説明

単一の酵素工程における血圧降下ペプチド

【課題】血圧降下機能を有するペプチドの酵素を用いた製造方法を提供する。
【解決手段】−I−P−P−および−V−P−P−配列を含んでなるタンパク質供給源からIPPおよびVPPを生成するための方法であって、タンパク質供給源において存在する−I−P−P−配列の少なくとも40%がペプチドIPPに変換され、タンパク質供給源において存在する−V−P−P−配列の少なくとも40%がペプチドVPPに変換され、好ましくは、単一の酵素工程において、プロリン特異的エンドプロテアーゼの使用を含んでなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPP、LPPおよびVPPの生成に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧症は、ヒトにおいて比較的一般的な疾患であり、循環器系疾患、腎不全および脳卒中に対して有力な危険因子を示す。カルシウム遮断薬、β遮断薬、利尿剤、α遮断薬、中枢αアンタゴニスト、アンジオテンシンIIアンタゴニストおよびACEインヒビターのような多様な医薬製品の利用可能性は、高血圧症に対する根本的な生理学的機構が多面的であることを例示する。
【0003】
高血圧症の生理学的機能のうち、特に、レニン−アンジオテンシン機構は、多くの科学的注目を集めている。この機構では、アンジオテンシンが肝臓より分泌され、ペプチダーゼのレニンによって切断されて、生物学的に不活性なデカペプチドのアンジオテンシンIを産出する。アンジオテンシンIが肺毛細管を通過する時、アンジオテンシン変換酵素(以後、ACEと称する)と呼ばれるもう1つのペプチダーゼは、アンジオテンシンIの最後の2残基(His−Leu)を取り出すことによって、アンジオテンシンIに作用し、オクタペプチドのアンジオテンシンIIを形成させる。アンジオテンシンIIオクタペプチドは、強力な血管収縮活性を示し、従って、血圧を上昇する。より低いレベルのアンジオテンシンIIをもたらすACE阻害は、血管収縮および、従って、高血圧を防止する。
【0004】
アンジオテンシンIを切断することのほかに、ACEはまた、ブラジキニン(血圧調節にも参加するノナペプチド)を加水分解することができる。後者の機構では、ACE阻害は、血管拡張を促進し、血圧も降下するブラジキニンのレベルの増加をもたらす。従って、ACEを阻害することは、少なくとも2つの個別の機構を介する血圧降下効果をもたらす。
【0005】
オクタペプチドのアンジオテンシンIIが副腎皮質によるアルドステロンの放出を刺激することもまた公知である。アルドステロンのための標的器官は、腎臓であって、ここで、アルドステロンは腎尿細管からのナトリウムの再吸収(reabsorbtion)の増加を促進する。また、この第3の機構を介して、ACE阻害は血圧を減少するが、しかしこの場合、ナトリウム再吸収を低減することによってである。
【0006】
その複数の生理学的効果のため、ACEのタンパク質分解活性を阻害することは、血圧を減弱する有効な方法である。この観察は、カプトプリルおよびエナラプリルのような多くの有効な薬学的血圧降下製品を生じている(オンデッチ,M.A.(Ondetti,M.A.)ら、1977年、Science,Washington DC,196,441−444)。
【0007】
高血圧症は比較的一般的な疾患状態であるため、温和に有効な天然成分によって、現代のライフスタイルのこのような所望されない結果を妨げることは有利であり得る。具体的には、そのような製品は定期的に消費されるため、食品または飲料製品に組み入れることができる温和に有効な天然成分。あるいは、そのような温和に有効な天然成分は、栄養補助食品に組み入れられ得る。最近の数十年間の間に、発酵乳に存在する特定のペプチドがACE阻害能を有し、高血圧症被験体における血圧減少を誘導することができることが発見されている。今日、多数のインビトロおよび少数の動物治験が、様々なタンパク質供給源から得られる異なるペプチドのACE阻害効果を実証している。インビトロACE阻害アッセイは、多くの異なるペプチド配列を示しているが、ACE阻害ペプチドは、血中を循環して、インビボ効果を発揮する必要があることを重要視すべきである。効果的なACE阻害ペプチドは、消化管タンパク質分解消化系による分解に耐性であるべきであり、腸壁を超える以後の輸送の間、無傷(intact)を保持すべきであることに意味がある。
【0008】
多様なACE阻害ペプチドの構造−機能研究は、それらが、しばしば、それらのC末端配列でPro−Pro、Ala−ProまたはAla−Hypを所有することを示唆している(マルヤマ,S.(Maruyama,S.)およびスズキ,H.(Suzuki,H.)、1982年;Agric Biol Chem.,46(5):1393−1394)。この所見は、ACEが、プロリンに関与するペプチド結合を切断することができないペプチジルジペプチダーゼ(EC3.4.15.1)であるという事実によって、一部説明される。従って、Xaa−Pro結合を切断することができないため、構造Xaa−Pro−Proを有するトリペプチドから、ジペプチドPro−Proを取り出すことができない。従って、比較的高い濃度で存在する場合、Xaa−Pro−Pro構造を有するトリペプチドがACE活性を阻害すると考えられる。ACEだけではなく、ほとんどすべてのタンパク質分解酵素は、Xaa−ProまたはPro−Pro結合の切断において差異を有するため、ペプチドのカルボキシ末端部における(複数の)プロリン残基の存在は比較的プロテアーゼ耐性な分子を生じるという観念は、ほとんど自明である。同様に、プロリンの代わりにヒドロキシプロリン(Hyp)を含有するペプチドも比較的プロテアーゼ耐性である。このことから、それらのカルボキシ末端部に1つもしくはそれ以上の(ヒドロキシ)プロリン残基を担持するペプチドは、消化管におけるタンパク質分解から免れるようであることが推察され得る。これらの結論は、我々が、特定のACE阻害ペプチドの顕著なインビボ血圧降下効果を理解するのに役立つ:それらは、ACE阻害の構造要件を満たすだけではなく、それらはまた、消化管タンパク質分解消化系による分解に耐性であり、腸壁を超える以後の輸送の間、無傷(intact)を保持する。
【0009】
強力なACE阻害活性が、トリペプチドLeu−Pro−Pro(特開平2−36127号公報)、Val−Pro−Pro(EP0583074号明細書)およびIle−Pro−Pro(J.Dairy Sci.,78:777−7831995年))について報告されている。最初に、すべてのACE阻害ペプチドを、ACE活性に対するそれらのインビトロ効果に基づいて特徴付けしたところ、比較的低いIC50値を生じるそれらの強力なACE阻害効果のため、トリペプチドIle−Pro−Pro(以後、IPPと称される)、Val−Pro−Pro(以後、VPPと称される)およびLeu−Pro−Pro(以後、LPPと称される)が際立っていた。後に、トリペプチドVPPならびにIPPの推定された抗高血圧効果を、高血圧自然発症ラットにおいて確認することができた(ナカムラ(Nakamura)ら、J.Dairy Sci.,78:12531257(1995年))。これらの実験では、阻害トリペプチドは乳酸菌発酵乳から由来した。乳発酵の間、所望のペプチドが、増殖中の乳酸菌より産生されるプロテイナーゼによって産生される。この発酵アプローチの欠点は、乳酸菌が排出される酵素のタイプおよび量を制御することが困難な生体であることである。従って、ACE阻害ペプチドの産生は再現性がほとんどなく、酵素の最適な組を、要求されるペプチドの最大収量を確実にするように産生させることもまたありそうにない。また、要求される発酵時間は比較的長く、低い収量と組み合わせて、生体活性ペプチドの所望されないコスト構造を意味する。さらに、発酵製品は、特に、固形食物へ直接組み入れることにはあまり適さず、官能特性への制限が厳格である。そのような発酵乳製品は味が損なわれること、およびそのような発酵ブロスからのACE阻害ペプチドの回収中に遭遇する多くのプロセシングの問題点については、米国特許第6,428,812号明細書に記載されている。これらの欠点にもかかわらず、発酵乳製品は、経口的に投与される血管抑制因子(vasodepressor)として実践的アプリケーションに向けられている。ACE阻害ペプチドは、錠剤または薬用ドロップのような濃縮された栄養補助食品の形態でのそれらの市場活動を可能にするために、電気透析、中空糸膜透析またはクロマトグラフィー方法後に発酵乳製品から濃縮されている。
【0010】
発酵生成経路の上記の欠点については、特に、特許出願、国際公開第01/68115号パンフレットおよびEP1231279号明細書において認められた。後者の出願には、純粋な酵素プロセスにより、ミルクカゼインからトリペプチドVal−Pro−ProおよびIle−Pro−Proが回収されることが記載されている。該出願は、ミルクカゼインを含有する材料をプロテイナーゼおよびペプチダーゼで消化することによって、中間ペプチドを介して、これらのトリペプチドを生成するための方法を請求している。これらの酵素インキュベーションのそれぞれは、12時間もの長時間を要し、微生物混入の副産物に好都合な条件下で行われ得る。ペプチダーゼとのインキュベーションの前に、好ましくは、中間ペプチドが、精製され、中間ペプチドのさらなるクロマトグラフィー精製後、高い最終濃度のACE阻害ペプチドのみを得ることができる。これらの多様な欠点から考えて、抗高血圧ペプチドの高いかつ再現性のある収量を伴う薄味の製品を作製するより簡単かつ微生物学的により信頼し得る酵素経路が明らかに必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ペプチドIPPおよびVPPが高収量で作製されるプロセスに関する。プロセスは、好ましくは、単一の酵素インキュベーション工程を含んでなる。本プロセスは、適切なアミノペプチダーゼとの組み合わせでのタンパク質分解酵素またはプロリンのカルボキシ末端で切断するプロテアーゼ、好ましくは、プロリン(profine)特異的エンドプロテアーゼもしくはプロリン特異的オリゴペプチダーゼ、より好ましくは、プロリン特異的エンドプロテアーゼの使用を含んでなる。好ましくは、プロリン特異的エンドプロテアーゼのようなプロリンの末端で切断するプロテアーゼ、ならびにアミノペプチダーゼ活性は、混入するエンドプロテアーゼ活性を何ら含まない。好ましくは、プロリン特異的エンドプロテアーゼのようなプロリンの末端で切断するプロテアーゼ、ならびにアミノペプチダーゼ活性は、混入するカルボキシペプチダーゼ活性を含まない。混入するエンドプロテアーゼ活性を含まないプロリン特異的エンドプロテアーゼは、好ましくは、1を超える、より好ましくは、100を超えるProl Spec act/Endo比を有する酵素調製物である。混入するエンドプロテアーゼ活性を含まないアミノペプチダーゼ活性は、好ましくは、少なくとも0.1、より好ましくは、少なくとも0.5、最も好ましくは、少なくとも1のAP/Endo比を有する酵素調製物である。カルボキシルペプチダーゼ活性を含有しないプロリン類特異的エンドプロテアーゼは、好ましくは、少なくとも1、より好ましくは、少なくとも10のPro Spec act/CPD比を有する酵素調製物である。
【0012】
カルボキシルペプチダーゼ活性を含有しないアミノペプチダーゼ活性は、好ましくは、少なくとも0.1、より好ましくは、少なくとも0.3のAP/CPDを有する酵素調製物である。上記の比は、実施例9に記載のとおりに決定される。
【0013】
タンパク質配列に存在する好ましくは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、またはなおより好ましくは、少なくとも60%および最も好ましくは、少なくとも70%の−I−P−P−配列は、ペプチドIPPに変換される。タンパク質配列に存在する好ましくは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、またはなおより好ましくは、少なくとも60%および最も好ましくは、少なくとも70%の−V−P−P−配列は、ペプチドVPPに変換される。タンパク質配列に存在する好ましくは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、またはなおより好ましくは、少なくとも60%および最も好ましくは、少なくとも70%の−L−P−P−配列は、ペプチドLPPに変換される。プロリン特異的エンドプロテアーゼは、好ましくは、ポリペプチドのような大きなタンパク質分子またはタンパク質自体を加水分解することが可能である。本発明に従うプロセスは、一般に、24時間未満のインキュベーション時間を有し、好ましくは、インキュベーション時間は10時間未満、より好ましくは、4時間未満である。インキュベーション温度は、一般に、30℃より高い、好ましくは、40℃より高い、より好ましくは、50℃より高い。IPPおよびVPPの生成の間、有利には、LPPも形成される。本発明の別の態様は、他の加水分解したタンパク質(好ましくは、非アスパラギン酸プロテアーゼ、より好ましくは、セリンプロテアーゼによって加水分解される)からACE阻害ペプチドを精製するプロセスである。加水分解したタンパク質の部分は、選択されたpH条件下で沈殿する。精製プロセスは、pHを、pH、ここで、従って、加水分解したタンパク質が部分的に沈殿する、に変更し、沈殿したタンパク質を溶液中のACE阻害ペプチドから分離することを含んでなる。さらなる実施態様ACE阻害ペプチドの効率的かつ簡便な回収では、加水分解したタンパク質は、水溶性溶媒と混合され、大量のタンパク質を沈殿する。
【0014】
本発明はさらに、健康の改善または疾患の防止および/または処置のためのニュートラシューティカル、好ましくは、医薬品の製造のため、あるいは高血圧(高血圧症)、心不全、前糖尿病もしくは糖尿病、肥満、耐糖能異常またはストレスの処置または防止のためのニュートラシューティカル、好ましくは、医薬品の製造のための、これらのペプチド組成物の使用に関する。
【0015】
好ましくは、本ペプチド組成物は、栄養補助食品の形態で、ローション、ゲルもしくは乳液の形態での局所アプリケーションを含むパーソナルケアアプリケーションの形態で、または食物、飲料、飼料もしくはペットフード成分として使用される。
【0016】
本発明は、さらに以下を開示する。
・乾燥物において15〜30%(w/w)、好ましくは、18%(w/w)より高い、より好ましくは、20%(w/w)より高いプロリン含量を有する酸性または溶媒沈殿プロセスによって得られる高血圧の処置に適するペプチド組成物、
・以下を含んでなるペプチド組成物
5〜20mg/g VPP(乾燥物およびタンパク質において)、5〜20mg/g IPP(乾燥物およびタンパク質において)ならびに場合により5〜20mg/g LPP(乾燥物およびタンパク質において)、ならびに
・少なくともカルボキシ末端のプロリンを含有する15〜50%(wt乾燥物)ペプチドを含んでなり、少なくとも5mg/g VPP(乾燥物およびタンパク質において)、少なくとも5mg/g IPP(乾燥物およびタンパク質において)ならびに場合により少なくとも5mg/g LPP(乾燥物およびタンパク質において)を含んでなるペプチド組成物。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】A.ニガー(A.niger)由来プロリルエンドプロテアーゼのpH至適値のグラフ図を示す。
【図2】A.ニガー(A.niger)由来プロリルエンドプロテアーゼのプロリン(profile)特異性を示す。
【図3】クロマトグラフィー精製されたA.niger(A.ニガー)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼとのインキュベーション後の無傷なオボアルブミン(ovalbumine)および合成27マーペプチドのSDS−PAGEを示す。
【図4】合成基質F−pNA、Q−pNAおよびV−pNAに対するpH6.0において試験した酵素調製物を含有する3つの市販のアミノペプチダーゼの相対活性を示す。
【発明の詳細な説明】
【0018】
有効なACE阻害ペプチドは、ペプチドのカルボキシ末端部で1もしくは2個のプロリン残基を組み入れるようである。同じ構造要件もまた、タンパク質分解に対して増加した耐性を伴うペプチドを与え、これによって、無傷なペプチドが最終的に血流にある可能性を増加する。それらのカルボキシ末端部で少なくとも単一、但し、好ましくは、複数個のプロリン残基を伴うペプチドを得るために、プロリン残基のカルボキシ末端側で切断することができるプロテアーゼの使用は、興味深い選択肢を付与する。いわゆるプロリルオリゴペプチダーゼ(EC3.4.21.26)は、プロリン残基のカルボキシル側でペプチドを好適に切断する独特な可能性を有する。哺乳動物ならびに微生物供給源から単離されたすべての適切に特徴付けされたプロリン特異的プロテアーゼにおいて、酵素の活性部位から大きなペプチドを除外した独特なペプチダーゼドメインが単離されている。事実、これらの酵素は、約30を超えるアミノ酸残基を含有するペプチドを分解することができず、そのため、これらの酵素は、現在、「プロリルオリゴペプチダーゼ」と称される(フロプ(Fulop)ら:Cell、第94巻、161−170、1998年7月24日)。結果として、これらのプロリルオリゴペプチダーゼは、それらがそれらの加水分解作用を発揮し得る前に、他のエンドプロテアーゼによる広範な前加水分解を必要とする。しかし、国際公開第02/45523号パンフレットにおいて記載されるように、プロリルオリゴペプチダーゼとそのような別のエンドプロテアーゼとの組み合わせであっても、カルボキシ末端のプロリン残基を伴うペプチドの割合が有意に増強されたことを特徴とする加水分解物を生じる。このため、そのような加水分解物は、インビトロACE阻害効果ならびに消化管タンパク質分解に対する改善された耐性を伴うペプチドの単離のための優れた出発点を形成する。これらの潜在的な利益にもかかわらず、本発明者らは、ACE阻害ペプチドの回収のためのプロリン特異的プロテアーゼの使用だけでなく、IPPおよびVPPの選択的な生産について明記した出願を知らない。
【0019】
さらに、本発明は、プロリン特異的エンドプロテアーゼでタンパク質を5〜38%のDHにまで加水分解することによって生成される可溶性ペプチドを含んでなる組成物を生成するためのプロセスに関する。本発明に従えば、多量のIPPおよびVPPを得るためのプロセスは、好ましくは、10〜38の間の加水分解の程度(DH)、より好ましくは、15〜35のDH、最も好ましくは、20〜30のDHで得られ得る。本プロセスにおいて使用されるタンパク質は、好ましくは、乳タンパク質、より好ましくは、カゼインまたはカゼイン酸塩である。有利なことに、乳タンパク質は、それが本プロセスに使用される前は発酵しない。好ましくは、加水分解したタンパク質の不溶性部分を、選択されたpH条件、好ましくは、酸性pH条件下、より好ましくは、3.5〜6の間のpH、最も好ましくは、4〜5の間のpHで可溶性部分から分離し、可溶性ペプチドを含んでなる組成物を生じる。本発明の別の実施態様では、加水分解したタンパク質の不溶性部分の分離後、アミノペプチダーゼのみを添加する。
【0020】
「ペプチド」または「オリゴペプチド」は、本明細書において、ペプチド結合を介して連結される少なくとも2アミノ酸の鎖として規定される。用語「ペプチド」および「オリゴペプチド」は、同義(共通認識される)とみなされ、各用語は、状況に応じて交換可能に使用することができる。「ポリペプチド」は、本明細書において、30を超えるアミノ酸残基を含んでなる鎖として規定される。本明細書に記載のすべての(オリゴ)ペプチドおよびポリペプチドの式または配列は、定法に従い、アミノ末端からカルボキシ末端の方向で、左から右に記載される。本明細書において使用するアミノ酸の1文字コードは、当該分野において一般に公知であり、サンブルック(Sambrook)ら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、1989年)において見出すことができる。
【0021】
IUMB由来のすべての酵素の分類および命名法についての国際的に認められたスキームは、プロテアーゼを含む。プロテアーゼEC番号の更新されたIUMBテキストは、インターネットサイト:http://www.chem.qmw/ac.uk/iubmb/enzyme/EC3/4/11/において見出すことができる。このシステムでは、酵素は、それらが単一の反応を触媒するという事実によって規定される。このことは、いくらかの異なるタンパク質が同じ酵素としてすべて記載され、1を超える反応を触媒するタンパク質が1を超える酵素として処置されるという重要な意味を有する。該システムにより、プロテアーゼはエンド−およびエキソプロテアーゼに分類される。エンドプロテアーゼは、内部のペプチド結合を加水分解するそれらの酵素であり、エキソプロテアーゼは、末端のα−アミノ基に隣接するペプチド結合(「アミノペプチダーゼ」)、または末端のカルボキシル基と最後から2番目のアミノ酸との間のペプチド結合(「カルボキシペプチダーゼ」)を加水分解する。エンドプロテアーゼは、触媒機構に基づいてサブサブクラスに分けられる。セリンエンドプロテアーゼ(EC3.4.21)、システインエンドプロテアーゼ(EC3.4.22)、アスパラギン酸エンドプロテアーゼ(EC3.4.23)、メタロエンドプロテアーゼ(EC3.4.24)およびスレオニンエンドプロテアーゼ(EC3.4.25)のサブサブクラスが存在する。
【0022】
アミノペプチダーゼはクラス3.4.11である。サブ分類は、異なる20アミノ酸が取り出される相対効率に基づく。狭いおよび広い特異性を伴うアミノペプチダーゼを識別することができる。アミノペプチダーゼは、タンパク質およびペプチド基質から単一のアミノ末端アミノ酸を連続的に取り出すことができる。狭い特異性を伴うアミノペプチダーゼは、基質ペプチドから解放されるP1位置におけるアミノ酸残基のタイプに対して強力な性能を示す。広い特異性のアミノペプチダーゼは、N末端またはP1位置(シェクター(Schechter)の命名法:シェクター,I.(Schechter,I.)およびベルガー,A.(Berger,A.)、1967年、Biochem Biophys Res Commun27:157−162に従う)における広範囲の異なるアミノ酸を放出することが可能である。カルボキシペプチダーゼは、タンパク質およびペプチド基質から単一のカルボキシ末端アミノ酸を連続的に取り出すことができる。エンドプロテアーゼの状況と同等に、カルボキシペプチダーゼは、触媒機構に基づいて、サブサブクラスに分類される。セリン型カルボキシペプチダーゼは、クラスEC3.4.16であり、メタロカルボキシペプチダーゼはクラスEC3.4.17であり、システイン型カルボキシペプチダーゼはクラスEC3.4.18である。プロテアーゼのためのECリストの値は、多様なタイプのプロテアーゼ活性の標準的な用語を提供こと、および特に、それぞれのプロテアーゼに対する独特な識別番号および推奨される名称の割り当てにある。従って、ECシステムの特定の長所は、クラス分類以外の用語体系の領域にある。
【0023】
EP1231279号明細書には、純粋な酵素プロセスにより、ミルクカゼインからトリペプチドVal−Pro−ProおよびIle−Pro−Proが回収されることが記載されている。該出願は、ミルクカゼインを含有する材料をプロテイナーゼおよびペプチダーゼで消化し、配列Val−Pro−Proを含有するがこの配列のPro以外のProを含有しないペプチドならびに配列Ile−Pro−Proを含有するがこの配列のPro以外のProを含有しないペプチドよりなる群から選択されるいわゆる「中間ペプチド」を介して、トリペプチドを生成するための方法を請求する。EP1231279号明細書の実施例において記載のように、方法は2工程プロセスに関与する。第1に、Val−Pro−ProまたはIle−Pro−Proのいずれかを包含する中間ペプチドを生成する。このことは、カゼインを適切なプロテイナーゼでインキュベートすることによって行われる。実施例の1つに従って、37℃において12時間の期間。次いで、使用されるプロテイナーゼは、この第1の加水分解物を100℃にまで3分間加熱することによって不活化し、元の状態に冷却した後、別の酵素調製物(事実上、エキソ型プロテアーゼ活性を伴う調製物)が添加される。37℃でのこのような他の酵素調製物との別の12時間のインキュベーション後、トリペプチドVal−Pro−ProおよびIle−Pro−Proの存在が実証され得る。これらのACE阻害ペプチドのより高い収量を得るために、EP1231279号明細書は、エキソ型プロテアーゼ活性への暴露の前に、中間ペプチドを精製および濃縮することをさらに示唆している。EP1231279号明細書はまた、中間ペプチドを得た後、および中間ペプチドを手順においてペプチダーゼと接触させる前に、例えば、5000〜20000rpmにおける3〜10分間の遠心分離による非反応のタンパク質の取り出しのような多様な操作が、場合により実施され得ることを示唆している。このように、所望されるトリペプチドは、産業的にむしろ扱いにくい2工程酵素プロセスにおいて得られる。酵素インキュベーションのそれぞれは、pH4.5〜7.0、25〜50℃の温度で12時間もの長い期間を要し得るため、微生物学的観点から許容され得ないこともまた明らかである。25〜50℃の低いインキュベーション温度と組み合わされたこれらの長期のインキュベーション時間は、タンパク質含有溶液の汚染を容易に生じ得る。
【0024】
従って、本発明に従えば、IPPおよびVPPは、中間産物の精製を伴わずに酵素的に生成される。EP1231279号明細書は、中間ペプチドがそれぞれIle−Pro−ProまたはVal−Pro−Pro配列以外のProを含有しない乳タンパク質をプロテイナーゼで消化する場合の中間ペプチドの形成について記載している。続いて、この中間ペプチドは別の酵素によってそれぞれIPPまたはVPPに変換される。高い収量を得るために、この中間ペプチドは、トリペプチドを変換する前にクロマトグラフィー精製される。本発明に従えば、中間ペプチドを精製することなく高い収量を得ることができる。
【0025】
本発明のプロセスの好ましくは、少なくとも10モル%、より好ましくは、少なくとも20モル%、さらにより好ましくは、少なくとも30モル%の可溶性ペプチドは、カルボキシ末端のプロリンを有する。特許出願、国際公開第02/45523号パンフレットには、このモル%を決定することができる仕方が記載されている。
【0026】
本発明は、ニュートラシューティカル、好ましくは、医薬品としての使用のためのペプチド含有組成物に関する。本発明はまた、ニュートラシューティカル、好ましくは、医薬品としての本ペプチド含有組成物の使用、ニュートラシューティカル、好ましくは、医薬品の製造のための本ペプチド含有組成物の使用、健康の改善または疾患の防止および/もしくは処置のための本ペプチド含有組成物の使用、ニュートラシューティカル、好ましくは、医薬品の製造のための本ペプチド含有組成物の使用、高血圧症および心不全のような循環器系疾患の処置のための本ペプチド含有組成物の使用、前糖尿病または糖尿病の処置のための本ペプチド含有組成物の使用、肥満の処置または防止のための本ペプチド含有組成物の使用、血漿インスリンを増加するためまたは血漿インスリンに対する感受性を増加するための本ペプチド含有組成物の使用、血漿インスリンを増加するためまたは2型糖尿病もしくは前糖尿病の血漿インスリンの感受性を増加するための本ペプチド含有組成物の使用、2型糖尿病もしくは前糖尿病の血中における食後のグルコース濃度を降下させるための本ペプチド含有組成物の使用、2型糖尿病もしくは前糖尿病の血中における食後のインスリン分泌を増加させるための本ペプチド含有組成物の使用、本ペプチド含有組成物が栄養補助食品の形態である本ペプチド含有組成物の使用、ストレスの影響の治療的処置のための機能性食品の製造のための本ペプチド含有組成物の使用、局所アプリケーション、好ましくは、パーソナルケアアプリケーションにおける本ペプチド含有組成物の使用、ならびに飼料およびペットフードにおける本ペプチド含有組成物の使用に関する。
【0027】
さらに、本発明は、1型および2型糖尿病の処置および前糖尿病、もしくは耐糖能異常(IGT)を伴うそれらの個体における2型糖尿病の防止のための方法であって、そのような処置を必要とする被験体に本ペプチド含有組成物を投与することを含んでなる上記方法ならびに高血圧症もしくは心不全を患うヒトの処置またはその防止の方法であって、そのような処置を必要とする被験体に本ペプチド含有組成物を投与することを含んでなり、従って、血圧降下効果を示す上記方法に関する。ACEの阻害は、血管収縮の減少、血管拡張の増強、ナトリウムおよび水排泄の改善を生じ、次いで、末梢血管抵抗および血圧の減少ならびに局所血流量の改善をもたらす。従って、ペプチドを含んでなる本加水分解物は、高血圧症、心不全、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈閉塞症、アテローム性動脈硬化、腎症、腎機能不全、勃起障害、内皮機能障害、左室肥大、糖尿病性血管症、水分貯留、およびアルドステロン症を含むがこれらに限定されないACE阻害の影響を受け得る疾患の防止および処置に特に有効である。組成物はまた、胃腸障害(下痢、過敏性腸症候群)、炎症、糖尿病、肥満、認知症、てんかん、老人性錯乱、およびメニエール病の防止および処置において有用であり得る。さらに、組成物は、認知機能および記憶(アルツハイマー病を含む)、飽満感を増強し、虚血障害を制限し、血管形成術のバイパス術後の動脈の再閉塞を防止し得る。
【0028】
糖尿病は、これまでのところ治療方法のない広範に認められる慢性疾患である。糖尿病の発症率および有病率は指数的に増加しており、それは、先進国および発展途上国における最も一般的な代謝異常の1つである。糖尿病は、複数の原因に由来する複雑な疾患であり、インスリン分泌および/またはインスリン耐性の欠損に関連する炭水化物、タンパク質ならびに脂肪代謝の異常によって特徴付けられる。これは、非処置のまま放置すれば合併症をもたらす空腹時および食後血清グルコース濃度の上昇を生じる。この疾患には2つの主なカテゴリー、インスリン依存性糖尿病(IDDM、T1DM)および非インスリン依存性糖尿病(NIDDM、T2DM)が存在する。T1DM=1型糖尿病。T2DM=2型糖尿病。
【0029】
T1DMおよびT2DM糖尿病は、高血糖、高コレステロール血症および高脂血症に関連する。それぞれT1DMおよびT2DMにおける絶対的なインスリン欠損症およびインスリン非感受性は、肝臓、筋肉および脂肪組織によるグルコース利用の減少をもたらし、血中グルコースレベルの増加をもたらす。高血糖が管理されなければ、腎症、神経障害、網膜症、高血圧症、脳卒中、および心疾患を含む細小血管ならびに大血管症の危険率の増加による死亡率の増加および若年化に関連する。最近の証拠により、厳格な血糖コントロールがT1DMおよびT2DMの両方におけるこれらの合併症の防止における主な要因であることが示された。従って、薬物または治療レジメンによる至適な血糖コントロールは、糖尿病の処置のための重要なアプローチである。
【0030】
これらの測定が適切な血糖コントロールを維持することができない場合、T2DMの治療は、最初に、食事および生活習慣の変更に関与し、患者は、経口血糖降下剤および/または外因性インスリンで処置される。T2DMの処置のための現在の経口薬理学的薬剤の例として、インスリン分泌を強化するもの(スルホニル尿素系薬剤)、肝臓におけるインスリンの作用を改善するもの(ビグアナイド系薬剤)、インスリン抵抗性改善剤(チアゾリジンジオン類)およびグルコースの取り込みを阻害するために作用する薬剤(α−グルコシダーゼインヒビター類)が挙げられる。しかし、現在市販されている薬剤は、一般的に、膵細胞機能の進行的消失から生じる高血糖の進行的悪化による長期における適切な血糖コントロールを維持することができない。標的血糖レベルを維持し得ない患者の割合は経時的に顕著に減少し、付加的/代替的薬理学的薬剤の投与が必要とされる。さらに、薬物は、所望されない副作用を有し得、高い1次および2次失敗率に関連する。最終的に、血糖降下薬の使用は、血中グルコースレベルを制御するのに有効であり得るが、糖尿病のすべての合併症を防止するとは限らない。従って、すべてのタイプの糖尿病のための処置の現在の方法は、正常血糖の理想値および糖尿病合併症の防止を達成することができない。
【0031】
従って、T1DMおよびT2DMの処置において好適な治療は本質的にインスリンおよび経口血糖降下薬の投与に基づくが、糖尿病の処置および防止のための最小限の副作用を伴う安全かつ効果的な栄養補助剤の必要性がある。多くの患者は、高用量の薬物に関連する副作用を最小限にし、付加的な臨床便益を得ることができる代替的治療に興味がある。糖尿病を伴う患者は、補助的処置として使用することができる温和な抗糖尿病効果を伴い、主な副作用を伴わない「天然物」とみなされる処置に特に興味がある。T2DMは、インスリンの産生を担う膵臓細胞(ランゲルハンス島のβ細胞)に有意な損傷が生じるまで通常認識されない進行性かつ慢性の疾患である。従って、危険性のあるヒト、特に、T2DMを発達する高い危険性にある高齢者におけるβ細胞の損傷、従って、明白なT2DMへの進行を防止するために使用され得る栄養補助食品の開発に対する関心が高まっている。グルコースおよび脂質がβ細胞に対する損傷効果を発揮するため、膵臓β細胞の保護は、血中グルコースおよび/または脂質レベルを減少することによって達成することができる。血中グルコースレベルの減少は、異なる機構を介して、例えば、インスリン感受性を増強することおよび/または肝臓のグルコース産生を減少することによって、達成することができる。血中脂質レベルの減少はまた、異なる機構を介して、例えば、脂質酸化および/または脂質貯蔵を増強することによって、達成することができる。膵臓β細胞を保護するためのもう1つの可能なストラテジーは、酸化ストレスを減少することである。酸化ストレスはまた、インスリン分泌の以後の消失および明らかなT2DMへの進行を伴うβ細胞損傷を生じる。
【0032】
従って、T2DMは、複数の器官部位において共存する欠損:筋肉および脂肪組織におけるインスリン作用に対する耐性、欠損性膵インスリン分泌、無制限な肝グルコース産生から生じる合併疾患である。それらの欠損は、しばしば、脂質異常および内皮機能障害に関連する。T2DMにおいて複数の病態生理学的病巣がある場合、併用用法がその管理に対する魅力的なアプローチである。
【0033】
本発明は、本発明のペプチド含有組成物を含んでなる新規のニュートラシューティカル組成物に関する。本発明のペプチド含有組成物を含んでなるニュートラシューティカル組成物はまた、糖尿病、もしくはX症候群のような耐糖能異常に関連する他の病態の処置または防止のための有効成分として加水分解されていないタンパク質および炭水化物を含んでなることができる。別の態様では、本発明は、前記処置または防止のための栄養補助剤、例えば、正常な代謝機能の維持に必須であるが、身体では合成されないビタミン類およびミネラル類を含んでなる総合ビタミン製剤への添加剤のような組成物の使用に関する。なお別の態様では、本発明は、1および2型糖尿病の両方の処置ならびに前糖尿病、または耐糖能異常(IGT)または肥満を伴うそれらの個体におけるT2DMの防止のための方法であって、そのような処置を必要とする被験体に、本発明のペプチド含有組成物ならびにタンパク質加水分解物もしくは加水分解されていないタンパク質および/または炭水化物を投与することを含んでなる、上記方法に関する。
【0034】
本発明の組成物は、特に、T1DMおよびT2DMの両方の処置、ならびに前糖尿病、または耐糖能異常(IGT)を伴うそれらの個体におけるT2DMの防止を目的とする。
【0035】
本ペプチド含有組成物は、2型糖尿病または前糖尿病について、好ましくは、食後グルコース濃度を降下するかまたは血中における食後インスリン分泌を増加するために使用することができることが見出されている。
【0036】
ペプチドおよび場合により炭水化物を含んでなる組成物は、インスリン分泌を刺激し、脂肪組織、骨格筋および肝臓のようなインスリン感受性標的組織に対するグルコース処理を増加し、従って、糖尿病の処置における相乗効果を提供する。
【0037】
一般的に、ストレス関連疾患、および身体に対するストレスのネガティブな効果は、多くのヒトに顕著な影響を与えることが認識されている。近年では、ストレスの影響、およびその多様な疾患および病態の発達に対する寄与については、医学的および科学的共同体においてより広範に受容されている。現在、これらの潜在的な問題を認知し、彼らの健康に対するストレスの可能なネガティブな影響を減少または防止することについて興味を示す消費者らが増加している。
【0038】
本発明のさらなる目的は、身体がストレスの影響を処理することを助ける際の使用に適する食品、または食品に組み入れられ得る成分を提供することである。
【0039】
さらなる目的は、身体がストレスのネガティブな影響を処理することを助けるような健康的便益を提供する本ペプチド含有組成物を含んでなる食品を提供することである。
【0040】
本明細書において使用するニュートラシューティカルという用語は、アプリケーションの栄養および薬学的分野の両方における有用性を示す。従って、新規のニュートラシューティカル組成物は、食物および飲料への補助剤、およびカプセルもしくは錠剤のような固体剤、または溶液もしくは懸濁液のような液剤であり得る腸あるいは非経口的適用のための薬学的処方物あるいは医薬品としての用途が見出され得る。上記から明らかであるように、ニュートラシューティカル組成物という用語もまた、本ペプチド含有組成物および場合により炭水化物ならびに補助組成物、例えば、上記の有効成分を含んでなる栄養補助食品を含んでなる食物ならびに飲料を含んでなる。
【0041】
本明細書において使用する栄養補助食品という用語は、食事を補助することを目的とした「食品成分」を含有する経口的に摂取される製品を示す。これらの製品における「食品成分」は、次のものを含み得る:ビタミン類、ミネラル類、ハーブ類または他の植物性薬品、アミノ酸、ならびに酵素、器官組織、腺、および代謝物のような物質。栄養補助食品はまた、抽出物または濃縮物であり得、錠剤、カプセル、ソフトゲル、ゲルキャップ、液体、または粉末のような多くの形態であってもよい。それらはまた、棒(但し、それらが存在する場合)のような他の形態でもあり得、栄養補助食品のラベル上の情報は、一般に、従来の食物としてまたは食べ物もしくは食事の1品目として製品を提示するものではない。
【0042】
総合ビタミンおよびミネラル補給剤を、本発明のニュートラシューティカル組成物に添加して、いくつかの食事において損なわれている適切な量の必須栄養物を得てもよい。総合ビタミンおよびミネラル補給剤はまた、糖尿病において時々観察される生活習慣のパターンおよび一般的に不適切な食事による栄養物の消失および欠乏に対する疾患の防止ならびに保護に有用であり得る。さらに、酸化ストレスは、インスリン耐性の発達に関係している。活性酸素種は、インスリン受容体シグナル伝達カスケードを妨げることによって、インスリン刺激性グルコース取り込みを損傷し得る。α−トコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸(ビタミンC)のような抗酸化剤による酸化ストレスの制御は、糖尿病の処置において価値があり得る。従って、総合ビタミン補給剤の摂取は、上記の原薬に加えられ、良好に均衡化された栄養物を維持し得る。
【0043】
さらに、本ペプチド含有組成物とマグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)および/またはカリウム(K)のようなミネラル類との組み合わせは、健康の改善ならびに循環器系疾患および糖尿病を含むがこれらに限定されない疾患の防止および/または処置のために使用され得る。
【0044】
本発明の好適な態様では、本発明のニュートラシューティカル組成物は、本ペプチド含有組成物を含有する。IPPおよびVPPの両方とも、本発明に従う組成物において、それが投与されるべき被験体の体重1kgあたり約0.001g〜体重1kgあたり約1gの1日用量を提供するような用量で、適切に存在する。食物または飲料は、それぞれ、1サービングあたり約0.05g〜1サービングあたり約50gのIPPおよびVPPを適切に含有する。ニュートラシューティカル組成物が薬学的処方物である場合、そのような処方物は、1用量単位、例えば、1カプセルもしくは錠剤あたり約0.001g〜約1g、または液剤の1日用量あたり約0.035g〜1日用量あたり約70gの量で、それぞれ、IPPおよびVPPを含有してもよい。本ペプチド含有組成物は、本発明に従う組成物において、それが投与されるべき被験体の体重1kgあたり約0.01g〜体重1kgあたり約3gの1日用量を提供するような量で、適切に存在する。食物または飲料は、1サービングあたり約0.1g〜1サービングあたり約100gのタンパク質加水分解物を適切に含有する。ニュートラシューティカル組成物が薬学的処方物である場合、そのような処方物は、1用量単位、例えば、1カプセルもしくは錠剤あたり約0.01g〜約5g、または液剤の1日用量あたり約0.7g〜1日用量あたり約210gの量で、ペプチド含有組成物を含有してもよい。
【0045】
本発明のなお別の好適な態様では、組成物は、上記のような本ペプチド、および場合により、炭水化物を含んでなる。炭水化物は、本発明に従う組成物において、それが投与されるべき被験体の体重1kgあたり約0.01g〜体重1kgあたり約7gの1日用量を提供するような量で、適切に存在する。食物または飲料は、1サービングあたり約0.5g〜1サービングあたり約200gの炭水化物を適切に含有する。ニュートラシューティカル組成物が薬学的処方物である場合、そのような処方物は、1用量単位、例えば、1カプセルもしくは錠剤あたり約0.05g〜約10g、または液剤の1日用量あたり約0.7g〜1日用量あたり約490gの量で、炭水化物を含有してもよい。
【0046】
用量範囲(70kgのヒトについて)
VPPおよびIPP:0.005〜70g/日(それぞれ)
タンパク質加水分解物:0.07〜210g/日
加水分解されていないタンパク質:0.07〜210g/日
炭水化物:0.1〜490g/日
【0047】
本発明の目的は、健康的便益を、それを消費する被験体に提供するために使用することができる食用材料を提供することである。なおさらなる目的は、単離された形態かまたは食品に組み入れられたかいずれかで、従来摂取され得るような食用材料を提供することである。
【0048】
本発明のさらなる目的は、体重管理プログラムにおける使用に適する食品、または食品に組み入れられ得る成分を提供することである。
【0049】
本発明のさらなる目的は、例えば、ACE阻害を介して循環器系の健康を維持することを助けるのに適する食品、または食品に組み入れられ得る成分を提供することである。
【0050】
本発明のさらなる目的は、許容可能な安定性および/または官能特性、特に、苦味がないまたは許容のレベルであるような良好な品位を有する食品、または食品に組み入れられ得る成分を提供することである。
【0051】
さらなる目的は、肥満の防止/体重管理を援助することおよび/または循環器系の健康の維持を助けることのような健康的便益を提供する高濃度の成分を有する食品を提供することである。
【0052】
意外なことに、1つもしくはそれ以上のこれらの目的は、消費時に健康的便益を提供する食品の調製のための本ペプチド含有組成物の使用により本発明に従って達成される。
【0053】
第1の態様に従えば、本発明は、肥満の防止または体重管理のための機能性食品の製造のための本ペプチド含有組成物の使用を提供する。
【0054】
第2の態様に従えば、本発明は、循環器系健康維持のための機能性食品の製造のための本ペプチド含有組成物の使用を提供する。
【0055】
循環器系健康維持がアンジオテンシン変換(ACE)酵素の阻害および/または血中グルコースレベルの管理を含んでなることは、本発明に従って特に好適である。
【0056】
第3の態様に従えば、本発明は、健康的便益をその消費者に提供し(前記健康的便益は肥満の防止、体重管理および循環器系健康維持から選択される)、本ペプチド含有組成物を含んでなることが可能な機能性食品を提供する。
【0057】
本発明に従うペプチド含有組成物のさらなる利点は、このペプチド含有組成物を、簡便に食品に組み入れ、その安定性および/または官能特性に許容できないほどに影響を及ぼすことなく、機能性食品を生成することができることである。
【0058】
本発明に従う「健康的便益薬剤」は、摂取される場合、健康の局面にポジティブな影響を及ぼす健康的便益を提供するか、または良好な健康の局面を維持することを助ける材料であって、良好な健康のこれらの局面は、肥満の防止、体重管理および循環器系健康維持である。「健康的便益」とは、健康の局面にポジティブな影響を及ぼすかまたは健康の局面を維持することを助けることを意味する。
【0059】
本発明に従う「機能性食品」は、食品の消費者の顕著な健康的便益が得られるように、本発明のペプチド含有組成物が有効量で成分として使用されるヒトでの消費に適する食品(錯誤回避のため飲料も含む)として規定される。
【0060】
本明細書において使用する用語「含んでなる」は、この用語の後に記載される要素に限定するのではなく、機能的重要性が大きいまたは小さい指定されていない要素も包含する。換言すれば、列挙される工程、要素または選択肢については、そのすべてを取り上げる必要はない。語「含む」または「有する」が使用される場合、これらの用語は、上記で規定される「含んでなる」に等価であるとみなされる。
【0061】
国際公開第02/45524号パンフレットは、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から入手可能なプロリン特異的プロテアーゼについて説明している。A.ニガー(A.niger)由来の酵素は、好ましくは、プロリンのカルボキシ末端で切断するが、ヒドロキシプロリンのカルボキシ末端でも切断することができ、アラニンのカルボキシ末端であればより低い効率を伴う。国際公開第02/45524号パンフレットはまた、このA.ニガー(A.niger)由来の酵素と他の微生物または哺乳動物供給源由来の既知のプロリルオリゴペプチダーゼとの間には、明確な相同性が存在しないことを教示している。既知のプロリルオリゴペプチダーゼとは対照的に、A.ニガー(A.niger)酵素は酸性側のpH至適値を有する。既知のプロリルオリゴペプチダーゼならびにA.ニガー(A.niger)由来の酵素はいわゆるセリンプロテアーゼであるが、本発明者らは、実施例1において、A.ニガー(A.niger)酵素が、完全に異なるサブファミリーに属することを示している。分泌型A.ニガー(A.niger)酵素は、ほとんどのサイトゾル中のプロリルオリゴペプチダーゼが分類されているS9ファミリーではなく、セリンペプチダーゼのファミリーS28のメンバーであると思われる(ローリングズ,N.D.(Rawlings,N.D.)およびバレット,A.J.(Barrett,A.J.);Biochim.Biophys.Acta1298(1996年)1−3)。実施例2では、本発明者らは、A.ニガー(A.niger)由来のプロリン特異的プロテアーゼのpHおよび温度至適値を示している。実施例3では、本発明者らは、本発明のプロセスにおいて使用されるようなA.ニガー(A.niger)由来酵素調製物が、極めて狭い基質特異性を示すことを実証しており、これは、純粋なプロリン特異的エンドプロテアーゼに固有のエンド型プロテアーゼ活性以外の有意なエンド型プロテアーゼ活性は存在しないことを意味する。本発明者らはまた、本発明に従って使用される本発明者らのA.ニガー(A.niger)由来酵素調製物が、エキソ型プロテアーゼ、より特異的なアミノペプチダーゼ副活性を何ら含有しないことを実証している(実施例9を参照のこと)。本出願の実施例4では、本発明者らは、アスペルギルス(Aspergillus)酵素が、オリゴペプチダーゼではなく、副成分のエンドプロテアーゼの必要性を伴わずに無傷なタンパク質、大きなペプチドならびにより小さなペプチド分子を加水分解することが可能な真のエンドペプチダーゼであることを示している。この新たなおよび意外な所見により、カルボキシ末端のプロリン残基を伴うこれまでにない高含量のペプチドを伴う加水分解物を作製することができるほどに、副成分のエンドプロテアーゼの使用を除外することが可能である。さらに、副成分のエンドプロテアーゼの除外は、大量の基質タンパク質の効率的な取り出しを達成するのに好適である。結果として、極めて高いプロリン含量を特徴とする高度に濃縮されたACE阻害ペプチド混合物が得られる。そのような新たな加水分解物が、異なるタンパク質性出発材料(それは植物由来であってもまたは動物由来であってもよい)から調製することができる。そのような出発材料の例には、乳清タンパク質、乳清β−ラクトグロブリン、乳清α−ラクトアルブミン、カゼイン、単離されたカゼイン画分、ゼラチン、魚または卵タンパク質、ポテトタンパク質、コムギおよびトウモロコシグルテン、ダイズおよびエンドウタンパク質、イネタンパク質ならびにルピナスタンパク質がある。高含量のプロリンならびにヒドロキシプロリンを伴うゼラチンのような基質から、カルボキシ末端のプロリンまたはヒドロキシプロリン残基のいずれかを伴うこれまでにない高含量のペプチドを伴う加水分解物を作製することができる。A.ニガー(A.niger)酵素(既知のプロリルオリゴペプチダーゼのような)酵素は、Pro−ProまたはPro−Hyp、Hyp−ProまたはHyp−Hyp結合を切断することができないため、アプローチはまた、2、3もしくはなおそれ以上のカルボキシ末端のプロリンまたはヒドロキシプロリン残基を有するこれまでにない高含量のペプチドを含有する加水分解物を生じる。明らかに、タンパク質性出発材料の性質およびプロリン含量は、そのようなペプチドを作製する可能性に影響する。好適な基質は、カゼイン、ゼラチン、コムギおよびトウモロコシグルテン類のような6%を超えるプロリン(即ち、100グラムのタンパク質あたり6グラムを超えるこのアミノ酸)を含有する基質である。そのようなカルボキシ末端のアミノ酸配列を担持するペプチドは、消化管におけるタンパク質分解活性に対して存続する十分な可能性を有することが予想できるという事実から考えて、A.ニガー(A.niger)由来プロリルエンドプロテアーゼとのインキュベーションによって作製される加水分解物は、既知の生物学的に活性なペプチドの単離ならびに新規の生物学的に活性なペプチドの単離のための優れた出発材料を提供する。ナトリウムは、高血圧症において役割を果たすことが公知であるため、ACE阻害ペプチドの生成のための好適な基質は、これらのタンパク質のナトリウム塩ではなく、アンモニア、カルシウム、マグネシウムおよびカリウム塩である。
【0062】
本発明に従うプロセスは、プロリン特異的エンド活性(それは、中性のpH至適値を伴うプロリン特異的オリゴペプチダーゼであってもまたは酸性のpH至適値を伴うプロリン特異的エンドプロテアーゼであってもよく、アミノペプチダーゼ活性と組み合わされる)の活性に帰着する。A.ニガー(A.niger)由来プロリルエンドプロテアーゼのpH至適値は、約4.3である。(図1を参照のこと)。この低いpH至適値のため、ウシミルクカゼイン酸塩とA.ニガー(A.niger)由来プロリルエンドプロテアーゼとをインキュベートすることは、自明ではない。ウシミルクカゼイン酸塩は、pHが6.0未満に低下する場合、沈殿し、このpH値で、A.ニガー(A.niger)酵素は限られた活性のみを有する。ここで、本発明者らは、このようなむしろ所望されない条件下であっても、A.ニガー(A.niger)由来プロリルエンドプロテアーゼとのインキュベーションは、いくらかのACE阻害ペプチドを産出し得ることを示している。本発明に従えば、ACE阻害トリペプチドIPPおよびLPPは、カゼインにおいて理論的に存在する量の70%に相当する収量で生成される。かなり意外なことに、ACE阻害ペプチドVPPは、アミノペプチダーゼ活性が存在しない場合、生成されない。この場合、VPP前駆体のVVVPPのみが、高い収量で生成される。本発明者らはまた、ここで、プロリン特異的プロテアーゼとの組み合わせでアミノペプチダーゼ活性が存在する場合、ほとんど100%の収量でVPPが生成されることを示している。これらの結果は、単純な1工程酵素プロセスにおいて、ならびに微生物の混入の可能性を最小限にする条件下でカゼイン酸とA.ニガー(A.niger)由来エンドプロテアーゼおよびアミノペプチダーゼをインキュベートする時に得られる。
【0063】
タンパク質を含有する水溶液は、特に、5.0を超えるpH値および50℃もしくはそれ以下の温度で何時間も保持される場合、微生物感染を高度に受け易い。具体的には、そのような長期のインキュベーション工程中に産生され得、その後の加熱工程後も存続するようであり、食品用加工処理を潜在的に脅かす微生物毒素である。EP1231279号明細書に記載の条件とは異なり、本発明に従うプロセスは、好ましくは、50℃を超えるインキュベーション温度を使用する。酵素インキュベーションが24時間未満、好ましくは、8時間未満、より好ましくは、4時間未満の期間行われる1工程の酵素プロセスとの組み合わせで、本発明に従うプロセスは、改善された微生物学的安定性の利点を付与する。
【0064】
ウシミルクカゼインには、β−カゼインおよびκ−カゼインを含む異なる多くのタンパク質が組み入れられる。既知のアミノ酸配列に従えば、β−カゼインは、ACE阻害トリペプチドIPP、VPPおよびLPPを包含する。κ−カゼインはIPPのみを包含する。実施例5では、本発明者らは、カゼイン酸カリウムとA.ニガー(A.niger)由来プロリルエンドプロテアーゼとをインキュベートすると、高い収量で既知のACE阻害ペプチドIPPならびにLPPが作製されることを示している。高い温度条件との組み合わせで本酵素−基質比を使用すると、IPPおよびLPPの削除は3時間のインキュベーション期間内に完了する。かなり意外なことに、有意な量のトリペプチドVPPの同時生成は実証することができない。A.ニガー(A.niger)由来酵素が有意なアミノペプチダーゼ活性を含有しないという事実(実施例9を参照のこと)は、形成されるIPPが、κ−カゼイン(caseine)に存在する−A107−I108−P109−P110−配列から放出されることを強く示唆する。おそらく、IPPのペプチド結合のカルボキシ末端側は、A.ニガー(A.niger)由来プロリルエンドプロテアーゼの主要活性によって切断される一方、前方のAla−Ile結合の切断は、そのAla特異的副活性によって達成される。
【0065】
従って、本発明では、先行技術のプロセスにおけるよりも生じる水溶性ペプチドの数が少ない。これらの水溶性ペプチドのうち、IPP、VPPおよびLPPが大量に存在する。このことは、しばしばそれほど活性ではない他の多くの化合物を伴わない高濃度のIPPおよびLPP化合物が必要とされる場合、特に重要である。
【0066】
本プロセスに従えば、タンパク質において存在する−A−I−P−P−、−A−L−P−P−または−A−V−P−P−配列の好ましくは、少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも30%、最も好ましくは、少なくとも40%は、それぞれ、IPP、LPPまたはVPPに変換される。さらに、本プロセスに従えば、タンパク質において存在する−P−L−P−P−または−P−I−P−P−または−P−V−P−P−配列の好ましくは、少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも30%、なおより好ましくは、少なくとも40%、最も好ましくは、少なくとも50%は、それぞれ、LPPまたはIPPまたはVPPに変換される。
【0067】
上記には、好ましくは、−A−または−P−残基が、−I−P−P、−V−P−Pまたは−L−P−P配列(より前方)のタンパク質N末端側のアミノ酸配列に存在することが記載されている。
【0068】
本発明に従えば、−A−または−P−残基と−I−、−V−または−L−残基との間には、好ましくは、0〜5アミノ酸残基が存在し得る。加水分解時、タンパク質は、プロリン特異的プロテアーゼにより−A−または−P−残基のC末端ならびに−P−P−配列のC末端で切断される。続いて、−I−P−P、−V−P−Pまたは−L−P−P配列より前方のアミノ酸が、アミノペプチダーゼによって1つずつ取り出される。アミノペプチダーゼはI−P、V−PまたはL−Pペプチド結合を切断することができないため、I−P−P、V−P−PまたはL−P−P配列は無傷(intact)のままである。例えば、2アミノ酸−V−V−が、カゼインのアミノ酸配列において−P−と−V−P−P−との間に存在する場合、最初に、配列は、プロリン特異的エンドプロテアーゼによって−P−および−P−P−より後方で切断され、続いて、2個のバリン(V)残基がアミノペプチダーゼによって取り出され、VPPを生じる。
【0069】
実施例6では、本発明者らは、新規かつ意外な精製工程による5倍の精製効果を例示している。このプロセスでは、加水分解物を、55℃、pH6.0での短い酵素インキュベーション中に形成させ、続いて、80℃を超える温度に加熱して、すべての混入している微生物を死滅させ、A.ニガー(A.niger)由来プロリルエンドペプチダーゼを不活化させる。続いて、加水分解物を緩除に酸性化し、4.5または少なくとも5.0未満へpH降下を実現する。それが酵素の至適条件を示すためにA.ニガー(A.niger)由来プロリルエンドペプチダーゼを不活化するために使用することができないこのpH値では、より小さなペプチドのみが溶液に残るように、カゼイン酸由来のすべての大きなペプチドが沈殿する。好ましくは、酸性化された混合物を低温で数時間保持し、できるだけ多くのタンパク質および非ACE阻害ペプチドを沈殿させる。沈殿したカゼイン酸を、デカンテーションまたはろ過工程または低速(即ち、5000rpm未満)遠心分離により容易に取り出すことができる場合、水相は、存在するタンパク質の量に対して高い割合の生物活性ペプチドを含有する。ケルダール(Kjeldahl)のデータに従えば、80〜70%のカゼイン酸タンパク質が、ACE阻害ペプチドの4〜5倍精製を黙示する低速遠心分離工程によって取り出される。場合により、精製は、以後の限外ろ過工程によってさらに改善することができる。本発明者らはまた、この精製原理が、カゼイン以外のタンパク質性材料から得られる生物学的に活性なペプチドを得るために有利に適用され得ることを発見した。また、適切な微生物によって発酵されるタンパク質を、本プロセスに従って分離および精製することもできる。基質が沈殿し、酵素がなお活性である値に近いpH値で酵素および基質をインキュベートすることにより、この精製工程が可能になる。A.ニガー(A.niger)由来プロリルエンドプロテアーゼの低いpH至適値のため、pH1.5〜6.5の間の範囲の基質沈殿を考慮することができる。それらの特定の沈殿挙動を考慮すると、pH3.5を超えてのグルテン沈殿、pH3.5を超えておよびpH6.0未満での乳清タンパク質沈殿、pH3.5を超えておよびpH5.0未満での卵白沈殿は、加水分解したタンパク質が沈殿する条件の例であり、沈殿したタンパク質は、加水分解したタンパク質またはペプチドから分離することができる。加水分解物の可溶性画分もまた、加水分解物という表現に含まれる。この酸可溶性加水分解物は、本発明に従うタンパク質の加水分解によって、続いて、可溶性の加水分解された部分を可溶性ペプチドから分離することができるように酸性条件を修正することによって、形成される。この分離は、例えば、不溶性部分の沈降または遠心分離によって行うことができる。グルテン加水分解物では、酸性分離条件は、好ましくは、pH=4であり、乳清加水分解物では、酸性条件は、好ましくは、pH=4.5であり、カゼイン(caseine)加水分解物では、酸性条件は、好ましくは、pH=4.5であり、卵白では、酸性条件は、好ましくは、pH=5.0である。一般に、分離のための好適な酸性条件はpH=4.5である。
【0070】
加水分解物とは、タンパク質の加水分解によって形成される産物(または簡潔なタンパク質加水分解物もしくは加水分解したタンパク質)、可溶性ペプチド含有組成物(または可溶性ペプチドを含んでなる組成物)としてもまた本明細書に記載のタンパク質加水分解物の可溶性画分である酸可溶性加水分解物、あるいはタンパク質加水分解物と酸可溶性加水分解物との混合物を意味する。
【0071】
ニュートラシューティカルアプリケーションならびに食物および飲料アプリケーションでは、本発明の加水分解物が有利に使用される。タンパク質加水分解物、酸−溶解性加水分解物ならびにそれらの混合物は、ニュートラシューティカルアプリケーション、食物アプリケーションまたは飲料において使用することができる。存在する高含量の活性なペプチドのため、好ましくは、酸可溶性加水分解物は、ニュートラシューティカルアプリケーション、食物アプリケーションまたは飲料において使用される。チーズ作製プロセスにおいてもカゼインカードを乳清タンパク質から分離するために同じ原理が使用されるが、チーズ作製プロセスでは、アスパラギン酸エンドプロテアーゼ(EC3.4.23)のみが利用される。この酵素クラスには、キモシンのような周知のチーズ作製酵素および哺乳動物ペプシンのような多様なペプシンならびにアスペルギロペプシンおよびムコールペプシンのような多様な微生物ペプシンが組み入れられる。本出願では、チーズ作製プロセスにおけるカードは、加水分解物ではないと規定される。さらに、上記で規定されるように、非アスパラギン酸エンドプロテアーゼによって生成される加水分解物のための本発明に従う精製プロセスは公知ではない。
【0072】
チーズ作製プロセスまたはカード/乳清分離プロセスは、本発明の精製プロセスには含まれないことから、本精製プロセスは可溶性ペプチドを得るために指向されるが、但し、このプロセスは、チーズ作製プロセスの一部でもまたはカード/乳清分離プロセスでもない。
【0073】
チーズ作製のプロセスを伴うこの精製工程の外面的類似にもかかわらず、それは完全に異なる。チーズ作製では、カード形成は、酵素工程(「レンネット処理」)または酸性化工程のいずれかにより開始される。しかし、レンネット処理プロセスは、酸性化に依存せずに進行する一方、酸性化によるチーズカード凝固は、酵素に依存せずに進行する。
【0074】
代替的精製方法では、ACE阻害ペプチドは、エタノール、アセトン、プロパノール−1、プロパノール−2、メタノールまたはそれらの混合物のような水混和性溶媒を使用して簡便かつ効率的に取り出される。このアプローチでは、より大きなタンパク質が沈殿し、小さなACE阻害ペプチドが溶液に残留するように、タンパク質加水分解物は、好ましくは、選択されたpH条件下で30〜60%(v/v)の水混和性溶媒と注意深く混合される。
【0075】
酸性化または溶媒添加工程のいずれかの間に形成される沈殿物を取り出すためのデカンテーション、ろ過もしくは低速遠心分離後、生物学的に活性なペプチドを含有する上清を回収することができる。場合により、さらなるろ過工程、続く、噴霧乾燥工程と組み合わされる以後のエバポレーションは、高い生物活性および良好な水溶解度を伴う食品用ペーストまたは粉末を得るための経済的な経路を生じる。本発明の実施態様の1つに従えば、これらの可溶性ペプチドを、アミノペプチダーゼで加水分解して、IPP、VPPおよびLPP含有加水分解物を生成させることができる。アミノペプチダーゼと組み合わされたプロリン特異的プロテアーゼによるカゼイン酸の消化時に、IPP、VPPおよびLPPに富む高濃度のACE阻害ペプチドを伴う白色および無色の粉末が得られる。得られる調製物は、極めて高いプロリン含量を有する。プロリンは最も疎水性のアミノ酸の1つであるため、この調製物の極めて高いプロリン含量は予想外である。
【0076】
実施例7では、本発明者らは、少なくとも3つの異なる市販の酵素調製物が、A.ニガー(A.niger)由来のプロリン特異的プロテアーゼによって形成される前駆体ペプチドをACE阻害トリペプチドに転換するために必要なアミノペプチダーゼ活性を含有することを実証している。実施例8では、本発明者らは、実際に、プロリン特異的プロテアーゼとこれらの市販の酵素調製物との組み合わせが、単一の酵素インキュベーション工程で高収量のIPP、VPPおよびLPPを作製することができることを証明している。実施例6に記載の酸性沈殿との組み合わせで、ACE阻害ペプチドの高度に濃縮された混合物が得られる。正しいトリペプチド濃度に適切に希釈される場合、ACE阻害特性を伴うすべての種類の食物および飲料を与えるのに適切な優れた嗜好性を伴う汎用出発材料が得られる。必要であれば、生物活性成分の濃度を、ペプチドIPP、VPPおよびLPPの極めて高い疎水性特徴を利用する以後の精製によって、さらに増加させることができる。好適な精製方法として、ナノろ過、例えば、ブタノールによる抽出、続いて、エバポレーション/沈殿または得られる酸性化加水分解物と活性炭のようなバインダもしくはAmberlite XADレンジ(Rohm)由来のクロマトグラフィー樹脂とを接触させることが挙げられる。また、Pharmaciaより供給されるようなブチルセファロース樹脂を使用することもできる。そのような材料からのACE阻害ペプチドの脱着は、メタノール/エタノール混合物のような有機溶媒またはプロパノールによって行うことができる。さらに、COまたはNOを使用する超臨界抽出を使用して、高度に精製された生物活性ペプチドを得ることができる。実施例9では、本発明者らは、本発明に従って使用される本発明者らのA.ニガー(A.niger)由来酵素調製物が、有意なレベルの混入するエンドプロテアーゼならびにアミノ−およびカルボキシペプチダーゼ活性を含まないことを実証している。EP1231279号明細書に記載のすべてのポジティブに同定されるプロテイナーゼサンプルは、異なるタンパク質分解活性を示す異なる酵素の複雑な混合物である。使用されるこれらのプロテイナーゼサンプルには、有意な量のプロリン特異的プロテアーゼが組み入れられていないため、当業者は、EP1231279号明細書に記載のプロセスが、非特異的エンド型プロテアーゼ活性と適切なカルボキシペプチダーゼおよび/またはアミノペプチダーゼ活性との組み合わせに帰着することを理解するであろう。本発明のプロセスは、そのような非特異的エンド型プロテアーゼ活性またはカルボキシペプチダーゼ活性に依存しない。本発明に従えば、極めて狭い基質特異性を伴う単一のプロリン特異的エンドプロテアーゼが、アミノペプチダーゼとの組み合わせで使用される。何らカルボキシペプチダーゼ活性が存在しないことは、最終加水分解物が減少したレベルの遊離アミノ酸を有することを黙示する。そのような低いレベルの遊離アミノ酸は、プロセシング工程中または低温殺菌もしくは滅菌プロセス中のメイラード(Maillard)反応において容易に発生するブロスの不用な味(off−taste)を最小限にするために好適である。また、本発明に従うプロセスにおいて使用されるプロリン特異的タンパク質分解活性は、EP1231279号明細書に記載の複雑なプロテイナーゼサンプルには存在しない。この活性が非組換えアスペルギルス(Aspergillus)株に本質的に存在しないという見解の実験的証明は、国際公開第02/45524号パンフレットおよび本出願の実施例9に見出すことができる。
【0077】
さらなる(例えば、クロマトグラフィー)精製工程の前または後のいずれかにおいて得られるACE阻害ペプチドは、定期的に広範に消費される食品への組み入れのために使用され得る。そのような製品の例には、マーガリン、スプレッド、バターもしくはヨーグルトのような多様な乳製品または乳汁もしくは乳清含有飲料、好ましくは、ヨーグルトおよび乳汁のようなヨーグルトもしくは乳汁に基づく製品がある。また、果汁飲料またはダイズ飲料のような他の飲料では、本発明の加水分解物を使用することができる。もう1つの選択肢は、フルーツバー、プロテインバー、エナジーバー、穀物に基づく製品、例えば、朝食シリアルのような健康製品における加水分解物の使用である。好ましくは、食物または飲料製品または栄養補助食品は、マーガリン、スプレッド、バター、乳製品または乳清含有飲料、好ましくは、ヨーグルトもしくは乳汁のようなヨーグルトまたは乳汁に基づく製品から選択され、ここで、前記食物または飲料製品または栄養補助食品は、上記で示したような該量のタンパク質加水分解物または該量のIPPを含んでなる。
【0078】
ヒトの高血圧症を軽減するための使用のための上記で考察したような食物または飲料製品または栄養補助食品が特に好適である。食物または飲料または栄養補助食品の好適なサービングサイズは、例えば、1サービングあたり5〜350グラム、例えば、5〜150グラムである。好ましくは、1日あたりのサービング数は、1〜10、例えば、2〜5である。
【0079】
そのような組成物は、典型的にヒトに投与されるが、それらはまた、高血圧症を軽減するために、動物、好ましくは、哺乳動物に投与してもよい。さらに、得られる生成物のACEインヒビターは高濃度であるため、これらの生成物は、ピル、錠剤あるいは高度に濃縮された溶液もしくはペーストまたは粉末の形態での栄養補助食品への組み入れに極めて有用である。ACE阻害ペプチドの継続放出を確実にする徐放性栄養補助食品は特に興味深い。本発明に従うACE阻害ペプチドは、例えば、丸剤、錠剤、顆粒剤、サシェ(sachet)またはカプセル剤中の乾燥粉末として処方してもよい。あるいは、本発明に従う酵素は、例えば、シロップまたはカプセル中の液体として処方してもよい。多様な処方物において使用され、かつ本発明に従う酵素を含有する組成物はまた、生理学的に許容可能なキャリア、アジュバント、賦形剤、安定剤、緩衝液および希釈剤よりなる群の少なくとも1つの化合物を組み入れてもよく、該用語は、包装、送達、吸収、安定化、またはアジュバントの場合には、酵素の生理学的効果を増強することを援助する物質を示すためにそれらの常識的な意味で使用される。粉体化された形態の本発明に従う酵素との組み合わせで使用することができる多様な化合物に関する関連性のある背景は、「Pharmaceutical Dosage Forms」、第2版、第1、2および3巻、ISBN0−8247−8044−2 Marcel Dekker,Inc.において見出すことができる。乾燥粉末として処方される本発明のACE阻害ペプチドは、かなり長期間貯蔵することができるが、例えば、アルミニウムブリスターのような適切な包装を選択することによって、水分または湿り空気との接触を回避するべきである。比較的新しい経口アプリケーション形態は、多様なタイプのゼラチンカプセルまたはゼラチンを基剤とする錠剤の使用である。
【0080】
高血圧症を克服するための天然のACE阻害ペプチドの関連性を考慮すると、本新規かつ経済効果のある経路は、温和な血圧降下性の食物またはなお獣医学製品の魅力的な出発点を付与する。本経路はまた、意外なほど簡単な精製工程を含むため、血圧降下性濃縮栄養補助食品の可能性もまた拡大する。
【0081】
本発明に従うプロセスは、任意のプロリン特異的オリゴ−またはエンドプロテアーゼを使用して達成することができる。本発明に従うまたは本発明に従って使用されるプロリン特異的オリゴペプチダーゼとは、EC3.4.21.26に属する酵素を意味する。本発明に従うかまたは本発明に従って使用されるプロリン特異的エンドプロテアーゼとは、国際公開第02/45524号パンフレットの請求項1〜5、11および13に記載のポリペプチドを意味する。従って、このプロリン特異的エンドプロテアーゼは、以下よりなる群から選択されるプロリン特異的エンド型プロテアーゼ活性を有するポリペプチドである:
(a)配列番号2のアミノ酸1〜526またはそのフラグメントと少なくとも40%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(b)低いストリンジェンシー条件で、(i)少なくとも80%もしくは90%同一な60を超える、好ましくは100を超えるヌクレオチド、より好ましくは少なくとも90%同一な200を超えるヌクレオチドである配列番号1の核酸配列またはそのフラグメント、あるいは(ii)配列番号1の核酸配列に相補的な核酸配列、とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド。配列番号1および配列番号2は国際公開第02/45524号パンフレットに示される通りである。好ましくは、ポリペプチドは単離された形態である。
【0082】
本発明に従って使用される好適なポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1〜526と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、およびさらに最も好ましくは少なくとも約97%同一性を有するアミノ酸配列を有するかまたは配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる。
【0083】
好ましくは、ポリペプチドは、低いストリンジェンシー条件、より好ましくは中等度のストリンジェンシー条件、および最も好ましくは高いストリンジェンシー条件下、(i)配列番号1の核酸配列もしくはそのフラグメント、または(ii)配列番号1の核酸配列に相補的な核酸配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる。
【0084】
用語「ハイブリダイズすることが可能」は、本発明の標的ポリヌクレオチドが、プローブとして使用される核酸(例えば、配列番号1のヌクレオチド配列、もしくはそのフラグメント、または配列番号1の相補物)と、バックグランドよりも有意に高いレベルでハイブリダイズすることができることを意味する。本発明はまた、本発明のプロリン特異的エンドプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド、ならびにそれに相補的であるヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列は、RNA、またはゲノムDNA、合成DNAもしくはcDNAを含むDNAであってもよい。好ましくは、ヌクレオチド配列は、DNAおよび最も好ましくは、ゲノムDNA配列である。典型的に、本発明のポリヌクレオチドは、選択的条件下で、コーディング配列または配列番号1のコーディング配列の相補物にハイブリダイズすることが可能であるヌクレオチドの連続配列を含んでなる。そのようなヌクレオチドは、当該分野において周知の方法に従って合成することができる。
【0085】
本発明のポリヌクレオチドは、コーディング配列または配列番号1のコーディング配列の相補物に、バックグランドよりも有意に高いレベルでハイブリダイズすることができる。例えば、cDNAライブラリーに存在する他のcDNAのため、バックグランドのハイブリダイゼーションが生じ得る。本発明のポリヌクレオチドとコーディング配列または配列番号1のコーディング配列の相補物との間の相互作用によって作製されるシグナルレベルは、典型的に、他のポリヌクレオチドと配列番号1のコーディング配列との間の相互作用の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも50倍、およびさらにより好ましくは少なくとも100倍の強度である。相互作用の強度は、例えば、プローブを、例えば、32Pで放射性標識することによって、測定することができる。選択的ハイブリダイゼーションは、典型的に、低いストリンジェンシー(0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム、約40°C)、中等度のストリンジェンシー(例えば、0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム、約50°C)または高いストリンジェンシー(例えば、0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム、約60°C)の条件を使用して、達成することができる。
【0086】
UWGCGパッケージは、(例えば、そのデフォルト設定値に対して使用される)同一性を算出するために使用することができるBESTFITプログラムを提供する。
【0087】
PILEUPおよびBLAST Nアルゴリズムを使用して、配列同一性を算出するかまたは(例えば、それらのデフォルト設定値に対する等価もしくは対応する配列を同定するような)配列を列挙することができる。
【0088】
BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公的に入手することができる。このアルゴリズムは、データベース配列において同じ長さのワードと共に整列される場合、いくつかのポジティブ評価された閾値スコアTに一致または満たすかのいずれかである問い合わせ配列における長さWの短いワードを同定することによって、ハイスコアリング配列対(high scoring sequence pair)(HSP)を第1に同定することに関与する。Tは隣接ワードスコア閾値と称される。これらの初期の隣接ワードのヒットは、それらを含有するHSPを見出すための検索を初期化するためのシードとして作用する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向において拡張される。累積アラインメントスコアがその最大到達値から量Xだけ低下する場合;1つもしくはそれ以上のネガティブスコアリング残基アラインメントの累積により累積スコアが0もしくはそれ以下となる場合;またはいずれかの配列の末端に到達する場合、各方向におけるワードヒットの拡張は停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTプラグラムは、デフォルトとして、11のワード長(W)、50のBLOSUM62スコアリングマトリックスアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。
【0089】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析を実施する。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然生じる確率の示度を提供する最小の全確率(P(N))である。例えば、配列は、第1の配列と第2の配列との比較における最小全確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満である場合、もう1つの配列に類似であるとみなされる。
【0090】
アスペルギルス(Aspergillus)属の株は食品用として位置付けられており、これらの微生物由来の酵素は、思いも寄らない食品用供給源を形成することが公知である。別の好適な実施態様に従えば、非分泌型のいわゆるサイトゾル酵素以外の酵素は、その産生細胞によって分泌される。この方法では、酵素は、高価な精製工程を伴わずに、本質的に純粋な状態で細胞ブロスから回収することができる。好ましくは、酵素は、一般的なpHおよび温度条件下でその基質に対して高い親和性を有する。
【0091】
材料および方法
食用のカゼイン酸ナトリウムおよびカリウムスプレー(88%)は、DMV International、蘭国から入手した。合成発色ペプチドは、Pepscan Systems B.V.、蘭国またはBachem、瑞国のいずれかから入手した。Flavourzyme 1000L Batch HPN00218は、Novozymes(丁国)から、Sumizyme FPはShin Nihon(日本)から、およびCorolase LAP Ch.:4123はAB酵素(英国)から入手した。
【0092】
A.niger(A.ニガー)由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼ
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼの過剰発現は、国際公開第02/45524号パンフレットに記載の通りに達成させた。酵素の活性は、37℃で、クエン酸/リン酸二ナトリウム緩衝液pH4.6中合成ペプチドZ−Gly−Pro−pNAに対して試験した。反応産物は、分光光度法により405nMでモニターした。単位は、これらの試験条件下で1分間あたり1μmolのp−ニトロアニリドを遊離する酵素の量として規定される。
【0093】
A.ニガー(A.niger)由来エンドプロテアーゼのクロマトグラフィー精製
過剰産生A.ニガー(A.niger)株から得られる培養ブロスを、プロテアーゼのクロマトグラフィー精製に使用して、任意の混入するエンド−およびエキソ型プロテアーゼ活性を取り出した。そのために、最初に、発酵ブロスを遠心分離して、多量の真菌塊を取り出し、次いで、上清を、ポアサイズを減少しながら多くのフィルターを通過させ、すべての細胞フラグメントを取り出した。最終的に、得られた限外ろ過物を、20ミリモル/リットルの酢酸ナトリウム、pH5.1中に10倍希釈し、Q−Sepharose FFカラム上に適用した。タンパク質を、20ミリモル/リットルの酢酸ナトリウム、pH5.1における0〜0.4モル/リットルNaClの勾配で溶出させた。World Journal of Microbiology&Biotechnology 11,209−212(1995年)に記載のプロトコルに従って(但し、若干改変したアッセイ条件下で)、Z−Gly−Pro−pNAの切断に対して活性を示すピーク画分を回収し、プールした。A.ニガー(A.niger)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼの酸性のpH至適値を考慮して、酵素アッセイを、pH4.6、クエン酸/二リン酸緩衝液中、37℃において行った。活性画分のプール、続く、濃縮により、最終的に、SDS−PAGE上においてただ単一のバンドおよびHP−SEC上において1つのピークを示す調製物が得られた。さらに、疎水性相互作用クロマトグラフィーによる分析によって、得られる酵素調製物の純度を確認した。
【0094】
加水分解の程度
多様なタンパク質分解混合物とのインキュベーション中に得られる加水分解の程度(DH)を、迅速OPA試験を使用してモニターした(ニールセン,P.M.(Nielsen,P.M.);ピーターセン,D.(Petersen,D.);ダンマン,C.(Dambmann,C.)、Improved method for determining food protein degree of hydrolysis.Journal of Food Science 2001年、66,642−646)。
【0095】
ケルダール窒素
全ケルダール窒素を、フローインジェクション分析によって測定した。TKN Method Cassette 5000−040、SOFIAソフトウェアを伴うPentium4コンピュータ、およびTecator 5027 Autosamplerを具備したTecator FIASTAR 5000 Flow Injection Systemを使用して、タンパク質含有溶液から遊離したアンモニアを、590nmで定量した。方法のダイナミックレンジに対応するサンプル量(0.5〜20mg N/l)を、30分間、200℃、続いて、90分間、360℃の消化プログラムに供された95〜97%硫酸およびKjeltabを伴う消化チューブに配置する。FIASTAR5000システムにおける注入後、窒素ピークを測定し、これから測定されるタンパク質の量を推察することができる。
【0096】
アミノ酸分析
タンパク質性材料の正確に秤量したサンプルを、希酸に溶解し、沈殿物を、エッペンドルフ(Eppendorf)遠心機における遠心分離によって分離した。Amino Acid Analysis System of Waters(Milford、マサチューセッツ州、米国)の操作マニュアルに記載のPicoTag法に従って、澄明な上清に対してアミノ酸分析を行った。そのために、液体から適切なサンプルを得、次いで、乾燥し、気相酸加水分解に供し、フェニルイソチオシアネートを使用して誘導体化した。存在する多様な誘導体化されたアミノ酸を、HPLC法を使用して定量化し、合計して、秤量したサンプルにおける全レベルの遊離アミノ酸を算出した。アミノ酸CysおよびTrpは、この分析において得られるデータに含まれない。
【0097】
LC/MS/MS分析
P4000ポンプ(Thermoquest(登録商標)、Breda、蘭国)に結合されたイオントラップ質量分析計(Thermoquest(登録商標)、Breda、蘭国)を使用するHPLCを、本発明の酵素混合物によって生成される酵素タンパク質加水分解物中のこれらのトリペプチドIPP、LPPおよびVPPのうちの目的のペプチドの定量化に使用した。溶出のためのMilliQウォーター中0.1%ギ酸(Millipore、Bedford、マサチューセッツ州、米国;溶液A)およびアセトニトリル中0.1%ギ酸(溶液B)の勾配と組み合わせたInertsil 3ODS3、3mm、1502.1mm(Varian Belgium、白国)カラムを使用して、形成されるペプチドを分離した。勾配は、100%の溶液Aで開始し、ここで、5分間保持し、10分間、5%Bまで直線的に増加させ、続いて、30分間、45%の溶液Bまで直線的に増加させ、直ちに初期条件に移行し、ここで、安定化のため15分間保持した。使用した注入容積は50マイクロリットルであり、流速は1分間あたり200マイクロリットルであり、カラム温度は55℃に維持した。注入したサンプルのタンパク質濃度は、約50マイクログラム/ミリリットルであった。
【0098】
約30%の至適衝突エネルギーを使用する目的のペプチドに専用のMS/MSを使用することによって、個々のペプチドに関する詳細な情報を得た。MS/MSモードにおいて観察される最も豊富なフラグメントイオンを使用することによる外部校正を使用して、個々のペプチドの定量化を実施した。
【0099】
トリペプチドLPP(M=325.2)を使用して、MSモードにおける至適感受性およびMS/MSモードにおける至適フラグメント化のために同調し、5mg/mlの一定の輸注を実施し、MSモードではプロトン化分子が、およびMS/MSモードでは約30%の至適衝突エネルギーが生じ、BおよびY系列イオンが生成させた。
【0100】
LC/MS/MSの前に、酵素タンパク質加水分解物を、周囲温度および13000rpmで10分間、遠心分離し、0.22μmフィルターを介してろ過し、上清をMilliQウォーターで1:100に希釈した。
【0101】
ニュートラシューティカル製品
本発明に従うニュートラシューティカル製品は、いずれの食物タイプであってもよい。それらは、適切な量の風味付け、糖、果実、ミネラル類、ビタミン類、安定剤、増粘剤などの食品に加えて、一般の食物成分を含んでなり得る。
【0102】
好ましくは、ニュートラシューティカル製品は、50〜200mmol/kg Kおよび/または15〜60mmol/kg Ca2+および/または6〜25mmol/kg Mg2+、より好ましくは、100〜150mmol/kg Kおよび/または30〜50mmol/kg Ca2+および/または10〜25mmol/kg Mg2+ならびに最も好ましくは、110〜135mmol/kg Kおよび/または35〜45mmol/kg Ca2+および/または13〜20mmol/kg Mg2+を含んでなる。これらのカチオンは、本発明に従うニュートラシューティカル製品に組み入れられる場合、さらに血圧を降下させる便益効果を有する。
【0103】
有利なことに、ニュートラシューティカル製品は、1つもしくはそれ以上のB群ビタミンを含んでなる。
【0104】
B群ビタミンの葉酸は、ホモシステイン、ヒト食事中のアミノ酸の代謝に参加することが公知である。長年の間、高ホモシステインレベルは、循環器系疾患の高い発症率と相関関係を有している。ホモシステインを降下することは、循環器系疾患の危険率を減少し得ると考えられる。
【0105】
ビタミンB6およびB12は、プリンおよびチアミンの生合成を妨害し、メチオニンを産生するためのホモシステインメチル化のプロセスおよびいくらかの成長プロセスにおいてメチル基の合成に参加することが公知である。ビタミンB6(塩酸ピリドキシン)は、既知のビタミン補給剤である。ビタミンB12(シアノバラミン(cyanobalamin))は、神経系の健康に寄与し、赤血球の産生に関与する。それはまた、食品補助製品中のビタミンとしても公知である。
【0106】
循環器系疾患危険率の減少に対するそれらの組み合わされたポジティブな効果のため、本発明に従う製品は、ビタミンB6およびビタミンB12ならびに葉酸を含んでなることが好適である。
【0107】
ニュートラシューティカル製品中のB群ビタミンの量は、次に示すこれらのB群ビタミンの1日量に基づいて当業者によって算出され得る:葉酸:200〜800μg/日、好ましくは、200〜400μg/日、ビタミンB6:0.2〜2mg/日、好ましくは、05〜1mg/日およびビタミンB12:0.5〜4μg/日、好ましくは、1〜2μg/日。
【0108】
好ましくは、ニュートラシューティカル製品は、3〜25wt%ステロール、より好適には、7〜15wt%ステロールを含んでなる。ステロールの組み入れの利点は、それがヒト血中におけるLDL−コレステロールのレベルの減少を引き起こし、循環器系の危険率の減少を生じることである。
【0109】
ステロールを参考にする場合、これは、飽和スタノール類およびステロール/スタノールのエステル化誘導体またはこれらの任意の混合物を含む。
【0110】
本出願では、ステロールエステルを参考にする場合、これはまた、それらの飽和誘導体、スタノールエステル、ならびにステロール−およびスタノールエステルの組み合わせを含む。
【0111】
植物ステロール類または野菜ステロール類としても公知であるステロール類またはフィトステロール類は、3つの群、4−デスメチルステロール類、4−モノメチルステロール類および4,4’−ジメチルステロール類に分類することができる。油において、それらは、主に、有利のステロール類および脂肪酸のステロールエステルとして存在するが、ステロールグルコシド類およびアシル化ステロールグルコシド類もまた存在する。3種の主なフィトステロール類、即ち、β−シトステロール、スチグマステロールおよびカンペステロールが存在する。意図される成分の概略図は、「Influence of Processing on Sterols of Edible Vegetable Oils」、S.P.コッハル(S.P.Kochhar)、Prog.Lipid Res.22:161−188頁に掲載のとおりである。
【0112】
シトスタノール、カンペスタノールおよびエルゴスタノールならびにそれらの誘導体のようなそれぞれの5α−飽和誘導体も本明細書においてスタノール類と称される。好ましくは、(場合によりエステル化)ステロールまたはスタノールは、β−シトステロール、β−シトスタノール、カンペステロール、カンペスタノール、スチグマステロール、ブラシカステロール、ブラシカスタノールまたはそれらの混合物の脂肪酸エステルを含んでなる群から選択される。
【0113】
ステロール類またはスタノール類は、場合により、脂肪酸により少なくとも部分的にエステル化される。好ましくは、ステロール類またはスタノール類は、1つもしくはそれ以上のC2−22脂肪酸でエステル化される。本発明の目的のために、C2−22脂肪酸という用語は、C2−22主鎖および少なくとも1つの酸基を含んでなる任意の分子を指す。本発明に関して好適ではないが、C2−22主鎖は部分的に置換されていてもよくまたは側鎖が存在していてもよい。しかし、好ましくは、C2−22脂肪酸は、末端基として1もしくは2個の酸基を含んでなる直鎖分子である。これらが天然油中に存在する場合、直鎖状C8−22脂肪酸が最も好適である。任意のそのような脂肪酸の適切な例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸がある。他の適切な酸は、例えば、クエン酸、乳酸、シュウ酸およびマレイン酸である。ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、エライジン酸、リノール酸およびリノレン酸が最も好適である。
【0114】
所望であれば、脂肪酸の混合物をステロール類またはスタノール類のエステル化のために使用してもよい。例えば、脂肪酸の供給源として天然に存在する脂肪または油を使用することおよびエステル交換反応を介してエステル化を行うことも可能である。
【0115】
循環器系の健康を増進することに起用する上記のニュートラシューティカル成分、K+、Ca2+およびMg2+、B群ビタミン(葉酸、B6、B12)ならびにステロール類は、本明細書において、集合的に心臓健康成分と称される。
【0116】
実施例1
A.niger(A.ニガー)から得られる酵素は新規のクラスのプロリン特異的酵素を提示する。
国際公開第02/45524号パンフレットにおいて提供されるA.niger(A.ニガー)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼのコーディング配列全体から、526アミノ酸のタンパク質配列を決定することができる。酵素の新規性は、SwissProt,PIRおよびtrEMBLのようなデータベースのBLAST検索によって確認した。意外なことに、A.niger(A.ニガー)の酵素と既知のプロリルオリゴペプチダーゼとの間に明確な相同性を検出することができなかった。しかし、アミノ酸配列をより緊密に調べたところ、Pro−Xカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.16.2)、ジペプチジルアミノペプチダーゼI(EC3.4.14.2)、および胸腺特異的セリンプロテアーゼに対して低いが有意な相同性を示した。これらのすべての酵素は、セリンペプチダーゼのclanSCのファミリーS28に割り当てられている(Handbook of Proteolytic Enzymes;バレット A.J.(Barrett A.J.)、ローリングズ N.D.(Rawlings N.D.);ウォエスナー J.F.(Woessner J.F.)編;Academic Press,London、英国、1998年、369−415)。また、活性部位セリンの周りのGxSYxGの立体配置は、これらの酵素とA.niger(A.ニガー)由来エンドプロテアーゼとの間で保存される。さらに、ファミリーS28のメンバーは、酸性のpH至適値を有し、プロリン残基のカルボキシ末端側で切断するための特異性を有し、A.niger(A.ニガー)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼと同様のシグナル配列およびプロペプチドで合成される。また、A.niger(A.ニガー)酵素のサイズは、ファミリーS28のメンバーのサイズに類似する。従って、A.niger(A.ニガー)プロリン特異的エンドプロテアーゼは、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)から得られる酵素を含むほとんどのサイトゾルプロリルオリゴペプチダーゼが分類されているS9ファミリーではなく、セリンプロテアーゼのファミリーS28のメンバーであるようである。これらの構造的および生理学的特徴に基づいて、本発明者らは、A.niger(A.ニガー)の酵素がセリンプロテアーゼのS9ファミリーではなく、S28に属すると結論した。S9ファミリーに属するプロリルオリゴペプチダーゼ由来のA.niger(A.ニガー)由来酵素を区別するさらなる特徴は、後者のファミリーに属するサイトゾルプロリルエンドプロテアーゼとは異なり、新たに同定されたA.niger(A.ニガー)の酵素は増殖培地に分泌されるという事実である。これは、下等真核生物由来のファミリーS28のメンバーの単離および特徴付けに関する最初の報告である。
【0117】
実施例2
A.niger(A.ニガー)から得られるプロリン特異的エンドプロテアーゼのpHおよび温度至適値。
A.ニガー(A.niger)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼのpH至適値を確立するために、異なるpH値を伴う緩衝液を調製した。pH4.0−4.5−4.8−5.0−5.5および6.0の緩衝液は、0.05mol/l酢酸Naおよび0.02M CaCl2を使用して作製し;pH7.0および8.0の緩衝液は、0.02M CaCl2を含有する0.05M Tris/HCl緩衝液を使用して作製した。pH値は、それぞれ、酢酸およびHClを使用して調整した。発色合成ペプチドZ−Gly−Pro−pNAを基質として使用した。緩衝溶液、基質溶液およびプロリルエンドプロテアーゼプレ希釈液(0.1U/mLの活性)を、水浴中で正確に37.0°Cにまで加熱した。混合後、反応物を、分光光度的に405nm、37.0℃で3.5分間追跡し、0.5分間毎に測定した。図1に示す結果から、A.niger(A.ニガー)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼが約4のpH至適値を有することが明らかである。
【0118】
また、プロリルエンドプロテアーゼの温度至適値を確立した。そのために、基質としてCaseine Resorufine(Roche Diagnostics,Almere、蘭国、バージョン3)を使用し、精製された酵素調製物を、pH5.0で0.02mol/l CaCl2を含有する0.1mol/l酢酸Naにおいて、2時間、異なる温度でインキュベートし、574nmで測定することによって酵素活性を定量した。得られる結果に従えば、A.niger(A.ニガー)由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼは約50℃の温度至適値を有する。
【0119】
実施例3
A.ニガー(A.niger)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼの特異性
複数コピーの発現カセット(国際公開第02/45524号パンフレットを参照のこと)を含有するA.ニガー(A.niger)株から得られる粗ならびにクロマトグラフィー精製した酵素サンプルを、発色ペプチド基質のコレクションに対して試験し、コードされるエンドプロテアーゼの特異性を確立した。酵素のエンド型プロテアーゼ活性を、AAXpNA基質に対して試験した。「pNA」(p−ニトロアニリド)基質は、X−pNAペプチド結合が切断される場合、色の変化を生じる;「X」は、異なる天然のアミノ酸残基を表す。
【0120】
AAX−pNA基質のストック溶液(150mmol/l)を、20CaCl2を含有する0.1M酢酸緩衝液pH4.0において100×希釈した。40℃、TECAN Genios MTP Reader(Salzburg,Vienna)における405nmでの10分間の動力学測定により、光学密度の増加が記録され、これから、エクセル(Excel)におけるデータ処理を介して、図2に示される図が得られた。結果から、A.ニガー(A.niger)由来エンドプロテアーゼがプロリルペプチド結合に高度に特異的であり、アラニル結合に対する副活性を伴うことが明らかである。粗およびクロマトグラフィー精製した調製物は類似の活性プロファイルを示した。
【0121】
アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼまたは非プロリン特異的エンドプロテアーゼによるA.ニガー(A.niger)由来エンドプロテアーゼへの混入は、極めて僅かであることが示され得る(実施例9を参照のこと)。
【0122】
実施例4
A.niger(A.ニガー)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼは、大きなタンパク質ならびに小さなペプチドを加水分解することができ、従って、真のエンドプロテアーゼである。
特定の構造的特徴のため、S9ファミリーに属するプロリルオリゴペプチダーゼは30アミノ酸を超えるペプチドを消化することができない。この制限は、できるだけ迅速かつ効率的に異なるタンパク質を加水分解することが意図される酵素に明らかに不利である。A.niger(A.ニガー)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼが基質分子のサイズに関して同じ制限を示すかどうかを調べるために、本発明者らは、A.niger(A.ニガー)由来のクロマトグラフィー精製したプロリルエンドペプチダーゼを、小さな合成ペプチドおよび大きなオボアルブミン(ovalbumine)分子と共にインキュベートし、SDS−PAGEによって、形成された加水分解産物を分析した。
【0123】
使用した合成ペプチドは、27マーの配列NH2−FRASDNDRVIDPGKVETLTIRRLHIPR−COOHであり、Pepscan company(Lelystad、蘭国)より贈与された。そのアミノ酸配列から示されるように、このペプチドは、2プロリン残基を含有し、1つはペプチドの中央にあり、1つはカルボキシ末端部にある。
【0124】
無傷なオボアルブミン(ovalbumine)分子(PierceImject、20mgの凍結乾燥材料を含有するバイアル)は、42750Daの分子量を伴う385アミノ酸よりなる。この分子は、14プロリン残基を含有し、このうち1つは分子の究極的C末端に位置し、プロリン特異的エンドプロテアーゼによって切断することができない。
【0125】
オボアルブミンおよびオリゴペプチドを、個別に、50°Cで、精製されたA.niger(A.ニガー)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼと共にインキュベートした。いくらかの時間間隔で、サンプルを採取し、次いで、SDS−PAGEを使用して分析した。
【0126】
4.5単位/mlの活性を伴うクロマトグラフィー精製されたA.niger(A.ニガー)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼを、20mM CaCl2を含有する0.1M酢酸緩衝液pH4で100倍希釈した。オボアルブミン(ovalbumine)を、1mg/mlの濃度(22μM)で酢酸緩衝液pH4に溶解した。27マーを同じ緩衝液に溶解し、0.48mg/mlの濃度(152μM)に到達させた。オボアルブミン(ovalbumine)および27マー溶液のモル濃度は、両溶液が切断可能なプロリン残基において同じモル濃度を含有するような方法で、選択した。オボアルブミン(ovalbumine)は13個の潜在的プロリン切断部位を含有する一方、27マーペプチドは2個しか有さない。両基質溶液のうち、0.5mlを、エッペンドルフ(Eppendorf)サーモミキサー中、50°Cで10μl(0.45ミリU)の酵素溶液と共にインキュベートした。いくらかの時間間隔で、10μlサンプルをインキュベーション混合物から抜き取り、SDS−PAGEまで20°Cで保持した。SDS−PAGEおよび染色のために使用されるすべての材料は、Invitrogenから購入した。サンプルは、製造者の指示に従い、SDS緩衝液を使用して調製し、製造者の指示に従い、MES−SDS緩衝液システムを使用して12%Bis−Trisゲル上で分離した。染色は、Simply Blue Safe Stain(Collodial Coomassie G250)を使用して実施した。
【0127】
図3に認められ得るように、オボアルブミン(ovalbumine)は、アスペルギルス(Aspergillus)由来酵素によって、インキュベーションの最初の4.75時間において約35〜36kDの個別のバンドに切断される(レーン3)。インキュベーション期間を延長すると、多様な分子量のより小さな産物へのさらなる分解が生じる(レーン7)。
【0128】
27マーペプチドもまた分解され、レーン2と比較して、レーン4、6および8におけるより微弱なバンドによって判定される。産物の極めて小さな分子量のシフト(レーン9および8を比較すること)は、ペプチドのカルボキシ末端でのアルギニン残基の切断によるためである可能性が最も高い。差異は約200Dであり(AlphaImager2000システムの上のAlphaImager3.3dソフトウェアを使用して測定される)、アルギニンは174のMWを有する。この小さな分子量のシフトは、恐らく、ペプチドの分解の第1の工程である。
【0129】
産物のさらなる崩壊は、SDSゲル上のバンドの強度の減少のみによって、認めることができる。約1000のMWを伴う成分のゲル染色はクマシー・ブリリアント・ブルー(Coomassie Brillant Blue)では可能ではないため、さらなる産物の崩壊は認められない。この実験から、S9ファミリーに属する既知のプロリルオリゴペプチダーゼとは異なり、A.niger(A.ニガー)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼは、極めてより大きなタンパク質よりも小型のペプチドの方を特に選考して切断するわけではないと結論付けることができる。従って、A.ニガー(A.niger)由来酵素は、真のエンドプロテアーゼ、および異なるタイプのタンパク質を加水分解する好適な酵素を表す。この所見は、以下の実施例において例示されるように酵素の意外な使用をもたらす。
【0130】
実施例5
カゼイン酸カリウムとA.ニガー(A.niger)由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼとをインキュベートすると、IPPおよびLPPが迅速に産出されるが、VPPは産出されない。
この実験では、本発明者らは、A.ニガー(A.niger)から得られるプロリン特異的プロテアーゼが真のエンドプロテアーゼであるという実施例4においてなされた観察を利用する。A.ニガー(A.niger)由来の過剰産生されるおよび本質的に純粋なプロリン特異的エンドプロテアーゼを、カゼイン酸カリウムと共にインキュベートし、ACE阻害ペプチドIPP、VPPならびにLPPの遊離について試験した。このインキュベーションでは、プロリン特異的エンドプロテアーゼ以外の酵素は使用しなかった。実施例9において実証されるように、使用したプロリン特異的エンドプロテアーゼは、エンドプロテアーゼ、アミノペプチダーゼまたはカルボキシペプチダーゼ混入が認められない。できるだけ多くのACE阻害ペプチドの摂取の結果としてのナトリウム取り込みを制限するために、このインキュベーションでは、カゼイン酸カリウムを基質として使用した。
【0131】
カゼイン酸を、10%(w/w)タンパク質の濃度で、65℃の水に懸濁し、その後、リン酸を使用して、pHを6.0(20℃で測定)に調整した。次いで、懸濁液の温度を55℃にし、A.ニガー(A.niger)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼを4単位/タンパク質のグラムの濃度で添加した(単位規定のための材料および方法のセクションを参照のこと)。連続撹拌下、この混合物を24時間インキュベートした。この期間の間、さらなるpH調整は行わなかった。サンプルを、インキュベーションの1、2、3、4、8および24時間後に採取した。各サンプルの酵素活性を、90℃への5分間のサンプルの即時的加熱によって終結させた。冷却後、リン酸を使用して、各サンプルのpHを迅速に4.5に降下させ、その後、懸濁液を、5分間、3000rpmで、Hereaus卓上遠心機において遠心分離した。完全に澄明な上清を、LC/MS/MS分析に使用し、上清中のペプチドVPP、IPP、LPP、VVVPPおよびVVVPPFを定量した(材料および方法のセクションを参照のこと)。
【0132】
ウシミルクカゼインは、β−カゼインおよびκ−カゼインを含む異なる多くのタンパク質を組み入れている。既知のアミノ酸配列に従えば、β−カゼインは、ACE阻害トリペプチドIPP、VPPおよびLPPを包含する。β−カゼインにおいて、IPPは、配列−P71−Q72−N73−I74−P75−P76−に含有され、VPPは配列−P81−V82−V83−V84−P85−P86−に含有され、LPPは配列−P150−L151−P152−P153−に含有される。酸性沈殿したカゼイン酸調製物において、β−カゼイン濃度の50%未満のモル濃度で存在するκ−カゼインは、IPPのみを包含する。κ−カゼインでは、IPPは、配列−A107−I108−P109−P110−に含有される。カゼインの他のタンパク質構成成分は、IPP、VPPまたはLPPのいずれも含有しない。
【0133】
表1および2は、LC/MS実験において決定し、インキュベーション混合物に添加された1グラムのカゼイン酸カリウムあたりで算出した、酸性化および遠心分離した上清に存在するペプチドの濃度を示す。表1に示されるように、IPPは、1時間のインキュベーション後にその最大濃度に到達する。それ以外では、IPP濃度は、それよりさらに増加しない。ペンタペプチドVVVPPの形成は、IPPの作製と同じ動力学を示す。理論的に予想されるように、VVVPPのモル収量は、LPPペプチドのモル収量に類似する。LPPおよびVVVPPの両方の収量は、理論的に可能なもののほぼ60%に到達する。LPPの最大濃度が3時間のインキュベーション後のみに到達されるという事実は、β−カゼイン(caseine)分子の特定の部分の切断が、おそらく、若干より困難であることを示唆する。VVVPPとは対照的に、ヘキサペプチドVVVPPFは全く形成されない。この観察から、プロリン特異的エンドプロテアーゼは効率的に−P−F−結合を切断し、それによってVVVPPが生じることが示唆される。トリペプチドIPPは即時に形成されるが、そのモル収量は、VVVPPまたはLPPのいずれの最大モル収量の約3分の1を超えない。IPPトリペプチドは、κ−カゼイン(caseine)におけるようにβ−カゼイン(caseine)においても両方に含有されるため、この結果は予想外である。この観察の妥当な説明は、プロリン特異的プロテアーゼはIPPを生じることができるが、但し、カゼイン酸のκ−カゼイン(caseine)部分のみからであるということである。κ−カゼイン(caseine)の関連するアミノ酸配列を考慮すると、このことは、−A107−I108−ペプチド結合が酵素のアラニン特異的活性によって切断されることを示唆する。この仮定に従えば、プロリン特異的エンドプロテアーゼによるβ−カゼイン消化は、Q72−N73−I74−P75−P76を生じるが、I74−P75−P76は生じない。遊離するIPPの量は、κ−カゼインに存在する量の約40%に到達するが、β+κカゼインに理論的に存在するIPPの約10%を超えない。IPPの放出のためのこの切断機構はまた、VPPがその前駆体分子VVVPPから形成され得ない理由を説明する:要求されるエンド型プロテアーゼ活性は、使用されるA.ニガー(A.niger)由来酵素調製物内に単純に存在するわけではない。
【0134】
【表1】

【0135】
【表2】

【0136】
実施例6
酸性カゼイン沈殿工程の組み入れは、5倍濃度のACE阻害ペプチドを示す酸可溶性プロリンリッチペプチド画分を生じる
実施例5において、本発明者らは、10%(w/w)タンパク質の濃度のカゼイン酸カリウムを、pH6.0でA.ニガー(A.niger)由来プロリン特異的エンドプロテアーゼとのインキュベーションに供する仕方について説明した。多様なインキュベーション期間後、サンプルを加熱して、さらなる酵素活性を停止し、その後、pHを4.5に降下させ、カゼイン溶解度を最小限にした。不溶性カゼイン分子を低速遠心分離によって取り出した。表1および2では、本発明者らは、10%タンパク質の出発濃度に基づいて算出されたACE阻害ペプチドの濃度を提供した。しかし、酸性化および以後の遠心分離工程の結果として、添加した大きな割合のタンパク質が取り出されている。酸性化された上清のこれらの減少したタンパク質含量を定量するために、窒素(ケルダール)分析を行った。後者のデータに従えば、多様な上清が以下のタンパク質レベルを含有することが見出された。
【0137】
【表3】

【0138】
本発明者らは、これらのデータを考慮して、但し、今回は、それらの実際のタンパク質含量を使用して、それぞれの上清に存在するACE阻害ペプチドの濃度を再計算した。これらの再計算されたデータを表4に示す。
【0139】
【表4】

【0140】
表2および4に提示されたデータの比較は、明らかに、単純な酸性化工程、続いて、産業的に可能なデカンテーション、ろ過または低速遠心分離工程は、上清に存在するタンパク質の1グラムあたりで算出する場合、特定のACE阻害ペプチドの濃度の5倍増加を生じることを示す。濃度におけるこの5倍増加は、使用する酸性沈殿手順の任意の最適化を伴わずに、得られた。これらの増強されたレベルのACE阻害ペプチドを含有するこの酸可溶性画分のアミノ酸組成の印象を得るために、存在するペプチドを酸加水分解し、次いで、Waters(材料および方法のセクションを参照のこと)に従って、アミノ酸分析に供した。得られる結果に従って、本発明に従う酸可溶性タンパク質画分は、この画分に存在するペプチドのモルに基づいてほぼ24%および重量に基づいて21%のプロリン含量を有する!プロリンは最も疎水性のアミノ酸の1つとして公知であるため、この観察は、全く意外なことであり、そのため、酸可溶性画分において増強されたプロリンレベルを見出すことは予想外である。事実、高量のプロリンを含有するこの酸性化工程において得られるペプチド画分は新規である。例えば、最もプロリンリッチタンパク質として公知のゼラチンは、14.4%(w/w)のヒドロキシプロリンに加えて、僅か16.5%(w/w)のプロリンしか含有しない。
【0141】
実施例7
異なる市販の酵素調製物のアミノペプチダーゼ活性
β−カゼインにおいて、IPPは、配列−P71−Q72−N73−I74−P75−P76−に含有され、VPPは配列−P81−V82−V83−V84−P85−P86−に含有され、LPPは配列−P150−L151−P152−P153−に含有される。カゼインの他のタンパク質構成成分のうち、κ−カゼインのみは、IPP含有配列を組み入れる。プロリン特異的エンドプロテアーゼの特異性から、β−カゼインとA.ニガー(A.niger)由来酵素とのインキュベート時に、ペプチドQ72−N73−I74−P75−P76−、V82−V83−V84−P85−P86−およびL151−P152−P153−が形成されることが推察され得る。LPPとは対照的に、形成される2つのペンタペプチドは、低いACE阻害活性のみを示す。例えば、EP0583074号明細書は、873マイクロモル/lのVVVPPに対するIC50値を報告する一方、短縮型VPP分子は、9マイクロ/lのIC50値を有する。そのため、カゼイン加水分解物の十分なACE阻害能を作製するために、プロリン特異的エンドプロテアーゼとのインキュベーション時に形成されるペンタペプチドVVVPPおよびQNIPPは、それぞれ、トリペプチドVPPおよびIPPに転換されるべきであることが明らかである。アミノペプチダーゼは、ペプチドのN末端側からアミノ酸を連続的に取り出すことができるため、VPP配列より前方の2個のバリン(「V」)残基ならびにIPP配列より前方にあるグルタミン(「Q」)およびアスパラギン(「N」)残基を効率的に遊離することができるアミノペプチダーゼ酵素活性が要求される。XPPトリペプチドに存在するX−PおよびP−Pペプチド結合は、酵素切断に耐性であることが公知であるため、そのようなアミノペプチダーゼ活性は、2つのペンタペプチドを所望されるVPPおよびIPPトリペプチドに転換するようである。
【0142】
3種の市販の酵素調製物、即ち:Flavourzyme 1000L Batch HPN00218(Novozymes)、Sumizyme FP(Shin Nihon)およびCorolase LAP Ch.:4123(AB Enzymes)を、それらのアミノペプチダーゼ活性について試験した。FlavourzymeおよびSumizyme FPは、両方とも、特定されていないエンド型プロテアーゼおよびカルボキシペプチダーゼ活性の他に、いくらかのアミノペプチダーゼ酵素活性を含有する複雑な酵素調製物であることが公知である。Corolase LAPは、アスペルギルス(Aspergillus)由来の比較的純粋な、クローニングおよび過剰発現されたロイシンアミノペプチダーゼ活性を表す。
【0143】
これら3種の市販の調製物に存在するアミノペプチダーゼ活性を、発色基質F−pNA(対照)、Q−pNAおよびV−pNAを使用して試験した。そのために、DMSO中150mM X−pNAのストック溶液を、Bis−Tris緩衝液、pH6において100×希釈した。マイクロタイタープレートにウェルあたり200μlの緩衝化基質溶液を充填し、Magellan 4ソフトウェアによって制御されるTecan Genios MTPリーダーにおいて、40℃でプレインキュベートした。50μlの適切な酵素溶液(使用前に、Sumizyme FP粉末を、Bis−Tris緩衝液、pH6に、100mg/mlの濃度で溶解した)を添加することによって、反応を開始した。黄色のpNAの遊離を、405nmで10分間、追跡した。ソフトウェアはOD/minを算出する。多様な基質に対する各酵素調製物の活性を、F−pNAに対するそれらの活性について標準化した。得られたデータを図4に示す。明らかに、3種のすべての酵素調製物は、F−pNAに対して最も高い活性を示すが、しかし、Q−pNAおよびV−pNAもまたこれらの酵素に対して基質を形成する。アミノペプチダーゼの活性が、プロリン特異的プロテアーゼによって形成されるペプチドQNIPPおよびVVVPPをそれぞれIPPおよびVPPに変換するため、これらの結果は、プロリン特異的プロテアーゼと組み合わされる場合、市販の調製物のそれぞれ1つが、所望されるACE阻害トリペプチドIPP、VPPならびにLPPを形成することが可能であるべきであることを示す。この仮定を、実施例8に記載の実験において試験した。
【0144】
実施例8
カゼイン酸と異なるアミノペプチダーゼ酵素調製物を伴うA.ニガー(A.niger)由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼとをインキュベートすることにより、高収量のIPP、LPPおよびVPPを生じる。
EP1231279号明細書に記載のIPPおよびVPPに対する酵素経路は、2工程プロセスを必要とする。カゼインを適切なプロテイナーゼとインキュベートする第1の工程の間、より大きな中間ペプチドが形成され、そのうちのいくらかは、IPPまたはVPPのいずれかを包含する。EP1231279号明細書に記載の実施例の1つに従えば、このプロテイナーゼとのインキュベーションは、37℃で12時間の期間、行われる。次いで、使用されるプロテイナーゼは、この第1の加水分解物を100℃にまで3分間加熱することによって不活化し、元の状態に冷却した後、別の酵素調製物(事実上、エキソ型プロテアーゼ活性を伴う調製物)が添加される。エキソ型プロテアーゼ活性とのこのインキュベーションは、第2の工程を形成する。37℃でのこのような第2の酵素調製物との別の12時間のインキュベーション後、トリペプチドVal−Pro−ProおよびIle−Pro−Proの存在が実証され得る。これらのACE阻害ペプチドのより高い収量を得るために、EP1231279号明細書は、エキソ型プロテアーゼ活性への暴露の前に、中間ペプチドを精製および濃縮することをさらに示唆している。EP1231279号明細書はまた、中間ペプチドを得た後、および中間ペプチドを手順においてペプチダーゼと接触させる前に、例えば、5000〜20000rpmにおける3〜10分間の遠心分離による非反応のタンパク質の取り出しのような多様な操作が、場合により実施され得ることを示唆している。このように、所望されるトリペプチドは、産業的にむしろ扱いにくい2工程酵素プロセスにおいて得られる。酵素インキュベーションのそれぞれは、pH4.5〜7.0、25〜50℃の温度で12時間もの長い期間を要し得るため、微生物学的観点から許容され得ない。
【0145】
本実施例において、本発明者らは、多様なACE阻害ペプチドの形成に対するA.ニガー(A.niger)由来のプロリン特異的プロテアーゼとアミノペプチダーゼ活性とを単一のインキュベーション工程において組み合わせることの効果について調べている。そのために、50グラムのカゼイン酸ナトリウムを70℃506グラムの水に溶解することによって、カゼイン酸溶液を調製し、81グラムのタンパク質/lを含有する溶液を得た。この溶液を50℃まで冷却し、その後、リン酸を使用して、pHを6.0(20℃で測定)まで降下させ、その後、多様な酵素の組み合わせを添加した。すべてのサンプル(それぞれ10ml)にプロリン特異的プロテアーゼを添加して、1グラムのタンパク質あたり4単位の濃度(単位規定についての材料および方法のセクションを参照のと)に到達させた。サンプルA1は、このプロリン特異的プロテアーゼのみを含有した。サンプルB1は、プロリン特異的プロテアーゼ+5グラムの水に希釈した1140mgの濃Flavourzyme液を含有する38マイクロリットルの溶液を含有した。サンプルB2では、プロリン特異的プロテアーゼを8マイクロリットルのこのFlavourzyme溶液と組み合わせた。サンプルC1では、プロリン特異的プロテアーゼを100マイクロリットルのCorrolase LAP液と組み合わせた。サンプルC2では、プロリン特異的プロテアーゼを、Corrolase LAP液の10倍希釈サンプルの10マイクロリットルと組み合わせた。5つのサンプルすべてにおいて、インキュベーションを、6時間、50℃で進行させた。酵素反応は、混合物を5分間、90℃まで加熱することによって終結させた。エッペンドルフ(Eppendorf)遠心機における10分間の遠心分離後に得られる澄明な上清を回収し、LC/MS/MS分析まで凍結保存した。LC/MS/MS分析後に得られるデータを表5に示す。
【0146】
先に実証したように、サンプルA1(プロリン特異的プロテアーゼだけが存在する)のインキュベーション条件は、LPPならびにVVVPPを効率的に作製するが、有意な量のVPPは作製しない。ペプチドVVVPPFが存在しない場合、プロリン特異的プロテアーゼが、適用される条件下でプロリン残基のカルボキシ末端を効率的に切断することが例示される。サンプルA1では、IPPの収量は、VVVPPの収量の約3分の1である。しかし、プロリン特異的プロテアーゼと、Flavourzyme(サンプルB1およびB2)またはCorrolase LAP(サンプルC1)のいずれか一方とを組み合わせると、IPP収量に対して明確な刺激効果を及ぼす。おそらく、アミノペプチダーゼ活性の濃度は、プロリン特異的プロテアーゼによって形成されるすべてのQNIPPを変換するのに不適切であったため、サンプルC2(低濃度のCorrolase LAPを伴う)では、IPPの収量は増加しなかった。1グラムのカゼインは、理論的に6.9mg(21.1マイクロモル)のIPP(β−カゼイン+κ−カゼイン由来)を産出することができるため、サンプルB1およびC1に存在するIPPレベルは、それぞれ、入手可能な最大収量のそれぞれ70%および55%を表す。本発明者らの予想に従って、増加しているアミノペプチダーゼ活性は、VVVPP濃度の降下およびVPP濃度の増加を生じる。少量の中間ペプチドVVPPがサンプルB2およびC2において検出可能であるという事実は、これらのサンプルにおいて、アミノペプチダーゼ活性が、プロリン特異的プロテアーゼによって形成されるVVVPPをVPPに十分に変換するのには不適切であることを示す。1グラムのカゼインは、理論的にサンプルB1、B2およびC1において4.58mg(14.7マイクロモル)のVPPを産出することができるため、最大のVPP収量が達成される。
【0147】
結論として、本実験は、プロリン特異的プロテアーゼと適切なアミノペプチダーゼ活性との組み合わせは、単一の酵素インキュベーション工程および50℃もしくはそれ以上の温度で、高濃度のACE阻害ペプチドを効率的に作製することができることを明らかに実証する。
【0148】
【表5】

【0149】
実施例9
ACE阻害ペプチドの生成において所望するおよび混入している酵素活性の定量
本発明に従えば、ACE阻害ペプチドは、簡単な1工程プロセスにおいて、プロリン特異的エンドプロテアーゼ+アミノペプチダーゼとのインキュベーションによって、カゼイン基質から選択的にIPP、VPPおよびLPPを回収することにより得ることができる。これらの可溶化されたACE阻害ペプチドの以後の富化は、酸性化または水混和性有機溶媒を添加することによって、残留するより大きな分子量のタンパク質を沈殿させることによって達成される。この選択的回収プロセス中の任意の混入するエンドプロテアーゼまたはカルボキシペプチダーゼの存在は、最終的なトリペプチド混合物の品質にネガティブに影響する。例えば、非プロリンまたは非アラニン特異的エンドプロテアーゼの存在は、さらなる非生物活性ペプチドの可溶化をもたらし、これによって、最終濃縮物におけるIPP、LPPおよびVPPの相対濃度が希釈される。さらに、例えば、カルボキシペプチダーゼのような混入するエキソプロテアーゼの存在は、増加したレベルの遊離アミノ酸を有するACE阻害ペプチドを生じる。これらの余剰遊離アミノ酸はまた、IPP、LPPおよびVPPの相対濃度を希釈し、さらに、メイラード(Maillard)反応の増加の結果としてブロスの不用な味(off−taste)を付与する。これらのすべての所望されない副反応を最小限にするために、本質的に純粋なプロリン特異的プロテアーゼと本質的に純粋なアミノペプチダーゼとの組み合わせが好適である。使用されるインキュベーション条件下で混入するエンドプロテアーゼならびに混入するカルボキシペプチダーゼの活性が最小限であるかまたは好ましくは存在しない本質的に純粋な。以下の試験手順は、そのような混入するエンド−およびカルボキシペプチダーゼ活性を定量するために考案した。
【0150】
試験手順のための基礎は、多様な選択的発色ペプチドのコレクションによって形成される。プロリン特異的オリゴ−およびエンドプロテアーゼのみが、ペプチドZ−AAAP−pNAからpNAを放出することができるため、この特定のペプチドを使用して、所望されるプロリン特異的エンド型プロテアーゼ活性を定量した。多くのエンドプロテアーゼはペプチドZ−AAAF−pNAおよびZ−AAAR−pNAからpNAを放出することができるため、これらの2つのペプチドを使用して、混入する非プロリン特異的エンド型プロテアーゼ活性を定量した。ペプチドQNIPPおよびVVVPPのそれぞれIPPおよびVPPの変換は、効率的にGlnおよびVal残基を取り出すアミノペプチダーゼを必要とするため、ペプチドQ−pNAおよびV−pNAを使用して、所望されるアミノペプチダーゼ活性を定量した。多くのカルボキシペプチダーゼは、ペプチドからPheおよびArg残基を遊離することができるため、これらの残基を含有するペプチドを選択して、混入するカルボキシペプチダーゼ活性を定量した。しかし、カルボキシペプチダーゼ活性を測定するための適切な発色基は利用可能でないため、合成ペプチドZ−AFおよびZ−ARを使用する代替的方法は開発されていない。代替的方法は下記に提供する。使用されるすべての合成ペプチドにおいて、「Z」は、ベンジルオキシカルボニルを表し、「pNA」は発色パラ−ニトロアニリドを表す。すべての発色ペプチドは、Pepscan(Lelystad、蘭国)から入手した。ペプチドZ−AFおよびZ−ARは、Bachem(瑞国)から購入した。すべてのインキュベーションは40℃で行った。希釈した酵素調製物を商業製品の濃度に対して再計算した。
【0151】
アミノペプチダーゼ活性の測定
100%DMSO中150mmol/lのV−pNAおよびQ−pNAのストック溶液を、0.1M BisTris緩衝液、pH6において80倍希釈して、V−pNAおよびQ−pNAを1:1比で含有する3.75mmol/l V−pNA+Q−pNA基質溶液を作製した。このアミノペプチダーゼ基質溶液の200μlアリコートを、マイクロタイタープレート(MTP)の個別のウェルにピペッティングした。MTPを、Magellan4ソフトウェア下で稼動するTecan Genios MTP(Salzburg,Vienna)において、40℃でプレインキュベートした。50μlの適切な酵素溶液を添加することによって反応を開始し、3mMの基質濃度でインキュベーションを行った。典型的に、1:50希釈の液体酵素サンプルFlavourzyme、Corolase LAPおよびプロリン特異的エンドプロテアーゼを使用した。乾燥Sumizyme FP製品の1%溶液を使用した。
【0152】
405nmにおいてTecan Genios MTPにより測定され、アミノ酸−pNA結合の結果として発達する黄色を、少なくとも20回の動力学サイクル(kinetic cycle)(約10分間)について追跡した。ソフトウェアにより、OD405/minとして得られるデータが得られた。
【0153】
プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性の測定
この測定は、アミノペプチダーゼアッセイと本質的に同様に行ったが、この場合、Z−AAAP−pNAを唯一の基質として、3mmol/lの最終濃度で測定した。懸濁液を、pH6の緩衝液において50〜55℃に加熱することによって、この基質を可溶化し、室温で澄明な溶液を生じた。測定は40℃で行った。
【0154】
典型的に、1:50希釈の液体酵素サンプルFlavourzymeおよびCorolase LAPを使用した。Sumizyme FPを1%溶液で使用した。プロリン特異的エンドプロテアーゼは、典型的に、1:5000希釈で使用した。
【0155】
ソフトウェアにより、OD405/minとしてデータが得られた。
【0156】
混入する非プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性の測定
この測定もまた、アミノペプチダーゼアッセイについての記載と本質的に同様に行ったが、この試験では、1:1比および3mmol/lの最終濃度でZ−AAAF−pNAおよびZ−AAAR−pNAを基質として使用した。基質Z−AAAF−pNAは、使用したpH6.0の試験条件下で溶けにくくなるが、スブチリシンとの試験的インキュベーションでは、pNA放出に付随的に伴って基質の迅速な可溶化を生じた。測定は40℃で行った。しかし、この乏しい溶解度を補償するために、動力学サイクル(kinetic cycle)間において振盪するようにMTPリーダーをプログラムした。
【0157】
さらに、ソフトウェアにより、OD405/minとしてデータが得られた。
【0158】
混入するカルボキシペプチダーゼ活性の測定
カルボキシペプチダーゼ活性を測定するための感受性の発色ペプチドは利用可能でないため、カルボキシペプチダーゼCを定量するためのBoehringerプロトコルに基づく方法を使用した。
【0159】
Z−A−FおよびZ−A−Rのエタノール中の2つの150mmol/lストック溶液を、0.1mol/l BisTris緩衝液pH6において80倍希釈し、1:1比でZ−A−FおよびZ−A−Rを含有する3.75mmol/l Z−A−F+Z−A−R基質溶液を作製した。次いで、200μlの基質溶液をエッペンドルフバイアルにピペッティングし、40℃でプレインキュベートした。反応は、50μlの適切な酵素希釈液を添加することによって開始した。典型的に、FlavourzymeおよびCorolase LAPおよびプロリン特異的エンドプロテアーゼの1:50希釈を使用した。Sumizym FPでは1%溶液を使用した。5分後、250μlのニンヒドリン試薬を添加することによって、反応を停止した。ニンヒドリン試薬は、400mgニンヒドリン(Merck)および15ml DMSOに溶解した60mgヒドリンダンチンから作製し、これに、5mlの4.0mol/l酢酸リチウム緩衝液pH5.2を添加した。4.0mol/l酢酸リチウム緩衝液は、LiOH(Sigma)を溶解し、その後、氷酢酸(Merck)を使用して、溶液のpHをpH5.2に調整することによって作製した。
【0160】
反応を停止した後、各サンプルを15分間、95℃で加熱して、色の形成を容易にし、その後、純粋なエタノールで10倍希釈した。形成した色を、578nmでUvikon分光光度計において測定した。活性サンプルと同じ様式でブランクを作製したが、ニンヒドリン試薬および酵素添加は逆の順序で行った。カルボキシペプチダーゼ活性によって作製される遊離アミノ酸の量を定量するために、アミノ酸L−フェニルアラニンを使用して、検量線を作成した。0.1875、0.375、0.75、1.5および3.0mmol/lのL−フェニルアラニン(Sigma)を含有する緩衝液pH6における溶液を、サンプル、即ちバイアル中250μlと同じ様式で処置した。得られたOD578値から、エクセル(Excel)において曲線を構築した。Z−A−FおよびZ−A−R基質を含有するサンプルに存在する遊離アミノ酸の濃度を、この曲線を使用して算出した。得られた値から、試験した酵素の量あたり1分間のマイクロモルで、カルボキシペプチダーゼ活性を算出した。
【0161】
活性比の算出
本発明に従うプロセスのための多様な酵素調製物の適合を確立するために、関連する酵素活性の指数を算出した。MTPリーダーに基づくアッセイでは、酵素活性を、経時的なpNA放出、即ち?OD405/minとして特徴付けた。MTPリーダーによって得られる酵素活性の指数を、同一量の酵素に対して得られる?OD/min値を単純に除することによって算出した。
【0162】
しかし、カルボキシペプチダーゼアッセイの場合、MTP−pNAに基づくアッセイによって生じる?OD/minと直接比較することができないODが生じる。ここで、測定したODを、最初に、1分間あたりに放出されたμmolアミノ酸(μmol/min)に変換した。次いで、放出されたpNAの?OD/minを、μmol/minに変換した。そのために、MTPリーダーにおいて検量線を作成したが、ここでは、純粋なpNA(Sigma)の希釈、ウェルあたり0.25、0.125、0.0625、0.0312および0.015mmol/lおよび250μlを測定した。得られたデータから、エクセル(Excel)において検量線を構築した。この検量線から、pNAに基づく測定値を、ニンヒドリンに基づく測定値と比較し得るように、?OD/minをμmol/minに変換した。
【0163】
上記の試験において作成されたデータに基づいて、使用した多様な酵素調製物を、所望のプロリン特異的およびアミノペプチダーゼ活性ならびに混入するエンドプロテアーゼおよびカルボキシペプチダーゼ活性について特徴付けした。さらに、50℃で6時間のインキュベーション期間後のACE阻害ペプチドの至適放出を生じる、実施例8において使用し、1グラムのカゼインあたり4単位のプロリン特異的エンドプロテアーゼおよび130マイクロリットルのCorolase LAPの混合物よりなる酵素の組み合わせC1を、この方法で特徴付けした。提供される各酵素調製物に存在するプロリン特異的オリゴ−またはエンド型プロテアーゼ活性に関するデータを、表6のカラム「Prol Spec活性」に示す。所望されるアミノペプチダーゼ活性(AP/Prol Spec Act)ならびに混入するカルボキシペプチダーゼ(CPD/Prol Spec Act)およびエンド型プロテアーゼ活性(Endo/Prol Spec Act)に関するデータを、存在するプロリン特異的活性に対して示す。各調製物において存在する混入するカルボキシペプチダーゼ活性に対する所望されるアミノペプチダーゼ活性を(AP/CPD)として示す。
【0164】
試験した市販の酵素調製物のうち、任意の有意なプロリン特異的オリゴ−またはエンド型プロテアーゼ活性を含有するものはないことは明らかである。さらに、試験したすべての市販の酵素調製物は、混入するカルボキシペプチダーゼおよびエンド型プロテアーゼ活性を含有する。高収量のACE阻害IPP、VPPおよびLPPペプチドを生じる酵素の組み合わせC1は、その極めて低レベルの混入するカルボキシペプチダーゼおよびエンド型プロテアーゼ活性のため、卓越している。
【0165】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのタンパク質配列において−I−P−P−および−V−P−P−配列を含んでなるタンパク質供給源からIPPおよびVPPを生成するための方法であって、ここで、タンパク質供給源において存在する−I−P−P−配列の少なくとも40%がペプチドIPPに変換され、タンパク質供給源において存在する−V−P−P−配列の少なくとも40%がペプチドVPPに変換され、プロリンのカルボキシ末端で切断するタンパク質分解酵素、好ましくは、プロリン特異的エンドプロテアーゼまたはプロリン特異的オリゴペプチダーゼ、より好ましくは、プロリン特異的エンドプロテアーゼ、ならびにアミノペプチダーゼの使用を含んでなる、方法。
【請求項2】
プロリンのカルボキシ末端で切断する前記タンパク質分解酵素および前記アミノペプチダーゼは、好ましくは、単一の工程において共にインキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質供給源はそのタンパク質配列において−L−P−P−配列を含んでなり、前記タンパク質供給源において存在する−L−P−P−配列の少なくとも40%はペプチドLPPに変換される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
インキュベーション時間は24時間未満、好ましくは、10未満、より好ましくは、4時間未満である、請求項2〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
インキュベーション温度は、30℃より高い、好ましくは、40℃より高い、より好ましくは、50℃より高い、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
乳タンパク質、好ましくは、カゼインまたはカゼイン酸塩、より好ましくは、カゼイン酸カリウム、カゼイン酸カルシウム、カゼイン酸マグネシウムもしくはカゼイン酸アンモニアが使用される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
タンパク質配列において存在する−I−P−P−または−V−P−P−配列は少なくとも50%がペプチドIPPまたはVPPに変換され、好ましくは、少なくとも60%がペプチドIPPまたはVPPに変換される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
選択されたpH条件下における沈殿による加水分解したタンパク質からのIPPおよびVPPを含む可溶性ペプチドの分離をさらに含んでなり、pHを、前記加水分解したタンパク質の部分が、好ましくは、3.5〜6の間、より好ましくは、4〜5の間のpHで沈殿するpHに変更すること、および前記溶解したペプチドから前記沈殿した材料を分離することを含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
加水分解したタンパク質からの可溶性ペプチドの分離をさらに含んでなり、水混和性溶媒を加水分解したタンパク質に添加すること(ここで、加水分解したタンパク質の部分が沈殿する)、および前記溶解したペプチドから前記沈殿した材料を分離することを含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アミノペプチダーゼが、前記溶解したペプチドに添加される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
乾燥物において15〜30%(w/w)、好ましくは、18%(w/w)より高い、より好ましくは、20%(w/w)より高いプロリン含量を有する酸性または溶媒沈殿プロセスによって得られる高血圧の処置に適するペプチド組成物。
【請求項12】
5〜20mg/g VPP(乾燥物およびタンパク質において)、5〜20mg/g IPP(乾燥物およびタンパク質において)ならびに場合により5〜20mg/g LPP(乾燥物およびタンパク質において)
を含んでなるペプチド組成物。
【請求項13】
少なくともカルボキシ末端のプロリンを含有する15〜50%(wt乾燥物)ペプチドを含んでなり、少なくとも5mg/g VPP(乾燥物およびタンパク質において)、少なくとも5mg/g IPP(乾燥物およびタンパク質において)ならびに場合により少なくとも5mg/g LPP(乾燥物およびタンパク質において)を含んでなるペプチド組成物。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって得られるペプチド組成物。
【請求項15】
タンパク質からIPPおよびVPPを生成するためのプロリン特異的エンドプロテアーゼ、またはプロリン特異的オリゴペプチダーゼならびにアミノペプチダーゼの使用であって、ここで、タンパク質供給源において存在する−I−P−P−配列の少なくとも40%はペプチドIPPに変換され、タンパク質供給源において存在する−V−P−P−配列の少なくとも40%はペプチドVPPに変換される、使用。
【請求項16】
健康の改善または疾患の防止および/もしくは処置のためのニュートラシューティカル、好ましくは、医薬品の製造のため、あるいは高血圧(高血圧症)、心不全、前糖尿病もしくは糖尿病、肥満、耐糖能異常またはストレスのような疾患の処置または防止のためのニュートラシューティカル、好ましくは、医薬品の製造のための、ニュートラシューティカル、好ましくは、医薬品としての請求項11〜14のいずれか一項に記載の組成物あるいは請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
前記組成物は、栄養補助食品の形態、ローション、ゲルもしくは乳液の形態での局所アプリケーションを含むパーソナルケアアプリケーションの形態、または食物、飼料もしくはペットフード成分としてある、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
肥満の防止または体重管理のための機能性食品の製造のための請求項11〜14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
循環器系健康維持のための機能性食品の製造のための請求項11〜14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
前記循環器系健康維持はアンジオテンシン変換酵素の阻害を含んでなる、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記循環器系健康維持は血中コレステロールレベルの管理を含んでなる、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
健康的便益をその消費者に提供することが可能な機能性食品であって、前記健康的便益は肥満の防止、体重管理および循環器系健康維持から選択され、請求項11〜14のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、機能性食品。
【請求項23】
前記循環器系健康維持の便益は、アンジオテンシン変換酵素の阻害および/または血中コレステロールレベルの管理を含んでなる、請求項22に記載の機能性食品。
【請求項24】
50〜200mmol/kg Kおよび/または15〜60mmol/kg Ca2+および/または6〜25mmol/kg Mg2+を含んでなる、請求項22または23のいずれか一項に記載の機能性食品。
【請求項25】
110〜135mmol/kg Kおよび/または35〜45mmol/kg Ca2+および/または13〜20mmol/kg Mg2+、請求項24に記載の機能性食品。
【請求項26】
1つもしくはそれ以上のB群ビタミンを含んでなる、請求項22〜25のいずれか一項に記載の機能性食品。
【請求項27】
葉酸、ビタミンB6およびビタミンB12を含んでなる、請求項26に記載の機能性食品。
【請求項28】
3〜25wt%ステロール、より好ましくは、7〜15wt%ステロールを含んでなる、請求項22〜27のいずれか一項に記載の機能性食品。
【請求項29】
(a)請求項1〜10のいずれか一項に記載のIPPおよびVPPを含んでなる組成物の生成、ならびに
(b)前記IPPおよびVPP含有組成物の食品、飲料製品または栄養補助食品への組み入れ、
を含んでなる、食品、飲料製品または栄養補助食品を調製するための方法。
【請求項30】
工程aにおいて、乳タンパク質、好ましくは、カゼインが使用される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
加水分解したタンパク質からペプチドを精製するための工程c)もまた含んでなり、加水分解したタンパク質は選択されたpH条件下で沈殿することが可能であり、pHを、前記加水分解したタンパク質が沈殿するpHに変更すること、および前記沈殿したタンパク質を前記ペプチドから分離することを含んでなる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
工程cは、工程a)の後および工程b)の前に行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記食品、飲料製品または栄養補助食品は、マーガリン、スプレッド、バター、乳製品あるいは乳漿含有飲料、好ましくは、ヨーグルトもしくは乳汁のようなヨーグルトまたは乳汁に基づく製品の群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
請求項29〜33の一項以上に記載の方法によって得られる食品、飲料製品または栄養補助食品。
【請求項35】
0.05〜10wt%、より好適には、0.1〜5wt%、最も好適には、0.2〜4wt%の前記IPPおよびVPP含有組成物を含んでなる、請求項34に記載の食品、飲料製品または栄養補助食品。
【請求項36】
100グラムの製品あたりそれぞれ0.05〜50mgのIPPおよびVPP、より好適には、0.1〜40mg、最も好適には、0.2〜30mgを含んでなる、請求項34または35に記載の食品、飲料製品または栄養補助食品。
【請求項37】
IPP対VPPの重量比が3:1〜1:4、より好適には、2:1〜1:3である、請求項34〜36の一項以上に記載の食品、飲料製品または栄養補助食品。
【請求項38】
ヒトの高血圧症を軽減するための使用のための請求項34〜37の一項以上に記載の食品、飲料製品または栄養補助食品。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−65658(P2012−65658A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−228041(P2011−228041)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【分割の表示】特願2007−547501(P2007−547501)の分割
【原出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PENTIUM
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】