説明

卓上壁掛け兼用電子機器

【課題】第一の筐体と第二の筐体とが成す角度を調整可能に接続した電子機器において、壁面に懸架した際の電子機器の表面積をできるだけ小さくしつつ、卓上に設置した場合には、第一の筐体の角度を容易に調整することができるようにするとともに、壁面に懸架した場合には、第一の筐体の角度を容易に調整することができないようにする。
【解決手段】第一の筐体1および第二の筐体2の角度を最小とした場合に両者が重なるように両者を形成するとともに、両者の回転の固定を解除するロック解除部4を筐体の側面に設け、壁面への懸架を壁掛け検知部5にて検知すると、解除無効部6がロック解除部4を操作不能としているので、電子機器を壁面に懸架する際に電子機器の表面積をできるだけ小さくすることができ、電子機器が壁面に懸架された際に、ロック解除部4が操作不能とされて、角度を調整できなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卓上への設置と壁掛けによる壁面への設置とを兼用することが可能な電子機器であり、特に、電子機器の表面の視認性を良好とするための角度調整機構を搭載した卓上壁掛け兼用電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信端末などの電子機器が用いられている。これらの電子機器は卓上に設置して使用されたり、壁面に懸架されて使用されたりしていた。ここで、電子機器を壁面に懸架して使用する場合には、電子機器を適切な高さに設置すれば、電子機器の使用者が立っている状態では、その使用者に対して電子機器の表面の視認性を良好とすることができる。しかしながら、電子機器を卓上に設置する場合には、電子機器の表面が卓上の面と並行となるため、電子機器の使用者が立っている状態では、その使用者が電子機器の表面を見下ろすことになり、その使用者に対して電子機器の表面の視認性が悪くなってしまうという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、電子機器の表面部分を有する第一の筐体と電子機器の卓上設置部分を有する第二の筐体とを回転可能に接続する技術が知られている(例えば、特許文献1など)。この特許文献1によれば、第一の筐体と第二の筐体とを接続する部分に設けた角度調整手段の回転軸を中心として双方を回転可能にしている。これにより、第二の筐体を卓上に設置した状態で第一の筐体の角度を調整することで、使用者にとって電子機器の表面部分の視認性が良好となる角度にすることができる。
【0004】
ここで、特許文献1に記載の技術では、電子機器を壁面に懸架する場合に、第一の筐体と第二の筐体とを一直線状にして、第一の筐体に設けた壁掛け手段を用いて電子機器を壁面に懸架している。そのため、電子機器を壁面に懸架したときの電子機器の表面積が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
一方、特許文献1に記載の技術では、角度調整手段の回転軸を中心として第一の筐体と第二の筐体とを回転可能にしているが、常に回転可能な状態にしておくと、第一の筐体の重量によって第一の筐体と第二の筐体との角度が一定に保てなくなってしまうという問題もあった。
【0006】
これらの問題を解決するために、第一の筐体と第二の筐体とを重なるように構成し、回転軸をロック可能な機構を設けることが考えられる。図3は、従来の卓上壁掛け兼用電子機器の構成例を示す図である。同図において、10は第一の筐体、11は第二の筐体、12は角度調整部、13はロック解除部である。ここで、第一の筐体10と第二の筐体11とは角度調整部12の回転軸により回転可能であり、角度調整部12のロック機構により回転した角度を維持することが可能である。
【0007】
また、図3(a)に示すように、第一の筐体10と第二の筐体11とが成す角度を最小とした場合に、第一の筐体10と第二の筐体11とが重なるように第一の筐体10の背面部分が第二の筐体11の正面部分に形成された凹部に収容される。また、第二の筐体11の背面部分には、壁面に設けたフックを挿入するためのフック挿入穴が形成されている。また、第二の筐体11の側面には、角度調整部12のロック機構によるロックを解除するためのロック解除部13が設けられている。
【0008】
また、図3(b)に示すように、第二の筐体11を卓上に設置した状態で、ロック解除部13を操作しながら第一の筐体10を角度調整部12の回転軸を中心に回転させ、使用者にとって電子機器の表面部分の視認性が良好となる角度でロック解除部13の操作を解除すると、第一の筐体10はその角度でロックされる。このように、ロック解除部13を第二の筐体11の側面に設けることで、ロック解除部13を操作しながら第一の筐体10の角度を調整することが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−68868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図3に示す従来技術では、第二の筐体11を壁面のフックに懸架した状態で誤ってロック解除部13を操作してしまうと、第一の筐体10が自重により角度調整部12の回転軸を中心に回転するため、電子機器の表面部分が下方を向いてしまって視認性が悪くなったり、回転した第一の筐体10が壁面に衝突して破損してしまったりするという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、第一の筐体と第二の筐体とが成す角度を調整することができる卓上壁掛け兼用電子機器において、電子機器を壁面に懸架した際の電子機器の表面積をできるだけ小さくしつつ、電子機器を卓上に設置した場合には、第一の筐体の角度を容易に調整することができるようにするとともに、電子機器を壁面に懸架した場合には、第一の筐体の角度を容易に調整することができないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明では、電子機器として良好な視認性を要求する表面部を備えた第一の筐体と、壁面へ懸架するための懸架部を背面に備えた第二の筐体とを任意の角度に調整できるように接続する。また、角度を調整した場合に、その状態を固定可能とし、この固定を解除するロック解除部を筐体の側面に設ける。また、両者の角度が最小角度となった場合に、第一の筐体および第二の筐体が重なるように筐体を形成している。そして、懸架部が壁面に懸架されたことを検知すると、ロック解除部を操作不能とするようにしている。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、第一の筐体および第二の筐体により成される角度を最小角度とした場合に、第一の筐体および第二の筐体が重なるように構成されているので、電子機器を壁面に懸架した際の電子機器の表面積をできるだけ小さくすることができる。また、電子機器が壁面に懸架された場合には、第二の筐体に設けた懸架部の壁面への懸架が検知され、第一の筐体および第二の筐体の角度の調整の固定を解除するロック解除部が操作不能とされるので、第一の筐体の角度を調整することができなくなる。また、電子機器が卓上に設置された場合には、第二の筐体に設けた懸架部の壁面への懸架が検知されず、筐体の側面に設けたロック解除部が操作可能となるので、第一の筐体の角度を容易に調整することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態による卓上壁掛け兼用電子機器の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態による卓上壁掛け兼用電子機器の動作例を示す図である。
【図3】従来の卓上壁掛け兼用電子機器の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による卓上壁掛け兼用電子機器の構成例を示す図であり、図1(a)は、本実施形態による卓上壁掛け兼用電子機器を正面から見た図、図1(b)は、本実施形態による卓上壁掛け兼用電子機器を背面から見た図である。同図に示すように、本実施形態による卓上壁掛け兼用電子機器(以下、単に電子機器と記載する)は、第一の筐体1、第二の筐体2、角度調整部3、ロック解除部4、壁掛け検知部5、解除無効部6を備えて構成されている。ここで、第一の筐体1の表面には、電子機器として良好な視認性を要求する表面部1aが形成されている。また、本実施形態による電子機器は、例えば電話機やインターホン子機などであり、その表面部1aには、ハンドセットやプッシュボタン、表示ディスプレイなどが取り付けられている。
【0016】
第二の筐体2の背面には、本実施形態による電子機器を壁面に懸架するための懸架部2aが形成されている。この懸架部2aは、壁面に形成されたフック(図示せず)を挿入可能な大きさの穴であり、穴の内部には後述する壁掛け検知部5一部が視認可能に配置されている。角度調整部3は、回転軸3aおよびストッパー3bを備えて構成されている。回転軸3aは、第一の筐体1および第二の筐体2を回転可能に接続している。例えば、第一の筐体1を回転軸3aに固定して、第二の筐体2を回転軸3aに対して回動するように回転軸3aに取り付けることで、第一の筐体1および第二の筐体2は回転可能に接続される。ストッパー3bは、回転軸3aの回転を抑制するためのものであり、例えば、回転軸3aの外周に設けた複数の凹部の何れかにストッパー3bの凸部を挿入することで、ストッパー3bは回転軸3aの回転を抑制することができる。
【0017】
ストッパー3bが有効である場合には、第一の筐体1および第二の筐体2が回転軸3aを中心として回転することが抑制される。一方、ストッパー3bが無効である場合には、第一の筐体1および第二の筐体2が回転軸3aを中心として回転することが可能となる。このように角度調整部3を構成することで、使用者は第一の筐体1および第二の筐体2を任意の角度に調整することができる。
【0018】
ロック解除部4は、第二の筐体2の側面に設けられており、押しボタンなどにより構成されている。ロック解除部4は、後述する解除無効部6を介してストッパー3bに接続されており、ロック解除部4を操作すると、ストッパー3bに力が加わり、ストッパー3bが無効となる。壁掛け検知部5は、本実施形態による電子機器の壁面への懸架を検知するためのものである。第二の筐体2に設けた懸架部2aを壁面に設けたフックに懸架し、その状態で電子機器の設置者が手を離すと、フックが懸架部2a内の穴の上部に配置されている壁掛け検知部5に当接し、電子機器の自重によって壁掛け検知部5が図2(b)中の上方にスライドさせられる。一方、懸架部2aをフックから外すと、壁掛け検知部5に力が加わらなくなり、壁掛け検知部5に取り付けたバネ(図示せず)などによって壁掛け検知部5は元の位置に戻る。
【0019】
解除無効部6は、ロック解除部4の操作を無効とするためのものである。ここで、解除無効部6は、壁掛け検知部5に接続されており、壁掛け検知部5と連動して動作する。すなわち、壁掛け検知部5が上方にスライドすると、解除無効部6も上方にスライドし、解除無効部6がロック解除部4とストッパー3bとの間から離れるため、ロック解除部4を操作してもストッパー3bに力が加わらなくなる。一方、その状態で壁掛け検知部5が元の状態に戻ると、解除無効部6も元の状態に戻り、解除無効部6がロック解除部4とストッパー3bとの間に配置されて、ロック解除部4を操作すると、再びストッパー3bに力が加わるようになる。
【0020】
例えば、図2(a)に示すように、本実施形態による電子機器を壁面に設置する場合、設置者は、ロック解除部4を操作しながら、第一の筐体1と第二の筐体2とが成す角度を最小となるように調整する。ここで、第一の筐体1の背面部分は、第二の筐体2の正面部分に設けた凹部に嵌るように形成されており、第一の筐体1と第二の筐体2とが互いに重なるようになる。この状態で、第二の筐体2の背面に設けた懸架部2aにフックを挿入して設置者が手を離すと、壁掛け検知部5が上方にスライドし、解除無効部6も上方にスライドする。すると、ロック解除部4が誤って操作されても、回転軸3aによる第一の筐体1の回転がストッパー3bにより抑制され、第一の筐体1が自重により回転して表面部1aが下方を向くことを防止することができる。
【0021】
一方、図2(b)に示すように、本実施形態による電子機器を卓上に設置する場合、設置者は、ロック解除部4を操作しながら、表面部1aの視認性が良好となるように、第一の筐体1と第二の筐体2とが成す角度を調整する。この状態で、ロック解除部4が誤って操作されても、第一の筐体1が自重により回転して、第一の筐体1と第二の筐体2とが成す角度が最小となり、表面部1aが上方を向くだけである。そのため、本実施形態による電子機器を卓上に設置している状態では、ロック解除部4を操作しながら第一の筐体1の角度を自由に調整することができる。
【0022】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、電子機器として良好な視認性を要求する表面部1aを備えた第一の筐体1と電子機器を壁面へ懸架するための懸架部2aを背面に備えた第二の筐体2とを回転軸3aを介して接続する。また、第一の筐体1および第二の筐体2を、回転軸3aによって任意の角度に調整可能とし、ストッパー3bによりその角度で固定可能として、この固定を解除するロック解除部4を第二の筐体2の側面に設ける。また、第一の筐体1および第二の筐体2の成す角度が最小角度となった場合に、第一の筐体1および第二の筐体2が重なるように形成されている。そして、懸架部2aが壁面に懸架されたことを壁掛け検知部5にて検知すると、解除無効部6がロック解除部4を操作不能としている。
【0023】
このように、第一の筐体1および第二の筐体2の成す角度を最小角度とした場合に、第一の筐体1および第二の筐体2が重なるように構成されているので、電子機器を壁面に懸架する際に電子機器の表面積をできるだけ小さくすることができる。また、電子機器が壁面に懸架された場合には、第二の筐体2の背面に設けた懸架部2aの壁面への懸架が壁掛け検知部5により検知され、第一の筐体1および第二の筐体2の成す角度の固定を解除するロック解除部4が操作不能とされるので、第一の筐体1の角度を調整することができなくなる。また、電子機器が卓上に設置された場合には、第二の筐体2に設けた懸架部2aの壁面への懸架が壁掛け検知部5により検知されず、第二の筐体2の側面に設けたロック解除部4が操作可能とされるので、第一の筐体1の角度を容易に調整することができるようになる。
【0024】
なお、前述した実施形態では、第二の筐体2に設けた凹部に第一の筐体1の背面部分が嵌るように第一の筐体1および第二の筐体2が形成されているが、これに限定されない。例えば、第一の筐体2に設けた凹部に第二の筐体1の正面部分が嵌るように第一の筐体1および第二の筐体2を形成するようにしても良い。
【0025】
また、前述した実施形態では、第一の筐体1および第二の筐体2を一つの回転軸3aで回転可能としているが、これに限定されない。例えば、第一の筐体1および第二の筐体2を複数の回転軸で回転可能としても良い。
【0026】
また、前述した実施形態では、第一の筐体1および第二の筐体2を回転軸3aで回転可能としているが、これに限定されない。例えば、第一の筐体と第二の筐体を球状にスライド可能として、第一の筐体と第二の筐体とが成す角度を調整可能とするようにしても良い。
【0027】
また、前述した実施形態では、第二の筐体2の側面にロック解除部4を設けているが、これに限定されない。例えば、第一の筐体1の側面にロック解除部4を設けるようにしても良い。また、ロック解除部4を操作しながら、第一の筐体1の角度を調整できる位置であれば、どのような位置にロック解除部4を設けるようにしても良い。例えば、第一の筐体1や第二の筐体2の表面にロック解除部4を設けるようにしても良い。
【0028】
また、前述した実施形態では、壁掛け検知部5は、機構的に壁掛けを検知しているが、これに限定されない。例えば、壁掛け検知部5が電気的に壁掛けを検知するようにしても良い。
【0029】
また、前述した実施形態では、解除無効部6が上方にスライドすることで、ロック解除部4の操作を無効としているが、これに限定されない。例えば、ロック解除部4の操作を電気的に無効にするようにしても良い。
【0030】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 第一の筐体
1a 表面部
2 第二の筐体
2a 懸架部
3 角度調整部
3a 回転軸
3b ストッパー
4 ロック解除部
5 壁掛け検知部
6 解除無効部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器として良好な視認性を要求する表面部を備えた第一の筐体と、
壁面への懸架を行うための懸架部を背面に備えた第二の筐体と、
前記第一の筐体および前記第二の筐体が成す角度を調整可能に接続し、任意の角度で固定可能とする角度調整部と、
前記第一の筐体および前記第二の筐体の少なくとも一方の表面に設けられ、前記角度調整部による角度の固定を解除するロック解除部と、
前記懸架部が前記壁面に懸架されたことを検知する壁掛け検知部と、
前記懸架部の前記壁面への懸架を前記壁掛け検知部にて検知した場合に、前記ロック解除部を操作不能とする解除無効部とを備え、
前記任意の角度が最小角度となった場合に、前記第一の筐体および前記第二の筐体が重なるように前記第一の筐体および前記第二の筐体を形成したことを特徴とする卓上壁掛け兼用電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−175010(P2012−175010A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37754(P2011−37754)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(591253593)株式会社ケアコム (493)
【Fターム(参考)】