説明

半翅目昆虫由来エクダイソンリセプター、ウルトラスピラクルおよびこれらの利用

【課題】半翅目昆虫、特に半翅目害虫の1種であるワタアブラムシの脱皮を調節する化合物(エクダイソン活性調節物質)を検出する系を提供する。
【解決手段】以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなる蛋白質。(a)ワタアブラムシ由来の特定のアミノ酸配列からなる蛋白質;(b)上記アミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつエクダイソンリセプターとしての機能を有する蛋白質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半翅目昆虫由来の新規なエクダイソンリセプターおよびウルトラスピラクル、それらをコードするDNA、そのDNAを含有する組み換えベクター、それらを発現する形質転換体ならびにそれらを用いた殺虫剤のスクリーニング系に関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫におけるエクダイソン類は脱皮ホルモンとして知られている(非特許文献1)。20−ヒドロキシエクダイソンが代表的なものであり、ほぼ全ての昆虫において脱皮ホルモンとして作用する。エクダイソン類の脱皮ホルモン活性の本質は、昆虫細胞内に存在するリガンド依存性転写因子であるエクダイソンリセプターおよびウルトラスピラクルを介した標的遺伝子群の活性化であることが解明されている (非特許文献2)。
【0003】
また、非特許文献3には、鱗翅目、双翅目、甲虫目、ダニ目の節足動物由来のエクダイソンリセプター遺伝子の構造比較がされており、昆虫各目間でその受容体の構造が異なることが明らかになっている。エクダイソンレセプターおよびウルトラスピラクルはいずれも、核内受容体スーパーファミリーに属する。エクダイソンリセプターはA/B領域、C領域、D領域、E領域、F領域からなる。DNAとの結合に関与する領域(DNA結合領域)はC領域で、エクダイソン類等のリガンドとの結合に関与する領域(リガンド結合領域)はE領域である(非特許文献3)。また、ウルトラスピラクルはA/B領域、C領域、D領域、EF領域からなる。DNA結合領域はC領域で、リガンド結合領域はEF領域である。エクダイソンレセプターとウルトラスピラクルはヘテロダイマーを形成しDNA上にあるエクダイソン応答配列に結合し、そしてエクダイソン類等の化学物質に応答して標的遺伝子の転写の活性化に関与する(非特許文献4)。
【0004】
20−ヒドロキシエクダイソンは、ほぼ全ての昆虫において脱皮ホルモンとして作用する一方で、非ステロイド系エクダイソンアゴニストの中には受容体構造の違いを反映して、高い選択性を示すものが存在する。例えば、クロマフェノジド(N’−tert−butyl−N’−(3,5−dimethylbenzoyl)−5−methyl−6−chromanecarbohydrazide)などジベンゾイルヒドラジン誘導体は、鱗翅目昆虫に対して高い脱皮ホルモン活性を示すものの、他の目の昆虫に対してはその活性を示さない (非特許文献5)。
【0005】
非特許文献6には、ジベンゾイルヒドラジン誘導体が昆虫目間で高い選択性を示すひとつの理由として、エクダイソンリセプターのアミノ酸配列の違いが挙げられている。これらのことから目的とする種類の昆虫に対して特異的に作用するエクダイソン活性調節物質を検出するためには、その昆虫由来のエクダイソンリセプターを使用する必要がある。
【0006】
他の昆虫種からも多くのエクダイソンリセプターのアミノ酸配列が明らかにされている。例えば直翅目昆虫Locusta migratoria由来のEcR(gi:4405799、非特許文献7)などが挙げられる。
【0007】
他の昆虫種からも多くのウルトラスピラクルのアミノ酸配列が明らかにされている例えば直翅目昆虫Locusta migratoria由来のウルトラスピラクル(gi:33943178)などが挙げられる。
【0008】
エクダイソン活性調節物質をインビトロの系でスクリーニングする方法に関しては、エクダイソン応答配列、プロモーター、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだレポータープラスミドDNAを昆虫細胞に導入し、エクダイソン活性物質により発現されるルシフェラーゼを検出することにより、高感度かつ簡便に活性を有する物質を検出する方法が、特許文献1に記載されている。しかしながら、目的とする種類の昆虫に対して特異的に作用するエクダイソン活性調節物質を検出するためには、その昆虫由来の細胞系を使用する必要がある。
【0009】
【非特許文献1】Recent Prog.Horm.Res.,22,473−502(1966)
【非特許文献2】Nature,366,476〜479(1993)
【非特許文献3】Insect Biochemistry and Molecular Biology,29,915−930(1999)
【非特許文献4】Dev. Genes Evol.,209,564−571(1999)
【非特許文献5】Annual Report of Sankyo Research Laboratories, 53,1−49(2001)
【非特許文献6】Nature,426,91−96(2003)
【非特許文献7】Mol.Cell Endocrinol.,143,91−99(1998)
【特許文献1】特開2002−291489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、目的とする種類の昆虫に対して特異的に作用するエクダイソン活性調節物質を検出するためには、その昆虫由来の細胞系を使用する必要があった。
【0011】
本発明の目的は、半翅目昆虫、特に半翅目害虫の1種であるワタアブラムシの脱皮を調節する化合物(エクダイソン活性調節物質)を検出する系を提供することである。現在、ワタアブラムシ由来のエクダイソンリセプターおよびウルトラスピラクルは公知ではなく、またワタアブラムシ由来の細胞系には使用可能なものはない。そこでワタアブラムシ由来のエクダイソンリセプター遺伝子およびそのヘテロダイマーであるウルトラスピラクル遺伝子を明らかにし、それらを利用し、スクリーニング系を構築することを本発明の課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、ワタアブラムシより新規エクダイソンリセプター遺伝子および新規ウルトラスピラクル遺伝子のクローニングに成功し、さらにそれらを利用しての脱皮を調節する化合物のスクリーニング系を構築することに成功した。そしてこのスクリーニング系を実施することにより、ワタアブラムシにおけるエクダイソン活性調節物質を検出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の(1)〜(30)に関するものである。
(1)以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(a)配列表の配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列表の配列番号1で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつエクダイソンリセプターとしての機能を有する蛋白質。
(2)前記(1)記載の蛋白質の部分ポリペプチドであって、エクダイソン類との結合に必要な領域に対応する部分アミノ酸配列を含有する部分ポリペプチド、
(3)前記(2)において、エクダイソン類との結合に必要な領域に対応する部分アミノ酸配列が以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなる部分ポリペプチド、
(a)配列表の配列番号1で表わされるアミノ酸配列の234番目から542番目の部分配列;
(b)配列表の配列番号1で表わされるアミノ酸配列の234番目から542番目の部分配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつエクダイソン類と結合するアミノ酸配列。
(4)前記(2)または(3)に記載の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなるGAL4活性化領域とが結合している融合ポリペプチド、
(a)配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(5)前記(2)または(3)に記載の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなるGAL4DNA結合領域が結合している融合ポリペプチド、
(a)配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(6)前記(1)記載の蛋白質をコードするDNA、
(7)以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなるDNA、
(a)配列表の配列番号4で表わされる塩基配列からなる新規エクダイソンリセプターをコードするDNA;
(b)配列表の配列番号4で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された新規エクダイソンリセプターをコードするDNA;
(c)配列番号4で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする新規エクダイソンリセプターをコードするDNA。
(8)前記(2)記載の部分ポリペプチドをコードするDNA、
(9)以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなるDNA、
(a)配列表の配列番号4で表わされる塩基配列の700番目から1626番目の部分配列からなるエクダイソン類との結合能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA;
(b)配列表の配列番号4で表わされる塩基配列の700番目から1626番目の部分配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたエクダイソン類との結合能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA;
(c)配列表の配列番号4で表わされる塩基配列の700番目から1626番目の部分配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするエクダイソン類との結合能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA。
(10)前記(2)または(3)に記載の蛋白質の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなる、GAL4活性化領域が結合している融合ポリペプチドをコードするDNA、
(a)配列表の配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNA;
(b)配列表の配列番号5で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたDNA;
(c)配列表の配列番号5で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
(10)前記(2)または(3)に記載の蛋白質の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなる、GAL4DNA結合領域が結合している融合ポリペプチドをコードするDNA、
(a)配列表の配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNA;
(b)配列表の配列番号6で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたDNA;
(c)配列表の配列番号6で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
(12)以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなる蛋白質、
(a)配列表の配列番号7で表わされるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列表の配列番号7で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつウルトラスピラクルとしての機能を有する蛋白質。
(13)前記(12)記載の蛋白質の部分ペプチドであって、エクダイソンレセプターとの複合体形成に必要な領域に対応する部分アミノ酸配列を含有する部分ペプチド、
(14)前記(13)において、エクダイソンレセプターとの複合体形成に必要な領域に対応する部分アミノ酸配列が以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなる部分ポリペプチド、
(a)配列表の配列番号7で表わされるアミノ酸配列の169番目から432番目の部分配列;
(b)配列表の配列番号7で表わされるアミノ酸配列の169番目から432番目の部分配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつエクダイソンレセプターと複合体を形成するアミノ酸配列。
(15)前記(13)または(14)に記載の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなるGAL4活性化領域が結合している融合ポリペプチド、
(a)配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(16)前記(13)または(14)に記載の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなるGAL4DNA結合領域が結合している融合ポリペプチド、
(a)配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(17)(12)記載の蛋白質をコードするDNA、
(18)以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなるDNA、
(a)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列からなる新規ウルトラスピラクルをコードするDNA;
(b)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された新規ウルトラスピラクルをコードするDNA;
(c)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする新規ウルトラスピラクルをコードするDNA。
(19)前記(13)記載の部分ポリペプチドをコードするDNA、
(20)以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなるDNA、
(a)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列の505番目から1296番目の部分配列からなるエクダイソンレセプターとの複合体形成能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA;
(b)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列の505番目から1296番目の部分配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたエクダイソンレセプターとの複合体形成能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA;
(c)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列の505番目から1296番目の部分配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするエクダイソンレセプターとの複合体形成能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA。
(21)前記(13)または(14)に記載の蛋白質の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなる、GAL4活性化領域が結合している融合ポリペプチドをコードするDNA、
(a)配列表の配列番号5からなるDNA;
(b)配列表の配列番号5で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたDNA;
(c)配列表の配列番号5で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
(22)前記(13)または(14)に記載の蛋白質の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなる、GAL4DNA結合領域が結合している融合ポリペプチドをコードするDNA、
(a)配列表の配列番号6からなるDNA;
(b)配列表の配列番号6で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたDNA;
(c)配列表の配列番号6で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
(23)前記(6)ないし(11)のいずれか一項に記載のDNAを含有する組換えベクター、
(24)前記(17)ないし(22)のいずれか一項に記載のDNAを含有する組換えベクター、
(25)前記(23)記載の組換えベクターと(24)記載の組み換えベクターを同時にもしくはどちらか一方を用いて形質転換させた形質転換体、
(26)前記(25)記載の形質転換体を用いた半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物のスクリーニング方法、
(27)前記(1)ないしは(5)のいずれか一項に記載の蛋白質または部分ポリペプチドまたは融合ポリペプチドを用いた半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物のスクリーニング方法、
(28)前記(1)ないしは(3)に記載の蛋白質または部分ポリペプチドおよび、(12)ないしは(14)記載の蛋白質または部分ポリペプチドを用いた半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物のスクリーニング方法、
(29)前記(26)ないし(28)のいずれか一項に記載のスクリーニング方法で得られる半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物またはその塩、
(30)(29)記載の半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物を主な成分とする殺虫剤、
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、ワタアブラムシ由来の新規エクダイソンリセプター遺伝子および新規ウルトラスピラクル遺伝子が提供される。さらにそれらを利用して構築したスクリーニング系は、ワタアブラムシに作用するエクダイソン活性調節物質を検出する際に有用である。ワタアブラムシに作用するエクダイソン活性調節物質(非ステロイド系化合物)はいまだに報告事例はなく、本スクリーニング系を用いて選抜された活性調節物質は新規殺虫剤としての可能性を秘めている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明をより具体的に説明する。
【0016】
本発明のエクダイソンリセプター(EcR)は配列表の配列番号1に示される新規な蛋白質である。この蛋白質は、半翅目昆虫の1種ワタアブラムシ(Aphis gossypii)に由来する。一番相同性が高いものが前記直翅目昆虫Locusta migratoria由来のEcR(gi:4405799)で、E領域のアミノ酸配列の相同性は70.1%である。
【0017】
また、本発明のエクダイソンリセプターは配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列及び、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列から、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質を含む。ここで「1もしくは数個」とは、通常1〜30個、好ましくは1〜15個である。このアミノ酸の欠失、挿入、および置換は、蛋白質の活性または機能を失わせるものではない。エクダイソンリセプターとしての機能を有する蛋白質であるかの判断は、本発明のスクリーニング系により評価することが出来る。すなわち、リセプターがリガンドに結合する、DNAと相互作用する、ウルトラスピラクルと相互作用するまたは転写を活性化する能力によって評価され得る。
【0018】
エクダイソン類との結合に必要な領域に対応する部分アミノ酸配列を含有する本発明の部分ポリペプチドとは、少なくとも本発明のエクダイソンリセプターのE領域(配列表の配列番号1の316番〜539番のアミノ酸配列)を含む配列番号1に示されるアミノ酸配列の部分ポリペプチドであるか、もしくはE領域を完全に含まなくてもエクダイソン類との結合が出来るポリペプチドであれば良い。エクダイソン類との結合が出来るかどうかの判断は、本発明に含まれるスクリーニング系により評価することが出来る。すなわち、リセプターがリガンドに結合する、ウルトラスピラクル共存下DNAと相互作用する、ウルトラスピラクルと相互作用する、または転写を活性化する能力によって評価され得る。なお、エクダイソン類とは、20−ヒドロキシエクダイソン、ポナステロンA、ムリステロンA等のステロイド骨格を持ち昆虫脱皮ホルモン活性を有する化合物群のことを言う。
【0019】
本発明の部分ポリペプチドのその他の具体例は、例えば、本発明のエクダイソンリセプターのCDEF領域(配列表の配列番号1の168番〜542番)、DEF領域(配列表の配列番号1の234番〜542番)、EF領域(配列表の配列番号1の316番〜542番)、DE領域(配列表の配列番号1の234番〜539番)、CDE領域(配列表の配列番号1の168番〜539番)が挙げられる。この中ではDEF領域、EF領域を含む部分ポリペプチドが好ましい。
【0020】
本発明の部分ポリペプチドとGAL4活性化領域の融合ポリペプチドにおいて、使用される部分ポリペプチドは、例えば本発明のエクダイソンリセプターのE領域(配列表の配列番号1の316番〜539番のアミノ酸配列)、CDEF領域(配列表の配列番号1の168番〜542番)、DEF領域(配列表の配列番号1の234番〜542番)、EF領域(配列表の配列番号1の316番〜542番)、DE領域(配列表の配列番号1の234番〜539番)、CDE領域(配列表の配列番号1の168番〜539番)が挙げられる。この中ではDEF領域、EF領域を含む部分ポリペプチドが好ましい。また、GAL4活性化領域の具体例としては、配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列が挙げられる。配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドも用いることが出来るが、転写活性化の機能を失わせるものではない。本発明の部分ポリペプチドとGAL4活性化領域は、直接結合していても良いが、間に1〜50個アミノ酸が結合していても良い。連結部分のアミノ酸配列の具体例としては、GGSNQTSLYKKAGSAAAPFTが挙げられる。
【0021】
本発明の部分ポリペプチドとGAL4DNA結合領域の融合ポリペプチドにおいて、使用される本発明の部分ポリペプチドは、例えば本発明のエクダイソンリセプターのE領域(配列表の配列番号1の316番〜539番のアミノ酸配列)、CDEF領域(配列表の配列番号1の168番〜542番)、DEF領域(配列表の配列番号1の234番〜542番)、EF領域(配列表の配列番号1の316番〜542番)、DE領域(配列表の配列番号1の234番〜539番)、CDE領域(配列表の配列番号1の168番〜539番)が挙げられる。この中ではDEF領域、EF領域を含む部分ポリペプチドが好ましい。また、DNA結合領域の具体例としては、配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列が挙げられる。配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドは、GAL4−UAS配列に結合する配列を用いることが出来る。本発明の部分ポリペプチドとGAL4DNA結合領域は、直接結合していても良いが、間に1〜50個アミノ酸が結合していても良い。連結部分のアミノ酸配列の具体例としては、SNQTSLYKKAGSAAAPFTが挙げられる。
【0022】
本発明のDNAとは配列番号1で表わされるアミノ酸配列をコードするDNA、配列番号1で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつエクダイソンリセプターとしての機能を有する蛋白質コードするDNAである。このDNAは、半翅目昆虫の1種ワタアブラムシ(Aphis gossypii)に由来する。一番相同性が高いものが前記直翅目昆虫Locusta migratoria由来のEcR(gi:4405799)で、E領域の塩基配列の相同性は65.3%である。その具体例としては、例えば配列表の配列番号4のヌクレオチド配列で表わされるDNAが挙げられる。配列番号4で表わされるDNAは、ワタアブラムシ由来のエクダイソンリセプターの全長cDNA配列(配列表の配列番号9)のオープンリーディングフレーム(ORF)に相当する。本発明のDNAには配列番号4で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつエクダイソンリセプターとしての機能を有する蛋白質をコードするDNA、配列番号4で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAに示される新規なDNAも含まれる。
【0023】
塩基の欠失、置換もしくは付加の程度は、もとの塩基配列との相同性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のものが許容し得る。
【0024】
配列表の配列番号4で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつエクダイソンリセプターとしての機能を有する蛋白質をコードするDNAとしては、部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断によるDNA断片の変異、欠失、連結などにより部分DNA配列が変化したものが挙げられる。これらのDNA変異体が配列番号4に示すDNAとハイブリダイズする程度としては、ストリンジェントな条件下、例えば、ハイブリダイゼーション溶液(50mM トリス−塩酸(pH7.5)、1M NaCl、1%ドデシル硫酸ナトリウム、10%デキストラン硫酸、0.2 mg/mL酵母RNA、0.2 mg/mL鮭精子DNA)中で、遺伝子を結合したメンブランを65℃にて、4時間保温し、プレハイブリダイゼーションとし、次に放射性標識した遺伝子断片を放射性同位体量にして100万dpm/mLとなるように添加し、65℃にて、16時間保温することにより、ハイブリダイゼーションを行い、続いて、このメンブランを、0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含む2×SSC溶液(300mM NaCl、30mM クエン酸三ナトリウム)中で、65℃にて、30分間洗浄した後、オートラジオグラフィーで解析した際に、X線フイルム上でハイブリダイズが確認されるものである。
【0025】
また、本発明には、本発明の部分ポリペプチドをコードするDNA、本発明の融合ポリペプチドを指し、本発明の蛋白質、本発明の部分ポリペプチドならびに本発明の融合ポリペプチドをコード可能な全てのDNAをも含む。さらに、これらのDNAを構成する塩基配列は1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されていてもよく、また、これらのDNAを構成する塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAも含まれる。塩基の欠失、置換もしくは付加の程度及びストリンジェントな条件は前記と同様である。
【0026】
本発明の部分ポリペプチドとGAL4活性化領域が、間接的に結合している場合、その連結部分のヌクレオチドは、フレームシフトを起こさないか、終止コドンをコードしなければいずれでも良い。連結部分の数は3〜150個である。連結部分のポリヌクレオチドの具体例としては、GGTGGGTCGAATCAAACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCCGCGGCCGCCCCCTTCACが挙げられる。
【0027】
本発明の部分ポリペプチドとGAL4DNA結合領域が、間接的に結合している場合、その連結部分のヌクレオチドは、フレームシフトを起こさないか、終止コドンをコードしなければいずれでも良い。連結部分の数は3〜150個である。連結部分のポリヌクレオチドの具体例としては、TCGAATCAAACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCCGCGGCCGCCCCCTTCACCが挙げられる。
【0028】
本発明のウルトラスピラクルは配列表の配列番号7に示される新規な蛋白質である。この蛋白質は、半翅目昆虫の1種ワタアブラムシ(Aphis gossypii)に由来する。一番相同性の高いものが前記直翅目昆虫Locusta migratoria由来のウルトラスピラクル(gi:33943178)で、EF領域のアミノ酸配列の相同性は68.6%である。
【0029】
また、本発明のウルトラスピラクルは配列表の配列番号7に示されるアミノ酸配列から、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質を含む。ここで「1もしくは数個」とは、通常1〜30個、好ましくは1〜15個である。このアミノ酸の欠失、挿入、および置換は、蛋白質のの活性または機能を失わせるものではない。ウルトラスピラクルとしての機能を有する蛋白質であるかの判断は、本発明のスクリーニング系により評価することが出来る。すなわち、その蛋白質が、エクダイソンリセプター共存下DNAと相互作用する、エクダイソンリセプターと相互作用する、または転写を活性化する能力によって評価され得る。
【0030】
本発明の部分ポリペプチドにおいて正常エクダイソンレセプターとの複合体形成に必要な領域に対応する部分アミノ酸配列とは、少なくとも本発明のウルトラスピラクルのEF領域(配列表の配列番号7の194番〜432番のアミノ酸配列に相当)を含む部分ポリペプチドであるか、もしくはEF領域を完全に含まなくても正常エクダイソンレセプターとの複合体形成が出来るポリペプチドであれば良い。正常エクダイソンレセプターとの複合体形成が出来る蛋白質であるかの判断は、本発明のスクリーニング系により評価することが出来る。すなわち、該部分ポリペプチドが、エクダイソンリセプター共存下DNAと相互作用する、エクダイソンリセプターと相互作用する、または転写を活性化する能力によって評価され得る。
【0031】
正常エクダイソンレセプターとの複合体形成に必要な領域に対応する部分アミノ酸配列を少なくとも含有する本発明の部分ポリペプチドのその他の具体例は、例えば、CDEF領域(配列表の配列番号7の103番〜432番)、DEF領域(配列表の配列番号7の169番〜432番)が挙げられる。好ましくはDEF領域を含む部分ポリペプチドが好ましい。
【0032】
本発明の部分ポリペプチドとGAL4活性化領域の融合ポリペプチドにおいて、使用される本発明の部分ポリペプチドは、例えばウルトラスピラクルのEF領域(配列表の配列番号7の194番〜432番のアミノ酸配列に相当)、CDEF領域(配列表の配列番号7の103番〜432番)、DEF領域(配列表の配列番号7の169番〜432番)が挙げられる。この中ではDEF領域、EF領域を含む部分ポリペプチドが好ましい。また、GAL4活性化領域の具体例としては、配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列が挙げられる。配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドも用いることが出来るが、転写活性化の機能を失わせるものではない。本発明の部分ポリペプチドとGAL4活性化領域は、直接結合していても良いが、間に1〜50個アミノ酸が結合していても良い。
【0033】
本発明の部分ポリペプチドとDNA結合領域の融合ポリペプチドにおいて、使用される本発明の部分ポリペプチドは、例えばウルトラスピラクルのEF領域(配列表の配列番号7の194番〜432番のアミノ酸配列に相当)、CDEF領域(配列表の配列番号7の103番〜432番)、DEF領域(配列表の配列番号7の169番〜432番)が挙げられる。この中ではDEF領域、EF領域を含む部分ポリペプチドが好ましい。また、DNA結合領域の具体例としては、配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列が挙げられる。配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドは、GAL4−UAS配列に結合する配列を用いることが出来る。本発明の部分ポリペプチドとGAL4結合領域は、直接結合していても良いが、間に1〜50個アミノ酸が結合していても良い。
【0034】
本発明のDNAとは配列表の配列番号7で表わされるアミノ酸配列をコードするDNA、配列番号7で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつウルトラスピラクルとしての機能を有する蛋白質をコードするDNAをも含む。このDNAは、半翅目昆虫の1種ワタアブラムシ(Aphis gossypii)に由来する。一番相同性が高いものが前記直翅目昆虫Locusta migratoria由来のウルトラスピラクル(gi:33943178)で、EF領域の塩基配列の相同性は62.4%である。その具体例としては、例えば、配列表の配列番号8のヌクレオチド配列で表わされるDNAが挙げられる。配列表の配列番号8で表わされるDNAは、ワタアブラムシ由来のウルトラスピラクルの全長cDNA配列(配列表の配列番号10)のオープンリーディングフレーム(ORF)に相当する。本発明のDNAには配列番号8で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつエクダイソンリセプターとしての機能を有する蛋白質をコードするDNA、配列番号8で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAに示される新規なDNAも含まれる。
【0035】
これらの塩基の欠失、置換もしくは付加の程度は、もとの塩基配列との相同性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のものが許容し得る。
【0036】
配列表の配列番号8で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつウルトラスピラクルとしての機能を有する蛋白質を発現せしめるDNAも本発明の範囲内のものである。このようなハイブリダイズするDNA変異体としては、部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断によるDNA断片の変異、欠失、連結などにより部分DNA配列が変化したものが挙げられる。これらのDNA変異体が配列番号8に示すDNAとハイブリダイズする程度としては、ストリンジェントな条件下、例えば、ハイブリダイゼーション溶液(50mM トリス−塩酸(pH7.5)、1M NaCl、1%ドデシル硫酸ナトリウム、10%デキストラン硫酸、0.2 mg/mL酵母RNA、0.2 mg/mL鮭精子DNA)中で、遺伝子を結合したメンブランを65℃にて、4時間保温し、プレハイブリダイゼーションとし、次に放射性標識した遺伝子断片を放射性同位体量にして100万dpm/mLとなるように添加し、65℃にて、16時間保温することにより、ハイブリダイゼーションを行い、続いて、このメンブランを、0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含む2×SSC溶液(300mM NaCl、30mM クエン酸三ナトリウム)中で、65℃にて、30分間洗浄した後、オートラジオグラフィーで解析した際に、X線フイルム上でハイブリダイズが確認されるものである。
【0037】
また、本発明には本発明の部分ポリペプチドをコードするDNA、本発明の融合ポリペプチドをも指し、該本発明の蛋白質、該本発明の部分ポリペプチド、本発明の融合ポリペプチドをコード可能な全てのDNAをも含む。さらに、これらのDNAを構成する塩基配列は1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されていてもよく、また、これらのDNAを構成する塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAも含まれる。塩基の欠失、置換もしくは付加の程度及びストリンジェントな条件は前記と同様である。
【0038】
本発明の部分ポリペプチドとGAL4活性化領域が、間接的に結合している場合、その連結部分のヌクレオチドは、フレームシフトを起こさないか、終止コドンをコードしなければいずれでも良い。連結部分の数は3〜150個である。連結部分のポリヌクレオチドの具体例としては、GGTGGGTCGAATC AAACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCCGCGGCCGCCCCCTTCACが挙げられる。
【0039】
本発明の部分ポリペプチドとGAL4DNA結合領域が、間接的に結合している場合、その連結部分のヌクレオチドは、フレームシフトを起こさないか、終止コドンをコードしなければいずれでも良い。連結部分の数は3〜150個である。連結部分のポリヌクレオチドの具体例としては、TCGAATCAAACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCCGCGGCCGCCCCCTTCACCが挙げられる。
【0040】
本発明の蛋白質は、それを天然で発現する細胞または昆虫から得るか、それを発現するように改変された(すなわち、組換え)細胞から得るか、無細胞タンパク合成により得るか、または当該分野で周知の蛋白質合成技術を使用して合成され得る。好ましくは、組換え細胞から得る方法、無細胞タンパク合成によって産生される。これらの方法については、後述する。
【0041】
本発明の組換えベクターから合成される蛋白質には、本発明のDNAによってコードされる蛋白質、本発明の部分ポリペプチドおよび本発明の融合ポリペプチド及びが含まれる。これらの蛋白質、部分ポリペプチドおよび融合ポリペプチドは、作動可能に連結されていてもよく、または作動可能に連結されていなくてもよい。作動可能な連結の例は、単一の蛋白質が翻訳に際して産生されるようなインフレームの融合である。このような融合蛋白質は、例えば、組換え蛋白質の精製を容易にする。別の実施態様において、融合蛋白質は、特定の宿主細胞からのその分泌を容易にする、N末端の異種シグナル配列を含み得る。蛋白質の発現および分泌は、異種シグナル配列の使用によって増大され得る。また、前記GAL4のDNA結合領域との融合蛋白質、前記GAL4の活性化領域との融合蛋白質も含む。
【0042】
本発明のDNAはそれを含む組換え体プラスミドを構築することで、該DNAを大腸菌などに安定に保持させることが可能であり、この際ベクターとしては、一般に使われるものはすべて使用可能であるが、例えば、pBluescript KS(+)、pGEM−Tベクター、pGEM−Teasyベクター、pENTR TOPOベクター等がある。以後に述べる実施例では、pGEM−Tベクター、pGEM−Teasyベクター、pENTR TOPOベクター使った例が示されている。これらプラスミドを必要に応じて適当な制限酵素などで切断した後、適当なベクターに接続し、昆虫細胞用、酵母用、動物細胞用、無細胞系蛋白質合成用、トランスジェニック動物作成用、トランスジェニック昆虫作成用、トランスジェニック植物用等のベクターとすることが出来る。
【0043】
本発明で用いることのできるベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例:pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例:pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミド(例:pSH19、pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
【0044】
本発明で用いることのできるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどがあげられる。これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモータープロモーターとしては、OpIE2プロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、フィブロイン遺伝子プロモーター、セリシン遺伝子プロモーター、アクチン遺伝子プロモーター、ミオシン遺伝子プロモーターなどが挙げられるが、その中でもヒートショックプロモーター、OpIE2プロモーター、アクチン遺伝子プロモーターが好ましい。
【0045】
発現ベクターには、以上の他に、必要に応じてエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンB耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子等を用いることができる。また、市販されているベクターも使用可能である。
【0046】
昆虫細胞用としては、pMT/V5−Hisベクター、pMT/Bip/V5−Hisベクター、pMT/BioEase−DESTベクター、pAc5.1/V5−Hisベクター、pIB/V5−Hisベクター、pIZ/V5−Hisベクター、pIZT/V5−Hisベクター、pIB/V5−His−TOPOベクター、pIZT/V5−His−DESTベクター(以上インビトロジェン社製)等が挙げられる。
【0047】
酵母用としては、pDEST22ベクター、pDEST32ベクター(以上インビトロジェン社製)、pGBKT7ベクター、pGADT7ベクター(以上クロンテック社製)等が挙げられる。
【0048】
動物細胞用としては、pSIベクター、pCIベクター(以上プロメガ社製)、pcDNA−DEST40ベクター、pcDNA3.1/V5−His−TOPOベクター、pCR3.1ベクター(以上インビトロジェン社製)等が挙げられる。
【0049】
無細胞系蛋白質合成用としては、pTNTベクター(プロメガ社製)、pBluescript KS(+)(ストラタジーン社製)等が挙げられる。
【0050】
このようにして構築された本発明のDNAを含有するベクターを用いて、本発明の形質転換体を製造することができる。本発明の形質転換体の宿主としては、例えば、使用するプラスミドに合わせて、大腸菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
【0051】
宿主として形質転換可能な大腸菌の具体例としては、JM103株、DH5α株、JA221株、HB101株、JM109株などが用いられる。
【0052】
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22、AH22R-、NA87−11A、DKD−5D,20B−12、MaV103、MaV203、YRG−2、Y190、SFY526等が使用可能であるが、ツーハイブリッドアッセイの宿主として考えた場合には、MaV103、MaV203、YRG−2、Y190、SFY526が好ましい。
【0053】
昆虫細胞としては、例えば、Spodoptera frugiperda由来のSf9細胞、Sf21細胞、Trichoplusia niMG1細胞、High FiveTM 細胞、Bombyx mori由来のBmN細胞、Drosophila melanogaster由来のS2細胞、Kc細胞などが用いられる。
【0054】
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる。
【0055】
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記)、マウスL細胞、マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞、HeLa細胞、293細胞などが用いられる。
【0056】
大腸菌を形質転換するには、例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69巻,2110(1972)やGene,17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0057】
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology,194巻,182−187(1991)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0058】
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology,6,47−55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0059】
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、Virology,52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。昆虫細胞もしくは動物細胞を形質転換する方法の中で、操作が簡便で特別な機器を必要とせず、高いトランスフェクション効率と高い再現性を示す等の理由からリポフェクション法が好ましい。用いうるトランスフェクション試薬としては市販されている陽電荷脂質試薬等を用いることができ、例えばTfx−20(Promega社製)、Trans fast(Promega社製)、LipofectAMINE(インビトロジェン社製)、Lipofectin (インビトロジェン社製)、Cellfectin(インビトロジェン社製) 、TRANSFECTAM(生化学工業)等が挙げられ、好ましくはTfx−20(Promega社製)、Cellfectin(インビトロジェン社製)である。
【0060】
このようにして、本発明の形質転換体が得られる。
【0061】
宿主が大腸菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0062】
大腸菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地や、LB培地、SOC培地が挙げられ、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
【0063】
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、YPAD培地、SC培地を使用することが可能である。SC培地は特定のアミノ酸を除くことにより栄養要求性の培地とすることも出来る。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0064】
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、例えば、Grace培地、IPL−41培地、Schneider’s Drosophila培地、TC−100培地、TC−10培地、IPL−41培地、TMN−FH培地、MM培地、MGM443培地、MGM448培地、EX−CELL405培地、M3(BF)培地等の使用が可能であり、必要に応じて1〜30%、好ましくは3〜20%のウシ胎児血清(FBS)を添加することができる。その他、SF−900IISFM培地、Drosophila SFM培地、Express Five SFM培地等の無血清培地を用いることも可能である。また、必要に応じてアミノ酸類、糖類、塩類、イーストレイト、ラクトアルブミン水解物等、様々な栄養物を添加することも可能である。さらに、ゲンタマイシン、アンピシリン、アンホテリシンB、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を添加することも可能である。培地のpHは約6〜7に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0065】
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地,DMEM培地,RPMI 1640培地、199培地などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0066】
以上のようにして、形質転換体の細胞内または細胞外に本発明の蛋白質を生成せしめることができる。
【0067】
また、本発明の蛋白質は無細胞蛋白合成系を用いることにより生成させることができる。無細胞系タンパク合成とは、無細胞系で転写・翻訳機能を有した溶液中、発現プラスミドを加え、その溶液中で蛋白質を合成させるものである。転写・翻訳機能を有した溶液とは、例えばウサギ網状赤血球ライセート、小麦胚芽ライセート等が挙げられるが、ウサギ網状血球ライセートが好ましい。市販品としては、例えば、TNT T7 Quick−coupled Transcription/Translation System(プロメガ社製)、TNT SP6 Quick−coupled Transcription/Translation System(プロメガ社製)、PROTEINscriptII Kit(アンビオン社製)等がある。発現プラスミドは、例えば、前述のpTNTベクター(プロメガ社製)、pBluescript KS(+)(ストラタジーン社製)等に目的の蛋白質をコードするDNAを挿入することにより構築が可能である。
【0068】
本発明の蛋白質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により本発明の蛋白質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トライトンX−100などの界面活性剤が含まれていてもよい。このようにして得られた本発明の蛋白質の粗抽出液の精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。蛋白質の精製については、例えば「蛋白質実験ハンドブック」(羊土社)記載がある。
【0069】
本発明の形質転換体を用いた半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物のスクリーニング方法は、形質転換体を用いてできるスクリーニング方法であれば良いが、例えばレポータージーンアッセイ、ツーハイブリッドアッセイ等が含まれる。
【0070】
本発明のスクリーニング方法におけるレポータージーンアッセイは、エクダイソン活性調節物質による転写活性化、転写抑制を指標に行う殺虫剤のスクリーニング系として使用が可能である。例えば、エクダイソンリセプターを発現するベクター、ウルトラスピラクルを発現するベクターおよびレポーターベクターを同時に宿主細胞に導入し、その後、化合物を投与し、一定時間後発現したレポーター蛋白質の活性を測定することにより、エクダイソン様活性調節物質を発見することができる。また、宿主細胞が昆虫細胞である場合、エクダイソンリセプターを発現するベクター、およびレポーターベクターを同時に宿主細胞に導入し、その後、化合物を投与し、一定時間後発現したレポーター蛋白質の活性を測定することにより、エクダイソン様活性調節物質を発見することができる。また、あらかじめ当該の発現ベクターを宿主細胞に導入し作製した形質転換細胞を、選択薬剤とともに培養することによってスクリーニング用ベクターを含む細胞のみを使用することも可能である。これらの細胞はこのままスクリーニングに用いても良いし、クローニングすることによって、単一の細胞株として調製した後、スクリーニングに用いても良い。宿主細胞は昆虫細胞もしくは動物細胞が好ましい。本実施例においては昆虫細胞を使用した例が示してある。
【0071】
宿主細胞として昆虫細胞を用いた場合、昆虫細胞もその昆虫細胞由来のエクダイソンリセプターを産出している場合がある。この場合でも、導入された発現ベクター由来(つまり、ワタアブラムシ由来)のエクダイソンリセプターの方が多く発現しているために、その昆虫細胞はレポータージーンアッセイに使用できる。また、それは使用した昆虫細胞にレポーターベクターのみを導入した時のレポーター蛋白質活性との比較をすることにより判断することが可能である。
【0072】
本発明のスクリーニング方法に使用できるレポーターベクターは、例えば特開2002−291489号公報記載のようにエクダイソン応答配列(EcRE)、プロモーターおよびレポーター遺伝子を有するベクターが使用できる。レポーター遺伝子としては、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ等が利用できるが、検出感度が高いルシフェラーゼのほうが好ましい。エクダイソン応答配列とはエクダイソン類−エクダイソンリセプター−ウルトラスピラクルからなる複合体が認識することのできるDNA配列を指す。例えばGGTTCA−A−TGCACTであり、この配列を含むDNAフラグメントは既知の合成法によって容易に合成することができる。
【0073】
本スクリーニングに供することのできる化合物は、例えば合成した化合物であっても良いし、微生物二次代謝産物であってもよい。また低分子化合物であっても良いし、ポリペプチドのような高分子化合物であってもよい。
【0074】
本発明のスクリーニング方法におけるツーハイブリッドアッセイは、エクダイソン活性調節物質によるエクダイソンレセプターとウルトラスピラクルの相互作用への影響を指標に行う半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物のスクリーニング系である。宿主細胞として例えば酵母、昆虫細胞、動物細胞を用いることができる。例えば、ProQuest Two−Hybrid System with Gateway Technology(インビトロジェン社製)、MATCHMAKER GAL4 Two−Hybrid System3(クロンテック社製)、HybriZAD 2.1 Two−Hybrid Vecter Kit(ストラタジーン社製)、Mammalian Two−Hybrid Assay Kit(ストラタジーン社製)、DupLEX−A 酵母 Two−Hybrid System(タカラバイオ社製)等市販されているキットを使用してもアッセイ系の構築が可能である。以下に述べる実施例においては、宿主細胞として酵母を使用した例が示してある。酵母ツーハイブリッドアッセイは「蛋白質実験ハンドブック」(羊土社)、「バイオ実験イラストレイテッド7使おう酵母できるTwo−Hybrid」(秀潤社)記載の方法に従うことにより実施可能である。
【0075】
具体的には以下の例を挙げることができる。
(A)GAL4のDNA結合領域と本発明のエクダイソンリセプターの部分ポリペプチドであるDEF領域(配列番号1の234番〜542番)、もしくはEF領域(配列番号1の316番〜542番)、もしくはDE領域(配列番号1の234番〜539番)、もしくはE領域(配列番号1の316番〜539番のアミノ酸配列)との融合蛋白質を発現するベクターを構築する。(例えば、pDEST32(インビトロジェン社製)に当該部分ポリペプチドをコードするDNAを組み込むことにより構築可能である。);
(B)GAL4の活性化領域とウルトラスピラクルのDEF領域(配列番号7の169番〜432番)、もしくはEF領域(配列番号7の194番〜432番のアミノ酸配列に相当)との融合蛋白質を発現するベクターを構築する。(例えば、pDEST22(インビトロジェン社製)に当該部分ポリペプチドをコードするDNAを組み込むことにより構築可能である。);
(C)(A)または(B)の発現ベクターを、GAL4誘導性のレポーター遺伝子が組み込んである宿主酵母(例えば、MaV103、MaV203(共にインビトロジェン社製)に導入し、形質転換酵母を作製する。プラスミド導入方法はプロトプラスト法、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法等があるが、酢酸リチウム法が望ましい。
(D)試験化合物共存下、(C)の形質転換酵母を一定時間培養後、発現したレポーター蛋白質の活性を測定することにより、エクダイソン様活性調節物質を発見することができる。レポーター遺伝子としては、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ等が利用できる。;
【0076】
(E)GAL4のDNA結合領域とウルトラスピラクルのDEF領域(配列番号7の169番〜432番)、もしくはEF領域(配列番号7の194番〜432番のアミノ酸配列に相当)との融合蛋白質を発現するベクターを構築する。(例えば、pDEST32(インビトロジェン社製)に当該部分ポリペプチドをコードするDNAを組み込むことにより構築可能である。);
(F)GAL4の活性化領域と本発明のエクダイソンリセプターの部分ポリペプチドであるDEF領域(配列番号1の234番〜542番)、もしくはEF領域(配列番号1の316番〜542番)、もしくはDE領域(配列番号1の234番〜539番)、もしくはE領域(配列番号1の316番〜539番のアミノ酸配列)との融合蛋白質を発現するベクターを構築する。(例えば、pDEST22(インビトロジェン社製)に当該部分ポリペプチドをコードするDNAを組み込むことにより構築可能である。);
【0077】
(G)(A)、(B)の発現ベクターを、GAL4誘導性のレポーター遺伝子が組み込んである宿主酵母(例えば、MaV103、MaV203(共にインビトロジェン社製)に導入し、形質転換酵母を作製する。プラスミド導入方法はプロトプラスト法、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法等があるが、酢酸リチウム法が望ましい。;
(H)試験化合物共存下、(C)の形質転換酵母を一定時間培養後、発現したレポーター蛋白質の活性を測定することによっても、エクダイソン様活性調節物質を発見することができる。本スクリーニングに供することのできる化合物は、例えば合成した化合物でも良いし、微生物二次代謝産物であってもよい。また低分子化合物であっても良いし、ポリペプチドのような高分子化合物であってもよい。
【0078】
また、上記のGAL4システムを利用したツーハイブリッドシステムの代わりに、LexA−B42システムも同様に使用することが可能である。
【0079】
本発明のエクダイソンリセプター、エクダイソンリセプターの部分ペプチドまたは融合ポリペプチドを用いた半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物のスクリーニング方法としては、例えばリガンドバインディングアッセイも含まれる。リガンドバインディングアッセイは、例えば、Eur.J.Biochem.,270,4095−4104(2003)記載の方法により実施可能である。試験化合物と競合させる放射性同位元素でラベルされたリガンドとしては、放射性同位元素でラベルされたエクダイソン、20−ヒドロキシエクダイソン、ポナステロンA、ムリステロンA等があるが、例えばトリチウムでラベルされたポナステロンAが使用可能である。
【0080】
本発明の蛋白質及び部分ポリペプチドを用いた半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物のスクリーニング方法としては、例えばゲルシフトアッセイが含まれる。
【0081】
本発明のスクリーニング方法に使用する本発明の蛋白質、部分ポリペプチドは前記の無細胞系蛋白質合成、形質転換した宿主細胞からの抽出、ワタアブラムシ虫体からの抽出等により得ることが可能である。粗精製のままであっても良いし、精製後の蛋白質またはポリペプチドを使用しても良い。
【0082】
ゲルシフトアッセイについては、例えば「蛋白質実験ハンドブック」(羊土社)、Nature,366,476〜479 (1993)記載の方法等により行うことが可能である。また、LightShift Chemiluminescent EMSA Kit(PIERCE社製)を利用することも出来る。本発明におけるゲルシフトアッセイはエクダイソンリセプターもしくはその部分ポリペプチドと、ウルトラスピラクルもしくはその部分ポリペプチドをバッファー中で相互作用させ、次いでラベル化したエクダイソン応答配列、場合によっては同時に非ラベル化エクダイソン応答配列を加えて結合反応をさせ、その後電気泳動により分画し、ラベル化エクダイソン応答配列を検出するものである。エクダイソン応答配列が蛋白質に結合すれば、電気泳動での移動が遅くなり、そこにバンドシフトが現れる。
【0083】
エクダイソンリセプターもしくはその部分ポリペプチドはいずれもゲルシフトアッセイに使用可能であるが、好ましくはエクダイソンリセプターを用いるのが良い。ウルトラスピラクルもしくはその部分ポリペプチドはいずれもゲルシフトアッセイに使用可能であるが、好ましくはウルトラスピラクルを用いるのが良い。
【0084】
ゲルシフトアッセイにおいて使用するエクダイソン応答配列はエクダイソンリセプターーウルトラスピラクル複合体と結合する配列であればなんでも良いが、例えば、以下に示すhsp27、Pal−1、DR−4が使用可能である。またこれらのエクダイソン応答配列は、検出のために放射性同位体でラベルする、もしくはビオチンでラベルすること等が可能である。
【0085】
hsp27:ACGCGTGACAAGTGCATTGAACCCTTGTC
Pal−1:GATCTAGAGAGGTCAATGACCTCGTCC
DR−4:GATCCGTAGGGGTCACGAAAGGTCACTCGA
【0086】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、昆虫生体内においてはエクダイソン類により誘導される遺伝子発現の発現量を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)エクダイソン類により誘導される遺伝子発現の発現量を増加させることにより、脱皮等昆虫の成育を制御する化合物、(ロ)エクダイソン類により誘導される遺伝子発現の発現量を低下させることにより、脱皮等昆虫の成育を制御する化合物である。
【0087】
該化合物としては特に制限はないが、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0088】
本発明の蛋白質、部分ポリペプチド、部分ペプチド、DNA、ベクターを使用すれば、宿主生物内において目的の外因性遺伝子もしくは内因性遺伝子の発現を調節する方法を提供することができる。例えば、
(i)エクダイソン応答配列と外因性遺伝子もしくは内因性遺伝子を含むベクター、
(ii)本発明のエクダイソンリセプター、もしくはそのDNA結合領域およびそのリガンド結合領域を含む部分ポリペプチドのいずれかを発現するベクター、及び
(iii)ウルトラスピラクル、もしくはそのDNA結合領域およびそのリガンド結合領域を含む部分ポリペプチドのいずれかを発現するベクター
を宿主生物に導入し、エクダイソンリセプターに作用する化合物を投与することにより、目的の外因性遺伝子もしくは内因性遺伝子の発現を調節する方法が含まれる。エクダイソンリセプターに作用する化合物を宿主生物に投与すると、導入した(ii)及び(iii)のベクターにより宿主生物内で発現している(II)エクダイソンリセプター、もしくはそのDNA結合領域およびリガンド結合領域を含む部分ポリペプチドと(III)ウルトラスピラクル、もしくはそのDNA結合領域およびそのリガンド結合領域を含む部分ポリペプチドとの複合体が、投与された化合物と結合し活性化する。活性化した複合体は、その状態で導入した(i)のベクター上にあるエクダイソン応答配列に結合することにより、エクダイソン応答配列の下流に存在する外因性遺伝子もしくは内因性遺伝子の発現を増大させる。該化合物としては特に制限はないが、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0089】
さらに、本発明のエクダイソンリセプター、またはそのDNA結合領域及びリガンド結合領域を含む部分ポリペプチドに特異的に作用する化合物を使用すれば、本発明のエクダイソンリセプターに依存した特異的な遺伝子調節システムを提供することができる。該化合物としては特に制限はないが、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0090】
本発明の半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物を使用するに際しては、本発明の化合物それ自体で用いてもよいが、農薬補助剤として製剤化に一般的に用いられる担体、界面活性剤、およびその他補助剤を配合して、乳剤、懸濁剤、粉剤、粒剤、錠剤、水和剤、水溶剤、液剤、フロアブル剤、顆粒水和剤、エアゾール剤、ペースト剤、油剤、乳濁剤等の種種の形態に製剤することができる。これらの配合割合は通常、有効成分0.1〜9.0質量部で農薬補助剤10〜99.9質量部である。
【0091】
ここにいう製剤化に際して用いられる担体としては、固体担体と液体担体に分けられる。固体担体としては、例えば澱粉、活性炭、大豆紛、小麦粉、木紛、魚粉、粉乳等の動植物性粉末、タルク、カオリン、ベントナイト、炭酸カルシウム、ゼオライト、珪藻土、ホワイトカーボン、クレー、アルミナ等の鉱物性粉末が挙げられる。液体担体としては、例えば水、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ケロシン、軽油等の脂肪族炭化水素類、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼンメチルナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルアセトアミド等の酸アミド類、脂肪酸のグリセリンエステル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類ジメチルスルホキシド等の含硫化合物類等が挙げられる。
【0092】
界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸金属塩、ジナフチルメタンジスルホン酸金属塩、アルコール硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレート等が挙げられる。
【0093】
その他の補助剤としては、例えば、カルボキシジメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、トラガントガム、ポリビニルアルコール等の固着剤あるいは増粘剤、金属石鹸等の消泡剤、脂肪酸、アルキルリン酸塩、シリコーン、パラフィン等の物性向上剤着色剤等を用いることができる。
【0094】
これら製剤の実際の使用に際しては、そのまま使用するか、又は水等の希釈剤で所定濃度に希釈して使用することができる。本発明化合物を含有する種々の製剤、又はその希釈剤の施用は、通常一般的に行われている施用方法、即ち、散布(例えば、噴霧、ミスティング、アトマイジング、散紛、散粒、水面施用、箱施用等)、土壌施用(例えば、混入、灌注等)、表面施用(例えば、塗布、紛衣、被覆等)、浸漬、毒餌等により行うことができる。また、家畜に対して前記有効成分を資料に混合して与え、その排泄物での有害虫、特に有害昆虫の発生、生育を防除することも可能である。又いわゆる超高濃度少量散布法により施用することもできる。この方法においては、有効成分を100%含有することが可能である。
【0095】
本発明の半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物の施用は、一般的に0.1〜50000ppm、望ましくは1〜10000ppmの有効成分濃度で行う。
【0096】
有効成分濃度は製剤の形態および施用する方法、目的、時期、場所及び有害生物の発生状況によって適当に変更できる。例えば、水生有害生物の場合、上記濃度範囲の薬液を発生場所に散布しても防除できることから、水中での有効成分濃度は上記以下である。10アール当たり、有効成分化合物として0.1〜5000g、好ましくは1〜1000gが使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
尚、本発明の化合物は単独でも十分有効であることはいうまでもないが、必要に応じて他の肥料及び農薬、例えば殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺菌剤、抗ウィルス剤、誘引剤、除草剤、植物調整剤などと混用、併用することができ、この場合に一層優れた効果を示すこともある。
【0098】
本発明の化合物は、例えば、半翅目害虫、鱗翅目害虫、鞘翅目害虫、双翅目害虫、膜翅目害虫、直翅目害虫、シロアリ目害虫、アザミウマ目害虫、ハダニ類及び植物寄生性線虫類に対して優れた防除効果を示す。また、本発明化合物は、その他有害動物、不快動物、衛生害虫及び寄生虫に対しても優れた防除効果を示し、殺虫剤として利用可能である。
【0099】
半翅目害虫として、例えば、ホソヘリカメムシ(Riptortus clavatus)、ミナミアオカメムシ(Nezara viridula)、カスミカメムシ類(Lygus sp.)、アメリカコバネナガカメムシ(Blissus leucpterus)、ナシグンバイ(Stephanitis nashi)等のカメムシ類(異翅類;Heteroptera)、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、ヒメヨコバイ(Empoasca sp., Erythroneura sp., Circulifer sp.)等のヨコバイ類、トビイロウンカ(Nilaparvatalugens)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)、ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)等のウンカ類、Psylla sp.等のキジラミ類、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、等のコナジラミ類、ブドウネアブラムシ(Viteusvitifolii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、リンゴアブラムシ(Aphis pomi)、ワタアブラムシ(Aphisgossypii)、Aphis fabae、ニセダイコンアブラムシ(Liphis erysimi)、ジャガイモヒゲナガアブラムシ(Aulacorthum solani)、ムギミドリアブラムシ(Schizaphisgraminum)等のアブラムシ類、クワコナカイガラムシ(Pseudococcus comstocki)、ルビーロウムシ(Ceroplastesrubens)、サンホーゼカイガラムシ(Comstockaspis perniciosa)、ヤノネカイガラムシ(Unaspis yanonensis)等のカイガラムシ及びサシガメ(Rhodnius sp.)が挙げられる。
【0100】
鱗翅目害虫として、例えば、チャハマキ(Homona magnanima)、コカクモンハマキ(Adoxophyes orana)、テングハマキ(Sparganothis pilleriana)、ナシヒメシンクイ(Grapholita molesta)、マメシンクイガ(Leguminivora glycinivorella)、コドリンガ(Laspeyresiapomonella)、Eucosma sp.、Lobesia botrana等のハマキガ類、ブドウホソハマキ(Eupoecillia ambiguella)、等のホソハマキガ類、Bambalina sp.等のミノガ類、コクガ(Nemapogon granellus)、イガ(Tineapellionella)等のヒロズコガ類、ギンモンハモグリガ(Lyonetia prunifoliella)等のハモグリガ類、キンモンホソガ(Phyllonorycter ringoniella)等のホソガ類、ミカンハモグリガ(Phyllocnistis citrella)等のコハモグリガ類、コナガ(Plutella xylostella)、Prays citri等のスガ類、ブドウスカシバ(Nokona vegale)、Synanthedon sp.等のスカシバ類、ワタアカミムシ(Pectinophora gossypiella)、ジャガイモガ(Phthorimaeaoperculella)、Stomopteryx sp.等のキバガ類、モモシンクイガ(Carposina niponensis)等のシンクイガ類、イラガ(Monema flavescens)等のイラガ類、ニカメイガ(Chilo suppressalis)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、Ostrinia nubilalis、アワノメイガ(Ostrinia furnacalis)、ハイマダラノメイガ(Hellulla undalis)ハチミツガ(Galleria mellonella)、Elasmopalpus lignosellus、Loxostege sticticalis等のメイガ類、モンシロチョウ(Pieris rapae)等のシロチョウ類、ヨモギエダシャク(Ascotis selenaria)等のシャクガ類、オビカレハ(Malacosomaneustria)等のカレハガ類、Manduca sexta等のスズメガ類、チャドクガ(Euproctis pseudoconspersa)、マイマイガ(Lymantria dispar)等のドクガ類、アメリカシロヒトリ(Hyphantria cunea)等のヒトリガ類、タバコバッドワーム(Heliothis virescens)、ボールワーム(Helicoverpa zea)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)及びイラクサキンウワバ(Trichoplusia ni)等のヤガ類が挙げられる。
【0101】
鞘翅目害虫として、例えば、ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、マメコガネ(Popillia japonica)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)、Eutheolarugiceps等のコガネムシ類、ワイヤーワーム(Agricotes sp.)、Conodeus sp.等のコメツキムシ類、ニジュウヤホシテントウ(Epilachna vigintioctopunctata)、インゲンテントウムシ(Epilachna varivestis)等のテントウムシ類、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)等のゴミムシダマシ類、ゴマダラカミキリ(Anoplophora malasiaca)、マツノマダラカミキリ(Monochamus alternatus)等のカミキリムシ類、インゲンマメゾウムシ(Acanthoscelides obtectus)、アズキゾウムシ(Callosobruchus chinensis)等のマメゾウムシ類、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)、コーンルートワーム(Diabrotica sp.)、イネドロオイムシ(Oulema oryzae)、テンサイトビハムシ(Chaetocnema concinna)、Phaedon cochlearias、Oulema melanopus、Dicladispa armigera等のハムシ類、Apion godmani等のホソクチゾウムシ類、イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus)、ワタミゾウムシ(Anthonomus grandis)等のゾウムシ類、コクゾウムシ(Sitophilus zeamais)等のオサゾウムシ類、キクイムシ類、カツオブシムシ類及びシバンムシ類が挙げられる。
【0102】
双翅目害虫として、例えば、キリウジガガンボ(Tipula aino)、イネユスリカ(Chironomus oryzae)、イネシントメタマバエ(Orseolia oryzae)、チチュウカイミバエ(Ceratitis capitata)、イネミギワバエ(Hydrellia griseola)、オウトウショウジョウバエ(Drosophila suzukii)、フリッツフライ(Oscinella frit)、イネカラバエ(Chlorops oryzae)、インゲンモグリバエ(Ophiomyia phaseoli)、マメハモグリバエ(Liriomyza trifolii)、アカザモグリハナバエ(Pegomya exilis)、タネバエ(Delia platura)、ソルガムフライ(Atherigona soccata)、イエバエ(Musca domestica)、ウマバエ(Gastrophilus sp.)、サシバエ(Stomoxys sp.)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、アカイエカ(Culex pipiens)、シナハマダラカ(Anopheles slnensis)及びコガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)が挙げられる。
【0103】
膜翅目害虫として、例えば、クキバチ類(Cephus sp.)、カタビロコバチ(Harmolita sp.)、カブラハバチ(Athalia rosae)、スズメバチ(Vespa mandarina)及びファイアーアント類が挙げられる。
【0104】
直翅目害虫として、例えば、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)、ケラ(Gryllotalpa africana)、バッタ(Locusta migratoria migratoriodes)及びMelanoplus sanguinipesが挙げられる。
【0105】
アザミウマ目害虫として、例えば、チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis)、ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、クロトンアザミウマ(Heliothrips haemorrhoidalis)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)及びイネクダアザミウマ(Haplothripsaculeatus)が挙げられる。
【0106】
ハダニ類として、例えば、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)、ミカンハダニ(Panonychus citri)、リンゴハダニ(Panonychus ulmi)、イエローマイト(Eotetranychus carpini)、テキサスシトラスマイト(Eotetranychus banksi)、ミカンサビダニ(Aculops pelekassi)、チャノホコリダニ(polyphagotarsonemus latus)、ヒメハダニ(Brevipalpus sp.)、ロビンネダニ(Rhizoglyphus robini)及びケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)が挙げられる。
【0107】
植物寄生性線虫類として、例えば、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus sp.)ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、イネシンガレセンチュウ(Aphelenchoides besseyi)及びマツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus lignicolus)が挙げられる。
【0108】
その他有害動物、不快動物、衛生害虫及び寄生虫として、例えば、スクリミンゴガイ(Pomacea canaliculata)、ナメクジ(Incilaria sp.)、アフリカマイマイ(Achatina fulica)等の腹足網類(Gastropoda)、ダンゴムシ(Armadillidium sp.)、ワラジムシ、ムカデ等の等脚目類(Isopoda)、Liposcelis sp.等のチャタテムシ類、Ctenolepisma sp.等のシミ類、Pulex sp.、Ctenocephalides sp.等のノミ類、Trichodectes sp.等のハジラミ類、Cimex sp.等のトコジラミ類、オウシマダニ(Boophilus microplus)、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)等の動物寄生性ダニ類及びヒョウヒダニ類等が挙げられる。
【実施例】
【0109】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。実施例において部は重量部を、%は重量%をそれぞれ意味する。プライマーはインビトロジェン社より入手した。また、プライマーの配列中、YはCまたはT、RはAまたはG、Nは4種の塩基いずれか、KはAまたはC、Iはイノシン残基を示す。
【0110】
実施例1 ワタアブラムシ(Aphis gossypii)由来のエクダイソンリセプター(EcR)の全長配列の決定
ワタアブラムシ(Aphis gossypii)より、QuickPrep micro mRNA Purification Kit(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて、そのプロトコールに従いmRNA溶液を調製した。このmRNA溶液から、SMART RACE cDNA Amprification kit(CLONTEC社製)のプロトコールに従い、キット付属の3'−CDSをプライマーとしてcDNA合成を行い、3'−RACE Ready cDNAを得た。この3'−RACE Ready cDNAを鋳型とし、EcRf2プライマー(アミノ酸配列のQEELCLをコード)およびEcRr2プライマー(アミノ酸配列のCSSEVMMを逆向きにコード)のデジェネレイトプライマーを用いてPCRを行った。PCRは、酵素としてEX Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、52℃(30秒)、72℃(1分)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で行った。得られたPCR産物をSephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてゲルろ過精製し、これを鋳型として再度PCRを行った。PCRは、EcRf3プライマー(アミノ酸配列のSGYHYNAをコード)およびEcRr6プライマー(アミノ酸配列のCQECRLKKCを逆向きにコード)のデジェネレイトプライマーを用い、酵素としてEX Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、48℃(30秒)、72℃(90秒)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で行った。このDNA溶液を、2.5%アガロース電気泳動により分画し、約100〜200bpの部分を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。この精製DNAを、pGEM−T Vector SystemI(プロメガ社製)を用いて、そのプロトコールに従いTAクローニングを行い、塩基配列(全塩基配列(配列表の配列番号9)の984番〜1095番に相当)を決定した。次いで、決定した塩基配列中にプライマーを設計して、5'RACEおよび3'RACEを、以下に記述するとおり、SMART RACE cDNA Amplificationl Kit(CLONTECH社)を用いて行い、さらにpGEM−T Vector SystemI(プロメガ社製)に従い、TAクローニングを行い、塩基配列を決定した。
【0111】
塩基配列の決定は以下のように行った。クローニング後に得られた形質転換大腸菌のコロニーを鋳型として、M13forwordプライマー、M13reverceプライマーを用い、酵素としてEXtaqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)でダイレクトPCRを行い(90℃で10分加熱後、95℃(30秒)、55℃(30秒)、72℃(2分)を1サイクルとして30回反応)、得られたPCR産物をSephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてゲルろ過精製し、さらにBigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing kit(アプライドバイオシステムズ社製)を使用し、キット記載の条件にてシーケンシング反応を行い、ABI PRISM 3700DNAアナライザー(アプライドバイオシステムズ社製)にて塩基配列を決定した。使用したデジェネレイトプライマー、M13forwordプライマー、およびM13reverceプライマーの配列は以下に示すとおりである。
【0112】
EcRf2:CARGARGARCTNTGYYT
EcRr2:CATCATNACYTCRCTNGARCA
EcRf3:TCSGGNTAYCAYTAYAAYGC
EcRr6:CAYTTYTTIARICTRCAYTCYTGRCA
M13forword:GTAAAACGACGGCCAG
M13reverse:CAGGAAACAGCTATGAC
【0113】
3'RACEは以下のような条件にて行った。すなわち1回目のPCRは、鋳型として前述の3'−RACE Ready cDNAを用い、プライマーとしてAgEcRf1プライマー(全塩基配列(配列表の配列番号9)の985番〜1008番に相当)およびキットに付属のUPMプライマーを用い、酵素としてLA Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、50℃(1分)、72℃(3分)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で行い、nested PCRは鋳型としてSephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてゲルろ過精製した1回目のPCR産物を用い、プライマーとしてAgEcRf2プライマー(全塩基配列(配列表の配列番号9)の1014番〜1037番に相当)およびキットに付属のNUPプライマーを用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、50℃(1分)、72℃(3分)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で行った。このDNA溶液を、1.5%アガロース電気泳動により分画し、約1400bpの部分を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。この精製DNAを、pGEM−T Vector SystemI(プロメガ社製)を用いて、そのプロトコールに従いTAクローニングを行い、塩基配列(全塩基配列(配列表の配列番号9)の1038番〜2287番に相当)を決定した。塩基配列の決定方法は、前述の通りである。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0114】
AgEcRf1:CTCACGTGCGAGGGATGCAAGGGG
AgEcRf2:CCGGAGGAGTATTACCAAGAACGC
【0115】
5'RACEは以下のような条件にて行った。まず、ワタアブラムシより調製したmRNA溶液を鋳型とし、AgEcRr1プライマー(全塩基配列(配列表の配列番号9)の1068番〜1092番の逆鎖に相当)をプライマーとし、キット付属のSMARTIIオリゴヌクレオチド共存下、酵素としてSuperScriptII逆転写酵素(インビトロジェン社製)を用いて5'−RACE Ready cDNAを合成した。これを鋳型とし、プライマーとしてAgEcRr2プライマー(全塩基配列(配列表の配列番号9)の1035番〜1058番の逆鎖に相当)およびキットに付属のUPMプライマーを用い、酵素としてLA Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、55℃(1分)、72℃(4分)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で1回目のPCRを行い、nested PCRは鋳型としてSephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてゲルろ過精製した1回目のPCR産物を用い、プライマーとしてAgEcRr3プライマー(全塩基配列(配列表の配列番号9)の1005番〜1029番の逆鎖に相当)およびキットに付属のNUPプライマーを用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、55℃(1分)、72℃(4分)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で行った。このDNA溶液を、1.5%アガロース電気泳動により分画し、約1300bpの部分を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。この精製DNAを、pGEM−T Vector SystemI(プロメガ社製)を用いて、そのプロトコールに従いTAクローニングを行い、塩基配列(全塩基配列(配列表の配列番号9)の1番〜1004番に相当)を決定した。塩基配列の決定方法は、前述の通りである。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0116】
AgEcRr1:CCGCCTCATGTACATGTCGATTTCG
AgEcRr2:CCGTACTTGCATTGGTACACAGCGT
AgEcRr3:GGTAATACTCCTCCGGAAGAACCCC
【0117】
以上のようにして得られた3本のクローンを重ね合わせて(Genetyx ver.7)、ワタアブラムシ由来のエクダイソンリセプターcDNAの全長配列(配列番号9)を決定した。
【0118】
実施例2 ワタアブラムシ(Aphis gossypii)由来のエクダイソンリセプター(EcR)遺伝子の調製
決定したワタアブラムシ由来のエクダイソンリセプターcDNA全長配列から、他の昆虫のエクダイソンリセプターのアミノ酸配列(例えば、Locusta migratoria由来のエクダイソンリセプター(gi:4405799))と比較してオープンリーディングフレーム(ORF)を推定し、以下に述べるプライマーを設計し、2回のPCRを経て、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)由来のエクダイソンリセプター(EcR)のORFクローンを得た。
【0119】
すなわち1回目のPCRは、鋳型として実施例1に記載の3'−RACE Ready cDNAを用い、プライマーとしてAgEcRORFf1プライマー(全塩基配列(配列表の配列番号9)の413番〜435番に相当)およびAgEcRORFr1プライマー(全塩基配列(配列表の配列番号9)の2159番〜2179番の逆鎖に相当)を用い、酵素としてLA Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、52℃(30秒)、72℃(4分)を1サイクルとして、25サイクル増幅するという条件で行い、nested PCRは鋳型としてSephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて精製した1回目のPCR産物を用い、プライマーとしてAgEcRORFf2プライマー(CACCの下流に全塩基配列(配列表の配列番号9)の439番〜455番に相当)およびAgEcRORFr2プライマー(GCGGCCGCの下流に全塩基配列(配列表の配列番号9)の2050番〜2067番の逆鎖に相当)を用い、酵素としてKODplusポリメラーゼ(東洋紡社製)を用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、56℃(1分)、68℃(4分)を1サイクルとして、25サイクル増幅するという条件で行った。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0120】
AgEcRORFf1:CATGTAAACCAACCGACTCGGC
AgEcRORFr1:CCAAGTGGTTGTCAGGGGTC
AgEcRORFf2:CACCATGTTGCGACTCGCGTC
AgEcRORFr2:GCGGCCGCCTATGGCATGACATCCCA
【0121】
得られたPCR産物10 μLを95℃で20分処理し、冷却後、2mM dATP溶液3 μL、EX Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)0.2 μLを加え、70℃で15分反応させアデニン残基を付加した。その後、Sephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてゲルろ過精製した。
【0122】
次いで、pGEM−Teasy Vector SystemI(プロメガ社製)のプロトコールに従い、TAクローニングを行い、塩基配列を確認しワタアブラムシエクダイソンリセプターORF配列を含むpGEM−Teasy/AgEcRORFベクターを得た。塩基配列の確認方法は実施例1の塩基配列の決定方法の通りである。
【0123】
実施例3 ワタアブラムシ(Aphis gossypii)由来のウルトラスピラクル(USP)の全長配列の決定
実施例1に記載の3'−RACE Ready cDNAを鋳型とし、USPf1プライマー(アミノ酸配列のYPPNHPLをコード)およびUSPr1プライマー(アミノ酸配列のEAVQEERを逆向きにコード)のデジェネレイトプライマーを用いてPCRを行った。PCRは、酵素としてEX Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、48℃(30秒)、72℃(1分30秒)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で行った。得られたPCR産物をSephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてゲルろ過精製し、これを鋳型として再度PCRを行った。PCRは、USPf2プライマー(アミノ酸配列のGKHYGVYをコード)およびUSPr2プライマー(アミノ酸配列のYCRYQKCを逆向きにコード)のデジェネレイトプライマーを用い、酵素としてEX Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、48℃(30秒)、72℃(1分30秒)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で行った。このDNA溶液を、2%アガロース電気泳動により分画し、約100〜200bpの部分を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。この精製DNAを、pGEM−T Vector SystemI(プロメガ社製)を用いて、そのプロトコールに従いTAクローニングを行い、塩基配列を決定した(全塩基配列(配列表の配列番号10)の553番〜666番に相当)。塩基配列の決定方法は、実施例1の通りである。使用したデジェネレイトプライマーの配列を以下に示す。次いで、決定した塩基配列中にプライマーを設計して、以下の記述通り5'RACEおよび3'RACEを、SMART RACE cDNA Amplificationl Kit(CLONTECH社)を用いて行い、さらにpGEM−T Vector SystemI(プロメガ社製)に従い、TAクローニングを行い、塩基配列を決定した。
【0124】
USPf1:TAYCCNCCNAAYCAYCCIYT
USPr1:CKYTCYTCYTGNACIGCYTC
USPf2:GGNAARCAYTAYGGNGTITAY
USPr2:CAYTTYTGRTAICKRCARTA
【0125】
3'RACEは以下のような条件にて行った。すなわち1回目のPCRは、鋳型として前述の3'−RACE Ready cDNAを用い、プライマーとしてAgUSPf1プライマー(配列番号10の583番〜605番)およびキット付属のUPMプライマーを用い、酵素としてLA Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、50℃(1分)、72℃(3分)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で行い、nested PCRは鋳型としてSephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてゲルろ過精製した1回目のPCR産物を用い、プライマーとしてAgUSPf2プライマー(配列表の配列番号10の610番〜629番)およびキット付属のNUPプライマーを用い、95℃(30秒)、50℃(1分)、72℃(3分)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で行った。得られたDNA溶液をSephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてゲルろ過精製し、pGEM−T Vector SystemI(プロメガ社製)に従い、TAクローニングを行い、塩基配列(配列表の配列番号10の630番〜1616番)を決定した。塩基配列の決定方法は、実施例1の通りである。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0126】
AgUSPf1:CGCACTGTGAGAAAAAATTTATC
AgUSPf2:GCATGTCGTGAAGAAAACAA
【0127】
5'RACEは以下のような条件にて行った。まず、ワタアブラムシより調製したmRNA溶液を鋳型とし、AgUSPr1プライマー(配列表の配列番号10の640番〜659番の逆鎖に相当)をプライマーとし、キット付属のSMARTIIオリゴヌクレオチド共存下、酵素としてSuperScriptII逆転写酵素(インビトロジェン社製)を用いて5'−RACE Ready cDNAを合成した。これを鋳型とし、プライマーとしてAgUSPr2プライマー(配列表の配列番号10の634番〜649番の逆鎖に相当)およびキット付属のUPMプライマーを用い、酵素としてLA Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、48℃(1分)、72℃(3分)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で1回目のPCRを行い、nested PCRは鋳型としてSephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて精製した1回目のPCR産物を用い、プライマーとしてAgUSPr3プライマー(配列表の配列番号10の603番〜622番の逆鎖に相当)およびキット付属のNUPプライマーを用い、95℃で1分加熱後、95℃(30秒)、46℃(1分)、72℃(1分30秒)を1サイクルとして、35サイクル増幅するという条件で行った。得られたDNA溶液をSephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてゲルろ過精製し、pGEM−T Vector SystemI(プロメガ社製)に従い、TAクローニングを行い、塩基配列(配列表の配列番号10の1番〜602番に相当)を決定した。塩基配列の決定方法は、実施例1の通りである。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0128】
AgUSPr1:CGATTTCGTTGGCGTTTGTC
AgUSPr2:GGCGTTTGTCGATGATGCAT
AgUSPr3:CTTCACGACATGCATAAGAT
【0129】
以上のようにして得られた3本のクローンを重ね合わせて(Genetyx ver.7)、ワタアブラムシ由来のウルトラスピラクルcDNAの全長配列を決定した。
【0130】
実施例4 ワタアブラムシ(Aphis gossypii)由来のウルトラスピラクル(USP)ORFクローンの取得
決定したワタアブラムシ由来のウルトラスピラクルcDNA全長配列から、他の昆虫のウルトラスピラクルのアミノ酸配列(例えば、Locusta migratoria由来のウルトラスピラクル(gi:33943178))と比較してオープンリーディングフレーム(ORF)を推定し、プライマーを設計した。2回のPCRを経て、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)由来のウルトラスピラクル(USP)ORFクローンを得た。
【0131】
すなわち1回目のPCRは、鋳型として実施例1に記載の3'−RACE Ready cDNAを用い、プライマーとしてAgUSPORFf1プライマー(配列表の配列番号10の174番〜193番)およびAgUSPORFr1プライマー(配列表の配列番号10の1489番〜1509番の逆鎖に相当)を用い、酵素としてKODplusポリメラーゼ(東洋紡社製)を用い、95℃で2分加熱後、95℃(30秒)、52℃(30秒)、68℃(2分30秒)を1サイクルとして、25サイクル増幅するという条件で行い、nested PCRは鋳型としてSephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて精製した1回目のPCR産物を用い、プライマーとしてAgUSPORFf2プライマー(CACCの下流に配列表の配列番号10の199番〜217番に相当するポリヌクレオチドを付加)およびAgUSPORFr2(GCGGCCGCの下流に配列表の配列番号10の1479番〜1497番の逆鎖に相当するポリヌクレオチドを付加)プライマーを用い、95℃で2分加熱後、95℃(30秒)、52℃(30秒)、68℃(2分30秒)を1サイクルとして、25サイクル増幅するという条件で行った。得られたPCR産物を1.5%アガロース電気泳動により分画し、約1300〜1400bpの部分を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。この精製DNAを、95℃で20分処理し、冷却後、2mM dATP溶液3 μL、EX Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)0.2 μLを加え、70℃で15分反応させアデニン残基を付加した。その後、Sephacryl S−300HR(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてゲルろ過精製した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0132】
AgUSPORFf1:CCGAATACTGCAGTGCTGCT
AgUSPORFr1:CATTGTTGGAAATCATGTAGC
AgUSPORFf2:CACCATGTTCAAGAAAGAAAAAC
AgUSPORFr2:GCGGCCGCTCATGTAGCTACTTGAACG
【0133】
次いで、pGEM−Teasy Vector SystemI(プロメガ社製)のプロトコールに従い、TAクローニングを行い、塩基配列を確認し、ワタアブラムシウルトラスピラクルORF配列を含むpGEM−Teasy/AgUSPORFベクターを得た。塩基配列の決定方法は、実施例1の通りである。
【0134】
実施例5 ゲルシフトアッセイ
(1)ワタアブラムシEcRのインビトロ転写・翻訳用発現ベクターの構築
pGEM−Teasy/AgEcRORFベクターを制限酵素EcoRI(東洋紡社製)、NotI(東洋紡社製)で切断し、次いで、1.5%アガロース電気泳動により分画し、ワタアブラムシ由来のエクダイソンリセプターのORF配列を含む約1900bpの断片を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。(このDNA断片をAgEcRORF/EcoRI−NotIと表記する。)
【0135】
pTNTベクター(プロメガ社製)を制限酵素EcoRI(東洋紡社製)、NotI(東洋紡社製)で切断し、次いで、1.5%アガロース電気泳動により分画し、約2800bpの断片を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。(このDNA断片をpTNT/EcoRI−NotIと表記する。)
【0136】
AgEcRORF/EcoRI−NotIとpTNT/EcoRI−NotIをDNAライゲーションキット(タカラバイオ社製)を使用し、プロトコールに従い接続し、氷上で30分、次いで42℃で30秒処理した後、大腸菌DH5αのコンピテントセル(東洋紡社製)の培地に添加し、大腸菌DH5αのコンピテントセルを培養した。形質転換されたクローンを青白判定によりクローニングし、得られたクローンからワタアブラムシEcRのインビトロ転写・翻訳用発現ベクターpTNT/AgEcRORFを得た。
【0137】
(2)ワタアブラムシUSPのインビトロ転写・翻訳用発現ベクターの構築
pGEM−Teasy/AgUSPORFベクターを制限酵素EcoRI(東洋紡社製)、NotI(東洋紡社製)で切断し、次いで、1.5%アガロース電気泳動により分画し、ワタアブラムシ由来のUSPのORF配列を含む約1700bpの断片を抽出、精製した。精製はQIAquick GelExtraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。(このDNA断片をAgUSPORF/EcoRI−NotIと表記する。)
【0138】
pTNTベクター(プロメガ社製)を制限酵素EcoRI(東洋紡社製)、NotI(東洋紡社製)で切断し、次いで、1.5%アガロース電気泳動により分画し、約2800bpの断片を抽出、精製した。精製はQIAquick GelExtraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。(このDNA断片をpTNT/EcoRI−NotIと表記する。)
【0139】
AgUSPORF/EcoRI−NotIとpTNT/EcoRI−NotIをDNAライゲーションキット(タカラバイオ社製)を使用し、プロトコールに従い接続し、前記実施例5(1)と同様に大腸菌DH5αのコンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換することにより、ワタアブラムシUSPのインビトロ転写・翻訳用発現ベクターpTNT/AgUSPORFを構築した。
【0140】
(3)ワタアブラムシ由来エクダイソンリセプター蛋白質、ウルトラスピラクル蛋白質の合成
TNT T7 Quick Coupled Transcription/Translation System(プロメガ社製)を用いた。pTNT/AgEcRORF 1 μg、TNT T7 Quick Master Mix 40 μL、1mM メチオニン 1 μL、総反応液50 μLで、30℃、80分反応させ、ワタアブラムシ由来エクダイソンリセプター蛋白質の合成を行った。このまま、特別な精製をすること無しにゲルシフトアッセイに用いた。(この蛋白質をAgEcR蛋白質と表記する。)
【0141】
同様に、pTNT/AgUSPORF 1 μg、TNT T7 Quick Master Mix 40 μL、1mM メチオニン1 μL、総反応液50 μLで、30℃、80分反応させ、ワタアブラムシ由来ウルトラスピラクル蛋白質の合成を行った。このまま、特別な精製をすること無しにゲルシフトアッセイに用いた。(この蛋白質をAgUSP蛋白質と表記する。)
【0142】
(4)ゲルシフトアッセイ
LightShift Chemiluminescent EMSA kit(PIERCE社製)を使用し、そのプロトコールに従ってゲルシフトアッセイを行った。すなわち下記に示す表1の組成に従い、10×Binding Buffer、50%Glycerol、100mM MgCl2、poLy(dI/dC)、1%NP−40(以上キット付属品:以下ライセートという。)、滅菌水、AgEcR蛋白質、AgUSP蛋白質、20−ヒドロキシエクダイソン(20E)、エタノールを混合し、室温で20℃静置した後に、ビオチン化hsp27プローブ、非ビオチン化hsp27プローブを加え、室温で30℃結合反応を行った。なお、ビオチン化hsp27プローブは、等量のビオチン化ポリヌクレオチドBio−hsp27fとビオチン化ポリヌクレオチドBio−hsp27rを、アニーリングバッファー(20mM トリス−塩酸(pH7.5)、10mM MgCl2、50mM NaCl)中、85℃で5分加熱後、1時間以上かけて45℃まで冷却し、アニーリングさせることにより調製した。hsp27プローブもポリヌクレオチドhsp27fとポリヌクレオチドhsp27rを同様の方法によりアニーリングさせることにより調製した。ビオチン化ポリヌクレオチドBio−hsp27f、ビオチン化ポリヌクレオチドBio−hsp27r、hsp27f及びポリヌクレオチドhsp27rはインビトロジェン社より購入し、配列は以下に示すとおりである。
【0143】
Bio−hsp27f:Bio−GACAAGGGTTCAATGCACTTGTC
Bio−hsp27r:Bio−GACAAGTGCATTGAACCCTTGTC
hsp27f:GACAAGGGTTCAATGCACTTGTC
hsp27r:GACAAGTGCATTGAACCCTTGTC
【0144】
下記表1はゲルシフトアッセイにおける結合反応の際に用いた試薬、蛋白質等の組成である。
【0145】
【表1】

【0146】
結合反応終了後、それぞれにLoading Buffer(キット付属品)5 μLを加え4%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動にて分画した。電気泳動終了後、0.5xTBE中、40〜45V(約200mA)で1時間、HybondN+(アマシャムバイオサイエンス社製)に転写した。
【0147】
得られた膜を120mJ/cm2でクロスリンク後、LightShift Blocking Buffer中で15分間、ゆっくり撹拌した。その後LightShift wash Buffer中で5分間の洗浄を4回行い、次いでLightShift Substrate Equilibration Buffer中で5分間ゆっくり撹拌した。次いでLightShift Substrate Working Solutionを作用させた後、Hyperfilm ECL(アマシャムバイオサイエンス社)に感光させ、図1に示す結果を得た。
【0148】
AgEcR蛋白質とAgUSP蛋白質が共存していないレーン1からレーン6まではバンドシフトは検出されず、AgEcR蛋白質とAgUSP蛋白質を共存させたレーン7ではバンドシフトが検出され、さらにそこに20−ヒドロキシエクダイソンを共存させるとバンドが濃くなることが明らかとなった(レーン9、10、11)。また、ビオチン化hsp27プローブに非ビオチン化hsp27プローブを共存させたレーン12ではバンドシフトが検出されないことから、レーン7から11に見られるバンドシフトは、AgEcR蛋白質とAgUSP蛋白質が複合体を形成して、hsp27プローブに結合したものであることが証明された。
【0149】
実施例6 酵母ツーハイブリッドアッセイ
(1)ワタアブラムシエクダイソンリセプターDEF領域を含むエントリーベクターの調製
pGEM−Teasy/AgEcRORFベクターを鋳型とし、プライマーとしてAgEcRDEFf1プライマー(CACCの下流に全塩基配列(配列表の配列番号9)の1138番〜1157番に相当するポリヌクレオチドを付加)およびAgEcRORFr2プライマー(GCGGCCGCの下流に全塩基配列(配列表の配列番号9)の2050番〜2067番の逆鎖に相当)を用い、酵素としてKODplusポリメラーゼ(東洋紡社製)を用い、95℃(30秒)、50℃(30秒)、68℃(90秒)を1サイクルとして、30サイクル行うという条件で行い、ワタアブラムシエクダイソンリセプターのDEF領域がつながった配列を増幅した。次いで、1.5%アガロース電気泳動により分画し、ワタアブラムシ由来のエクダイソンリセプターのDEF領域を含む約900bpの断片を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。この約900bpのDNA断片を、pENTR Directional TOPO Cloning Kits(インビトロジェン社製)を用いて、そのプロトコールに従い、キット付属のpENTR TOPO ベクターに接続し、前記実施例5(1)と同様に大腸菌DH5αのコンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換することにより、エントリーベクターにワタアブラムシエクダイソンリセプターDEF領域を挿入したpENTR/AgEcRDEFを得た。なお塩基配列の確認は実施例1の塩基配列の決定方法に従い行った。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0150】
AgEcRDEFf1:CACCAGGCCTGAATGTGTTGTACC
【0151】
(2)ワタアブラムシウルトラスピラクルDEF領域を含むエントリーベクターの調製
pGEM−Teasy/AgUSPORFベクターを鋳型とし、プライマーとしてAgUSPDEFf1プライマー(CACCの下流に配列表の配列番号10の703番〜720番に相当するポリヌクレオチドを付加)およびAgUSPORFr2プライマー(GCGGCCGCの下流に配列表の配列番号10の1479番〜1497番の逆鎖に相当するポリヌクレオチドを付加)を用い、酵素としてKODplusポリメラーゼ(東洋紡社製)を用い、95℃(30秒)、50℃(30秒)、68℃(90秒)を1サイクルとして、30サイクル行うという条件で行い、ワタアブラムシウルトラスピラクルのDEF領域がつながった配列を増幅した。次いで、1.5%アガロース電気泳動により分画し、ワタアブラムシ由来のウルトラスピラクルのDEF領域を含む約800bpの断片を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。この約800bpのDNA断片を、pENTR Directional TOPO Cloning Kits(インビトロジェン社製)を用いて、そのプロトコールに従い、キット付属のpENTR TOPO ベクターに接続し、前記実施例5(1)と同様に大腸菌DH5αのコンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換することにより、エントリーベクターにワタアブラムシウルトラスピラクルDEF領域を挿入したpENTR/AgUSPDEFを得た。なお塩基配列の確認は実施例1の塩基配列の決定方法に従い行った。使用したプライマーの配列を以下に示す。
【0152】
AgUSPDEFf1:CACCAAAAGAGAAGCCGTTCAG
【0153】
(3)ワタアブラムシエクダイソンリセプターDEF領域とGAL4の活性化領域の融合蛋白質発現用ベクターの調製
ProQuest Two−Hybrid System with Gateway Technology(インビトロジェン社製)を用い、そのプロトコールに従い、pDEST22(キットに付属)にワタアブラムシエクダイソンリセプターDEF領域を挿入した。すなわち、pENTR/AgEcRDEFとpDEST22をLRバッファー中、LRクロナーゼを25℃で1時間作用させ、前記実施例5(1)と同様に大腸菌DH5αのコンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換することにより、アブラムシエクダイソンリセプターDEF領域とGAL4の活性化領域の融合蛋白質発現用ベクターpDEST22/AgEcRDEFを得た。
【0154】
(4)ワタアブラムシウルトラスピラクルDEF領域とGAL4のDNA結合領域の融合蛋白質発現用ベクターの調製
ProQuest Two−Hybrid System with Gateway Technology(インビトロジェン社製)を用い、そのプロトコールに従い、pDEST32(キットに付属)にワタアブラムシウルトラスピラクルDEF領域を挿入した。すなわち、pENTR/AgUSPDEFとpDEST32をLRバッファー中、LRクロナーゼを25℃で1時間作用させ、前記実施例5(1)と同様に大腸菌DH5αのコンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換することにより、アブラムシウルトラスピラクルDEF領域とGAL4のDNA結合領域の融合蛋白質発現用ベクターpDEST32/AgUSPDEFを得た。
【0155】
(5)形質転換酵母の調製
ProQuest Two−Hybrid System with Gateway Technology(インビトロジェン社製)を用い、そのプロトコールに従い、酵母MaV203コンピテントセル(インビトロジェン社製)にpDEST22/AgEcRDEF、pDEST32/AgUSPDEFを酢酸リチウム法でトランスフェクションし、酵母ツーハイブリッドアッセイ用形質転換酵母MaV205(DB−AgUSPDEF, AD−AgEcRDEF)を得た。
【0156】
(6)酵母ツーハイブリッドアッセイの実施
Sc−Trp−Leu培地(Sc−Trp−Leu(Q−BIOgene社製)1.59 g、Yeast Nitrogen base w/o amino acid(Difco社製)6.7g、D−グルコース(関東化学社製)20gを蒸留水を加えて1 Lにし(pHは6.0に調整)、滅菌して作製した。)で25℃で1日振とう培養し、前培養液を作製した。本培養はSc−Trp−Leu培地1 mLに、前培養液20 μL、試験サンプル溶液10 μLを加え、16時間、25℃、振とう培養という条件で行った。なお、試験サンプル添加は最終濃度の100倍のエタノール溶液を培養液の1%を添加することにより行った。試験サンプルはポナステロンA(和光純薬)、20−ヒドロキシエクダイソン(ICN biomedicals)、クロマフェノジド(日本化薬)を使用した。
【0157】
本培養終了後、OD600値を測定し、以下のようにβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。800 μLの本培養液を12,000rpmで10秒遠心分離し、上清を廃棄した。残渣を800 μLのZバッファー(16.1 g Na2HPO4・7H2O、5.5 g NaH2PO4・H2O、0.75 g KCL、0.246 g MgSO4・7H2Oを蒸留水に溶解後、pH7.0に調整し、滅菌し作製した。)に縣濁させ、再度12,000rpmで10秒遠心分離し、上清を廃棄した。この残渣に100 μLのZバッファー、直径0.5mmのガラスビーズ(シグマ社製)を加え、90秒ボルテックスした。ここに、Zバッファー700 μLと2−メルカプトエタノール(ナカライテスク社製)1.9 μL、0.4% o−ニトロフェニル−β−ガラクトピラノシド(ONPG)含有Zバッファー160 μLを加え、30℃で反応させた。反応液が黄色くなってきたら、200 μLの1M Na2CO3溶液を加え反応をストップさせた後に、OD420値を測定した。活性値はOD420X1000/(OD600X反応時間(分)X使用本培養液量(mL))で表し、比活性はエタノール添加時の活性値を1として表した。結果を表2に示す。
【0158】
表2は酵母ツーハイブリッドアッセイの結果である。値はエタノールを投与した時の活性を1とした比活性で示している。ポナステロンAを投与した時は濃度依存的に活性値が増加しているのに対し、クロマフェノジドは活性を示さなかった。ポナステロンAはエクダイソンリセプターとウルトラスピラクルの相互作用を強化する活性があることが明らかとなった。20−ヒドロキシエクダイソンは弱いながらも活性を示した。
【0159】
【表2】

【0160】
実施例7 レポータージーンアッセイ
(1)ワタアブラムシEcRの発現ベクターの構築
pGEM−Teasy/AgEcRORFベクターを制限酵素EcoRI(東洋紡社製)、NotI(東洋紡社製)で切断し、次いで、1.5%アガロース電気泳動により分画し、ワタアブラムシ由来のエクダイソンリセプターのORF配列を含む約1900bpの断片を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。(このDNA断片をAgEcRORF/EcoRI−NotIと表記する。)
【0161】
pIZT/V5−Hisベクター(インビトロジェン社製)を制限酵素EcoRI(東洋紡社製)、NotI(東洋紡社製)で切断し、次いで、1.5%アガロース電気泳動により分画し、約3300bpの断片を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。(このDNA断片をpIZT/V5−His/EcoRI−NotIと表記する。)
【0162】
AgEcRORF/EcoRI−NotIとpIZT/V5−His/EcoRI−NotIをDNAライゲーションキット(タカラバイオ社製)を使用し、プロトコールに従い接続し、前記実施例5(1)と同様に大腸菌DH5αのコンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換することにより、ワタアブラムシEcRの発現ベクターpIZT/AgEcRORFを得た。
【0163】
(2)ワタアブラムシUSPの発現ベクターの構築
pGEM−Teasy/AgUSPORFベクターを制限酵素EcoRI(東洋紡社製)、NotI(東洋紡社製)で切断し、次いで、1.5%アガロース電気泳動により分画し、ワタアブラムシ由来のウルトラスピラクルのORF配列を含む約1700bpの断片を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。(このDNA断片をAgUSPORF/EcoRI−NotIと表記する。)
【0164】
pIZT/V5−Hisベクター(インビトロジェン社製)を制限酵素EcoRI(東洋紡社製)、NotI(東洋紡社製)で切断し、次いで、1.5%アガロース電気泳動により分画し、約3300bpの断片を抽出、精製した。精製はQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用い、プロトコールに従い行った。(このDNA断片をpIZT/V5−His/EcoRI−NotIと表記する。)
【0165】
AgUSPORF/EcoRI−NotIとpIZT/V5−His/EcoRI−NotIをDNAライゲーションキット(タカラバイオ社製)を使用し、プロトコールに従い接続し、前記実施例5(1)と同様に大腸菌DH5αのコンピテントセル(東洋紡社製)を形質転換することにより、ワタアブラムシUSPの発現ベクターpIZT/AgUSPORFを得た。
【0166】
(3)レポータージーンアッセイの実施
特開2002−291489記載のレポータープラスミドpEcRLUC0.5 μg、pIZT/AgEcRORF5 μgにSchneider's Drosophila培地(インビトロジェン社製)を加え600 μLとし、ここにCellfectin(インビトロジェン社製)25 μLを加え、数秒間ボルテックスにかけよく混合し、30分間室温放置した。これをSchneider's Drosophila培地(インビトロジェン社製)に懸濁したショウジョウバエ由来のS2細胞(約10000000細胞/mL)4.4 mLに加え、96穴プレートに50 μLずつ分注し、25℃で5時間培養した。次いで、最終濃度の10倍濃度サンプル溶液(1%DMSO含有PBS溶液)を10 μL、10%Fetal Bovine Serum(FBS)含有Schneider's Drosophila培地を40 μL加え、軽く混合し25℃で1夜培養した。次に以下の方法でルシフェラーゼ活性の測定を行った。ウェル中の培地を除去し、30μLの細胞溶解試薬(25mM トリス−リン酸バッファー(pH7.8)、2mM ジチオトレイトール、2mM CDTA、0.2%トライトンX−100、10%グリセロール)を添加した後、時々攪拌しながら室温にて30分間放置した。その後、−80℃で15分間凍結し、室温に戻し、この細胞溶解液20 μLを分取し、基質液(20mM トリシン−水酸化ナトリウム(pH7.8)、1.07mM 塩基性炭酸マグネシウム、2.67mM 硫酸マグネシウム、0.1mM エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、33.3mM ジチオトレイトール、270μM コエンザイムA、470μMルシフェリン、530μM アデノシン三リン酸)25μLを添加した後、ルミノメーター(アトー社製)にてその化学発光強度を測定した。試験サンプルはポナステロンA(和光純薬)、20−ヒドロキシエクダイソン(ICN biomedicals)、ムリステロンA(インビトロジェン)、クロマフェノジド(日本化薬)を使用した。その結果を図2に示す。
【0167】
ポナステロンA、20−ヒドロキシエクダイソンを添加した時には濃度依存的に活性の増加が見られたのに対し、ジベンゾイルヒドラジン系の化合物であり、鱗翅目用の殺虫剤として登録されているクロマフェノジドはほとんど活性を示さなかった。ムリステロンAは弱い活性しか示さなかった。2つの発現ベクター(pIZT/AgEcRORF、pIZT/AgUSPORF)を加えることなく、レポーターベクターのみを加えた場合の活性値が発現ベクターなしのレーンに示してある。発現ベクターを加えないとほとんど活性が出ないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】ゲルシフトアッセイの結果である。左から1レーン、2レーン、一番右が12レーンである。ライセート、滅菌水及びビオチン化hsp27プローブは全てのレーンに含まれている。1レーン:ブランク1(ライセート+ビオチン化hsp27プローブ+滅菌水);2レーン:ブランク2(ライセート+TNT T7 Quick Master Mix+ビオチン化hsp27プローブ+滅菌水);3レーン:AgEcR蛋白質;4レーン:AgEcR蛋白質+1×10-3M 20−ヒドロキシエクダイソン;5レーン:AgUSP蛋白質;6レーン:AgUSP蛋白質+1×10-3M 20−ヒドロキシエクダイソン;7レーン:AgEcR蛋白質+AgUSP蛋白質;8レーン:AgEcR蛋白質+AgUSP蛋白質+エタノール;9レーン:AgEcR蛋白質+AgUSP蛋白質+1×10-5M 20−ヒドロキシエクダイソン;10レーン:AgEcR蛋白質+AgUSP蛋白質+1×10-4M 20−ヒドロキシエクダイソン;11レーン:AgEcR蛋白質+AgUSP蛋白質+1×10-3M 20−ヒドロキシエクダイソン;12レーン:AgEcR蛋白質+AgUSP蛋白質+1×10-3M 20−ヒドロキシエクダイソン+非ビオチン化hsp27プローブ
【図2】レポータージーンアッセイの結果である。左から、黒:発現ベクターなし、白:コントロール、横線:ポナステロンA、縦線:20−ヒドロキシエクダイソン、斜線:ムリステロンA、灰色:クロマフェノジド。各薬剤の濃度はいずれも左から1nM、10nM、100nM、1000nM。
【配列表フリーテキスト】
【0169】
配列番号1:ワタアブラムシエクダイソンリセプターORFアミノ酸配列
配列番号2:GAL4−活性化領域アミノ酸配列
配列番号3:GAL4−DNA結合領域アミノ酸配列
配列番号4:ワタアブラムシエクダイソンリセプターORFをコードするDNA
配列番号5:GAL4−活性化領域DNA
配列番号6:GAL4−DNA結合領域DNA
配列番号7:ワタアブラムシウルトラスピラクルORFアミノ酸配列
配列番号8:ワタアブラムシウルトラスピラクルORFをコードするDNA
配列番号9:ワタアブラムシエクダイソンリセプター全長cDNA
配列番号10:ワタアブラムシウルトラスピラクル全長cDNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなる蛋白質。
(a)配列表の配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列表の配列番号1で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつエクダイソンリセプターとしての機能を有する蛋白質。
【請求項2】
請求項1記載の蛋白質の部分ポリペプチドであって、エクダイソン類との結合に必要な領域に対応する部分アミノ酸配列を含有する部分ポリペプチド。
【請求項3】
請求項2において、エクダイソン類との結合に必要な領域に対応する部分アミノ酸配列が以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなる部分ポリペプチド。
(a)配列表の配列番号1で表わされるアミノ酸配列の234番目から542番目の部分配列;
(b)配列表の配列番号1で表わされるアミノ酸配列の234番目から542番目の部分配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつエクダイソン類と結合するアミノ酸配列。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなるGAL4活性化領域とが結合している融合ポリペプチド。
(a)配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなるGAL4DNA結合領域が結合している融合ポリペプチド。
(a)配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項6】
請求項1記載の蛋白質をコードするDNA。
【請求項7】
以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなるDNA。
(a)配列表の配列番号4で表わされる塩基配列からなる新規エクダイソンリセプターをコードするDNA;
(b)配列表の配列番号4で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された新規エクダイソンリセプターをコードするDNA;
(c)配列番号4で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする新規エクダイソンリセプターをコードするDNA。
【請求項8】
請求項2記載の部分ポリペプチドをコードするDNA。
【請求項9】
以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなるDNA。
(a)配列表の配列番号4で表わされる塩基配列の700番目から1626番目の部分配列からなるエクダイソン類との結合能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA;
(b)配列表の配列番号4で表わされる塩基配列の700番目から1626番目の部分配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたエクダイソン類との結合能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA;
(c)配列表の配列番号4で表わされる塩基配列の700番目から1626番目の部分配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするエクダイソン類との結合能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA。
【請求項10】
請求項2または請求項3に記載の蛋白質の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなる、GAL4活性化領域が結合している融合ポリペプチドをコードするDNA。
(a)配列表の配列番号5で表わされる塩基配列からなるDNA;
(b)配列表の配列番号5で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたDNA;
(c)配列表の配列番号5で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
【請求項11】
請求項2または請求項3に記載の蛋白質の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなる、GAL4DNA結合領域が結合している融合ポリペプチドをコードするDNA。
(a)配列表の配列番号6で表わされる塩基配列からなるDNA;
(b)配列表の配列番号6で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたDNA;
(c)配列表の配列番号6で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
【請求項12】
以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなる蛋白質。
(a)配列表の配列番号7で表わされるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列表の配列番号7で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつウルトラスピラクルとしての機能を有する蛋白質。
【請求項13】
請求項12記載の蛋白質の部分ペプチドであって、エクダイソンレセプターとの複合体形成に必要な領域に対応する部分アミノ酸配列を含有する部分ペプチド。
【請求項14】
請求項13において、エクダイソンレセプターとの複合体形成に必要な領域に対応する部分アミノ酸配列が以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなる部分ポリペプチド。
(a)配列表の配列番号7で表わされるアミノ酸配列の169番目から432番目の部分配列;
(b)配列表の配列番号7で表わされるアミノ酸配列の169番目から432番目の部分配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつエクダイソンレセプターと複合体を形成するアミノ酸配列。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなるGAL4活性化領域が結合している融合ポリペプチド。
(a)配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列表の配列番号2で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項16】
請求項13または請求項14に記載の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなるGAL4DNA結合領域が結合している融合ポリペプチド。
(a)配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列表の配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項17】
請求項12記載の蛋白質をコードするDNA。
【請求項18】
以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなるDNA。
(a)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列からなる新規ウルトラスピラクルをコードするDNA;
(b)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された新規ウルトラスピラクルをコードするDNA;
(c)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする新規ウルトラスピラクルをコードするDNA。
【請求項19】
請求項13記載の部分ポリペプチドをコードするDNA。
【請求項20】
以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなるDNA。
(a)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列の505番目から1296番目の部分配列からなるエクダイソンレセプターとの複合体形成能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA;
(b)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列の505番目から1296番目の部分配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたエクダイソンレセプターとの複合体形成能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA;
(c)配列表の配列番号8で表わされる塩基配列の505番目から1296番目の部分配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするエクダイソンレセプターとの複合体形成能を有する部分ポリペプチドをコードするDNA。
【請求項21】
請求項13または請求項14に記載の蛋白質の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなる、GAL4活性化領域が結合している融合ポリペプチドをコードするDNA。
(a)配列表の配列番号5からなるDNA;
(b)配列表の配列番号5で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたDNA;
(c)配列表の配列番号5で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
【請求項22】
請求項13または請求項14に記載の蛋白質の部分ポリペプチドと直接または間接に以下の(a)ないし(c)のいずれかの塩基配列からなる、GAL4DNA結合領域が結合している融合ポリペプチドをコードするDNA。
(a)配列表の配列番号6からなるDNA;
(b)配列表の配列番号6で表わされる塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたDNA;
(c)配列表の配列番号6で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
【請求項23】
請求項6ないし請求項11のいずれか一項に記載のDNAを含有する組換えベクター。
【請求項24】
請求項17ないし請求項22のいずれか一項に記載のDNAを含有する組換えベクター。
【請求項25】
請求項23記載の組換えベクターと請求項24記載の組み換えベクターを同時にもしくはどちらか一方を用いて形質転換させた形質転換体。
【請求項26】
請求項25記載の形質転換体を用いた半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物のスクリーニング方法。
【請求項27】
請求項1ないしは請求項5のいずれか一項に記載の蛋白質または部分ポリペプチドまたは融合ポリペプチドを用いた半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物のスクリーニング方法。
【請求項28】
請求項1記載の蛋白質または請求項2または請求項3に記載の部分ポリペプチドおよび、請求項12記載の蛋白質または請求項13または請求項14記載の部分ポリペプチドを用いた半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物のスクリーニング方法。
【請求項29】
請求項26ないし請求項28のいずれか一項に記載のスクリーニング方法で得られる半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物またはその塩。
【請求項30】
請求項29記載の半翅目昆虫の脱皮を制御する化合物を主な成分とする殺虫剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−97590(P2007−97590A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243501(P2006−243501)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】