説明

半田付け装置

【課題】
溶融された半田に温度むらが生じないようにする。
【解決手段】
上室13と下室12とに区画され下室12から上室13に溶融された半田が噴流されるノズル2が立上げられた半田槽1を備えている。半田槽1には、半田槽1の上室13,下室12にそれぞれ連通した還流槽4が独立して複数槽が接続されている。各還流槽4と半田槽1の下室12との間には、連通を開閉する開閉弁5が配置されている。各還流槽4には、溶融された半田を半田槽1の下室12に押込む押込機構7が設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子類を基板に噴流式で半田付けする半田付け装置に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、溶融された半田をノズルから噴流させる手段として、羽根車等の回転動部材で半田をノズルに向けて流動させるものから、プランジャ,ピストン,フロート等の往復動部材で半田をノズルに向けて押込むようするものが多用されるようになってきている。往復動部材を備えた押込機構は、溶融された半田が貯溜されている半田槽の全体に往復動部材による押込力を伝達することで、半田の流動性を高め半田槽の隅部に半田の滞溜を生じさせることがないという利点がある。
【0003】
従来、押込機構を備えた半田付け装置としては、例えば、以下に記載のものが知られている。
【特許文献1】特許第2678147号公報 特許文献1には、上室と下室とに区画され下室から上室に溶融された半田が噴流されるノズルが立上げられた半田槽を備え、半田槽の上室,下室を区画する隔壁にシリンダ,ピストンからなる押込機構が設置された半田付け装置が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る半田付け装置では、押込機構のピストンの下降時に半田をノズルに向けて押込むが、押込機構のピストンの上昇時に半田のノズルへ向けた押込みが解除されて半田槽の内部での半田の流動性が弱まってしまうため、溶融された半田に温度むらが生じてしまうという問題点がある。また、ノズルが溶融された半田から常時突出して、ノズル周りでの半田の温度低下が著しいため、溶融された半田に温度むらが生じてしまうという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、溶融された半田に温度むらが生じることのない半田付け装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明に係る半田付け装置は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0007】
即ち、請求項1では、上室と下室とに区画され下室から上室に溶融された半田が噴流されるノズルが立上げられた半田槽を備えた半田付け装置において、半田槽には半田槽の上室,下室にそれぞれ連通した還流槽が独立して複数槽が接続され、各還流槽と半田槽の下室との間には連通を開閉する開閉弁が配置され、各還流槽には溶融された半田を半田槽の下室に押込む押込機構が設置されていることを特徴とする。
【0008】
この手段では、複数層の還流槽からノズル(半田槽)に対して半田が押込機構によって順次が押込まれるため、半田のノズルへ向けた押込みが解除されることなくなる。
【0009】
また、請求項2では、請求項1の半田付け装置において、押込機構は下部が開放され上部に通気開閉弁が設けられた中空構造に形成されて還流槽の内部を上下動するフロートを備えていることを特徴とする。
【0010】
この手段では、下動(下降)するフロートの通気開閉弁を閉鎖して中空構造に空気を溜め、上動(上昇)するフロートの通気開閉弁を開放して中空構造を大気に通気する。
【0011】
また、請求項3では、請求項2の半田付け装置において、還流槽は上室と下室とに区画され下室から上室に押込機構のフロートが遊嵌合するガイド筒が立上げられていることを特徴とする。
【0012】
この手段では、還流槽の半田が押込機構のフロートとガイド筒の間を通りガイド筒をオーバフローして半田槽に還流される。
【0013】
また、請求項4では、上室と下室とに区画され下室から上室に溶融された半田が噴流されるノズルが立上げられた半田槽を備えた半田付け装置において、半田槽の上室にはオーバフロー式の液面調整堰が設置され、液面調整堰は少なくともノズルの上端部を溶融された半田に沈漬させる状態とノズルの上端部を溶融された半田から突出させる状態とを選択的に調整可能であることを特徴とする。
【0014】
この手段では、半田付け作業時以外の待機時に液面調整堰の調整でノズルを溶融された半田に沈漬させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る請求項1の半田付け装置は、数層の還流槽からノズル(半田槽)に対して半田が押込機構によって順次が押込まれ、半田のノズルへ向けた押込みが解除されることなくなるため、半田槽の内部での半田の流動性が弱まることがなく、溶融された半田に温度むらが生じることがない効果がある。
【0016】
また、請求項2として、下動(下降)するフロートの通気開閉弁を閉鎖して中空構造に空気を溜め、上動(上昇)するフロートの通気開閉弁を開放して中空構造を大気に通気するため、小さな駆動力で押込機構を動作させることができるとともに、押込機構による半田からの吸熱が防止される効果がある。
【0017】
また、請求項3として、還流槽の半田が押込機構のフロートとガイド筒の間を通りガイド筒をオーバフローして半田槽に還流されるため、半田槽,還流槽の半田を無用に揺動(波打)させることがない効果がある。
【0018】
本発明に係る請求項4の半田付け装置は、半田付け作業時以外の待機時に液面調整堰の調整でノズルを溶融された半田に沈漬させることができるため、ノズル周りでの半田の温度低下が防止されて、溶融された半田に温度むらが生じることがない効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る半田付け装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
この形態では、比較的小規模構成に好適なものが示されている。
【0021】
この形態は、半田槽1,ノズル2,液面調整堰3,還流槽4,開閉弁5,ガイド筒6,押込機構7の各部で構成されている。
【0022】
半田槽1は、溶融された半田を貯溜するもので、隔壁11によって相対的に大きな下室12と相対的に小さな上室13とに区画されている。この半田槽1は、図示しないヒータ,温度センサ,コントローラが付設されて、半田を一定の温度の溶融状態に維持することができるようになっている。
【0023】
ノズル2は、半田槽1の下室12に貯溜されている溶融された半田を噴流させるもので、半田槽1の隔壁11に煙突形に固定され下室12から上室13に立上げられている。このノズル2は、上端部が半田槽1の上室13の上端縁よりも低く設定されている。
【0024】
液面調整堰3は、ノズル2から噴流された半田の半田槽1の上室13における液面Wを調整するもので、半田槽1の側壁に切欠された流出用溝31と、図示しないシリンダ等の駆動部によって流出用溝31に沿って上下動する堰板32とからなる。この液面調整堰3は、半田槽1の1面の側壁に2基が隣接して設置され、堰板32の上端部が上動限界でノズル2の上端部よりも少し高くなり下動限界でノズル2の上端部よりも少し低くなるように設定されている。
【0025】
還流槽4は、半田槽1の上室13から液面調整堰3を通過して流出した半田を貯溜するもので、隔壁41によって相対的に小さな下室42と相対的に大きな上室43とに区画されている。この還流槽4は、液面調整堰3に対応して半田槽1の1面の側壁に2室が接続されている。
【0026】
開閉弁5は、半田槽1の下室12と各還流槽4の下室42との連通を開閉するもので、半田槽1,還流槽4の側壁に開口れた弁口51と、図示しないシリンダ等の駆動部によって弁口51に沿って上下動する弁板52とからなる。
【0027】
ガイド筒6は、還流槽4の上室43に流入した半田をオーバーフロー式で下室42に流出させるもので、還流槽4の隔壁41に煙突形に固定され下室42から上室43に立上げられている。このガイド筒6は、上端部が半田槽1の隔壁11よりも低く設定されている。
【0028】
押込機構7は、還流槽4の上室43に貯溜されている半田を下室42(さらには、半田槽1の下室12やノズル2)に押込むもので、小さな駆動力で動作されるように下部が開放された中空構造に形成され図示しないシリンダ等の駆動部によって上下動するフロート71と、フロート71の上部に取付けられた通気開閉弁72とからなる。フロート71は、内側でガイド筒6との間に少しの間隙を介して遊嵌合し、外側で還流槽4の側壁との間に少しの間隙を介して遊嵌合するようになっている。なお、2室の還流槽4に対応した2基の押込機構7は、それぞれフロート71を逆に上下動させるように設定されている。
【0029】
この形態によると、前述の各部が図5に示すようなタイミングで動作される。なお、図5では、1つの液面調整堰3(堰板32),開閉弁5,押込機構7(フロート71)の群を「NO.1」で表示し、他の1つの液面調整堰3(堰板32),開閉弁5,押込機構7(フロート71)の群を「NO.2」で表示してある。
【0030】
素子類の基板への半田付け作業の前段階,中途段階での待機では、図1,図2に示すように、液面調整堰3の堰板32を上動させておく。
【0031】
図1,図2の状態では、ノズル2から噴流した溶融した半田が相対的に大量に半田槽1の上室13に貯溜され、半田の液面Wがノズル2の上端部を超えることになる。このため、ノズル2が溶融された半田の内部に沈漬されて大気との接触が回避されることになり、ノズル2周りでの半田の温度低下が防止される。従って、溶融された半田に温度むらが生じることがない。
【0032】
なお、半田槽1の上室13に貯溜された半田は、液面調整堰3の堰板32をオーバフローして還流槽4の上室43に流入する。このとき、半田の流入先は、主に押込機構7のフロート71が上動して広く開放された側の還流槽4の上室43となる。また、この還流槽4に配置されている開閉弁5は、閉鎖されている。
【0033】
還流槽4の上室43に貯溜された半田は、下動してきた押込機構7のフロート71によってガイド筒6を介して還流槽4の下室42に押込まれる。このとき、押込機構7の通気開閉弁72が閉鎖されて、フロート71の容積の全体で半田を加圧して還流槽4の下室42に押込む。ただし、半田が押込機構7のフロート71とガイド筒6との小さな間隙を通りガイド筒6をオーバフローして還流槽4の下室42に押込まれるため、還流槽4の下室42(半田槽1の下室12)に貯溜される半田を無用に揺動(波打)させることがない。
【0034】
還流槽4の下室42に貯溜された半田は、押込機構7のフロート71の下動に伴って開放された開閉弁5から半田槽1の下室12に押込まれ、続いてノズル2に押込まれてノズル2から噴流することになる。
【0035】
従って、溶融された半田は、半田槽1,還流槽4の内部を無用に揺動(波打)することなく円滑に継続的に流動して、半田槽1,還流槽4の隅部等で滞溜することがない。このため、溶融された半田に温度むらが生じることがない。
【0036】
なお、押込機構7のフロート71が下動限界に至ると、逆に上動することになる。このとき、押込機構7の通気開閉弁72が開放されてフロート71の中空構造が大気に開放される。このため、押込機構7のフロート71の中空構造の容積分の流通抵抗が解消されて、半田槽1の上室13への半田の流入が円滑になる。
【0037】
素子類の基板への半田付け作業では、図3,図4に示すように、液面調整堰3の堰板32の一方を選択的に下動させておく。
【0038】
図3,図4の状態では、ノズル2から噴流した溶融した半田が相対的に小量に半田槽1の上室13に貯溜され、半田の液面Wがノズル2の上端部よりも低くなる。このため、ノズル2に基板Pを対面させた半田付け作業が可能になる。
【0039】
半田付け作業における半田の流動形態は、原則的に前述の待機の場合と同様である。無用に揺動(波打)することなく円滑に継続的に流動する半田は、ノズル2からの噴流を安定化させることになる。従って、溶融された半田に温度むらが生じることがないのみならず、半田付け工作の精度が高くなることになる。
【0040】
以上、図示した形態の外に、液面調整堰3等の群を隣接させずに半田槽1の複数の面側壁に設けることも可能である。
【0041】
さらに、液面調整堰3等の群を3群以上設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る半田付け装置を実施するための最良の形態の待機の斜視図であり、(A),(B)に連続する異なる動作状態が示されている。
【図2】図1の拡大縦断面図である。
【図3】本発明に係る半田付け装置を実施するための最良の形態の半田付け作業の斜視図であり、(A),(B)に連続する異なる動作状態が示されている。
【図4】図3の拡大縦断面図である。
【図5】図1,図2の動作における各部の動作のタイミングを示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 半田槽
12 下室
13 上室
2 ノズル
3 液面調整堰
4 還流槽
42 下室
43 上室
5 開閉弁
6 ガイド筒
7 押込機構
71 フロート
72 通気開閉弁
P 基板
W 液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上室と下室とに区画され下室から上室に溶融された半田が噴流されるノズルが立上げられた半田槽を備えた半田付け装置において、半田槽には半田槽の上室,下室にそれぞれ連通した還流槽が独立して複数槽が接続され、各還流槽と半田槽の下室との間には連通を開閉する開閉弁が配置され、各還流槽には溶融された半田を半田槽の下室に押込む押込機構が設置されていることを特徴とする半田付け装置。
【請求項2】
請求項1の半田付け装置において、押込機構は下部が開放され上部に通気開閉弁が設けられた中空構造に形成されて還流槽の内部を上下動するフロートを備えていることを特徴とする半田付け装置。
【請求項3】
請求項2の半田付け装置において、還流槽は上室と下室とに区画され下室から上室に押込機構のフロートが遊嵌合するガイド筒が立上げられていることを特徴とする半田付け装置。
【請求項4】
上室と下室とに区画され下室から上室に溶融された半田が噴流されるノズルが立上げられた半田槽を備えた半田付け装置において、半田槽の上室にはオーバフロー式の液面調整堰が設置され、液面調整堰は少なくともノズルの上端部を溶融された半田に沈漬させる状態とノズルの上端部を溶融された半田から突出させる状態とを選択的に調整可能であることを特徴とする半田付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−68809(P2006−68809A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259062(P2004−259062)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(392002929)株式会社弘輝テック (8)
【Fターム(参考)】