説明

半透膜支持体

【課題】アルカリ溶液に対する十分な耐性を有し、強度が強く、製造安定性、半透膜塗布適性に優れ、半透膜溶液の非塗布面への裏抜けがなく、半透膜と半透膜支持体との接着性に優れる半透膜支持体を提供する。
【解決手段】少なくとも一方の面に半透膜を設けて用いる半透膜支持体において、該半透膜支持体がポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維及び湿熱接着性バインダー繊維を含有することを特徴とする半透膜支持体。湿熱接着性バインダー繊維がエチレン−ビニルアルコール系繊維又はビニルアルコール系繊維であると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透膜支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液ろ過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で、半透膜が広く用いられている。半透膜は、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂で構成されている。しかしながら、半透膜単体では機械的強度に劣るため、不織布や織布等の繊維基材からなる半透膜支持体の片面(以下、「半透膜塗布面」という)に半透膜が設けられた形態で使用されている。
【0003】
半透膜支持体に要求される性能としては、半透膜塗布面の平滑性に優れ、製膜後の半透膜における凹凸が少ないこと、半透膜溶液が非塗布面に裏抜けしないこと、半透膜と半透膜支持体との接着性が良好であること、半透膜の塗布前後でカールやシートの収縮が少ないこと等が挙げられる。例えば、ポリエステル不織布を用いたポリスルホン限外ろ過膜が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方で、半透膜をアルカリ廃液の処理に使用したり、処理する水は酸性から中性域であるものの、半透膜の洗浄時にアルカリ性の洗浄液を使用したりといった用途がある。しかしながら、ポリエステル不織布を用いた半透膜支持体は、アルカリ溶液に容易に加水分解されて損傷を受け、こうした用途では使用できない。
【0005】
アルカリ溶液への耐性付与を目的に、ポリプロピレンを芯材、ポリエチレンを鞘材とした複合繊維を熱処理した半透膜支持体、ポリプロピレン単繊維から形成された不織布層を表面に有し、その表面に透過膜を設ける半透膜支持体(例えば、特許文献2及び3参照)等が提案されている。こうしたポリオレフィン系繊維は、耐アルカリ性や耐酸化性に優れるが、ポリオレフィン系繊維の含有率が高い不織布の製造は比較的難しく、地合が不均一になる、製造安定性に劣るといった問題があった。また、ポリオレフィン系繊維は耐熱性に劣るせいか、半透膜支持体の一方の面に半透膜を設ける製造工程において、皺やカールが発生するといった問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54−14376号公報
【特許文献2】特開2001−17842号公報
【特許文献3】特開昭56−152705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、アルカリ溶液に対する十分な耐性を有し、強度が強く、製造安定性、半透膜塗布適性に優れ、半透膜溶液の非塗布面への裏抜けがなく、半透膜と半透膜支持体との接着性に優れる半透膜支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、少なくとも一方の面に半透膜を設けて用いる半透膜支持体において、該半透膜支持体がポリオレフィン系繊維及び湿熱接着性バインダー繊維を含有し、ポリオレフィン系繊維として、ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を少なくとも含有することを特徴とする半透膜支持体を見いだした。
【0009】
湿熱接着性バインダー繊維がエチレン−ビニルアルコール系繊維又はビニルアルコール系繊維であると好ましい。
【0010】
ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維の含有率が30質量%以上98質量%以下であると好ましい。
【0011】
ポリオレフィン系繊維の含有率が65質量%以上であると好ましい。
【0012】
湿熱接着性バインダー繊維がエチレン−ビニルアルコール系単繊維からなり、該単繊維の含有率が2質量%以上35質量%以下であると好ましい。
【0013】
湿熱接着性バインダー繊維がエチレン−ビニルアルコール系繊維とポリオレフィン系繊維との分割型複合繊維からなり、該分割型複合繊維の含有率が2質量%以上60質量%以下であると好ましい。
【0014】
湿熱接着性バインダー繊維がポリオレフィン系繊維を芯、エチレン−ビニルアルコール系繊維を鞘とする芯鞘型複合繊維からなり、該芯鞘型複合繊維の含有率が2質量%以上35質量%以下であると好ましい。
【0015】
湿熱接着性バインダー繊維がビニルアルコール系単繊維からなり、該単繊維の含有率が2質量%以上20質量%以下であると好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の半透膜支持体は、ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維及び湿熱接着性バインダー繊維を含有することを特徴とする。該構成とすることで、アルカリ溶液に対する十分な耐性を有し、強度が強く、製造安定性、半透膜塗布適性に優れ、半透膜溶液の非塗布面への裏抜けがなく、半透膜と半透膜支持体との接着性に優れる半透膜支持体を生み出すことが可能となった。湿熱接着性バインダー繊維が、エチレン−ビニルアルコール系繊維又はビニルアルコール系繊維であると、皺やカールをいっそう抑制することができ、半透膜と半透膜支持体との接着性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における半透膜支持体は、ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維及び湿熱接着性バインダー繊維を含有する。本発明者らは、半透膜支持体の一方の面に半透膜を設ける製造工程で皺・カールが発生する問題に着目し、これらの現象が製造工程で半透膜支持体にかかる熱・張力により、半透膜支持体が幅方向に収縮することが原因であることを見いだした。半透膜支持体の幅方向の収縮抑制について鋭意検討した結果、ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維及び湿熱接着性バインダー繊維を配合することで、半透膜を設ける工程における半透膜支持体の幅方向の収縮抑制、さらには皺・カールの抑制が可能となることを見いだしたのである。
【0018】
本発明における湿熱接着性バインダー繊維とは、水分存在下で加熱することによって膨潤・ゲル化し、接着性を発現する繊維を指す。本発明の半透膜支持体は、湿式抄造法で作製されることが好ましいが、湿式抄造時のドライヤー乾燥時に、湿熱接着性バインダー繊維が膨潤・ゲル化した状態となり、この状態にてシートを熱圧加工することで、他の繊維を強固に固定し、シートの寸法安定性を増すことが可能となる。湿熱接着性バインダー繊維としては、例えばエチレン−ビニルアルコール系繊維、ビニルアルコール系繊維等が挙げられ、特に耐アルカリ性の点でエチレン−ビニルアルコール系繊維が好ましい。
【0019】
エチレン−ビニルアルコール系繊維、ビニルアルコール系繊維としては、エチレン−ビニルアルコール系単繊維、ビニルアルコール系単繊維、エチレン−ビニルアルコール系繊維とそれ以外の繊維からなる複合繊維、ビニルアルコール系繊維とそれ以外の繊維からなる複合繊維等が挙げられる。複合繊維としては、放射状分割型、並列型(サイドバイサイドタイプ)、芯鞘型(コアシェルタイプ)等の複合繊維が挙げられる。複合繊維の場合、エチレン−ビニルアルコール系繊維、ビニルアルコール系繊維と組み合わされる繊維としては特に限定されず、例えばポリプロピレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン等のポリオレフィン系、ポリアクリル系、ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ベンゾエート系、ポリクラール系、フェノール系等の繊維が挙げられるが、ポリオレフィン系繊維が耐アルカリ性の点で好ましい。これらのうち、エチレン−ビニルアルコール系単繊維、エチレン−ビニルアルコール系繊維とポリオレフィン系繊維との分割型複合繊維、ポリオレフィン系繊維を芯、エチレン−ビニルアルコール系繊維を鞘とする芯鞘型複合繊維、ビニルアルコール系単繊維が好ましく使用される。エチレン−ビニルアルコール系繊維、ビニルアルコール系繊維は、他の共重合成分を含んでいてもよいが、他成分の共重合量は20モル%以下、特に10モル%以下であるのが好ましい。
【0020】
本発明においてポリオレフィン系繊維とは、1つ以上の二重結合を分子内に有し、炭素と水素を構成元素とする一種類以上の単量体を重合した単一樹脂又は共重合樹脂を溶融紡糸して繊維化したものであり、ビニルアルコール共重合体繊維やエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維等のように、炭素と水素以外の構成元素を含有する単量体を重合した単一樹脂又は共重合樹脂を溶融紡糸した繊維は含まない。ポリオレフィン系繊維としては、単一成分からなる繊維、2種類以上の異なるポリオレフィンの混合物からなる混合ポリオレフィン繊維、2種類以上の異なるオレフィンの共重合体からなる共重合ポリオレフィン繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリオレフィン等の樹脂を適宜組み合わせた、芯鞘型、サイドバイサイド型、偏芯型あるいは分割型複合繊維等が挙げられる。ポリオレフィン系繊維は、他の共重合成分を含んでいてもよいが、他成分の共重合量は20モル%以下、特に10モル%以下であるのが好ましい。
【0021】
湿熱接着性バインダー繊維がエチレン−ビニルアルコール系単繊維からなる場合、該単繊維の含有率は2質量%以上35質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。湿熱接着性バインダー繊維がエチレン−ビニルアルコール系繊維とポリオレフィン系繊維との分割型複合繊維からなる場合、該分割型複合繊維の含有率は2質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。湿熱接着性バインダー繊維がポリオレフィン系繊維を芯、エチレン−ビニルアルコール系繊維を鞘とする芯鞘型複合繊維からなる場合、該芯鞘型複合繊維の含有率は2質量%以上35質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。湿熱接着性バインダー繊維がビニルアルコール系単繊維からなる場合、該単繊維の含有率は2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、4質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、6質量%以上12質量%以下であることがさらに好ましい。含有率がこれらの数値より少ないと、半透膜を設ける工程における半透膜支持体の幅方向の収縮抑制が不十分となりやすく、製造工程時に皺・カールが発生しやすくなる。含有率がこれらの数値より多いと、効果が飽和するばかりか、却って強度が低下しやすくなり、耐アルカリ性も劣りやすい。
【0022】
エチレン−ビニルアルコール系単繊維の繊維径は0.01〜3dtexが好ましく、0.05〜2dtexがより好ましく、0.1〜1.5dtexがさらに好ましい。エチレン−ビニルアルコール系繊維が分割型複合繊維の場合は、分割後の繊維径で0.01〜0.6dtexが好ましく、0.02〜0.4dtexがより好ましく、0.04〜0.3dtexがさらに好ましい。エチレン−ビニルアルコール系繊維が芯鞘型等の非分割性複合繊維の場合、繊維径は0.4〜3dtexが好ましく、0.5〜2dtexがより好ましく、0.5〜1.5dtexがさらに好ましい。ビニルアルコール系単繊維の繊維径は0.1〜3dtexが好ましく、0.3〜2dtexがより好ましく、0.5〜1.5dtexがさらに好ましい。繊維径が上記範囲を超えると、単位体積当たりの繊維本数が減るため、これら繊維の配合比率を増やす必要が生じる場合がある。また、湿式抄造時の湿紙原反の含水率が低下するため、安定抄造が困難になる場合がある。繊維径が上記範囲より小さいと、繊維自体の機械的性能や耐久性が悪化する場合がある他、湿式抄造時の繊維分散性が難しくなる場合がある。
【0023】
エチレン−ビニルアルコール系繊維の製造方法は特に限定されない。しかしながら、繊維径が細くなってくると、単にエチレン−ビニルアルコール系共重合体を紡糸したのみでは極細繊維が得られにくいことから、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を一成分とする多成分繊維を紡糸し、得られた多成分繊維の他の成分を除去する方法や分割する方法を採用することができる。なかでも、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を島成分とする海島繊維を紡糸し、次いで該海島繊維の海成分を除去する方法を採用するのが好ましい。エチレン−ビニルアルコール系共重合体と複合紡糸又は混合紡糸するポリマーは、該共重合体の性能を実質的に損なうことなく除去できる熱可塑性ポリマーであれば特に限定されない。例えば、酸性水溶液で除去可能なポリアミド(好適にはナイロン6)やアルカリ性水溶液で除去可能な易アルカリ減量性ポリエステル等が挙げられる。紡糸性、減量加工性、コスト等の点から易アルカリ減量性ポリエステルを用いるのが好ましい。
【0024】
エチレン−ビニルアルコール系繊維は、機械的強度が強く、膠着が生じにくい繊維を効果的に紡糸する点から、メルトインデックスは、0.5〜8g/10分であることが好ましい。さらに、紡糸性の点からは1.0g/10分以上であるのがより好ましく、機械的性能の点からは7g/10分以下であるのがより好ましい。また、エチレン含有量は20〜70モル%が好ましく、より好ましくは30〜55モル%、特に好ましくは30〜50モル%である。エチレン含有量が低い場合には紡糸性、耐久性等に問題が生じ、エチレン含有量が高すぎる場合には、疎水性が高くなりすぎる。ビニルアルコールユニット含有量は30〜80モル%、特に45〜70モル%、さらに50〜70モル%であることが好ましい。本発明に用いるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法は、特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化することにより効率的に製造できる。親水性の点からは、ビニルアルコールユニットのケン化度は95モル%以上、特に98モル%以上であるのが好ましい。また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の平均分子量は、紡糸性、耐熱水性等の点から500〜5000、特に800〜3500程度とするのが好ましい。
【0025】
ビニルアルコール系繊維の水中溶解温度は60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。平均重合度500〜5000、ケン化度95モル%以上の繊維が好適に使用される。また、アセタール化等の処理が施されていてもよい。
【0026】
本発明に使用されるポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維は、溶融紡糸機を用い、芯鞘型複合紡糸用口金を用いて溶融紡糸される。紡糸温度は、鞘成分である高密度ポリエチレンが変質しない温度で実施され、紡糸温度200℃以上300℃以下で重合体を押し出し、所定の繊度の紡糸フィラメントを作製する。紡糸フィラメントには、必要に応じて延伸処理を実施する。延伸処理は、鞘成分である高密度ポリエチレンが融着しない温度で実施され、例えば、延伸温度50℃以上100℃以下の範囲で、延伸倍率2倍以上で処理すると、繊維強度が向上して好ましい。得られたフィラメントには、必要に応じて繊維処理剤を付与し、親水性や分散性を制御した後、所定の長さに切断して、不織布製造用の芯鞘型複合繊維として使用される。
【0027】
前記芯鞘型複合繊維を構成する芯成分としては、ポリプロピレンを使用するが、繊維物性を調整するため、必要に応じて高密度ポリエチレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィンを混合することができる。前記ポリオレフィンの混合比率としては、芯成分の10質量%以下であることが好ましい。また、必要に応じて、通常のポリオレフィンに用いられる樹脂添加剤を添加することができる。樹脂添加剤としては、各種酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられ、添加する場合の添加量としては、樹脂に対して0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲で用いられる。
【0028】
次に、前記芯鞘型複合繊維を構成する鞘成分としては、高密度ポリエチレンを使用するが、繊維物性を調節するため、必要に応じてポリプロピレンやエチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィンを混合することができる。前記ポリオレフィンの混合比率としては、鞘成分の10質量%以下であることが好ましい。また、必要に応じて、通常のポリオレフィンに用いられる樹脂添加剤を添加することができる。樹脂添加剤としては、各種酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられ、添加する場合の添加量としては、樹脂に対して0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲で用いられる。
【0029】
本発明の半透膜支持体におけるポリプロピレンを芯成分とし、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維の含有率は、30質量%以上98質量%以下であることが好ましく、50質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上92質量%以下であることがさらに好ましく、75質量%以上90質量%以下であることが特に好ましい。30質量%未満では、不織布製造時に割れ等の欠点が発生しやすくなり、地合の均一性や製造安定性が低下する場合がある。また、半透膜支持体の強度が低下しやすくなる場合がある。98質量%より多いと、半透膜支持体の一方の面に半透膜を設ける製造工程にて、皺やカールが発生しやすくなる場合がある。
【0030】
本発明の半透膜支持体は、ポリプロピレンを芯成分とし、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含有するが、この芯鞘型複合繊維を含めた全てのポリオレフィン系繊維の含有率は65質量%以上であることが好ましい。より好ましくは75質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。エチレン−ビニルアルコール系繊維としてポリオレフィン系繊維との分割型複合繊維を使用した場合、該分割型複合繊維から生成するポリオレフィン系繊維もポリオレフィン系繊維に含まれる。ポリオレフィン系繊維の含有率が65質量%未満であると、アルカリ溶液に対する耐性が低下しやすくなる場合がある。
【0031】
ポリプロピレンを芯成分とし、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維の繊維径は特に限定されないが、不織布強度と製造性等から、繊維径は0.2〜3dtexが好ましく、0.4〜2dtexがより好ましく、0.5〜1.5dtexがさらに好ましい。繊維径が3dtexよりも大きいと、通気度が高くなり、半透膜塗布時に半透膜溶液の非塗布面への裏抜けが発生する場合がある。0.2dtexより細いと、通気度が小さくなり、半透膜と半透膜支持体との接着性に劣る場合がある。
【0032】
本発明の半透膜支持体で使用される繊維の繊維長は特に限定されないが、不織布強度と製造性等から、1mm以上20mm以下が好ましく、1mm以上12mm以下がより好ましく、3mm以上10mm以下がさらに好ましい。繊維長が20mmより大きいと、繊維の分散性に劣りやすく、半透膜支持体の地合が悪化する場合がある。1mmより小さいと、半透膜支持体の機械的強度に劣る場合がある。繊維の断面形状は円形が好ましいが、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止、表面平滑性のために、繊維分散性等の他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。また、分割性複合繊維を水流交絡やリファイナーにより細分化して使用することもできる。
【0033】
本発明の半透膜支持体において、エチレン−ビニルアルコール系繊維、ビニルアルコール系繊維、ポリオレフィン系繊維以外の繊維を本発明の目的を妨げない範囲で含有させてもよい。エチレン−ビニルアルコール系繊維、ビニルアルコール系繊維、ポリオレフィン系繊維以外の繊維としては、例えばポリアクリル系、ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ベンゾエート系、ポリクラール系、フェノール系等の合成繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックスや、再生繊維のレーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等の半合成繊維、さらには、これらの繊維とエチレン−ビニルアルコール系繊維、ビニルアルコール系繊維、ポリオレフィン系繊維との複合繊維等が挙げられる。
【0034】
本発明の半透膜支持体の通気度は特に限定されないが、好ましくは1〜100cc/cm/secである。より好ましくは2〜50cc/cm/secであり、特に好ましくは2〜30cc/cm/secである。1cc/cm/secより小さいと、半透膜と半透膜支持体との接着性に劣りやすい。100cc/cm/secより大きいと、半透膜溶液を塗布した際に裏抜けが発生し、また半透膜塗布面の平滑性にも劣る。
【0035】
本発明の半透膜支持体の製造方法について説明する。本発明の半透膜支持体の製造方法としては、一般的な不織布の製造方法がいずれも使用でき、繊維ウェブを形成し、繊維ウェブ内の繊維を接着・融着・絡合させることにより製造することができる。繊維ウェブの製造方法としては、例えば、湿式抄造法や、カード法、エアレイド法等の乾式法等が挙げられる。しかしながら、カード法、エアレイド法等の乾式法は、繊維長の長い繊維を用いることができるが、均一な繊維ウェブの形成が困難で、湿式抄造法に比べ、一般的に地合が劣るという問題がある。
【0036】
一方、湿式抄造法は、生産速度が乾式法に比べて速く、同一装置で繊維径の異なる繊維や複数の種類の繊維を任意の割合で均一に混合できる利点がある。即ち、繊維の形態もステープル状、パルプ状等と選択の幅は広く、使用可能な繊維径も極細繊維から太い繊維まで使用可能で、他の方法に比べ、良好な地合の繊維ウェブが得られる。これらのことから、本発明の半透膜支持体としては、湿式抄造法によって得られた湿式不織布が好ましい。
【0037】
湿式抄造法では、繊維を均一に水中に分散させ、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の繊維濃度を0.001〜0.50質量%に調製されたスラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。繊維の分散性を均一にするために、工程中で分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
【0038】
抄紙機としては、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機を用いることができる。これらの抄紙機は、単独でも使用できるし、同種又は異種の2機以上の抄紙機がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を使用しても良い。2層以上を抄き合わせる場合、各層の配合は同一であっても、異なっていてもよい。また、2層以上の構成の場合、各々の抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する抄き合わせ法や、一方のシートを形成した後に、該シートの上に繊維を分散したスラリーを流延する方法のいずれでも良い。
【0039】
抄紙機で製造された湿紙を、ヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥することにより、シートを得る。本発明の半透膜支持体は、湿熱接着性バインダー繊維を含有しており、湿熱接着性バインダー繊維を膨潤・ゲル化させ、この状態にてシートを熱圧加工することにより、他の繊維を強固に固定し、シートの寸法安定性を増すといった点で、ヤンキードライヤー、シリンダードライヤー等にて熱圧乾燥することが好ましい。熱圧乾燥とは、タッチロール等で熱ロールに湿紙を押しつけて乾燥させることをいう。熱ロールの表面温度は、90〜150℃が好ましく、100〜140℃がより好ましく、110〜140℃がさらに好ましい。圧力は、好ましくは50〜1000N/cmであり、より好ましくは100〜800N/cmであり、特に好ましくは150〜700N/cmである。
【0040】
本発明の半透膜支持体において、シート化後に、さらに熱ロールによって熱圧工程を経ることが好ましい。シート熱圧加工装置のロール間をニップしながら、湿式抄紙法で製造されたシートを通過させて熱圧加工を行う。ロールの組み合わせとしては、2本の金属ロール、金属ロールと樹脂ロール、金属ロールとコットンロール等が挙げられる。2本のロールは、一方あるいは両方を加熱する。その際に、熱ロールの表面温度、ロール間のニップ圧力、シートの加工速度を制御することによって、通気度、厚み等を制御し、所望の半透膜支持体を得る。熱ロールの表面温度は、好ましくは50〜140℃であり、より好ましくは70〜135℃であり、特に好ましくは90〜130℃である。ロールのニップ圧力は、好ましくは190〜1800N/cmであり、より好ましくは290〜1600N/cmであり、特に好ましくは390〜1500N/cmである。加工速度は、好ましくは4〜100m/minであり、より好ましくは10〜80m/minであり、特に好ましくは15〜70m/minである。熱ロールによる熱圧加工は2回以上行うことも可能であり、その場合、直列に配置された2組以上の上記のロール組み合わせを使用しても良いし、1組のロール組み合わせを用いて、2回加工しても良い。必要に応じて、シートの表裏を逆にしても良い。
【0041】
半透膜支持体の坪量は、特に限定しないが、20〜150g/mが好ましく、より好ましくは30〜120g/mであり、特に好ましくは40〜100g/mである。20g/m未満の場合は、十分な引張強度が得られない場合がある。また、150g/mを超えると、通液抵抗が高くなる場合や、厚みが増してユニットやモジュール内に規定量の半透膜を収納できない場合がある。
【0042】
また、半透膜支持体の密度は、好ましくは0.25〜0.8g/cmであり、より好ましくは0.3〜0.7g/cmであり、特に好ましくは0.4〜0.65g/cmである。半透膜支持体の密度が0.25g/cm未満の場合は、厚みが厚くなるため、ユニットに組み込める半透膜の面積が小さくなってしまい、結果として、半透膜の寿命が短くなってしまうことがある。一方、0.8g/cmを超える場合は、通液性が低くなることがあり、半透膜の寿命が短くなる場合がある。
【0043】
半透膜支持体の厚みは、50〜200μmであることが好ましく、60〜150μmであることがより好ましく、70〜130μmであることがさらに好ましい。半透膜支持体の厚みが200μmを超えると、ユニットに組み込める半透膜の面積が小さくなってしまい、結果として、半透膜の寿命が短くなってしまうことがある。一方、50μm未満の場合、十分な引張強度が得られない場合や通液性が低くなって、半透膜の寿命が短くなる場合がある。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)85質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維(繊度0.6dtex、繊維長5mm)15質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定されたヤンキードライヤーと併設されている熱風フード中で、カンバスを介してタッチロールにて熱圧乾燥させて、幅500mm、坪量50g/mの不織布を得た。
【0046】
得られた不織布を、2つの加熱金属ロールからなるカレンダー装置を用いて、各加熱金属ロール温度110℃、圧力785N/cm、加工速度20m/minの条件で加工し、実施例1の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は85質量%である。
【0047】
(実施例2)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を99質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維を1質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例2の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は99質量%である。
【0048】
(実施例3)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を97.5質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維を2.5質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例3の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は97.5質量%である。
【0049】
(実施例4)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を92質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維を8質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例4の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は92質量%である。
【0050】
(実施例5)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を77質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維を23質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例5の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は77質量%である。
【0051】
(実施例6)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を67質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維を33質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例6の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は67質量%である。
【0052】
(実施例7)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を60質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維を40質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例7の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は60質量%である。
【0053】
(実施例8)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維として、繊度0.8dtex、繊維長10mmの繊維を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例8の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は85質量%である。
【0054】
(実施例9)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)32質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維(繊度0.6dtex、繊維長5mm)15質量部、ポリプロピレン繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)53部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。こうして得た抄造用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例9の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は85質量%である。
【0055】
(実施例10)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)27質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維(繊度0.6dtex、繊維長5mm)15質量部、ポリプロピレン繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)58部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。こうして得た抄造用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例10の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は85質量%である。
【0056】
(実施例11)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)67質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維(繊度0.6dtex、繊維長5mm)15質量部、ポリエステル繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)18部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。こうして得た抄造用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例11の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は67質量%である。
【0057】
(実施例12)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)62質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維(繊度0.6dtex、繊維長5mm)15質量部、ポリエステル繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)23部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。こうして得た抄造用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例12の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は62質量%である。
【0058】
(実施例13)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)47質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維(繊度0.6dtex、繊維長5mm)15質量部、ポリプロピレン繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)20部、ポリエステル繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)18部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。こうして得た抄造用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例13の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は67質量%である。
【0059】
(実施例14)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)70質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンとの分割型複合繊維(放射状16分割、エチレン−ビニルアルコール共重合体:ポリプロピレンの質量比=1.4:1、分割前繊度2.2dtex、繊維長4mm、分割後の繊維径4.5μm)30質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。こうして得た抄造用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例14の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は82.5質量%である。なお、分割型複合繊維の分割後の繊維径は、水中分散・分割後の繊維を顕微鏡観察し、分割後の繊維を四角形に近似し、面積を計算後、相当する円の直径から求めた。
【0060】
(実施例15)
実施例14において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を97質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンとの分割型複合繊維を3質量部に変更して、実施例15の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は98.3質量%である。
【0061】
(実施例16)
実施例14において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を42質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンとの分割型複合繊維を58質量部に変更して、実施例16の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は66.2質量%である。
【0062】
(実施例17)
実施例14において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を99質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンとの分割型複合繊維を1質量部に変更して、実施例17の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は99.4質量%である。
【0063】
(実施例18)
実施例14において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を35質量部、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンとの分割型複合繊維を65質量部に変更して、実施例18の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は62.1質量%である。
【0064】
(実施例19)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)80質量部、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体である芯鞘型複合繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm)20質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。こうして得た抄造用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例19の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は80質量%である。
【0065】
(実施例20)
実施例19において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を97.5質量部、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体である芯鞘型複合繊維を2.5質量部に変更して、実施例20の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は97.5質量%である。
【0066】
(実施例21)
実施例19において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を67質量部、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体である芯鞘型複合繊維を33質量部に変更して、実施例21の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は67質量%である。
【0067】
(実施例22)
実施例19において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を99質量部、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体である芯鞘型複合繊維を1質量部に変更して、実施例22の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は99質量%である。
【0068】
(実施例23)
実施例19において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を60質量部、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体である芯鞘型複合繊維を40質量部に変更して、実施例23の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は60質量%である。
【0069】
(実施例24)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)90質量部、ポリビニルアルコールからなる単繊維(水中溶解温度70℃、繊度1.1dtex、繊維長3mm)10質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。こうして得た抄造用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例24の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は90質量%である。
【0070】
(実施例25)
実施例24において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を97.5質量部、ポリビニルアルコールからなる単繊維を2.5質量部に変更して、実施例25の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は97.5質量%である。
【0071】
(実施例26)
実施例24において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を82質量部、ポリビニルアルコールからなる単繊維を18質量部に変更して、実施例26の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は82質量%である。
【0072】
(実施例27)
実施例24において、ポリビニルアルコールからなる単繊維を、水中溶解温度100℃以上、繊度1.1dtex、繊維長5mmの繊維に変更して、実施例27の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は90質量%である。
【0073】
(実施例28)
実施例24において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を99質量部、ポリビニルアルコールからなる単繊維を1質量部に変更して、実施例28の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は99質量%である。
【0074】
(実施例29)
実施例24において、芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維を75質量部、ポリビニルアルコールからなる単繊維を25質量部に変更して、実施例29の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は75質量%である。
【0075】
(比較例1)
芯成分がポリプロピレンで、鞘成分が高密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。こうして得た抄造用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は100質量%である。
【0076】
(比較例2)
エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる単繊維(繊度0.6dtex、繊維長5mm)30質量部、ポリプロピレン繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)70部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。こうして得た抄造用スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は70質量%である。
【0077】
(比較例3)
主体繊維として延伸ポリエステル系繊維(繊度1.0dtex、繊維長5mm)70質量部、バインダー繊維として未延伸ポリエステル系繊維(繊度1.2dtex、繊維長5mm、融点230℃)30質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、アジテーターで緩やかに撹拌して均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式抄造法を用いて抄造し、135℃に設定されたヤンキードライヤーと併設されている熱風フード中で乾燥させて、幅500mm、坪量70g/mの不織布を得た。
【0078】
得られた不織布を、2つの加熱金属ロールからなるカレンダー装置を用いて、各加熱金属ロール温度210℃、圧力785N/cm、加工速度20m/minの条件で加工し、比較例3の半透膜支持体を得た。この半透膜支持体の全オレフィン系繊維の含有率は0質量%である。
【0079】
<評価>
実施例及び比較例で得られた半透膜支持体について、下記の評価を行い、結果を表1に示す。
【0080】
[不織布製造安定性]
実施例、比較例の半透膜支持体を5000m製造し、製造安定性を以下の基準で評価した。
◎:シート切れ、割れ地合、濃淡ムラ、巻き皺、目立ったケバ立ち等の不具合が全くない。非常に良好なレベル。
○:濃淡ムラ、巻き皺、ケバ立ち等の軽微な不具合が少し生じる。良好なレベル。
△:濃淡ムラ、巻き皺、ケバ立ち等の軽微な不具合が頻繁に生じる。実用上、使用可能レベル。
×:シート切れ、割れ地合等の大きな不具合が頻繁に生じる。実用上、使用不可レベル。
【0081】
[厚み]
JIS P 8118に準じ、厚みを測定した。
【0082】
[通気度]
JIS L 1079に準じ、通気度計(KES−F8−AP1:カトーテック(株)製)で通気度を測定した。
【0083】
[引張強度]
実施例及び比較例で得られた半透膜支持体から、巻き取りの流れ方向250mm、幅方向50mmの試料を10枚切り取り、JIS P 8113に準じて、卓上型材料試験機(装置名:STA−1150、(株)オリエンテック製)を用いて、引張強度を測定し、10枚の平均値を引張強度とした。
【0084】
[耐アルカリ性]
実施例及び比較例で得られた半透膜支持体を、10質量%の水酸化ナトリウム溶液中に、温度60℃にて1週間浸漬した。水洗・乾燥後、前記の引張強度の測定を実施し、初期値に対する引張強度の残存率を耐アルカリ性の指標とした。残存率が90%以上あれば、実用上問題ないレベルである。
【0085】
[半透膜塗布適性]
実施例及び比較例で得られた半透膜支持体について、半透膜の塗布を行った。半透膜支持体の一方の面にポリスルホン樹脂のジメチルホルムアミド溶液(濃度:16質量%)を、塗布幅450mm、塗布厚み200μmで塗布した。このとき、ポリスルホン溶液を塗布しない半透膜支持体の裏側にはドラムを配置し、半透膜支持体が搬送されるようにした。ポリスルホン溶液が塗布された半透膜支持体を、20℃の純水に浸し、ポリスルホンを凝固させ、微多孔性ポリスルホン膜と半透膜支持体との複合膜を得た。この複合膜を80℃の湯浴にて水洗し、膜中に残留した溶媒を除去した後、80℃の熱風で乾燥を行った。こうして得た複合膜の皺、波打ちの発生状況を評価した。
◎:皺、波打ちが全くない。非常に良好なレベル。
○:皺は全くないが、やや弱い波打ちが見られる。良好なレベル。
△:皺は見られないが、やや大きめの波打ちが見られる。実用上、使用可能レベル。
×:波打ちだけでなく皺の発生も見られる。実用上、使用不可レベル。
【0086】
【表1】

【0087】
実施例1〜29で示した半透膜支持体は、ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維及び湿熱接着性バインダー繊維を含有している。これらの半透膜支持体は、アルカリ溶液に対する十分な耐性を有し、強度が強く、製造安定性、半透膜塗布適性に優れている。実施例1〜8、14〜29を比較すると、湿熱接着性バインダー繊維がエチレン−ビニルアルコール系繊維である場合、耐アルカリ性がいっそう優れている。実施例1〜8の比較より、エチレン−ビニルアルコール系繊維が単繊維からなる場合、該単繊維の含有率が2質量%以上35質量%以下である実施例1、3〜6、8は、不織布の製造安定性に優れ、引張強度が強く、半透膜塗布工程でのシートの皺、波打ちが全くなく好ましい。また、実施例1〜3、9、10の比較より、ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維の含有率が30質量%以上98質量%以下である実施例1、3、9は、引張強度が強く、半透膜塗布適性に優れている。さらに、実施例11〜13の比較より、ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含めた全てのポリオレフィン系繊維の含有率を65質量%以上とする実施例11、13は、実施例12に比べ耐アルカリ性に優れている。
【0088】
実施例14〜18の比較より、湿熱接着性バインダー繊維がエチレン−ビニルアルコール系繊維とポリオレフィン系繊維との分割型複合繊維からなる場合、該分割型複合繊維の含有率が2質量%以上60質量%以下である実施例14〜16は、不織布の製造安定性、引張強度、耐アルカリ性、半透膜塗布適性の点でより好ましい。実施例19〜23の比較より、湿熱接着性バインダー繊維がポリオレフィン系繊維を芯、エチレン−ビニルアルコール系繊維を鞘とする芯鞘型複合繊維からなる場合、該芯鞘型複合繊維の含有率が2質量%以上35質量%以下である実施例19〜21は、不織布の製造安定性、引張強度、耐アルカリ性、半透膜塗布適性の点でより好ましい。実施例24〜29の比較より、湿熱接着性バインダー繊維がビニルアルコール系単繊維であり、該単繊維の含有率が2質量%以上20質量%以下である実施例24〜27は、不織布の製造安定性、引張強度、耐アルカリ性、半透膜塗布適性の点でより好ましい。
【0089】
一方、湿熱接着性バインダー繊維を含有せず、ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維のみからなる比較例1は、半透膜塗布工程時で、シートに皺、波打ちが発生し、塗布適性に劣る。湿熱接着性バインダー繊維を含有するものの、ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含有しない比較例2は、引張強度が弱く、耐アルカリ性に劣り、半透膜塗布適性も劣る。ポリエステル系繊維からなる比較例3は、耐アルカリ性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の半透膜支持体は、海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液ろ過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造、膜分離活性汚泥処理等の分野において、精密ろ過膜、限外ろ過膜、MBR用の膜の支持体として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に半透膜を設けて用いる半透膜支持体において、該半透膜支持体がポリオレフィン系繊維及び湿熱接着性バインダー繊維を含有し、ポリオレフィン系繊維として、ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を少なくとも含有することを特徴とする半透膜支持体。
【請求項2】
湿熱接着性バインダー繊維が、エチレン−ビニルアルコール系繊維又はビニルアルコール系繊維である請求項1記載の半透膜支持体。
【請求項3】
ポリプロピレンを芯成分、高密度ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維の含有率が30質量%以上98質量%以下である請求項1又は2記載の半透膜支持体。
【請求項4】
ポリオレフィン系繊維の含有率が65質量%以上である請求項1〜3のいずれか記載の半透膜支持体。
【請求項5】
湿熱接着性バインダー繊維がエチレン−ビニルアルコール系単繊維からなり、該単繊維の含有率が2質量%以上35質量%以下である請求項1〜4のいずれか記載の半透膜支持体。
【請求項6】
湿熱接着性バインダー繊維がエチレン−ビニルアルコール系繊維とポリオレフィン系繊維との分割型複合繊維からなり、該分割型複合繊維の含有率が2質量%以上60質量%以下である請求項1〜4のいずれか記載の半透膜支持体。
【請求項7】
湿熱接着性バインダー繊維がポリオレフィン系繊維を芯、エチレン−ビニルアルコール系繊維を鞘とする芯鞘型複合繊維からなり、該芯鞘型複合繊維の含有率が2質量%以上35質量%以下である請求項1〜4のいずれか記載の半透膜支持体。
【請求項8】
湿熱接着性バインダー繊維がビニルアルコール系単繊維からなり、該単繊維の含有率が2質量%以上20質量%以下である請求項1〜4のいずれか記載の半透膜支持体。

【公開番号】特開2012−250223(P2012−250223A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127191(P2011−127191)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】