説明

単一ドメイン抗原結合分子の精製方法

プロテインAに基づくアフィニティークロマトグラフィーを用いた、相補的抗体ドメインと免疫グロブリン定常領域を実質的に欠く1つまたは複数の単一結合ドメイン(たとえば1つまたは複数のナノボディ分子)とが含まれる単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子を精製または分離するプロセスおよび方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容の全体が本明細書中に参照により組み込まれている、2008年10月29日に出願の米国特許出願第61/109,481号の優先権を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、EFS−Webにより提出されており、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている配列表を含有する。2009年10月28日に作成された前記のASCIIコピーは、名称がw223738w.txtであり、大きさが12,853バイトである。
【背景技術】
【0003】
抗体などの組換えタンパク質は、典型的には、タンパク質生成物を薬学的に許容される前に除去する必要がある様々な不純物を含有する。これらの不純物の一部には、宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA分子、変異体および/もしくは生成物タンパク質のミスフォールディングされた形態、ならびに高分子量凝集体(HMWA)が含まれ得る。凝集体の形成は、投与の際に補体の活性化またはアナフィラキシーを引き起こすことによって生成物の安全性に悪影響を与える可能性があるため、抗体の産生中に問題となる。また、凝集体の形成は、生成物収率の減少、ピークの広幅化、および活性の損失を引き起こすことによっても、製造プロセスを妨げることがある。これらの不純物はクロマトグラフィーの様々なモードにおいて広範囲の保持パターンを有する場合がある。そのような広範囲の不純物の除去は多くの場合困難であり、典型的には、クロマトグラフィーの様々なモードを含む複数のステップを要する。
【0004】
一般的なタンパク質精製方法は、精製するタンパク質と夾雑物質との間の大きさ、荷電、および溶解度の差異に基づいている。これらのパラメータに基づくプロトコルには、それだけには限定されないが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーが含まれる。しかし、これらのクロマトグラフィー方法は、抗体の凝集または多量体種の分離において技術的困難を提示する。たとえば、イオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフィーなどの技法は、タンパク質濃度の増加または溶出中の緩衝液の濃度および/もしくはpHの必要な変化が原因で、凝集体の形成を誘導し得る。さらに、いくつかの場合では、抗体は、イオン交換クロマトグラフィーによってその分離を可能にするためには小さすぎる等電点の差しか示さない(Tarditi、J.Immunol.Methods、599:13〜20(1992))。サイズ排除クロマトグラフィーは扱い難い傾向があり、生成物の顕著な希釈をもたらし、これは、大規模の効率化に基づく製造プロセスには障害である。アフィニティークロマトグラフィーカラムからのリガンドの漏れも起こる場合があり、これは、溶出させた生成物の望ましくない汚染をもたらす(Steindl、J.Immunol.Methods、235:61〜69(2000))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クロマトグラフィーのいくつかの異なる様式を組換えタンパク質の精製中に用いることができるが、使用するクロマトグラフィーステップの数を減らし、かつ組換えタンパク質の生物活性を破壊しない、または顕著に低下させない精製プロセスを開発する必要性が、依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、部分的に、単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子がプロテインAまたはその機能的変異体と相互作用し、たとえば結合し、それにによって、SDAB分子の精製においてプロテインAに基づくアフィニティークロマトグラフィーの使用が可能となるという発見に基づいている。他の実施形態では、SDAB分子は、イオン(たとえば陽イオン)交換クロマトグラフィーなどの他のクロマトグラフィー技法を用いて精製することができる。SDAB分子には、1つまたは複数の標的タンパク質(たとえば腫瘍壊死因子および/またはヒト血清アルブミン)と相互作用する、たとえば結合する、1つまたは複数の単一抗原結合ドメインが含まれてもよい。特定の実施形態では、SDAB分子は、相補的抗体ドメインおよび/または免疫グロブリン定常領域を実質的に欠く1つまたは複数のナノボディ分子からなる単鎖ポリペプチドである。したがって、本発明は、プロテインAに基づくアフィニティークロマトグラフィーおよびイオン(たとえば陽イオン)交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー技法を、個別にまたは組み合わせて使用して、1つまたは複数の単一結合ドメイン(たとえば1つまたは複数のナノボディ分子)が含まれるSDAB分子を精製または分離するプロセスおよび方法に関する。
【0007】
[注釈:ナノボディ(Nanobody)(商標)およびナノボディ(Nanobodies)(商標)はAblynx N.V.の登録商標である]
【0008】
したがって、一態様では、本発明は、SDAB分子(たとえば1つまたは複数のナノボディ分子)を、SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質とを含有する混合物(本明細書中で「SDAB分子調製物」とも呼ぶ)から分離または精製する方法またはプロセスを特徴とする。この方法またはプロセスには、SDAB分子が支持体に結合または吸着することを可能にする条件下で、混合物をプロテインAに基づく支持体またはイオン(たとえば陽イオン)交換(CEX)支持体と接触させることと、たとえば、SDAB分子が支持体に結合したままとなる条件下で、結合した支持体を洗浄すること(たとえば、結合した支持体を少なくとも1つのプロテインAまたはCEX洗浄緩衝液で洗浄すること)によって、1つまたは複数の夾雑物質を除去することと、たとえば、吸着したSDAB分子を少なくとも1つのプロテインAまたはCEX溶出緩衝液で溶出させることによって、SDAB分子を支持体から選択的に溶出させることとが含まれる。
【0009】
一実施形態では、SDAB分子を分離または精製する方法には、SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質との混合物を陽イオン交換支持体と接触させることが含まれる。
【0010】
他の実施形態では、SDAB分子を分離または精製する方法には、SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質との混合物をプロテインAに基づく樹脂と接触させることが含まれる。
【0011】
この方法またはプロセスは、単独で、または、それだけには限定されないが、ヒドロキシアパタイト、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、金属アフィニティークロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外濾過、ウイルス不活性化(たとえば低pHを使用)および/もしくはウイルス除去濾過のうちの1つもしくは複数を含めた、少なくとも1つの他の精製方法と組み合わせて使用することができる。たとえば、この方法またはプロセスは、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、限外濾過、ウイルス不活性化(たとえば低pHを使用)および/またはウイルス除去濾過のうちの1つまたは複数と組み合わせて使用することができる。プロテインA支持体を使用する実施形態では、この方法またはプロセスには、イオン(たとえば陽イオンまたは陰イオン)交換クロマトグラフィーがさらに含まれてもよい。
【0012】
実施形態では、この方法またはプロセスには、混合物をヒドロキシアパタイト樹脂と接触させることと、SDAB分子をヒドロキシアパタイト樹脂から選択的に溶出させることとがさらに含まれる。プロテインA支持体を使用する他の実施形態では、この方法またはプロセスには、混合物を陽イオン交換(CEX)カラムと接触させることと、SDAB分子をカラムから選択的に溶出させることとがさらに含まれる。
【0013】
前述の方法およびプロセスの実施形態には、以下の特徴のうちの1つまたは複数が含まれ得る。
【0014】
一実施形態では、本発明の方法またはプロセスによって分離または精製するSDAB分子は、SDAB分子と細胞培養夾雑物質とが含まれる混合物中の、細胞培養物、たとえば宿主細胞(たとえば哺乳動物、たとえばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)の産物として産生された組換えタンパク質である。細胞培養物は小規模または大規模の培養物とすることができる。
【0015】
他の実施形態では、本発明の方法またはプロセスによって分離または精製する混合物中の夾雑物質には、高分子量タンパク質凝集体、宿主細胞タンパク質、DNA、および/またはプロテインA(たとえば浸出したプロテインA)のうちの1つまたは複数が含まれる。実施形態では、SDAB分子は、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い純度まで精製される。
【0016】
別の実施形態では、本発明の方法またはプロセスで使用するプロテインAに基づく支持体には、支持体、たとえば、固定化したプロテインA(たとえば組換えもしくは単離プロテインA)またはその機能的変異体の樹脂が含まれる。一実施形態では、固定化したプロテインAは、N末端から順にE、D、A、BおよびCドメインとして知られる約50〜60個のアミノ酸残基の5個のドメインからなる、完全長ブドウ球菌プロテインA(SpA)である。たとえば、プロテインAには、図4Aに示すSpAのアミノ酸配列(配列番号11)、またはそれに実質的に同一なアミノ酸配列(たとえば、図4Aに示す配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%またはそれ以上同一のアミノ酸配列)が含まれる。他の実施形態では、固定化したプロテインAは、E、D、A、Bおよび/もしくはC、またはその改変された形態から選択される少なくとも1つのドメインが含まれるSpAの機能的変異体である。たとえば、SpAの機能的変異体には、SpAの少なくともドメインB、または、本明細書中でドメインZとも呼ばれる、1つまたは複数の置換されたアスパラギン残基を有するドメインBの変異体が含まれてもよい。一実施形態では、SpAの機能的変異体には、図4Bに示す配列番号12のアミノ酸配列、またはそれに実質的に同一なアミノ酸配列(たとえば、図4Bに示す配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%またはそれ以上同一のアミノ酸配列)が含まれる。ドメインBまたは変異体ドメインBと、ドメインAおよび/もしくはC、ドメインE、Aおよび/もしくはC、またはドメインE、D、Aおよび/もしくはCのうちの1つまたは複数とを含む、プロテインAの機能的変異体の他の順列を使用することができる。組合せがSDAB分子と結合できる限りは、E、D、A、Bおよび/もしくはC、またはその機能的変異体の任意の組合せを使用することができる。使用できる例示的なプロテインA支持体樹脂には、MabSELECT(商標)カラム、MabSELECT(商標)SuReカラム、MabSELECT(商標)Xtra(GE Healthcare Products)、およびProSep(商標)Va Ultra Plus(Millipore Corporation、Billerica,MA)が含まれる。
【0017】
プロテインAに基づく支持体を本発明の方法またはプロセスで使用する一実施形態では、SDAB分子がプロテインAに基づく支持体に結合または吸着することを可能にする条件下で、SDAB分子と夾雑物質との混合物を、プロテインAに基づく支持体と接触させる、たとえばそれに充填する。特定の実施形態では、馴化培地が含まれるプロテインA充填緩衝液を使用する。プロテインAカラムは、約6〜8の範囲のpHで約10〜約250mMのNaClおよび約10〜約100mMのトリス、約6.5〜7.5の範囲のpHで約50〜約200mMのNaClおよび約20〜約75mMのトリス、約7〜7.5の範囲のpHで約100〜約175mMのNaClおよび約40〜約60mMのトリス、約7〜7.5の範囲のpHで約125〜約160mMのNaClおよび約45〜約55mMのトリス、約7.5の範囲のpHで約50〜約150mMのNaClおよび約50mMのトリス、または約6.5、7.0、7.5、もしくは8.0の範囲のpHで約150mMのNaClおよび約50mMのトリスが含まれるプロテインA平衡化溶液を用いて平衡化することができる。
【0018】
プロテインAに基づく支持体を本発明の方法またはプロセスで使用するさらに別の実施形態では、混合物の1つまたは複数の夾雑物質は、たとえば、SDAB分子が支持体と結合したままとなる条件下で結合した支持体を洗浄すること(たとえば、結合した支持体を少なくとも1つのプロテインA洗浄緩衝液で洗浄すること)によって除去する。特定の実施形態では、プロテインA洗浄緩衝液には、約6〜8の範囲のpHで約10〜約250mMのNaClおよび約10〜約100mMのトリス、約6.5〜7.5の範囲のpHで約50〜約200mMのNaClおよび約20〜約75mMのトリス、約7〜7.5の範囲のpHで約100〜約175mMのNaClおよび約40〜約60mMのトリス、約7〜7.5の範囲のpHで約125〜約160mMのNaClおよび約45〜約55mMのトリス、約7.5の範囲のpHで約50〜約150mMのNaClおよび約50mMのトリス、または約6.5、7.0、7.5、もしくは8.0の範囲のpHで約150mMのNaClおよび約50mMのトリスが含まれる。一部の実施形態では、洗浄緩衝液には、50mMのNaClおよび50mMのトリス、pH7.5が含まれる。一部の実施形態では、洗浄緩衝液には、10mM、25mM、50mM、75mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mM、または500mMのNaClが含まれる。一部の実施形態では、洗浄緩衝液には、10mM、25mM、50mM、75mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mM、または500mMのCaClが含まれる。一部の実施形態では、洗浄緩衝液には、10mM、25mM、50mM、75mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mM、または500mMのトリスが含まれる。一部の実施形態では、洗浄緩衝液には、10mM、25mM、50mM、75mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mM、または500mMのシトレートが含まれる。一部の実施形態では、洗浄緩衝液には、10mM、25mM、50mM、75mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、400mM、450mM、または500mMのHEPESが含まれる。一部の実施形態では、洗浄緩衝液のpHは、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5または9.0である。
【0019】
プロテインAに基づく支持体を本発明の方法またはプロセスで使用するさらに別の実施形態では、SDAB分子は、支持体から、たとえば、吸着したSDAB分子を少なくとも1つのプロテインA溶出緩衝液で溶出させることによって選択的に溶出させる。一部の実施形態では、溶出緩衝液には、約5〜約50mMのNaClおよび約5mM〜約100mMのグリシン、pH4.0以下が含まれる。一部の実施形態では、溶出緩衝液には、約10mM、約25mM、約50mM、約75mM、約100mM、約150mM、約200mM、約250mM、約300mM、約350mM、約400mM、約450mM、または約500mMのNaCl、約10mM、約25mM、約50mM、約75mM、約100mM、約150mM、約200mM、または約250mMのグリシンが含まれる。一部の実施形態では、溶出緩衝液のpHは、2.0、2.5、3.0、3.5、または4.0である。特定の実施形態では、プロテインA溶出緩衝液には、約10mMのNaClおよび約50mMのグリシン、pH約3.0が含まれる。
【0020】
一実施形態では、本発明の方法またはプロセスにおいてセラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーをプロテインAクロマトグラフィーと組み合わせて使用する。セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、プロテインAに基づくクロマトグラフィーの前に、または多くの場合はその後に使用することができる。そのような実施形態では、この方法には、SDAB分子の混合物(たとえばプロテインAクロマトグラフィーを用いて分離または精製した後の混合物)をヒドロキシアパタイト樹脂と接触させることと、SDAB分子を樹脂から選択的に溶出させることとが含まれる。あるいは、混合物を平衡化緩衝液で前処理し、その後、ヒドロキシアパタイト樹脂に通過させることができる。これらの方法のうちのどちらかを組み合わせて混合物を精製し得る。一実施形態では、溶出および充填緩衝液には約1〜約20mMのリン酸ナトリウムおよび約0.2〜約2.5Mの塩化ナトリウムが含まれ、溶出および充填緩衝液のpHは約6.4〜約7.6である。他の実施形態では、平衡化緩衝液および洗浄緩衝液には、約1〜約20mMのリン酸ナトリウム、約0.01〜約2.0Mの塩化ナトリウム、約0〜約200mMのアルギニン、および約0〜約200mMのHEPESが含まれ、平衡化および洗浄緩衝液のpHは約6.2〜8.0である。実施形態では、生じる精製したSDAB分子は、10%未満、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ以下未満の高分子量凝集体しか含有しない。
【0021】
他の実施形態では、イオン交換クロマトグラフィーを、本明細書中に記載のプロテインAクロマトグラフィーおよび/またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの一方または両方と組み合わせて使用する。プロテインAクロマトグラフィーをイオン交換クロマトグラフィーの前に実施する例示的な方法またはプロセスには、SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質とを含有する混合物をプロテインA支持体と接触させて、SDAB分子を支持体に吸着させることと、支持体および吸着したSDAB分子を少なくとも1つのプロテインA洗浄緩衝液で洗浄することと、吸着したSDAB分子を少なくとも1つのプロテインA溶出緩衝液で溶出させることによって、SDAB分子調製物を回収することとが含まれる。この方法またはプロセスには、SDAB分子調製物をイオン交換支持体と接触させて、SDAB分子を支持体に通過させることと、支持体を少なくとも1つのイオン交換洗浄緩衝液で洗浄することによって、イオン交換通過液を回収することとがさらに含まれてもよい。特定の実施形態では、この方法またはプロセスには、イオン交換通過液をヒドロキシアパタイト樹脂と接触させて、通過液を樹脂に吸着させることと、樹脂を少なくとも1つのヒドロキシアパタイト洗浄緩衝液で洗浄することと、少なくとも1つのヒドロキシアパタイト溶出緩衝液を用いて精製されたSDAB分子を樹脂から溶出させることとがさらに含まれる。
【0022】
他の実施形態では、イオン(たとえば陽イオン)交換クロマトグラフィー(CEX)を、単独で、または別の樹脂、たとえば、プロテインAクロマトグラフィーおよび/もしくはセラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの一方もしくは両方と組み合わせて使用する。この方法またはプロセスには、SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質とを含有する混合物をイオン交換支持体と接触させて、SDAB分子を支持体に通過させることと、支持体を少なくとも1つのイオン(たとえば陽イオン)交換洗浄緩衝液で洗浄することとが含まれる。一実施形態では、陽イオン交換支持体は、Capto(商標)S(GE Healthcare)、Fractogel(登録商標)SO3−(M)(EMD Chemicals)、Toyopearl(登録商標)Gigacap S−650M(Tosoh Bioscience)またはPoros(登録商標)HS50(Applied Biosystems)から選択される。一実施形態では、CEX樹脂は、少なくとも約10g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、または60g/Lの能力を示す。他の実施形態では、カラムに充填するために使用した馴化培地(CM)の伝導率は、約15〜5mS/cm、14〜6mS/cm、13〜8mS/cm、12〜9mS/cm、もしくは11〜10mS/cm、または約7mS/cm、8mS/cm、9mS/cm、10mS/cm、11mS/cm、12mS/cm、もしくは13mS/cmである。他の実施形態では、充填条件のpHは、約6、5.5、5、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4、3.9、3.8、または3.7未満に調整する。実施形態では、溶出緩衝液は、約100mM以下の塩化ナトリウム、約90mM以下の塩化ナトリウム、約80mM以下の塩化ナトリウム、約70mM以下の塩化ナトリウム、約60mM以下の塩化ナトリウム、約50mM以下の塩化ナトリウム、約40mM以下の塩化ナトリウム、または約30mM以下の塩化ナトリウム、20mM以下の塩化ナトリウム、約10mM以下の塩化ナトリウム、約5mM以下の塩化ナトリウム、約1mM以下の塩化ナトリウムであり、約4〜8、約5〜7.5、約5.5〜7.2、約6〜7.1、もしくは約6.5〜7、または約5、5.5、6、6.5、もしくは7のpHを有する。他の実施形態では、CEXカラムは、下流のcHA平衡化緩衝液を用いて溶出させることもできる。
【0023】
特定の実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィーがSDABの精製に使用する唯一のクロマトグラフィー方法である。他の実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィーを他のクロマトグラフィー方法(たとえばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)と組み合わせて使用する。陽イオン交換クロマトグラフィーを実施する例示的な方法またはプロセスには、充填緩衝液または馴化培地の伝導率を低下させる条件下(たとえば、約15〜5mS/cm、14〜6mS/cm、13〜8mS/cm、12〜9mS/cm、もしくは11〜10mS/cm、または約7mS/cm、8mS/cm、9mS/cm、10mS/cm、11mS/cm、12mS/cm、もしくは13mS/cmの条件下)で、SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質とを含有する混合物を陽イオン交換支持体と接触させることと、SDAB分子を支持体に吸着させることと、支持体および吸着したSDAB分子を少なくとも1つの陽イオン交換洗浄緩衝液で洗浄することと、吸着したSDAB分子を少なくとも1つの溶出緩衝液で溶出させることによって、SDAB分子調製物を回収することとが含まれる。この方法またはプロセスには、SDAB分子調製物を別の支持体または樹脂と接触させることがさらに含まれることができ、たとえば、この方法またはプロセスには、イオン交換通過液をヒドロキシアパタイト樹脂と接触させて、通過液を樹脂に吸着させることと、樹脂を少なくとも1つのヒドロキシアパタイト洗浄緩衝液で洗浄することと、少なくとも1つのヒドロキシアパタイト溶出緩衝液を用いて精製されたSDAB分子を樹脂から溶出させることとがさらに含まれてもよい。
【0024】
他の実施形態では、この方法またはプロセスには、溶出させたSDAB分子を、たとえば限外濾過/ダイアフィルトレーションステップを行うことによって、事前に設定された標的体積まで濃縮することがさらに含まれる。また、濃縮ステップは溶出させたSDAB分子の緩衝液を交換するためにも使用することができる。たとえば、濃縮した溶出させたSDAB分子を、ヒスチジン緩衝液またはトリス緩衝液の存在下で濾過、たとえばダイアフィルトレーションすることができる。ヒスチジン緩衝液を使用する実施形態では、緩衝液の濃度は、少なくとも約5〜30mM、約7.5〜28mM、約10〜20mM、約12〜15mM、または約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約20mM、約25mM、約28mMであり、pHは、約7、約6、約5、約4、約3、または約4〜6.5、約5〜6、約5.9、約5.8、約5.7、約5.6、もしくは約5.5の範囲である。実施形態では、少量の濃縮した製剤緩衝液を溶出させた濃縮したSDAB分子に加える(たとえば、濃縮した製剤緩衝液の少なくとも2、5、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20%v/v)。実施形態では、濃縮した製剤緩衝液は、約10〜50mMのヒスチジン(たとえば、約20mM、約30mMのヒスチジン)、約10〜60%の糖(たとえば、スクロース、ソルビトールまたはトレハロース)、たとえば約50%のスクロース、および約0.001〜約0.1%、たとえば約0.06%の界面活性剤(たとえばポリソルベート80)。SDAB分子の例示的な製剤は、その内容が本明細書中に参照により組み込まれているWyethの名称で2008年10月29日に出願のUSSN12/608,553号に記載されている。
【0025】
実施形態では、SDAB分子は、少なくとも約20g/L、30g/L、40g/L、80g/L、90g/L、100g/L、150g/L、200g/L、210g/L、220g/L、230g/L、240g/L、250g/L、260g/L、270g/L、280g/L、290g/L、300g/L、310g/L、320g/L、330g/L、340g/L、350g/Lまたはそれ以上まで濃縮する。
【0026】
特定の実施形態では、この方法またはプロセスには、SDAB分子の純度、活性、毒性、薬物動態学および/または薬力学のうちの少なくとも1つのパラメータを評価すること(たとえば、検出、定量および/または監視すること)と、(任意選択で)少なくとも1つのパラメータを参照値と比較することによって、SDAB分子を評価または選択することとが含まれる。比較には、少なくとも1つのパラメータが参照値と事前に選択された関係性を有するかどうか、たとえば、それが、参照値の範囲内にあるかどうか(範囲の端点を含めてまたは除いて)、参照値と等価またはそれより大きいかどうかを判定することが含まれてもよい。特定の実施形態では、少なくとも1つのパラメータが事前に選択された関係性を満たす場合、たとえば参照値の範囲内にある場合に、SDAB分子を選択する。他の実施形態では、アッセイ、方法、または少なくとも1つのパラメータと参照値との間の事前に選択された関係性が満たされているかどうかの指標を、たとえばコンピュータで読取り可能な媒体に記録または記憶させる。そのような方法、アッセイまたは事前に選択された関係性を満たすという指標は、生成物の挿入物、大要(たとえば米国薬局方)、または任意の他の材料、たとえば、たとえば商業的使用のためまたは米国もしくは外国の規制機関に提出するために配布され得るラベル上に記載することができる。
【0027】
一実施形態では、この方法またはプロセスには、決定された値を参照値と比較することによって、製造プロセスを分析することがさらに含まれる。
【0028】
一実施形態では、この方法には、分析に少なくとも部分的に基づいて製造プロセスを維持することがさらに含まれる。一実施形態では、この方法には、分析に基づいて製造プロセスを変更することがさらに含まれる。
【0029】
別の実施形態では、この方法には、本明細書中に記載の方法または分析に基づいてプロセスに関する決定を行うことが含まれる、選択されたプロセスによって作製されたSDAB分子、たとえばTNFナノボディ分子のプロセス、たとえば製造プロセスを評価することが含まれる。一実施形態では、この方法には、方法または分析に少なくとも部分的に基づいて製造プロセスを維持または変更することがさらに含まれる。したがって、別の実施形態では、評価を行う団体は本明細書中に記載の方法または分析を実施せず、単に本明細書中に記載の方法または分析によって得られる結果を使用するのみである。
【0030】
別の実施形態では、この方法には、バッチ間の変動を監視もしくは制御する方法または調製物を参照標準と比較する方法において、2つ以上の調製物を比較することが含まれる。
【0031】
さらに別の実施形態では、この方法には、決断を行うこと、たとえば、決定に少なくとも部分的に基づいて、分類、選択、受入または廃棄、出荷または保留、薬物製品へと加工、輸送、異なる場所に移動、製剤化、ラベル貼付、包装品、商取引への出荷、調製物の販売または売出しを行うことがさらに含まれてもよい。
【0032】
別の態様では、本発明は、規制要件、たとえば、規制機関、たとえばFDAの承認後要件を順守する方法を特徴とする。この方法には、本明細書中に記載のSDAB分子についてパラメータの評価を提供することが含まれる。承認後要件には、上記パラメータのうちの1つまたは複数の測定が含まれてもよい。また、この方法には、任意選択により、観察された溶液パラメータが事前に選択された基準を満たすか、またはパラメータが事前に選択された範囲内にあるかどうかを決定することと、任意選択により、分析の値もしくは結果を提出すること、または、たとえば値もしくは結果を規制機関に送信することによって、機関と通信することとが含まれる。
【0033】
別の態様では、本発明は、報告を受信する実体に報告を提供すること、SDAB分子、たとえばTNFナノボディ分子の試料を、参照標準、たとえばFDAの要件の順守について評価すること、SDAB分子の調製物が何らかの事前に定義された要件を満たすという別の団体からの表示を求めること、またはSDAB分子の調製物に関する情報を別の団体に提出することのうちの、1つまたは複数の方法を特徴とする。例示的な受信実体または他の団体には、政府、たとえば米国連邦政府、たとえば政府機関、たとえばFDAが含まれる。この方法には、第1の国、たとえば米国においてSDAB分子を作製および/または試験するステップ、試料の少なくとも一定分量を第1の国の外に送ること、たとえば、米国外である第2の国に送ること、SDAB分子の調製物の構造に関するデータ、たとえば、本明細書中に記載の構造および/または鎖に関連するデータ、たとえば、本明細書中に記載の方法のうちの1つまたは複数によって作成されたデータが含まれる報告を、準備または受信するステップ、ならびに前記報告を、報告を受信する実体に提供するステップのうちの1つもしくは複数(またはすべて)が含まれる。
【0034】
本発明の方法またはプロセスによって分離または精製するSDAB分子、たとえばナノボディ分子(たとえばTNF結合ナノボディ分子)には、1つまたは複数の単一結合ドメイン(たとえば、1つまたは複数のナノボディ)が含まれてもよい。たとえば、ナノボディ分子は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン(1、2または3個の相補性決定領域(CDR)が含まれる)を含むポリペプチド、たとえば単鎖ポリペプチドを含む、またはそれからなることができる。SDAB分子の例には、軽鎖を天然に欠く分子(たとえば、VHH、ナノボディ、またはラクダ科由来の抗体)が含まれる。そのようなSDAB分子は、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコなどのラクダ科動物から誘導するまたは得ることができる。他の実施形態では、SDAB分子には、それだけには限定されないが、サメ単一ドメインポリペプチド(IgNAR)、および単一ドメイン足場(たとえばフィブロネクチン足場)などの他の天然に存在する単一ドメイン分子を含めた単一ドメイン分子が含まれ得る。単一ドメイン分子はサメ由来であってもよい。
【0035】
一実施形態では、本発明の方法またはプロセスによって分離または精製するSDAB分子は、1つまたは複数の単一ドメイン分子で構成されている単鎖ポリペプチドである。実施形態では、ナノボディ分子は一価または多価(たとえば、二価、三価、もしくは四価)である。他の実施形態では、ナノボディ分子は単一特異性または多特異性(たとえば、二重特異性、三重特異性もしくは四重特異性)である。SDAB分子は、組換えの、CDR移植した、ヒト化した、ラクダ化した、脱免疫化した、および/またはin vitroで作製した(たとえばファージディスプレイによって選択した)、1つまたは複数の単一ドメイン分子を含み得る。たとえば、SDAB分子は、1つまたは複数の標的抗原と結合する1つまたは複数の単一ドメイン分子を含む単鎖融合ポリペプチドとすることができる。典型的には、標的抗原は、哺乳動物、たとえばヒトのタンパク質である。特定の実施形態では、SDAB分子は、血清アルブミン(ヒト血清アルブミン(HSA))、フィブリン、フィブリノーゲン、またはトランスフェリンのうちの1つまたは複数から選択される血清タンパク質、たとえばヒト血清タンパク質と結合する。
【0036】
1つの例示的な実施形態では、本発明の方法またはプロセスによって分離または精製するSDAB分子は、標的抗原、たとえば腫瘍壊死因子α(TNFα)と結合する2つの単一ドメイン分子(たとえば2つのラクダ科可変領域)と、血清タンパク質、たとえばHSAと結合する1つの単一ドメイン分子(たとえばラクダ科可変領域)との単鎖ポリペプチド融合体からなる、三価の二重特異性分子である。SDAB分子の単一ドメイン分子は、N末端からC末端まで以下の順序で配列させることができる:TNFα結合単一ドメイン分子−HSA結合単一ドメイン分子−TNFα結合単一ドメイン分子。1つまたは複数の標的に対する単一ドメイン分子の任意の順序または組合せを、本明細書中に記載の通り製剤化できることが理解されるであろう。
【0037】
一実施形態では、本発明の方法またはプロセスによって分離または精製するSDAB分子は、本明細書中で「ATN−103」とも称され、図2に示す配列番号1のアミノ酸配列、またはそれに実質的に同一なアミノ酸配列(たとえば、図2に示す配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%もしくはそれ以上同一であるアミノ酸配列)を含む、またはそれからなる。本明細書中に記載の通り製剤化することができるさらなる三価の二重特異性ナノボディ分子の例には、WO2006/122786号の表29に開示されているTNF24、TNF25、TNF26、TNF27、TNF28、TNF60およびTNF62が含まれる。
【0038】
特定の実施形態では、TNFαと結合する、本発明の方法またはプロセスによって分離または精製するSDAB分子の単一ドメイン分子のうちの少なくとも1つは、DYWMY(CDR1)、EINTNGLITKYPDSVKG(CDR2)および/またはSPSGFN(CDR3)のアミノ配列を有する、または前記CDRのうちの1つと3、2または1個未満のアミノ酸置換(たとえば保存的置換)によって異なるCDRを有する、1、2、または3個のCDRが含まれる。他の実施形態では、単一ドメイン分子は、図2に示す配列番号1のアミノ酸約1〜115のアミノ酸配列、またはそれに実質的に同一なアミノ酸配列(たとえば、図2に示す配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列)を有する可変領域を含む。実施形態では、TNFα結合単一ドメイン分子は、図2に示す配列番号1のTNFα結合単一ドメイン抗体分子の1つまたは複数の生物活性を有する。たとえば、TNFα結合単一ドメイン分子は、図2に示す配列番号1のTNFα結合単一ドメイン分子によって認識されるエピトープと同じまたは類似のエピトープと結合する(たとえば、三量体形態のTNFαと結合する、TNF受容体と接触したTNFα部位と結合する、第1のTNF単量体(単量体A)の88位にGlnを含み、90位にLysを含み、第2のTNF単量体(単量体B)の146位にGluを含むTNFα三量体中のエピトープ、またはWO06/122786号に開示されているエピトープと結合する)。他の実施形態では、TNFα結合単一ドメイン分子は、WO06/122786号に開示されているTNFα結合単一ドメイン分子のいずれかに類似の活性(たとえば、結合親和性、解離定数、結合特異性、TNF−阻害活性)を有する。
【0039】
他の実施形態では、TNFα結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されているナノボディのうちの1つまたは複数を含む。たとえば、TNFα結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されている一価、二価、三価TNFα結合ナノボディ分子とすることができる。例示的なTNFα結合ナノボディには、それだけには限定されないが、TNF1、TNF2、TNF3、そのヒト化形態(たとえば、TNF29、TNF30、TNF31、TNF32、TNF33)が含まれる。一価TNFα結合ナノボディのさらなる例は、WO2006/122786号の表8に開示されている。例示的な二価TNFα結合ナノボディ分子には、それだけには限定されないが、TNF55およびTNF56が含まれ、これは、ペプチドリンカーを介して連結された単一の融合ポリペプチドを形成する2つのTNF30ナノボディを含む(WO2006/122786号に開示されている)。二価TNFα結合ナノボディ分子のさらなる例は、TNF4、TNF5、TNF6、TNF7、TNF8としてWO2006/122786号の表19に開示されている。
【0040】
他の実施形態では、HSAと結合する、本発明の方法またはプロセスによって分離または精製するSDAB分子の単一ドメイン分子のうちの少なくとも1つは、SFGMS(CDR1)、SISGSGSDTLYADSVKG(CDR2)および/またはGGSLSR(CDR3)アミノ配列を有する、または前記CDRのうちの1つと3、2または1個未満のアミノ酸置換(たとえば保存的置換)によって異なるCDRを有する、1、2、または3個のCDRが含まれる。他の実施形態では、単一ドメイン分子は、図2に示す配列番号1のアミノ酸約125〜239のアミノ酸配列、またはそれに実質的に同一なアミノ酸配列(たとえば、図2に示す配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列)を有する可変領域を含む。実施形態では、HSA結合単一ドメイン分子は、図2に示す配列番号1のHSA結合単一ドメイン分子の1つまたは複数の生物活性を有する。たとえば、HSA結合単一ドメイン分子は、図2に示す配列番号1のHSA結合単一ドメイン分子によって認識されるエピトープと同じまたは類似のエピトープと結合する。他の実施形態では、HSA結合単一ドメイン分子は、WO06/122786号に開示されているHSA結合単一ドメイン分子のうちの任意のものに類似の活性(たとえば、結合親和性、解離定数、結合特異性)を有する。
【0041】
他の実施形態では、HSA結合SDAB分子は、WO2006/122786号に開示されているナノボディのうちの1つまたは複数を含む。たとえば、HSA結合SDAB分子は、WO2006/122786号に開示されている一価、二価、三価のHSA結合ナノボディ分子であってもよい。他の実施形態では、HSA結合SDAB分子は、HSAと結合する結合特異性のうちの少なくとも1つを有する、単一特異性または多特異性の分子であってもよい。例示的なTNFα結合ナノボディには、それだけには限定されないが、WO06/122786号に開示されているALB1、そのヒト化形態(たとえば、ALB6、ALB7、ALB8、ALB9、ALB10)が含まれる。
【0042】
他の実施形態では、SDAB分子の単一ドメイン分子のうちの2つ以上を、連結基を用いてまたは用いずに、遺伝子またはポリペプチド融合体として融合する。連結基は当業者に明らかな任意の連結基とすることができる。たとえば、連結基は1〜100個の原子の長さの生体適合性ポリマーとすることができる。一実施形態では、連結基には、ポリグリシン、ポリセリン、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリイソロイシン、もしくはポリアルギニン残基、またはその組合せが含まれる、またはそれからなる。たとえば、ポリグリシンまたはポリセリンリンカーには、少なくとも5、7、8、9、10、12、15、20、30、35および40個のグリシンおよびセリン残基が含まれてもよい。使用することができる例示的なリンカーには、Gly−Ser反復、たとえば、1、2、3、4、5、6、7回またはそれ以上の反復の(Gly)−Ser反復(配列番号8)が含まれる。実施形態では、リンカーは(Gly)−Ser−(Gly)−Serまたは((Gly)−Ser)n(nは4、5、または6である)(配列番号10)の配列を有する。
【0043】
本発明の方法またはプロセスによって分離または精製するSDAB分子は、たとえば共有または非共有結合させることによってさらに改変することができる。たとえば、ナノボディ分子は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)またはその誘導体(メトキシポリ(エチレングリコール)すなわちmPEGなど)等の適切な薬理学的に許容されるポリマーと共有結合させることができる。peg化したナノボディ分子の例は、WO06/122786号にTNF55−PEG40、TNF55−PEG60、TNF56−PEG40およびTNF56−PEG60として開示されている。
【0044】
一実施形態では、この方法またはプロセスは、イオン(たとえば陽イオンまたは陰イオン)交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、金属アフィニティークロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外濾過、および/またはウイルス除去濾過のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0045】
一実施形態では、この方法またはプロセスには、組換えSDAB分子の製剤を医薬組成物として調製することがさらに含まれる。製剤には、SDAB分子を、単独でまたは、TNFa関連障害、たとえば、それだけには限定されないが、関節リウマチ(RA)(たとえば中等度から重度の関節リウマチ)、関節炎状態(たとえば、乾癬性関節炎、多関節若年性特発性関節炎(JIA)、強直性脊椎炎(AS))、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、および/または多発性硬化症を含めた炎症性または自己免疫性障害の治療に有用な第2の薬剤、たとえば、第2の治療上または薬理学的に活性な薬剤と組み合わせて含めることができる。たとえば、第2の薬剤は、抗TNF抗体またはそのTNF結合断片であってよく、第2のTNF抗体は製剤のTNF結合SDAB分子とは異なるエピトープと結合する。TNF結合SDAB分子と共製剤化することができる薬剤の他の非限定的な例には、それだけには限定されないが、サイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性剤、および細胞分裂抑制剤が含まれる。一実施形態では、さらなる薬剤は、それだけには限定されないが、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、プレドニゾロン、プレドニゾン、コルチゾン、およびトリアムシノロンを含めたコルチコステロイド、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン(Plaquenil)およびスルファサラジンなどの疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)、レフルノミド(Arava(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))(メトトレキサートを含むまたは含まない)、およびアダリムマブ(Humira(登録商標))を含めた腫瘍壊死因子阻害剤、抗CD20抗体(たとえばRituxan(登録商標))、アナキンラ(Kineret(登録商標))などの可溶性インターロイキン1受容体、金、ミノサイクリン(Minocin(登録商標))、ペニシラミン、ならびにアザチオプリン、シクロホスファミド、およびシクロスポリンを含めた細胞毒性剤を含めた、関節炎の標準的な治療である。そのような併用療法では、より低い用量の投与される治療剤を有利に利用して、様々な単独療法に関連する潜在的な毒性または合併症が回避され得る。
【0046】
別の態様では、本発明は、本明細書中に記載の方法またはプロセスによって作製したSDAB分子を特徴とする。また、本明細書中に記載の方法またはプロセスによって作製したSDAB分子を含有する組成物、たとえば医薬組成物および製剤も、本発明によって包含される。たとえば、製剤には、本明細書中に記載のSDAB分子が薬学的に許容できる担体中に含まれ得る。
【0047】
一実施形態では、本明細書中に記載の方法またはプロセスによって作製したSDAB分子は、対象、たとえばヒト対象(たとえばTNFa関連障害に罹患している患者)への投与に適している。たとえば、SDAB分子またはその製剤は、注射(たとえば、皮下、血管内、筋肉内もしくは腹腔内)または吸入によって対象に投与することができる。
【0048】
別の態様では、本発明は、対象(たとえばヒト対象)において、本明細書中に記載のSDAB分子に関連する障害(たとえば、TNFa関連障害、たとえば、それだけには限定されないが、関節リウマチ(RA)(たとえば中等度から重度の関節リウマチ)、関節炎状態(たとえば、乾癬性関節炎、多関節若年性特発性関節炎(JIA)、強直性脊椎炎(AS))、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、および/または多発性硬化症)を含めた炎症性または自己免疫性障害を治療または予防する方法に関する。この方法には、対象、たとえばヒト患者に、本明細書中に記載の方法またはプロセスによって作製したTNF結合SDABが含まれる医薬組成物を、単独でまたは本明細書中に記載の併用療法のうちの任意のものと組み合わせて、TNFα関連障害の症状の1つまたは複数が低下するような量で投与することが含まれる。
【0049】
別の態様では、本発明は、本明細書中に記載の方法またはプロセスで作製したSDABを含有するデバイス、シリンジまたはバイアルが含まれるキットまたは製品を特徴とする。
【0050】
本明細書中で引用するすべての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれている。
【0051】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】ATN−103の予測された構造を示す模式図である。
【図2】ATN−103ポリペプチド鎖のアミノ酸配列(配列番号1)を示す図である。
【図3】ATN−103の精製プロセスの流れ図である。
【図4A】完全長ブドウ球菌プロテインA(SpA)のアミノ酸配列を示す図である(配列番号11)。
【図4B】SpAの改変されたドメインBのアミノ酸配列を示す図である(配列番号12)。α−ヘリックス領域を太字で示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、1つまたは複数の単一結合ドメイン(たとえば1つまたは複数のナノボディ分子)が含まれるSDAB分子が、プロテインAまたはその機能的変異体と相互作用、たとえばそれと結合することによって、SDAB分子の精製においてクロマトグラフィーのプロテインAに基づく親和性様式の使用が可能となるという発見に、少なくとも部分的に基づく。したがって、本発明は、プロテインAに基づくアフィニティークロマトグラフィーを用いた、相補的抗体ドメインと免疫グロブリンFc領域を欠く1つまたは複数の単一結合ドメイン(たとえば1つまたは複数のナノボディ分子)とが含まれる抗原結合融合ポリペプチドを精製または分離するプロセスおよび方法に関する。
【0054】
本発明がより容易に理解され得るために、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は詳細な説明の全体にわたって記載する。
【0055】
本明細書中で使用する冠詞「a」および「an」とは、1つまたは複数(たとえば少なくとも1つ)の冠詞の文法上の目的語をいう。
【0056】
本明細書中で使用する用語「または(or)」とは、内容により明らかにそうでないと指定される場合以外は、用語「および/または」を意味し、それと交換して使用可能である。
【0057】
用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は本明細書中で交換して使用可能である。
【0058】
「約(about)」および「約(approximately)」とは、一般に、測定した量の、測定の性質または精度を考慮して許容される度合の誤差を意味する。例示的な誤差の度合は、所定の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。
【0059】
用語「SDAB分子調製物」とは、SDAB分子および/または1つまたは複数の所望しない夾雑物質を含有する任意の組成物をいう。調製物は、たとえば本明細書中に記載のクロマトグラフィーカラム、たとえばプロテインAに基づく支持体または陽イオン交換支持体を通すことによって、部分的に分離または精製し得る。
【0060】
用語「クロマトグラフィー」とは、混合物を吸着剤と接触させることによって、混合物中の化学的に異なる分子を互いから分離することをいい、1つの分子クラスが、吸着剤上に可逆的に結合するまたは吸着される。最も弱く吸着剤に吸着したまたは吸着剤によって保持される分子を、より強力に吸着したまたは保持されるものが放出されない条件下で、吸着剤から放出させる。
【0061】
用語「通過モード(flow-through
mode)」とは、調製物中に含有される少なくとも1つのSDAB分子がクロマトグラフィー樹脂または支持体を通過する一方で、少なくとも1つの潜在的な夾雑物質または不純物がクロマトグラフィー樹脂または支持体と結合することを意図する、SDAB分子調製物の分離技法をいう。通過モードは、たとえばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーにおいて使用し得る。
【0062】
「結合モード」とは、調製物中に含有される少なくとも1つの抗体分子がクロマトグラフィー樹脂または支持体と結合する一方で、少なくとも1つの夾雑物質または不純物が通過する、SDAB分子調製物の分離技法をいう。結合モードは、たとえばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーにおいて使用し得る。
【0063】
「夾雑物質」とは、精製するタンパク質の試料中に存在する精製するタンパク質以外の任意の外来または好ましくない分子、特に、DNA、RNA、またはタンパク質などの生物学的巨大分子をいう。夾雑物質には、たとえば、精製するタンパク質を組換え発現させるために使用した細胞からの他の宿主細胞タンパク質、プロテインAなどの、以前のアフィニティークロマトグラフィーステップ中に試料内に浸出し得る、アフィニティークロマトグラフィーステップで使用した吸収剤の一部であるタンパク質、および、標的タンパク質自体の誤折り畳みされた変異体が含まれる。
【0064】
「宿主細胞タンパク質」には、精製するタンパク質をコードしているDNAを導入する宿主細胞の天然に存在するゲノムによってコードされているタンパク質が含まれる。宿主細胞タンパク質は精製するタンパク質の夾雑物質である場合があり、そのレベルは精製によって低下させ得る。宿主細胞タンパク質は、とりわけ、ゲル電気泳動および染色ならびに/またはELISAアッセイを含めた任意の適切な方法によってアッセイすることができる。宿主細胞タンパク質には、たとえば、組換えタンパク質の発現の産物として産生される、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)タンパク質(CHOP)が含まれる。
【0065】
用語「高分子量凝集体」または「HMWA」とは、少なくとも2つの抗体分子の会合をいう。会合は、それだけには限定されないが、共有、非共有、ジスルフィド、または非還元性架橋結合を含めた任意の方法によって生じ得る。少なくとも2つの分子は、同じまたは異なる抗原と結合し得る。
【0066】
本明細書中で使用する用語「プロテインA」および「プロテインAに基づく支持体」などの関連する語句には、プロテインA(たとえば組換えもしくは単離したプロテインA)またはその機能的変異体が含まれることを意図する。一実施形態では、プロテインAは、N末端から順にE、D、A、BおよびCドメインとして知られる約50〜60個のアミノ酸残基の5個のドメインからなる、完全長ブドウ球菌プロテインA(SpA)である。(Sjodhal、Eur J Biochem、78:471〜490(1977)、Uhlenら、J.Biol.Chem.、259:1695〜1702(1984))。これらのドメインは約58個の残基を含有し、それぞれが約65%〜90%のアミノ酸配列の同一性を共有する。プロテインAと抗体との間の結合研究により、SpAの5個のドメインすべて(E、D、A、BおよびC)はそのFc領域を介してIgGと結合する一方で、ドメインDおよびEは顕著なFab結合を示すことが示されている(Ljungbergら、Mol.Immunol.、30(14):1279〜1285(1993)、Robenら、J.Immunol.、154:6437〜6445(1995)、Starovasnikら、Protein Sci、8:1423〜1431(1999))。Bドメインの機能的類似体およびエネルギーを最小限にした型であるZ−ドメイン(Nilssonら、Protein Eng、1:107〜113(1987))は、抗体可変ドメイン領域と無視できる結合を有することが示されている(Cedergrenら、Protein Eng、6(4):441〜448(1993)、Ljungbergら(1993)上記、Starovasnikら(1999)上記)。プロテインAには、図4Aに示すSpAのアミノ酸配列(配列番号11)、またはそれに実質的に同一なアミノ酸配列が含まれてもよい。他の実施形態では、プロテインAは、E、D、A、Bおよび/もしくはC、またはその改変された形態から選択される少なくとも1つのドメインが含まれるSpAの機能的変異体である。たとえば、SpAの機能的変異体には、SpAの少なくともドメインB、または、本明細書中でドメインZとも呼ばれる、1つもしくは複数の置換されたアスパラギン残基を有するドメインBの変異体が含まれてもよい。一実施形態では、SpAの機能的変異体には、図4Bに示す配列番号12のアミノ酸配列、またはそれに実質的に同一なアミノ酸配列が含まれる。ドメインBまたは変異体ドメインBと、ドメインAおよび/もしくはC、ドメインE、Aおよび/もしくはC、またはドメインE、D、Aおよび/もしくはCのうちの1つまたは複数とを含む、プロテインAの機能的変異体の他の順列を使用することができる。組合せがSDAB分子と結合できる限りは、E、D、A、Bおよび/もしくはC、またはその機能的変異体の任意の組合せを使用することができる。
【0067】
「セラミックヒドロキシアパタイト」または「cHA」とは、高温で球状のマクロ多孔性セラミック形態へと焼結させた、不溶性の水酸化リン酸カルシウム、たとえば式[CaO(PO(OH)またはCa10(PO(OH)]を有するものをいう。用語「cHA」には、それだけには限定されないが、I型およびII型のセラミックヒドロキシアパタイトが包含される。具体的に指定しない限りは、「cHA」とは、それだけには限定されないが、20、40、および80μmを含めた任意の粒径をいう。
【0068】
ポリペプチドを「精製する」とは、タンパク質の試料中に存在し得る外来または好ましくない要素、特にタンパク質またはDNAなどの生物学的巨大分子の量を低下させることを意味する。外来タンパク質の存在は、ゲル電気泳動および染色ならびに/またはELISAアッセイを含めた任意の適切な方法によってアッセイし得る。DNAの存在は、ゲル電気泳動および染色ならびに/またはポリメラーゼ連鎖反応を用いたアッセイを含めた任意の適切な方法によってアッセイし得る。実施形態では、ポリペプチド、たとえばSDAB分子は、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い純度まで精製する。
【0069】
ポリペプチドは、標的ポリペプチドの濃度が開始生成物よりも生じる生成物で高くなるようなプロセスに混合物を供する場合に、タンパク質と他の夾雑物質とを含む混合物から「分離」(または「除去」)される。
【0070】
本発明の方法および組成物には、指定した配列を有するポリペプチド、またはそれに実質的に同一もしくは類似の配列、たとえば、指定した配列と少なくとも85%、90%、95%またはそれ以上同一である配列が包含される。アミノ酸配列についての文脈では、本明細書中で使用する用語「実質的に同一」とは、第1および第2のアミノ酸配列が共通の構造的ドメインおよび/または共通の機能的活性を有することができるように、第2のアミノ酸配列中のアラインメントしたアミノ酸残基にi)同一である、またはii)その保存的置換である、十分なまたは最小限の数のアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸をいう。たとえば、参照配列に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する共通の構造的ドメインを含有するアミノ酸配列をいう。
【0071】
また、前述のポリペプチドの断片、誘導体、類似体、または変異体、およびその任意の組合せも、本発明のポリペプチドとして含まれる。本発明のタンパク質に言及する際の用語「断片」、「変異体」、「誘導体」および「類似体」には、対応するネイティブ抗体またはポリペプチドの機能的特性の少なくとも一部を保持する、任意のポリペプチドが含まれる。本発明のポリペプチドの断片には、本明細書中の他の箇所に記述した特定の抗体断片に加えて、タンパク質分解断片および欠失断片が含まれる。本発明のポリペプチドの変異体には、上述の断片、およびアミノ酸の置換、欠失、または挿入が原因でアミノ酸配列が変更されたポリペプチドが含まれる。変異体は、天然に存在するまたは天然に存在しないものであってよい。天然に存在しない変異体は、当技術分野で知られている突然変異誘発技法を用いて生成し得る。変異体ポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸の置換、欠失または付加を含み得る。本発明の断片の誘導体は、ネイティブポリペプチド上には見つからない追加の特徴を示すように変更されたポリペプチドである。例には融合タンパク質が含まれる。また、変異体ポリペプチドは本明細書中で「ポリペプチド類似体」とも呼び得る。本明細書中で使用するポリペプチドの「誘導体」とは、機能的側鎖の反応によって化学的に誘導体化した1つまたは複数の残基を有する対象ポリペプチドをいう。また、20種の標準のアミノの1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するポリペプチドも、「誘導体」として含まれる。たとえば、4−ヒドロキシプロリンでプロリンを置換してよく、5−ヒドロキシリシンでリシンを置換してよく、3−メチルヒスチジンでヒスチジンを置換してよく、ホモセリンでセリンを置換してよく、オルニチンでリシンを置換してよい。
【0072】
用語「機能的変異体」とは、天然に存在する配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する、または実質的に同一のヌクレオチド配列によってコードされており、天然に存在する配列の1つまたは複数の活性を有することができるポリペプチドをいう。
【0073】
配列間の相同性または配列同一性(これらの用語は本明細書中で交換して使用可能である)の計算は以下のように行う。
【0074】
2つのアミノ酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列を最適な比較目的のためにアラインメントする(たとえば、最適アラインメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的のために非相同配列は無視することができる)。好ましい実施形態では、比較目的のためにアラインメントする参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。その後、対応するアミノ酸位置のアミノ酸残基を比較する。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基によって占有されている場合、分子はその位置で同一である(本明細書中で使用するアミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と等価である)。
【0075】
2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適アラインメントのために導入しなければならないギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮して、配列が共有する同一の位置の数の関数である。
【0076】
2つの配列間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は数学アルゴリズムを用いて達成することができる。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのどちらかを用い、ギャップの重み付け16、14、12、10、8、6、または4および長さの重み付け1、2、3、4、5、または6を用いて、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunsch((1970)J.Mol.Biol.、48:444〜453)のアルゴリズムを用いて決定する(http://www.gcg.comで利用可能)。さらに別の好ましい実施形態では、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、NWSgapdna.CMPマトリックスならびにギャップの重み付け40、50、60、70、または80および長さの重み付け1、2、3、4、5、または6を用いて、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを用いて決定する(http://www.gcg.comで利用可能)。特に好ましいパラメータ組(別段に指定しない限りは使用すべきものである)は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5を用いたBlossum62スコア付けマトリックスである。
【0077】
2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、PAM120の重み付け残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Miller((1989)CABIOS、4:11〜17)のアルゴリズムを用いて決定することができる。
【0078】
本明細書中に記載の核酸およびタンパク質配列は、たとえば他のファミリーメンバーまたは関連する配列を特定するために、公開データベースに対して検索を行うための「クエリー配列」として使用することができる。そのような検索は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.、215:403〜10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行って、本発明の核酸(配列番号1)分子に相同的なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行って、本発明のタンパク質(配列番号1)タンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップ付きアラインメントを得るために、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.、25:3389〜3402に記載のようにギャップ付きBLASTを利用することができる。BLASTおよびギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合は、それぞれのプログラム(たとえばXBLASTおよびNBLAST)の初期設定パラメータを使用することができる。
【0079】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(たとえば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分枝側鎖(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0080】
本発明の様々な態様を以下に詳述する。
【0081】
単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子
特定の実施形態では、本発明の方法によって精製したSDAB分子は、1つまたは複数のナノボディ分子からなる単鎖融合ポリペプチドである。たとえば、SDAB分子は、リンカー、たとえばペプチドリンカーを介して接続された1つまたは複数の標的抗原と結合する1つまたは複数のナノボディ分子を含む単鎖融合ポリペプチドとすることができる。
【0082】
本明細書中で使用する「融合ポリペプチド」とは、2つ以上の作動可能に会合した、たとえば連結した部分、たとえばタンパク質部分を含有するタンパク質をいう。典型的には、部分は共有結合している。部分は直接会合している、またはスペーサーもしくはリンカー(たとえば本明細書中に記載の連結基)を介して接続していることができる。融合ポリペプチドは標準の組換えDNA技法によって産生することができる。たとえば、異なるポリペプチド配列をコードしているDNA断片を、慣用技術に従って、たとえば、ライゲーションのための平滑末端または交互にずらした末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じて付着末端を埋めること、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを用いることによって、インフレームで一緒にライゲーションする。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成機を含めた慣用技術によって合成することができる。あるいは、2つの連続的な遺伝子断片間の相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを用いて遺伝子断片のPCR増幅を実施することができ、これらは、続いてアニーリングし、再増幅させてキメラ遺伝子配列を生じることができる(たとえばAusubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、1992を参照)。さらに、融合部分をコードしている多くの発現ベクターが市販されている。一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、単一の連続的なポリペプチド二量体もしくは三量体、または2つ以上の非連続的なポリペプチドなどのオリゴマーとして存在する。他の実施形態では、さらなるアミノ酸配列を融合タンパク質のNまたはC末端に付加して、発現、立体的柔軟性、検出および/または単離もしくは精製を容易にすることができる。
【0083】
単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子には、その相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である分子が含まれる。例には、それだけには限定されないが、重鎖可変ドメイン、軽鎖を天然に欠く結合分子、慣用の4本鎖抗体に由来する単一ドメイン、操作したドメインおよび抗体に由来するもの以外の単一ドメイン足場が含まれる。SDAB分子は、当技術分野の任意のもの、または任意の将来の単一ドメイン分子であり得る。SDAB分子は、それだけには限定されないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、サカナ、サメ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含めた任意の種に由来するものであり得る。また、この用語には、ラクダ科(Camelidae)およびサメ以外の種に由来する天然に存在する単一ドメイン抗体分子も含まれる。
【0084】
本発明の一態様では、SDAB分子は、サカナ中に見つかる免疫グロブリンの可変領域に由来することができる、たとえば、サメの血清中に見つかる新規抗原受容体(NAR)として知られる免疫グロブリンアイソタイプに由来するものとすることができる。NARの可変領域に由来する単一ドメイン分子(「IgNAR」)を産生する方法は、WO03/014161号およびStreltsov(2005)Protein Sci.、14:2901〜2909に記載されている。
【0085】
本発明の別の態様によれば、SDAB分子は、軽鎖を欠く重鎖として知られる、天然に存在する単一ドメイン抗原結合分子である。そのような単一ドメイン分子は、たとえば、WO9404678号およびHamers−Casterman,C.ら(1993)Nature、363:446〜448に開示されている。明確にする理由のために、軽鎖を天然に欠く重鎖分子に由来するこの可変ドメインは、慣用の4本鎖免疫グロブリンのVHと区別するために、VHHまたはナノボディとして知られる。そのようなVHH分子は、ラクダ科(Camelidae)種、たとえば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコから誘導することができる。ラクダ科(Camelidae)以外の他の種も軽鎖を天然に欠く重鎖分子を生じる場合があり、そのようなVHHは本発明の範囲内にある。
【0086】
特定の実施形態では、SDAB分子には、相補的抗体可変鎖の非存在下で少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン(1個、2個および/もしくは3個の相補性決定領域(CDR)が含まれる)(たとえば、対応する軽鎖可変領域(VL)の非存在下で重鎖可変領域(VH))、ならびに/または免疫グロブリン定常領域、たとえばFc領域(もしくはプロテインAと結合することができるその定常領域または部分)が含まれる。
【0087】
特定の実施形態では、SDAB分子には、重鎖および軽鎖の抗体可変のドメインもしくは鎖(たとえば完全長抗体)、または重鎖および軽鎖抗体断片(たとえば、Fab、F(ab’)断片、単一のポリペプチド鎖中に軽鎖および重鎖可変領域を有するscFv、もしくは抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片を有する、その抗原結合断片を有する抗体分子は含まれない。
【0088】
SDAB分子は、以下により詳細に記載するように、組換えの、CDR移植した、ヒト化した、ラクダ化した、脱免疫化したおよび/またはin vitroで作製した(たとえばファージディスプレイによって選択した)ものとすることができる。
【0089】
用語「抗原結合」には、標的抗原またはそのエピトープと結合する界面を形成する決定要因を含むポリペプチドの一部、たとえば本明細書中に記載の単一ドメイン分子が含まれることを意図する。タンパク質(またはタンパク質模倣体)に関して、抗原結合部位には、典型的には、標的抗原と結合する界面を形成する1つまたは複数のループ(少なくとも4個のアミノ酸またはアミノ酸模倣体からなる)が含まれる。典型的には、ポリペプチド、たとえば単一ドメイン抗体分子の抗原結合部位には、少なくとも1もしくは2個のCDR、またはより典型的には少なくとも3、4、5もしくは6個のCDRが含まれる。
【0090】
VHおよびVL領域は、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存的な領域が散在する、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる超可変領域へと細分することができる。フレームワーク領域およびCDRの程度は、いくつかの方法によって正確に定義されている(Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健社会福祉省、NIH Publication第91−3242号、Chothia,C.ら(1987)J.Mol.Biol.、196:901〜917、およびOxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されているAbM定義を参照)。一般に、たとえば、Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains.Antibody Engineering Lab Manual(Duebel,S.およびKontermann,R.編、Springer−Verlag、Heidelberg)を参照されたい。一般に、具体的に指定しない限りは、以下の定義、すなわち、重鎖可変ドメインのCDR1のAbM定義および他のCDRのKabat定義を使用する。さらに、KabatまたはAbM CDRに関して記載する本発明の実施形態は、Chothia超可変ループを用いても実装し得る。それぞれのVHおよびVLには、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された、3個のCDRおよび4個のFRが含まれる。
【0091】
用語「免疫グロブリン可変ドメイン」は、しばしば、当技術分野ではヒトまたは動物起源のVLまたはVHドメインと同一または実質的に同一であると理解される。免疫グロブリン可変ドメインは、特定の種、たとえばサメおよびラマにおいて、アミノ酸配列がヒトまたは哺乳動物のVLまたはVHとは異なるように進化している場合があることを理解されたい。しかし、これらのドメインが抗原結合に主に関与している。用語「免疫グロブリン可変ドメイン」には、典型的には、少なくとも1もしくは2個のCDR、またはより典型的には少なくとも3個のCDRが含まれる。
【0092】
「定常免疫グロブリンドメイン」または「定常領域」には、ヒトまたは動物起源のCL、CH1、CH2、CH3、またはCH4ドメインと同一または実質的に類似である免疫グロブリンドメインが含まれることを意図する。たとえばCharles A HasemannおよびJ.Donald Capra、Immunoglobulins:Structure and Function、William E.Paul編、Fundamental Immunology、第2版、209、210〜218(1989)を参照されたい。用語「Fc領域」とは、免疫グロブリンドメインCH2およびCH3またはこれらに実質的に類似の免疫グロブリンドメインが含まれる定常免疫グロブリンドメインのFc部分をいう。
【0093】
特定の実施形態では、SDAB分子は、一価、または多特異性の分子(たとえば、二価、三価、もしくは四価の分子)である。他の実施形態では、SDAB分子は、単一特異性、二重特異性、三重特異性または四重特異性分子である。分子が「単一特異性」であるか「多特異性」、たとえば「二重特異性」であるかは、結合ポリペプチドが反応する異なるエピトープの数をいう。多特異性分子は、本明細書中に記載の標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、または標的ポリペプチドおよび異種ポリペプチドもしくは固体支持体材料などの異種エピトープに特異的であり得る。
【0094】
本明細書中で使用する用語「結合価」とは、SDAB分子中に存在する潜在的な結合ドメイン、たとえば抗原結合ドメインの数をいう。それぞれの結合ドメインは1つのエピトープと結合する。SDAB分子が複数の結合ドメインを含む場合、それぞれの結合ドメインは、「二価単一特異性」と呼ばれる2つの結合ドメインを有する抗体では同じエピトープと特異的に結合してよく、または「二価二重特異性」と呼ばれる2つの結合ドメインを有するSDAB分子では異なるエピトープと特異的に結合してよい。また、SDAB分子は、それぞれの特異性について二重特異性かつ二価であってもよい(「二重特異性四価分子」と呼ばれる)。二重特異性二価分子およびそれらを作製する方法は、たとえば、そのすべての開示が本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第5,731,168号、第5,807,706号、第5,821,333号、ならびに米国出願公開第2003/020734号および第2002/0155537号に記載されている。二重特異性四価分子およびそれらを作製する方法は、たとえば、そのどちらの開示も本明細書中に参照により組み込まれている、WO02/096948号およびWO00/44788号に記載されている。一般に、PCT公開WO93/17715号、WO92/08802号、WO91/00360号、WO92/05793号、Tuttら、J.Immunol.、147:60〜69(1991)、米国特許第4,474,893号、第4,714,681号、第4,925,648号、第5,573,920号、第5,601,819号、Kostelnyら、J.Immunol.、148:1547〜1553(1992)を参照されたい。
【0095】
特定の実施形態では、SDAB分子は、1つまたは複数の標的抗原と結合する相補的可変ドメインまたは免疫グロブリンの定常、たとえばFc領域を欠く、1つまたは複数の単一ドメイン分子(たとえばナノボディ)を含む単鎖融合ポリペプチドである。抗原結合ポリペプチドによって認識される例示的な標的抗原には、腫瘍壊死因子α(TNFα)が含まれる。特定の実施形態では、抗原結合単一ドメイン分子は、血清タンパク質、たとえば、血清アルブミン(ヒト血清アルブミン(HSA))またはトランスフェリンのうちの1つまたは複数から選択されるヒト血清タンパク質と結合する。
【0096】
TNFα
腫瘍壊死因子アルファは、当技術分野において関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎および多発性硬化症などの炎症性障害に関連していることで知られている。TNFaならびに受容体(CD120aおよびCD120b)はどちらも非常に詳細に研究されている。生物活性型のTNFaは三量体である。抗TNFa抗体を用いてTNFaの作用と拮抗するいくつかの戦略が開発されており、Remicade(登録商標)およびHumira(登録商標)などが現在市販されている。TNFaに対する抗体分子が知られている。TNFa結合単一ドメイン抗原結合分子(たとえばナノボディ)の数々の例は、そのすべての内容がその全体で本明細書中に参照により組み込まれている、WO2004/041862号、WO2004/041865号、WO2006/122786号に開示されている。単一ドメイン抗原結合分子のさらなる例は、そのすべての内容がその全体で本明細書中に参照により組み込まれている、US2006/286066号、US2008/0260757号、WO06/003388号、US05/0271663号、US06/0106203号に開示されている。他の実施形態では、TNFaおよび血清タンパク質、たとえばHSAに対する単一、二重、三重および他の多特異的な単一ドメイン抗体が、これらの参考文献中に開示されている。
【0097】
特定の実施形態では、TNFα結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されているナノボディのうちの1つまたは複数を含む。たとえば、TNFα結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されている一価、二価、三価TNFα結合ナノボディ分子とすることができる。例示的なTNFα結合ナノボディには、それだけには限定されないが、TNF1、TNF2、TNF3、そのヒト化形態(たとえば、TNF29、TNF30、TNF31、TNF32、TNF33)が含まれる。一価TNFα結合ナノボディのさらなる例は、WO2006/122786号の表8に開示されている。例示的な二価TNFα結合ナノボディ分子には、それだけには限定されないが、TNF55およびTNF56が含まれ、これは、ペプチドリンカーを介して連結された単一の融合ポリペプチドを形成する2つのTNF30ナノボディを含む(WO2006/122786号に開示されている)。二価TNFα結合ナノボディ分子のさらなる例は、TNF4、TNF5、TNF6、TNF7、TNF8としてWO2006/122786号の表19に開示されている。
【0098】
他の実施形態では、HSA結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されているナノボディのうちの1つまたは複数を含む。たとえば、HSA結合ナノボディ分子は、WO2006/122786号に開示されている一価、二価、三価のHSA結合ナノボディ分子とすることができる。他の実施形態では、HSA結合ナノボディ分子は、HSAと結合する結合特異性のうちの少なくとも1つを有する、単一特異性または多特異性の分子とすることができる。例示的なTNFα結合ナノボディには、それだけには限定されないが、WO06/122786号に開示されているALB1、そのヒト化形態(たとえば、ALB6、ALB7、ALB8、ALB9、ALB10)が含まれる。
【0099】
他の実施形態では、ナノボディ分子の単一ドメイン分子のうちの2つ以上を、連結基を用いてまたは用いずに、遺伝子またはポリペプチド融合体として融合する。連結基は当業者に明らかな任意の連結基とすることができる。たとえば、連結基は1〜100個の原子の長さの生体適合性ポリマーであってもよい。一実施形態では、連結基には、ポリグリシン、ポリセリン、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリイソロイシン、もしくはポリアルギニン残基、またはその組合せが含まれる、またはそれからなる。たとえば、ポリグリシンまたはポリセリンリンカーには、少なくとも5、7、8、9、10、12、15、20、30、35および40個のグリシンおよびセリン残基が含まれてもよい。使用することができる例示的なリンカーには、Gly−Ser反復、たとえば、1、2、3、4、5、6、7回またはそれ以上の反復の(Gly)−Ser反復(配列番号8)が含まれる。実施形態では、リンカーは、(Gly)−Ser−(Gly)−Ser(配列番号9)または((Gly)−Ser)n(nは4、5、または6である)(配列番号10)の配列を有する。
【0100】
1つの例示的な実施形態では、本明細書中で「ATN−103」と呼ぶ、標的抗原、たとえば、腫瘍壊死因子(TNFαa)と結合する2つの単一ドメイン抗体分子(たとえば2つのラクダ科可変領域)と、血清タンパク質、たとえばHSAと結合する1つの単一ドメイン抗体分子(たとえばラクダ科可変領域)との単鎖ポリペプチド融合体からなる抗原結合ポリペプチドが、プロテインAまたはその機能的変異体と結合することが示された。ATN−103は、ヒト化した三価の二重特異的なTNFaを阻害する融合タンパク質である。このタンパク質の抗原は腫瘍壊死因子−アルファ(TNF)である。図1は、ATN−103の予測される構造の模式図を提供する。この融合タンパク質はラクダ科に由来し、ヒト免疫グロブリンVHドメインと高度の配列および構造的な相同性を有する。その単一のポリペプチド鎖は、TNFαに対する2つの結合ドメインおよびヒト血清アルブミン(HSA)に対する1つの結合ドメインからなり、2つの9個のアミノ酸のG−Sリンカーがドメインを接続している。ATN−103の詳細な説明はWO06/122786号に提供されている。
【0101】
対応する発現ベクターのDNA配列から予測されたATN−103ポリペプチド鎖の完全なアミノ酸配列を図2に示す(配列番号1)(残基は、NH末端を残基番号1として開始して番号付けされている)。DNA配列によってコードされている最後のアミノ酸残基はS363であり、タンパク質のCOOH末端を構成する。ジスルフィド結合したATN−103の予測された分子質量(翻訳後修飾なし)は38434.7Daである。ATN−103はN−連結グリコシル化コンセンサス配列を含有しない。ナノエレクトロスプレーイオン化四重極飛行時間質量分析によって優勢なアイソフォームで観察された分子質量は38433.9Daに対応し、翻訳後修飾が存在しないことが確認された。
【0102】
図2では、相補性決定領域(CDR)に下線を引いた(配列番号2〜7)。予測される分子内ジスルフィド結合は、関与するシステイン残基の接続によって図示した。TNFとの結合ドメインを太字で示し、HSAとの結合ドメインを太字の斜体で示す。これらの結合ドメインを接続するアミノ酸リンカーは斜体である。ポリペプチド鎖についてシグナルペプチド(−19MGW・・・VHS−1)も示す。
【0103】
SDAB分子の調製
SDAB分子は、組換えの、CDR移植した、ヒト化した、ラクダ化した、脱免疫化した、および/またはin vitroで作製した(たとえばファージディスプレイによって選択した)、1つまたは複数の単一ドメイン分子(たとえばナノボディ)からなり得る。抗体およびSDAB分子を作製する技法、ならびに組換えによってそれらを改変する技法は当技術分野で知られており、以下に詳述する。
【0104】
当業者に知られている数々の方法が抗体を得るために利用可能である。たとえば、モノクローナル抗体は、既知の方法に従ってハイブリドーマを作製することによって産生し得る。その後、この様式で形成したハイブリドーマを酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および表面プラズモン共鳴(BIACORE(商標))分析などの標準の方法を用いてスクリーニングして、指定した抗原と特異的に結合するナノボディを産生する1つまたは複数のハイブリドーマを特定する。指定した抗原の任意の形態、たとえば、組換え抗原、天然に存在する形態、任意の変異体またはその断片、ならびにその抗原ペプチドを免疫原として使用し得る。
【0105】
抗体およびSDAB分子を作製する1つの例示的な方法には、タンパク質発現ライブラリ、たとえば、ファージまたはリボソームディスプレイライブラリのスクリーニングが含まれる。ファージディスプレイは、たとえば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号、Smith(1985)Science、228:1315〜1317、WO92/18619号、WO91/17271号、WO92/20791号、WO92/15679号、WO93/01288号、WO92/01047号、WO92/09690号、およびWO90/02809号に記載されている。
【0106】
ディスプレイライブラリの使用に加えて、指定した抗原を用いて非ヒト動物、たとえばげっ歯類、たとえば、マウス、ハムスター、またはラットを免疫化することができる。一実施形態では、非ヒト動物にはヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部が含まれる。たとえば、ヒトIg遺伝子座の大きな断片を用いてマウス抗体産生を欠くマウス株を遺伝子工学的に作製することが可能である。ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原に特異的なモノクローナル抗体を産生および選択し得る。たとえば、XENOMOUSE(商標)、Greenら(1994)Nature Genetics、7:13〜21、US2003−0070185号、1996年10月31日公開のWO96/34096号、および1996年4月29日出願のPCT出願PCT/US96/05928号を参照されたい。
【0107】
別の実施形態では、SDAB分子を非ヒト動物から得て、その後、改変する、たとえば、ヒト化、脱免疫化、キメラを、当技術分野で知られている組換えDNA技法を用いて生成し得る。キメラ抗体およびSDAB分子を作製するための様々な手法が記載されている。たとえば、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、81:6851、1985、Takedaら、Nature、314:452、1985、Cabillyら、米国特許第4,816,567号、Bossら、米国特許第4,816,397号、Tanaguchiら、欧州特許公開EP171496号、欧州特許公開0173494号、英国特許GB2177096B号を参照されたい。また、ヒト化抗体およびSDAB分子は、たとえば、ヒトの重鎖および軽鎖遺伝子を発現するが、内在性マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができないトランスジェニックマウスを用いても産生させ得る。Winterは、本明細書中に記載のヒト化抗体およびSDAB分子の調製に使用し得る例示的なCDR移植方法を記載している(米国特許第5,225,539号)。特定のヒト抗体のすべてのCDRを非ヒトCDRの少なくとも一部分で置き換えてよく、または、CDRの一部のみを非ヒトCDRで置き換えてもよい。ヒト化抗体およびSDAB分子と所定の抗原との結合に必要なCDRの数だけを置き換える必要がある。
【0108】
ヒト化抗体は、抗原結合に直接関与していないFv可変ドメインの配列を、ヒトFv可変ドメインの等価の配列で置き換えることによって作製することができる。ヒト化抗体またはその断片を作製する例示的な方法は、Morrison(1985)Science、229:1202〜1207、Oiら(1986)BioTechniques、4:214、ならびにUS5,585,089号、US5,693,761号、US5,693,762号、US5,859,205号、およびUS6,407,213によって提供されている。これらの方法には、少なくとも1つの重鎖または軽鎖からの免疫グロブリンFv可変ドメインの全体または一部をコードしている核酸配列を、単離する、操作する、および発現させることが含まれる。そのような核酸は、上述の所定の標的に対するナノボディを産生するハイブリドーマおよび他の供給源から得られ得る。その後、ヒト化したSDAB分子、たとえばナノボディ分子をコードしている組換えDNAを適切な発現ベクター内にクローニングすることができる。
【0109】
特定の実施形態では、ヒト化したSDAB分子、たとえばナノボディ分子を、保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖系列置換および/または復帰突然変異の導入によって最適化する。そのような変更された免疫グロブリン分子は当技術分野で知られているいくつかの技法の任意のものによって作製することができ(たとえば、Tengら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80:7308〜7312、1983、Kozborら、Immunology Today、4:7279、1983、Olssonら、Meth.Enzymol.、92:3〜16、1982)、PCT公開WO92/06193号またはEP0239400号の教示に従って作製し得る。
【0110】
SDAB分子、たとえばナノボディ分子をヒト化する技法はWO06/122786号に開示されている。
【0111】
また、SDAB分子、たとえばナノボディ分子は、WO98/52976号およびWO00/34317号に開示されている方法によるヒトT細胞エピトープの特異的な欠失または「脱免疫化」によっても改変し得る。手短に述べると、たとえばナノボディの重鎖および軽鎖可変ドメインを、MHCクラスIIと結合するペプチドについて分析することができる。これらのペプチドは潜在的なT細胞エピトープを表す(WO98/52976号およびWO00/34317号に定義)。潜在的なT細胞エピトープの検出には、WO98/52976号およびWO00/34317号に記載のように、「ペプチドスレッディング」と呼ばれるコンピュータモデリング手法を適用することができ、さらに、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを、VおよびV配列中に存在するモチーフについて検索することができる。これらのモチーフは18種の主要なMHCクラスII DRアロタイプのうちの任意のものと結合し、したがって潜在的なT細胞エピトープを構成する。検出された潜在的なT細胞エピトープは、可変ドメイン中の少数のアミノ酸残基を置換することによって、または好ましくは単一のアミノ酸置換によって排除することができる。典型的には、保存的置換を行う。排他的ではないが、多くの場合、ヒト生殖系列抗体配列中の位置に共通のアミノ酸を使用し得る。たとえば、ヒト生殖系列配列は、Tomlinsonら(1992)J.Mol.Biol.、227:776〜798、Cook,G.P.ら(1995)Immunol.Today、第16巻(5):237〜242、Chothia,D.ら(1992)J.Mol.Biol.、227:799〜817、およびTomlinsonら(1995)EMBO J.、14:4628〜4638に開示されている。V BASEディレクトリは、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的なディレクトリを提供する(Tomlinson,I.A.ら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、英国によって蓄積)。これらの配列は、ヒト配列源として、たとえば、フレームワーク領域およびCDRに使用することができる。また、たとえばU.S.6,300,064号に記載のように、コンセンサスヒトフレームワーク領域も使用することができる。
【0112】
SDAB分子、たとえばナノボディ分子は、タンパク質を産生するように遺伝子操作した宿主生細胞によって産生させることができる。細胞を遺伝子操作してタンパク質を産生させる方法は当技術分野で周知である。たとえばAusabelら編(1990)、Current Protocols in Molecular Biology(Wiley、New York)を参照されたい。そのような方法には、タンパク質をコードしておりその発現を可能にする核酸を宿主生細胞内に導入することが含まれる。これらの宿主細胞は、培養物中で成長させた細菌細胞、真菌細胞、または、好ましくは動物細胞とすることができる。細菌宿主細胞には、それだけには限定されないが大腸菌(Escherichia coli)細胞が含まれる。適切な大腸菌(E.coli)株の例には、HB101、DH5a、GM2929、JM109、KW251、NM538、NM539、および外来DNAを切断することができない任意の大腸菌(E.coli)株が含まれる。使用することができる真菌宿主細胞には、それだけには限定されないが、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびアスペルギルス属(Aspergillus)の細胞が含まれる。使用することができる動物細胞系のいくつかの例は、CHO、VERO、BHK、HeLa、Cos、MDCK、293、3T3、およびWI38である。当業者に周知の方法(たとえば、形質転換、ウイルス感染症、および/または選択)によって新しい動物細胞系を確立することができる。任意選択で、タンパク質は宿主細胞によって培地内に分泌されてもよい。
【0113】
改変SDAB分子
本発明の方法を使用して精製するSDAB分子、たとえばナノボディ分子は、フレームワーク領域のうちの1つ中の少なくとも1つのアミノ酸位置が、天然に存在するドメイン、たとえばVHドメインのアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有し得る。
【0114】
ヒト化SDAB分子などの本発明のSDAB分子の一部のアミノ酸配列は、フレームワーク領域のうちの少なくとも1つ中の少なくとも1つのアミノ酸位置が、天然に存在するドメイン、たとえば天然に存在するVHI−Iドメインのアミノ酸配列と異なってもよいことを理解されたい。
【0115】
また、本発明には、SDAB分子の誘導体の精製方法も含まれる。そのような誘導体は、一般に、SDAB分子および/または本明細書中に開示したSDAB分子を形成するアミノ酸残基のうちの1つもしくは複数の修飾によって、特に化学的および/または生物学的(たとえば酵素的)修飾によって得ることができる。
【0116】
そのような修飾の例、およびそのような様式(すなわち、タンパク質主鎖上であってもよいが、好ましくは側鎖上)で修飾することができるSDAB分子配列内のアミノ酸残基の例、そのような修飾を導入するために使用することができる方法および技法、ならびにそのような修飾の潜在的な使用および利点は、当業者に明らかであろう。
【0117】
たとえば、そのような修飾は、SDAB分子内または上への1つまたは複数の官能基、残基または部分、特に、SDAB分子に1つまたは複数の所望の特性または機能性を与える1つまたは複数の官能基、残基または部分の導入(たとえば、共有結合または他の適切な様式による)を含み得る。そのような官能基の例は当業者に明らかであろう。
【0118】
たとえば、そのような修飾は、SDAB分子の半減期、溶解度および/もしくは吸収を増加させる、SDAB分子の免疫原性および/もしくは毒性を低下させる、SDAB分子の任意の望ましくない副作用を排除もしくは減弱させる、ならびに/またはSDAB分子に他の有利な特性を与えるおよび/もしくはその望ましくない特性を低下させる、または前述のうちの2つ以上の任意の組合せの、1つまたは複数の官能基の導入(たとえば、共有結合または任意の他の適切な様式による)を含み得る。そのような官能基およびそれらを導入する技法の例は当業者に明らかであり、本明細書中上記で引用した一般的な背景技術中に言及したすべての官能基および技法、ならびにそれ自体が医薬タンパク質の修飾、特に抗体または抗体断片(ScFvおよび−148−単一ドメイン抗体が含まれる)の修飾のために知られている官能基および技法を広く含むことができ、これについてたとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1980)を参照する。そのような官能基は、やはり当業者に明らかなように、本発明のナノボディに直接(たとえば共有)連結していてよく、または適切なリンカーもしくはスペーサーを介していてもよい。
【0119】
半減期を増加させるおよび/または医薬タンパク質の免疫原性を低下させるための1つの幅広く使用されている技法は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)またはその誘導体(メトキシポリ(エチレングリコール)すなわちmPEGなど)等の適切な薬理学的に許容されるポリマーの付着を含む。一般に、当技術分野で抗体ならびに抗体断片(それだけには限定されないが、(単一)ドメイン抗体およびScFvが含まれる)に使用されるpeg化などの、peg化の任意の適切な形態を使用することができ、たとえば、Chapman、Nat.Biotechnol.、54、531〜545(2002)、VeroneseおよびHarris、Adv.Drug Deliv.Rev.、54、453〜456(2003)、HarrisおよびChess、Nat.Rev.Drug.Discov.、2、(2003)およびWO04/060965号に言及されている。タンパク質をpeg化するための様々な試薬も、たとえばNektar Therapeutics、米国から市販されている。
【0120】
好ましくは、部位特異的peg化、特にシステイン残基を介したものを使用する(たとえばYangら、Protein Engineering、16、10、761〜770(2003)を参照)。たとえば、この目的のために、PEGはSDAB分子中に天然に存在するシステイン残基に付着していてよく、SDAB分子は、すべてそれ自体が当業者に知られているタンパク質工学の技法を用いて、PEGと付着するための1つもしくは複数のシステイン残基が適切に導入されるように修飾してもよく、または、PEGの付着のための1つもしくは複数のシステイン残基を含むアミノ酸配列を本発明のナノボディのNおよび/もしくはC末端と融合させてもよい。
【0121】
好ましくは、SDAB分子では、5000より大きい、たとえば10,000より大きく200,000未満、たとえば100,000未満、たとえば20,000〜80,000の範囲の分子量を有するPEGを使用する。
【0122】
peg化に関して、一般に、本発明には、1つまたは複数のアミノ酸位置でpeg化されており、好ましくは前記peg化が、(1)in vivo半減期を増加させる、(2)免疫原性を低下させる、(3)peg化のそれ自体知られている1つもしくは複数のさらなる有益な特性を提供する、(4)SDAB分子の親和性に本質的に影響を与えない(たとえば、以下の実施例に記載したものなどの適切なアッセイによって決定したところ、前記親和性を90%以下、好ましくは50%以下、および10%以下しか低下させない)、ならびに/または(4)SDAB分子の他の所望の特性のいずれにも影響を与えないものである、任意のSDAB分子も包含されることにも注意するべきである。適切なPEG基およびそれらを特異的または非特異的に付着させる方法は、当業者に明らかであろう。
【0123】
そのようなpeg化のための適切なキットおよび試薬は、たとえばNektar(CA、米国)から得ることができる。
【0124】
別の、通常はあまり好ましくない修飾は、SDAB分子の発現に使用する宿主細胞に応じて、通常は翻訳時および/または翻訳後修飾の一部としての、N−連結またはO−連結グリコシル化を含む。
【0125】
クロマトグラフィープロセス
タンパク質を精製するプロセスは多くの場合数々のステップを必要とし、それぞれのステップは収率のさらなる低下をもたらす。プロテインAに基づくクロマトグラフィーは、一般的に使用される多くの技法のうちの1つである。プロテインAに基づくクロマトグラフィーによるタンパク質精製は、固定化したプロテインAリガンドを含有するカラム(典型的には、プロテインAまたはその機能的誘導体からなる吸着剤を固定させた、メタクリレートコポリマーまたはアガロースビーズの改変支持体を充填したカラム)で行い得る。カラムは、典型的には、高い塩濃度の緩衝液で平衡化し、適合性のある非変性の高塩溶液中の、タンパク質の混合物(標的タンパク質+夾雑タンパク質)を含有する試料をカラムに充填する。混合物がカラムを通る際、標的タンパク質はカラム内の吸着剤と結合する一方で、結合しなかった夾雑物質は通過する。その後、低下した塩濃度を用いて結合したタンパク質をカラムから溶出させる。典型的には、標的タンパク質は、カラムを、徐々にまたは段階的に低下する勾配で適用する塩濃度で溶出させて、様々な結合タンパク質をその放出に貢献する特定の塩濃度で選択的に放出させ、より精製されたタンパク質を含有する画分が得られるまで個別の画分を回収することによって、回収し得る。通過液画分を個別に一定期間にわたって回収することによって、特定のタンパク質を含有する画分を単離することができる。標的タンパク質がカラムと結合する(一方で夾雑物質を通過させる)プロセスでは、プロテインAに対してより高い親和性を有する吸着剤を典型的に使用して、より広範囲のタンパク質と結合させ、これを、タンパク質の放出に貢献する特定の画分中で回収する。
【0126】
本発明のプロセスは、塩沈殿、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、または任意の他の一般的に使用されるタンパク質精製技法などの、他のタンパク質精製方法と組み合わせて使用することができる。しかし、本発明のプロセスは他の精製ステップの必要性を排除するまたは顕著に低下させることが企図される。
【0127】
本発明の任意またはすべてのクロマトグラフィーステップは、任意の機械的手段によって実施することができる。クロマトグラフィーは、たとえばカラム中で実施し得る。カラムは、圧力を用いてまたは用いずに、上から下または下から上に流し得る。カラム中の流体の流れの方向は、クロマトグラフィープロセス中に逆転させ得る。また、クロマトグラフィーは、固体媒体を、試料を充填、洗浄、および溶出させるために使用する液体から、重力、遠心分離、または濾過を含めた任意の適切な手段によって分離するバッチプロセスを用いても実施し得る。また、クロマトグラフィーは、試料を、試料中の一部の分子を他のものよりも強力に吸着または保持するフィルターと接触させることによっても、実施し得る。以下の説明では、本発明の様々な実施形態は、カラム中で実施するクロマトグラフィーについての文脈で記載する。しかし、当業者は、本教示を、バッチプロセスまたはフィルターを用いるものなどの他の様式にも容易に適用し得るため、カラムの使用は、使用し得るいくつかのクロマトグラフィー様式のうちの単なる1つに過ぎず、カラムを用いた本発明の例示は、本発明をカラムクロマトグラフィーに適用することを限定しないことを理解されたい。
【0128】
適切な支持体は、特許請求した方法の実施に必要な特徴を有する、任意の現在利用可能なまたは後に開発される材料であってよく、任意の合成、有機、または天然のポリマーに基づくものであり得る。たとえば、一般的に使用される支持体物質には、セルロース、ポリスチレン、アガロース、セファロース、ポリアクリルアミドポリメタクリレート、デキストランおよびデンプンなどの有機物質、ならびに木炭、シリカ(ガラスビーズや砂)およびセラミック材料などの無機物質が含まれる。適切な固体支持体は、たとえば、Zaborsky、「Immobilized Enzymes」、CRC Press、1973、ページ28〜46の表IVに開示されている。
【0129】
平衡化およびクロマトグラフィーの前に、クロマトグラフィー媒体(支持体および支持体に固定された吸着剤)を、選択した溶液、たとえば塩および/または緩衝溶液中で前平衡化し得る。前平衡化は、クロマトグラフィー媒体を再生および/または貯蔵するために使用する溶液を置き換える役割を果たす。当業者は、前平衡化溶液の組成は、貯蔵溶液および続くクロマトグラフィーで使用する溶液の組成に依存することを理解されよう。したがって、適切な前平衡化溶液には、クロマトグラフィーを行うために使用するものよりも高い濃度でもよい、クロマトグラフィーを行うために使用するものと同じ緩衝液または塩が含まれ得る。クロマトグラフィーに使用することができる緩衝液および塩を以下に記載する。たとえば、クロマトグラフィーを行うために使用する溶液が所定の濃度のリン酸ナトリウムを含む場合、前平衡化を、より高い濃度のリン酸ナトリウムを含む溶液中で行い得る。この例示として、クロマトグラフィーを行うために使用する溶液が約0.5ミリモル〜約50ミリモルのリン酸ナトリウムを含む場合、前平衡化は、約0.2モル〜約0.5モルの濃度のリン酸ナトリウム、より好ましくは約0.3モル〜約0.4モル(両端を含む)の濃度のリン酸ナトリウムを含む溶液で行い得る。
【0130】
試料をカラムに施用する前に、カラムを、タンパク質のクロマトグラフィーを行うために使用する緩衝液または塩で平衡化することができる。以下に記述するように、クロマトグラフィー(および精製するタンパク質の充填)は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、塩化物、フッ化物、酢酸塩、リン酸塩、および/もしくはクエン酸塩ならびに/またはトリス緩衝液を含めた様々な緩衝液または塩中で行うことができる。クエン酸緩衝液および塩は廃棄が容易なため、当業者に好まれる。そのような緩衝液または塩は、少なくとも約5.5のpHを有することができる。一部の実施形態では、平衡化は、トリスまたはリン酸ナトリウム緩衝液を含む溶液中で行い得る。リン酸ナトリウム緩衝液は、約0.5ミリモル〜約50ミリモルの濃度、より好ましくは約15ミリモル〜35ミリモルの濃度であってよい。好ましくは、平衡化は少なくとも約5.5のpHで行う。平衡化は、約6.0〜約8.6のpH、好ましくは約6.5〜7.5のpHで行い得る。最も好ましくは、溶液は、約25ミリモルの濃度および約6.8のpHでリン酸ナトリウム緩衝液を含む。
【0131】
適切な緩衝液には、それだけには限定されないが、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、アセテート緩衝液、および/またはクエン酸緩衝液が含まれる。許容される塩には、それだけには限定されないが、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ならびにそのカリウム、マグネシウム、およびカルシウム塩、ならびにこれらの塩の組合せが含まれ得る。他の実施形態では、塩にはクエン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムが含まれる。クロマトグラフィー系に使用する塩濃度の許容される範囲は、典型的には、0〜約2Mのクエン酸ナトリウム、0〜約4Mの塩化ナトリウム、0〜約3Mの硫酸アンモニウム、0〜約1Mの硫酸ナトリウムおよび0〜約2Mのリン酸ナトリウムの範囲である。塩濃度の範囲には、0〜約1Mのクエン酸ナトリウム、0〜約2Mの塩化ナトリウム、0〜約1.5Mの硫酸アンモニウム、0〜約1Mの硫酸ナトリウムおよび0〜約1.5Mのリン酸ナトリウムが含まれ得る。他の緩衝液および塩も使用することができる。充填後、吸着剤を追加分の同じ溶液で洗浄して、標的タンパク質(吸着剤と非結合)が吸着剤を通過することを引き起こすことができる。その後、タンパク質を通過液画分中で回収する。夾雑物質が結合する一方で標的タンパク質が結合しない条件は、当業者が容易に最適化することができる。本明細書中に記述した塩濃度は例示的であり、当技術分野で知られているように、流速、温度、および溶出時間を変動させることによって、他の塩および塩濃度を使用することができる。
【0132】
カラムを使用する条件は、当技術分野で知られているように、具体的なカラムに応じて変動する。ほとんどの目的のタンパク質では、pH範囲は約6.0〜約8.6、または約6.5〜約7.5であり得る。しかし、特定のタンパク質はpH極限に耐性を有することが知られており、より広い範囲が可能であり得る。典型的な条件には、5〜7のpH範囲および0〜約0.8Mのクエン酸ナトリウムの濃度範囲(たとえば0.5Mのクエン酸ナトリウム、pH6.0)が含まれる。
【0133】
当業者は、どの緩衝液または塩が精製する特定のタンパク質に適切であるかの決定において、当技術分野の知識によって導かれるであろう。さらに、当業者は、選択した緩衝液または塩の使用する最適濃度を、たとえば、夾雑物質がカラムと結合する一方で目的のタンパク質が通過液画分中に通過する特定の緩衝液または塩の条件を確立することによって、容易に決定することができる。カラムの溶出液画分を回収および分析して、標的タンパク質および夾雑物質が溶出される緩衝液または塩の濃度を決定することができる。適切な分析には、たとえば、伝導率計を用いた伝導率の測定(試料中の塩濃度を決定するため)およびゲル電気泳動またはELISAアッセイ(試料中のタンパク質が何であるかを決定するため)が含まれる。任意選択により、カラムを、タンパク質試料を充填したものと同じ溶液の追加分で洗浄すること、この洗浄溶液も回収し、通過液の液体と合わせることができる。
【0134】
精製するタンパク質を含む通過液および任意選択で洗浄液の回収に続いて、カラムと結合したままであってもよいタンパク質を、クロマトグラフィーに使用した緩衝液または塩を含むが、より低いイオン強度で含む溶液を用いてクロマトグラフィー媒体をストリッピングすることによって放出させて、夾雑タンパク質を放出させ得る。その後、クロマトグラフィー媒体からほとんどまたはすべてのタンパク質を放出させ、クロマトグラフィー媒体中に存在し得るすべての微生物夾雑を低下または排除する効果を有する溶液を用いて、カラムを再生させ得る。一実施形態では、そのような溶液は水酸化ナトリウムを含み得る。他の試薬も使用することができる。続いて、カラムをすすぎ、微生物成長を防止することができる溶液中に貯蔵し得る。そのような溶液は水酸化ナトリウムを含み得るが、他の試薬も適切な場合がある。
【0135】
精製の任意の段階での試料のタンパク質濃度は、任意の適切な方法によって決定することができる。そのような方法は当技術分野で周知であり、1)ローリーアッセイ、ブラッドフォードアッセイ、スミスアッセイ、コロイド金アッセイなどの比色方法、2)タンパク質のUV吸収特性を利用する方法、および3)同じゲル上の既知の量のタンパク質標準との比較に依存する、ゲル上の染色されたタンパク質バンドに基づく視覚的推定が含まれる。たとえば、Stoschek(1990)、Quantitation of Protein、Guide to Protein Purification、Methods in Enzymol.、182:50〜68を参照されたい。
【0136】
標的タンパク質および試料中に存在し得る夾雑タンパク質は、任意の適切な手段によって監視することができる。好ましくは、技法は、約2百万分率(ppm)(精製するタンパク質1ミリグラムあたりのナノグラムとして計算)〜500ppmの範囲で夾雑物質が検出されるのに十分な感度であるべきである。たとえば、当技術分野で周知の方法である酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、第2のタンパク質によるタンパク質の夾雑を検出し得る。たとえば、その全体が本明細書中に参照により組み込まれているReen(1994)、Enzyme−Linked Immunosorbent Assay(ELISA)、Basic Protein and Peptide Protocols、Methods Mol.Biol.、32:461〜466を参照されたい。一態様では、そのような他のタンパク質によるタンパク質の夾雑は、本明細書中に記載の方法の後に、好ましくは少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約3倍、より好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約20倍、より好ましくは少なくとも約30倍、より好ましくは少なくとも約40倍、より好ましくは少なくとも約50倍、より好ましくは少なくとも約60倍、より好ましくは少なくとも約70倍、より好ましくは少なくとも約80倍、より好ましくは少なくとも約90倍、最も好ましくは少なくとも約100倍低下させることができる。
【0137】
別の態様では、本明細書中に記載の方法の後の、そのような他のタンパク質によるタンパク質の夾雑は、約10,000ppm以下、好ましくは約2500ppm以下、より好ましくは約400ppm以下、より好ましくは約360ppm以下、より好ましくは約320ppm以下、より好ましくは約280ppm以下、より好ましくは約240ppm以下、より好ましくは約200ppm以下、より好ましくは約160ppm以下、より好ましくは約140ppm以下、より好ましくは約120ppm以下、より好ましくは約100ppm以下、より好ましくは約80ppm以下、より好ましくは約60ppm以下、より好ましくは約40ppm以下、より好ましくは約30ppm以下、より好ましくは約20ppm以下、より好ましくは約10ppm以下、最も好ましくは約5ppm以下である。そのような夾雑は、検出不可能なレベル〜約10ppmまたは約10ppm〜約10,000ppmの範囲とすることができる。タンパク質を薬理学的使用のために精製する場合は、当業者には、第2のタンパク質の好ましいレベルは患者あたりに投与するタンパク質の1週間用量に依存する場合があり、患者が1週間あたりに特定の量を超える夾雑タンパク質を受容しないことを目的とすることが理解されよう。したがって、タンパク質の所要の1週間用量が減少した場合、第2のタンパク質による夾雑のレベルは増加する可能性があり得る。
【0138】
精製するタンパク質の試料中に存在し得るDNAの量は、任意の適切な方法によって決定することができる。たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応を利用したアッセイを使用することができる。任意選択により、この技法で10ピコグラム/タンパク質1ミリグラム以上のレベルのDNA夾雑を検出できる。DNAレベルは、HICによって、任意選択で約2倍、好ましくは約5倍、より好ましくは約10倍、より好ましくは約15倍、最も好ましくは約20倍低下させることができる。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー後のDNAのレベルは、約20ピコグラム未満/タンパク質1ミリグラム、好ましくは15ピコグラム未満/タンパク質1ミリグラム、より好ましくは10ピコグラム未満/タンパク質1ミリグラム、最も好ましくは5ピコグラム未満/タンパク質1ミリグラムであってもよい。
【0139】
プロテインAに基づくクロマトグラフィー
一実施形態では、抗体調製物を含有する収集培地をプロテインAクロマトグラフィーによって精製し得る。ブドウ球菌プロテインA(SpA)は、N末端から順にE、D、A、BおよびCとして命名されている5個のほぼ相同なドメインからなる42kDaのタンパク質である(Sjodhal、Eur J Biochem、78:471〜490(1977)、Uhlenら、J.Biol.Chem.、259:1695〜1702(1984))。これらのドメインは約58個の残基を含有し、それぞれが約65%〜90%のアミノ酸配列の同一性を共有する。プロテインAと抗体との間の結合研究により、SpAの5個のドメインすべて(E、D、A、BおよびC)はそのFc領域を介してIgGと結合する一方で、ドメインDおよびEは顕著なFab結合を示すことが示されている(Ljungbergら、Mol.Immunol.、30(14):1279〜1285(1993)、Robenら、J.Immunol.、154:6437〜6445(1995)、Starovasnikら、Protein Sci、8:1423〜1431(1999)。Bドメインの機能的類似体およびエネルギーを最小限にした型であるZ−ドメイン(Nilssonら、Protein Eng、1:107〜113(1987))は、抗体可変ドメイン領域と無視できる結合を有することが示されている(Cedergrenら、Protein Eng、6(4):441〜448(1993)、Ljungbergら(1993)上記、Starovasnikら(1999)上記)。
【0140】
最近まで、市販のプロテインA固定相は、その固定されたリガンドとしてSpA(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)から単離または組換えによって発現)を用いていた。これらのカラムを用いる場合、非タンパク質性リガンドを用いた他のクロマトグラフィーモードで典型的に行われるようにカラムの再生および衛生化にアルカリ性条件を使用することができなかった(Ghoseら、Biotechnology and Bioengineering、第92巻(6)(2005))。より強力なアルカリ性条件に耐えるために、新しい樹脂(MabSELECT(商標)SuRe)が開発されている(Ghoseら(2005)上記)。タンパク質工学の技法を用いて、いくつかのアスパラギン残基をプロテインAのZ−ドメイン中で置き換え、新しいリガンドが4つの同一に改変されたZ−ドメインの四量体として作製された(Ghoseら(2005)上記)。
【0141】
したがって、精製方法は、市販のプロテインAカラムを用いて、製造者の仕様書に従って実施することができる。添付の実施例に記載するように、MabSELECT(商標)カラムまたはMabSELECT(商標)SuReカラム(GE Healthcare Products)を使用することができる。MabSELECT(商標)とは、その固定されたリガンドとして組換えSpAを含有する市販の樹脂である。これは、充填床クロマトグラフィーによって抗体分子を大きな媒体から捕捉する。MabSELECT(商標)の組換えプロテインAリガンドは、IgGとの結合能力を増強させるプロテインAリガンドの配向を好むように操作されている。IgGの結合領域に対するプロテインAリガンドの特異性は、ネイティブプロテインAのそれに類似している。MabSELECT(商標)SuReカラムは、MabSELECT(商標)に使用される同様に高度に架橋結合されたアガロースマトリックスを有し、使用するリガンドは4つの同一に改変されたZ−ドメインの四量体である(GE Healthcare Products)。プロテインAカラムの他の商業的供給源には、それだけには限定されないが、制御孔ガラスと共有結合したプロテインAからなるPROSEP−A(商標)(Millipore、英国)が含まれ、有用に用いることができる。他の有用なプロテインA製剤には、プロテインA Sepharose FAST FLOW(商標)(Amersham Biosciences、Piscataway,NJ)、およびTOYOPEARL(商標)650MプロテインA(TosoHaas Co.、Philadelphia,PA)が含まれる。
【0142】
ヒドロキシアパタイト樹脂
様々なヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂は商業的に入手可能であり、この材料の任意の入手可能な形態を本発明の実施に使用することができる。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに適した条件の詳細な説明は、その内容の全体が本明細書中に参照により組み込まれているWO05/044856号に提供されている。
【0143】
本発明の一実施形態では、ヒドロキシアパタイトは結晶形である。本発明で使用するためのヒドロキシアパタイトは、凝集させて粒子を形成させ、高温で安定な多孔性のセラミック塊へと焼結したものであり得る。ヒドロキシアパタイトの粒径は広範囲に変動し得るが、典型的な粒径範囲は直径1μm〜1,000μmであり、10μm〜100μmであり得る。本発明の一実施形態では、粒径は20μmである。本発明の別の実施形態では、粒径は40μmである。本発明のさらに別の実施形態では、粒径は80μmである。
【0144】
いくつかのクロマトグラフィー支持体をcHAカラムの調製に用いてよく、最も広範に使用されるものはI型およびII型ヒドロキシアパタイトである。I型は高いタンパク質結合能力および酸性タンパク質に対してより良好な能力を有する。しかし、II型はより低いタンパク質結合能力を有するが、核酸および特定のタンパク質のより良好な分解能を有する。また、II型の材料はアルブミンに対して非常に親和性を有し、免疫グロブリンの多くの種およびクラスの精製に特に適している。特定のヒドロキシアパタイト型の選択は、当業者が決定することができる。
【0145】
本発明は、カラムに充填された緩いヒドロキシアパタイト樹脂、または連続式環状クロマトグラフィーのものを用いて使用し得る。本発明の一実施形態では、セラミックヒドロキシアパタイト樹脂はカラムに充填されている。カラム寸法の選択は当業者が決定することができる。本発明の一実施形態では、少なくとも0.5cmのカラム直径および約20cmの床高さを、小規模の精製に使用し得る。
【0146】
本発明のさらなる実施形態では、約60cmのカラム直径を使用し得る。本発明のさらに別の実施形態では、60cm〜85cmのカラム直径を使用し得る。本発明の特定の実施形態では、200mMのNaHPO4溶液、pH9.0中のセラミックヒドロキシアパタイト樹脂のスラリーを使用して、約4cm/分の一定流速または重力を用いてカラムを充填し得る。
【0147】
ヒドロキシアパタイト樹脂の緩衝液の組成および充填条件
ヒドロキシアパタイト樹脂を抗体調製物と接触させる前に、pH、イオン強度、および温度、ならびに一部の例では様々な種類の物質の添加などのパラメータを調整することが必要であり得る。したがって、ヒドロキシアパタイトマトリックスを溶液(たとえば、pH、イオン強度などを調整するため、または洗剤を導入するための緩衝液)で洗浄することによってそれを平衡化して、抗体調製物を精製するために必要な特徴をもたらすことが、任意選択のステップである。
【0148】
組み合わせの結合/通過モードのヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーでは、ヒドロキシアパタイトマトリックスを溶液で平衡化および洗浄することによって、抗体調製物を精製するために必要な特徴をもたらす。本発明の一実施形態では、マトリックスは、わずかに塩基性からわずかに酸性のpHで0.01〜2.0MのNaClを含有する溶液を用いて平衡化し得る。たとえば、平衡化緩衝液は、1〜20mMのリン酸ナトリウムを含有していてよく、別の実施形態では1〜10mMのリン酸ナトリウムを含有していてよく、別の実施形態では2〜5mMのリン酸ナトリウムを含有していてよく、別の実施形態では2mMのリン酸ナトリウムを含有していてよく、別の実施形態では5mMのリン酸ナトリウムを含有していてよい。平衡化緩衝液は、0.01〜2.0MのNaCl、一実施形態では0.025〜0.5MのNaCl、別の実施形態では0.05MのNaCl、別の実施形態では0.1MのNaClを含有していてよい。充填緩衝液のpHは、6.2〜8.0の範囲であり得る。一実施形態では、pHは6.6〜7.7であってよく、別の実施形態では、pHは7.3であり得る。平衡化緩衝液は、0〜200mMのアルギニンを含有していてよく、別の実施形態では120mMのアルギニンを含有していてよく、別の実施形態では100mMのアルギニンを含有していてよい。平衡化緩衝液は、0〜200mMのHEPESを含有していてよく、別の実施形態では20mMのHEPESを含有していてよく、別の実施形態では100mMのHEPESを含有していてよい。
【0149】
また、SDAB分子調製物は、通過モードのヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの準備のために適切な緩衝液または充填緩衝液へと緩衝液交換してもよい。本発明の一実施形態では、抗体調製物は、わずかに酸性からわずかに塩基性のpHで0.2〜2.5MのNaClを含有する充填緩衝液へと緩衝液交換してもよい。たとえば、充填緩衝液は、1〜20mMのリン酸ナトリウムを含有していてよく、別の実施形態では2〜8mMのリン酸ナトリウムを含有していてよく、別の実施形態では3〜7mMのリン酸ナトリウムを含有していてよく、別の実施形態では5mMのリン酸ナトリウムを含有していてよい。充填緩衝液は、0.2〜2.5MのNaCl、一実施形態では0.2〜1.5MのNaCl、別の実施形態では0.3〜1.0MのNaCl、別の実施形態では350mMのNaClを含有していてよい。充填緩衝液のpHは、6.4〜7.6の範囲であり得る。一実施形態では、pHは6.5〜7.0であってよく、別の実施形態では、pHは6.8であり得る。
【0150】
結合モード、通過モード、またはその組合せのいずれかでSDAB分子調製物をヒドロキシアパタイト樹脂と接触させることは、充填床カラム、固相マトリックスを含有する流動床/膨張床カラム、および/または固相マトリックスを溶液と一定時間混合する単純なバッチ操作で行い得る。
【0151】
ヒドロキシアパタイト樹脂を抗体調製物と接触させた後、洗浄手順を行ってもよい。しかし、非常に高い純度の免疫グロブリンが重要でない、または追加の通過液抗体が必要でない一部の場合では、洗浄手順を省略して、プロセスステップならびに洗浄溶液を節約することができる。用いる洗浄緩衝液はヒドロキシアパタイト樹脂の性質、用いるヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのモードに依存し、したがって当業者が決定することができる。通過モードおよび組合せ結合/通過モードでは、カラムの任意選択の洗浄後のに得られた精製した抗体の通過液を他の精製した抗体画分と共にプールし得る。
【0152】
結合モードでは、任意選択の洗浄手順の後にSDAB分子をカラムから溶出させ得る。抗体をカラムから溶出させるために、本発明では、わずかに酸性からわずかに塩基性のpHで約0.2〜2.5MのNaClを含有する高イオン強度のリン酸緩衝液を使用する。たとえば、溶出緩衝液は、1〜20mMのリン酸ナトリウムを含有していてよく、別の実施形態では2〜8mMのリン酸ナトリウムを含有していてよく、別の実施形態では2〜6mMのリン酸ナトリウムを含有していてよく、別の実施形態では3mMのリン酸ナトリウムを含有していてよく、別の実施形態では5mMのリン酸ナトリウムを含有していてよい。溶出緩衝液は、0.2〜2.5MのNaCl、一実施形態では0.2〜1.5MのNaCl、別の実施形態では0.3〜1.1MのNaCl、別の実施形態では1.0MのNaCl、別の実施形態では0.35MのNaClを含有していてよい。溶出緩衝液のpHは、6.4〜7.6の範囲であり得る。一実施形態では、pHは6.5〜7.3であってよく、別の実施形態では、pHは7.2であってよく、別の実施形態では、pHは6.8であり得る。溶出緩衝液は、抗体をカラムから連続的または段階的な勾配で溶出させるために変更し得る。
【0153】
結合モード、通過モードの両方、およびその組合せにおいて、固相マトリックスは、抗体の溶出または通過後に、任意選択で浄化する、すなわちストリッピングおよび再生し得る。この手順は、典型的には、固相の表面上に不純物が蓄積することを最小限にするため、および/または、生成物が微生物で夾雑されることを回避するためにマトリックスを滅菌するために、定期的に行う。
【0154】
緩衝液の構成成分は、当業者の知識に従って調整し得る。
【0155】
任意選択のさらなるステップ
上述のように、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを単独で使用して単量体のIgGを凝集体から分離できることが見い出されているが、本発明の精製方法は他のタンパク質精製技法と組み合わせて使用することができる。本発明の一実施形態では、ヒドロキシアパタイトステップの前に1つまたは複数のステップを行うことが、夾雑物質または不純物の充填投与量を低下させるために望ましい場合がある。本発明の別の実施形態では、ヒドロキシアパタイトステップの後に1つまたは複数の精製ステップを行うことが、さらなる夾雑物質または不純物を除去するために望ましい場合がある。
【0156】
記載したcHA精製手順は、それだけには限定されないが、プロテインAクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化した金属アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外濾過、ウイルス除去濾過、および/またはイオン交換クロマトグラフィーを含めた他の精製ステップと組み合わせてもよい。
【0157】
一実施形態では、cHA精製ステップの前に、収集培地をプロテインAクロマトグラフィーステップによって最初に精製してもよい。たとえば、制御孔ガラスと共有結合したプロテインAからなるPROSEP−A(商標)(Millipore、英国)を有用に用いることができる。他の有用なプロテインA製剤には、プロテインA Sepharose FAST FLOW(商標)(Amersham Biosciences、Piscataway,NJ)、TOYOPEARL(商標)650MプロテインA(TosoHaas Co.、Philadelphia,PA)、およびMABSELECT(商標)カラム(Amersham Biosciences、Piscataway,NJ)が含まれる。
【0158】
cHA精製前の任意選択のステップとして、イオン交換クロマトグラフィーを用い得る。この観点から、様々な陰イオン性または陽イオン性の置換基をマトリックスに付着させて、クロマトグラフィーのために陰イオン性または陽イオン性の支持体を形成させ得る。陰イオン性交換置換基には、ジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルアミノエチルアクリルアミド(TMAE)、第四級アミノエチル(QAE)および第四級アミン(Q)基が含まれる。陽イオン性交換置換基には、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、ホスフェート(P)およびスルホネート(S)が含まれる。DE23、DE32、DE52、CM−23、CM−32およびCM−52などのセルロース性イオン交換樹脂は、Whatman Ltd.、Maidstone、Kent、英国のSephadex系の架橋結合したものから入手可能であり、イオン交換剤も知られている。たとえば、DEAE−、QAE−、CM−、およびSP Sephadex、DEAE−、Q−、CM−およびS−Sepharose、ならびにSepharoseは、すべてAmersham Biosciences、Piscataway,NJから入手可能である。さらに、TOYOPEARL(商標)DEAE−650SまたはMおよびTOYOPEARL(商標)CM−650SまたはMなどのDEAEおよびCM誘導体化エチレングリコール−メタクリレートコポリマーは、どちらもToso Haas Co.、Philadelphia,PAから入手可能である。
【0159】
本発明の一実施形態では、イオン交換クロマトグラフィーは結合モードまたは通過モードで使用し得る。
【0160】
特定の実施形態では、プロテインAクロマトグラフィーステップを1番目に実施し、陰イオン交換ステップを2番目に実施し、cHAステップを3番目に実施する。
【0161】
さらなる不純物の除去
HMWAの除去に加えて、cHAクロマトグラフィーは、他の不純物を抗体調製物から除去することにおいて有用であることが示されている。本発明のcHAクロマトグラフィー方法によって除去し得る他の不純物には、それだけには限定されないが、DNA、宿主細胞タンパク質、外因性ウイルス、および以前の精製ステップからのプロテインA夾雑物質が含まれる。
【0162】
本発明の一実施形態では、本発明はプロテインAを抗体調製物から除去することができる。本発明の特定の実施形態では、最終調製物中に存在するプロテインAの量を、300ppmから1ppm未満までなど、顕著に低下させることができる。
【0163】
投与および処置方法
本明細書中に開示される方法によって精製するSDAB分子を含有する製剤は、対象(たとえばヒト対象)に、単独でまたは第2の薬剤、たとえば第2の治療上もしくは薬理学的に活性な薬剤と組合せて、TNFα関連障害、たとえば炎症性または自己免疫性障害を治療または予防する(たとえばそれに関連する1つまたは複数の症状を低下または寛解させる)ために投与し得る。用語「処置する」とは、治療剤を、統計的に有意な度合までまたは当業者が検出可能な度合まで、障害に関連する状態、症状、もしくはパラメータを改善させる、または障害の進行を妨げるために有効な量、様式、および/またはモードで、投与することをいう。有効な量、様式、またはモードは対象に応じて変動する場合があり、対象に合わせ得る。
【0164】
処置することができる免疫障害の非限定的な例には、それだけには限定されないが、自己免疫障害、たとえば、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、ループス関連関節炎または強直性脊椎炎が含まれる)、強皮症、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、血管炎、多発性硬化症、自己免疫甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎が含まれる)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、真性糖尿病(I型)、たとえば皮膚の炎症状態(たとえば乾癬)、急性炎症状態(たとえば、内毒血症、敗血症、菌血症を伴う敗血症(septicaemia)、毒素ショック症候群および感染症)、移植片拒絶ならびにアレルギーが含まれる。一実施形態では、TNFα関連障害は、関節炎障害、たとえば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ(RA)(たとえば中等度から重度の関節リウマチ)、骨関節炎、乾癬性関節炎、もしくは強直性脊椎炎、多関節若年性特発性関節炎(JIA)、または乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、および/または多発性硬化症のうちの1つまたは複数から選択される障害である。
【0165】
特定の実施形態では、製剤には第2の治療剤が含まれる。たとえば、TNF−ナノボディでは、第2の薬剤は、抗TNF抗体またはそのTNF結合断片であってよく、第2のTNF抗体は製剤のTNF結合SDAB分子とは異なるエピトープ特異性を有する。TNF結合SDABと共製剤化することができる薬剤の他の非限定的な例には、たとえば、サイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞毒性剤、および細胞分裂抑制剤が含まれる。一実施形態では、追加の薬剤は、それだけには限定されないが、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、プレドニゾロン、プレドニゾン、コルチゾン、およびトリアムシノロンを含めたコルチコステロイド、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン(Plaquenil)およびスルファサラジンなどの疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)、レフルノミド(Arava(登録商標))、エタネルセプト(Enbrel(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))(メトトレキサートを含むまたは含まない)、およびアダリムマブ(Humira(登録商標))を含めた腫瘍壊死因子阻害剤、抗CD20抗体(たとえばRituxan(登録商標))、アナキンラ(Kineret(登録商標))などの可溶性インターロイキン−1受容体、金、ミノサイクリン(Minocin(登録商標))、ペニシラミン、ならびにアザチオプリン、シクロホスファミド、およびシクロスポリンを含めた細胞毒性剤を含めた、関節炎の標準の処置である。そのような併用療法では、低用量の投与した治療剤を有利に利用して、様々な単独療法に関連する潜在的な毒性または合併症が回避され得る。
【0166】
製剤は、液体溶液の形態とすることができる(たとえば、注射用およびインフュージョン用の液剤)。そのような組成物は、非経口モード(たとえば、皮下、腹腔内、もしくは筋肉内注射)、または吸入によって投与することができる。本明細書中で使用する語句「非経口投与」および「非経口投与した」とは、経腸および外用投与以外の、通常は注射による投与形式を意味し、皮下または筋肉内投与、ならびに静脈内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、表皮下、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射およびインフュージョンが含まれる。一実施形態では、本明細書中に記載の製剤を皮下投与する。
【0167】
医薬製剤は、製造および貯蔵条件下で無菌的かつ安定である。また、投与における規制および業界の標準を満たすことを保証するために、医薬組成物を試験することもできる。
【0168】
医薬製剤は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高いタンパク質濃度に適した他の規則的な構造として製剤化することができる。滅菌注射用液剤は、本明細書中に記載の薬剤を、所要量で、必要に応じて上述した成分のうちの1つまたは組合せと共に、適切な溶媒中に取り込ませ、続いて滅菌濾過することによって、調製することができる。一般に、分散液は、本明細書中に記載の薬剤を、塩基性分散媒を含有する無菌ビヒクルおよび上述したもののうちの所用の他の成分内に取り込ませることによって調製する。溶液の適正な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合は所用の粒子径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、たとえばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【実施例】
【0169】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供する。
【0170】
(実施例1)
ATN−103のコード配列の説明
ATN−103は、TNFαおよびHSAを標的とする三価のナノボディ分子である。WO06/122786号に記載のように、ナノボディをラマ由来のファージライブラリから、TNFαまたはHSA上で選択することによって単離した。ナノボディを特異的活性について試験し、TNF1がヒトTNFαのナノボディ阻害剤として選択され、ALB1が半減期伸長のためのヒト抗HSAナノボディとして選択された。最も近いヒトフレームワーク(DP51/DP53)上にCDR移植することによってTNF1およびALB1をヒト化した。TNF1のヒト化中、2個のラクダ科残基が保持され(P84およびR103)、この型をTNF30と命名した。ALB1のヒト化中、7個のラクダ科残基が保持され(N16、N73、T76、P84、T93、I94およびS103)、この型をALB8と命名した。2つのTNF30ナノボディを、それぞれ9個のアミノ酸のグリシン−セリンリンカー(GlySerGlySer(配列番号9))によって中心ALB8ナノボディと連結させて、本明細書中で「ATN−103」と命名する三価分子が得られた。ATN−103のアミノ酸配列を図3に示し、−TNF30−(グリシン−セリンリンカー)−ALB8−(グリシン−セリンリンカー)−TNF30の立体配置を有する。図2では、相補性決定領域(CDR)に下線を引いた(配列番号2〜7)。予測される分子内ジスルフィド結合は、関与するシステイン残基の接続によって図示した。TNFとの結合ドメインを太字で示し、HSAとの結合ドメインを太字の斜体で示す。これらの結合ドメインを接続するアミノ酸リンカーは斜体である。シグナルペプチド(−19MGW・・・VHS−1)もポリペプチド鎖について示す。
【0171】
(実施例2)
ATN−103の精製プロセス
ATN−103の精製プロセスは2つのクロマトグラフィーステップおよび3つの膜濾過ステップからなる(図3を参照)。別段に指摘しない限りは、すべてのステップは室温で行う。
【0172】
それぞれの精製ステップの原理、目的、および説明を以下に提供する。
【0173】
MabSelectプロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよび低pHのウイルス不活性化
MabSelect(商標)プロテインAクロマトグラフィーステップの主な目的には、清澄にした無細胞馴化培地からの生成物の捕捉ならびにプロセス由来の不純物(たとえば、宿主細胞のDNAやタンパク質、培地の構成成分、および外因性の薬剤)からのATN−103の分離が含まれる。
【0174】
MabSelectプロテインAは、チオエーテル結合によって大腸菌(Escherichia coli、E.coli)発酵から産生された組換えプロテインAで共有的に誘導体化された、高度に架橋結合されたアガロースマトリックスからなる親和性樹脂である。
【0175】
MabSelectプロテインAカラムをトリス−緩衝塩化ナトリウム溶液で平衡化し、清澄にした無細胞馴化培地(CM)を用いて充填する。すべての緩衝液は300cm/時で流した。平衡化緩衝液は、150mMのNaClおよび50mMのトリス、pH7.5を含有する。ATN−103はMabSelect(商標)プロテインA樹脂と結合し、不純物はカラムを通過する。充填した樹脂をトリス−緩衝塩化ナトリウム溶液(150mMのNaClおよび50mMのトリス、pH7.5)で洗浄して不純物のレベルをさらに低下させ、続いて低濃度のトリス緩衝液で洗浄する。低濃度トリス洗浄緩衝液は、10mMのNaClおよび10mMのトリス、pH7.5を含有する。低pHグリシン緩衝液を用いて結合した生成物をカラムから溶出させる。低pHグリシン溶出緩衝液は、10mMのNaClおよび50mMのグリシン、pH3.0を含有する。水酸化物溶液を用いて樹脂を再生および衛生化し、その後、16%のエタノールを含有する溶液中で貯蔵する。1回の回収から複数のサイクルのMabSelectプロテインAステップを生じることができる。
【0176】
生成物のプールをpH3.8以下で1.5±0.5時間、18℃〜24℃に保つ。MabSelect(商標)プロテインAカラム後の低pH不活性化は、外被を有するウイルスを不活性化させるために設計されている。その後、溶出プールを濃縮HEPES緩衝液(2mMのHEPES、pH9.0)で中和し、深層および0.2μm濾過を用いて濾過する。
【0177】
Macro−Prepセラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー
Macro−Prep(商標)セラミックヒドロキシアパタイト(cHA)ステップの主な目的は、高分子量凝集体(HMWA)、浸出したプロテインA、ならびにDNAおよび宿主細胞タンパク質(HCP)などの宿主細胞由来の不純物を除去することである。
【0178】
Macro−Prepセラミックヒドロキシアパタイトは、六角形結晶格子からなる非圧縮マトリックスである。カルシウム、ホスフェート、および水酸化物の分子がマトリックスを構成し、化学量論的組成は(Ca(PO(OH))である。cHA樹脂は、陽イオン交換、陰イオン交換、および金属配位の相互作用を促進することができる複数モードマトリックスである。結合したタンパク質の溶出は、典型的には塩またはホスフェートの濃度の増加を用いて行う。
【0179】
cHAカラムは、最初に高濃度の塩化ナトリウムを含有する緩衝液、続いて低濃度の塩化ナトリウムを含有する緩衝液を用いて平衡化する。cHAカラムへの充填は、中和したMabSelect(商標)プロテインAプールである。充填後、カラムを低塩の平衡化緩衝液で洗浄し、より高い塩濃度を含有する緩衝液を用いてATN−103を回収する。ATN−103の溶出後、HMWおよび他の不純物を、はるかに高い塩およびホスフェートの濃度を用いてカラムから除去する。カラムを再生し、その後、水酸化ナトリウム溶液中で貯蔵する。
【0180】
Planova20Nウイルス保持濾過
Planova20Nウイルス保持濾過(VRF)ステップは、潜在的な外因性のウイルス夾雑物質を表し得る粒子を除去することによって、生成物の安全性を保証する顕著なレベルのウイルス排除を提供する。
【0181】
単一使用のPlanova20N VRF装置をcHA溶出緩衝液で平衡化し、Macro−Prepセラミックヒドロキシアパタイト生成物プールを充填した。生成物を透過流中で回収する。充填を処理した後、緩衝液フラッシュを用いて系中に残ったさらなる生成物を回収する。
【0182】
限外濾過/ダイアフィルトレーションおよび製剤化
限外濾過/ダイアフィルトレーションステップ(10kDaの分子量カットオフ)を用いて、濃縮を行い、VRF生成物を製剤緩衝液中へと緩衝液交換する。
【0183】
膜モジュールの平衡化後、充填溶液を最初に事前に設定された標的体積まで濃縮し、その後、14mMのヒスチジン、pH5.8の緩衝液でダイアフィルトレーションする。約110g/Lまでさらに濃縮した後、ヒスチジン緩衝液フラッシュを用いてプールを系から回収して、最終タンパク質標的濃度である約90g/Lを達成する。少量(11.1%v/v)の濃縮ストック溶液(10mMのヒスチジン、50%のスクロースおよび0.1%のポリソルベート80)を生成物プールに加える。得られる最終原薬(DS)は、10mMのヒスチジン、pH6.0、5%のスクロース、0.01%のポリソルベート中の80g/LのATN−103である。
【0184】
最終濾過
製剤化された原薬を単一使用の0.2μmフィルターに通して、すべての潜在的な外因性の微生物夾雑物質および粒子状物質を除去する。
【0185】
(実施例3)
プロテインA捕捉の比較
以下のプロテインAに基づくマトリックスを、ATN−103を捕捉するその能力について評価した:MabSelect(商標)(GE Healthcare)、MabSelect Xtra(商標)(GE Healthcare)、ProSep(登録商標)Va Ultra Plus(Millipore)、およびMabSelect SuRe(商標)(GE Healthcare)。MabSelect(商標)はZ−ドメインを含有するプロテインAリガンドを使用し、樹脂主鎖は架橋結合が原因でより疎水性である。MabSelect Xtra(商標)はMabSelectと同じリガンドを使用し、30%増加した密度を有し、より小さなビーズおよびより大きな孔径を有する。ProSep(登録商標)Va Ultra Plusはガラスに基づく主鎖およびネイティブプロテインAリガンドを有する。これはより高い流速での高い能力のために設計されている。MabSelect SuRe(商標)はFc含有分子と結合し(ATN−103はFc領域を有さない)、その新規リガンドは高い腐食安定性を可能にする。
【0186】
MabSelect(商標)によって精製したプロテインAピークのプールを充填材料として使用した場合(pH=7.0、1g/Lまで希釈(予想される馴化培地の濃度))、ProSep(登録商標)Va Ultra Plusが最も高い結合能力を示し(16g/Lの樹脂)、MabSelect(商標)の結合能力は以前に実証された結合能力と比較して20%の増加を示した。
【0187】
動的結合能力(DBC)に対する流速の影響を検査した。MabSelect(商標)では、結合能力は60cm/時で8.0g/L rと比較して600cm/時で7.4g/L rであった。MabSelect Xtra(商標)およびProSep(登録商標)Va Ultra Plusを試験した際に同様の傾向が観察された。したがって、試験した条件下ではDBCに対する流速の影響は最小限であった。
【0188】
プロテインA結合能力に対する調節剤の効果も検査した。結果により、0.5MのNaSOを添加することで、疎水性相互作用が増強されることによってDBCが増加し得ることが示された。たとえば、MabSelect(商標)(CMを使用)の結合能力は、150cm/時の流速で12.5g/L rまで増加した。続いて、さらなる結合した材料を、NaSOを含まない溶液中で溶出させた。高い量の沈殿がNaSOを含むCM中で検出された。MabSelect Xtra(商標)(DBC=16g/L r)およびProSep(登録商標)Va Ultra Plus(DBC=17.5g/L r)を試験した際に同様の結果が観察された。
【0189】
プロテインA結合能力に対するPEGの効果を検査するために、6%のPEG(4000Da)をCM中に加えた。続いて、さらなる結合した材料を、PEGを含まない緩衝液中で溶出させた。結果により結合能力のわずかな増加が示され、沈殿は検出されなかった。
【0190】
(実施例4)
ATN−103 MabSelect SuRe(商標)の評価
MabSelectステップの開発中、プロテインAとATN−103との結合の機構のより良好な理解を得るために、MabSelect Sure(商標)を結合実験で使用した。予想外に、ATN−103はMabSelect Sure(商標)と結合し、結合した生成物を除去するためにpH4.5を有する溶液を必要とした。MabSelect Sureは、抗体などのFc領域を含有する分子のみと結合するように設計されたプロテインA樹脂である。ATN−103はFc領域を含有しない。開発の後期に、MabSelect Sure(商標)は初濃度の10%のブレークスルーで8g/L樹脂までのATN−103と結合できることが決定された。
【0191】
(実施例5)
ATN−103の陽イオン交換(CEX)ステップの評価
ATN−103の精製プロセスにおいて捕捉カラムの能力を増加させる試みで、陽イオン交換(CEX)に基づく捕捉ステップを評価した。馴化培地(CM)の伝導率を12〜9mS/cm低下させ、pHを4.3以下まで滴定することによって、40g/L rの能力が観察された。これらのpHレベルでの低い数値の荷電/モルが原因で、ATN−103はCEX媒体と非常に弱く結合した。この弱い結合が原因で、ATN−103はCEX樹脂から低い伝導率の溶液中で溶出させることができる。溶出条件は、一般に、50mM以下のNaCl、pH6.5〜7.0であった。CEXカラムは、下流のcHA平衡化緩衝液を用いて溶出させることもできる。
【0192】
CEX能力のスクリーニング
4つの陽イオン交換剤、すなわち、Capto(商標)S(GE Heathcare)、Fractogel(登録商標)SO3−(M)(EMD Chemicals)、Toyopearl(登録商標)Gigacap S−650M(Tosoh Bioscience)およびPoros(登録商標)HS50(Applied Biosystems)を、ATN−103とのその結合能力について試験した。10uLの樹脂(標的75g/Lの樹脂)を用いた0.75mLのCM TS2をスクリーニングに使用した。カラムを、充填条件と同じpHの、50mMの酢酸ナトリウムを含有する緩衝液で洗浄した。タンパク質を、1MのNaClを含有する緩衝液(pH5.5)で溶出させた。結合した質量をA280での分光光度法によって測定した。続いて、カラムを1MのNaClおよび尿素を含有する緩衝液でストリッピングした。A280で測定した分光光度法により、ストリッピング後に顕著な質量は結合していなかったことが示された。約25g/L樹脂までの結合能力が、研究したすべての樹脂で観察された。Capto(商標)SおよびToyopearl(登録商標)Gigacap S−650Mは比較的より弱い結合を示し、Fractogel(登録商標)SO3−(M)およびPoros(登録商標)HS50はより密な結合を示した。この研究は、非常に低い伝導率条件を有するpHによる溶出が可能なことを示している。
【0193】
CEXの結合能力
CMをpH4.0まで滴定し、Rodi水(3部のCMを1部のRodiに加えた)で3:1に、0.75の全希釈液(8mS/cmの充填)まで希釈した。2mLのカラム(0.5cm×10cm)を用いて、Capto(商標)S、Toyopearl(登録商標)Gigacap S−650M、Poros(登録商標)HS50およびFractogel(登録商標)SO3−(M)の結合能力を、40g/Lを超える標的結合能力について最初に測定した。Capto(商標)S、Toyopearl(登録商標)Gigacap S−650MおよびFractogel(登録商標)SO3−(M)の結合能力を、4.0〜4.3のpH範囲内の様々な条件でさらに決定した。たとえば、Capto(商標)Sの結合能力は、それぞれpH4.3、9mS/cm、pH4.0、11mS/cm、pH4.0、9mS/cm、およびpH4.1、8mS/cmで測定した。Toyopearl(登録商標)Gigacap S−650Mの結合能力は、pH4.3、9mS/cmおよびpH4.1、8mS/cmで測定した。Fractogel(登録商標)SO3−(M)の結合能力は、それぞれpH4.3、12mS/cm、pH4.3、9mS/cm、pH4.0、12mS/cm、pH4.1、9mS/cm、およびpH4.0、9mS/cmで測定した。結果により、Fractogel(登録商標)SO3−(M)はCMを水で希釈せずに使用できることが示された。希釈なしで、Fractogel(登録商標)SO3−(M)はpH4.0〜4.3で良好な結合能力を示した(DBC範囲:25〜>40g/L r)。23%の希釈率で、Fractogel(登録商標)SO3−(M)はpH4.0〜4.3で優れた能力を示した(DBC範囲:40〜>50g/L r)。
【0194】
CEXの溶出手法
勾配溶出を、CEXの結合能力の実験に記載と同様に行った。クエン酸緩衝液をpH溶出に使用した。Capto(商標)S、Toyopearl(登録商標)Gigacap S−650M、Fractogel(登録商標)SO3−(M)およびPoros(登録商標)HS50を試験した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)溶出により、高純度のATN−103ならびに低レベルのHMWおよびLMW種が示された。純度の度合は、プロテインAの溶出材料と少なくとも比較可能である。HTSスクリーニングを、勾配溶出から得られた情報を用いて設計することができる。
【0195】
(実施例6)
高濃度の限外濾過/ダイアフィルトレーションおよび製剤化
実施例6.1:高濃度の限外濾過/ダイアフィルトレーションおよび製剤化
限外濾過/ダイアフィルトレーションステップ(10kDaの分子量カットオフ)を用いて、濃縮を行い、VRF生成物を製剤緩衝液中へと緩衝液交換する。
【0196】
膜モジュールの平衡化後、充填溶液を最初に事前に設定された標的体積まで濃縮し、その後、28mMのヒスチジン、pH5.8の緩衝液でダイアフィルトレーションする。約200g/Lまでさらに濃縮した後、ヒスチジン緩衝液フラッシュを用いてプールを系から回収して、最終タンパク質標的濃度である約150g/Lを達成する。少量の(17.6%v/v)の濃縮ストック溶液(20mMのヒスチジン、50%のスクロースおよび0.0667%のポリソルベート80)を生成物プールに加える。得られる最終DSは、10mMのヒスチジン、pH6.0、5%のスクロース、0.01%のPS80中の80g/LのATN−103である。得られる最終DSは、20mMのヒスチジン、pH6.0、7.5%のスクロース、0.01%のポリソルベート中の125g/LのATN−103である。
【0197】
実施例6.2:高濃度の限外濾過/ダイアフィルトレーション
限外濾過/ダイアフィルトレーションステップ(10kDaの分子量カットオフ)を用いて、濃縮を行い、VRF生成物を製剤緩衝液中へと緩衝液交換した。
【0198】
膜モジュールの平衡化後、充填溶液を最初に約40g/Lまで濃縮し、その後、30mMのヒスチジン、pH5.8、8.5%のスクロース緩衝液でダイアフィルトレーションした。約300g/Lまでさらに濃縮した後、ダイアフィルトレーション緩衝液を用いてプールを系から回収して、最終タンパク質標的濃度である約175g/Lを達成した。
【0199】
実施例6.3:高濃度の限外濾過/ダイアフィルトレーションおよび製剤化
限外濾過/ダイアフィルトレーションステップ(10kDaの分子量カットオフ)を用いて、濃縮を行い、VRF生成物を製剤緩衝液中へと緩衝液交換した。
【0200】
膜モジュールの平衡化後、充填溶液を最初に約40g/Lまで濃縮し、その後、30mMのヒスチジン、pH5.8の緩衝液でダイアフィルトレーションした。約320g/Lまでさらに濃縮した後、ダイアフィルトレーション緩衝液を用いてプールを系から回収して、最終タンパク質標的濃度である約210g/Lを達成した。
【0201】
DS標的が200g/L以上であった場合、実施例6.2および実施例6.3の組合せは以下のように行う。限外濾過/ダイアフィルトレーションステップ(10kDaの分子量カットオフ)を用いて、濃縮を行い、VRF生成物を製剤緩衝液中へと緩衝液交換することができる。膜モジュールの平衡化後、充填溶液を最初に40g/Lまで濃縮し、その後、ヒスチジンスクロース緩衝液を用いてダイアフィルトレーションすることができる。約320g/Lまでさらに濃縮した後、ダイアフィルトレーション緩衝液を用いてプールを系から回収して、スクロースは既に存在する最終タンパク質標的濃度である約200g/L以上が達成される。その後、製剤の添加は1.01%v/vとなり、そのためUFプールは顕著に希釈されず、最終DSが200g/L以上となる。
【0202】
均等物
本明細書中で言及したすべての参考文献は、それぞれの個々の出版物または特許もしくは特許出願が、その全体がすべての目的ために参照により組み込まれていると明確にかつ個別に示されている場合と同じ程度に、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれている。
【0203】
本発明は、本明細書中に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書中に記載のものに加えて、本発明の様々な改変が、前述の説明および添付の図から当業者に明らかであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内にあることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のナノボディ分子を含む単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子を、SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質とを含有する混合物から分離または精製する方法であって、
SDAB分子が支持体に結合または吸着することを可能にする条件下で、混合物をプロテインAに基づくまたは陽イオン交換に基づく支持体と接触させることと、
1つまたは複数の夾雑物質を除去することと、
SDAB分子を支持体から選択的に溶出させることと、
を含み、前記SDAB分子が相補的抗体可変ドメインまたは免疫グロブリンFc領域を有さない、方法。
【請求項2】
夾雑物質のうちの1つまたは複数を除去するステップが、SDAB分子が支持体に結合したままとなる条件下で、結合した支持体を洗浄することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合物をプロテインAに基づく支持体と接触させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
夾雑物質のうちの1つまたは複数を除去するステップが、結合した支持体を少なくとも1つのプロテインA洗浄緩衝液で洗浄することを含み、前記プロテインA洗浄緩衝液が、約7〜7.5の範囲のpHで約100〜約175mMのNaClおよび約40〜約60mMのトリスを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
SDAB分子を支持体から選択的に溶出させるステップが、吸着したSDAB分子を少なくとも1つのプロテインA溶出緩衝液で溶出させることを含み、前記プロテインA溶出緩衝液が、pH4.0以下で約5〜約50mMのNaClおよび約5mM〜約100mMのグリシンを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、金属アフィニティークロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外濾過、ウイルス不活性化またはウイルス除去濾過のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
混合物をヒドロキシアパタイト樹脂と接触させることと、SDAB分子をヒドロキシアパタイト樹脂から選択的に溶出させることとをさらに含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
混合物を陽イオン交換カラムと接触させること、SDAB分子をカラムから選択的に溶出させることとがさらに含まれる、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
SDAB分子が、哺乳動物宿主細胞中で産生された組換えタンパク質である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
哺乳動物宿主細胞がCHO細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
混合物中の夾雑物質が、高分子量タンパク質凝集体、宿主細胞タンパク質、DNA、または浸出したプロテインAのうちの1つまたは複数を含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
SDAB分子が少なくとも90%の純度まで精製される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
プロテインAに基づく支持体が、固定化した組換えもしくは単離完全長ブドウ球菌プロテインA(SpA)、またはその機能的変異体の樹脂を含む、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
完全長SpAが、図4Aに示す配列番号11のアミノ酸配列、またはそれに少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
SpAの機能的変異体が、SpAの少なくともドメインB、または1つまたは複数の置換されたアスパラギン残基を有するドメインBの変異体を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
SpAの機能的変異体が、図4Bに示す配列番号12のアミノ酸配列、またはそれに少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
混合物を陽イオン交換に基づく支持体と接触させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質とを含有する混合物を、少なくとも約40g/Lの能力を示す陽イオン交換(CEX)樹脂と接触させることと、
SDAB分子を支持体に通過させ、支持体を少なくとも1つの陽イオン交換洗浄緩衝液で洗浄することと、
SDAB分子を溶出緩衝液で溶出させることと
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
カラムに充填するために使用される馴化培地(CM)の伝導率が約12〜9mS/cmであり、充填条件のpHが約4.5以下となるように調整される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
溶出緩衝液が約50mM以下の塩化ナトリウムであり、約5.5〜7.2のpHを有する、請求項17から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
混合物をヒドロキシアパタイト樹脂と接触させることと、SDAB分子をヒドロキシアパタイト樹脂から選択的に溶出させることとをさらに含む、請求項17から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
混合物を平衡化緩衝液で前処理することと、前処理した混合物をヒドロキシアパタイト樹脂に通過させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
混合物をヒドロキシアパタイト樹脂と接触させるステップおよび溶出ステップを、pH約6.4〜7.6で、約1〜20mMのリン酸ナトリウムおよび約0.2〜2.5Mの塩化ナトリウムを含む緩衝溶液中で行う、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
平衡化緩衝液が、pH約6.2〜8.0で、約1〜20mMのリン酸ナトリウム、約0.01〜2.0Mの塩化ナトリウム、約0〜200mMのアルギニン、約0〜200mMのHEPESを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
精製したSDAB分子が10%未満の高分子量凝集体を含有する、請求項1から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
1つまたは複数のナノボディ分子を含む単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子を、SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質とを含有する混合物から分離または精製する方法であって、
SDAB分子がプロテインAに基づく支持体に結合または吸着することを可能にする条件下で、混合物をプロテインAに基づく支持体と接触させることと、
1つまたは複数の夾雑物質を除去することと、
SDAB分子を支持体から選択的に溶出させることによって、溶出させたSDAB分子調製物を得ることと、
溶出させたSDAB分子調製物をヒドロキシアパタイト樹脂と接触させることと、
SDAB分子をヒドロキシアパタイト樹脂から選択的に溶出させることと、
を含み、前記SDAB分子が相補的抗体可変ドメインまたは免疫グロブリンFc領域を有さない、方法。
【請求項27】
1つまたは複数のナノボディ分子を含む単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子を、SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質とを含有する混合物から分離または精製する方法であって、
SDAB分子がプロテインAに基づく支持体に結合または吸着することを可能にする条件下で、混合物をプロテインAに基づく支持体と接触させることと、
1つまたは複数の夾雑物質を除去することと、
SDAB分子を支持体から選択的に溶出させることによって、溶出させたSDAB分子調製物を得ることと、
溶出させたSDAB分子調製物を平衡化緩衝液で前処理することと、
前処理した混合物をヒドロキシアパタイト樹脂に通過させることと
を含み、前記SDAB分子が相補的抗体可変ドメインまたは免疫グロブリンFc領域を有さない、方法。
【請求項28】
1つまたは複数のナノボディ分子を含む単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子を、SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質とを含有する混合物から分離または精製する方法であって、
SDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質とを含有する混合物を陽イオン交換支持体と接触させ、SDAB分子を支持体に通過させ、支持体を少なくとも1つの陽イオン交換洗浄緩衝液で洗浄することと、
1つまたは複数の夾雑物質を除去することと、
SDAB分子を支持体から選択的に溶出させることによって、溶出させたSDAB分子調製物を得ることと、
溶出させたSDAB分子調製物をヒドロキシアパタイト樹脂と接触させることと、
SDAB分子をヒドロキシアパタイト樹脂から選択的に溶出させることと、
を含み、前記SDAB分子が相補的抗体可変ドメインまたは免疫グロブリンFc領域を有さない、方法。
【請求項29】
SDAB分子が、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインを含む単鎖ポリペプチドである、請求項1から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
SDAB分子が、軽鎖を天然に欠く抗体由来の少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
抗体がラクダ科抗体である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
SDAB分子が一価、二価、または三価の分子である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
SDAB分子が、単一特異性、二重特異性、または三重特異性分子である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
SDAB分子が、組換えの、CDR移植した、ヒト化した、ラクダ化した、脱免疫化した、および/またはファージディスプレイによってin vitroで選択したものである1つまたは複数のナノボディ分子を含む、請求項1から28のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
SDAB分子が、サイトカイン、成長因子および血清タンパク質からなる群から選択される1つまたは複数の標的抗原と結合する、請求項1から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
SDAB分子が腫瘍壊死因子α(TNFα)と結合する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
SDAB分子がヒト血清アルブミン(HSA)と結合する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
SDAB分子が、TNFαと結合する2つのラクダ科可変領域とHSAと結合する1つのラクダ科可変領域との単鎖ポリペプチド融合体からなる三価の二重特異性分子である、請求項1から34のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
SDAB分子が、N末端からC末端まで抗TNFαSDAB分子−抗HSA SDAB分子−抗TNFαSDAB分子の順序で配列されている、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
SDAB分子が、配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1から34のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
SDAB分子が、TNFαと結合するSDAB分子の少なくとも1つを含み、配列番号2(DYWMY(CDR1))、配列番号3(EINTNGLITKYPDSVKG(CDR2))および配列番号4(SPSGFN(CDR3))のアミノ酸配列を有する、または前記CDRのうちの1つと2個未満の保存的アミノ酸置換によって異なるCDRを有する3個のCDRを含む、請求項1から34のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
SDAB分子が、TNFαと結合するSDAB分子の少なくとも1つを含み、図2に示す配列番号1のアミノ酸約1〜115のアミノ酸配列、または図2に示す配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する可変領域を含む、請求項1から34のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
SDAB分子が、HSAと結合するSDAB分子のうちの少なくとも1つを含み、SFGMS(CDR1;配列番号5)、SISGSGSDTLYADSVKG(CDR2;配列番号6)および/またはGGSLSR(CDR3;配列番号7)のアミノ酸配列を有する、または前記CDRのうちの1つと2個未満の保存的アミノ酸置換によって異なるCDRを有する3個のCDRを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
SDAB分子が、HSAと結合するSDAB分子の少なくとも1つを含み、図2に示す配列番号1のアミノ酸約125〜239のアミノ酸配列、または図2に示す配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する可変領域を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
SDAB分子のうちの2つ以上が、少なくとも5、7、8、9、10、12、または15個のグリシンおよびセリン残基を含む連結基と融合されている、請求項1から44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
SDAB分子のうちの2つ以上が、配列番号9のアミノ酸配列((Gly)−Ser−(Gly)−Ser)を含む連結基と融合されている、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
1つまたは複数のナノボディ分子が含まれる組換え単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子を提供する方法またはプロセスであって、
組換えSDAB分子をコードしている核酸を含む哺乳動物宿主細胞を提供することと、
宿主細胞を組換えSDAB分子が発現される条件下に維持することと、
組換えSDAB分子と1つまたは複数の夾雑物質との混合物を得ることと、
プロテインAに基づくまたは陽イオン交換に基づくクロマトグラフィーを用いて、組換えSDAB分子を前記混合物から精製または分離することと、
1つまたは複数の夾雑物質を除去することと、
SDAB分子を支持体から選択的に溶出させることによって、溶出させたSDAB分子調製物を得ることと、
を含み、前記精製または分離ステップが、SDAB分子が支持体に結合または吸着することを可能にする条件下で、混合物を支持体と接触させることを含み、前記SDAB分子が相補的抗体可変ドメインまたは免疫グロブリンFc領域を有さない、方法またはプロセス。
【請求項48】
溶出させたSDAB分子調製物を、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、金属アフィニティークロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外濾過、またはウイルス除去濾過のうちの1つまたは複数に供することをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
組換えSDAB分子の製剤を医薬組成物として調製することをさらに含む、請求項47
または48に記載の方法。
【請求項50】
溶出させたSDAB分子を事前に選択された標的体積まで濃縮することをさらに含む、請求項1から49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
ヒスチジン緩衝液またはトリス緩衝液の存在下で限外濾過/ダイアフィルトレーションステップを行うことによって濃縮ステップが実施される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
SDAB分子が少なくとも約80g/L〜350g/Lまで濃縮される、請求項1から50のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
請求項1から52のいずれかに記載の方法によって精製されたSDAB分子。
【請求項54】
請求項50に記載のSDAB分子を含む医薬組成物。
【請求項55】
対象に、請求項53に記載のSDAB分子を、疾患を処置または予防するために有効な量で投与することを含む、対象において疾患を処置または予防する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−507557(P2012−507557A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534787(P2011−534787)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/062651
【国際公開番号】WO2010/056550
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】