101にて半田ボール103に印加されてスライダ側パッド122に伝達される熱は、磁気ヘッドスライダ102や搬送ノズル104に吸収されてしまう。従って、半田接合時に、スライダ側パッド122の温度がサスペンション側パッド114の温度よりも低くなり、スライダ側パッド114に半田を接合させることが困難となる。その結果、図18(b)に示すように、サスペンション側パッド114のみに半田103が残るなどの半田不良が生じる。
【0008】
一方で、上述したような半田不良を回避すべく、レーザ照射ノズル106から高いエネルギーのレーザビームL101を半田103に照射すると(図19(a)参照)、温度の低いスライダ側パッド122の温度は適切に加熱されて半田付けを実現できるが、サスペンション側パッド114には過剰な熱量が印加される場合があり、図19(b)に示すように、サスペンション側パッド114付近の構造、例えば、フレキシブルプリント基板を形成するポリイミド層に、熱による損傷Dが生じる可能性がある。
【0009】
ここで、図20乃至図21に、実際に半田付けを行ったヘッドジンバルアセンブリの写真を示す。図20は、サスペンション112上に磁気ヘッドスライダ102を配置して、接合箇所となる各接合パッド122,114間に半田ボール103を配置し、かかる箇所で半田ボール103を仮止めするよう加熱して当該半田ボール103の一部を溶融させた状態(プレバンピング(Pre-bumping))を示している。また、図21は、各接合パッド122,114間を確実に接合するために半田103を完全に溶融するよう加熱した状態(リフロー(Reflow))を示している。なお、図20(a)及び図21(a)は、ヘッドジンバルアセンブリを磁気ヘッドスライダ102側から見た写真であり、図20(b)及び図21(b)は、その裏面側(フレキシブルプリント基板のポリイミド層113)から見た図である。また、図中の数字は、それぞれ対応する接合パッド122,114の位置を表している。つまり、この場合には、6つの半田付け箇所が存在する。さらに、図22(a),(b)は、それぞれ図20に示すプレバンピング時と図21に示すリフロー時に、各半田ボール103(接合パッド)に印加したレーザエネルギーを示している。
【0010】
すると、従来例において、信頼性の高い半田付けを実現すべく半田103を各接合パッド122,114間で溶融させて接合すると、図21(b)の符号Dに示すように、サスペンション側パッド114付近の構造、つまり、フレキシブルプリント基板を形成するポリイミド層に、熱による損傷Dが生じる、という問題があった。
【0011】
【特許文献1】特開2004−260019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このため、本発明では、上記従来例の有する不都合を改善し、特に、半田付けによる接合対象物の損傷を抑制しつつ、信頼性の高い半田付けを実現し、半田付けによって製造される製品の品質の向上を図ることができる半田付け装置及び半田付け方法を提供すること、をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明の一形態である半田付け方法は、
各接合対象物にそれぞれ形成された各接合パッド間を半田にて接合する半田付け方法であって、
少なくとも一方の接合対象物を加熱し、
その後、あるいは、前記接合対象物の加熱を継続しつつ、半田に加熱ビームを照射して半田付けを行う、
ことを特徴としている。
【0014】
また、半田付け方法の別の形態は、
各接合対象物を接合位置に配置する接合対象物配置工程と、
各接合対象物にそれぞれ形成された各接合パッド間に半田を配置し、当該半田に加熱ビームを照射して半田付けを行う半田付け工程と、を有する半田付け方法であって、
半田付け工程の前、及び/又は、半田付け工程と平行して、少なくとも一方の接合対象物を加熱する接合対象物加熱工程を有する、
ことを特徴としている。
【0015】
上記発明によると、まず、各接合対象物が接合位置に配置される。そして、半田付け箇所となる各接合パッド間に半田が配置され、当該半田に加熱ビームが照射され半田付けが行われる。このとき、半田付け開始前に、及び/あるいは、半田付け中に、接合対象物が加熱されるため、少なくとも一方の接合対象物自体の温度が高い状態で半田付けが行われる。すると、接合パッドの温度が高くなり、半田に対して印加する熱量が少なくても信頼性の高い半田付けを実現することができる。そして、同時に、接合対象物に対する過度の加熱を抑制でき、接合対象物の損傷を防止することができる。さらには、半田付け時間の短縮を図ることができる。
【0016】
また、上記接合対象物加熱工程は、半田付け工程における半田に対する加熱により接合パッド部分の温度上昇率の低いいずれか一方の接合対象物を加熱する、ことを特徴としている。これにより、接合対象物の構造や半田付け時の様子によって、半田に照射される加熱レーザによる加熱に対して各接合パッドの温度上昇率に差異が生じる場合があるが、かかる場合に、半田付け時の加熱にて温度上昇率の低い方の接合対象物を、半田を加熱する手段とは異なる他の手段で加熱する。すると、温度上昇率の低い接合対象物に形成された接合パッドの温度を、半田付け時に高く設定しておくことができる。従って、半田に対して印加する熱量が少なくても信頼性の高い半田付けを実現することができる。同時に、温度上昇率の高い接合対象物に対しては、少ない熱量で信頼性の高い半田付けを実現できると共に過度の加熱を抑制でき、損傷を防止することができる。
【0017】
また、接合対象物加熱工程は、接合対象物の温度が予め設定された温度を超えないよう加熱する、ことを特徴としている。これにより、接合対象物が過度に加熱されることを抑制することができ、当該加熱される接合対象物の損傷も抑制することができる。
【0018】
また、接合対象物加熱工程は、接合対象物に接触している接触部材を加熱して当該接合対象物を加熱する、ことを特徴としている。例えば、接触部材に当接する加熱手段を用いて当該接触部材を加熱する。あるいは、接触部材に加熱ビームを照射して当該接触部材を加熱する。これにより、接合対象物を直接熱源から加熱することなく、接触する接触部材を介して間接的に加熱することができる。従って、接触対象物の急激な加熱を抑制でき、かかる加熱による接合対象物の損傷を抑制することができる。
【0019】
また、接合対象物配置工程は、接合対象物を接合位置に搬送する接合対象物搬送工程を有し、接合対象物加熱工程は、接合対象物搬送工程にて接合対象物を搬送中に加熱する、ことを特徴としている。これにより、接合対象物を半田付け開始前から加熱して当該接合対象物の接合パッドの温度を高くしておくことができ、半田付け作業の効率化及び半田付け時間の短縮化を図ることができる。
【0020】
そして、上記半田付け方法は、例えば、磁気ヘッドスライダをサスペンションに接合して、ヘッドジンバルアセンブリを製造する場合に用いると望ましい。具体的には、上記接合対象物加熱工程にて一方の接合対象物として磁気ヘッドスライダを加熱し、この磁気ヘッドスライダを他方の接合対象物であるサスペンションに接合する。これにより、サスペンションよりも磁気ヘッドスライダの方が半田に対する加熱による接合パッド部分の温度上昇率が低い場合には、磁気ヘッドスライダ側の接合パッドを半田付け時に加熱しておくことで、信頼性の高い半田付けを実現できる。また、半田付け時に印加熱量を抑制でき、電子部品である磁気ヘッドスライダやサスペンションの損傷を抑制することができる。その結果、製造されるヘッドジンバルアセンブリの不良発生率を低くすることができ、製品コストの低減を図ることができる。
【0021】
また、本発明の他の形態である半田付け装置は、各接合対象物にそれぞれ形成された各接合パッド間を半田にて接合する際に用いる半田付け装置であって、各接合パッド間に配置される半田に加熱ビームを照射して半田付けを行う半田加熱手段を備えると共に、この半田加熱手段とは異なり、少なくとも一方の接合対象物を加熱する接合対象物加熱手段を備えた、ことを特徴としている。
【0022】
そして、半田付け装置の他の形態は、各接合対象物を接合位置に配置する接合対象物配置手段と、各接合対象物にそれぞれ形成された各接合パッド間に配置される半田に加熱ビームを照射して半田付け行う半田加熱手段と、を備え、この半田加熱手段とは異なり、一方の接合対象物を加熱する接合対象物加熱手段を備えた、ことを特徴としている。
【0023】
また、上記接合対象物加熱手段は、半田加熱手段が半田に加熱ビームを照射する前に、及び/又は、半田加熱手段にて半田に加熱ビームを照射中に、接合対象物を加熱する、ことを特徴としている。また、接合対象物加熱手段は、接合対象物の温度が予め設定された温度を超えないよう加熱制御する制御手段を備えた、ことを特徴としている。
【0024】
また、接合対象物加熱手段は、接合対象物に接触している接触部材を加熱して当該接合対象物を加熱する、ことを特徴としている。そして、接合対象物配置手段は、接合対象物を保持して接合位置に搬送する搬送手段を備え、接合対象物加熱手段は、接触部材となる搬送手段を加熱して当該搬送手段にて保持された接合対象物を加熱する、ことを特徴としており、さらには、搬送手段は、接合対象物を先端部で吸引保持する吸引ノズルを備えた、ことを特徴としている。また、接合対象物加熱手段は、例えば、接触部材に当接して当該接触部材を加熱する加熱手段であったり、接触部材に加熱ビームを照射して当該接触部材を加熱する接合対象物用加熱ビーム照射手段である。
【0025】
そして、上述した半田付け装置を、上記同様に、磁気ヘッドスライダをサスペンションに接合する際に用いることで、高品質なヘッドジンバルアセンブリ、さらには、磁気ディスクを製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、印加する熱量を抑制しつつ信頼性の高い半田付けを実現することができ、接合対象物に対する過度の加熱を抑制して接合対象物の損傷を防止することができる。従って、半田付けを行って製造する製品の品質の向上を図ることができる。さらには、半田付け時間を短縮することができ、製造コストの低減も図ることができる、という従来にない優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の半田付け装置及び半田付け方法は、予め接合対象物を加熱して接合パッドの温度を高く設定した状態で、半田付けを行うことに特徴を有する。以下、実施例では、サスペンションに磁気ヘッドスライダを半田付け接合して、ディスク装置に搭載するヘッドジンバルアセンブリを製造する場合を例に挙げて説明する。但し、本発明の半田付け装置や半田付け方法は、他の接合対象物を接合する場合に利用することも可能である。
【実施例1】
【0028】
本発明の第1の実施例を、図1乃至図10を参照して説明する。図1は、ディスク装置の構成を示す図であり、図2は、ヘッドジンバルアセンブリの構成を示す図である。図3乃至図4は、半田付け装置の構成を示す図であり、図5は、半田付け方法の手順を示すフローチャートである。図6乃至図10は、半田付けの様子を示す説明図である。
【0029】
[構成]
まず、本実施例における半田付け装置は、図1に示すようなディスク装置100に搭載されるヘッドジンバルアセンブリ1を製造するために用いられる。具体的には、図2に示すように、ヘッドジンバルアセンブリ1を構成するサスペンションを形成するフレキシャ12及びトレース13に、磁気ヘッドスライダ2を接合するために用いられる。ここで、ヘッドジンバルアセンブリ1の構成について、図2を参照して簡単に説明する。
【0030】
ヘッドジンバルアセンブリ1は、図示しないドライブアームに連結されるロードビーム11と、このロードビーム11に接合されるフレキシャ12と、このフレキシャ12上に一体的に形成されているトレース13と、を有するサスペンションを備えており、さらに、フレキシャ12に形成されているサスペンションタング部に搭載される磁気ヘッドスライダ2を備えている。そして、フレキシャ12に一体的に形成されたトレース13は、ポリイミド層に複数の信号線が形成されたフレキシブルプリント基板であり、磁気ヘッドスライダ2が搭載される一端側に、信号線に接続された接続端子となる6つの接合パッド14が形成されている。なお、このトレース13に形成された接合パッド14を、以下ではサスペンション側パッド14と呼ぶ。また、磁気ヘッドスライダ2は、一端側にディスク上に対してデータの記録再生を行う磁気ヘッド素子21を備えており、この磁気ヘッド素子21の端面に、当該磁気ヘッド素子21の入出力端子となる6つの接合パッド22が形成されている。なお、この磁気ヘッド素子21(磁気ヘッドスライダ2)に形成された接合パッド22を、以下ではスライダ側パッド22と呼ぶ。
【0031】
そして、上述したヘッドジンバルアセンブリ1を構成する磁気ヘッドスライダ2と、トレース13及びフレキシャ12が一体的となったサスペンションと、が本実施例における半田付け対象物、つまり、接合対象物となる。具体的には、磁気ヘッドスライダ2の磁気ヘッド素子部21に形成されたスライダ側パッド22と、トレース13上に形成されたサスペンション側パッド13と、が半田付けされる接合箇所となる。
【0032】
次に、上述した接合対象となる磁気ヘッドスライダ2をトレース13(フレキシャ12)に半田接合して、ヘッドジンバルアッセンブリ1を製造する際に用いられる本実施例における半田付け装置1の構成を図3に示す。
【0033】
図3に示すように、半田付け装置は、トレース13が一体化されたサスペンションを構成するフレキシャ12を支持する支持台W(接合対象物配置手段)を有する。そして、このフレキシャ12上に接合される磁気ヘッドスライダ2を先端部分(図3の下端側)で保持し、フレキシャ12上に搬送して接合位置に配置する搬送ノズル4(接合対象物配置手段、搬送手段)を備えている。なお、搬送ノズル4には、駆動装置41(接合対象物配置手段、搬送手段)が連結されており、かかる駆動装置41にてその位置が駆動制御されることで、先端部分に保持している磁気ヘッドスライダ2を搬送することができる。また、搬送ノズル4(吸引ノズル)には吸引装置42が接続され、当該搬送ノズル4の先端部分は略筒状に形成されており、先端側(下端側)から内部側(上方)に向かって空気を吸引することで、吸引力が発生している。この吸引力にて磁気ヘッドスライダ2を上方に吸い上げて、当該磁気ヘッドスライダ2を搬送ノズル4の先端部分に保持している。
【0034】
また、半田付け装置は、半田接合箇所において半田3を加熱するレーザビーム(加熱ビーム)が照射される半田付け用レーザノズル6と、この半田付け用レーザノズル6からレーザビームを出力する半田付け用レーザ照射装置61と、を備えている(半田加熱手段)。そして、この半田付け用レーザノズル6は、その先端部で吸引により半田ボール3を保持可能な構成となっている。従って、ノズル6先端部に半田ボール3を保持した状態で、スライダ側パッド22とサスペンション側パッドとの間である半田接合箇所に半田ボール3を配置して、当該半田ボール3にレーザビームを照射することが可能である。なお、半田ボール3は、別の装置にて接合箇所に配置されてもよい。また、接合に用いられる半田はボール状であることに限定されない。例えば、ペースト状の半田が半田付け用レーザノズル6から吐出されて接合箇所に供給されてもよい。
【0035】
さらに、本実施例では、ヒート用レーザノズル5と、このヒート用レーザノズル5からレーザビームを出力するヒート用レーザ照射装置51と、を備えている(接合対象物加熱手段、接合対象物用加熱ビーム照射手段)。このヒート用レーザノズル5及びヒート用レーザ照射装置51は、上記半田付け用レーザノズル6及び半田付け用レーザ照射装置61とは異なる別の装置である。そして、符号5のヒート用レーザノズル5は、磁気ヘッドスライダ2を搬送する搬送ノズル4にレーザビームL1(加熱ビーム)を照射可能な位置に配置されており、当該搬送ノズル4を加熱するよう作動する。これにより、搬送ノズル4の先端部に保持されている磁気ヘッドスライダ2には、レーザビームL1にて加熱された搬送ノズル4からの熱が伝達される。つまり、搬送ノズル4の先端部は磁気ヘッドスライダ2に接触されているため、この搬送ノズル4(接触部材)の接触部分から磁気ヘッドスライダ2に熱が伝達される。
【0036】
また、半田付け装置は、装置全体の動作、つまり、上述した駆動装置41、吸引装置42、ヒート用レーザ照射装置51、半田付け用レーザ照射装置61の動作を制御する制御装置7を備えている。この制御装置7は、演算部や記憶部を有するコンピュータにて構成されており、制御装置7の演算部には、所定のプログラムが組み込まれることにより、図4に示すように、スライダ搬送制御部71、スライダ加熱制御部72、半田付けレーザ制御部73が構築されている。
【0037】
そして、スライダ搬送制御部71は、駆動装置41及び吸引装置42の動作を制御して、磁気ヘッドスライダ2を半田接合位置に搬送制御する。具体的には、まず、吸引装置42を制御して搬送ノズル4に吸引力を付勢し、先端部に磁気ヘッドスライダ2を保持し、この状態で駆動装置41を制御して搬送ノズル4を移動させ、磁気ヘッドスライダ2をフレキシャ12のタング部上に搬送する。
【0038】
また、スライダ加熱制御部72は、ヒート用レーザ照射装置51の動作を制御して、上述したように磁気ヘッドスライダ2がフレキシャ12上に搬送された後に、当該磁気ヘッドスライダ2を保持している搬送ノズル4に対してヒート用レーザノズル5からレーザビームを照射する。このとき、ヒート用レーザノズル5から出力するレーザビームのレーザ出力値や出力時間は予め設定されて制御装置7内に記憶されており、この値に基づいてスライダ加熱制御部72はレーザビームを出力制御する。なお、設定されているレーザ出力値や出力時間は、予め実験や理論式などから求められたヒート用レーザノズル5の出力と搬送ノズル4の加熱温度との関係に基づいて設定されている。例えば、磁気ヘッドスライダ2に損傷が生じない70度から150度の範囲(一例として100度)に搬送ノズル4を加熱することができるようなレーザ出力値及び出力時間が設定されている。つまり、この場合には、磁気ヘッドスライダ2である接合対象物に損傷を与えてしまう温度を超えないで加熱するよう、ヒート用レーザノズル5の出力が制御される。
【0039】
また、半田付けレーザ制御部73は、半田付け用レーザ照射装置61の動作を制御して、半田付け用レーザノズル6から先端に保持している半田ボール3に対してレーザビームを照射する。これにより、半田ボール3が溶融し、各パッド22,14間が半田付けされる。このとき、半田付け用のレーザビームの照射タイミングとしては、磁気ヘッドスライダ2がフレキシャ12上に搬送ノズル4にて搬送され、この搬送ノズル4が上述したようにヒート用レーザノズル5にて設定された時間だけ加熱された後に、半田付けが開始されるよう制御される。そして、半田付け用レーザノズル6からは、予め設定された強度及び時間だけ、半田ボール3に対してレーザビームL2が照射される。なお、半田付けレーザノズル6から出力されるレーザビームの強度や時間は、半田ボール3が十分に溶融すると共に、過度にフレキシャ12及びトレース13を加熱しない程度の熱量を印加するよう設定されている。そして、その値は、例えば、予め実験などにより定められている。従って、本実施例では、半田ボール3に対して照射するレーザビームのエネルギー量は従来例によりも少なく、例えば、図10を参照して後述するように、従来例よりも約半分のエネルギー量で半田付けが可能となる。
【0040】
なお、半田付けレーザ制御部73は、図示しない駆動装置や吸引装置の動作を制御して、半田付け用レーザノズル6の位置の駆動制御、及び、半田付け用レーザノズル6の先端部への半田ボール3の吸引保持制御なども行う。
【0041】
ここで、スライダ加熱制御部72は、上述した半田付けレーザ制御部73にて半田付け用のレーザビームが照射され始める前だけでなく、半田ボール3にレーザビームが照射され半田付けが行われている最中にも平行して、ヒート用レーザノズル5から搬送ノズル4にレーザビームL1を照射して、間接的に磁気ヘッドスライダ2を加熱してもよい。そして、磁気ヘッドスライダ2の加熱は、半田付け開始前だけであってもよく、あるいは、半田付け用のレーザビームの照射と平行してのみ行ってもよい。
【0042】
[動作]
次に、上述した構成の半田付け装置の動作、つまり、本発明における半田付け方法の動作を、図5のフローチャート、図6乃至図9の半田付け時の様子を示す図、さらには、図10のエネルギー測定データを参照して説明する。
【0043】
まず、従来で説明した図17(a)に示すように、搬送ノズル4の先端部に磁気ヘッドスライダ2が吸引保持されて、フレキシャ12上に搬送される(ステップS1、接合対象物配置工程、接合対象物搬送工程)。このとき、磁気ヘッドスライダ2をフレキシャ12のタング部上に載置し、磁気ヘッドスライダ2のスライダ側パッド22とフレキシャ12上のトレース13に形成されたサスペンション側パッド14とが、ほぼ直角に位置するよう配置させる。
【0044】
続いて、図6に示すように、ヒート用レーザノズル5にて搬送ノズル4にレーザビームL1を照射する(ステップS2、接合対象物加熱工程)。すると、図6の矢印に示すように、ヒート用レーザノズル5から出力されたレーザビームL1によって搬送ノズル4が加熱される。このとき、例えば、所定の出力値及び所定時間だけ照射するよう制御される。
【0045】
すると、加熱された搬送ノズル4の熱は、図7の矢印に示すように、当該搬送ノズル4の先端部から接触している磁気ヘッドスライダ2に伝達される。すると、磁気ヘッドスライダ2は、予め予定した温度、例えば、100度に加熱される。一方で、ヒート用レーザノズルからのレーザビームL1の照射時間等を制御することで、磁気ヘッドスライダ2やトレース13などに損傷が生じるほどの熱量を印加してしまうことを防ぐことができる。なお、ヒート用レーザノズル5を可動可能に装備して、磁気ヘッドスライダ2の搬送中に搬送ノズル4に対応させて可動させ、当該搬送中に搬送ノズル4にヒート用のレーザビームL1を照射してもよい。
【0046】
そして、半田付け用レーザノズル6の先端部に半田ボール3を吸引保持し、図17(b)に示すように、上記スライダ側パッド22とサスペンション側パッド14との間に半田ボール3が位置するよう半田付け用レーザノズル6を配置させる(ステップS3)。なお、この半田ボール3を各パッド22,14間に配置する動作は、上述したようにヒート用のレーザビームL1による磁気ヘッドスライダ2の加熱中、加熱後、あるいは加熱前、のいかなるタイミングで行われてもよい。例えば、磁気ヘッドスライダ2の搬送と同時に行われる。
【0047】
そして、その後、図7に示すように、半田付け用レーザノズル6からレーザビームL2が照射され(ステップS4)、半田ボール3が加熱される(半田付け工程)。このとき、予め設定された強度及び時間だけレーザビームL2が照射されるが、例えば、図10に示すように、図22(b)に示す従来例の印加エネルギー量と比較しても約半分程度のエネルギーのみが印加される。
【0048】
ここで、磁気ヘッドスライダ2には、搬送ノズル4が当接していると共に、磁気ヘッドスライダ2に対して吸引力が付勢されているが、これによって、磁気ヘッドスライダ2のスライダ側パッド22付近の放熱率が高く(図18(a)参照)、温度上昇率が低くなっている。しかし、上述したヒート用レーザノズル5からのレーザビームL1により間接的に磁気ヘッドスライダ2が加熱されているため、スライダ側パッド22の温度も高く設定されている。従って、半田付け用レーザノズル6にて半田ボール3に対して印加する熱量が少なくても、図8に示す半田3のように、信頼性の高い半田付けを実現することができる。そして、同時に、図7の矢印に示すように、磁気ヘッドスライダ2やトレース13に対する過度の加熱を抑制でき、従来例の図21符合Dに示すような損傷を防止することができる。さらには、半田付け時間の短縮を図ることができる。
【0049】
ここで、図9に、実際に半田付けを行ったヘッドジンバルアセンブリの半田付け部分の写真を示す。図9(a)はヘッドジンバルアセンブリ1の接合パッド部分を磁気ヘッドスライダ2側から見た写真であり、図9(b)はその裏面側(フレキシブルプリント基板のポリイミド層13側)から見た図である。そして、この写真は、図10に示すように、従来例よりもほぼ半分のエネルギーのみを印加して半田付けを行った例を示している。これらの写真に示すように、従来例とは異なりポリイミド層13などの損傷はなく、また、半田ボール3が完全に溶融して、信頼性の高い半田付けが実現されていることがわかる。
【0050】
また、本実施例では、磁気ヘッドスライダ2に接触する搬送ノズル4を介して間接的に加熱しているため、当該磁気ヘッドスライダ2に直接レーザビームを照射するなど熱源から加熱することなく、急激な加熱を抑制でき、かかる加熱による損傷を有効に抑制することができる。
【0051】
さらに、上記では、磁気ヘッドスライダ2を保持している搬送ノズル4は、吸引により磁気ヘッドスライダ2を保持しており、かかる吸引に応じて生じる空気の流れや当接している搬送ノズル4の影響で、磁気ヘッドスライダ2のスライダ側パッドの放熱率が高く、温度上昇率がより低くなる。従って、本実施例のようにヘッドジンバルアセンブリ1を製造する際には、温度が低くなると思われる磁気ヘッドスライダ2を加熱して半田付けを行うと望ましい。これにより、ヘッドジンバルアセンブリの損傷を抑制することができ、製品の高品質化を図ることができ、高信頼性が要求されるディスク装置の品質のさらなる向上、及び、低コスト化を図ることができる。
【0052】
なお、ヒート用レーザノズル5による搬送ノズル4の加熱は、磁気ヘッドスライダ2の搬送中、半田付け用レーザノズル6から半田ボール3にレーザビームが照射されて半田付けの最中、などに行われてもよい。例えば、磁気ヘッドスライダ2を搬送中から加熱しておくことで、半田付け箇所に搬送した直後に半田付けのためのレーザビームを照射することができ、半田付け作業の効率化及び半田付け時間の短縮化を図ることができる。
【0053】
また、上記では、ヒート用レーザノズル5から搬送ノズル4に一定の熱量を印加して磁気ヘッドスライダ2を加熱する場合を例示したが、搬送ノズル4に温度センサを取り付けて、当該搬送ノズル4の温度が常時一定の値(例えば100度)になるようスライダ加熱制御部72にてヒート用レーザノズル5によるレーザビームL1の照射を制御してもよい。
【0054】
さらに、上記では、磁気ヘッドスライダ2の磁気ヘッド素子側に形成されたスライダ側パッド22を半田付けする場合を例示して説明したが、磁気ヘッドスライダ2をサスペンション(フレキシャ12)に固定すべく、磁気ヘッド素子21とは反対側の端面に形成される接合パッドを、サスペンション(フレキシャ12)に半田付けする場合に利用してもよい。
【実施例2】
【0055】
次に、本発明の第2の実施例を、図11乃至図16を参照して説明する。図11乃至図12は、本実施例における半田付け装置の構成を示す図であり、図13は、半田付け方法の手順を示すフローチャートである。図14乃至図16は、半田付けの様子を示す説明図である。
【0056】
[構成]
まず、本実施例における半田付け装置は、上述した実施例1と同様に、ヘッドジンバルアセンブリ1を構成するサスペンションを形成するフレキシャ12及びトレース13に、磁気ヘッドスライダ2を接合するために用いられる。
【0057】
そして、図11に示すように、本実施例における半田付け装置は、支持台Wに載置されたトレース13が一体化されたサスペンションを構成するフレキシャ12のタング部に、磁気ヘッドスライダ2を搬送する搬送ノズル4と、この搬送ノズル4を駆動する駆動装置41と、搬送ノズル4の先端部に磁気ヘッドスライダ2を吸引保持するよう吸引力を付勢する吸引装置42と、半田接合箇所において半田3を加熱するレーザビームが照射される半田付け用レーザノズル6と、この半田付け用レーザノズル6からレーザビームを出力する半田付け用レーザ照射装置61と、を備えている。また、半田付け装置の動作を制御する制御装置9を備えており、この制御装置9には、所定のプログラムが組み込まれることで、上記駆動装置41や吸引装置42の動作を制御して磁気ヘッドスライダ2を半田付け位置に搬送制御するスライダ搬送制御部91と、半田付け用レーザ照射装置61の動作を制御して、半田付け用レーザノズル6から先端に保持している半田ボール3に対してレーザビームを照射制御する半田付けレーザ制御部93と、が構築されている。なお、これらの構成は、上述した実施例1における半田付け装置に装備された各構成と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0058】
さらに、本実施例では、図11に示すように、例えば発熱体にて形成されたヒータ8(接合対象物加熱手段、加熱手段)を、搬送ノズル4に当接して備えている。そして、これに伴い、制御装置9には、所定のプログラムが組み込まれることで、上記ヒータ8の加熱動作を制御するスライダ加熱制御部92が構築されている。このスライダ加熱制御部92は、予め制御装置9に記憶されたヒータ8による加熱出力値や加熱時間を設定する値に基づいてヒータ8を加熱制御する。なお、設定されている加熱出力値や出力時間は、予め実験や理論式などから求められたヒータ8の出力値及び過熱時間と搬送ノズル4の加熱温度との関係を表す値である。具体的には、磁気ヘッドスライダ2に損傷が生じない70度から150度の範囲(一例として100度)に搬送ノズル4を加熱することができるヒータ8の出力値及び加熱時間の値が設定されている。つまり、この場合には、磁気ヘッドスライダ2である接合対象物に損傷を与えてしまう温度を超えないで加熱するよう、ヒータ8の出力が制御される。
【0059】
また、スライダ加熱制御部92は、半田付けレーザ制御部93にて半田付け用のレーザビームが照射され始める前(例えば、搬送中)や、半田ボール3に半田付け用のレーザビームL1が照射され半田付けが行われている最中に、ヒータ8を発熱制御する。これにより、搬送ノズル4の先端部に保持されている磁気ヘッドスライダ2には、ヒータ8にて加熱された搬送ノズル4から熱が伝達され、当該磁気ヘッドスライダ2つまりスライダ側パッド22の温度が上昇する。
【0060】
[動作]
次に、上述した構成の半田付け装置の動作、つまり、本発明における半田付け方法の動作を、図13のフローチャート、図14乃至図16の半田付け時の様子を示す図を参照して説明する。
【0061】
まず、従来で説明した図17(a)に示すように、搬送ノズル4の先端部に磁気ヘッドスライダ2が吸引保持されて、フレキシャ12上に搬送される(ステップS11、接合対象物配置工程、接合対象物搬送工程)。このとき、磁気ヘッドスライダ2をフレキシャ12のタング部上に載置し、磁気ヘッドスライダ2のスライダ側パッド22とフレキシャ12上のトレース13に形成されたサスペンション側パッド14とが、ほぼ直角に位置するよう配置させる。
【0062】
続いて、あるいは、上述した磁気ヘッドスライダ2を搬送中に、ヒータ8を加熱させる。すると、図14の矢印に示すように、ヒータ8から搬送ノズル4に熱が伝達し、当該搬送のノズル4が加熱される(ステップS12、接合対象物加熱工程)。このとき、ヒータ8は、例えば、所定の出力値及び所定時間だけ発熱するよう制御される。すると、加熱された搬送ノズル4の熱は、図15の矢印に示すように、当該搬送ノズル4の先端部から接触している磁気ヘッドスライダ2に伝達される。これにより、磁気ヘッドスライダ2はほぼ予定した温度にまで加熱される。一方で、磁気ヘッドスライダ2やトレース13などに損傷が生じるほどの温度にまで加熱されることは防止される。
【0063】
そして、上述したように磁気ヘッドスライダ2の加熱中や加熱後などに、半田付け用レーザノズル6の先端部に半田ボール3を吸引保持し、図17(b)に示すように、上記スライダ側パッド22とサスペンション側パッド14との間に半田ボール3が位置するよう半田付け用レーザノズル6を配置させる(ステップS13)。ただし、この半田ボール3を各パッド22,14間に配置する動作は、少なくとも半田接合時までに実行されればよく、例えば、磁気ヘッドスライダ2の搬送と同時に行われてもよい。
【0064】
そして、その後、図15に示すように、半田付け用レーザノズル6からレーザビームL2が照射され(ステップS14)、半田ボール3が加熱される(半田付け工程)。このとき、予め設定された強度及び時間だけ半田付け用ノズル6から半田ボール3にレーザビームL2が照射されるが、実施例1にて説明した図10に示すように、図22(b)に示す従来例の印加エネルギー量と比較しても約半分程度のエネルギーのみが半田ボール3に印加される。
【0065】
ここで、磁気ヘッドスライダ2には、搬送ノズル4が当接していると共に、磁気ヘッドスライダ2に対して吸引力が付勢されているが、これによって、磁気ヘッドスライダ2のスライダ側パッド22付近の放熱率が高く(図18(a)参照)、温度上昇率が低くなっている。しかし、上述したヒータ8からの熱により間接的に磁気ヘッドスライダ2が加熱されているため、スライダ側パッド22の温度も高く設定されている。従って、半田付け用レーザノズル6にて半田ボール3に対して印加する熱量が少なくても、図16に示す半田3のように、信頼性の高い半田付けを実現することができる。そして、同時に、図15の矢印に示すように、磁気ヘッドスライダ2やトレース13に対する過度の加熱を抑制でき、従来例の図21符合Dに示すような損傷を防止することができる。さらには、半田付け時間の短縮を図ることができる。
【0066】
なお、上述した実施例では、レーザビームやヒータにて搬送ノズル4を加熱して、接合対象物である磁気ヘッドスライダ2を加熱する場合を例示したが、他の加熱装置を用いて、直接あるいは間接的に、磁気ヘッドスライダなどの接合対象物を加熱してもよい。また、上記では、磁気ヘッドスライダ2といった一方の接合対象物のみを加熱する場合を例示したが、他方の接合対象物(上記実施例ではサスペンション側)も所定の温度となるよう、同時に加熱してもよい。このとき、各接合対象物の温度上昇率の相違に応じて、異なる熱量を印加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明における半田付け装置及び方法は、磁気ヘッドスライダをサスペンションに半田付けする場合など、電子部品を半田付け場合に利用することができ、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ディスク装置の構成を示す図である。
【図2】図1に開示したディスク装置に搭載されるヘッドジンバルアセンブリの構成を示す図である。
【図3】実施例1における半田付け装置の全体的な構成を示す概略図である。
【図4】図3に開示した半田付け装置を構成する制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】実施例1における半田付け方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】実施例1における半田付け時の様子を示す説明図である。
【図7】実施例1における半田付け時の様子を示す説明図であり、図6の続きを示す。
【図8】実施例1における半田付け時の様子を示す説明図であり、図7の続きを示す。
【図9】半田付けされたヘッドジンバルアセンブリの様子を示す写真であり、図9(a)は磁気ヘッドスライダ側を示し、図9(b)はその裏面側を示す。
【図10】半田付け用レーザビームの照射エネルギーを示すデータである。
【図11】実施例2における半田付け装置の全体的な構成を示す概略図である。
【図12】図11に開示した半田付け装置を構成する制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図13】実施例2における半田付け方法の手順を示すフローチャートである。
【図14】実施例2における半田付け時の様子を示す説明図である。
【図15】実施例2における半田付け時の様子を示す説明図であり、図14の続きを示す。
【図16】実施例2における半田付け時の様子を示す説明図であり、図15の続きを示す。
【図17】従来例における半田付け方法による半田付け時の様子を示す説明図である。
【図18】従来例における半田付け方法による半田付け時の様子を示す説明図である。
【図19】従来例における半田付け方法による半田付け時の様子を示す説明図である。
【図20】従来例における半田付け方法にて半田が仮止めされたときのヘッドジンバルアセンブリの様子を示す写真であり、図20(a)は磁気ヘッドスライダ側を示し、図20(b)はその裏面側を示す。
【図21】従来例における半田付け方法にて半田付けされたヘッドジンバルアセンブリの様子を示す写真であり、図21(a)は磁気ヘッドスライダ側を示し、図21(b)はその裏面側を示す。
【図22】従来例における半田付け方法による半田付け用レーザビームの照射エネルギーを示すデータである。
【符号の説明】
【0069】
1 ヘッドジンバルアセンブリ
2 磁気ヘッドスライダ
3 半田ボール、半田
4 搬送ノズル
5 ヒート用レーザノズル
6 半田付け用レーザノズル
7,9 制御装置
8 ヒータ
11 ロードビーム
12 フレキシャ
13 トレース
14 サスペンション側パッド
21 磁気ヘッド素子
22 スライダ側パッド
41 駆動装置
42 吸引装置
51 ヒート用レーザ照射装置
61 半田付け用レーザ照射装置
71,91 スライダ搬送制御部
72,92 スライダ加熱制御部
73,93 半田付けレーザ制御部
100 ディスク装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各接合対象物にそれぞれ形成された各接合パッド間を半田にて接合する半田付け方法であって、
少なくとも一方の接合対象物を加熱し、
その後、あるいは、前記接合対象物の加熱を継続しつつ、半田に加熱ビームを照射して半田付けを行う、
ことを特徴とする半田付け方法。
【請求項2】
各接合対象物を接合位置に配置する接合対象物配置工程と、
前記各接合対象物にそれぞれ形成された各接合パッド間に半田を配置し、当該半田に加熱ビームを照射して半田付けを行う半田付け工程と、を有する半田付け方法であって、
前記半田付け工程の前、及び/又は、前記半田付け工程と平行して、少なくとも一方の前記接合対象物を加熱する接合対象物加熱工程を有する、
ことを特徴とする半田付け方法。
【請求項3】
前記接合対象物加熱工程は、前記半田付け工程における半田に対する加熱により接合パッド部分の温度上昇率の低いいずれか一方の前記接合対象物を加熱する、
ことを特徴とする請求項2記載の半田付け方法。
【請求項4】
前記接合対象物加熱工程は、前記接合対象物の温度が予め設定された温度を超えないよう加熱する、
ことを特徴とする請求項3記載の半田付け方法。
【請求項5】
前記接合対象物加熱工程は、前記接合対象物に接触している接触部材を加熱して当該接合対象物を加熱する、
ことを特徴とする請求項3又は4記載の半田付け方法。
【請求項6】
前記接合対象物加熱工程は、前記接触部材に当接する加熱手段を用いて当該接触部材を加熱する、
ことを特徴とする請求項5記載の半田付け方法。
【請求項7】
前記接合対象物加熱工程は、前記接触部材に加熱ビームを照射して当該接触部材を加熱する、
ことを特徴とする請求項5記載の半田付け方法。
【請求項8】
前記接合対象物配置工程は、前記接合対象物を接合位置に搬送する接合対象物搬送工程を有し、
前記接合対象物加熱工程は、前記接合対象物搬送工程にて前記接合対象物を搬送中に加熱する、
ことを特徴とする請求項3,4,5,6又は7記載の半田付け方法。
【請求項9】
前記接合対象物加熱工程にて加熱される一方の前記接合対象物は、磁気ヘッドスライダであり、この磁気ヘッドスライダが接合される他方の前記接合対象物は、ヘッドジンバルアセンブリを構成するサスペンションである、
ことを特徴とする請求項3,4,5,6,7又は8記載の半田付け方法。
【請求項10】
請求項9記載の半田付け方法にて前記サスペンションに前記磁気ヘッドスライダを半田付けして、ヘッドジンバルアセンブリを製造する、
ことを特徴とするヘッドジンバルアセンブリの製造方法。
【請求項11】
各接合対象物にそれぞれ形成された各接合パッド間を半田にて接合する際に用いる半田付け装置であって、
前記各接合パッド間に配置される半田に加熱ビームを照射して半田付けを行う半田加熱手段を備えると共に、
この半田加熱手段とは異なり、少なくとも一方の前記接合対象物を加熱する接合対象物加熱手段を備えた、
ことを特徴とする半田付け装置。
【請求項12】
各接合対象物を接合位置に配置する接合対象物配置手段と、
前記各接合対象物にそれぞれ形成された各接合パッド間に配置される半田に加熱ビームを照射して半田付け行う半田加熱手段と、を備え、
この半田加熱手段とは異なり、一方の前記接合対象物を加熱する接合対象物加熱手段を備えた、
ことを特徴とする半田付け装置。
【請求項13】
前記接合対象物加熱手段は、前記半田加熱手段が半田に加熱ビームを照射する前に、及び/又は、前記半田加熱手段にて半田に加熱ビームを照射中に、前記接合対象物を加熱する、
ことを特徴とする請求項12記載の半田付け装置。
【請求項14】
前記接合対象物加熱手段は、前記接合対象物の温度が予め設定された温度を超えないよう加熱制御する制御手段を備えた、
ことを特徴とする請求項13記載の半田付け装置。
【請求項15】
前記接合対象物加熱手段は、前記接合対象物に接触している接触部材を加熱して当該接合対象物を加熱する、
ことを特徴とする請求項13又は14記載の半田付け装置。
【請求項16】
前記接合対象物配置手段は、前記接合対象物を保持して接合位置に搬送する搬送手段を備え、
前記接合対象物加熱手段は、前記接触部材となる前記搬送手段を加熱して当該搬送手段にて保持された前記接合対象物を加熱する、
ことを特徴とする請求項15記載の半田付け装置。
【請求項17】
前記搬送手段は、前記接合対象物を先端部で吸引保持する吸引ノズルを備えた、
ことを特徴とする請求項16記載の半田付け装置。
【請求項18】
前記接合対象物加熱手段は、前記接触部材に当接して当該接触部材を加熱する加熱手段である、
ことを特徴とする請求項15,16又は17記載の半田付け装置。
【請求項19】
前記接合対象物加熱手段は、前記接触部材に加熱ビームを照射して当該接触部材を加熱する接合対象物用加熱ビーム照射手段である、
ことを特徴とする請求項15,16又は17記載の半田付け装置。
【請求項20】
前記接合対象物加熱手段にて加熱される一方の前記接合対象物は、磁気ヘッドスライダであり、この磁気ヘッドスライダが接合される他方の前記接合対象物は、ヘッドジンバルアセンブリを構成するサスペンションである、
ことを特徴とする請求項12,13,14,15,16,17,18又は19記載の半田付け装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図22】
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【図9】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−187056(P2008−187056A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20141(P2007−20141)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】