説明

単一および複層における高反射率、耐引っ掻き性TiO2被膜

本発明は基材(S)とその上の単一の高屈折率および耐引っ掻き性層(A)からなる被膜とを有する被覆製品、またはその基材(S)上の層(A)がより低い屈折率の層(B)と交互に存在する多層構造とを有する被覆製品であって、層(A)が微細TiOナノ粒子を含有することを特徴とする被覆製品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材(S)とその上の単一の高屈折率および耐引っ掻き性層(A)からなる被膜とを有する被覆製品、またはその基材(S)上の層(A)がより低い屈折率の層(B)と交互に存在する多層構造とを有する被覆製品であって、層(A)が微細TiOナノ粒子を含有することを特徴とする被覆製品に関する。層(A)を有する被膜はナノ粒子を凝集しないで配置しうる方法で製造されうる。従って、本発明はまた単層または多層を有する製品の製造方法、例えば光学データー貯蔵媒体中のカバー層またはIR反射被膜としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高屈折率nを有する被膜(高屈折率(HRI)層、以下HRI層とも呼ぶ。)は種々の用途、例えば光学レンズまたは平面導波路(planar waveguide)に知られている。用語、「屈折率」は複素屈折率の実数部分と同意語であり、両方の言い方を本明細書中では同意語として使用し、nとも表す。高屈折率を有する被膜は本質的に種々の方法で製造されうる。純粋な物理的方法では、高屈折率金属酸化物、例えばTiO、Ta、CeO、Yをいわゆる「スパッタリング法」におけるプラズマ方法によって高真空下に付着させる。可視波長域で2.0を超える屈折率はこれにより困難なく達成されるが、製造方法は比較的複雑で高価である。
【0003】
US6,777,070B1には、反射防止材料および偏光フィルムが記載されていて、耐引掻き被膜は3つの成分、1.フッ素含有メタクリレートポリマー、2.ウレタンアクリレートポリマーおよび超微粒子、および3.表面処理二酸化チタン粒子を有する樹脂からなる。実施例では二酸化チタンと二酸化ジルコニウムの混合物が用いられている。本発明の被覆製品は耐引掻き層には二酸化チタンナノ粒子だけを含む。
【0004】
DE1,982,3732A1には、光学複層システムの製法が記載されていて、特にナノスケールの無機固体粒子を含有する流動性組成物がガラス基材に塗布されている。本願では、基材はポリマー材料である。
【0005】
Chem.Mater 2001、13、1137−1142には、高屈折率トリアルコキシシラン−キャップ化PMMA−チタンハイブリッドからの光学フィルムの製造とその透過性が記載されている。被膜は臭化カリウムペレット上の耐引掻き性被膜である。基材材料としてポリカーボネートについての記載は無い。
【0006】
US6,777,706B1には、有機材料の層を含有する光学製品であって、その層が光透過性ナノ粒子を含有するものが開示されている。硬化層中のナノ粒子、特にTiOの含有量は0〜50体積%であり得る。本発明の被覆製品は被膜中に2酸化チタンを>58重量%の量で含有する。
【0007】
EP0964019A1およびWO2004/009659A1には、有機ポリマー、例えば硫黄含有ポリマーまたはハロゲン化アクリレート(テトラブロモフェニルアクリレート、ポリサイエンスInc.)が知られていて、それらは常套のポリマーより本質的に高屈折率であり、一般の被覆方法により有機溶液から単純な方法で表面に塗布することができる。しかしながら、ここの屈折率は可視光域での測定で約1.7以下の値に限定されている。
【0008】
重要になってきている別の方法は金属酸化物ナノ粒子に基づくもので、ナノ粒子を有機若しくはポリマーバインダーシステム中に導入するものである。対応するナノ粒子−ポリマーハイブリッドレシピが種々の基材に単純方法で安く、例えばスピン被覆によって、塗布される。達成しうる屈折率は通常最初に述べたスパッタ表面と高屈折率ポリマーとの中間にある。ナノ粒子含有量が増えるにつれて、屈折率の増加が達成される。例えば、US2002/176169A1には、ナノ粒子−アクリレートハイブリッドシステムの製造が開示されており、高屈折率層は金属酸化物、例えば酸化チタン、酸化インジウムまたは酸化錫、並びに有機溶媒中UV−架橋性バインダー、例えばアクリレートに基づくバインダーを含有する。スピン被覆、溶媒の蒸発とUV照射の後、耐引っ掻き性被膜、厚さ30〜120nmで所望の屈折率1.70〜1.95を有するHRI層(I)、厚さ5〜70nmで屈折率1.60〜1.70を有する層(II)およびシロキサンベースのポリマーのLRI層を有する対応する光学フィルム/フォイル用被膜が得られる。これらのフォイルは反射防止層として好適であると述べられている。1.95以下の所望の屈折率がHRI層(I)に述べられているが、そのような層がどのように製造されるかに関しての示唆および例示がない。これらの例は屈折率n1.71および1.72を有するHRI層(I)の製法が記載されている(使用されるTiO−含有被膜溶液の製造によれば、最大1.59の屈折率が達成されるだけである)。屈折率の虚数部分kについての記載はなく、下記に記載されるように、ナノ粒子の大きさに依存する。従って、この出願に記載されたより高い屈折率を有する層は単に理想を書いただけで、記載されたような高い屈折率を有する層の製造方法が明記されていない。
【0009】
EP−A2008/040439には、基材(S)と水含有ナノ粒子懸濁液から製造された被膜(A)とを有する被覆製品が記載されている。この被膜(A)は複素屈折率の実数部分n少なくとも1.70、その複素屈折率の虚数部分k0.016以下、Ra値としての表面粗さ20nm未満および耐引っ掻き性0.75μm以下の引っ掻き深さを有することが特徴である(但し、屈折率の実数部分および虚数部分は波長400〜410nm(即ち、ブルーレーザーの波長域)で測定し、Ra値としての表面粗さはAFM(atomic force microscopy:原子的力顕微鏡)により測定された)。そのようなHRI被膜は光学データー貯蔵媒体の最上層として使用され、その高い屈折率が近接場レンズ(固体侵入レンズ、SIL)の瞬間場における光のカップリングを許容する。しかしながら、そのような光学データー貯蔵媒体の特性、特に貯蔵性能がよくなればなるほど、屈折率の実数部分nが高くなり、HRI層の屈折率の虚数部分k(k値)が低くなる。k値は以下のように、光度の減衰定数にいかのように関連している:
k=λ・α/4π
【0010】
減衰定数αはまた屈折媒体中での吸収および散乱に依存する。特にナノ粒子含有システムの場合、kおよびαは、一次ナノ粒子が大きいか、ナノ粒子の凝集体でより大きな粒子を形成するならば、そのスペクトル領域で分子吸収が無いとしても、400〜800nmの可視波長領域で散乱に依存する。従って、低いk値は光散乱や吸収が小さく高い透過性を示す媒体を意味する。
【0011】
EP−A2008/040439からのそのような被膜の製造方法の一段階は、水性ナノ粒子懸濁液の水を有機溶媒に部分的に交換することである。
【0012】
水含量が正確に制限されないと、この方法はナノ粒子の凝集をもたらし、その結果透過性が減少(k値が高くなり)した層になる。更に調査する過程で凝集体の形成はTiOナノ粒子を含有する懸濁液中での水と有機溶媒の溶媒交換では避けられないことが解った。従って、複素屈折率(400〜410nmでの測定)の実素部分n少なくとも1.85およびその虚数部分k0.01以下を有する層はEP−A2008/040439によって製造されたHRI層では達成され得ない。
【0013】
HRI層と非常に低い屈折率を有する他の被膜(低屈折率(LRI)層)との組合せが2重屈折多層(低屈折率層および高屈折率層の交互連続)をもたらす。結果として、例えばソーラースペクトルの可視部分またはIR熱放射域で、電磁放射に反射特性を有する被膜を製造することが可能である。これらの開発の原理はダウ(Dow)のUS−A3610729、5094788、5122905、5122906、5269995および5389324に記載されている。IR反射特性を有するフィルムが例えば3Mから「プレステージシリーズフィルム」の名前で提供されている。これらは異なる屈折率を有するフィルム、例えばポリエステルおよびポリアクリレートフィルムの積層体であり、その層の厚さは反射するIR線の1/4の範囲、即ち約250nmである。実質的に0.1以下の屈折率差(ポリアクリレート:n〜1.5およびポリエステル:n〜1.6)のために、約90%のIR反射値を得るためには非常に多くの数(約200)のHRI/LRI層が必要である。屈折率が大きく違う連続層を用いれば、層の数は理論的には大きく少なくなる。例えばアクリレートに基づく常套の被膜組成は一般に屈折率の実数部分は約n=1.5の領域にある。
【0014】
そのために、屈折率が高ければ高いほどHRI/LRI多層構造用のHRI層の適正が高まる。従って、効果的な反射特性が少ない層の数で可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US6,777,070B1
【特許文献2】DE1,982,3732A1
【特許文献3】US6,777,706B1
【特許文献4】EP0964019
【特許文献5】WO2004/009659A1
【特許文献6】US2002/176169A1
【特許文献7】EP−A2008/040439
【特許文献8】US−A3610729
【特許文献9】US5094788
【特許文献10】US5122905
【特許文献11】US5122906
【特許文献12】US5269995
【特許文献13】US5389324
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Chem.Mater2001、13、1137−1142
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
複素屈折率の実数部分nがより高く、その虚数部分kがより低く、同時にその表面粗度の値(AFM(原子的力顕微鏡)により測定される「Ra値」)および耐引っ掻き性(頂部が50μmの半径を有するダイヤモンド針が1.5cm/sのスピードでかつ荷重40gで表面を移動する時の引っ掻き深さを測定することにより決定)が少なくとも比較できる程度であることによって、従来と比較して改善された複素屈折率を有する、基材(例えばガラス、石英または有機材料)に適用するためのHRI層が必要である。また、簡単な方法でその層が製造できることも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
新規な高屈折率HRI層に関して、驚くべきことに、市販のd100値約100nm以下を有する無水有機変性TiOナノ粒子を自体既知のUV硬化性ラッカー配合に一体化することにより、複素屈折率の実数部分n1.85以上、好ましくは1.90以上、特に好ましくは1.92以上、その虚数部分k0.01以下、好ましくは0.008以下、特に好ましくは0.005以下(波長405nmで測定)を有する高屈折率ラッカー層(層(A))を製造できることが解った。本発明によるHRI層は層厚>120nm、特に≧125nm、および150nmを有する。層厚がより厚く、≧200nm、≧300nm、500nm以上であっても、良好な特性が得られる。好ましくは、層厚は<1μm、特に好ましくは<500nmである。例えば、本発明によるHRI層は層厚約1μmで405nmの光照射で光吸収および光散乱の和が≦10%を有する。同時に、そのような高屈折率ラッカー層は、AFMで測定された表面粗度で20nm未満の低い粗度を有し、驚くべきことに0.75μm未満の引っ掻き深さの優れた耐引っ掻き性を有するものである。
【0019】
従って、本発明は有機ポリマーの基材(S)および少なくとも一つの層(A)を含有する少なくとも一つの被膜を有し、該被膜が層(A)に基づいて58〜95重量%の量の微細TiOナノ粒子を含有することを特徴とする被覆製品を提供する。
【発明の効果】
【0020】
新規な層において、TiOナノ粒子は特に微細化したもので、低いk値、優れた透過性および光吸収および光散乱の和が低くなる。厚さ約1μmで可視広域(400〜800nm)において層(A)の透過率は好ましくは70%以上、特に75%以上、最も好ましくは80%以上である。
【0021】
これらの新規なHRI層(層(A))は単一のHRI層を含む被膜の製造にも好適であるが、HRI層(A)と「低屈折率(low refractive index)」LRI層(B)との複層構造を有する層の製造にも好適であり、そのLRI層は高屈折率HRI層の屈折率n(実数部分)より少なくとも0.3ユニット小さい屈折率n(実数部分)を有し、即ちn(B)≦1.6、特に≦1.5である。この層(B)は、本明細書中で「LRI」(低屈折率)層とも呼び、高屈折率層(A)と交互に組み合わせて基材(S)上にHRI/LRI連続層[(A)−(B)](ここでxは1〜100の整数である。)を形成する。
【0022】
基材(S)上に単層および/または複層の塗布は片面または両面に行ってもよい。複層の塗布の場合、基材上の最初の層または最終層は、独立的にHRI層(A)またはLRI層(B)であってよい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による製品および製法を以下に詳細に説明する。
【0024】
基材(S)
基材(S)の材料はガラス、石英(好ましくは平面導波管に使用される)および有機ポリマーからなる群の少なくとも一つから選択される。この群の中で好ましくは有機ポリマーであり、特にポリカーボネート、ポリ(メチル)メタクリレート、ポリエステルまたはシクロオレフィンポリマーである。
【0025】
本発明の組成物用のポリカーボネートはホモポリカーボネート、コポリカーボネートまたは熱可塑性ポリエステルカーボネートである。
【0026】
本発明によるポリカーボネートおよびコポリカーボネートは一般に平均分子量(重量平均)2,000〜200,000、好ましくは3,000〜150,000、特に5,000〜100,000、最も好ましくは8,000〜80,000、特に12,000〜70,000(ポリカーボネート検量線を用いるGPSにより測定)を有する。
【0027】
本発明による組成物用のポリカーボネートの調製について、「シュネル(Schnell)」、ポリカーボネートの化学および物理、ポリマーリビュー、第9冊、インターサイエンス・パブリッシャーズ、ニューヨーク、ロンドン、シドニー、1964;D.C.PREVORSEK、B.T.DEBONAおよびY.KESTEN、コーポレート・リサーチ・センター、アライド・ケミカル・コーポレーション、モリスタウン、ニュージャージー07960;ジャーナル・オブ・ポリマーサイエンス「ポリ(エステル)カーボネート・コポリマーの合成」、ポリマー化学冊子、第19冊、75−90(1980);D.Freitag、U.Grigo、P.R.Mueller、N.Nouvertne、BAYER AG、ポリマーの科学および工学第11冊の「ポリカーボネート」、第2版、1988、648〜718頁;Dres.U.Grigo、K.KircherおよびP.R.Mueller、「ポリカーボネート」、Becker/Braun、Kunststoff−Handbuch、3/1冊、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、セルロースエステル、Carl Hanser Verlag Munich、ウィーン、1992、第117〜299頁を参照する。調製は、好ましくは界面法または溶融トランスエステル化法によって行われる。
【0028】
好ましくはビスフェノールAに基づくホモポリカーボネートおよびビスフェノールAおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンに基づくコポリカーボネートである。これらのまたは他の好適なビスフェノール化合物をカルボン酸化合物、特にホスゲンと反応し、特に溶融トランスエステル化法ではジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートと反応して対応するポリマーを得る。
【0029】
基材は特に好ましくは高透明基材シートであり、光学データー保存媒体用のコンパクトディスク(CD)としてラージスケールで製造される。その製法について、CD品質のポリカーボネート、例えばビスフェノールAに基づく線状ポリカーボネート、例えばバイエル・マテリアルサイエンスAGからのポリカーボネートタイプマクロロンDP1−1265(ISO1133よって測定した250℃で2.16kg荷重で溶融体積流速19.0cm/10分を有する線状ビスフェノールAポリカーボネート)またはOD2015(ISO1133よって測定した250℃で2.16kg荷重で溶融体積流速16.5cm/10分およびISO306による50N荷重および加熱速度50℃/時でビカー軟化温度145℃を有する線状ビスフェノールAポリカーボネート)が用いられる。基材(S)は溝、凹みおよび/またはスパイラル形態に配置される盛り上がりを示すことができ、かつ表面上に光学データー貯蔵媒体で一般的ないわゆる情報層または貯蔵層を有してもよい。
【0030】
HRI層(A)
HRI層(A)は以下の成分を含む流し込み溶液から製造される:
ナノ粒子懸濁液:有機溶媒、例えばイソプロパノール中の無水TiOナノ粒子懸濁液を用いる。光学的要求から重要な境界条件はTiOナノ粒子の粒子径である。粒子径は約100nmの値(d100値、分析超遠心「AUC」によって測定された粒子100%の最大半径)を超えない。有利には、d100値は70nm未満でd50値(粒子50%の最大半径)が25nm未満である。粒子径を測定する分析超遠心法は「粒子特性」、パート、パート、サイスト、キャラクト、1995、12、148−157に記載されており、当業者に公知である。HRI層はZrO粒子を含まない。
【0031】
そのような製品は例えば日本の会社、東京のテイカから「マイクロチタニウム」として市販されている。
【0032】
TiOナノ粒子が低沸点溶媒、例えばイソプロパノール(沸点82℃)に縣濁されている場合には、溶媒を高沸点溶媒に置換し、溶媒置換は有利には蒸留によって行われる。高沸点溶媒は沸点100℃以上である。高沸点溶媒の最もこのましい例はジアセトンアルコール(DAA、沸点166℃)、1−メトキシ−2−プロパノール(MOP、沸点120℃)またはプロピルグリコール(沸点150〜152℃)またはそれらの混合物があげられる。
【0033】
バインダー:好ましくは、塗布後に光化学反応により反応して高度に架橋したポリマーマトリックスを提供するUV反応性モノマー成分が用いられる。例えば、架橋はUV照射によって行われる。UV照射による架橋が耐引っ掻き性向上の観点から特に好ましい。反応性成分は例えばP.G. Garratt、「Strahlenhaertung」1996、C. Vincentz Vlg.、ハノーバーまたはBASFハンドブック、Lackiertechnik、A. Goldschmidt、H. Streitberger、Vincentz Verlag、2002、Chapter Acrylatharze page 119以降に記載されているようなUV−硬化性アクリレートシステムが好ましい。特に好ましいバインダーは多官能性アクリレート、例えばジアクリレート(例えば、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)またはトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA))、トリアクリレート(例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート)、テトラアクリレート(例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTTA))、ペンタアクリレート(例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)、またはヘキサアクリレート(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA))があげられる。特にDPHAが好ましい。上記のような低分子量の多官能性アクリレートのほかに、オリゴマー状またはポリマー状(メタ)アクリレート、例えばウレタンアクリレートを用いてもよい。ウレタンアクリレートは(メタ)アクリロイル基を有するアルコールと、ジ−またはポリ−イソシアネートから調製される。ウレタンの調製方法は知られていて、例えばDE−A−1644798、DE−A−2115373またはDE−A−2737406に記載されている。そのような製品は例えばバイエル・マテリアルサイエンス社からDesmoluxの名前で市販されている。もちろん、上記多官能性アクリレートの混合物も使用されうる。
【0034】
溶媒:溶媒はアルコール、ケトン、ジケトン、環状エーテル、グリコール、グリコールエーテル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスホキシド、ジメチルアセトアミドおよびプロピレンカーボネートからなる群から選択されうる。好ましくは1−メトキシ−2−プロパノール(メトキシアルコール、MOP)および4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール、DAA)であり、これら2種の溶媒の混合物も好ましく使用される。
【0035】
添加剤:使用される成分は好ましくは光開始剤および熱開始剤の群から選択される少なくとも一つである。添加溶液の成分の総重量部に基づいて、3重量までの添加剤(A3)、好ましくは0.05〜1重量部、特に好ましくは0.1〜0.5重量部が用いられる。典型的な光開始剤(UV開始剤)はα−ヒドロキシケトン(チバのイルガキュアー184)またはモノアクリルホスフィン(チバのダロキュアーTPO)である。UV重合を開始するために必要なエネルギー量(UV照射のエネルギー)は被覆表面の約0.5〜4J/cm、特に好ましくは2.0〜3.0J/cmの範囲である。別の添加剤、いわゆる被膜添加剤としては、Byk/Altana(ドイツ、ヴェーゼル46483)のBYK、特にBYK344が存在する。本発明による高屈折率被膜用の添加溶液は少なくとも1種のバインダーおよび要すれば別の添加剤を有機溶媒または溶媒混合物中に溶解することによって調製される。得られた溶液(以下、「バインダー溶液」と呼ぶ。)は上記ナノ粒子懸濁液と例えば撹拌で混合し、必要に応じて濾過および脱ガスをする。好ましい態様では、懸濁液はバインダー溶液と同じ有機溶媒または溶媒混合物を含む。
【0036】
ホモジナイゼーションのために、添加溶液は必要に応じて超音波で5分以内、好ましくは10〜60秒処理し、および/またはフィルター、このましくは0.2μmメンブランを有するフィルター(例えば、SartoriusからのRCメンブラン)で処理する。
【0037】
上記TiOナノ粒子および操作方法を用いることによって、ナノ粒子の凝集を防止することができる。
【0038】
好ましい被覆組成物は本発明のナノ粒子15〜30重量部、好ましくは17〜28重量部、特に好ましくは22〜27重量部;アクリレート含有バインダー2〜8重量部、好ましくは2.5〜5重量部;別の添加剤0〜3重量部、0.05〜1重量部、特に好ましくは0.1〜0.5重量部;有機溶媒40〜80重量部、好ましくは45〜75重量部、特に好ましくは55〜73重量部を含有する(成分の重量部の合計は100になる)。
【0039】
硬化層、即ち溶媒の蒸発およびUV硬化後、硬化層のTiOナノ粒子の固形分含量は58〜95重量%、好ましくは70〜90重量%、特に80〜90重量%である。
【0040】
被覆製品の製造方法
添加溶液を基材表面、即ち情報および貯蔵層の表面に塗布する。適当な被覆技術は、自体公知の方法、例えば流し塗装、浸漬塗装、ドクターブレード塗装、スプレー塗装、スピン塗装、スリット上への流し込み、カスケード塗装およびカーテン塗装である。これらの方法は、例えば、BASFハンドブック、Lackiertechnik A., Goldschmidt, H. Streitberger, Vincenz-Verlag、2002 Chapter Lackverarbeitung p.494以降に記載されている。
【0041】
過剰の添加溶液を、好ましくは遠心処理(スピン塗装)で除去後、基材上に添加溶液の残分が残り、その厚さは添加溶液の固形分に依存し、スピン塗装の場合には遠心処理条件に依存する。添加溶液に含まれている溶媒は要すれば熱処理により部分的または全部除去してもよい。その後の添加溶液のポリマー成分の架橋は好ましくは光化学方法(例えば、UV光)で行われる。光化学架橋はUV照射システム中で行われる。その場合、被覆基材をコンベアーベルトに載せて、約1m/分のスピードでUV照射源(Hgランプ、80W)を移動させる。この方法はまた1cm当たりの照射エネルギーを増加するために繰り返してもよい。好ましい照射エネルギーは少なくとも1J/cm、好ましくは2〜10J/cmである。次いで、被覆基材を熱後処理、好ましくはホットエアー、例えば60〜120℃で5〜30分にかけてもよい。
【0042】
従って、本発明はまた
i 成分a 沸点100℃以上を有する有機溶媒中でd100値約100nm以下を有するTiOナノ粒子の非水懸濁液、b バインダー、c 光−または熱−開始剤、d 要すれば添加剤、およびe 有機溶媒を含有する添加溶液で製品を被覆する工程、
ii 過剰の溶液を除く工程、
iii 溶媒を除く工程、および
iv 被膜を架橋する工程
で層(A)で被覆された製品の製造方法を提供する。
【0043】
単層(A)を有する上記被膜によって、基材(S)の片面被覆の場合、順に(S)−(A)を有する製品が得られ、両側被覆の場合、順に(A)−(S)−(A)を有する製品が得られる。本発明はそのような製品も提供する。
【0044】
これらの層が波長域320〜420nmで測定して屈折率1.85以上、特に1.90以上を有することが解った。従って、それらは高屈折率(HRI)層である。上記のTiOナノ粒子および上記操作を用いて、ナノ粒子の凝集を防ぐことができる。結果として、層は低いk値を有する。波長約405nmおよび層の厚さ1μmで、本発明のHRI層のk値レベルを決定するために測定された光散乱および吸収の合計は10%未満の値である。特にここに存在するナノ粒子含有システムにおいて、kおよびαはもし一時ナノ粒子が大きすぎてまたはナノ粒子凝集体であってより大きな粒子を形成するならば、スペクトル範囲に分子吸収が無くても、可視スペクトル領域(400〜800nm)内において散乱によって支配される。層中の光吸収および散乱の合計にとってこの低い値は、本発明のHRI層(A)にTiO2ナノ粒子が特に微細状態で存在し、大きなナノ粒子になる凝集が起こらないということを示す。この層は可視スペクトル範囲で透過率の値70%以上、特に75%以上、最も好ましくは80%以上の高い透明性を有する。
【0045】
驚くべきことに、本発明の上記高屈折率TiO層(A)(以下、「TiOHRI」とも呼ぶ。)は容易に常套の熱または光化学的に架橋しうる約1.5の範囲の屈折率を有する添加レシピから製造される被膜からなる層(B)を組み合わせることができる。従って、上記単層高屈折率層(A)を有する製品に加えて、本出願はまたHRIおよび低LRI屈折率を有し、そのなかで上記TiO含有レシピを層(A)に用いる層を含有する複層を有する基材も包含する。
【0046】
層(B)
いわゆるLRI層(B)について、その屈折率ができるだけ小さい配合が好ましく、またTiOHRI配合で可能なのと同様に塗装され、架橋される。実質的にTiOHRI被膜(405nmでn約1.90)より低い屈折率nを有する全ての配合が低屈折率層(LRI)として本質的に好適である。その差Δnは0,2以上、好ましくは0.25以上、特に好ましくは0.3以上である。層(B)は380〜420nmの波長域で測定して屈折率1.70以下、好ましくは1.65以下、特に好ましくは1.60以下を有する。
【0047】
従って、LRI層として屈折率増加成分、例えば高屈折率ナノ粒子を含まない全ての配合(バインダー溶液)が適当である。そのような配合は例えば、P.Nanetti, Vincentz Verlag、ハノーバー2000の「Coating Compendium, Lackrohstoffkunde」等から当業者に公知である。その文献には、バインダーはポリ縮合樹脂、例えばポリエステル、ポリ付加樹脂、例えばポリウレタン、または重合樹脂、例えばポリ(メタ)アクリレートであってよい。この系は熱または照射の作用の両方で架橋する。バインダーと溶媒に加えて、LRI層配合は添加成分、例えば開始剤、レオロジー添加剤、流れ剤および充填剤を含んでよく、充填剤は高度に透明な層が形成される。従って、充填剤として機械的およびレオロジー効果に加えて、屈折率低下特性、例えば粒子径(d25)25nm以下を有するナノ粒子、例えばシリカナノ粒子が好適である。
【0048】
LRI層(B)の特に好まし配合は、アルコール系溶媒に溶解されたUV架橋性アクリレートまたはポリウレタンアクリレートバインダー、および別の成分、特にUV開始剤および低屈折率シリカナノ粒子を含む。
【0049】
シリカ含有UV架橋性配合の調製およびその塗装はWO−A2009/010193に記載されている。
【0050】
層(A)および(B)用の上記配合から塗膜を製造することは、自体当業者に公知の方法で行われうる。一般の製造法は、BASF-Handbuch, Lackiertechnik, Vincentz-Verlag, 2002, Chapter "Die Beschichtung", 333頁以降、Lehrbuch der Lacktechnolotie (Brock, Groteklaes, Mischke-Vincentz Verlag, 2nd Edition 2000, 229頁以降)またはLehrbuch der Lacke und Beschichtungsstoffe, 第8冊-Herstellung von Lacken und Beschichtungsstoffen (Kittel, Hirzel, Verlag, 2nd Edition 2005)に例えば記載されている。
【0051】
製造は最も一般的に撹拌で行われる。全ての成分を陽気に連続して投入し、一定の撹拌速度でホモゲナイズする。ホモゲナイズを促進するために、混合物を加熱してもよい。
【0052】
複層被膜の製造
基材にHRI層(A)の被覆組成物とLRI層(B)の被覆組成物、例えばシリカLRI配合を例えばスピン被覆で交互に塗装する。
【0053】
従って、本発明は基材(S)のその一方の側または両側に層(A)および(B)を交互に一回以上塗装し、その層(A)が上記方法で製造されることを特徴とする被覆製品の製造方法も提供する。
【0054】
そのような複層体は上述のように、例えば「Vakuum-Beschichtung 4」、Gerhard Kienel、VDIVerlag、1993に記載されているように反射減少被膜として用いられ得る。要求される層の数はより少なくし、HRI層とLRI層との間の屈折率差をより大きくする。目標とする層厚dに関して、経験上式d=λ/4÷nを適用する。波長1000nmのIR熱放射線の反射が必要なら、n:1.90のHRI層の層厚は約131nmが得られ、n:1.5のHRI層の層厚は167nmが得られる。
【0055】
多層の最初がHRIであるかLRIであるかは、重要ではなく、また層の数が奇数か偶数かも重要でない。
【0056】
多層用の基材は、HRI単層で述べた選択基準が本質的に適切であり、ポリカーボネートのシートまたはフィルムが特に好ましい。
【0057】
HRI単層または多層用の塗装方法は、公知の流し塗装、浸漬塗装、ドクターブレード塗装、スプレー塗装、スリットやカスケード塗装装置による添加塗装またはカーテン塗装が好適である。塗装方法については、BASFハンドブック、Goldschmidt、Streitberger、「Lackiertechnik」、ビンセンツ、2002、Lackverarbeitun章、494頁以降に記載されている。
【0058】
上記の複層(A)および(B)を含む塗膜によって、記載(S)の片側または両側に交互に塗装することにより、(S)−(B)y−[(A)−(B)]x−(A)zを有する製品、両側塗装の場合は(A)z−[(B)−(A)]x−(B)y−(S)−(B)y−[(A)−(B)]x−(A)zの製品(但し、yおよびzは互いに独立して0または1を示し、xは1〜100の整数を示す。)が得られる。本発明は、また上記製品も提供する。非常に効果的なIR反射特性が本発明の製品で得られる。
【0059】
従って、本願は層(A)塗装のために上記工程i〜ivを少なくとも一回行い、更に屈折率n≦1.65を有する層(B)を少なくとも一回塗装する工程(v)を行い、工程i〜vが数回行われるときは、層(A)および(B)が交互に塗装されることを特徴とする塗装製品の製造方法を提供する。
【0060】
好ましい態様では、ポリカーボネート基材がTiOHRI/シリカLRI複層が交互に連続する被膜が形成される。
【0061】
本発明の高屈折率被膜を適用する分野は、光学データー貯蔵媒体以外に、平面導波路(planar waveguides:PWG)がある。導波路は、その物理的特性によって波が誘導方式において濃縮する不均一媒体として定義される。操作の原理は、A.W. SnyderおよびJ.D. Love、光学導波路理論、Chapman and Hall、ロンドン(1983)に非常に詳しく説明されている。
【実施例】
【0062】
A)テストの測定方法
層厚の決定はホワイトライトインターフェロメーター(ETASPB−T、ETA OpticGmbH)により行われる。
【0063】
屈折率の測定
複素屈折率の屈折率nおよび虚数部分k(被膜のk値)は透過および反射スペクトルから得られる。この場合、約100nm〜300nmの被膜が石英ガラス基材表面に希釈液からスピン被覆された。この層の束の直接透過および反射を、STEAG ETA−Optic、CD−測定システムETA−RTからのスペクトルメーターを用いて、透過および反射散乱光を除いて、行われ、その後層厚およびスペクトル特性nおよびkが測定された透過および反射スペクトルに適合される。これはスペクトルメーターの内部ソフトウェアーで行われ、石英基材のnおよびk値が必要であるが、それは予めブランク(blind measurement)で行っておく。kは光度の減衰係数αに以下の関係を有する:
k=λ・α/4π
(式中、λは光の波長である。)
【0064】
この測定方法において、直接透過および反射を、透過および反射散乱光を除いて、測定する。結果として、減衰率α、即ちkは純粋な分子吸収の成分の他に、散乱による光度減少をもたらす成分も含む。従って、この測定方法で吸収と散乱の合計も決定できる。吸収と散乱は、ナノ粒子含有システムで原則的に可視光スペクトル領域(400nm〜800nm)で、一次粒子が大きいか、凝集して大粒径を形成する場合、その波長域で分子吸収が無くても、散乱に左右される。
【0065】
実数部分nおよび虚数部分kは波長の関数として決定され、光屈折率で期待される明確な波長依存が測定される(380〜420nmでn:1.88〜1.93、550nmでn:約1.84〜1.85、および800nm以上でn:1.820〜1.825、測定結果の散乱は、複数測定の結果である)。
【0066】
表面粗度:表面粗度はASTM E−42.14STM/AFMによるAFM(atomic force microscopy)で測定され、15〜18nmにおけるRa値が測定される。
【0067】
耐引っ掻き性:耐引っ掻き性を測定するために、頂点部分の半径50μmを有するダイヤモンド針を40gの負荷を掛けて1.5cm/sのスピードで塗膜表面を移動し、得られた引っ掻き深さを測定した。測定値は約0.58〜0.65の範囲であった。
【0068】
B)UV架橋懸濁液の製造
実施例1 TiOナノ粒子における溶媒交換
出発製品:マイクロチタン/IPAゾル、イソプロパノール中「TiOND134」。これはテイカ(Tayca)からの45wt%ナノ粒子懸濁液である。
【0069】
ナノ粒子懸濁液はロータリーエバポレーターで15〜25mbarで温度35〜40℃で濃縮し、イソプロパノール(沸点82℃)を留去した。減少体積をジアセトンアルコール(DAA:4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、Acros、沸点166℃)で置き換えた。
【0070】
生成物:TiO−DAA34.7wt%DAA中
【0071】
実施例2 TiO含有UV架橋懸濁液の製造(TiOーHRI配合)
この実施例は、本発明による層(A)の配合である。
【0072】
ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(DPHA、アルドリッチ407283)7.5gを250mlガラスビーカーに計量した。ジアセトンアルコール(DAA)39.4gをそこに加えて混合物をマグネチック・スターラーで撹拌し、透明溶液を形成した。イルガキュアー184(チバ製1−ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン)0.54gを加えて、撹拌を透明溶液になるまで続けた。実施例1で得られたTiO−DAAナノ粒子懸濁液131.3gを添加し、撹拌して半透明な懸濁液を得た。
【0073】
使用前に、ナノ粒子含有溶液をウルトラソニック・フィンガーで均質化し、0.45μmフィルターで濾過した。
【0074】
実施例3 SiO含有UV架橋懸濁液の調製(SiO−LRI配合)
シリカナノ粒子を高含有量で含むUV−架橋配合を調製した。そのような配合はWO−A2009/010193に記載されている:
DPHA(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート、アルドリッチ、407283)1.5g
PETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート、アルドリッチ246794)1.5g
Desmolux U 100(ウレタンアクリレート、バイエルマテリアルサイエンス)7.0g
イルガキュアー184(1−ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン、チバ社)0.4g
Darocure TPO(ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド)0.1g
Highlink Nano401−31、13nmシリカナノ粒子、メトキシプロパノール(MOP)中29.8%、Clariant 83.6g
Naジオクチルスルホサクシネート(アニオン界面活性剤、Fluka86139)0.17g
メトキシプロパノール(1−メトキシ−2−プロパノール、MOP、KMF12−512)48.0g
上記成分を撹拌で均質化した。使用前に、ナノ粒子含有懸濁液をウルトラソニックフィンガーで均質化し、0.45μmフィルターで濾過した。
【0075】
C)光学特性(n、k)を決定するための石英基材の被覆
被覆層厚>120nmを有する被覆シートの製造
スピンコーター(Steag Hamatech)を用いて、上記実施例で記載したナノ粒子懸濁液を回転速度10,000ー1(1分間の回転数)で2.5x2.5cmガラス基材(石英試料スライド)に各々塗装し、UV光(Hgランプ、約3j/cm)で架橋した。
【0076】
実施例4 実施例2のTiO−HRI被膜の光学特性および層厚
以下の値を、実施例2の被膜をC)で被覆した石英基材について上記A)に記載の方法で測定した。
層厚:156.3nm
屈折率:n1.936
k値:0.002
【0077】
実施例5 実施例3のSiO−LRI被膜の光学特性および層厚
以下の値を、実施例3の被膜をC)で被覆した石英基材について上記A)に記載の方法で測定した。
屈折率:n1.485
層厚:337.4nm
k値:0.015
【0078】
D)コンパクトディスク(CD)基材の被覆
プラスチック基材上の被膜の耐引っ掻き性を測定し、被膜厚約1μm(精度+/−10%)における実施例2の本発明の被膜の吸収および散乱の合計を測定するために、実施例2および3に記載の配合を以下の被覆条件でマクロロンOD2015のCD基材に塗装した(ISO1133による250℃で2.16kg負荷の溶融体積流れ速度16.5cm/10分、およびISO306による50N負荷で加熱速度50℃/時でビカー軟化温度145℃を有する線状ビスフェノールAポリカーボネート):
・50分ー1(回転数/分)で添加溶液を測定、60秒間で10分ー1(回転数/分)でサンプルを分配、15秒間で3000分ー1(回転数/分)で遠心。
・被膜をHgランプを用いて5.5J/cmで架橋した。
・層厚および耐引っ掻き性を上記A)に記載の方法で測定した。
【0079】
実施例6 実施例2のTiO−含有HRI被膜の特性
以下の値を、実施例2の被膜をD)で被覆したポリカーボネート基材上について上記A)に記載の方法で測定した。
表面粗度Ra:AFMにより測定12〜18nm
引っ掻き深さ:0.6〜0.65μm
波長405nmでの吸収および散乱の合計:約6.5%
【0080】
実施例7 実施例3のSiO−含有LRI被膜の特性
以下の値を、実施例2の被膜をC)でポリカーボネート基材上について上記A)に記載の方法で測定した。
表面粗度Ra:AFMにより測定10〜15nm
引っ掻き深さ:0.5〜0.6μm
【0081】
実施例8 TiO−HRI/SiO−HRI多層を有するCD(コンパクトディスク)基材の被覆
a)最初のTiO−HRI層の塗装
実施例2に記載の配合を、圧力操作の計量装置EFD2000XLを備えたSteag Hamatechからの完全自動スピンコーターによってCD基材(マクロロンOD2015)に計量シリンジを経由して塗装した。スピン条件(遠心による過剰ラッカーの除去)を選択して、約125nmの層厚を得た。この場合、基材の回転速度は2.1秒で240分ー1(回転数/分)、3秒で1000分ー1および17秒で7200ー1に設定した。次いで架橋をHgランプ5.5J/cmで行った。
【0082】
b)最初のTiO−HRI層上の第1のSiO−HRI層の塗装
a)と同様だが、塗装条件は層厚約190nmになるように、実施例3に記載のSiO−LRI配合を塗装し、UV−架橋した。詳細には、以下の条件を遠心に維持した:2.1秒で240分ー1(回転数/分)、1.5秒で1000分ー1および13秒で7000分ー1
【0083】
c)別の多層を塗装
a)およびb)に記載の方法を繰り返し、ASTM E1331の分光評価(Hemispherical Geometryを用いる分光測光により反射ファクターおよび色についての標準テスト方法)を層数16および24について行った。この結果、16層を有するCD基材は900〜1150nmの領域(即ち、赤外領域)で72%に到達する反射ピークを示し、24層では約92%の反射を達成した。
【0084】
よりくらいHRI層と明るいLRI層の交互連続がTEM(透過電子顕微鏡)画像により模式的な証拠とできた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーの基材(S)および少なくとも一つの層(A)を含有する少なくとも一つの被膜を有し、該被膜が層(A)に基づいて58〜95重量%の量の微細TiOナノ粒子を含有することを特徴とする被覆製品。
【請求項2】
TiOナノ粒子を層(A)に基づいて80〜90重量%含有する請求項1記載の被覆製品。
【請求項3】
層(A)が膜厚>120nmを有する請求項1記載の被覆製品。
【請求項4】
TiOナノ粒子と離れて更にナノ粒子が層(A)に存在しない請求項1〜3いずれかに記載の被覆製品。
【請求項5】
波長405nmで、層(A)が光吸収および散乱の和≦10%の値を有する請求項1〜3いずれかに記載の被覆製品。
【請求項6】
請求項1記載の被覆製品から得られる光データー貯蔵媒体。
【請求項7】
層(A)が
i沸点100℃以上を有する有機溶媒中でd100値約100nm以下を有するTiOナノ粒子の非水懸濁液、
ii バインダー
iii 光−または熱−開始剤
iv 要すれば添加剤、および
v 有機溶媒
を含有する被覆組成物から得られる、請求項1記載の被覆製品。
【請求項8】
製品が波長域380〜420nmで測定して層の順番(S)−(A)または(A)−(S)−(A)を有している請求項1記載の被覆製品。
【請求項9】
少なくとも一つの被膜が波長域380〜420nmで測定して屈折率n≦1.65を有する少なくとも一つの層(B)を有する請求項1または8記載の被覆製品。
【請求項10】
基材(S)がポリカーボネート、ポリ(メチル)メタクリレート、ポリエステルまたはシクロオレフィンポリマーからなる群から選択された有機ポリマーである従前の請求項いずれかに記載の被覆製品。
【請求項11】
バインダーが多官能性アクリレートを含有する群から選択される請求項7記載の被覆製品。
【請求項12】
i 成分a 沸点100℃以上を有する有機溶媒中でd100値約100nm以下を有するTiOナノ粒子の非水懸濁液、b バインダー、c 光−または熱−開始剤、d 要すれば添加剤、およびe 有機溶媒を含有するを含有する溶液で有機ポリマーの基材(S)を被覆する工程、
ii 過剰の溶液を除く工程、
iii 溶媒を除く工程、および
iv 被膜を架橋する工程
で層(A)を形成することからなる請求項1または7記載の被覆製品の製造方法。
【請求項13】
i沸点100℃以上を有する有機溶媒中でd100値約100nm以下を有するTiOナノ粒子の非水懸濁液、
ii バインダー
iii 光−または熱−開始剤
iv 要すれば添加剤、および
v 有機溶媒
を含有する請求項7記載の被覆組成物の使用。
【請求項14】
非反射層が存在しない請求項1記載の被覆製品。

【公表番号】特表2013−507274(P2013−507274A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533601(P2012−533601)
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065204
【国際公開番号】WO2011/045275
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】