説明

半透明化粧料

少なくとも、(a)セラミド、(b)油性成分、(c)非イオン性界面活性剤及び(d)水を含有し、これらで構成するO/Wエマルションの平均粒径が、100nm〜300nmである半透明化粧料が開示されている。また、成分(c)が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である半透明化粧料、さらには、成分(a)および成分(b)の合計量と成分(c)の配合質量比が、3:1〜1.2:1である半透明化粧料が開示されている。本発明の、セラミドを含有するO/W乳化型の化粧料は、経時安定性に優れているとともに、外観が美しく高級感を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は半透明化粧料に関し、更に詳しくはセラミドを含有するO/W乳化型の経時安定性に優れ、外観が美しく、高級感を有する半透明化粧料に関するものである。
【背景技術】
セラミドは、皮膚の角質層に存在し、水分保持に必要な脂質バリアを構築し、水分を維持していくために重要な役割を果たしている。角質層にあるセラミドは、セレブロシドが、セレブロシダーゼという酵素により分解して生成したものである。セラミドの一部は、セラミダーゼと呼ばれる酵素により、フィトスフィンゴシンおよびスフィンゴシンに変化し、細胞の増殖および分化の調節剤として重要であることが知られている。人間の皮膚には、6種類の異なったタイプのセラミドが存在し、機能もそれぞれ異なっている。
しかしながら、セラミドは結晶性の高い物質であり、他の油剤への溶解性が低く、低温で結晶を析出する等の理由のため、化粧料に配合する場合、経時安定性を確保するのが困難であった。
そこで、セラミドを安定に配合するために、リン脂質と多価アルコールを配合した脂質分散組成物が開示されている(例えば、特開平11−130651号公報参照)。
また、透明に可溶化し、セラミドを安定に配合する技術として、特定の脂肪酸や特定の界面活性剤を配合することが開示されている(例えば、特開2001−139796号公報、特開2001−316217号公報参照)。しかしながら、セラミドを透明に可溶化するためには、界面活性剤の配合を多くする必要があり、そのため安全性や使用感を損なう場合があった。一方、優れた使用感を得るために、界面活性剤の配合量を少なくした場合には、白濁ないし半透明の乳濁状になることが多く、セラミドを透明に可溶化しきれず、この場合、経時での分離やクリーミングが起こり、十分な経時安定性を確保することが難しい状況にあった。
従って、本発明の課題は、セラミドを含有するO/W乳化型の化粧料であって、界面活性剤の配合量を減少させながらも、経時安定性に優れ、しかも視覚的な美しさや高級感を与えることのできる半透明化粧料を提供することである。
【発明の開示】
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、少なくとも、セラミド、油性成分、非イオン性界面活性剤及び水を含有し、O/Wエマルションの平均粒径が、100nm〜300nmである半透明化粧料が、優れた経時安定性を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、次の通りのものである。
次の成分(a)〜(d);
(a)セラミド、
(b)油性成分、
(c)非イオン性界面活性剤、
(d)水
を含有し、これらにより構成されるO/Wエマルションの平均粒径が、100nm〜300nmである半透明化粧料。
成分(c)の非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である上記の半透明化粧料。
成分(a)のセラミドおよび成分(b)の油性成分の合計量と、成分(c)の非イオン性界面活性剤との配合質量比が、3:1〜1.2:1である上記の半透明化粧料。
成分(b)の油性成分が、ステロール類を含有するものである上記の半透明化粧料。
成分(b)油性成分が、イソステアリン酸を含有するものである上記の半透明化粧料。
成分(c)の非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油である上記の半透明化粧料。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の構成について説明する。
本発明に用いられる成分(a)のセラミドは、通常、化粧料に使用されるものであれば、特に限定されないが、その具体例としては、酵母を利用して生成したセラミド、化学合成による擬似セラミド、植物から得られたセラミド等が挙げられ、例えば、セラミド1〜6が例示される。これらは、必要に応じて一種又は二種以上を適宜選択して組み合わせて用いることができる。これらの中でも、優れた経時安定性を得るには、セラミド2又はセラミド3がより好ましい。
本発明に用いられる成分(b)の油性成分は、平均粒径が100nm〜300nmのO/Wエマルションを実現し、化粧料を半透明にして視覚的美しさや高級感を与える上で必須の成分である。成分(b)は、通常化粧料に使用されるものであれば、特に限定されないが、具体的な例としては、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、ステロール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油溶性ビタミン類、植物油等が挙げられる。
これらの中でも、コレステロール、カンペステロール、シトステロール、スチグマステロールを含有するフィトステロール等のステロール類を用いると、優れた乳化安定性向上効果が得られより好ましい。
また成分(b)として、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類を含有すると、成分(a)に対する優れた溶解性や経時安定性向上効果が得られ更に好ましく、その中でもイソステアリン酸が特に好ましい。イソステアリン酸は、ダイマー酸由来のもの、ガーベット反応由来のもの、アルドール縮合反応由来のもののすべてが好適に使用できる。
本発明に用いられる成分(c)の非イオン性界面活性剤は、優れた乳化安定性を得るための必須成分である。成分(c)は、通常化粧料に使用されるものであれば、特に限定されないが、具体的な例としては、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシドが挙げられる。これらは、必要に応じて一種又は二種以上を適宜選択して組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、良好な経時安定性を得るには、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油がより好ましく、更に、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油が特に好ましい。
本発明に用いられる成分(d)の水は、O/W乳化型である半透明化粧料を構成する上で必須の成分である。
上記各成分により構成される本発明の半透明化粧料は、エマルションの平均粒径が100nm〜300nmであることが必須条件である。エマルションの平均粒径が100nm未満では、経時でエマルションの合一等が生じる場合があり、また、300nmを超えるとクリーミングが生じる場合があって、いずれも十分な経時安定性を確保することが難しい。本発明は、エマルションの平均粒径が100nm〜300nmとすることにより初めて、成分(a)セラミド及び成分(b)油性成分を配合したO/W乳化型において、優れた経時安定性が確保できるものである。
更に優れた経時安定性を得るためには、エマルションの平均粒径が150nm〜250nmであることがより好ましい。
本発明においては、エマルションの平均粒径が100nm〜300nmの特定の範囲に限定されることにより、可溶化系のような透明にはならず、また油性成分量が多くても乳液のような白濁状にはならず、外観を半透明にすることができ、高級感ある化粧品を提供できる。ここで、「半透明」とは、SHIMADZU社製 UV−2500PC UV−VIS REDCORDING SPECTROPHOTOMETERを用い、1cm角の石英セルでの波長600nmの光の透過率が、2%〜45%の範囲であることを言う。
本発明に用いられる成分(a)及び成分(b)の配合量は、特に限定されるものではないが、優れた経時安定性を得るためには、成分(a)と成分(b)の合計量が、半透明化粧料全体に対して、0.01〜10質量%(以下、「%」と略記する)であることが好ましく、0.05〜5%がより好ましい。
また、本発明における成分(c)の配合量は、半透明化粧料全体に対して、0.004%〜4%程度であり、好ましくは、0.02%〜0.2%程度である。
更に、優れた経時安定性を得るために、成分(a)および成分(b)の合計量と成分(c)の配合質量比が、3:1〜1.2:1であることが好ましく、更に、2.5:1〜1.5:1であることが特に好ましい。従来、界面活性剤は、セラミドと油脂成分の合計量より多く用いられる場合が多かったが、上記範囲にその配合量を調整することによって、使用感を損なわず、経時安定性に優れ、高級感のある半透明化粧料を提供できる。
本発明の半透明化粧料には、上記必須成分以外に、非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤、ゲル化剤、水溶性高分子(動植物系、微生物系、合成系)、酸化防止剤、pH調整剤、香料、抗菌剤、防腐剤、清涼剤、保湿剤、抗炎症剤、美白剤、細胞賦活剤、肌あれ改善剤、血行促進剤、皮膚収斂剤、紫外線吸収剤等を、本発明の効果を損なわない範囲にて配合することができる。
本発明の半透明化粧料の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の乳化、混合ができる装置にて、必要であれば、加熱、冷却等の工程を経て製造されるものである。具体的な製法の一例としては、成分(a)、成分(b)及び成分(c)を均一に加熱混合した後、成分(d)に添加し乳化する方法等を挙げることができる。
なお、粒子径を、100〜300nmの範囲にするためには、各成分の混合時の撹拌速度、撹拌時間、撹拌時の温度等を調整すればよいが、組成的には、上記した成分(a)および成分(b)の合計量と成分(c)との配合質量比とすることにより容易に達成できる。
本発明化粧料の特に好ましい製造方法の一例としては、例えば、成分(a)、成分(b)及び成分(c)を1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールに90℃で混合溶解し、これを80℃に加熱してある水系成分に添加する製造方法等が挙げられる。
以上のようにして得られる本発明の半透明化粧料の用途としては、化粧水、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドジェル、ボディジェル等のスキンケア化粧料、化粧用下地化粧料を例示することができ、その使用法は、手で使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
以上説明した本発明の半透明化粧料は、この中に含まれるO/Wエマルションの平均粒径が100〜300nmの範囲であるため、その外観は半透明であり、美しさや高級感を与えることができるものである。
また、本発明の半透明化粧料において、成分(c)としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いたり、成分(a)、成分(b)及び成分(c)の配合量を特定の範囲とすれば、上記のような優れた外観が得られると共に、経時的な安定性に優れたものとすることができる。
【実施例】
以下に実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。以下、「質量%」は単に「%」と、「重量部]は単に「部」と略記する。
実施例1〜8および比較例1〜3
<美容液>
表1に示す組成および下記製法にて美容液を調製した。得られた美容液の(i)エマルションの平均粒径、(ii)半透明性、及び(iii)経時安定性、について下記の方法により評価し、結果も併せて表1に示した。
【表1】

(製法)
A:成分(1)〜(3)を混合し70℃に加熱した。
B:成分(4)〜(14)を混合し70℃に加熱した。
C:BにAを添加し、乳化し、冷却して美容液を得た。
(評価および判定方法)
(i)エマルションの平均粒径
得られた美容液のエマルションの平均粒径については、SUB−MICRON PARTICLE ANALYZER MODEL N4SD(コールター社製)にて測定した。
(ii)半透明性
SHIMADZU社製 UV−2500PC UV−VIS REDCORDING SPECTROPHOTOMETERを用い、1cm角の石英セル中に各美容液試料をいれ、波長600nmの光で透過率を測定した。
(透過率) (判定)
2%未満 :不透明
2〜45% :半透明
45%より大きい :透明
(iii)経時安定性
各美容液試料を5℃、50℃の恒温槽に1ヶ月間保管し、調製直後の状態を対照として、外観(濁度、分離、クリーミング)の変化の有無を目視により、以下の4段階判定基準を用いて判定した。
4段階判定基準
(評価) (判定)
変化なし : ◎
軽微な変化がある : ○
やや変化がある : △
かなり変化がある : ×
以上の結果より、実施例1〜8の美容液は半透明であり、比較例1〜3と比べて、優れた経時安定性を有することがわかった。
【実施例9】
<化粧水>
(成分) (%)
1.セラミド2 0.5
2.イソステアリン酸 1.25
3.フィトステロール 0.25
4.ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1.0
5.ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油 0.02
6.1,3−ブチレングリコール 10.0
7.グリセリン 3.0
8.エチルアルコール 5.0
9.精製水 残量
(製造方法)
A.成分1〜6を混合溶解した。
B.成分7〜9を混合溶解した。
C.BにAを加え、化粧水を得た。
以上のようにして得られた化粧水のエマルションの平均粒径は200nmで、外観は半透明であり、経時安定性に優れた化粧水であった。
【実施例10】
<美容液>
(成分) (%)
1.セラミド3 0.5
2.イソステアリン酸 1.25
3.コレステロール 0.25
4.ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1.0
5.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.02
6.1,3−ブチレングリコール 10.0
7.グリセリン 10.0
8.アルカリゲネス産生多糖体 0.5
9.精製水 残量
(製造方法)
A.成分1〜6を混合した。
B.成分7〜9を混合した。
C.BにAを加え美容液を得た。
以上のようにして得られた美容液のエマルションの平均粒径は210nmで、外観は半透明であり、経時安定性に優れた美容液であった。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、セラミドを配合しながら経時安定性に優れ、また美しく、高級感のあるO/W乳化型の半透明化粧料を提供できる。
従って、本発明は、皮膚の水分保持その他セラミドの有する優れた効果を化粧料に広く利用できるものである。
また、本発明の半透明化粧料では、従来の同種の化粧料に比べ、界面活性剤の配合量を少なくすることができるので、安全性や使用感に優れた化粧料とすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(d);
(a)セラミド
(b)油性成分
(c)非イオン性界面活性剤
(d)水
を含有し、これらが構成するO/Wエマルションの平均粒径が、100nm〜300nmであることを特徴とする半透明化粧料。
【請求項2】
成分(c)の非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である請求項1記載の半透明化粧料。
【請求項3】
成分(a)のセラミドおよび成分(b)の油性成分の合計量と成分(c)の非イオン性界面活性剤の配合質量比が、3:1〜1.2:1である請求項1又は請求項2記載の半透明化粧料。
【請求項4】
成分(b)の油性成分が、ステロール類を含有するものである請求項1ないし請求項3のいずれかの請求項記載の半透明化粧料。
【請求項5】
成分(b)油性成分が、イソステアリン酸を含有するものである請求項1ないし請求項4のいずれかの請求項記載の半透明化粧料。
【請求項6】
成分(c)非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油である請求項1ないし請求項5のいずれかの請求項記載の半透明化粧料。

【国際公開番号】WO2004/045566
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【発行日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553151(P2004−553151)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014249
【国際出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】