説明

半硬化状シリコーン樹脂シート

【課題】耐光性と耐熱性に優れ、かつ、光半導体素子の封止加工が可能で取り扱い性に優れる半硬化状態を有するシリコーン樹脂シート、該シートの製造方法、該シートを硬化させた樹脂硬化物、ならびに該シートを含む光半導体素子封止材料、及び該封止材料により封止されている光半導体装置を提供すること。
【解決手段】縮合反応が可能な置換基を有するケイ素化合物、及び付加反応が可能な置換基を有するケイ素化合物を含有するシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られる、半硬化状のシリコーン樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半硬化状のシリコーン樹脂シートに関する。さらに詳しくは、耐光性と耐熱性に優れ、かつ、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を有するシリコーン樹脂シート、該シートの製造方法、該シートを硬化させた樹脂硬化物、ならびに該シートを含む光半導体素子封止材料、及び該封止材料により封止されている光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般照明への応用が検討されている高出力白色LED装置には、耐光性と耐熱性に優れた封止材料が求められており、近年、いわゆる「付加硬化型シリコーン」が多用されている。
【0003】
この付加硬化型シリコーンは、主鎖にビニル基を有するシリコーン誘導体と、主鎖にSiH基を有するシリコーン誘導体を主成分とする混合物を、白金触媒の存在下で熱硬化させることにより得られるものであり、例えば、特許文献1では、組成物にオルガノポリシロキサンを導入して、組成物中のケイ素に結合する水素原子とアルケニル基のモル比を特定の範囲に設定することによって、透明性及び絶縁特性に優れる硬化物が得られる樹脂用組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2では、1分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2個のアルケニル基を有するシリコーンレジンと、1分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を有するオルガノハイドロジェンシラン及び/又はオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有する樹脂用組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3では、SiH基を有するシリコーン樹脂成分として、直鎖状で、ケイ素原子結合水素原子(Si−H基)を分子鎖途中に有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、直鎖状で、Si−H基を分子鎖両末端に有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンとを特定量で併用することにより、優れた強度を備えた硬化物を与える組成物が開示されている。
【0006】
一方、付加硬化型シリコーン樹脂は、通常、活性の高い白金触媒を用いるために、一度、硬化反応が始まると途中で反応を停止させることが極めて難しく、半硬化状態(Bステージ)を形成することは困難である。そこで、白金触媒の触媒活性を低下させるために、反応抑制剤として、リン、窒素、硫黄化合物やアセチレン類を添加することが有効であることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
また、白色LED装置は、一般的に、近紫外あるいは青色LEDとそれら光源の波長により励起されて発光する蛍光体とを組み合わせることにより白色を発光する。例えば、特許文献5のように、LEDを蛍光材料を含有する樹脂で封止するタイプや、特許文献6のように、LEDを透明樹脂で封止後、蛍光材料を含有する樹脂を噴霧、塗布するタイプがある。さらに、特許文献7では、発光輝度の向上、発光色ムラの低減の観点から、蛍光材料を均一に分布したシート状の樹脂層を透光性樹脂層の上に設けた装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−198930号公報
【特許文献2】特開2004−186168号公報
【特許文献3】特開2008−150437号公報
【特許文献4】特開平6−118254号公報
【特許文献5】特開平7−99345号公報
【特許文献6】特開平10−200165号公報
【特許文献7】特開2004−343149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の付加硬化型シリコーンは、耐久性に優れるものの、硬化反応させる前は粘性を有する液体からなるものであるため、取り扱いが煩雑となり、さらに、周囲の環境によって粘度が変化する場合があるなど、依然満足できるものではない。
【0010】
また、反応抑制剤として知られている化合物は、樹脂の耐久性に影響を及ぼすことから、さらなる反応制御の方法が要求される。
【0011】
本発明の課題は、耐光性と耐熱性に優れ、かつ、光半導体素子の封止加工が可能で取り扱い性に優れる半硬化状態を有するシリコーン樹脂シート、該シートの製造方法、該シートを硬化させた樹脂硬化物、ならびに該シートを含む光半導体素子封止材料、及び該封止材料により封止されている光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
〔1〕 縮合反応が可能な置換基を有するケイ素化合物、及び付加反応が可能な置換基を有するケイ素化合物を含有するシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られる、半硬化状のシリコーン樹脂シート、
〔2〕 シリコーン樹脂用組成物が、さらに、蛍光体無機粉末を含有してなる、前記〔1〕記載のシリコーン樹脂シート、
〔3〕 シリコーン樹脂用組成物が、さらに、微粒子を含有してなる、前記〔2〕記載のシリコーン樹脂シート、
〔4〕 縮合反応が可能な置換基を有するケイ素化合物、及び付加反応が可能な置換基を有するケイ素化合物を含有するシリコーン樹脂用組成物を40〜120℃で加熱する工程を含む、半硬化状のシリコーン樹脂シートの製造方法、
〔5〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載のシリコーン樹脂シートを完全硬化させてなる、シリコーン樹脂硬化物、
〔6〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載のシリコーン樹脂シートを含んでなる光半導体素子封止材料、
〔7〕 前記〔4〕記載の光半導体素子封止材料を用いて光半導体素子を封止してなる、光半導体装置
〔8〕 前記〔2〕又は〔3〕記載のシリコーン樹脂シートを完全硬化させてなるシリコーン樹脂硬化物層に、前記〔1〕記載の半硬化状のシリコーン樹脂シートが積層されてなるシリコーン樹脂シート、ならびに
〔9〕 半硬化状のシリコーン樹脂シートが光半導体素子を封止するように、前記〔8〕記載のシリコーン樹脂シートを用いて封止してなる、光半導体装置
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシリコーン樹脂シートは、耐光性と耐熱性に優れ、かつ、半硬化状態であるために光半導体素子の封止加工を簡便に行うことができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシリコーン樹脂シートは、縮合反応が可能な置換基を有するケイ素化合物、及び付加反応が可能な置換基を有するケイ素化合物を含有するシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られ、シリコーン樹脂が半硬化状態であることに大きな特徴を有する。
【0015】
一般的なエポキシ樹脂等の半硬化状態(以下、Bステージともいう)は、通常、熱硬化条件を制御することによって達成される。具体的には、例えば、80℃で加熱してモノマーの架橋反応を一部進行させることにより、Bステージのペレットが調製される。そして、得られたペレットは、所望の成型加工を施した後に、150℃で加熱して完全に硬化させる。一方、付加硬化型シリコーン樹脂は、主鎖にビニル基を有するシリコーン誘導体と、主鎖にSiH基を有するシリコーン誘導体とをヒドロシリル化反応させて得られるが、通常、活性の高い白金触媒を用いるために、一度、硬化反応が始まると途中で反応を停止させることが極めて難しく、Bステージを形成することは困難である。反応抑制剤によって反応を制御する方法も知られているが、本発明においては、Aステージ(未硬化状態)からBステージ(半硬化状態)への硬化(一段階目の硬化)と、Bステージ(半硬化状態)からCステージ(全硬化状態)への硬化(二段階目の硬化)を別々の反応、即ち、一段階目の硬化を縮合反応、二段階目の硬化を付加反応によって行うことにより、両反応の反応温度条件が異なることを利用して反応を制御して、それぞれの硬化を段階的に進めて、一段階目の硬化が終了した半硬化状態の樹脂シートを得ることができる。さらに、二段階目の硬化反応が自然要因ではなく外的要因によって進行するものであるので、一段階目の硬化が終了した時点の状態、即ち、半硬化状態を維持することが可能となる。またさらに、各反応に関与する官能基の密度を制御することによって、半硬化物及び全硬化物の粘弾性、強靭性、タック等の物性を制御することが可能となる。なお、本明細書において、半硬化物、即ち、半硬化状態(Bステージ)の物とは、溶剤に可溶なAステージと、完全硬化したCステージの間の状態であって、硬化、ゲル化が若干進行し、溶剤に膨潤するが完全に溶解せず、加熱によって軟化するが溶融しない状態である物のことを意味し、全硬化物(完全硬化物)とは、完全に硬化、ゲル化が進行した状態である物のことを意味する。
【0016】
また、特許文献5、6、7を参酌することにより、蛍光体材料を均一に分散させたシート状の樹脂層を調製することができる。一般的に、蛍光体材料は比重が重いため、また、分散媒の樹脂への親和性が異なるため、樹脂中で沈降しやすく完全に均一な分布状態を形成することは困難であり、結果的に、蛍光体の分布ムラが生じて発光色ムラが発生するという課題がある。しかし、本発明における樹脂用組成物は、粒子の分散媒として適した粘度を有するものであり、かつ蛍光体粒子との親和性が良いために、蛍光体材料が良好に分散し、蛍光体の分布ムラが抑制されて、発光色ムラが低減される。
【0017】
またさらに、一般的な樹脂シートは弾性率が低いと、温度サイクル試験後には、樹脂の熱膨張、収縮による、はがれなどの不具合が生じる場合がある。そこで、樹脂中に微粒子を含有させることができるが、樹脂中での分布が十分ではないため、弾性率向上効果は満足できるものではない。しかし、本発明における樹脂用組成物は微粒子との親和性が良いために、微粒子が良好に分散し、シート弾性率が高くなり、シートの品質が向上して信頼性が高まる。
【0018】
本発明のシリコーン樹脂シートは、縮合反応が可能な置換基を有するケイ素化合物、及び付加反応が可能な置換基を有するケイ素化合物を含有するシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られる。
【0019】
縮合反応が可能な置換基を有するケイ素化合物(以下、縮合反応系モノマーともいう)としては、該置換基を有するものであれば特に限定はない。
【0020】
縮合反応が可能な置換基としては、例えば、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基、ハロゲン原子等が例示され、好ましくは水酸基、アルコキシ基が挙げられる。1分子中に含有される置換基の数に特に限定はない。
【0021】
かかる化合物としては、例えば、式(I):
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、Rは1価の炭化水素基を示し、nは1以上の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表される両末端シラノール型シリコーンオイルが好ましい。
【0024】
式(I)におけるRは、1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製のしやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基が好ましい。なお、式(I)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0025】
式(I)中のnは、1以上の整数を示すが、安定性や取り扱い性の観点から、好ましくは1〜10000、より好ましくは1〜1000の整数である。
【0026】
かかる式(I)で表される化合物としては、両末端シラノール型ポリジメチルシロキサン、両末端シラノール型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端シラノール型ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが全てメチル基、nが1〜1000の整数である化合物が好ましい。
【0027】
式(I)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0028】
式(I)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。なお、本明細書において、シリコーン誘導体の分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0029】
縮合反応系モノマーにおける式(I)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0030】
縮合反応系モノマーの含有量は、組成物中、1〜99重量%が好ましく、50〜99重量%がより好ましく、80〜99重量%がさらに好ましい。
【0031】
付加反応が可能な置換基を有するケイ素化合物(以下、付加反応系モノマーともいう)としては、該置換基を有するものであれば特に限定はない。
【0032】
付加反応が可能な置換基としては、例えば、アルケニル基、水素原子、アルキニル基、カルボニル基、チオール基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、スルフィド基等が例示され、好ましくは水素原子、アルケニル基が挙げられる。1分子中に含有される置換基の数に特に限定はない。
【0033】
かかる化合物としては、例えば、式(III):
【0034】
【化2】

【0035】
(式中、A、B及びCは構成単位であり、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位を示し、Rは1価の炭化水素基、aは0又は1以上の整数、bは2以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、及び式(IV):
【0036】
【化3】

【0037】
(式中、Rは1価の炭化水素基、cは0又は1以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種のオルガノハイドロジェンシロキサンが好ましい。なお、本明細書において、オルガノハイドロジェンシロキサンとは、オルガノハイドロジェンジシロキサンやオルガノハイドロジェンポリシロキサン等、低分子量の化合物から高分子量の化合物まで全ての化合物の総称を意味する。
【0038】
式(III)で表わされる化合物は、構成単位A、B及びCによって構成され、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位であり、水素が繰り返し単位に含まれている化合物である。
【0039】
式(III)におけるR、即ち、構成単位AにおけるR、構成単位BにおけるR、及び構成単位CにおけるRは、いずれも1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。なお、式(III)において、全てのRは同一でも異なっていてもよく、構成単位に関係なく、それぞれ独立して上記炭化水素基を示す。
【0040】
構成単位Aは末端単位であり、式(III)中に2個含まれる。
【0041】
構成単位Bの繰り返し単位数、即ち、式(III)中のaは、0又は1以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは1〜1000、より好ましくは1〜100の整数である。
【0042】
構成単位Cの繰り返し単位数、即ち、式(III)中のbは、2以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは2〜10000、より好ましくは2〜1000の整数である。
【0043】
かかる式(III)で表される化合物としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン-CO-メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン-CO-メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがメチル基、aが0、bが2以上の整数である化合物、Rがエチル基、aが0、bが2以上の整数である化合物が好ましい。
【0044】
式(III)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。
【0045】
式(IV)で表される化合物は、水素を末端に有する化合物である。
【0046】
式(IV)におけるRは、1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。なお、式(IV)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0047】
式(IV)中のcは、0又は1以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは1〜10,000、より好ましくは1〜1,000の整数である。
【0048】
かかる式(IV)で表される化合物としては、両末端ヒドロシリル型ポリジメチルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが全てメチル基、cが1〜1,000の整数である化合物、Rが全てエチル基、cが1〜1,000の整数である化合物が好ましい。
【0049】
式(IV)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。
【0050】
式(III)及び式(IV)で表される化合物としては、市販品を用いても、公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0051】
付加反応系モノマーにおける、式(III)及び式(IV)で表される化合物の総含有量は、式(III)及び式(IV)で表される化合物の総含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0052】
付加反応系モノマーの含有量は、組成物中、0.1〜99重量%が好ましく、0.1〜90重量%がより好ましく、0.1〜80重量%がさらに好ましい。
【0053】
また、縮合反応系モノマーと付加反応系モノマーの重量比(縮合反応系モノマー/付加反応系モノマー)は、シート化した際の粘弾性の観点から、99.9/0.1〜1/99が好ましく、99.9/0.1〜50/50がより好ましく、99.9/0.1〜90/10がさらに好ましい。
【0054】
本発明におけるシリコーン樹脂用組成物は、上記モノマー以外に、縮合触媒、付加反応触媒を含有することが好ましい。
【0055】
縮合触媒としては、上記モノマーの縮合反応を触媒する化合物であれば特に限定はなく、塩酸、酢酸、ギ酸、硫酸等の酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の塩基;アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ等の金属系触媒が例示される。なかでも、相溶性及び熱分解性等の観点から、水酸化テトラメチルアンモニウムが好ましい。
【0056】
組成物における縮合触媒の含有量は、縮合反応系モノマー100モルに対して、0.1〜50モルが好ましく、1.0〜5モルがより好ましい。
【0057】
付加反応触媒としては、上記モノマーの付加反応を触媒する化合物であれば特に限定はないが、例えば、ヒドロシリル化触媒が例示される。
【0058】
ヒドロシリル化触媒は、ヒドロシラン化合物とアルケンとのヒドロシリル化反応を触媒する。具体的な化合物としては、白金黒、塩化白金、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体、白金−アセチルアセテート等の白金触媒;パラジウム触媒、ロジウム触媒等が例示される。なかでも、相溶性、透明性及び触媒活性の観点から、白金−カルボニル錯体が好ましい。
【0059】
組成物におけるヒドロシリル化触媒の含有量は、付加反応系モノマー100重量部に対して、1.0×10-4〜0.5重量部が好ましく、1.0×10-3〜0.05重量部がより好ましい。また、白金触媒を用いる場合、白金量換算で、付加反応系モノマー100重量部に対して、1.0×10-4〜1.0重量部が好ましく、1.0×10-4〜0.5重量部が好ましく、1.0×10-3〜0.05重量部がより好ましい。
【0060】
また、本発明のシリコーン樹脂シートは、上記縮合反応系モノマーと付加反応系モノマーを含有する組成物を縮合反応に適した条件で反応させることにより得られるため、縮合反応系モノマーが架橋構造を形成し、そこに付加反応系モノマーが分散している構造を有するものとなる。本発明においては、硬化反応を行って得られる硬化物の強度の観点から、本発明におけるシリコーン樹脂用組成物は、上記以外に、さらに、縮合反応系モノマーと付加反応系モノマーのいずれとも反応し得る化合物(以下、縮合/付加モノマーともいう)を含有することが好ましく、かかる組成物を用いることにより、全ての硬化反応を行うと、縮合反応系モノマーと付加反応系モノマーの各モノマー同士が架橋するのみではなく、縮合反応系モノマーと付加反応系モノマーとが架橋した構造を有する硬化物が得られることになる。
【0061】
縮合/付加モノマーは、1分子中に、縮合反応系モノマーと反応し得る官能基と付加反応系モノマーと反応し得る官能基とを有するものである。
【0062】
縮合反応系モノマーと反応し得る官能基としては、前述の縮合反応が可能な置換基と同様の置換基が挙げられ、1分子における該官能基の数に特に限定はない。
【0063】
付加反応系モノマーと反応し得る官能基としては、前述の付加反応が可能な置換基と同様の置換基が挙げられ、1分子における該官能基の数に特に限定はない。
【0064】
かかる化合物としては、例えば、式(II):
−Si(OR) (II)
(式中、Rは置換又は非置換のアルケニル基、Rは1価の炭化水素基を示し、但し、3個のRは同一でも異なっていてもよい)
で表されるアルケニル基含有トリアルコキシシランが好ましい。上記化合物では、アルケニル基が付加反応系モノマーと付加反応を、アルコキシ基が縮合反応系モノマーと縮合反応する。
【0065】
式(II)におけるRは、置換又は非置換のアルケニル基を示し、アルケニル基を骨格に含む有機基である。該有機基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等が例示される。なかでも、ヒドロシリル化反応に対する反応性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0066】
式(II)におけるRは、1価の炭化水素基、即ち、アルキル基であり、ORはアルコキシ基を示す。炭化水素基の炭素数は、反応性の観点から、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が例示される。なかでも、縮合反応に対する反応性の観点から、メチル基が好ましい。なお、式(II)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0067】
かかる式(II)で表される化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがビニル基、Rが全てメチル基である、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0068】
式(II)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0069】
縮合/付加モノマーにおける式(II)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0070】
縮合/付加モノマーの含有量は、組成物中、0.01〜90重量%が好ましく、0.01〜50重量%がより好ましく、0.01〜10重量%がさらに好ましい。
【0071】
また、縮合反応系モノマーとして式(I)で表わされる両末端シラノール型シリコーンオイルを、縮合/付加モノマーとして式(II)で表わされるアルケニル基含有トリアルコキシシランを用いた場合には、両者の重量比は、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基とアルケニル基含有トリアルコキシシランのSiOR基を過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比(SiOH/SiOR)が、20/1〜0.2/1が好ましく、10/1〜0.5/1がより好ましく、実質的に当量(1/1)であることがさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明のシリコーン樹脂シートが適度な強靭性を有し、0.2/1以上であれば、アルケニル基含有トリアルコキシシランが多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性が良好となる。
【0072】
またさらに、上記において、付加反応系モノマーとして式(III)又は式(IV)で表わされるオルガノハイドロジェンシロキサンを用いた場合には、アルケニル基含有トリアルコキシシランとオルガノハイドロジェンシロキサンの重量比は、アルケニル基含有トリアルコキシシランのSiR基とオルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基を過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比(SiR/SiH)が、20/1〜0.1/1が好ましく、10/1〜0.2/1がより好ましく、10/1〜0.5/1がさらに好ましく、実質的に当量(1/1)であることがさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明のシリコーン樹脂シートが適度な強靭性を有し、0.1/1以上であれば、オルガノハイドロジェンシロキサンが多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性及び強靭性が良好となる。
【0073】
また、本発明の別態様として、上記成分以外に、蛍光体無機粉末を含有するシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られるシリコーン樹脂シートを提供する。
【0074】
蛍光体無機粉末としては、特に限定はなく、当該分野で公知の蛍光体無機粉末、例えば、酸化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、窒化物蛍光体、硫化物蛍光体、珪酸塩化合物等が挙げられる。具体的には、青色を黄色に変換する機能を有する好適な市販品の蛍光体として、黄色蛍光体(α−サイアロン、平均粒子径20μm)、YAG、TAG等が例示され、赤色に変換する機能を有する好適な市販品の蛍光体として、CaAlSiN3等が例示される。
【0075】
蛍光体無機粉末の種類及び形成される樹脂シートの厚さによって混色程度が異なることから、蛍光体無機粉末の含有量は一概には決定されない。
【0076】
またさらに、本発明の別態様として、上記成分及び蛍光体無機粉末以外に、樹脂シートの弾性率を向上する観点から、微粒子を含有するシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られるシリコーン樹脂シートを提供する。
【0077】
微粒子としては、当該分野で公知の有機及び無機の微粒子であれば特に限定はないが、得られる樹脂シートの光透過性の観点から、透明な粒子が好ましく、樹脂との親和性及び屈折率の観点から、シリカがより好ましい。
【0078】
シリカの粒子サイズは、大きすぎると得られる樹脂シートがもろくなるため好ましくなく、逆に小さすぎると透過率が低下するため好ましくない。シリカの平均粒子径は、1〜50μmが好ましい。また、シート強度の観点から、最大粒径は70μm以下であれば特に限定されない。シリカの形状としては、球状、破砕状等が挙げられるが特に限定されない。本明細書において、無機粒子の平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0079】
組成物における微粒子の含有量は、形成される樹脂シートの厚さによって一概には決定できないが、弾性率向上効果の観点から5重量%以上が好ましく、光透過性の観点から80重量%以下が好ましい。従って、5〜80重量%が好ましい。
【0080】
なお、本発明におけるシリコーン樹脂用組成物は、上記以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0081】
本発明におけるシリコーン樹脂用組成物は、縮合反応が可能な置換基を有するケイ素化合物、及び付加反応が可能な置換基を有するケイ素化合物を含有するものであれば、特に限定なく調製できるが、縮合反応と付加反応の各反応機構に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させる観点から、縮合反応に関する成分を予め混合してから、付加反応に関する成分を混合して調製してもよい。
【0082】
縮合反応に関する成分の混合は、縮合反応系モノマーに、縮合触媒、縮合/付加モノマー、必要に応じて、有機溶媒などの添加剤を、好ましくは0〜60℃で5分〜24時間攪拌することにより行うことができる。なお、縮合/付加モノマーは、縮合反応、付加反応のいずれにも関する成分であるが、縮合反応の方が付加反応より低温で反応が開始されることから、縮合反応系モノマーと同時に混合されることが好ましい。
【0083】
有機溶媒としては、特に限定はないが、シリコーン誘導体と縮合触媒の相溶性を高める観点から、2−プロパノールが好ましい。
【0084】
有機溶媒の存在量は、縮合反応系モノマーと縮合/付加モノマーの総量100重量部に対して、3〜20重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。3重量部以上であると反応進行性が良好であり、20重量部以下であると組成物の硬化段階における発泡が低減される。
【0085】
なお、上記混合によって、縮合反応系モノマーと縮合/付加モノマーとの縮合反応の一部が開始されてもよく、縮合反応の進行度は、例えば、縮合/付加モノマーとしてアルケニル基含有トリアルコキシシランを用いた場合には、H−NMR測定によって該分子中のアルコキシ基に由来するピークの消失程度によって確認することができる。
【0086】
次に、付加反応に関する成分として、付加反応系モノマーに加えて、付加反応触媒を、上記の縮合反応に関する成分の混合物に混合する。本発明における組成物は、縮合反応と付加反応の2種類の反応を行って硬化物を得るが、縮合反応のみを行って半硬化状態のシートを調製することから、付加反応に関する成分は、上記の縮合反応に関する成分の混合物に、均一に混合されるのであれば、混合方法に特に限定はない。
【0087】
また、蛍光体無機粉末や微粒子を含有させる場合は、縮合反応に関する成分の混合物に付加反応に関する成分を混合後、それぞれ、混合することができる。蛍光体無機粉末と微粒子をいずれも混合する場合は、別々に混合しても、予め混合したものを混合してもよく、別々に混合する場合は、蛍光体無機粉末と微粒子の混合順序は特に限定されない。また、混合方法も均一に混合されるのであれば特に限定はない。
【0088】
かくして、シリコーン樹脂用組成物を調製することができるが、本発明においては、弾性率や保存安定性の観点から、該組成物は、
(1)両末端シラノール型シリコーンオイル
(2)アルケニル基含有トリアルコキシシラン
(3)オルガノハイドロジェンシロキサン
(4)縮合触媒、及び
(5)ヒドロシリル化触媒
を含有することが好ましい。
【0089】
得られた組成物の25℃における粘度は、好ましくは10〜100000mPa・s、より好ましくは1000〜50000mPa・sである。本明細書において、粘度は、B形粘度計を用いて測定することができる。
【0090】
本発明のシリコーン樹脂シートは、上記で得られたシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られる。
【0091】
具体的には、上記シリコーン樹脂用組成物を、例えば、表面を剥離処理した離型シート(例えば、ポリエチレン基材等の有機ポリマーフィルム、セラミクス、金属等)の上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工し、溶媒の除去が可能な程度の温度で加熱して乾燥することによりシート状に成形することができる。また、本発明におけるシリコーン樹脂用組成物が蛍光体無機粉末を含有する場合は、該組成物を前記と同様に塗工して得られるシートは波長変換シートとなる。よって、本発明のシリコーン樹脂シートとしては、蛍光体無機粉末を含有しないシート状の樹脂層(態様1)と、蛍光体無機粉末、必要によりさらに微粒子を含有する波長変換シート(態様2)が挙げられる。これらのシートは単独で、例えば、光半導体素子上に載置して用いることもできるが、態様1と態様2が直接又は間接的に積層されたシート、即ち、態様1と態様2が組み合わせられ一体化した複合シートとして用いることもできる。具体的には、例えば、態様1のシートが光半導体素子を包埋するように、光半導体素子上を態様1のシート及び態様2のシートがこの順で積層されるよう一体化されたものを用いることができ、光半導体素子からの光取り出し効率を高くすることができる。なお、本明細書において、「直接積層」しているシートとは、セパレーター、態様1のシート及び態様2のシートが直接積層されて形成されているシートのことを意味し、「間接的に積層」しているシートとは、セパレーターと態様1のシートの間、及び/又は態様1のシートと態様2のシートの間に、常法に従って他の層を介して積層されて形成されているシートのことを意味する。
【0092】
加熱温度は、使用される溶媒の種類によって一概には決定されないが、本発明においては、この加熱によって、溶媒の除去に加えて縮合反応を完結させて、半硬化状(Bステージ)のシリコーン樹脂シートを調製することから、40〜120℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。蛍光体無機粉末を含有していても同様である。加熱時間は、0.1〜60minが好ましく、0.1〜15minがより好ましい。なお、本明細書において、「反応の完結」とは、反応に関与する官能基の80%以上が反応した場合のことを意味し、縮合反応においては、例えば、前述のH−NMRによって残存アルコキシ基量を測定することによって確認することができる。
【0093】
また、本発明のシリコーン樹脂シートの好ましい製造方法としては、上記シリコーン樹脂用組成物を縮合反応させる工程を含む方法が挙げられる。
【0094】
前記工程の具体例としては、例えば、縮合反応が可能な置換基を有するケイ素化合物、及び付加反応が可能な置換基を有するケイ素化合物を含有するシリコーン樹脂用組成物を、好ましくは40〜120℃、より好ましくは60〜100℃の温度で攪拌しながら、反応させる方法等が挙げられる。
【0095】
シリコーン樹脂シートの厚さは、特に限定されないが、いずれの態様においても単独で用いる場合、光半導体封止性の観点から、100〜5000μmが好ましく、100〜2000μmがより好ましい。また、本発明のシリコーン樹脂シートが態様1と態様2の複合シートである場合、態様1のシート厚さは、封止性の観点から、100〜5000μmが好ましく、100〜2000μmがより好ましく、態様2のシート厚さは、白色化の観点から、30〜200μmが好ましく、70〜120μmがより好ましく、複合シートの厚さは、130〜5200μmが好ましく、170〜2120μmがより好ましい。
【0096】
得られたシリコーン樹脂シートは、例えば、光半導体装置を調製する際に、基板に実装された光半導体素子を完全に包埋させ、かつ、ボンディングワイヤーを変形、損傷させずに封止するために、25℃における引張り弾性率が、好ましくは1000〜1000000a(0.001〜1MPa)、より好ましくは5000〜20000Pa(0.005〜0.02MPa)である。なお、本明細書において、引張り弾性率は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0097】
また、本発明のシリコーン樹脂シートは、経済性及び取り扱い性の観点から、半硬化状態のまま25℃で24時間以上保存できることが好ましく、25℃で24時間保存後の本発明のシリコーン樹脂シートは、保存前の引張り弾性率を100%とした場合、好ましくは80〜120%、より好ましくは90〜110%の弾性率を有することが望ましい。
【0098】
本発明のシリコーン樹脂シートは、例えば、前記態様の単独シートは半硬化状態であるために、光半導体素子の上にそのまま又は公知の樹脂をポッティングした上に、あるいは前記複合シートは態様1のシートが素子側になるように、載置させて封止加工した後、高温で加熱して樹脂シートを完全に硬化させることにより光半導体装置を調製することができる。従って、本発明は、本発明のシリコーン樹脂シートを用いて光半導体素子を封止した光半導体装置を提供する。この樹脂シートの完全硬化は、付加反応に関する成分が反応することにより実施される。よって、本発明の別態様として、本発明のシリコーン樹脂シートを硬化させたシリコーン樹脂硬化物を提供する。
【0099】
シートを基板に載置させてから封止加工する方法は、特に限定はないが、例えば、ラミネーターを用いて、好ましくは100〜200℃、0.01〜10MPaで、より好ましくは120〜160℃、0.1〜1MPaで、5〜600秒間加熱することにより圧着させてから封止加工する方法が例示される。
【0100】
封止加工の加熱温度は、120℃超250℃以下が好ましく、150〜200℃がより好ましい。加熱時間は、0.5〜24時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。
【0101】
なお、付加反応の進行度は、例えば、付加反応系モノマーとして上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いた場合、IR測定によって、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基に由来するピークの吸収程度によって確認することができ、吸収強度が初期値(硬化反応前)の20%を下回った場合に、ヒドロシリル化反応が完結して全硬化している。
【0102】
かくして、本発明のシリコーン樹脂シートを用いることにより、光半導体装置の封止加工が容易となる。また、本発明のシリコーン樹脂シートは、耐熱性と耐光性に優れるシリコーン誘導体を主成分として含有するために、光半導体素子の封止材料として好適に用いられる。従って、本発明は、本発明のシリコーン樹脂シートを含む光半導体素子封止材料、及び該封止材料を用いて光半導体素子を封止した、光半導体装置を提供する。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0104】
〔シリコーン誘導体の分子量〕
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算にて求める。
【0105】
実施例1
両末端シラノール型シリコーオイル(信越化学工業社製、商品名「X-21-5842」、平均分子量11500)100g(8.70mmol)、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM-1003)0.86g〔5.80mmol、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基とビニルトリメトキシシランのメトキシ基のモル比(SiOH/メトキシ基)=17/17〕、及び2−プロパノール10mL(両末端シラノール型シリコーンオイルとビニルトリメトキシシランの総量100重量部に対して8重量部)を攪拌混合後、縮合触媒として水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(濃度10重量%)0.16mL(0.17mmol、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して2.0モル)を加え、室温(25℃)で2時間攪拌した。得られたオイルに、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業社製、商品名「KF-9901」)0.75g〔ビニルトリメトキシシランのビニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基のモル比(ビニル基/SiH)=1/1〕、及びヒドロシリル化触媒として白金カルボニル錯体溶液(白金濃度2重量%)0.26mL(オルガノハイドロジェンポリシロキサン100重量部に対して35重量部)を加えて、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0106】
実施例2
両末端シラノール型シリコーオイル(信越化学工業社製、商品名「X-21-5842」、平均分子量11500)100g(8.70mmol)、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM-1003)0.86g〔5.80mmol、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基とビニルトリメトキシシランのメトキシ基のモル比(SiOH/メトキシ基)=17/17〕、及び2−プロパノール10mL(両末端シラノール型シリコーンオイルとビニルトリメトキシシランの総量100重量部に対して8重量部)を攪拌混合後、縮合触媒として水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(濃度10重量%)0.16mL(0.17mmol、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して2.0モル)を加え、室温(25℃)で2時間攪拌した。得られたオイルに、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業社製、商品名「KF-99」)0.090g〔ビニルトリメトキシシランのビニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基のモル比(ビニル基/SiH)=1/1〕、及びヒドロシリル化触媒として白金カルボニル錯体溶液(白金濃度2重量%)0.26mL(オルガノハイドロジェンポリシロキサン100重量部に対して289重量部)を加えて、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0107】
実施例3
実施例1で得られた樹脂用組成物100gに、イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(YAG蛍光体)19gを添加し、室温(25℃)で1時間攪拌して、蛍光体含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0108】
実施例4
実施例1で得られた樹脂用組成物100gに、イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(YAG蛍光体)19gを添加し混合後、シリカ粒子(デンカ社製、FB-7SDC、平均粒子径5.8μm)30gを添加して、室温(25℃)で1時間攪拌して、蛍光体−シリカ微粒子含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0109】
比較例1
2液混合型のシリコーンエラストマー(旭化成ワッカーシリコーン社製、LR7665)のA液10gとB液10gをよく混合して、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0110】
比較例2
実施例3において、イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(YAG蛍光体)を添加する樹脂の種類を、一般的なシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン社製、LR7665)に変更する以外は、実施例3と同様にして、蛍光体含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0111】
比較例3
実施例3において、イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(YAG蛍光体)を添加する樹脂の種類を、一般的なシリコーン樹脂(信越化学工業社製、KER-2500)に変更する以外は、実施例3と同様にして、蛍光体含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0112】
比較例4
実施例3において、イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(YAG蛍光体)を添加する樹脂の種類を、一般的なシリコーン樹脂(東レダウコーニング社製、OE-6336)に変更する以外は、実施例3と同様にして、蛍光体含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0113】
半硬化シリコーン樹脂組成物の調製
上記で得られた実施例1〜2及び比較例1の組成物を用いて、半硬化状のシートを調製した。
【0114】
具体的には、実施例1〜2又は比較例1の組成物を2軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂社製、50μm)上に500μmの厚さに塗工し、実施例1〜2の組成物は80℃で10分間加熱して、比較例1の組成物は室温(25℃)で16時間静置して、半硬化状の樹脂シートを調製した(厚み500μm)。
【0115】
また、前記実施例3〜4又は比較例2〜4の組成物をフッ素処理したポリエステルフィルム(ニッパ社製、SS4C、50μm)上に100μmの厚さに塗工し、145℃で5分加熱して、半硬化状の樹脂シートを調製した(厚み100μm)。
【0116】
完全硬化物の調製
上記で得られた半硬化状の実施例1〜4又は比較例1〜4の樹脂シートを用いて、150℃で5時間加熱して、調製した。
【0117】
光半導体装置の作製例1
実施例1〜2又は比較例1の半硬化状の樹脂シートを用いて、青色LEDが実装された基板に被せ、減圧下、160℃に加熱し、0.2MPaの圧力で封止加工した。得られた装置は、150℃で5時間加熱することにより、樹脂を完全に硬化させた。
【0118】
光半導体装置の作製例2
青色LEDが実装された基板に、実施例3〜4又は比較例2〜4のシートを用いて封止加工した光半導体装置を作製した。具体的には、実施例3〜4又は比較例2〜4の完全硬化状態の膜厚100μmのシート上に、実施例3〜4のシート調製に用いた組成物から蛍光体無機粉末及びシリカ微粒子を除いた組成物(蛍光体・シリカ非含有組成物、即ち実施例1の組成物)を膜厚500μmで塗工し、80℃で10分加熱して、実施例3〜4又は比較例2〜4のシートに半硬化状の封止層を設けた(全体厚み600μm)。青色LEDの上に、上記で得られたシートを半硬化物側(蛍光体・シリカ非含有組成物側)がLEDチップ側に来るようにして載置し、真空プレス装置を用いて、160℃で5分間加熱し、0.1MPaの圧力で封止加工後、150℃で5時間加熱することにより、樹脂を完全に硬化させて、光半導体装置を作製した。
【0119】
得られた半硬化状のシート、完全硬化物、半導体装置について、以下の試験例1〜9に従って、特性を評価した。結果を表1〜2に示す。
【0120】
試験例1(樹脂粘度)
25℃、1気圧の条件下でレオメータを用いて測定した。
【0121】
試験例2(保存性)
動的粘弾性測定装置(DMS-200、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)にて、せん断時の粘弾性測定を行い、測定結果より、25℃の貯蔵弾性率を樹脂シートの引張り弾性率として、各半硬化物を室温(25℃)で放置し、24時間後の弾性率変化を調べた。保存前の弾性率を100%とした場合、24時間経過後の弾性率の変化率が3%未満である場合(保存後の弾性率が97%超、103%未満)を「◎」、3〜20%である場合(保存後の弾性率が80〜97%、103〜120%)を「○」、20%を超える場合(保存後の弾性率が80%未満、120%超)を「×」とした。
【0122】
試験例3(弾性)
得られた完全硬化物シートについて、オートグラフ(島津製作所社製)を用いて引張り弾性率(MPa)を求めて評価した。引っ張り弾性率が高いほど弾性が高く、熱サイクル試験による品質保証が高いことを示す。
【0123】
試験例4(輝度)
得られた完全硬化物シートに対し、460nm単波長の励起光をシート平面に対して垂直方向より入射し、シートを透過した励起光及びシート中の蛍光体より発せられ透過した蛍光を、積分球と瞬間マルチ測光システム(MCPD-3000、大塚電子社製)を用いて全光束の光学スペクトルを検出した。得られた光学スペクトルから輝度の指標となるY値を測定した。
【0124】
試験例5(色度安定性)
得られた完全硬化物シートに対し、一定の青色光を照射し、透過した青色光と発光した黄色光とを検出して、色度を評価した。具体的には、CIE色度 y座標で色度をシート上の任意の10ポイントについて測定して、最大色度と最小色度の差を最大色度差として算出して評価した。最大色度差が小さいほど色度安定性が高いことを示す。
【0125】
試験例6(光透過性)
各完全硬化物の波長450nmにおける光透過率(%)を、分光光度計(U−4100、日立ハイテク社製)を用いて測定した。光透過率が高いほど光透過性に優れることを示す。
【0126】
試験例7(耐熱性)
各完全硬化物を150℃の温風型乾燥機内に静置し、100時間経過後の完全硬化物の外観を目視で観察し、保存前の状態から変色のないものを「○」、あるものを「×」とした。
【0127】
試験例8(封止性)
各光半導体装置の封止前後の状態を光学顕微鏡で観察し、光半導体素子が完全に包埋され、ボンディングワイヤーに変形、損傷がないものを「○」、あるものを「×」とした。
【0128】
試験例9(耐光性)
各光半導体装置に300mAの電流を流してLED素子を点灯させ、試験開始直後の輝度を瞬間マルチ測光システム(MCPD-3000、大塚電子社製)により測定した。その後、LED素子を点灯させた状態で放置し、300時間経過後の輝度を同様にして測定し、下記式により輝度保持率を算出して、耐光性を評価した。輝度保持率が高いほど、耐光性に優れることを示す。
輝度保持率(%)=(300時間経過後の輝度/試験開始直後の輝度)×100
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
結果、実施例の樹脂シートは、比較例に比べて、半硬化状態でも保存性が高く、さらに、簡便に、かつ、LED素子を良好に封止することが可能であり、優れた封止材料であることが分かる。
【0132】
また、実施例3〜4の樹脂シートは、比較例2〜4に比べて、最大色度差が低いことから、(1)〜(5)の各成分を含有する樹脂用組成物は、蛍光体材料の分散性が高いことが分かる。
【0133】
また、実施例3にシリカ微粒子を添加することで、完全硬化シリコーン樹脂の弾性率を向上できた。さらに実施例4は実施例3に比べてシリカ微粒子を含有しながらも輝度を低下することがなかった。これより、温度サイクル等の信頼性試験に対して良好な結果を示すシートが得られると示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の半硬化状のシリコーン樹脂シートは、例えば、LED発光装置を光源とする表示用装置や照明器具、ディスプレイ等のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイや広告看板等の半導体素子を製造する際に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合反応が可能な置換基を有するケイ素化合物、及び付加反応が可能な置換基を有するケイ素化合物を含有するシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られる、半硬化状のシリコーン樹脂シート。
【請求項2】
25℃における引張り弾性率が1000〜1000000Paである、請求項1記載のシリコーン樹脂シート。
【請求項3】
25℃で24時間保存後の25℃における引張り弾性率が、保存前の引張り弾性率を100%とした場合、80〜120%である、請求項1又は2記載のシリコーン樹脂シート。
【請求項4】
シリコーン樹脂用組成物が、さらに、蛍光体無機粉末を含有してなる、請求項1〜3いずれか記載のシリコーン樹脂シート。
【請求項5】
シリコーン樹脂用組成物が、さらに、微粒子を含有してなる、請求項4記載のシリコーン樹脂シート。
【請求項6】
微粒子がシリカである、請求項5記載のシリコーン樹脂シート。
【請求項7】
シリカの含有量が、シリコーン樹脂用組成物中、5〜80重量%である、請求項6記載のシリコーン樹脂シート。
【請求項8】
シリカの平均粒子径が50μm以下である、請求項6又は7記載のシリコーン樹脂シート。
【請求項9】
縮合反応が可能な置換基を有するケイ素化合物、及び付加反応が可能な置換基を有するケイ素化合物を含有するシリコーン樹脂用組成物を40〜120℃で加熱する工程を含む、半硬化状のシリコーン樹脂シートの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか記載のシリコーン樹脂シートを完全硬化させてなる、シリコーン樹脂硬化物。
【請求項11】
請求項1〜8いずれか記載のシリコーン樹脂シートを含んでなる光半導体素子封止材料。
【請求項12】
請求項11記載の光半導体素子封止材料を用いて光半導体素子を封止してなる、光半導体装置。
【請求項13】
請求項4〜8いずれか記載のシリコーン樹脂シートを完全硬化させてなるシリコーン樹脂硬化物層に、請求項1〜3いずれか記載の半硬化状のシリコーン樹脂シートを積層させてなる、シリコーン樹脂シート。
【請求項14】
半硬化状のシリコーン樹脂シートが光半導体素子を封止するように、請求項13記載のシリコーン樹脂シートを用いて封止してなる、光半導体装置。

【公開番号】特開2010−159411(P2010−159411A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280305(P2009−280305)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】