説明

単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具

【課題】本発明は、単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具の提供にある。
【解決手段】ゼンマイを捲き締め原動力を蓄積する単一のゼンマイ機構と、前記ゼンマイ機構のゼンマイ軸に連係して回転する往復動変換用係合部と係合する連係子を介して往復動するスライド作動板と、前記スライド作動板上に駆動ピンを配備し、該駆動ピンに連係する連係従動部材を作動させる第1アクション機構と、前記スライド作動板上にカム部を設け、該カム部に連接する連接従動部材を作動させる第2アクション機構と、前記スライド作動板にスライド操作部を形成し、前記スライド操作部を被操作部間に介入し、その介入巾厚により被操作部に関連する介入連動部材を作動させる第3アクション機構とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押し移動による車輪の回転又は糸引きによるドラムの回転によりゼンマイを巻き締める単一ゼンマイ機構を原動力とする複数アクション連係作動玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
本特許出願人は、先に特許文献1に開示するような手押し移動による車輪の回転又は糸引きによるドラムの回転によりゼンマイを巻き締める第1ゼンマイ機構と第2ゼンマイ機構を玩具体に搭載し、1又は2以上の第1アクションを前記第1ゼンマイ機構又は第2ゼンマイ機構の解弾回転力により作動し、その作動に関与しない前記第1ゼンマイ機構又は第2ゼンマイ機構を待機させ、第1アクションの完了と共に、その待機する前記第1ゼンマイ機構又は第2ゼンマイ機構を解弾し、その解弾回転力により1又は2以上の第2アクションを作動してなる複数アクション連係作動玩具装置を提案している。
【0003】
特許文献2には、車輪と、前記車輪の回転動力を動力源として動作する扉と、前記車輪の回転動力を前記扉に伝達する動力伝達機構と、前記動力伝達機構の構成部品の1つであって前記車輪が回転する際に前記動力伝達機構の他の構成部品同士を連結させて前記車輪の回転力を前記扉に伝達させる遠心クラッチと、前記車輪の回転が停止する際に前記遠心クラッチによって前記動力伝達機構の他の構成部品同士の連結が解除された場合に前記扉を初期位置に復帰させる付勢手段と、前記車輪が回転している時の前記扉の動作範囲を規制する動作範囲規制手段が設けられ、前記動作範囲規制手段が働いている間、前記車輪の回転動力の前記扉への伝達を遮断する他のクラッチが前記動力伝達機構の他の構成部品として設けられ、前記車輪の回転が停止している時に扉が開き、前記車輪の回転が回転している時に扉が閉まるように構成されている車両玩具における扉の開閉機構が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−275475号公報
【特許文献2】特開2006−6625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記本特許出願人が提案した特許文献1の複数アクション連係作動玩具装置は、第1と第2のゼンマイ機構を玩具体に搭載するものであるため、ゼンマイ機構を2台必要とし、低価格玩具においてコストアップを生じさせるものである。
【0006】
前記特許文献2は、車輪が回転している時に、その回転力を伝達して扉が閉まるように構成するため、車輪が回転している間、駆動力が減殺され、単一のゼンマイ機構の玩具では、例えば走行玩具では、本来の作動である走行動力への供給を阻害する欠点がある。
【0007】
本発明は、前記特許文献2の扉が閉まるような停止アクションに回転力を伝達しないで、次のアクションに全回転力を供給し、単一ゼンマイ機構が持つ能力を可及的最大に発揮させ、単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具の提供を目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
手押し移動による車輪の回転又は糸引きによるドラムの回転によりゼンマイを捲き締め原動力を蓄積する単一のゼンマイ機構と、前記ゼンマイ機構のゼンマイ軸に連係して回転する往復動変換用係合部と係合する連係子を介して往復動するスライド作動板と、前記スライド作動板上に駆動ピンを配備し、該駆動ピンに連係する連係従動部材を作動させる第1アクション機構と、前記スライド作動板上にカム部を設け、該カム部に連接する連接従動部材を作動させる第2アクション機構と、前記スライド作動板にスライド操作部を形成し、前記スライド操作部を被操作部間に介入し、その介入巾厚により被操作部に関連する介入連動部材を作動させる第3アクション機構とからなる単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具ある。
【0009】
前記往復動変換用係合部は、前記ゼンマイ機構のゼンマイ軸に連係して回転する従動歯車の軸を中心とする半径円上に互いに等間隔に複数本が配備される往復動変換用ピンから構成されるものとしてもよいものである。
【0010】
前記スライド作動板は、基端が支軸により回転自在に支承され、かつバネにより先端を前記往復動変換用ピンの回転通路内に移動するように付勢される連係子が支架され、該連係子の先端の対応面に具える係合溝を回転して出会う前記往復動変換用ピンの一つと係合して該往復動変換用ピンの回転方向に移動するように構成されるものとしてもよいものである。
【0011】
前記駆動ピンは、連係部材として、中心が支軸に軸支されて回転自在に配備される連動板の一方端に開口する連係孔に嵌挿され、前記駆動ピンの往復動で連動板が、その支軸を中心に回動され、該連動板の一方端と他方端に連係するドア板を往復動させる第1アクション機構としてのドア板往復機構が配備されるものとしてもよいものである。
【0012】
前記カム部には、連接従動部材としてリミットスイッチを対設し、スライド作動板の往復動により連接して開閉される第2アクション機構としての表示灯を点灯する電気回路が構成されるものとしてもよいものである。
【0013】
前記スライド操作部は、ゼンマイ巻き上げ時に一方向にスライドさせ、該スライド操作部が常時バネ圧で定位置に保持される停車用バネ押圧板と停車用昇降輪と頂部面との間に介入され、停車用昇降輪を介入厚巾分のバネ圧により押下げ、停車用昇降輪の遊転輪を下方に突出して走路面に連接し、前記ゼンマイ機構と連係して回転する駆動車輪を走路面より離間させて駆動力を伝達しないで停車状態を維持し、スライド作動板が他方向にスライドする時にスライド操作部の介入を解除して駆動車輪を走路面に接面して玩具を走行させる第3のアクション機構を作動させてなるものとしてもよいものである。
【0014】
手押し移動による車輪の回転又は糸引きによるドラムの回転によりゼンマイを捲き締め原動力を蓄積する単一のゼンマイ機構と、前記ゼンマイ機構のゼンマイ軸に連係して回転する従動歯車の軸を中心とする半径円上に互いに等間隔に複数本が配備される往復動変換用ピンと、該往復動変換用ピンの回転方向に対応して往復自在に配備されるスライド作動板と、該スライド作動板には、基端が支軸により回転自在に支承され、かつバネにより先端を前記往復動変換用ピンの回転通路内に移動するように付勢されて連係子が支架され、該連係子の先端対応面に具えた係合溝を回転して出会う前記往復動変換用ピンの一つと係合して往復動変換用ピンの回転方向に移動するように構成され、前記スライド作動板上に駆動ピンが配備され、中心が支軸に軸支されて回転自在に配備される連動板の一方端に開口する連係孔に前記駆動ピンが嵌挿され、前記駆動ピンの往復動で支軸を中心に回動し、該連動板の一方端と他方端に連係するドア板を往復動するドア板往復機構と、前記スライド作動板上にカム部を設け、該カム部に連接するリミットスイッチを対設し、スライド作動板の往復動により連接して開閉される表示灯を点灯する電気回路と、前記スライド作動板にスライド操作部が形成され、ゼンマイ巻き上げ時にスライド作動板を一方向にスライドさせ、スライド操作部がスライドして常時バネ圧で定位置に保持される停車用バネ押圧板と停車用昇降輪の頂部面との間に介入し、停車用昇降輪を介入厚巾分のバネ圧により押下げ、停車用昇降輪の遊転輪を下方に突出して走路面に連接し、前記ゼンマイ機構と連係して回転する駆動車輪を走路面より離間させて駆動力を伝達しないで停車状態を維持し、スライド作動板が他方向にスライドする時にスライド操作部の介入を解除して駆動車輪を走路面に接面して玩具を走行させる走行機構からなる単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具としてもよいものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ゼンマイ軸に連係して回転する往復動変換用係合部と係合する連係子を介して、その往復動変換用係合部の回転方向に一度ずつスライド作動板を確実に往復動させることができるものである。
【0016】
前記往復動変換用係合部は、従動歯車の軸を中心とする半径円上であって、互いに等間隔に離隔して複数本が配備される往復動変換用ピンによるから、半回転又は複数本分の1回転で連係子の係合溝に係合して回転方向に一度ずつスライド作動板を往復動させることができる。そして、それ以降に対応する往復動変換用ピンは連係子の係合溝に係合することがないのでゼンマイの解弾回転力を減殺することがない。
【0017】
ゼンマイを巻き上げた玩具から手を離した場合、第3のアクション機構の駆動車輪が回転しても、走路面と離隔しているので、第1、第2アクションが終了するまで第3のアクション機構の始動を停止させることができ、その後は第1、第2アクションへの伝動を遮断して第3のアクション機構へのみ伝動するのでゼンマイの解弾回転力を減殺することがなく、単一ゼンマイ機構の能事を最大限発揮し、第3のアクションである走行距離を延すことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動走行車両玩具の実施例であって、ドア部板により乗降口を閉鎖した状態の側面図である。
【図2】図2は、同じく、ドア部板により乗降口を開放した状態の側面図である。
【図3】図3は、同じく、車体の外殻を外して内部機構を示す平面図である。
【図4】図4は、同じく、内部機構を示す右側面図である。
【図5】図5は、同じく、ドア部板を外して内部機構を示す右側面図である。
【図6】図6は、同じく、車体の外殻を外して、ドア部板が配備される側と反対側からの内部機構を示す左側面図である。
【図7】図7は、同じく、車体の外殻を外して内部機構を示す中央縦断面図である。
【図8】図8は、単一ゼンマイ機構を縦断しゼンマイ軸と駆動車輪の連係状態を示す説明図である。
【図9】図9は、スライド作動板単体の右側面図である。
【図10】図10は、同じく、スライド作動板単体の平面図である。
【図11】図11は、ドア部板の実施例として前方ドア部板と後方ドア部板の組合状態の内側面図である。
【図12】図12は、同じくドア部板の実施例として前方ドア部板と後方ドア部板が車体の外殻の前方側乗降口と後方側乗降口に対して閉鎖状態にある場合を示す説明側面図である。
【図13】図13は、同じく、図12のA−Aに沿う断面説明図である。
【図14】図14は、ドア部板の実施例として前方ドア部板と後方ドア部板が車体の外殻の前方側乗降口と後方側乗降口に対して開放状態にある場合を示す側面図である。
【図15】図15は、同じく、図14のB−Bに沿う断面説明図である。
【図16】図16は、車両をバックさせ、ゼンマイ機構のゼンマイ軸を巻締める時の各部の作動状態を示す説明図である。
【図17】図17は、同じく、停車用バネ押圧板を持ち上げて巻締める時の各部の作動状態を示す説明図である。
【図18】図18は、同じく、ゼンマイを巻締め、スライド作動板を後退位置までスライドさせた状態を示す説明図である。
【図19】図19は、同じく、さらに、ゼンマイを巻締める状態を示す説明図である。
【図20】図20は、同じく、車両から手を離した瞬間の状態を示す説明図である。
【図21】図21は、ピン車の往復動変換用ピンが連係子の係合溝に嵌合し、スライド作動板を前進し、ドア部板の閉鎖移動への作動状態を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
手押し移動による車輪の回転又は糸引きによるドラムの回転によりゼンマイを捲き締め原動力を蓄積する単一のゼンマイ機構と、前記ゼンマイ機構のゼンマイ軸に連係して回転する従動歯車の軸を中心とする半円上に、互いに等間隔に複数本が配備される往復動変換用ピンと、該往復動変換用ピンの回転方向に対応して往復自在に配備されるスライド作動板と、該スライド作動板には、基端が支軸により回転自在に支承され、かつバネにより先端を前記往復動変換用ピンの回転通路内に移動するように付勢されて連係子が支架され、該連係子の先端対応面に具えた係合溝を回転して出会う前記往復動変換用ピンの一つと係合して往復動変換用ピンの回転方向に夫々移動するように構成され、前記スライド作動板上に駆動ピンが配備され、連係部材として、中心が支軸に軸支されて回転自在の配備される連動板の一方端に開口する連係孔に前記駆動ピンが嵌挿され、前記駆動ピンの往復動で支軸を中心に回動し、該連動板の一方端と他方端に連係するドア板を往復動させるドア板往復機構と、前記スライド作動板上のカム部を設け、該カム部に連接するリミットスイッチを対設し、スライド作動板の往復動により連接して開閉される表示灯を点灯させる電気回路と、前記スライド作動板にスライド操作部が形成され、ゼンマイ巻き上げ時にスライド作動板を一方向にスライドさせ、スライド操作部がスライドしてバネ圧で定位置に保持される停車用バネ押圧板と停車用昇降輪と頂部面との間に介入し、停車用昇降輪を介入厚巾分のバネ圧により押下げ、停車用昇降輪の遊転輪を下方に突出して走路面に連接し、前記ゼンマイ機構と連係して回転する駆動車輪を走路面より離間させて駆動力を伝達しないで停車状態を維持し、スライド作動板が他方向にスライドする時スライド操作部の介入を解除して駆動車輪を走路面に接面して玩具を走行させる走行機構からなる単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具を実施例である図面により説明すると、本発明の実施例の単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動走行車両玩具1は、車体2を掴んでバックさせると、駆動車輪3のバック回転でゼンマイ機構4のゼンマイ軸5を回転してゼンマイ6を巻締め、走行原動力を蓄積し、このゼンマイ6を巻締めるゼンマイ軸5の回転を利用して車体2の前方側ドア板9と後方側ドア板10を移動し、前方側ドア板9には閉鎖ドア絵9aと乗客絵9bが、後方側ドア板10には、同じく閉鎖ドア絵10aと乗客絵10bが夫々表示されているので、車体の前方側乗降口7には乗客絵9bを、後方側乗口8には乗客絵10bを夫々対応するので第1のアクションであるドア開口状態を作動し、同時に第2のアクションである車体2のドア開閉表示灯11を点灯し、さらに、駆動車輪3の近傍に、下端に遊転車輪12を有する停車用昇降輪13を昇降自在に配備し、該停車用昇降輪13を発車・停車操作部14の操作により停車用バネ押圧板15のバネ圧を掛けて下方に突出し、前記駆動車輪3を走路面16より上方に離隔し、発車・停車操作部14の操作が終了して停車用バネ押圧板15のバネ圧を解消すると、前記駆動車輪3が接地して車両1を発車する第3のアクションが設けられており、車体2を掴んだ手を離すと、車体2は、ゼンマイ機構4が開放されて解弾回転を開始し、発車・停車操作部14の操作により停車用バネ押圧板15のバネ圧で停車用昇降輪13は降下して前記駆動車輪3を走路面16より上方に離隔し、駆動車輪3を回転しても停車状態を維持し、次にゼンマイ軸5の解弾回転で車体2の前方側ドア板9と後方側ドア板10を反対に移動して前記前方側乗降口7には閉鎖ドア絵9aを、後方側乗降口8には閉鎖ドア絵10aを夫々対応させてドア閉鎖状態を作動し、車体2のドア開閉表示灯11を消灯し、そして、停車用昇降輪13に対する発車・停車操作部14の操作でバネ圧が解除されるので、停車用昇降輪13は、フリーとなり、駆動車輪3は走路面16に接面し、ゼンマイ機構4の走行原動力で解弾するまで走行するものである。
【0021】
車体2は、車台部2aと外殻部2bから設けられ、車台部2aには前方側に遊転する前車輪17、後方側に前記駆動車輪3が配備され、駆動車輪3は車台板2aに装置したゼンマイ機構4に連係している。
【0022】
前記ゼンマイ機構4は、図8に示すように、前記駆動車輪3を両端に具えた駆動車輪軸18を回転自在に支承するケーシング19に配備され、該ケーシング19のゼンマイ軸5には親大径歯車20と親小径歯車21が同軸上に一体に取付けられ、前記駆動車輪軸18上に設けたピニオン22と、前記ケーシング19に設けた定点中間軸23に遊転支承した中間歯車24の大径歯車部24aとが噛合し、前記中間歯車24の上方側の位置に、中間歯車24の定点中間軸23を中心とする半径で開孔した弧状軸受孔25に軸部26aが支承され、前記大径歯車部24aと常時噛合する巻締め連係歯車26が配備され、車体2を図8に表示する「イ」の方向へ進めて駆動車輪3を「R」の方向に回転させたとき、巻締め連係歯車26と、親小径歯車21を噛合させ、ゼンマイ軸5を回転してゼンマイ6を巻き締めるように設けている。
【0023】
前記ゼンマイ機構4は、前記ケーシング19には、前記中間歯車24の上方側の位置に、ゼンマイ軸5を中心とする半径で弧状軸受孔27を開孔し、軸部28bとピニオン部28a1と大径歯車部28a2が一体に設けられる解弾連係歯車28の軸部28bが前記弧状軸受孔27に支承され、前記ピニオン部28a1が前記親大径歯車20に常時噛合され、前記大径歯車部28a2が前記中間歯車24のピニオン部24bと、前記ゼンマイ6の解弾力で親大径歯車20が回転する時に噛合可能に設けられ、前記中間歯車24に回転を伝達し、中間歯車24の大径歯車部24aと前記駆動車輪軸18上に設けたピニオン22とは、常時噛合しているから回転を伝達して駆動車輪3を図8に表示する「F」の方向に回転して車体2を「ロ」の方向へ進行させるものである。
【0024】
前記中間歯車24の大径歯車部24aには、定速維持用歯車群29が噛合し、ゼンマイ6の解弾時に定速回転出力が得られるように構成される。前記定速維持用歯車群29について、さらに、詳細に説明すると、前記ケーシング19において、前記中間歯車24の定点中間軸23を中心とする半径円状に開孔された長孔29aに、軸部29bの両端が支承される調速クラッチ歯車29cの小径歯車部29c1が前記中間歯車24の大径歯車部24aに常時噛み合いかつその回転方向に調速クラッチ歯車29cの全体が移動自在に配備され、該調速クラッチ歯車29cの大径歯車部29c2は、ゼンマイの解弾時に、中間歯車24の回転を、ケーシング19に配備される増速歯車29dの小径歯車部29d1に噛み合って回転を伝達するように設けられ、該増速歯車29dには前記小径歯車部29d1と一体に大径歯車部29d2が設けられ、該大径歯車部29d2は、ケーシング19に配備される星形車29eの小径歯車部29e1に常時噛み合うように設けられ、該星形車29eは、ケーシング19に揺動自在に配備されたアンカー29fのパレット29f1、29f2と常時連係されて配備され、アンカー29fの作動で前記中間歯車24の回転が定速回転に調速されるように構成される。
【0025】
前記ゼンマイ軸5の左端をケーシング19の左側面より外方に延設して延設部5aを設け、該延設部5aに回転源用ピニオン30を取付けゼンマイ6の巻締め時と解弾時に作動する回転源を車体2に設け、車体2の支台31に回転自在に支承される従動歯車32を噛合し、該従動歯車32の一方の側面である左側面に軸部32aを中心する所定半径円上に、互いに等間隔に離隔して往復動変換用ピン33が横向きに複数本配列されるピン車34を一体に設ける。
【0026】
車体2の支台31には回転を前後にスライド可能に変換するスライド作動板35が支架される。
【0027】
前記スライド作動板35の前半部35aにおいて、スライド方向に案内長孔36が開口され、また、同前半部35aの下面35a1が支台31のスライド面31aに連接され、該スライド面31aに突設する規制部37が前記案内長孔36に嵌合され、規制部37の上面に外止ネジ38が取付けられる。
【0028】
前記スライド作動板35の前半部35aに左右に横断する軸受孔39を貫設した軸受部40が設けられ、連係子41の基端41aの軸受孔42に圧入して一体に設けられる支軸43を前記軸受部40の軸受孔39に遊嵌してスライド作動板35に装架し、該連係子41の基端41aの上面に上方に突設した連係子掛合部44と前記スライド作動板35の軸受部40より後方位置に設けたスライド作動板掛合部45に牽引バネ46が懸架され、連係子41をスライド作動板35の軸受孔39を中心として先端が下方へ、スライド作動板35を連係子41の支軸43を中心として後端を上方へ回動するように、夫々付勢している。
【0029】
前記連係子41は、下面が凸湾形に形成されると共に基端41aと先端の中間に上方に凹陥する係合溝47が形成される。
【0030】
前記支台31に左右方を規制する壁部48a、48aと上方を規制する天井部48bを有する後端ガイド部48が形成され、該後端ガイド部48に前記スライド作動板35の後半部35bに形成された前記発車・停車操作部14が嵌挿されてスライド作動板35は支台31にスライド自在に配備される。
【0031】
後端ガイド部48の天井部48bの上面に支軸49が立設され、該支軸49には、先端が下方に屈曲して延設される押え部15aを具える停車用バネ押圧板15が上下に昇降自在に軸支されると共に支軸49に嵌装され、かつ、支軸49の上端の外止50により規制される拡張バネ51の圧力を受けて停車用バネ押圧板15が下方へ後端ガイド部48の天井部48bの上面に接面するまで押え部15aが押圧するように設けられる。
【0032】
前記スライド作動板35の前半部35aの右側面35a3に起立する支板部52が起立設され、該支板部52の右側外面に駆動ピン53が横向きに一体に突設され、該駆動ピン53は支台31の右側面に設けた支軸54により中心部を軸支される連動板55の一方端55aに開口する連係孔56に内面側から嵌挿して関連するとともに、先端部53aを外方に突出し、該先端部53aを車体2の外殻部2bの右側壁部の後方乗降口8に対応する内側において前後に移動自在に配備される後方側ドア板10の連係溝57に嵌合している。
【0033】
前記連動板55の他方端55bの外面には、外方へ突設する連係ピン58が配備され、車体2の外殻部2bの右側壁部の前方乗降口7に対応する内側において前後に移動自在に配備される前方側ドア板9の連係溝59に前記連係ピン58が嵌合している。
【0034】
前記スライド作動板35の前半部35aの左側面35a2に斜形カム面60が形成され、前記ゼンマイ軸5の巻締め時の回転でスライド作動板35が後方にスライド移動されるとき、支台31に支持されるリミットスイッチ61を斜形カム面60で押圧して電気接点回路をONし、次にスライド作動板35が前方にスライド移動するときリミットスイッチ61から斜形カム面60が離れて電気接点回路をOFFするように設けられている。前記電気接点回路は、この実施例では前記ドア開閉表示灯11の点灯回路と接続している。なお、この電気接点回路は、図示しないがスピーカーより音声を発生する発車音発生回路とすることもできる。
【0035】
駆動車輪3の後方に案内空洞部62を車体2の車台部2aに設け、該案内空洞部62に前記停車用昇降輪13を上下にスライド可能に、遊転車輪12を下端開口62aから突出させて走路面に接面自在に支承し、停車用昇降輪13の頂部面13aに外止63が延設され、ケーシング19の上面に接触することでそれ以上の降下を止め、前記停車用昇降輪13の全体を車台部2aの下端開口62aから下方に脱落しないように設けている。
【0036】
前記ゼンマイ軸5の巻締め時の回転で回転源用ピニオン30が回転すると、従動歯車32を回転させるのでピン車34の往復動変換用ピン33を周回移動し、図16に示すように、連係子41の係合溝47に対応する往復動変換用ピン33が嵌合すると、往復動変換用ピン33の移動方向に連係子41を移動するから基端41aの支軸43が軸受されるスライド作動板35を後方へ移動させる。往復動変換用ピン33は、軸部32aを中心に同一半径円に沿って移動するから、図18の位置からは下方へ移動し、次の往復動変換用ピン33が上昇して連係子41に接して持ち上げるので、連係子41に追従することなく係合溝47より外れ、同じ方向に周回移動する往復動変換用ピン33は、後退位置の連係子41の係合溝47に係合することがないのでスライド作動板35は後退位置に停止した状態に維持され、さらに車両2を後退移動させることによってゼンマイ機構4のゼンマイ6を満杯まで巻締めることができる。
【0037】
スライド作動板35の後退移動により発車・停車操作部14が後端ガイド部48の天井部48bに支えられて下側を後方に移動し、後端を、停車用バネ押圧板15と停車用昇降輪13の頂部面13aとの間に差込み、発車・停車操作部14の厚み分だけ停車用昇降輪13を押し下げる。しかし、車体2はゼンマイ巻締めのため押え付けられているので、拡張バネ51による反発力により停車用昇降輪13は車体2に対して降下し、駆動車輪3を走路面より上昇して離すことができない。この状態で前記のように車両2を後退移動させることによってゼンマイ機構4のゼンマイ6を最大巻数まで巻締めることができる。
【0038】
ゼンマイ機構4のゼンマイ6の巻締めを停止して、車体2から手を離すと、駆動車輪3の抵抗が解除されるので、ゼンマイ6は解弾して、ゼンマイ軸5を回転し、駆動車輪3を回転する。しかし、前記のように、発車・停車操作部14が後端ガイド部48に差込まれているので、拡張バネ51による反発力により停車用昇降輪13は車体2に対して降下し、駆動車輪3を走路面より離隔するので、駆動力は走路面に伝達することができないので、その位置に停車状態を維持する。
【0039】
ゼンマイ軸5は巻締め時と反対方向に回転し、従動歯車32を反対方向に回転して、連係子41の係合溝47に始めに対応する往復動変換用ピン33が嵌合して往復動変換用ピン33の移動方向に連係子41を介してスライド作動板35を前方に移動する。このスライド作動板35の前進作動により、前方側ドア板9の閉鎖ドア絵9aが前方側乗降口7に、後方側ドア板10の閉鎖ドア絵10aが後方側乗降口8に対応するように移動するのでドア閉鎖状態に作動する。
【0040】
つぎに、斜形カム面60がリミットスイッチ61からはなれるので電気接点回路をOFFとし、ドア開閉表示灯11を消灯する。発車・停車操作部14は、前進して停車用バネ押圧板15から離れるので、この停車用バネ押圧板15に拡張バネ51のバネ圧はなくなり、停車用昇降輪13は車台部2aに対して降下しないので単に重力によるフリー回転になるので、回転する駆動車輪3が走路面に接面されて車体2は発車する。
【0041】
スライド作動板35は前進位置に止まるので、ピン車34が回転して往復動変換用ピン33が連係子41に下方から連接しても、また、連係子41の係合溝47に嵌合しても下方に離れるために、さらにスライド作動板35を前進移動させることがなく、ゼンマイ6の解弾力が開放するまで回転し、車体2を走行させることができる。
【0042】
本発明の単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動走行車両玩具は、後方へ移動するだけで前述の趣向ある作動を繰り返して楽しむことができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、単一ゼンマイ機構により、ストリー性のある趣向に富む複数アクション連係作動走行車両玩具を安価に提供でき、ゼンマイ玩具の市場の拡大に寄与するものである。
【符号の説明】
【0044】
1 単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動走行車両玩具
2 車体
2a 車台部
2b 外殻部
3 駆動車輪
4 ゼンマイ機構
5 ゼンマイ軸
5a 延設部
6 ゼンマイ
7 前方側乗降口
8 後方側乗降口
9 前方側ドア板
9a 閉鎖ドア絵
9b 乗客絵
10 後方側ドア板
10a 閉鎖ドア絵
10b 乗客絵
11 ドア開閉表示灯
12 遊転車輪
13 停車用昇降輪
13a 頂部面
14 発車・停車操作部
15 停車用バネ押圧板
15a 押え部
16 走路面
17 前車輪
18 駆動車輪軸
19 ケーシング
20 親大径歯車
21 親小径歯車
22 ピニオン
23 定点中間軸
24 中間歯車
24a 大径歯車部
24b ピニオン部
25 弧状軸受孔
26 巻締め連係歯車
26a 軸部
27 弧状軸受孔
28 解弾連係歯車
28a1 ピニオン部
28a2 大径歯車部
28b 軸部
29 定速維持用歯車群
29a 長孔
29b 軸部
29c 調速クラッチ歯車
29c1 小径歯車部
29c2 大径歯車部
29d 増速歯車
29d1 小径歯車部
29d2 大径歯車部
29e 星形車
29e1 小径歯車部
29f アンカー
29f1 パレット
29f2 パレット
30 回転源用ピニオン
31 支台
31a スライド面
32 従動歯車
32a 軸部
33 往復動変換用ピン
34 ピン車
35 スライド作動板
35a 前半部
35a1 下面
35a2 左側面
35a3 右側面
35b 後半部
36 案内長孔
37 規制部
38 外止ネジ
39 軸受孔
40 軸受部
41 連係子
41a 基端
42 軸受孔
43 支軸
44 連係子掛合部
45 スライド作動板掛合部
46 牽引バネ
47 係合溝
48 後端ガイド部
48a 壁部
48b 天井部
49 支軸
50 外止
51 拡張バネ
52 支板部
53 駆動ピン
53a 先端部
54 支軸
55 連動板
55a 一方端
55b 他方端
56 連係孔
57 連係溝
58 連係ピン
59 連係溝
60 斜形カム面
61 リミットスイッチ
62 案内空洞部
62a 下端開口
63 外止

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手押し移動による車輪の回転又は糸引きによるドラムの回転によりゼンマイを捲き締め原動力を蓄積する単一のゼンマイ機構と、前記ゼンマイ機構のゼンマイ軸に連係して回転する往復動変換用係合部と係合する連係子を介して往復動させるスライド作動板と、前記スライド作動板上に駆動ピンを配備し、該駆動ピンに連係する連係従動部材を作動させる第1アクション機構と、前記スライド作動板上にカム部を設け、該カム部に連接する連接従動部材を作動させる第2アクション機構と、前記スライド作動板にスライド操作部を形成し、前記スライド操作部を被操作部間に介入し、その介入巾厚により被操作部に関連する介入連動部材を作動させる第3アクション機構とからなる単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具。
【請求項2】
前記往復動変換用係合部は、前記ゼンマイ機構のゼンマイ軸に連係して回転する従動歯車の軸を中心とする半径円上に互いに等間隔に複数本が配備される往復動変換用ピンから構成される請求項1の単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具。
【請求項3】
前記スライド作動板は、基端が支軸により回転自在に支承され、かつバネにより先端を前記往復動変換用ピンの回転通路内に移動するように付勢される連係子が支架され、該連係子の先端の対応面に具える係合溝を回転して出会う前記往復動変換用ピンの一つと係合して該往復動変換用ピンの回転方向に移動するように構成されてなる請求項1又は請求項2の単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具。
【請求項4】
前記駆動ピンは、連係部材として、中心が支軸に軸支されて回転自在に配備される連動板の一方端に開口する連係孔に嵌挿され、前記駆動ピンの往復動で連動板が、その支軸を中心に回動し、該連動板の一方端と他方端に連係するドア板を往復動させる第1アクション機構としてのドア板往復機構が配備されてなる請求項1、請求項2、請求項3のいずれか1の請求項の単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具。
【請求項5】
前記カム部には、連接従動部材としてリミットスイッチを対設し、スライド作動板の往復動により連接して開閉される第2アクション機構としての表示灯を点灯させる電気回路が構成されてなる請求項1、請求項2、請求項3、請求項4のいずれか1の請求項の単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具。
【請求項6】
前記スライド操作部は、ゼンマイ巻き上げ時に一方向にスライドさせ、該スライド操作部が常時バネ圧で定位置に保持される停車用バネ押圧板と停車用昇降輪と頂部面との間に介入され、停車用昇降輪を介入厚巾分のバネ圧により押下げ、停車用昇降輪の遊転輪を下方に突出して走路面に連接し、前記ゼンマイ機構と連係して回転する駆動車輪を走路面より離間させて駆動力を伝達しないで停車状態を維持し、スライド作動板が他方向にスライドする時にスライド操作部の介入を解除して駆動車輪を走路面に接面して玩具を走行させる第3のアクション機構を作動させてなる請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5のいずれか1の請求項の単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具。
【請求項7】
手押し移動による車輪の回転又は糸引きによるドラムの回転によりゼンマイを捲き締め原動力を蓄積する単一のゼンマイ機構と、前記ゼンマイ機構のゼンマイ軸に連係して回転する従動歯車の軸を中心とする半径円上に互いに等間隔に複数本が配備される往復動変換用ピンと、該往復動変換用ピンの回転方向に対応して往復自在に配備されるスライド作動板と、該スライド作動板には、基端が支軸により回転自在に支承され、かつバネにより先端を前記往復動変換用ピンの回転通路内に移動するように付勢されて連係子が支架され、該連係子の先端対応面に具えた係合溝を回転して出会う前記往復動変換用ピンの一つと係合して往復動変換用ピンの回転方向に移動するように構成され、前記スライド作動板上に駆動ピンが配備され、中心が支軸に軸支されて回転自在に配備される連動板の一方端に開口する連係孔に前記駆動ピンが嵌挿され、前記駆動ピンの往復動で支軸を中心に回動し、該連動板の一方端と他方端に連係するドア板を往復動するドア板往復機構と、前記スライド作動板上にカム部を設け、該カム部に連接するリミットスイッチを対設し、スライド作動板の往復動により連接して開閉される表示灯を点灯させる電気回路と、前記スライド作動板にスライド操作部が形成され、ゼンマイ巻き上げ時にスライド作動板を一方向にスライドさせ、スライド操作部がスライドしてバネ圧で定位置に保持される停車用バネ押圧板と停車用昇降輪の頂部面との間に介入し、停車用昇降輪を介入厚巾分のバネ圧により押下げ、停車用昇降輪の遊転輪を下方に突出して走路面に連接し、前記ゼンマイ機構と連係して回転する駆動車輪を走路面より離間させて駆動力を伝達しないで停車状態を維持し、スライド作動板が他方向にスライドする時スライド操作部の介入を解除して駆動車輪を走路面に接面して玩具を走行させる走行機構からなる単一ゼンマイ機構による複数アクション連係作動玩具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2011−67617(P2011−67617A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190955(P2010−190955)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(391010998)株式会社丸彰 (8)
【Fターム(参考)】