説明

半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物の生産方法、及び該組成物から製造される物品

【課題】ポリプロピレン,ポリプロピレン共重合体などの熱可塑性半結晶質ポリオレフィン組成物の透明性を向上させる安価で性能が優れた新規透明化剤を提供。
【解決手段】熱可塑性半結晶性ポリオレフィンと、式:


(式中、Rはスペーサー基であり、各Rは周辺基であり、R及びR及びRのそれぞれは、独立してヒドロカルビル基から選択される)を有する1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物とを含む組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物の生産方法、該組成物から製造される物品、及びそのような物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン及び一部の他の半結晶質ポリマーでは、結晶化過程を増進させる成核剤の使用が定着している。いくつかのタイプの市販成核剤、例えば、安息香酸ナトリウム、タルク、リン酸ナトリウム塩(例えば、Na−11、Na−21)、N,N−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボビス−オキサルアミド、及び二環式[2,2,1]ヘプタンジ−カルボキシラート(HPN−68)が存在する。これらの典型的な無機及び有機塩成核添加剤は、高い融点を有し、典型的な加工温度で溶融又はポリプロピレンに溶解せず、従って、結晶化のための外部核として役立つ。
【0003】
結晶化を増進させるばかりでなく結晶子の大きさにも影響を及ぼす(変性ソルビトールに基づく)「融解感受性」成核剤も使用される。これらの有機化合物は、高い融点を概して有し、ポリプロピレン溶融物に可溶性であるが冷却中にフィブリル状網目構造を形成し、従って、より均一な核形成の原因となる。このような「融解感受性」成核剤は、結晶子の大きさを減少させるので、濁度が実質的に低減される結果となり、それにより半結晶質ポリプロピレンの利用の場(例えば、飲料ボトル、食品容器、CDケース及び他の透明包装)が広がる。
【0004】
これらの添加剤はポリマーの光学特性も変化させるので、それらを透明化剤と呼ぶことができる。概して、透明化剤は常に成核剤であるが、成核剤が必ずしも透明化剤であるとは限らない。現在、透明化添加剤の価格は高く、競争力を欠いており、このことが透明化ポリプロピレン(cPP)の利ざやを圧迫している。明らかに、原価及び性能の新たな基準となる新世代の透明化剤が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物の生産方法、及び該組成物から製造される物品である。
【0007】
1つの実施形態において、本発明は、半結晶性ポリオレフィン組成物を提供し、この組成物は、熱可塑性結晶性ポリオレフィンと、式:
【化1】

(式中、Rはスペーサー基であり、各Rは周辺基であり、R及びR及びRのそれぞれは、独立してヒドロカルビル基から選択される)
を有する1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物とを含む。
【0008】
代替実施形態において、本発明は、半結晶質ポリオレフィン組成物を製造する方法をさらに提供し、この方法は、ポリオレフィンマトリックスを用意する工程と、該ポリオレフィンマトリックスに、式:
【化2】

(式中、Rはスペーサー基であり、各Rは周辺基であり、R及びR及びRのそれぞれは、独立してヒドロカルビル基から選択される)
を有する1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物を添加する工程とを含む。
【0009】
もう1つの代替実施形態において、本発明は、半結晶質ポリオレフィン組成物を製造する方法をさらに提供し、この方法は、ポリオレフィンを用意する工程と、該ポリオレフィンに、式:
【化3】

(式中、Rはスペーサー基であり、各Rは周辺基であり、R及びR及びRのそれぞれは、独立してヒドロカルビル基から選択される)
を有する1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物を添加する工程と、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、回転成形、スラッシュ成形及び押出しからなる群より選択される1つ又はそれ以上の製法を用いて該1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物を該ポリオレフィンに配合する工程とを含む。
【0010】
もう1つの代替実施形態において、本発明は、造形品をさらに提供し、この造形品は、本明細書に開示する実施形態のいずれか1つによる半結晶質ポリオレフィン組成物又は本明細書に開示する方法によって生産される半結晶質ポリオレフィン組成物を含む。
【0011】
代替実施形態において、本発明は、R及びRのそれぞれが、C−C20アルキル;C−C20アルキルアミノ、ジ(C−C20アルキル)アミノ、C−C20アルキルオキシ又はヒドロキシにより置換されている、C−C20アルキル;(ポリ(C−Cアルコキシ))−(C−Cアルキル);C−C20アルケニル;C−C12シクロアルキル;1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているC−C12シクロアルキル;シクロヘキシルメチル;1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているシクロヘキシルメチル;C−C20シクロアルケニル;1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているC−C12シクロアルケニル;フェニル;C−C20アルキル、C−C20アルキルオキシ、ヒドロキシ、フェニルアミノ、アシルアミノ、フェニルアゾからなる群より選択される1、2又は3個のラジカルにより置換されているフェニル;ハロゲンにより置換されているフェニル;C−Cフェニルアルキル;C−C20アルキル、C−C20アルコキシ、及びヒドロキシからなる群より選択される1、2又は3個のラジカルによりフェニルが置換されている、C−Cフェニルアルキル;ナフチル;C−C20アルキルにより置換されているナフチル;アダマンチル;C−C20アルキルにより置換されているアダマンチル;ならびに5員又は6員複素環式基からなる群より選択されることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0012】
代替実施形態において、本発明は、Rが、6から12個の炭素原子を有するアルキル、3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル、及びアリールからなる群より選択され、ならびに各Rが、2から18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、及びアリールからなる群より選択され、ならびにR及びRが、同じ又は異なるアルキルである場合があることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0013】
代替実施形態において、本発明は、1つ又はそれ以上のビス−オキサルアミド化合物が、0.001から5重量パーセントの総量で存在することを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0014】
代替実施形態において、本発明は、Rが、ヘキシル、シクロヘキシル及びフェニルからなる群より選択されることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0015】
代替実施形態において、本発明は、各Rが、1−ドデシル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、4−メチルフェニル、sec−ブチル、及びtert−ブチルからなる群より選択されることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0016】
代替実施形態において、本発明は、該半結晶質ポリオレフィン組成物が透明化剤の不在下での該半結晶質ポリオレフィンのものと比較して少なくとも15%の濁度の低減を呈示することを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0017】
代替実施形態において、本発明は、半結晶質ポリオレフィン組成物が該ポリオレフィンマトリックスのものと比較して少なくとも4℃の結晶化温度の増加を呈示することを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0018】
代替実施形態において、本発明は、該熱可塑性結晶性ポリオレフィンが、結晶性ポリプロピレンであることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0019】
代替実施形態において、本発明は、該熱可塑性ポリオレフィンが、プロピレン/α−オレフィンランダムコポリマー、プロピレン/α−オレフィンセグメント化コポリマー、及びプロピレン/α−オレフィンブロックコポリマーからなる群より選択されることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0020】
代替実施形態において、本発明は、該方法が、半結晶質ポリオレフィン組成物を回収する工程をさらに含むことを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0021】
代替実施形態において、本発明は、該ポリオレフィンに1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物を添加する工程が、二軸スクリュー押出機によって果たされることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0022】
代替実施形態において、本発明は、該方法が、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、回転成形、スラッシュ成形及び押出しからなる群より選択される1つ又はそれ以上の製法を用いて該半結晶質ポリオレフィン組成物を加工する工程をさらに含むことを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0023】
代替実施形態において、本発明は、α−オレフィンが、エチレン又は1−ブテンであることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0024】
代替実施形態において、本発明は、該半結晶質ポリオレフィン組成物が、(1)芳香族ソルビトールアセタール;(2)リン酸の塩に基づく成核剤;(3)カルボン酸の塩に基づく成核剤;(4)カルボキシ水酸化アルミニウムに基づく成核剤;(5)ロジン/断熱酸(adiabatic acid)の塩に基づく成核剤;(6)モノグリセロール酸亜鉛(II);(7)ジアミド化合物に基づく成核剤;及び(8)トリメシン酸誘導体に基づく成核剤からなる群より選択される1つ又はそれ以上のβ−成核剤をさらに含むことを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0025】
代替実施形態において、本発明は、該造形品が成形品であることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0026】
代替実施形態において、本発明は、該造形品の成形が、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、回転成形及びスラッシュ成形からなる群より選択される1つ又はそれ以上の製法によって果たされることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0027】
代替実施形態において、本発明は、該造形品が押出しによって製造されることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0028】
代替実施形態において、本発明は、該造形品が、フィルム、繊維、異形材、パイプ、ボトル、タンク又は容器であることを除き、先行する実施形態のいずれかに従って、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、及び該組成物から製造される造形品を提供する。
【0029】
もう1つの実施形態において、本発明は、半結晶質ポリオレフィン組成物を提供し、この組成物は、熱可塑性結晶性ポリオレフィンと、式:
【化4】

(式中、Rは、スペーサー基であり、及び各Rは、周辺基であり、ならびにR及びR及びRのそれぞれは、独立して、ヒドロカルビル基から選択される)
を有する1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物とから本質的に成る。
【0030】
もう1つの代替実施形態において、本発明は、半結晶質ポリオレフィン組成物を製造する方法をさらに提供し、この方法は、ポリオレフィンマトリックスを用意する工程と、該ポリオレフィンマトリックスに、式:
【化5】

(式中、Rは、スペーサー基であり、及び各Rは、周辺基であり、ならびにR及びR及びRのそれぞれは、独立して、ヒドロカルビル基から選択される)
を有する1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物を添加する工程とから本質的に成る。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、半結晶質ポリオレフィン組成物、該組成物を生産する方法、該組成物から製造される物品、及びそのような物品を製造する方法である。
【0032】
本発明による半結晶質ポリオレフィン組成物は、熱可塑性結晶性ポリオレフィンと、式:
【化6】

(式中、Rは、スペーサー基であり、及び各Rは、周辺基であり、ならびにR及びR及びRのそれぞれは、独立して、ヒドロカルビル基から選択される)
を有する1つ又はそれ以上のビス−オキサルアミド化合物とを含む。
【0033】
代替実施形態において、本発明は、半結晶質ポリオレフィン組成物を製造する方法をさらに提供し、この方法は、ポリオレフィンマトリックスを用意する工程と、該ポリオレフィンマトリックスに、式:
【化7】

(式中、Rは、スペーサー基であり、及び各Rは、周辺基であり、ならびにR及びR及びRのそれぞれは、独立して、ヒドロカルビル基から選択される)
を有する1つ又はそれ以上のビス−オキサルアミド化合物を添加する工程とを含む。
【0034】
もう1つの代替実施形態において、本発明は、造形品をさらに提供し、この造形品は、本発明の半結晶質ポリオレフィン組成物を含む。
【0035】
本発明において有用な熱可塑性結晶性ポリオレフィンとしては、線状ポリエチレン(PE)、エチレン/α−オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン/α−オレフィンコポリマー、及びプロピレン/エチレンランダムコポリマーが挙げられる。
【0036】
例示的プロピレン/α−オレフィンランダムコポリマーとしては、The Dow Chemical Companyから商品名VERSIFY(商標)で、又はExxonMobil Chemical Companyから商品名VISTAMAXXで市販されているものが挙げられる。本発明において有用な一部のEPDM共重合体の非限定的な例としては、ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyから入手可能なNORDEL(登録商標)IP 4770R、NORDEL(登録商標)3722IP、及びルイジアナ州アディスのDSM Elastomers Americasから入手可能なKELTAN(登録商標)5636Aが挙げられる。
【0037】
本発明において有用な例示的ビス−オキサルアミド化合物としては、式:
【化8】

(式中、Rはスペーサー基であり、各Rは周辺基であり、R及びR及びRのそれぞれは、独立して、ヒドロカルビル及び置換ヒドロカルビル基の群より選択される)
を有するものが挙げられる。
【0038】
本発明の一部の実施形態において、R及びRは、同じヒドロカルビル基である。本発明の一部の実施形態において、R及びRは、異なるヒドロカルビル基である。本発明の一部の実施形態において、R、R及びRは、同じヒドロカルビル基である。本発明の一部の実施形態において、R及びRは、同じヒドロカルビル基であり、Rは、異なるヒドロカルビル基である。本発明の一部の実施形態において、R及びRは、同じヒドロカルビル基であり、Rは、異なるヒドロカルビル基である。
【0039】
「ヒドロカルビル」は、分岐又は非分岐、飽和又は不飽和種を含めて、1から約30個の炭素原子を含有する一価ヒドロカルビルラジカル、例えば、アルキル基、アルケニル基、及びアリール基を指す。「置換ヒドロカルビル」は、1つ又はそれ以上の置換基で置換されているヒドロカルビルを指し、用語「ヘテロ原子含有ヒドロカルビル」及び「ヘテロヒドロカルビル」は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられているヒドロカルビルを指す。
【0040】
用語「アルキル」は、分岐又は非分岐、飽和又は不飽和非環式炭化水素ラジカルを指すために本明細書では用いる。適するアルキルラジカルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、2−プロペニル(又はアリル)、ビニル、n−ブチル、t−ブチル、及びi−ブチル(又は2−メチルプロピル)が挙げられる。特定の実施形態において、アルキルは、1〜200個の炭素原子、1〜50個の炭素原子、又は1〜20個の炭素原子を有する。
【0041】
「置換アルキル」は、今まさに説明したとおりのアルキルであって、該アルキルの任意の炭素に結合している1個又はそれ以上の水素原子が別の基、例えばハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、アルキルハロ(例えばCF)、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィノ、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、及びこれらの組み合わせによって置き換えられているアルキルを指す。適する置換アルキルとしては、例えば、ベンジル及びトリフルオロメチルが挙げられる。
【0042】
用語「ヘテロアルキル」は、上で説明したとおりのアルキルであって、該アルキルの任意の炭素に対する1個又はそれ以上の炭素原子が、N、O、P、B、S、Si、Sb、Al、Sn、As、Se及びGeからなる群より選択されるヘテロ原子によって置き換えられているアルキルを指す。該炭素原子と該ヘテロ原子の間の結合は、飽和されている又は不飽和であることがある。従って、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ボリル、ホスフィノ、アミノ、シリル、チオ又はセレノで置換されているアルキルは、用語ヘテロアルキルの範囲内である。適するヘテロアルキルとしては、シアノ、ベンゾイル、2−ピリジル、及び2−フリルが挙げられる。
【0043】
用語「シクロアルキル」は、単一の環又は複数の縮合している環を有する飽和又は不飽和環式非芳香族炭化水素ラジカルを指すために本明細書では用いる。適するシクロアルキルラジカルとしては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクテニル及びビシクロオクチルが挙げられる。特定の実施形態において、シクロアルキルは、3〜200個の炭素原子、3〜50個の炭素原子、又は3〜20個の炭素原子を有する。
【0044】
「置換シクロアルキル」は、シクロアルキルであって、今まさに説明したとおりだがそれに含めて該シクロアルキルの任意の炭素に対する1個又はそれ以上の水素原子が別の基、例えばハロゲン、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ボリル、ホスフィノ、アミノ、シリル、チオ、セレノ及びこれらの組み合わせによって置き換えられているシクロアルキルを指す。適する置換シクロアルキルラジカルとしては、例えば、4−ジメチルアミノシクロヘキシル、及び4,5−ジブロモシクロヘプタ−4−エニルが挙げられる。
【0045】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、説明したとおりのシクロアルキルラジカルであるが、飽和又は不飽和環式ラジカルの1個もしくはそれ以上の又はすべての炭素原子がヘテロ原子、例えば窒素、リン、酸素、硫黄、ケイ素、ゲルマニウム、セレン又はホウ素によって置き換えられているシクロアルキルラジカルを指すために本明細書では用いる。適するヘテロシクロアルキルとしては、例えば、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、ピロリジニル、及びオキサゾリニルが挙げられる。
【0046】
「置換ヘテロシクロアルキル」は、ヘテロシクロアルキルであって、今まさに説明したとおりだがそれに含めて該ヘテロシクロアルキルの任意の原子に対する1個又はそれ以上の水素原子が別の基、例えばハロゲン、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ボリル、ホスフィノ、アミノ、シリル、チオ、セレノ及びこれらの組み合わせによって置き換えられているヘテロシクロアルキルを指す。適する置換ヘテロシクロアルキルラジカルとしては、例えば、N−メチルピペラジニル、及び3−ジメチルアミノモルホリニルが挙げられる。
【0047】
用語「アリール」は、芳香族置換基を指すために本明細書では用いており、この芳香族置換基は、単一の芳香族環である場合もあり、又は互いに縮合している、共有結合で連結されている、もしくは共通の基、例えばメチレンもしくはエチレン部分に連結されている複数の芳香族環である場合もある。該芳香族環としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びビフェニルが挙げられ得る。特定の実施形態において、アリールは、1〜200個の炭素原子、1〜50個の炭素原子、又は1〜20個の炭素原子を有する。
【0048】
「置換アリール」は、今まさに説明したとおりのアリールであって、任意の炭素に結合している1個又はそれ以上の水素原子が、1個又はそれ以上のヒドロカルビル基、例えばアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、アルキルハロ(例えば、CF)、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィノ、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、ならびに飽和及び不飽和両方の環式炭化水素(これらは、該芳香族環と縮合している、共有結合で連結されている、又は共通の基、例えばメチレンもしくはエチレン部分に連結されている)によって置き換えられているアリールを指す。該共通の連結基は、ベンゾフェノンの場合のようにカルボニルである場合もあり、又はジフェニルエーテルの場合のように酸素である場合もあり、又はジフェニルアミンの場合のように窒素である場合もある。
【0049】
本明細書において用いる場合の用語「ヘテロアリール」は、芳香族又は不飽和環であって、該芳香族の1個又はそれ以上の炭素原子がヘテロ原子、例えば窒素、酸素、ホウ素、セレン、リン、ケイ素又は硫黄によって置き換えられている環を指す。ヘテロアリールは、単一芳香族環である場合がある、多芳香族環である場合がある、又は1つもしくはそれ以上の非芳香族環にカップリングしている1つもしくはそれ以上の芳香族環である場合がある構造を指す。複数の環を有する構造の場合、それらの環は、互いに縮合していることがあり、共有結合で連結されていることがあり、又は共通の基、例えばメチレンもしくはエチレン部分に連結されていることがある。該共通の連結基は、フェニルピリジルケトンの場合のようにカルボニルである場合もある。本明細書において用いる場合、環、例えばチオフェン、ピリジン、イソオキサゾール、ピラゾール、ピロール及びフラン、又はこれらの環のベンゾ縮合類似体は、用語「ヘテロアリール」によって定義される。
【0050】
「置換ヘテロアリール」は、ヘテロアリールであって、今まさに説明したとおりだがそれに含めて該ヘテロアリール部分の任意の原子に結合している1個又はそれ以上の水素原子が、別の基、例えばハロゲン、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ボリル、ホスフィノ、アミノ、シリル、チオ、セレノ及びこれらの組み合わせによって置き換えられているヘテロアリールを指す。適する置換ヘテロアリールラジカルとしては、例えば、4−N,N−ジメチルアミノピリジンが挙げられる。
【0051】
用語「アルコキシ」は、−−OZラジカルを指すために本明細書では用いており、この場合のZは、本明細書の中で説明するとおりのアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、シリル基及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。適するアルコキシラジカルとしては、例えば、メトキシ、エトキシ、ベンジルオキシ、及びt−ブトキシが挙げられる。関連用語は、Zがアリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、及びこれらの組み合わせから選択される「アリールオキシ」である。適するアリールオキシラジカルの例としては、フェノキシ、置換フェノキシ、2−ピリジンオキシ、及び8−キナリンオキシ(8-quinalinoxy)が挙げられる。
【0052】
本発明の組成物の一定の実施形態において、R及びRのそれぞれは、C−C20アルキル;C−C20アルキルアミノ、ジ(C−C20アルキル)アミノ、C−C20アルキルオキシ又はヒドロキシにより置換されている、C−C20アルキル;(ポリ(C−Cアルコキシ))−(C−Cアルキル);C−C20アルケニル;C−C12シクロアルキル;1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているC−C12シクロアルキル;シクロヘキシルメチル;1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているシクロヘキシルメチル;C−C20シクロアルケニル;1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているC−C12シクロアルケニル;フェニル;C−C20アルキル、C−C20アルキルオキシ、ヒドロキシ、フェニルアミノ、アシルアミノ、フェニルアゾからなる群より選択される1、2又は3個のラジカルにより置換されているフェニル;ハロゲンにより置換されているフェニル;C−Cフェニルアルキル;C−C20アルキル、C−C20アルコキシ、及びヒドロキシからなる群より選択される1、2又は3個のラジカルによりフェニルが置換されている、C−Cフェニルアルキル;ナフチル;C−C20アルキルにより置換されているナフチル;アダマンチル;C−C20アルキルにより置換されているアダマンチル;ならびに5員又は6員複素環式基からなる群より選択される。
【0053】
−C 炭素原子範囲を本明細書に開示するときは常に、CからCの範囲内のすべての個々の値及び部分範囲をここに含め、本明細書に開示することを意図している。例えば、範囲がC−C10である場合、該範囲は、C、C、C、C、C、C、C、C又はCの下限から、C、C、C、C、C、C、C、C又はC10の上限までであり得る。例えば、該範囲は、C−C10、又は代替案ではC−C、又は代替案ではC−Cを含む。
【0054】
本発明の一定の実施形態において、Rは、6から12個の炭素原子を有するアルキル、3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル、及びアリールからなる群より選択される。CからC12アルキルのすべての個々の値及び部分範囲がここに含まれ、それらを本明細書に開示する;例えば、Rは、6、7、8、9、10又は11炭素の下限から、7、8、9、10、11又は12炭素の上限までの炭素原子を有するアルキルであり得る。例えば、Rは、CからC12の範囲内の任意のアルキルである場合があり、又は代替案では、Rは、CからC10の範囲内の任意のアルキルである場合がある。同様に、CからC20シクロアルキルのすべての個々の値及び部分範囲がここに含まれ、それらを本明細書に開示する;Rは、3、9、12、15又は18炭素の下限から、4、8、10、12、14、16又は20炭素の上限までの炭素原子を有するシクロアルキルであり得る。例えば、Rは、CからC12の範囲内の任意のシクロアルキルである場合があり、又は代替案では、Rは、CからC10の範囲内の任意のシクロアルキルである場合があり、又は代替案では、Rは、CからC20の範囲内の任意のシクロアルキルである場合があり、又は代替案では、Rは、C10からC18の範囲内の任意のシクロアルキルである場合がある。
【0055】
本発明の一定の実施形態において、各Rは、2から18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、及びアリールからなる群より選択される。CからC18アルキルのすべての個々の値及び部分範囲がここに含まれ、それらを本明細書に開示する;例えば、Rは、2、4、6、8、10、12、14、16又は17炭素の下限から、3、5、7、9、11、13、15、17又は18炭素の上限までの炭素原子を有するアルキルであり得る。例えば、Rは、CからC18の範囲内の任意のアルキルである場合があり、又は代替案では、Rは、CからC16の範囲内の任意のアルキルである場合がある。
【0056】
本発明の特定の実施形態において、Rは、ヘキシル、シクロヘキシル及びフェニルからなる群より選択される。
【0057】
本発明の一部の実施形態において、各Rは、1−ドデシル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、4−メチルフェニル、sec−ブチル、及びtert−ブチルからなる群より選択される。
【0058】
、R及びRのそれぞれは独立して選択され、これは、R、R及びRのそれぞれが、他のR基のヒドロカルビル基に関係なく、可能性のあるすべてのヒドロカルビル基から独立して選択されることを意味する。
【0059】
本発明の一部の実施形態において、1つ又はそれ以上のビス−オキサルアミド化合物は、0.001から5重量パーセントの総量で存在する。0.001から5重量パーセントのすべての個々の値及び部分範囲がここに含まれ、それらを本明細書に開示する;例えば、該組成物中のビス−オキサルアミドの総量は、0.001、0.002、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4又は4.5重量パーセントの下限から、0.0025、0.006、0.015、0.07、0.15、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4又は5重量パーセントの上限までであり得る。例えば、該組成物中のビス−オキサルアミドの総量は、0.001から5重量パーセントの範囲である場合があり、又は代替案では、該組成物中のビス−オキサルアミドの総量は、0.025から0.2重量パーセントの範囲である場合があり、又は代替案では、該組成物中のビス−オキサルアミドの総量は、0.025から0.5重量パーセントの範囲である場合があり、又は代替案では、該組成物中のビス−オキサルアミドの総量は、0.02から0.1重量パーセントの範囲である場合がある。
【0060】
一部の実施形態において、該半結晶質ポリオレフィン組成物は、透明化剤の不在下での該半結晶質ポリオレフィンの濁度と比較して少なくとも15%の濁度の低減を呈示する。少なくとも15%からのすべての個々の値及び部分範囲がここに含まれ、それらを本明細書に開示する;例えば、濁度の比較減少は、少なくとも15、16、17又は18%の下限からであり得る。
【0061】
一定の実施形態において、該半結晶質ポリオレフィン組成物は、該半結晶質ポリオレフィンの結晶化温度と比較して少なくとも4℃の結晶化温度の増加を呈示する。少なくとも4℃からのすべての個々の値及び部分範囲がここに含まれ、それらを本明細書に開示する;例えば、結晶化温度の該比較増加は、少なくとも4、4.5、5、5.5、6、6.5、又は7℃の下限からであり得る。
【0062】
1つの特異的実施形態において、該熱可塑性結晶性ポリオレフィンは、結晶性ポリプロピレンである。
【0063】
本発明の特定の実施形態において、該熱可塑性ポリオレフィンは、プロピレン/α−オレフィンランダムコポリマー、プロピレン/α−オレフィンセグメント化コポリマー、プロピレン/エチレンセグメント化コポリマー、及びプロピレン/α−オレフィンブロックコポリマーからなる群より選択される。この文脈で用いる場合の用語「α−オレフィン」は、エチレンを含む。
【0064】
本発明の一部の実施形態において、該熱可塑性結晶性ポリオレフィンにおけるα−オレフィンは、1−ブテンである。
【0065】
さらに他の実施形態において、該熱可塑性結晶性ポリオレフィンは、プロピレン/エチレン/オレフィンターポリマーである。1つの特定の実施形態において、該熱可塑性結晶性ポリオレフィンは、プロピレン/エチレン/ブテンターポリマーである。
【0066】
ビス−オキサルアミド透明化剤以外の1つ又はそれ以上の成核剤も本発明の組成物の一部の実施形態に添加することができる。そのような成核剤は、(1)芳香族ソルビトールアセタール;(2)リン酸の塩に基づく成核剤;(3)カルボン酸の塩に基づく成核剤;(4)カルボキシ水酸化アルミニウムに基づく成核剤;(5)ロジン/断熱酸の塩に基づく成核剤;(6)モノグリセロール酸亜鉛(II);(7)ジアミド化合物に基づく成核剤;及び(8)トリメシン酸誘導体に基づく成核剤からなる群より選択することができる。一部の実施形態では、そのような成核剤の組み合わせも本発明の組成物に添加することができる。
【0067】
本発明の半結晶質ポリオレフィン組成物の1つ又はそれ以上の実施形態を含む造形品も本発明により提供される。例示的造形品としては、食品包装、飲料包装、非食品及び非飲料包装、例えばCDケース、フィルム、繊維、異形材、パイプ、ボトル、タンク及び容器が挙げられる。
【0068】
一部の実施形態では、該造形品を成形する。特定の実施形態では、該成形品を、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、回転成形、スラッシュ成形及び押出しからなる群より選択される1つ又はそれ以上の製法によって調製する。
【0069】
本発明は、一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムをさらに提供し、これらのフィルムは、本発明の半結晶質ポリオレフィン組成物の1つ又はそれ以上を含むフィルムを伸張することによって形成される。
【0070】
本発明は、多層系をさらに提供し、この多層系は、1つ又はそれ以上の層が本発明の半結晶質ポリオレフィン組成物の1つ又はそれ以上を含む。
【実施例】
【0071】
以下の実施例は、本発明を例証するものであって、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0072】
透明化剤として試験したすべての材料を使用前に乾燥させ、ポリプロピレンランダムコポリマーと配合した。Baker Perkins Group.Ltd.(英国、ピーターバーラ)から得たAPV Baker MP19TC押出機を使用して、すべての実施例を配合した。すべての実施例について、N流をホッパーに通し、O濃度を±4% Oの標準値に調整した。押出機ゾーンのバレル温度は、すべての実施例について同じであり、次のとおりであった:170℃のゾーン1;190℃のゾーン2;210℃のゾーン3;225℃のゾーン4;240℃のゾーン5;250℃のゾーン6;250℃のゾーン7;及び250℃のダイ温度。これらの設定により、おおよそ256℃のポリマーの溶融温度を生じさせた。該押出機をすべての実施例について400RPMに設定した。溶融温度、酸素#(測定された残留酸素の%)及び吐出量(おおよそ3kg/時)は、比較例1〜4ならびに本発明の実施例1〜6及び10について同様であった。
【0073】
本発明の実施例の組成物及び比較例の組成物を、500ppm IRGANOX 1010(BASFから市販されている)、1000ppm IRGAFOS 168(BASFから市販されている)、ならびに500ppm ステアリン酸カルシウム及び150ppm DHT−4Aを用いて確立した。
【0074】
表1は、本発明の実施例において使用した透明化剤の構造を提供するものである。
【表1】

【0075】
表2は、本発明の実施例1〜13の組成物において使用した結晶性ポリオレフィン及び透明化剤ならびに透明化剤重量百分率を提供するものである。
【0076】
本発明の実施例において使用した結晶性ポリオレフィンは、表2に示すように、(1)42g/10分のメルト・フロー・インデックス、4.2重量%のエチレン由来単位及び7.5重量%のキシレン可溶性画分を有する、ランダムプロピレン/エチレンコポリマー(THE DOW CHEMICAL COMPANYからDR7032として入手可能);又は(2)3.9重量% エチレン由来単位、9.75g/10分のメルト・フロー・インデックス及び6.75重量%のキシレン可溶性画分を有する、ランダムプロピレン/エチレンコポリマー(THE DOW CHEMICAL COMPANYからR7051−10RNとして入手可能)であった。
【表2】

【0077】
比較例1は、42g/10分のメルト・フロー・インデックス、4.2重量% エチレン由来単位及び7.5重量%のキシレン可溶性画分を有する、ランダムプロピレン/エチレンコポリマー(THE DOW CHEMICAL COMPANYからDR7032として入手可能)と上に示したような安定剤とを含有し、透明化剤は伴わなかった。
【0078】
比較例2は、DR7032ランダムプロピレン/エチレンコポリマー及び上に示したような安定剤に加えて0.2重量パーセント MILLAD 3988(これはジメチルベンジリデン−ソルビトールである)(MILLIKEN & COMPANYから入手可能)を含有した。
【0079】
比較例3は、DR7032ランダムプロピレン/エチレンコポリマー及び上に示したような安定剤に加えて0.2重量パーセント MILLAD 3988及び0.1重量パーセント グリセロールモノステアラート(GMS)(これは、離型剤として使用され、及びADEKA PALMAROLE SAS(フランス、アルザス州Saint−Louis)から入手可能である)を含有した。
【0080】
比較例4は、DR7032ランダムプロピレン/エチレンコポリマー及び上に示したような安定剤に加えて0.2重量パーセント MILLAD NX−8000(これは、MILLIKEN & COMPANYから入手可能なビス(4−プロピルベンジリデン)プロピルソルビトールである)を含有した。
【0081】
比較例5は、3.9重量% エチレン由来単位、9.75g/10分のメルト・フロー・インデックス及び6.75重量%のキシレン可溶性画分を有する、ランダムプロピレン/エチレンコポリマー(The Dow Chemical CompanyからR7051−10RNとして入手可能)と上に示したような安定剤とを含有し、透明化剤は伴わなかった。
【0082】
表3は、比較例1、本発明の実施例2、5、6、12及び13の結晶化温度を提供するものである。
【表3】

【0083】
本発明の実施例において使用したそれぞれの透明化剤を合成した。これらの透明化剤を合成する方法を、本発明の実施例1において使用した透明化剤を生成するために用いた方法に言及することにより説明することができる:
N1,N1’−(ヘキサン−1,6−ジイル)ビス(N2−ドデシルオキサルアミド)の合成
工程1:
【0084】
200mLのテトラヒドロフラン中の1,6 ジアミノヘキサン(50.0g、0.43mol)の溶液をジエチルオキサラート(629.4g、4.31mol)にゆっくりと添加し、その混合物を室温で攪拌した。16時間後、生成物を濾過することにより溶剤及び過剰なジエチルオキサラートを除去した。その後、濾液をクロロホルムに溶解し、濾過し(P5)、濾液中のクロロホルムを減圧下で除去した。生成物をジエチルエーテルで2回洗浄し、真空下で乾燥させた。生成物を(90℃の融点を有する)白色粉末として得た。
工程2:
【0085】
ジエチル2,2’−(ヘキサン−1,6−ジイルビス(アザンジイル)ビス(2−オキソアセタート)(5.00g、15.8mmol)及びドデシルアミン(5.85g、31.64mmol)を100mLのCHClに溶解した。その後、その混合物を還流温度で24時間加熱した。生成物を濾過することにより溶剤を除去した。残留固体をCHClで2回及びジエチルエーテルで2回洗浄し、真空下で乾燥させた。生成物を白色粉末として得た。
【0086】
DEMAG 3(ドイツ、シュヴァイクのSUMITOMO(SHI)DEMAG)を使用し、下の表4に示す条件下、標準温度(200℃)及び/又は高温(230℃)で動作させて、本発明の実施例1〜7及び11〜13ならびに比較例1〜5のそれぞれを射出成形した。
【表4】

【0087】
射出成形サンプルを透過率、濁度及び透明度について検査した。この試験の結果を表5に示す。表5は、列挙する各実施例の各特性に関する4回の測定について計算した平均値を提供するものである。
【表5】

【0088】
表5からわかるように、本発明の実施例は、標準射出成形条件下で現行の市販用透明化剤、例えば、比較例2〜4を用いて得たものに匹敵する透過率及び透明度を示す。対照的に、MILLAD 3988では、より高い成形温度が、その透明化剤をポリオレフィンに溶解するために必要である。
【0089】
表5からわかるように、本発明の実施例7及び11において使用した透明化剤は、わずか0.025重量%のレベルで使用してもよく、なお、より高いレベルを用いて観察される光学特性の向上を呈示することができる。そのような透明化剤濃度は、現行商品、MILLAD 3988及びMILLAD NX−8000を使用したときに必要とされるものより10倍少ない。
【0090】
本発明の実施例11〜13を使用して、透過率、濁度及び透明度に対する透明化剤のレベルの影響を検査することができる。表5からわかるように、0.025重量%ほども低いレベルによって、0.05及び0.1重量%の透明化剤レベルと同様に良好な又はより良好な透過率、濁度及び透明度が得られた。
【0091】
本発明の実施例7〜9を射出成形の2時間後及び射出成形の2日後に透過率、濁度及び透明度について検査した。本発明の実施例10を射出成形の2日後に検査した。そのような試験を比較例1(透明化剤を伴わない)に関しても行った。この試験の結果を表6に示す。
【表6】

【0092】
本発明の実施例7〜9を、本発明の実施例10からのダウンブレンディングによって製造した。これは、これらの実施例において使用する透明化剤を循環システムで使用できることを示す。
【0093】
機械的特性、特に曲げ弾性率、曲げ応力、破断点伸度(ε)、及びシャルピー衝撃も、比較例1〜4ならびに本発明の実施例2〜4及び6〜7のそれぞれについて検査した。表7は、そのような試験の結果をまとめたものである。
【表7】

【0094】
表7からわかるように、本発明の実施例は、比較例1に勝る、及び比較例2〜4において見られる向上に匹敵する、機械的特性の向上を呈示する。
試験方法
【0095】
試験方法は、以下を含む:
曲げ弾性率は、ISO−178に従って測定した;破断点伸度及び曲げ応力は、ISO−527/1Aに従って測定した(すなわち、Zwick Z010を使用して、射出成形後23℃及び50%湿度で48時間後に測定した)。
【0096】
シャルピー衝撃は、Zwick Z5102、80104mm バー、タイプAノッチ(r=0.25mm)、1Jハンマーを使用して、ISO−179/1eAに従って測定した。
【0097】
濁度、透過率、及び透明度は、Hazeguardを使用し、磨き金型での1mm 射出成形プラックを用いて、ASTM D1003に従って測定した。
【0098】
示差走査熱分析:10℃/分で室温から250℃に加熱し、3分間放置して等温平衡させることにより、サンプルを分析した。その後、温度を10℃/分で250℃から−30℃に漸減させた。−30℃に達した後、その温度を3分間維持し、その後、10℃/分で250℃に加熱した。冷却曲線と第二の加熱曲線の両方を融解熱と共に用いて、ピーク最大結晶化温度及び溶融温度を推定した。
【0099】
本発明を、その精神及び本質的な特質を逸脱することなく、他の形態で実施することができる。従って、本発明の範囲を示すものとして、上記明細書ではなく、添付の特許請求の範囲を参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性結晶性ポリオレフィンと、
式:
【化9】

(式中、Rはスペーサー基であり、各Rは周辺基であり、R及びR及びRのそれぞれは、独立してヒドロカルビル基から選択される)
を有する1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物と
を含む、半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
及びRのそれぞれが、
−C20アルキル;
−C20アルキルアミノ、ジ(C−C20アルキル)アミノ、C−C20アルキルオキシ又はヒドロキシにより置換されている、C−C20アルキル;
(ポリ(C−Cアルコキシ))−(C−Cアルキル);C−C20アルケニル;C−C12シクロアルキル;1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているC−C12シクロアルキル;シクロヘキシルメチル;
1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているシクロヘキシルメチル;
−C20シクロアルケニル;1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているC−C12シクロアルケニル;
フェニル;
−C20アルキル、C−C20アルキルオキシ、ヒドロキシ、フェニルアミノ、アシルアミノ、フェニルアゾからなる群より選択される1、2又は3個のラジカルにより置換されているフェニル;
ハロゲンにより置換されているフェニル;
−Cフェニルアルキル;
−C20アルキル、C−C20アルコキシ、及びヒドロキシからなる群より選択される1、2又は3個のラジカルによりフェニルが置換されている、C−Cフェニルアルキル;
ナフチル;
−C20アルキルにより置換されているナフチル;
アダマンチル;
−C20アルキルにより置換されているアダマンチル;ならびに
5員又は6員複素環式基
からなる群より選択される、請求項1に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項3】
が、6から12個の炭素原子を有するアルキル、3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル、及びアリールからなる群より選択され、ならびに各Rが、2から18個の炭素原子を有するアルキル、3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル、及びアリールからなる群より選択され、ならびにR及びRが、同じ又は異なるヒドロカルビル基である場合がある、請求項1または2に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項4】
前記1つ又はそれ以上のビス−オキサルアミド化合物が、0.001から5重量パーセントの総量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項5】
が、ヘキシル、シクロヘキシル及びフェニルからなる群より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項6】
各Rが、1−ドデシル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、4−メチルフェニル、sec−ブチル、及びtert−ブチルからなる群より選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項7】
透明化剤の不在下での前記熱可塑性半結晶質ポリオレフィンの濁度と比較して少なくとも15%の濁度の低減を呈示する、請求項1から6のいずれか一項に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項8】
透明化剤の不在下での前記熱可塑性結晶性ポリオレフィンの結晶化温度と比較して少なくとも4℃の結晶化温度の増加を呈示する、請求項1から7のいずれか一項に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性結晶性ポリオレフィンが、結晶性ポリプロピレンである、請求項1から8のいずれか一項に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリオレフィンが、プロピレン/α−オレフィンランダムコポリマー、プロピレン/α−オレフィンセグメント化コポリマー、及びプロピレン/α−オレフィンブロックコポリマーからなる群より選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項11】
前記α−オレフィンが、エチレン、1−ブテン又は1−オクテンである、請求項10に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項12】
(1)芳香族ソルビトールアセタール;(2)リン酸の塩に基づく成核剤;(3)カルボン酸の塩に基づく成核剤;(4)カルボキシ水酸化アルミニウムに基づく成核剤;(5)ロジン/断熱酸(adiabatic acid)の塩に基づく成核剤;(6)モノグリセロール酸亜鉛(II);(7)ジアミド化合物に基づく成核剤;及び(8)トリメシン酸誘導体に基づく成核剤からなる群より選択される1つ又はそれ以上のβ−成核剤をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物。
【請求項13】
半結晶質ポリオレフィン組成物を製造する方法であって、
結晶性ポリオレフィンを用意する工程と、
該ポリオレフィンに、式:
【化10】

(式中、Rはスペーサー基であり、各Rは周辺基であり、R及びR及びRのそれぞれは、独立してヒドロカルビル基から選択される)
を有する1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物を添加する工程と、
半結晶質ポリオレフィン組成物を回収する工程と
を含む、方法。
【請求項14】
前記ポリオレフィンに1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物を添加する工程が、二軸スクリュー押出機によって果たされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
射出成形、ブロー成形、圧縮成形、回転成形及びスラッシュ成形からなる群より選択される1つ又はそれ以上の製法を用いて前記半結晶質ポリオレフィン組成物を加工する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
半結晶質ポリオレフィン組成物を製造する方法であって、
結晶性ポリオレフィンを用意する工程と、
該ポリオレフィンに、式:
【化11】

(式中、Rはスペーサー基であり、各Rは周辺基であり、R及びR及びRのそれぞれは、独立してヒドロカルビル基から選択される)
を有する1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物を添加する工程と、
射出成形、ブロー成形、圧縮成形、回転成形、スラッシュ成形及び押出しからなる群より選択される1つ又はそれ以上の製法を用いて前記ポリオレフィンと前記1つ又はそれ以上のジ−アルキルビス−オキサルアミド化合物を配合する工程と
を含む、方法。
【請求項17】
及びRのそれぞれが、
−C20アルキル;
−C20アルキルアミノ、ジ(C−C20アルキル)アミノ、C−C20アルキルオキシ又はヒドロキシにより置換されている、C−C20アルキル;
(ポリ(C−Cアルコキシ))−(C−Cアルキル);C−C20アルケニル;C−C12シクロアルキル;1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているC−C12シクロアルキル;シクロヘキシルメチル;
1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているシクロヘキシルメチル;
−C20シクロアルケニル;1、2又は3個のC−C20アルキルにより置換されているC−C12シクロアルケニル;
フェニル;
−C20アルキル、C−C20アルキルオキシ、ヒドロキシ、フェニルアミノ、アシルアミノ、フェニルアゾからなる群より選択される1、2又は3個のラジカルにより置換されているフェニル;
ハロゲンにより置換されているフェニル;
−Cフェニルアルキル;
−C20アルキル、C−C20アルコキシ、及びヒドロキシからなる群より選択される1、2又は3個のラジカルによりフェニルが置換されている、C−Cフェニルアルキル;
ナフチル;
−C20アルキルにより置換されているナフチル;
アダマンチル;
−C20アルキルにより置換されているアダマンチル;ならびに
5員又は6員複素環式基
からなる群より選択される、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
が、6から12個の炭素原子を有するアルキル、3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル、及びアリールからなる群より選択され、各Rが、2から18個の炭素原子を有するアルキル、3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル、及びアリールからなる群より選択される、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ又はそれ以上のビス−オキサルアミド化合物が、前記ポリオレフィン組成物の総重量に基づき0.001から5重量パーセントの総量で添加される、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
が、ヘキシル、シクロヘキシル及びフェニルからなる群より選択される、請求項13から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
各Rが、1−ドデシル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、4−メチルフェニル、sec−ブチル、及びtert−ブチルからなる群より選択される、請求項13から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記半結晶質ポリオレフィン組成物が、透明化剤の不在下での前記ポリオレフィンの結晶化温度と比較して少なくとも5℃の結晶化温度の増加を呈示する、請求項13から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から12のいずれか一項に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物の1つ又はそれ以上を含む造形品。
【請求項24】
成形品である、請求項23に記載の造形品。
【請求項25】
前記成形が、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、回転成形及びスラッシュ成形からなる群より選択される1つ又はそれ以上の製法によって果たされる、請求項24に記載の成形物品。
【請求項26】
押出しによって調製される、請求項23に記載の造形品。
【請求項27】
食品包装、飲料包装、非食品及び非飲料包装、フィルム、繊維、異形材、パイプ、ボトル、タンク及び容器からなる群より選択される、請求項22から26のいずれか一項に記載の造形品。
【請求項28】
請求項27に記載のフィルムを伸張することによって形成された一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルム。
【請求項29】
1つ又はそれ以上の層が、請求項1から12のいずれか一項に記載の半結晶質ポリオレフィン組成物の1つ又はそれ以上を含む、多層系。

【公開番号】特開2013−32521(P2013−32521A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−166864(P2012−166864)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】